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――――――
「…んくっ、……はぁ」
互いにぎこちないキスの後、炬燵が小さく吐息を漏らす。
まだ数回目のキス。
当然、俺にとっては炬燵が初めてだったが、彼女もまた俺が初めてのようだった。
…いや、そう演技しているのか。
今日もまたオフとして、ふたりで会っている。
もうオフではなく完全なデートなのだが、気恥ずかしさのためか、
いまだにふたりともオフと呼んでいる。
俺は、自分の中のこの気恥ずかしさを、炬燵の正体をあばくための演技だと信じている。
きっと彼女もそうだろう。俺を笑い者にするための演技。
互いに恋人同士を演じている。相手を出し抜くために。
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:01/12/30 14:53 ID:29uQZQzp
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ここはホテルの一室。
男女が体を重ねる、ごくありふれた空間だが、俺には全く縁がなかったところ。
初めてだと悟られないように、つい虚勢を張りつつも、彼女をこの部屋に連れ込んだ。
「本当に俺のことが好きなのか? 好きだったら…」
ホテルに入るのを躊躇していた彼女だが、その言葉を出した途端に俺についてきた。
唇は許せても、さすがに体は許せないだろう。
物珍しそうに、室内を見まわす炬燵(きっとこれも演技なんだろう)を眺めながら、
俺は今夜こそ、彼女を打ち負かせることを確信していた。
こいつの化けの皮をはがして、本音を言わせてやる。
「あんたなんか愛してるわけないじゃない!」、と。
そして彼女は俺の前から姿を消す。ネタにできずに。
彼女にしてみれば、ただネタにしそびれただけだろうが、
俺にとってはそれで充分だ。
つまらない俺でも、そんな簡単には騙されない。それを思い知らせたい。
彼女がシャワーを浴びているあいだ、俺は延々とそんなことを考えていた。
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:01/12/30 14:53 ID:29uQZQzp
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ホテルのキングサイズのベッド。
その上に横たわる炬燵の裸体。
まだ彼女は演技を続けているのか。
ウブな少女を装いながら、彼女は言う。
「あなたのことが…好き…です」
何度も何度も聞かされた言葉。
しらじらしい!
俺なんかと唇を重ねて、そして今、裸までさらして、まだ言うか。
「嘘だ! 俺のことを好きなはずなんかない! いいかげんに本音を言え!」
恥ずかしさから涙をにじませていた彼女の瞳から、大粒の涙がこぼれだす。
悲しみの涙か。
いや、これも演技なのか?
「…本当です。本当に、本当に、好きなんです…。愛しています…」
俺の中で相反する、信じたい想いと、騙されるなという警鐘。
感情が激しく乱れている。
嬉しいのか、哀しいのか、怒りを感じているのか。
いつも鬱めいた気持ちの自分にとって、初めての感情だった。
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:01/12/30 14:53 ID:29uQZQzp
気がつくと、彼女の肢体をむさぼっていた。
唇に舌を押し入れ、肩に歯を立て、乳房を揉みしだいた。
蹂躙する俺に耐え、受け入れようとしている炬燵。
固く閉じた秘部に、屹立したものを、割り入れようとした。
うまく入らない。手を添え、何とか彼女に押し込もうとする。
先端が入り込んだ。
「…ひっ!」
炬燵が苦痛の声をあげるのにもかまわず、そのまま中に入り込もうとする。
何度目かに力を入れたとき、炬燵の中の何かを破り抜いた。
「………っ!!!」
声にならない叫び。
それを聞いても、俺の中の感情の嵐はおさまらない。
壊れた機械のように腰を動かす俺。
炬燵は、何を言おうとしているのか、何度も口をぱくぱくさせて息を吐いている。
俺の頭のてっぺんに奇妙な感覚が走る。これがセックスの快感なのか。
1分と持たなかったと思う。
脳に昇ってくる奇妙な感覚が、とうとう突き抜けたような気がした瞬間、俺は射精していた。
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:01/12/30 14:54 ID:29uQZQzp
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…感情の嵐はやんでいた。
代わって、不思議な満足感と、いくらかの後悔の念。
俺は炬燵の体内に射精してしまった。
避妊なんかしていなかった。
生で中に精液を出してしまった。
俺の無数の精子が炬燵の体に入り込み、奥に染み込んでいく。
妊娠してしまうかもしれない。
炬燵は、さんざん荒れ狂った俺を受け入れて、まだ苦しそうにしているのに、
そっと優しく俺を抱きしめた。
「…良かった…ですか?」
炬燵の目にはまだ涙があふれている。