どういうのが好みなんだ、と母ちゃんに聞いてみた。
母ちゃんはお絞りで手を拭きながらのんびりと、そうだな、と答えた。
黒のVネックから白い首が伸びている。
首元には鎖骨が見える。
俺は母ちゃんの手元を眺めると、さっきの出来事を脳内に思い浮かべた。
触れた感触が拭われてしまうのが何だか勿体無いような気がする。
俺は少し黙って、冷たい水を一口呷った。
さっきの店員、結構可愛くなかったか、と俺は言ってみた。
母ちゃんは店の奥の方に目をやって、彼女、と聞いてきた。
それから店内を見渡して、俺はああいうのが好きだな、と答える。
母ちゃんの視線の先を辿ると、少し遠くの席に、黒髪ロングの女性が居た。
顔立ちがきりっとしていて芯が強く、和服が似合いそうな美人だ。
丁度もう一人の女の友達と、食事を愉しんでいる最中である。
俺は、ふうん。と答えた。