お兄ちゃ〜ん! 〜あなたの妹はどんな味?〜Part12

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726レヴォ ◆r2U4AfbM
遠い昔のお話。

名無菜と出会ってすぐ、まだアイツがオレに懐いていない頃。

中学校からの帰り道を歩いていると、名無菜とばったり出会う。
向こうはまだこちらに気付いていないみたいで、電柱の影にちっちゃな体を隠し、一点をを涙目で睨み付けている。
妹の視線を追うと、家の庭にうずくまる、獰猛そうなドーベルマンの姿が。

名無菜に近寄り、しゃがんで目線の高さを会わせる。その時になってようやくこちらに気付いたらしい。

「どうしたの、名無菜ちゃん?」

今からでは想像がつかないけれども、当時のオレはまだ名無菜と仲が良くなく、名前にもちゃん付けだった。
名無菜の方も、レストランで会った以降、オレの事を兄と呼んでくれない。

「犬…」

どうやら、ドーベルマンが怖くて、その前を横切れないらしい。

「なるほど。名無菜ちゃんは何処に行きたいの?」

「本屋さん。なか○し買うの」

ドーベルマンよりも、自分がなか○しを買ってきてあげる時の店員さんの目の方が怖いオレ。

「名無菜ちゃん、目を閉じて」

「うん」

素直に瞳を閉じる妹。それを確認して、しゃがんだまま背中を向ける。

「そのまま、一歩進んで…大丈夫、怖くないから」
(続く)
727レヴォ ◆r2U4AfbM :02/05/22 23:28 ID:ntaUUZm0
おっかなびっくり前に出る名無菜は、オレの背中にぶつかる。
ちっちゃな子供の、高い体温を感じながら、持ち上げる。

「あ!」

「まだ目を閉じてなくちゃ駄目だよ」

自分が何をされているのか判った名無菜が、首に手を回す。
そして、おんぶして本屋へ。

店の前で降ろしてあげる。

「ありがと」

とてとてと走り、本屋で買い物を済ませる。

「さ、帰ろ?」

「うん、あのね…おんぶ」

「いいよ」

帰り道も、彼女のリクエスト通りにおんぶ。

「背中、あったかい…お父さんみたい」

「おんぶされるの、好き?」

「うん」

コテン、と、妹の頭が背中に当たる感触。

「じゃあ、今度父さんに名無菜ちゃんの事をおんぶするように言っとくから。でも、父さんは忙しい人だから。今は、替わりにオレで我慢してね」

「うぅん、いいの」

「ん?」

「お…」


オレにぎゅっとしがみつき、小さな小さな声で。

「お兄ちゃんのおんぶがいい」



これが、今でも鮮明に思い出せる、妹がオレを兄と呼んでくれた瞬間。
この日から、オレと名無菜は兄妹になれたんだと思う。