母親が他人に犯される 漫画・小説 #10

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153密林 ◆S6jQVLURcw
ジェイ、雌を欲す(1/4)

その獣は、己がこの島の支配者であると信じて生きてきた。

自分たちの一族が、いつからこの世界に棲んでいるのかは良く分からない。
父親も母親も、そのことについては教えてくれなかったからだ。
自分たちがこの限られた世界で、どの動物よりも賢いこと。
敏捷さや獰猛さで自分たちに勝る動物もいるが、自分たちは道具と火を作ることが出来ること。
そして、言葉というものも使えること。
そして、自分の名前が「ジェイ」であると、獣は両親から教えられた。
ここは外界から遮断された島という世界であり、その外に別の世界があることも、ジェイは知っている。

もともと、自分の母親も外界に生きていた。
この島で父に奪われ、やがて自分を産んだのだという。
そういう方法で、彼らの一族は血を受け継いできたのだ。
だから、自分もいつか、自分の仔を産む雌を手に入れなくてはならない。
そのことも、ジェイは自分の仕事なのだと理解していた。
この島の王者であり続けるために。

ある時、強かった父は、狩りの最中に大きな怪我を負い、それがもとで死んだ。
母親もやがてその後を追うように死んでしまった。
それから、ジェイはひとりきりになった。しかし、生きる術は知っている。
ジェイはたった一人、この島の密林の最奥に棲息し、生きてきた。
そう。あの日、外の世界からの船が、入り江に入り込んでくるまでは。