エロゲーブランド最萌トーナメント 3回戦Round21!!
メビウス支援SS「あのあんまんをもう一度」
桜もすっかり散ってしまった、4月の終わり。
退屈なコンビニのバイトを始めてもう一年。すっかり慣れたものだ。
期限切れのあんまんを蒸し器から取り出し、新しいあんまんを温める。
売れ残ったあんまんを捨てるとき
(あいつなら全部食っちまうんだろうな)
と、田舎においてきた少女の事を思った。
「あんまんは命の源だよ〜」
それか彼女の口癖だった。
いつも紙袋いっぱいのあんまんとスケッチブックを抱え、
二人でよく雪山に散歩に出かけていた。
北風は寒かったがそれだけに寄り添い、互いの温もりを確かめ合ったものだ。
温かいあんまんと暖かな彼女の笑顔。
彼女の唇が甘かったのはあんまんのせいだけではなかったと思う。
全て大切な物だった。何一つ失わずにいられると思っていた。
だが高校を卒業した俺に、親がひとつの選択を迫った。
地元の大学に進み一生この村で過ごすか、
自分の夢を追いかけ東京に出るか・・・
そしておれは、自分の夢のために田舎と彼女を捨てて、東京へ出た。
出発の日、彼女は見送りに来なかった。
・・・当然だろう。
将来を誓い合って体を重ねたのに、ちっぽけな夢のために自分を捨てた男・・・・許せるはずが無い。
・・・。
あんまんを一つ取り出し食べてみる。
取り出したばかりのあんまんは、熱々で美味しかったが、
彼女と一緒に食べた、冷え切ったあんまんのほうが甘く感じたのはどうしてだろうか・・・
・・・
無性に彼女に会いたくなった。
きっと彼女は待っていてくれる。
あんまんをもって会いに行こう。
あのあんまんをもう一度食べるために・・・