どん底、ID調べ2

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409 ◆Siki.a.U
 私は哀悼だ。
ANGEL TYPEの、彼にふさわしい発売中止を聞いた葱板の人々が示す、
痛心に堪えないほどではなくても、決しておざなりではない哀悼だ。
私は「ああ、あの鬱ゲーが……」と呟き、「ほんと?」と問い返し、「やっぱりなあ」と言う。
そして詩希スレに一度でも書き込んだことがある者は「なんだか寂しくなるなあ」と言い、
ただムービーを繰り返し見ていた者は「ムービーしか更新してなかったものなあ」と言い、
待つことに疲れすぎた者は「悪いけど、ほっとしたような気分だよ」と言う。
しかし笑う者はいない。

 私は尚もつづける。「発売中止になった方がいいような奴はほかにいくらでもあるのになあ」と言い、
「これで葱板一番の鬱スレはここになっちまった」と言い、
「あのゲームは地雷だったのかもしれないぞ」と言い、
「それにしても何という死にざまだ」と言う。

 いずれにせよANGEL TYPEの発売中止は、痛嘆とも痛惜ともあまり縁がない。
しかし、ANGEL TYPEの発売中止ほど数多くのスレの住人を揺さぶり、
同時に得もいわれぬ安らぎを与えた例はおそらく他にないだろう。
私は祭と一緒に葱板を通り過ぎてゆく。
どしゃ降りの雨が目標を失った住人の愁嘆をきれいに洗い流していく。
首吊りが人々の目の奥にこびりついている「また、会えるよね?」という言葉を消してゆく。
私と祭がこの過疎板に残してゆくものはまったく同じだ。

 きょう一日、葱板にもめごとはなかった。