小説書いてみたい奴と読みたい奴のスレ〜第15章〜

このエントリーをはてなブックマークに追加
79猿でも書けるエロ本教室 ◆fDszcniTtk
告白を蹴られ、2人きりの部室で一度として異性として扱われなかった一郎は、そういう毅然とした態度への敬意
として、最後は久子を女としてみないことにしたのだ。結果、彼女が卒業して4年、一郎が卒業して3年になるが、
未だに酒を飲みながら文学から映画、漫画まで文芸論を肴にアーダコーダとおしゃべりをする間柄が続いている。
「こりゃ参ったね。お姉さん降参だよ。」
ぜんぜん参ってない表情で笑いながらコップを持ち上げる。
「乾杯」
「乾杯」
「お、このカマンベールおいしい」
「パンにハムといっしょにはさむと結構いけます」
「ちょ、もったいなくない?あと、家のかぎ閉めたほうがいいですよ。」
「先輩が来るから開けといたんですよ」
「ひゃう」
二人の会話はたいていこんな感じだ。久子の地でもあるのだろうが、さばさばしすぎていて色っぽい話にはなり
にくい。今となってはどうしてあれほど久子に恋焦がれたのか思い出すのも難しい。
「そんで、どういうエロ本書いてるの?」
久子が水を向けてきた。
「そう、それなんですがね。ぜんぜん決めてません」
「決めてませんって、書いているじゃない」
スクリーンに出ているシーンは、まさにそのものだ。ぱっと見たところ、将ニ少女ノ貞操ヲ奪ワントス、といった
場面だ。
「ええ、ためしにいろいろ書いているんです」
「いろいろ?そんなにエロ本書いてるの?」
カマンベールから持参のつまみに移った久子が、ゲソを咥えたまま呆れ顔をする。
「いえ、いろいろ書いているのはシチュエーションです」
「シチュエーション」
「そうです。各種のシチュエーションを網羅的に書いてみて、どのようなシチュエーションが最も良いか、考察
しているんです」
「ああ、そうだった。田中君は粘着質だったね」
「緻密だと言ってください」
二人で爆笑する。