玄関の前には1人取り残されたような子鈴さんがポツンと立っていた。
僕ら2人のやり取りを見ていただろう、控えめに呟く。
子鈴「あの……時田さん、ご迷惑でしょうか………?」
ノーマ「もうリムジン行ってしもた。一也はウチら2人、このあっつい中待っとけ言うんか?」
一也「あー………。」
どうしよう……確かにこの猛暑の中に2人を放り出すのは気が引ける。
喫茶店かどこかで時間潰せばいいのでは……なんて考えもふと頭をかすめたが、
「喫茶店行ってきて」なんて言えるほどあつかましくもない……まして、このノーマに。
「ね――――、ちょっと来て―――――っ」
頭を悩ませていると、家の奥から僕を呼ぶ声が聞こえてきた。
あの声はいつみだな……。
ノーマ「ん?誰か呼んでるで?」
一也「あ、あぁ………ちょっと待っててくれる?」
僕は玄関先でそう言うと、ブランデーの入った小包を靴入れの上に置いて、
廊下の奥の洗面所に向かった。
洗面所に入った僕の目に飛び込んできたのは、乾燥機と格闘しているいつみの姿だった。
いつみ「あ、ねぇ、これどうやったらいいの?このボタン押しちゃっていいのかなぁ?」
一也「………。」
僕は無言で乾燥機を動かした。ブゥゥゥゥ……と中の衣服が(下着だけだが)まわり出す。
いつみ「あ、なーんだ。やっぱそれ押したら良かったんだぁ。」
一也「っていうかボタンこれしかないだろ……。」
いつみ「いやー、人様の家のもの勝手にいじって壊しちゃったらヤバイじゃん?」
えらくまともな意見だ。
いつみらしくないと思いながらも最もな考えに僕は素直に感心した。
一也「じゃ、止まったら開けていいから。」
いつみ「あ、ちょっと待ってよぉ!」
そのままノーマ達を待たせてある玄関先に向かおうとした僕の腕をいつみが掴んだ。
早くノーマ達と話しをつけたい僕は内心焦りながら、いつみに向き直る。
一也「何?人待たせたままだから、話は後で聞く…」
続くぞコノヤロー ダアアァァァァ――――――ッ