新・小説書いてる煩悩深き人達の集い Part11

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872名無しさん@ピンキー
語り:館 淳一(SM作家・不肖の弟子)


師はまことマスター・オブ・ベイションの人であった。これな
かりせば数々の傑作は世に生まれなかったであろう。しかし、ぼく同様多くの編
集者が悩まされたのもこの嗜癖にである。
しかも師は、自分の嗜癖を決して恥じるということがなかった。一度、桜田門
のお咎めを受けて出頭を命じられた時も、係官の尋問に答えて堂々とマスター・
オブ・ベイション談義をしてきたという。
何しろ、ノってくるとオナってしまうのである。当然パワーダウンする。それ
を押して無理やり書きすすめるとまたノってくる。またオナる。おびただしい精
液が消費されて、ようやく作品が完成するのであった。
ところが、特に名を秘す某『別冊SMスナイパー』という雑誌が、ある時若手
作家、イラトレーター、ライターなどを集めて、既成の雑誌や作家を糾弾する座
談会をやったことがある。
この中で彼らが「蘭光生は、オナニーしながら書くって言ってるけど、そんな
こと出来るわけないじゃん」「そうだそうだ。締切に追われてる時に立つわけな
いじゃん」なんてことを小賢しくほざいたものだから、師は烈火のごとく怒られ
た。(師はとにかく烈火のごとく怒る人であったが、この時の怒りは実にすさま
じいものであった)。
「たわけ者めらが……! そんな奴らがのさばっている雑誌には、もう書かん!

この座談会に出席した「若手」の連中は、「オナニーしつつ作品を書く」とい
う作家が存在するということを信じられなかったのである。「締切だろが何だろ
うが、ノってきたらオナっちゃう」という作家が存在することを想像だに出来な
かったのである。何と心貧しき者たちよ。師はそんな連中がSMの世界ででかい
顔をするのが許されなかったのだ。
蘭光生亡き後、狂乱怒濤の描写で読者を圧倒するSM作家が出てこないのも道
理である。