書淫
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もうこれ以上、傷つきたくないから。
私は、私を偽る。
彼女は、傷ついた私を慰める。
偽った私を慰める言葉、
それは幻想に向けられた子守り歌に過ぎない。
しかし、
私はそれで満足なのだ。
私は偽りの自分に満足しているのだから。
満足なのだ。
僕はたまらずに少女のもとへ行き、
手を差し伸べるけれど、
少女はまるで空気の様に、
僕の手を素通りしていった。
その時、僕は改めて「これ」が、
夢であったことに気付き、
そして「僕が何もできない」事が、
この世界の「ルール」だとわかった。
結局僕は、
彼女を遠くから眺める事しかできなかった。
少女はその間、
ずっと「ごめんなさい」を繰り返していた。
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失われた夢の物語。