窓の外ではしんしんと、雪が降り積もっている。
見るからに寒そうだよ。いくら僕が自前の毛皮を持っているからって、こんな日は、ぬくぬくとコタツに入ってあったまるにかぎるね。
【フィリア】
「うーん、むにゃむにゃ。」
ふふ、フィリアちゃんも気持ち良さそうに寝ているよ。
え?
貧乏人のボクが、コタツなんか持っているのはおかしいって?
それに、なんでフィリアちゃんがここにいるのかって。
そんなのは簡単だよ。ボクは今フィリアちゃんの部屋にきているんだ。
もちろん眠るまでの間、暖を取りにね。
……とはいえ。
ぎゅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっ
コタツに入ったとたん、フィリアちゃんは熟睡モードに。
そのままボクは抱え込まれて、身動きできなくなっちゃったよ。
【フィリア】
「ふふふ……」
でも、いいか。
こんなかわいい寝顔が間近で見られるんだものね。
ふにふにふにふに
それに、この胸の感触がたまらなくいいね。
【フィリア】
「はたやまくぅーーーーん。」
【ハタヤマ】
「な、なんだい。」
【フィリア】
「ふふっ、むにゃむにゃ。」
なんだ、寝言か。びっくりしたな。
【ハタヤマ】
「でも、夢にまでボクが出てきているんだ。」
どんな夢なのかな。
笑っているから、きっと楽しい夢なんだろうね。
それにしても、こんなところで寝ていると風邪引いちゃうから、そろそろ起こしてあげないとね。
【ハタヤマ】
「フィリアちゃ………」
【フィリア】
「ハタヤマくん……すきっ」
ぎゅむっ
うわわ、フィリアちゃんが力いっぱいボクを胸に押し付けたよ。
ぷにぷに
そのまま、ボクは胸の谷間に挟み込まれて……
ここは天国か?
【フィリア】
「気持ちいいれすかー?」
気持ちいいけど、フィリアちゃん、もしかして本当は起きてない?
【フィリア】
「ふみゃあ。
ハタヤマくぅん……」
ねぇ、起きてるでしょ。
もしかして、ボクを誘ってるのかな。
【ハタヤマ】
「そうとわかれば。
うぉぉぉぉぉぉぉっ。」
シャキーンッ
ふふふ、人間に変身完了。これで、フィリアちゃんの誘いにこたえられるよ。
【フィリア】
「ぱち。」
って、あれ、目が覚めちゃったの?
【フィリア】
「あれぇ。
何でハタヤマくんがいるんれふかぁ?」
……しかも状況が把握できてないみたい。呂律が怪しくなってる。
さっきまでのは本当に寝ぼけてただけみたいだね。ちょっとがっかりだよ。
【ハタヤマ】
「ははは……」
【フィリア】
「ふふふ
わかりましたぁ。これは、夢らんれすねぇ。」
え?
【フィリア】
「じゃあ、せっかくハタヤマ君の夢を見たんらから。」
【ハタヤマ】
「フィリアちゃん?」
寝ぼけたままで、いきなりフィリアちゃんがボクに抱きついてきたよ。
【フィリア】
「わたし、ハタヤマ君の子供が欲しいれす。」
【ハタヤマ】
「え、ええ?」
刺激的なことを言いながら、フィリアちゃんがボクに唇を重ねてくる……
【フィリア】
「…………」
【ハタヤマ】
「…………」
【フィリア】
「きゃっ。
これって……夢じゃなかったんですかぁ」
【ハタヤマ】
「おはよう。フィリアちゃん。」
【フィリア】
「もう、ハタヤマ君、起きてたら言ってくださいよ。」
【ハタヤマ】
「ごめんね。
お詫びに、やさしくキスしてあげるから……」
【フィリア】
「ああん……」
―― 一方、部屋のすぐ外では。
【シルフェ】
「うーん。
おこたに入れてもらいに来たんだけど……
この雰囲気だけであったまっちゃったわ。」
【ビビアン】
「おお、シルフェなのだ。
なあ、シルフェもおねぇちゃんのところへ遊びにいくのか?」
【シルフェ】
「そのつもりだったんだけどね。
中で、ハタヤマ君とらぶらぶな最中なんだ。」
【ビビアン】
「うーん。それでは仕方ないのだ。
シルフェ。ビビアンの部屋で遊ばないか」
【シルフェ】
「うん、行く行く……」
【フィリア】
「……あったかいですね。」
【ハタヤマ】
「そうだね。こうやって抱き合っているとね。」
そとでは、どんどん雪が降り積もっているけど、ボク達にはそんなこと関係なくて。
ボクは、腕の中の愛しいぬくもりを抱きしめているうちに、いつのまにか眠っていた。
……………
【ハタヤマ】
「しまったぁ。遅刻だぁ。」
【フィリア】
「なんだかのどが痛いです。」
【ハタヤマ】
「コタツで眠っちゃったからね。
それよりも急がないと。」
【フィリア】
「はい。」
ばたばたばたばた
【シルフェ】
「あーあ。朝からにぎやかだねぇ。」
【ビビアン】
「そうのだ。
おねぇちゃんが朝からあんなにテンション高いのは、ビビアンも見たことないのだ。」
【シルフェ】
「幸せなんだねぇ。」
【ビビアン】
「幸せのだな。」
【フィリア】
「もう、ハタヤマ君があんなところで寝るのが悪いんですよ。」
【ハタヤマ】
「な、先に寝た上に寝ぼけたのはフィリアちゃんじゃないか。」
【フィリア】
「そんな……ちがいますぅぅぅぅぅぅ。」
【ビビアン】
「うんうん、幸せのだ。」
終わり