母親が他人に犯される 漫画・小説 #4

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392タイトル考案中 仮@
「あの、母を……母を見ませんでしたか?先程まであなた方を先導していた女性を」
 エムゥは流民たちに尋ねて回る。しかし、彼らは疲れ切った表情で教団からの
配給を食むのみでそれどころではない様子だ。
 エムゥは天を仰ぐ。数年ぶりに、奇跡のような偶然で母と再会できたのに、
母はまた姿を消してしまった。
 抱擁と涙の余韻はまだこの体にはっきりと残っている。国同士の戦が続き、
人が互いに傷つけあう時代に、心の置き所を無くしかけていた自分を
「あなたが求める物を探しなさい。神は必ず見て下さってるわ」と送り出して
くれた母。渡された金は底をつき、やっと辿り着いたこの岩の谷の村で、
求める物に通ずる教えを得たのも、そして幼いながら谷を守る衛兵のような
役目を頂いたのも、すべて母のおかげだと思っている。
 母がここに来た以上、故郷はやはり戦火に巻き込まれたのだろう。だが、
流民となった者たちを救うため、地位や財産を捨てて、襤褸を纏いこの地に
現れた母はやはり、凛として美しかった。
「ああ、若い方……」
 声のした方向をエムゥは見る。老女が弱々しく、しかししっかりとエムゥを
見つめながら言った。
「あなたの探してる女性は、さっきここの教団の方たちと共にどこかへ向かいました」
 老女はやがて、手を合わせ涙を流し始めた。
「あの女性がいなければ私たちは、きっと野垂れ死にしていた事でしょう。まるで聖母のような働きで……」
 言葉はやがて嗚咽と祈りに変わった。エムゥは老女に深く頭を下げ、同じ
ように祈りを捧げながら老女の指先が向けられた道に歩み出す。
 ああ、やはり感謝しても感謝し尽くす事はない。ならば母と心ゆくまで語り
合いたい。互いのこれまでの苦難、揺るぎない信仰への思い、そして誰もが
争いなく平等であれと諭す、この村の教えを。