小説書いてみたい奴と読みたい奴のスレ〜第15章〜

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220猿でも書けるエロ本教室 ◆fDszcniTtk
しばらくは二人とも黙ったままちびちびとワインを舐めていた。本来文学の世界は人体改造くらいでがたがた騒いでいては
身が持たないほど幅が広い。だが、考えてみると文芸部にいたときから久子がグロテスクな表現の本を読んでいるのを見た
ことがない。久子には刺激が強すぎたようだった。
「で、ほかにどんなジャンルがあるの?」
「え、もう止めようって言いましたよね」
「陵辱ジャンルはね。話は続けてよ」
「そうですか」
あきれた顔を見せながら、一郎のほうはやや残念と言うのが本心である。久子がへこむところなどはじめてみたのだ。
曲がりなりにも昔は久子に胸をときめかせていたのだ。おー、なかなかかわいいななどと思っていただけに、あっさり立ち
直られるとつまらない。
「わかりました。陵辱以外のジャンルだと、学園物とか、サラリーマン官能小説とか、痴漢ものとか、いろいろありますね。
これらを書くときに重視すべき点は、和姦だということです」
「学園陵辱物はどうなるの?」
「突っ込んでくると思いましたよ。分類が完璧で無い事は認めますが、学園陵辱物は、学園主体の陵辱ではないんです。
陵辱と言うヒロインの意思を無視する枠組みがあって、その中でヒロインに恥辱を与えるためスパイスとして学園がある」
「ふーん、じゃぁ田中君の言う学園物は本当は和姦学園物じゃないの?」
「あー、まぁそれでもいいんですけどね、和姦の場合は事前の精神的な動きがジャンル毎に大きく変わるので別ジャンル
としてくくったほうが、私は理解しやすいってだけです」
「たとえば?」
「学園を舞台としたサラリーマン官能小説ってのもあります」
「学園物じゃなくて?」
「人によって学園物と分類する人もいるでしょう。しかし、学園を舞台としたサラリーマン官能小説の場合、学校だからと
いう禁忌性は極端には強調されないんです。あくまでモテモテ主人公の話です。」
「うーん、わかりにくい」
「教師が主人公の学園ものは、生徒、あるいは教師同士の恋という禁忌性を書く事で、セックスの背徳性を際立たせます。」
「あ、そこ重要な気がする」
「セックスの背徳性はジャンルわけの重要なキーです。どういう背徳性がどのくらいあるかを明らかにする事で、読者に与える
カタルシスの方向付けをします」
221猿でも書けるエロ本教室 ◆fDszcniTtk :2008/05/16(金) 20:32:46 ID:frYh2TmG
「ふむ。でも、和姦の場合は合意だから背徳性がないんじゃない?」
「それはそれで面白い話なんですが、論文を書きたいわけじゃないんで。ただ、どんなエロ本でも、超えてはいけない
一線を超えるからこそ、エロが引き立つんです。」
「そうかなぁ。たとえば?」
「ヒロインと主人公が同級生の場合、二人が恋仲になれば後は和姦です。で、このまま二人であっさりセックスをしても
いいんですが、ヒロインがためらうと話がぐっと盛り上がります。『だって、私たちまだ高校生なのに』」
「いまどきいるかね、そんな純真な子」
「男はいてほしいと思ってますよ。そういう、堅い子が、最後には意を決して自分のために肌を許してほしい。」
「恥じらいながら」
「そうです。恥じらいも背徳感の原動力です。」
「そうかぁ?」
「肌を見せる事は恥ずかしいことだと言う、規範があるからこそ、裸になる事に恥じらいがあり、肌を許すことに恥じらい
が出ます。」
「う〜ん」
「学園の場合、その背徳性の中に強い定型性が有ります。ある意味話が限定されるのですが、描かれるパターンの背徳性は
純度が高い。先生との恋なんてとんでもない。先輩に手を出すなんてとんでもない。後輩に手を出すなんてとんでもない。」
「わかるわかる。私の後輩にもしつこくアタックしてきたとんでもない子がいたよ。」
「…」
「まぁ、かわいいんだけどね。年上ヒロインが母性愛をくすぐられるのもわかるよ」
「…」
「さぁ、続き行こう!」
「…学園物は背徳性の純度が高いという話をしました。その理由に記号性を挙げる事もできます。」
「たとえば?」
「勝手なもので、男は音楽の先生と聞いただけで育ちが良く、品のいい先生を思い浮かべます。」
「フリルの付いたブラウスだ」
「そう。美術の先生なら、繊細な観察眼を持った静かな先生。保険医は白衣で生徒の話を聞いてくれる。古典の
先生は純潔で…」
「英語の先生はお堅いね」
222猿でも書けるエロ本教室 ◆fDszcniTtk :2008/05/16(金) 20:34:48 ID:frYh2TmG
「インテリのイメージですね。数学も同様ですが、若干ベクトルが違う。学園の先輩も同じです。生徒会長、生徒会の書記、
図書委員、バレー部の部長、それぞれに好ましい意味での勝手なイメージが付いてきます。それをてこにしたキャラクター
付けを行いやすい。あとは、それぞれのキャラクターに基づいて、セックスへの抵抗感を書いてやれば十分です」
「ふーん、同級生とか下級生も同じなの?」
「同級生の場合は、ヒロインと主人公双方の立場が近いので、高揚感や背徳感を二人の共通のものとして描けますね。
下級生だと、ヒロインがやや引きずられる感じになりますが」
「ちょっと痛々しいかな、学園で年下ものだと。あとはどんなジャンルがあるの?」
「エロ本のジャンルはうんざりするほど有りますが、大きなジャンルとして不倫と近親相姦は無視できません」
「不倫と近親相姦かぁ。もろに背徳だね。」
「はい。不倫のすばらしいところは、性的に完全に成熟したヒロインに少女のようなためらいを演じさせることができる点です。」
「なるほど。そうだ。慎み深い独身女性より、慎み深い人妻のほうが熟れた体ってイメージがあるね。」
「読者がそうイメージしてくれるのは心強いですよ。不倫エロ本にはもうひとつ面白い特徴があります。主人公のライバルが
はっきりしてることです」
「旦那だ」
「もちろん、ヒロインの夫は二人の関係を気づいていないのですが、主人公は彼を強烈に意識します。たとえば、ヒロインの
夫も知らない性感帯をみつけてやろうとか、見つからないようにこっそりキスマークをつけてやりたいとか」
「おいおい」
「ヒロインは困りますけどね。で、最後に射精をどうするかってところも押さえたいところです」
「確かに、それは夫以外にやすやすと許しちゃねぇ。そもそも肌だって許しちゃいけないんだけど。」
「そういう、ヒロインが何とか守っている一線のところで、二人の葛藤を描いてもおもしろいです」
「射精と言えばさ、近親相姦はやばいんじゃない?」
「最近のエロ本はめちゃめちゃですよ。好みの問題で僕は近親相姦は書きませんけど。書くとしたら血のつながりの無い
話になるでしょうね。」
「それなら安心だ。でも血のつながりがないなら背徳感はどうなるのよ」