小説書いてみたい奴と読みたい奴のスレ〜第7章〜

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684ぽちっとな ◆syZj9li40Y
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沙有里が氷高によって、女としての快楽の頂点を味あわされている頃…。

まだ諦めきれずに例のテープを探していた和也の携帯に着信が入った。
「ん、さ、沙有里からか!?」
慌てて携帯の表示窓を覗き込んだ和也であったが、そこに表示されている見知った名前を確認するとがっくりと肩を落とした。

「もしもしぃ」
和也が明らかに不満げな声を隠そうともせずに電話に出る。
「あ、和也?あたし、お姉ちゃんだけど…ごめん、寝てた?」
「いや、起きてたけど…なに?」
「んー今ね、外で理沙と飲んでたんだけど…カードの入ったバッグ忘れちゃって…」
理沙というのは結花の中学時代からの親友であり、氷高の美人の彼女だ…。
(あ、いや、もう元カノってことか…)
先ほど氷高から聞かされた話を思い出し、自身の心情も重なり、思わず氷高に同情してしまう。

「…ねえ、和也、聞いてる!?」
「あ、あぁ、聞いてるよ!」
「うん、でさぁ、悪いんだけどそのバッグを持ってきて欲しいんだけど…」
「へっ!?」
「カードがあると思って買い物しすぎちゃって、お金払えないのよぉぉぉ〜…助けて〜」
「理沙さんに借りればいいじゃん」
「…二人合わせても足りないの…。お願い、悪いけど持ってきてッ!あ、持って来てくれたら理沙がちゅーしてくれるって!」
「ゆ、結花ッ!ちょ、ちょっとぉ…!」
隣から姉とは対照的な可愛い声が聞こえる。
恐らく理沙が否定しているのだろう。
685ぽちっとな ◆syZj9li40Y :05/01/08 19:19:18

「ああ、もうわかったから、で、バッグはどこにあるの?」
「きゃー、和ちゃんカッコイイ!えーと、バッグはね、あたしの部屋の鏡台の下に置いてあるうちの茶色いやつ!あたしバッグ買い換えて、嬉しくて新しい方持ってきちゃってさぁ…」
結花がいつものように早口でまくしたてる。
「お店は二駅先の…そう、駅の近くのカフェバーなんだけど…そう、その店!うん、場所大丈夫だよね。じゃ、なるべく早くね〜」
「はいはい…」
電話を切ろうとすると最後に結花が一言添えてきた。
「あ、和也ぁ!理沙がね、ほっぺか、舌を入れなければ唇でもいいって!じゃね!」

プチッ
「…ふぅ」
姉のマシンガントークから解放され、思わず溜息をもらす。
とはいえ、沙有里の外泊の件で落ち込んでいた和也の心をほんの少しでも紛らわせてくれたのは確かだ。
「…さて、じゃあバッグを探してくるか…」
気分転換のためにわざと声に出して呟いてから、ゆっくりと腰を上げ、姉の部屋に向かった。
686ぽちっとな ◆syZj9li40Y :05/01/08 19:20:15
和也が結花の部屋の扉を開けるのは久しぶりだった。
最近では沙有里がその部屋に同居しているため、なおさら近づけない部屋である。

部屋に入ると若い女性特有の甘酸っぱい香りと、良く整頓された室内、そして片隅に集められた沙有里の荷物を見て、思わずうっとりしてしまう。
「えーと、鏡台、鏡台…あ、あれか」
鏡台の下を覗くと、茶色いバッグがひとつだけ置かれていた。
(何だ、茶色いバッグも何も、ひとつしか置いてないじゃん。姉ちゃんめ、理沙さんの前で見得張りやがったな…)
一応中を確認すると、確かに財布があり、中にはクレジットカードが何枚か入っていた。
「さて、じゃあとっとと行くとするか…」
和也がまた独り言を言って立ち上がったとき…
沙有里の荷物の中からふと気になる物が視界に飛び込んできた。

「…あれ?」
チャックが開いた沙有里の大きなバッグ。
その中をよく見てみると、予備校の本に混じってビデオテープが1本だけ入っていた。
(もしかして…)
自分の探していたテープかと思って手に取ってみるが、どうやら違ったようだ。
しかしラベルも貼っていなければ、ケースにも入っていない。
几帳面な沙有里らしからぬその状態が気になり、和也は思わずそのテープを持ち出してしまった…。
687ぽちっとな ◆syZj9li40Y :05/01/08 19:20:57

自分の部屋に戻ると、いそいそとビデオデッキにテープを入れる。
(…きっとこっちに来てから録画したテレビ番組か何かだよな…)
少し緊張しながらリモコンの再生ボタンを押すと、ほんの少しのノイズ画面の後に、観たことのある画面が映り出された。

(…あれ、これって…?)
旅行先の山の景色、そして沙有里の満面の笑顔…。
そう、それは、和也がずっと探していたあのテープの内容そのものだった。
慌てて停止ボタンを押して、テープを抜き出してみる。
(やっぱりオレのとは違うよな…沙有里がダビングしたってことか…?)

あれこれ考えていると、また携帯が鳴った。
「もしもし、和也?バッグは見つかった?」
「あ、う、うん。今見つけたとこ」
「余計なトコ、詮索したりしてないでしょーね?」
「し、してねーよ!それとも見られるとマズイものでもあんのかよ!?」
「あ、あるわけないじゃない!そ、それより、急がないと終電なくなっちゃうから、そろそろ出発してね!理沙も久しぶりに会いたいって待ってるよ〜」
「はーい、今出るから!んじゃね!」

テープのせいで、すっかり姉からの用事を忘れてしまっていたのに気付き、慌てて身支度をする。
しかしテープのことも気になり、とりあえず巻き戻し、もう一台のデッキに生テープを入れると、急いでダビングをかけたまま家を出た。

そのテープの本当の内容など想像もしないままに…。
688ぽちっとな ◆syZj9li40Y :05/01/08 19:22:52
-16-

「ふぅ、やっと着いたよ…」
和也がカフェバーに着いた時はもう深夜12時近かった。
高校生である和也が店内にひとりで入るのは少しだけ勇気が必要だったが、幸い店に入るとすぐに結花と理沙が見つけてくれた。
「あ、きたきた!」
結花と理沙が二人して手招きして和也を呼んでいる。
少しはにかみながら彼女たちの席に向かう和也と、対照的に周囲でがっかりという反応が起こる。
「チッ、やっぱ男付きかよ」
「あんなイイ女二人が男抜きなんて変だと思ったぜ…」
そんな声が嫌でも耳に入り、少しだけ優越感に浸りながら、和也が美女たちの席に着いた。

実の姉と女子バスケ部のセンパイという二人の女子大生に囲まれた酒の席。
理沙は当然のこととして、姉の結花も客観的にみればかなりの美人…らしい。
そして結花も理沙も和也のひとつ年上で、氷高と同い年にあたる。

理沙は真面目で大人しい性格だが、女子バスケ部の副キャプテンに選ばれるほど芯は強かった。
氷高との付き合いも理沙の方から告白したと聞いている。
長いサラサラの髪にアイドル顔負けの正統派美少女の理沙と、
ひょうきんでそれでいてルックスも良くスポーツも万能だった氷高のカップルは学校の誰もが羨む理想のカップルだった。

そしてボーイッシュで何事にも明るく積極的な姉の結花。
誰かと付き合っていたという話は聞いたことがないが、去年までは和也の元へひっきりなしに姉を紹介しろという男子たちが訪れていたものだ。

689ぽちっとな ◆syZj9li40Y :05/01/08 19:23:56
「はい、おまたせ」
姉の隣に座りながら、和也がぶっきらぼうにバッグを渡す。
「ありがとう、和也ぁ!助かったわ〜」
酔っているのか、結花が大げさに喜びながら和也に抱きついてくる。
周囲の、特に理沙の視線が気になり、慌ててそれを振りほどく和也。
「やーめーろって!あ、り、理沙さん、お久しぶりです」
「久しぶりねぇ、和也くん。ますますカッコよくなっちゃって〜。なんか飲むぅ?」
理沙がおっとりした口調で和也に話しかけながら、ドリンクのメニューを渡した。
「んー、じゃ、とりあえずビールで」
「とりあえずって、どこのおっさんじゃ、おまいは」
結花がメニューの角で和也を叩きながら突っ込みを入れる。
「おいおい、突っ込むんならそこんとこじゃなくて、ビール飲むことにだろ?」
「んー、いいって、いいって!バッグ持って来てくれたお礼ってことであたしが許すぅ!」
…結花は思った以上に酔っ払っているようだ。

「あ、そ、そういえば、さっき沙有里から連絡があってさ…」
結花が酔っていることをチャンスとみて、いずれ話さなくてはならない沙有里の外泊の件を切り出す和也。
「あー、あたしの携帯にもメールあったよ。予備校の友達のとこに泊まるんでしょ?」
「あ、う、うん…」
「オ・ト・コだったりして…あ、和也心配なんでしょ!?」
「そ、そんなんじゃねーよ!」
「あはは、照れてる、照れてるぅ!」
「ねえねえ、誰、その沙有里ちゃんって?和也くんの彼女?」
理沙も話に乗ってくる。
和也が必死にただの従妹だと説明するが、年上の女性二人にかかっては沙有里への恋心はバレたも同然であった…。
690ぽちっとな ◆syZj9li40Y :05/01/08 19:25:27
「そういえば和也、あんた沙有里ちゃんの予備校に知り合いの先輩っている?」
「え、わかんない…オレの知ってる範囲ではいないと思うけど?でもなんで?」
「んー?ほら、沙有里ちゃん、あれだけの可愛さじゃない。周りの男がほっとかなくてしつこかったらしいのよ。
 でもその和也の先輩が守ってくれてるらしくてね」
「ふーん…そ、そうなんだ…」
「あ〜、和也くん動揺してる〜」
「ち、違いますってば、理沙さん!」
「和也、ホントに知らないの?沙有里ちゃんの話では和也も知ってそうな口ぶりだったけど…。
 そうじゃなかったら沙有里ちゃんも気を許さないだろうしねェ…」
「予備校に通ってるセンパイって言われてもなぁ…わかんねーよ」
(まさかそいつが沙有里と外泊してる相手なのか!?くそっ、誰だよ、いったい…!)

その先輩とは当然氷高のことであるのだが…。
予備校生であるという条件が、逆に和也の思考から現役の大学生である氷高を完全に除外してしまっていた。
まさか現役大学生が、夏休みの間だけ予備校に通って予備校生のフリをするとは、和也でなくとも思いもよらないことであろう…。

691ぽちっとな ◆syZj9li40Y :05/01/08 19:27:34
「と、ところで姉ちゃんたち、いつもこんな高そうなとこで飲んでるの?」
動揺を振り払うように和也が話題を変えると、ふいに二人の表情が曇った。

「んーん、今日はちょっと特別に…ね。私が理沙を誘ったの」
「ごめんね、和也くんまで付き合わせちゃって…でもなんか嬉しいな」
理沙がおっとりした口調で、それでいて妖艶さをにじませて和也の目を見つめながら微笑んだ。
「いや、オレなんかで役に立てるならどこへでも駆けつけますよ!」
「えへへ、和也くんは昔から優しいね。わたし、和也くんみたいな人と付き合えばよかった…」
「ちょ、ちょっと理沙ッ!?」
うっすら涙を浮かべて和也の手を握る理沙が、結花の心配そうな声をよそに、なおも言葉を続ける。
「わたしね、氷高くんに振られちゃったの…」
そういえば…。
楽しい雰囲気に気を取られて忘れていたが、氷高との電話の言葉を思い出していた。
理沙に他の男ができて、ずっと前に二人は破局したと氷高は言っていたが…。

「えっ、でも、振られたって…理沙さんが振ったんじゃ…?」
思わず口にしてしまった和也。
「そんな、わたしが氷高くんを振るなんて…でも、もっと早くそうできてたらどんなに楽だったかな…」
俯いた理沙の顔からテーブルに涙の雫が落ちる…。
「……理沙」
結花も理沙にかける言葉がみつからず、そっと手を握るしかできなかった。
「氷高くんの誕生日プレゼントも用意してたのに…無駄になっちゃった…」
理沙が目に涙を溜めて、悲しそうに呟く。
それは思わず抱きしめてしまいたくなるほど、儚げで健気な可憐さだった。
「そういえば和也くんと氷高くんって同じ誕生日だったよね…。えへへ、代わりにあげよっか?」
そう言って無理に笑顔を作る理沙。
その芯の強さが、今は逆に可憐さを引き立たせていた…。
692ぽちっとな ◆syZj9li40Y :05/01/08 19:28:14

「…でもあんなに仲が良かったのに、どうして突然…」
「ううん、突然ってわけでもないの…。っていうか…最初から最後まで、あの人の心にはずっと別の誰かがいたような気がする…」
それが今の氷高の彼女なんだろうか…。
これほどの美人で性格的にも男の理想そのもののような理沙を振るなんて、いったいその彼女はどれほど魅力的なんだろうか…?
まさかそれが自分の恋焦がれる沙有里のことであるとは夢にも思わず、
和也はその”別の誰か”がどんな魅力的な女性なのか不謹慎な興味を覚えた。
「別の誰かって、いったい…誰なんですか?」
「私にもわからない…でも、氷高くんが、ね…。『ずっと好きだった女とやっと結ばれた。悪いけどお前とはもう別れる』って…」
涙をこらえ、一息に言葉にする理沙。
「氷高センパイが…そんな、ひでぇよ…」
唖然とする和也。
結花はもう既にそのことを聞かされていたのだろう。
何も言わず、ただ理沙の手を握るだけだった…。

そしてその氷高と沙有里が、ここからそう遠くない彼のマンションで今も抱き合っているとは…。
この時の和也には知る由もなかった。