中部圏氏の「なんで限定にするのか」という質問に対して、
いちメーカー人としての見解。
結論から言えば煽って売るためでしょう。
煽らないと売れないかどうかはわかりませんが、煽ると売れるという現状がある以上、
継続して販売することの利益と、初回出荷数を多く出来ることの利益を天秤にかけ、
後者のが上回ると判断されれば限定販売となるわけです。
仮に限定にしなかったとしても、エロゲの出荷数は発売前後がピークで、
その後は急激に落ち込みます。
メーカーにとってみれば、継続して出荷することのメリットはあまり無いのですよ。
いつまでもサポートを続けないといけないし、
問屋から数本単位で来る発注に延々とこたえていかなければいけないし、
販売できる商品を保持していれば税金も発生するし、
限定ってわけじゃなくても、早々にロットアップしてしまったほうが都合良いのです。
で、どうせすぐにロットアップしてしまうなら、いっそ限定にしてしまおうかっていう
結論を出してくるメーカーも出てきても仕方ないでしょう。
最近はショップの受注時に数が確保できないってのがままあるようですが、
これは純粋にメーカーの計算ミスでしょう。
メーカーとしては一本でも多く売りたいのが本音ですから。
CDはプレスすれば簡単に出来ますが、それ以外(特典やパッケージ等)はそうはいきません。
そうなると、一番生産時間がかかるものの締め切りに全体をあわせないといけません。
結果として生産本数の決定が一月半前とか二月前とか、早めになってしまいます。
しかし、ショップからの受注というのは直前にならないと集まってきません。
仕方が無いので、メーカーは見込み販売数で生産するしかなくなるのです。
すると、発売直前で人気が集中したようなソフトは完全に計算が狂ってしまいます。
メーカー的にはパッケージからマニュアルから全部含めて作品ですので、
そりゃDVDパッケに紙ペラ一枚のマニュアルにすれば、2,3週間で作ることができるのはわかりますが、
でも、これるところはこって、できるだけ作品の価値を高めたいと思うわけです。
宝石を宝石箱に入れたり、絵画を額縁に入れるようなものです。
また、これは「なぜ煽ると売れるのか」というのにもつながってくるのですが、
マニア層の人は、自分は他と違うという意識をもちたがります。
ですから、限定だぞ、もう手に入らないぞ、と煽ることが、マニア心をくすぐって、
購買に走らせているのではないかと思います。
同じように、初回限定版豪華パッケージ、と銘打つことによって、
どうせ買うなら初回だよね、俺、並んで買ったんだぜ、のような虚栄心を刺激して、
ユーザを購買に走らせているのではないでしょうか。
メーカは経営基盤が弱いところが多く、一本でもおおゴケすればそのまま会社ごとあぼーんされかねません。
一円でも収益を多くあげるために営業部門が考えた戦略が限定と言えるでしょう。
開発としては複雑な心境ではありますが、営業が頑張ったおかげで飯が食えると思えば、
必要悪として納得せざるを得ないかなと思っています。
また、前述二番目の、メーカー生産数の予測ミスについては、製造担当者を小一時間問い詰めたいですが、
とはいえ作品の質の向上のためには仕方ないかなと思っています。