部屋に上がると暗闇の中、奴の背中が見える。
奴の背中は広くて大きい。
俺が手に下げたコンビニのビニール袋のさらさらという音を立てると
それに気付いて、俺の手から貰うダチ。
中には缶ビールやらチューハイやら、酒の類が入っている。
冷たい缶の回りには水滴が滴っている、それが廊下に落ちる。
手渡しした瞬間に手が触れてしまったが、奴は気が付かなかった様だ。
俺は靴を脱いで中に、入る。
こんな事があった。
バイト先で俺がミスってしまった時に、
ダチは真っ先に店長に頭を下げてくれた。
お陰で俺はまだそのバイト先に居続ける事が出来る。
あの時の必死な横顔と声は、今でも脳裏に焼き付いて離れる事が無い。