俺は同居人になる予定の名雪と待ち合わせていたのだが、思ったより早く待ち合わせの
場所についてしまった。そこで小腹もすいていたのでので吉野家へ行った。
客は小学生だけ。だが、俺と一緒に、学生と警官
>>1も入ってきた。
俺は席についた。 そして、並を注文して食べていた。
前の席の学生と警官
>>1が、辛そうな顔をして小学生を見ている。
俺は小学生が嫌なだけと思っていた。
小学生も並とたっぷり醤油をかけた玉子を食べていた。が、何かがおかしい。
黒い白身が口からダラリ出ている。……何度も、醤油で黒くなった白身を口から出してはごはんに掛けて……。と思っていたが……玉子の器が無くタイヤキの皮の山が。
しかも、小学生からは時折、「うぐゥ」と聞こえる。
そう、紛れも無く、タイヤキのアンコをメシに掛けながら食べていたのだったすると、悲壮な顔で小学生の凶行を見ていた警官
>>1が、白目を剥いて
「うぐわーっ」と悲鳴を挙げた。
すぐさま、ホルスターの拳銃を抜き、学生と吉野家の店員を
射殺した。それはあまりに早過ぎる光景だった。
そして、警官
>>1も己の頭を撃ち抜いた……。
硝煙と血の臭いが漂う中、小学生は変わらずあんこをぶっかけながら食っている。
俺は金縛りのように動けなかった。だが、小学生は顔を上げて言った。
「うぐゥ、あれ祐一くん、感動の再会だね〜 7年ぶりの再会だよ〜
でも、こんなボクを見たからには、もうボクのことは忘れてください」
「え、お前?もしかしてこの町で出会ったあゆなのか?」
昔の友達との予想もつかない再会の仕方に戸惑いながらも目の前の恐怖に
失禁している俺がいた。おぞましい悪臭のする湯気が立つ。
俺は死ぬのか? あんこ飯を食っているあゆを見ただけで……
俺は警官の屍から拳銃を奪い、撃鉄を倒して銃口をあゆに向けた。
あゆは不敵に笑う。「うぐゥ、あんこ飯、美味いよ〜……」
拳銃を握る手が震える。己を撃つべきなのか、それとも、あゆを……。
俺の頭の中で二者択一が輪舞曲のように回り続ける。そして……
乾いた銃声が、吉野家の中に響いた。
その頃、祐一に約束をすっぽかされた形になった名雪はため息まじりに
「うそつき」
雪が降り始めていた。
〜「Kanon」 Fin〜