ロリータ創作小説発表スレ

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319名無しさん@ピンキー:2005/11/13(日) 02:48:18 ID:MaJ4/oMo
 首うしろの皮を剥がされ、まわりの白い毛には血が飛び散っていた。
いちばん酷かったのは、鳩胸の鮮血だった。そこはけがをしていないのだから、
無水エタノールで拭いてやれるが、文子はシロを見たとき、遼子から心底
遠ざけるべきだと思った。そして、選択した。
 かわいそうを連呼して、遼子は大声で泣いた。シロの首うしろのけがは
治まることなく侵食を繰り返した。

 家にじっとしていなくて、シロは出歩いて、他所でけんかをし続けていたからだ。
夜中に近所から猫のけんかする声がきこえて、遼子が泣いていたこともある。
シロの首まわりは、ついに紅色の生皮をさらし、常時、膿で絖っていた。
 エタノールでは刺戟が強すぎて、逃げこそしないもののシロは嫌がった。
それでも文子は、手をシロに爪で掻き毟られたことは一度もなかった。
『どうして、あんたはバカなの』

『シロをばかっていわないで……おかあさん』
『いつから』
『おかあさん……』
 いつしかシロの治療に夢中になっていて、遼子が帰ってきて、傍で見ていたことに
気がつかなかった。
『り、遼子……。ごめんね』
 綿の毛がついて膿は拭き取りにくかった。エタノールの使用はすぐにやめた。
刺戟の少ないマーキュロをしばらく使っていたが、それも既にやめていた。

 びらんの侵食は胸にも及び、顔側の皮膚が浮いてしまい、頬にまで達して
穴を開けてしまっていた。綿棒つけた軟膏で、浮いてできた穴にそっと入れて薬を塗布した。
 安楽死は選択せずに、最後までシロのめんどうをみようとした文子だったが、
さすがに遼子を、こんなシロには近づけたくはなかった。
 嫌がる遼子に言い聞かせ、治療するのを見せるのをやめた。けれども、遼子は
隠れながら、シロに会っていたかも知れない。
 数週間して、シロは姿を見せなくなった。
320名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 02:18:01 ID:V/pX51U5
『シロこのあいだね、家から離れたところいて、道路にじっとして座っていたの』
 うっ、ううっ……。
『遼子、それでどうしたの』
『シロってよんだら、こっちをみて、どっかに行っちゃったの』
 あ、あっ。
『きっと、さよならをいいにきて、遼子が帰ってくるのを待っていたのね』
『えっ……。待ってくれていたの』
 あっ、あ、あ。

『そうね、たぶん。それから動物はね、死ぬときが来ると、自分のからだを
人に見られないところに隠すの』
 ああ……っ。
『……どうして』
 遼子の黒い瞳がみるみる涙を張ってゆくのがわかった。
『遼子?しかたが……』
『どっ、どうして!どうしてぇ!シロを治療する手伝いを、
させてくれなかったの!おかあさんのいじわる!いじわるうッ!ばかああぁッ!』

「うああっ、ああっ」
 少女は壁に肉体を取り込まれていながらも、男の性欲の対象物と化すのを甘受し、
恍惚となっている。
 少女の開かれた性器に、シロの毛皮の剥がれた皮下組織を見た。紅色はてらてらして
絶えず噴き出る膿で絖っていた。遼子は獣の声を出しながら、床にしゃがみこんだ。
「遼子ちゃん!」
 繭になってうずくまる遼子を、奇妙な声を聞きつけ、部屋に入ってきた深静が気付いた。
近寄ってから深静は、遼子を揺すりそうになる衝動を、すんでのところで抑えた。
「どうしたの、遼子ちゃん!」
「きもちがわるいの……」
321名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 03:23:56 ID:V/pX51U5
「とりあえず外に出ましょう。立てる、遼子ちゃん?」
 遼子はかぶりをふっていた。
「動きたくないのね。ひどく気持ちが悪いの?」
「ちがうんです」
「なに?」

 遼子と応対を取りながら、救急車を呼ぶべきか、自分の車で遼子を病院まで
連れて行ってやるべきかの判断を計っていた。
「せんせい、だいじょうぶですから」
 深静は両膝を床に突きながら、スーツの上着を脱いで遼子に持たせた。
「なにをするんですか」

「いまから、病院へ行くわ。篠崎さんの家には、着いてから、わたしが連絡します」
 油絵の具の匂いにあてられただけだろうと思ったが、自己判断はよくない。
一応病院に連れていって、遼子には検査を受けてもらおうと思った。
「ちがうの」
 須田がここにいてくれれば、運転を頼んでもらって――。

「これからね、遼子ちゃんをだっこして、車までいくから。もしあげっぽくなったら、
これにしてもらってもいいから。わかった」
 後部シートで遼子を横にし、深静は遼子を膝枕して、めんどうを見ながら
病院まで搬送できたのに。苛々がつのりそうだった。
 濡れタオルをつくる時間すら、いまの深静にはもどかしかった。

「ちがうのッ!」
「おねがいだから、遼子ちゃん。わたしの言うことを聞いてちょうだい」
 ゆっくり、遼子にやさしく、根気よく深静は遼子に声をかけていた。
「なんともありませんから。もっと絵をみていたいの。せんせい、おねがいします」
「この絵を……なの?」
322名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 15:55:48 ID:JojMXqQa
つ@@@@
323名無しさん@ピンキー:2005/11/15(火) 01:05:32 ID:TQvUPN0T
「……はい」
「明日でも絵は見ることはできるわ。そうでしょう?さあ、もう行きましょう」
「やっ、いやです……」
 躰を抱きかけた、深静の手を遼子は烈しく拒絶し、深静の首に腕を巻きつけるどころか、
胸に両手を突いて引き離し、ほっそりとした四肢をばたつかせて暴れた。
「いやあっ、なかったら。あした、ここにきて、もうなかったら!」

「そんなことはないから」
「いやああああっ」
 遼子の愛らしかった、こころにそっと置くような、やさしい声質は、
深静に細く鋭い刃物となって耳に届とどいてきた。
「なかったら、もう、ここになかったらッ!」
「遼子ちゃん!」

「やああっ、みたいっ!絵をみていたいの。おねがいだから。おねがい……」
 絵をみていたいと、深静にすがる遼子にくじけた。自分をすてないで、
といっているみたいで、遼子のことが憐れになった。打算も一緒に働いた。
 何者かによって全裸にされて、白い壁に立たされている少女に、
遼子は春情を突然もよおしたのではないか、と判断した。
 これで篠崎遼子を取り込み易くなる……かもしれなかった。

「じゃあ、すこしだけ。すこしだけなのよ。わかった?」
「それに、お注射もきらい。点滴も嫌なの……」
「はじめてじゃないのね」
 遼子は媚びるような瞳でコクリと頷いた。すぐあとの退行を眼にし、
深静は瞬間的に、遼子から情報を収集することをシャットダウンしてしまった。
 遼子の愛らしさも、モデルとしての利用価値をも押し退けて、チリチリッとした。

324名無しさん@ピンキー:2005/11/15(火) 01:47:58 ID:TQvUPN0T
「それで病院には行きたくなかったの?せんせい、怒るわよ」
 頷いていた遼子に深静はきっぱりと言って離れ、立ち上がって窓のほうに
行こうとした。
「ごめんなさい、せんせい」
 踵を返し、遼子の傍に腰を下した。
「ゆるしてあげる。だから、病院で診てもらいましょう。ねっ」
「はい、行きます」

「それから、この絵のことは、ヒミツ。わかった?」
「はい、わかりました」
 取り引きとして、遼子に釘を刺した。いまここで、誤解を招くようなことは
取り除いておきたかった。
 遼子は深静の動きを追うと、引かれていた灰色の厚手のカーテンに
手を掛けようとした。

「あっ、まって。まってください。そのままにしおいてください」
「暗いけれど?いいのね。わかったわ。遼子ちゃん、前にもこんなことがあったの?」
「はい、気持ち悪くなって、点滴をしてもらったんです」
「それで、なんともなかったの?」
「はい」
「それは、いつ頃のことかしら」

「シロがいなくなって……から」
「シロ……?ああ……そうなの。遼子ちゃん、ことしの冬休みにも
また来てくれるかしら?」
 ペットを亡くして喪失感に囚われてのことなのだろうと思い、
深静は話を逸らそうとした。
「……ゆき」
「遼子ちゃん?」
325名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 01:38:08 ID:InBU7pw3
「だいじょうぶなの?」
 ちゃんと家で睡眠をとっているのだろうかと不安になった。
「はっ、はい」
 たぶん精神的なものか、その日による体調不良による影響。
それらが複合しての結果なのだろう、とおよその見当はつけてはみたけれど
想像の域を出ることはなかった。

「遼子ちゃん」
「……」
 焦点の合っていない遼子を、深静は現実に連れ戻す。手近の目的を
設定してやって、活力をあたえてやることを試みる。
「いま描いている遼子ちゃんの絵、とても上手よ。須田先生、喜んでいたわ。
仕上げ、がんばってね」
 遼子は深静に言われたことに、きょとんとしていたが、すぐに元気よく
「はい」と応えた。

 デスクのアイボリー色の焼けた受話機を取って、遼子の様子を見ながら
家に掛けてみた。生徒の電話番号、取引先も含め、深静は記憶してはいたが
須田の机に眼を落とし、メモ帖を引き寄せ、ペン立てからボールペンを取った。
 応答はなかった。呼び出し音をしばらく聴いていてからあきらめて、
画廊の方に対処する連絡を入れてみることにした。

 なにがあったのか、ことをおおげさに構えてほしくない。
遼子のことを深静は慈愛しながら、モデルのことを隅にとどめていた。
くちもとには自嘲ぎみな笑みが浮んで消えた。
「もしもし、河野ですが、生徒の篠崎遼子さんのことで家に……。ええ、はい。
はい。それで、こちらから……」
 深静は画廊から車を篠崎遼子の家にやり、文子を拾わせようとした。
326名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 02:12:34 ID:InBU7pw3
 メモ帖には須田の筆跡で、遼子の名前と電話番号が書かれていた。
 遼子は正座をくずし、ちっちゃな尻をぺたんと床に落とし、大きなキャンバスの
少女を眺めることに没頭している。
 深静は紙を捲ってページに変える。画廊と話しを詰めはじめると、ある程度の時間的な
余裕はできるだろうと思っていた。

 考えることは一旦はモデルの件を下げて、療養的なものにして篠崎家に薦めること。
現段階では白紙にすることだけを伝え、先方が反応をみせれば、今度は逃がさずに
捕まえてしまえばいい。
 なにか見落としはしていないか、先々ばかりを見ていることを気にしはじめ、
心を落ち着かせようと筆記具を走らせ、意味の無い図形を書き始めた。
須田の筆圧の透かしが、深静によってつぶされる。

 思いついたのは、即日入院ということにでもなりはしないか。だとしたら、
こちらからバックアップできる品物はなんだろう。それから、それから……
白地に描かれた細かったラインは、幾重にも重なり、もつれあい、
……まがまがしいまでにこゆくなっていった。

 喜悦に近づこうとする少女は、皺もない無毛の秘所を拡げ、対象者に向かい、
複雑な構造と妖しい内臓の色とをさらしていた。
 おののきながらも、遼子は少女の居る絵に入りたくなって、絖っている女性器に
手をもっていこうとした。

『パパ、さわりたいの』
『ん、なにをだ、遼子?』
 言ってしまってから隆は困っていた。少しでも心を開いたことで、
ことは前に進み出してしまう。そこが遼子への隆の甘さでもある。
『おちんちん』
『さわりたいのか?』
 言葉を交わすことは、もう受け入れてしまったことへの同意でしかなかった。
327名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 02:57:12 ID:InBU7pw3
『うん』
『ダメだぁ』
 おどけながら、遼子へのやさしさをこめて隆は発話していた。
すでに取り込まれている証しだな、と苦笑していた。
『どうしてぇ』
『ママに怒られるからかな』
『おかあさんが……怒るの?』

『そうだよ』
『いわない。だから、さわらして。おかあさんには、ぜったいないしょにするから』
『んん……どうしようかぁ』
 両腕を組んで思案ぶっていふりをした。
『ほら、ちゃんと浸かってなきゃ』
『パパに遼子のをみせてあげるから』

『こらっ、やめなさい遼子』
 遼子は湯舟から立ち上がって、躰を反らして下腹を突き出すと、
隆に無毛の縦溝をみせつけた。
『仕方ないなあ』
 あきらめた隆は、遼子の誘惑につきあうことにした。
『好き嫌いしないで、いっぱいたべないけないな』
『たべているもん』
 ぽてっとした遼子のお腹を隆はぴたぴたと濡れた手で触る。文子のなかに
遼子がいたときのように。

『ほんとか。ピーマンは?』
『……にがい』
『サラダは?』
『千切りした、にんじんがいやなの』
『お皿でわけたりしたら、ダメじゃないか』
『これからはたべる。ちゃんとたべるから。だから、おねがい、パパ』
328名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 21:04:51 ID:InBU7pw3
『どうして遼子は、おかあさんのことをママっていってあげないんだ』
 優越感に浸れてはいても、文子には正直すまないとも思っていた。
『どうしてって……』
文子は、遼子の馴染んでしまった癖には言い易さもあるだろう、
と楽観的にみていた。気にしてどうこうするより、むしろ余裕で
たのしんでいたことを隆はしらなかった。

ただ、風向きは変わりはじめていた。たとえば娘の反抗期、もしくは好きな男の
身近にいた女への対抗意識、近親憎悪……だけは除外して。
『……わからない』
 ひとつひとつの微妙なずれの重なりに、文子は迷路に入り込みそうになっていた。
それなりに、心を砕きつつ接していたつもりだったのに。

『そっかぁ。それじゃあ、しかたないかな』
 隆は湯舟の中で両太腿を拡げていた。
『ダメなの……』
 下を見ながら残念がる、遼子の顔を見て可笑しくなった。湯舟の中の
隆の腰にタオルは掛ってはいなかった。


「じゃあ、遼子といっしょに入る時は、俺どうすればいいんだ。手で前を隠すのか」
「なんで隠しちゃうの。隆はいっしょに入っちゃえば勃起しちゃうの?
へんたいなんだね」
「ばっ、ばか。いきなり飛躍するなよ。それにそういうことをいってるんじゃない」
 怒り出した隆に文子は両脇をしめ、ボクシングのポーズで身構え、すぐにほどいて
掌を見せた。
「そんなことぐらい、わかっていますよーだ」
「おい」
「ほんとに、お風呂にタオルを入れちゃうのだけはやめてよね」
329名無しさん@ピンキー:2005/11/17(木) 01:45:33 ID:fs0BOPgK
「だけって……。文子といっしょに入っても勃起はしないだろ」
「蹴飛ばそうか」
「しようと思えばなるぞ。安心しろよ」
「ばかッ」
 文子のこぶしをかわして風呂に逃げ込むと、浴槽の縁を両手で掴んでいる
たのしそうな遼子の笑顔があった。

「遼子、待ってたか」
「ねえ、パパ、ボッキってななんなの」
「ん、勃起か」
 遼子は縁から離れて隆の浴槽を跨ぐのを見ながら大きな躰を迎え入れて、
勢いよく湯が流れ出る。

「ちゃんと、水足ししてから上がってきてよね」
 文子が硝子越しに注文をつけ、湯舟に浸かっている二人の声が「はあい」、
とはもった。もちろん先に上がってくるのは遼子で、脱衣場で待っていた文子が
躰を拭いてやるのだった。

『じゃあさ、おかあさんのことをママって言うなら、遼子におちんちんを
さわらしてあげてもいいかな』
 タオルの細かな毛屑で湯舟がよごれるから、と中に入れることを文子から
隆は止められていた。
『ほんとなの』
『そのかわり、ママって言ってあげないとダメだからな』
『うん』
『うん、じゃなくて?』
330名無しさん@ピンキー:2005/11/17(木) 02:08:00 ID:fs0BOPgK
『はい』
 ハの中にかすかにアが混じった発話に、隆の顔は思わずほころぶ。
いつまでこんなことをいっしょになって、娘としていられるのかと思いながら。
 遼子はそのぐらいの使い分けはできて――。
『でもなぁ。どうしようかな』
『やくそくうっ!』
 勘が働いて、すこしの媚態をないまぜにする。

『さわるだけだからな。へんなことはするな』
『はい』
『それから、このことはママにはないしょなんだからな』
 隆は湯舟から上がらないでいた。このまま降りておいで、というサインだと
遼子はわかった。異形のものを眼にして、いよいよという緊張ととまどい。
『ほら、きてごらん』

『うん』
 遼子は湯舟にふたたび腰を落とし、頤を湯舟にちゃぷっと浸ける。
 いつもは隆の眼の前で、おふろという語感に歓びながら、水面に掌をスレスレに
浮かせてから、ぴたぴたと音を立てて遼子は遊ぶのだった。
 いまは昂ぶりと唇に近づきそうな水面に、小鼻から吹く息は強くなって
紋を描いている。

 遼子は両脚を折って、膝を抱くような格好で隆のものにふれようとした。
肉棒に対しての自分の小さな手に気が退けてしまって、隆の太腿の内側に
ぴたっとふれていた。
『そこ、おちんちんじゃないぞ』
 肉を揉むように、少し手を動かしてみた。いくら娘の遼子とはいっても、
隆の目の前で愛らしい華奢な躰をさらに小さくして、腕を動かすたびに、
骨の見える背から出る、娘の天使のなごり(肩胛骨)を見ていたら……。
331名無しさん@ピンキー:2005/11/18(金) 00:35:14 ID:IgjzzWgc
『うん、まってて』
『ちょ、ちょっとまて』
 スポイトで吸ったインクを、湯舟の中に一滴垂らしたとしたところで
澱みは生まれなかった。娘との戯れに露骨な春情などありえないが、
隆はへんな気持ちにはなった。

『なに、パパ』
 上気した顔に薄っすらと掻いた汗。
『なんでもない』
『へんなの』
『……』
 愛らしい顔に、ほつれ毛が貼りついていた。

『すぐだからね』
 ママゴトに付き合っているみたいなのに、いけない戯れのふたり。
『ああ、わかった』
 頬擦りされれば、じょりじょりとなって痛いのに、と遼子は思う。
実感する、やわらかい文子のような肉の手触り。ごつごつとしていて、
まろみの少ない男の躰。
 脛毛を生やした、脚の見た目に対して、内腿のやわらかさが
遼子には新鮮だった。

 遼子は隆と手を握ったときの、やわらかで温かな感触を思い出す。
湯の中でもこうなのだから、上がってみた太腿の感触は、
今と違わないものなのだろうかと思う。
 肉棒への質感をおいて、好奇心が湧いた。湯のゆらぎに、遼子は眼を
しばたかせた。怖くて攻撃的なスタイルをとっているのに、
錆朱色の尖端のやさしさは湯のブラインド。隆の肉棒は動いていた。
『遼子……』
332名無しさん@ピンキー:2005/11/18(金) 01:08:20 ID:IgjzzWgc
 不思議なおとこのかたち。文子とおなじような黒々とした下腹にある、
藻から生えた異形のペニス。
 肉棒に血汐が勢いよく流れ張りが出てしまって、遼子がそれを湯舟の外で
見ていたなら。亀頭の色に、肉茎にくっきりと浮き彫りにされる、
のたうつ生き物のような血管に、こうもいかなかった。

 隆の下腹も、肉棒の下にある、やわらかそうな皺袋も、遼子はじっくりと
さわってみたかった。隆との約束を破って、無造作に肉茎を握りたい
衝動に遼子は駆られていた。
『遼子、もうよそう』
 遼子への懇願は無邪気なことばに遮られ。
『いますぐにする。いくから』
 遼子のおんなとしての波長の伝播に、隆の男は跳ねてしまいそうだった。
 でも、約束は約束だから。

 掴んだ隆の太腿の肉をまた、くにっとさせてから、遼子はこころの中の
強力な因子に向かう。
 まったくないといっていい自分の股間は、かなり物足りないものではあるけれど、
それが遼子には愛着を覚えるものだった。ペニスにさわりたい、
と隆に言ったのも、憧憬というよりは自己確認の作業のひとつでしかなかった。

 しかし遼子の交媾のはじまりは、遠きものではなく、すぐ傍までやって来ていた。
『どうだ?』
 みじかな指が隆の肉茎に絡まって、感想をおそるおそる訊いてみた。
『うん……』
 文子とくらべ、膨らんだ柔らかな乳房は遼子に無いけれど、
遼子にもある僅かな下腹のふくらみに、消せない刻印のようにある陰裂。
遼子は自分の下腹を、とても洗練されたかたちと確信する。
333名無しさん@ピンキー:2005/11/18(金) 01:21:15 ID:IgjzzWgc
『どうした』
『かたい。かたいけど、ぐにぐにしている』
 そして、隆とくらべて。遼子は人差し指と親指に、すこしだけ圧を入れて、
二回だけ動かしてみた。
 なにかわからない、もやもやっとした感情が、底から込み上げてきた。
『軟骨っていうんだ』
『なんこつ』
『ほら、ここみたいに』

『あん』
 隆は血汐の流れの気を逸らそうとして、小鼻を摘んでみせた。
遼子は顔を振って、湯舟はざわめいた。
『もう、いいだろ』
『噛んでみたい』
 無駄のないかたちと密かに思いながらも……、隆の下腹に、文子との
いかがわしき美を見出して、遼子は夢想する。

『そんなこというなら、もうおしまいだ』
 遼子の少女の両肩が喘ぎ始めようとしていた。
 ペニスをさわっていた遼子の手首を、隆はむずんと掴んで、
湯からむりやりに引き上げた。
『いやあぁ、まだダメぇ』

『もう、ダメ。それに、噛んだりしたら、おしっこがぴゅーって
出るかもしれないぞ』
『ええ、そんなの、やだぁ』
 かわいい声で遼子は笑い、隆もつられて声が重なり大きくなった。
『いつまで入っているの』
 文子の声がきこえて、肉欲らしきものは霧散していった。
334名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 01:05:43 ID:p67c1Im1
「それから、こちらのほうにも一人よこしてください。はい。はい。
入れ違いになると困りますから、こちらでも待機をよこしてください。
ええ。はい。おねがいします」
 深静は受話器を置こうとしてから、いまいちど遼子の家にかけてみようと思った。
 絵にふれようとしていた遼子は、我に返り、手を下ろした。
「せんせい……。深静せんせい」

 カーテンの引かれた陽のあたる部屋は、暖気がこもっていくらか熱く、
頬は火照ってくるようだった。
 呼ばれて、深静は遼子の少女の顔を見た。薄暗がりでは遼子の上気している
貌は見にくい。それでもなぜだか、大作のキャンバスの前に座って、
闇の入り口の前にいた茉織(まおり)をみて、深静はひさしぶりに
春情をもよおしていた。

 このまま、遼子を床に寝そべらせ、喘ぐ遼子の肩と胸を見ながらスカートの裾をめくり、
差し込む光りは太腿のうぶ毛を金色にかざり、深静はガールショーツを
静かにおろして波打つ下腹を眺める――。
「なに、遼子ちゃん」
 遼子も立っている深静をまっすぐに見ていた。
「さわってみたいの。須田せんせいの絵にさわってみたい。おねがいします」
 冒険には危険がつきもの。そっと押しやるだけでよかった。

「だったら、本があるわよ」
「ご本ですか?」
「ええ、そうよ。須田先生の作品目録、みたい?」
 深静は躰を捻り、デスクの本立てに手を伸ばそうとした。
「いいえ」
「あら、どうして」
「遼子にさわらして。だめですか」
335名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 01:23:17 ID:p67c1Im1
「――いいわよ。遼子ちゃんなら、さわってくれても」
 絵の中の少女が遼子に『いいよ』、とゆるしてくれたようにきこえた。
「ありがとう、深静せんせい」
 深静に起こされ、遼子ははだかの少女に接近した。
「息が聞こえてきそう」
「すてきでしょ」

 さわりたい場所はもっと他にあって、遼子が触れたのは少女の内太腿。
おしっこをお漏らししたみたいに、緋のところからは少女の体液が吐き出され、
陽に照らされ煌いていた。遼子は透明感の表現にも引き込まれた。
「はい」
 顫える人差し指でそこをなぞってみた。絵の具が盛ってある秘所は少し立体的に見えて、
遼子の傍で少女は内臓の色をさらす。

「さっきもいったけれど、このことはひみつ。わかったわね」
 遼子の両肩に顫えを感じた、深静の赫い唇の口元には笑みが浮んでいた。
「はい」
「快楽は罪なの。遼子ちゃんなら、わかるわよね」
「ごめんなさい」
 遼子は少女の性器にふれないまま、手を下ろした。快楽のことばを知らなくとも、
深静の印象は遼子の躰を突き抜けた。

 冬の寒空の下、遼子は男とモデルとしての関係を結んだ。
「いいのよ、遼子ちゃん。もう出ましょう」
「はい」
 廃線になっていた木造の駅に、男とふたりで行って、到着してから、
遼子はクルマのなかで自分から裸になった。
「ごめんなさい」
「もう、いいから。さあ、いらっしゃい」
336名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 01:42:15 ID:p67c1Im1
 窓から見える降る雪に、少女の淡いと、なま皮をさらしていたシロの姿が
脳裏をよぎっていた。
 遼子は男にやさしくだきよせられ忘れる。びくっとしたあとに、躰が熱くなって、
気がつけば胸には、銅アンティークのハート型ロケットが胸に鈍く耀いていた。
 車の暖気に守られはしていたが、少女の凍えた白い素肌に金属は異質であり、
遼子にわかりやすい肉情を示す物だった。
 ロケットをかけられて、男を見たとき、遼子はシロのことを打ち消し、
かわりに遼子が手にしたもの。奈緒子の姉である長身の少女、茉織と須田の関係。
館で絵を介して知り合いになった、菜緒子と悠美に教わったのは、
セックスが心をつなぐ、肉体を使った……甘い儀式だと知ったこと。


 深静が病院の車寄せで待っていて、文子を出迎えた。不安になっている文子に
長身で肩幅も広く、それとなくフェミニンを振り撒く、深静は頼もしく思えた。
 普段のやわらかな声質とは違って、張りのある声でテキパキと説明され、
個室に案内される頃には遼子の状況は把握できていた。
 一時間ほど寝ていたら、遼子は家に帰られると聞かされ安堵しのだった。

 病室のドアの前に立つ。深静がノックをしてドアを開けようとしたとき、
文子の足は竦みかけていた。深静も文子の様子に気付いた。
「篠崎さん」
「はい」
「もう、だいじょうぶですから」
「ありがとうございます」
 文子の父親が入院した日のことを思い出すのだった。文子が入っていくと、
遼子はベッドで起きていた。
 付き添いの画廊の職員が立ち上がって、文子を招き入れる。
337名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 17:41:39 ID:p67c1Im1
「ママ」
遼子は握り拳を毛布の上に載せながら顔を向け、小さな顔が大きくなった。
ベッドに近づいていくと、深静と画廊職員は個室からそっと出て行った。
 深静の説明では、医者は精神的なものといっていましたが、
油絵の具の所為ではないかとも疑われますから、遼子ちゃんの絵画教室は
しばらくお休みになられてはいかがでしょう、と言われ――。
遼子は教室に行くのをたのしみにしていますし、前にも同じ様なことがあって、
こころあたりがありますから、とことわり、今日の対応の礼をいって文子はこたえた。

「ママ……」
「遼子、どこも痛くないの?こわくない?」
「うん、だいじょうぶ。針を刺す時は、ちょっぴり痛かったけど」
「そう。よかったわ」
 点滴を見て笑う遼子に、文子の目尻にはうっすらと涙が滲んだ。
「ママ、ごめんなさい」

 椅子に腰掛け、遼子の顔に近づく。血色はすでに戻っている。やつれもなく、
いつもの遼子だった。
「遼子が、どうしてあやまるの?」
 文子は寝ている遼子の髪をていねいに指で摘んで直してやった。
「だって、ママを心配させたから……。それから」

 ママとよばれていたことに気づいて、文子はすこし驚いていた。
「おかあさんも、遼子にごめんなさい。遼子の気持ちを考えてやれなくて」
 文子に顔をふれられ、遼子は深静とのひみつに、鼓動が速まっていた。
シロの肌と少女の淡い。赫いものの侵食が始まろうとしたら、
遼子は文子に額を撫でられた。ひんやりとした感じがここちいい。
「すこし眠りなさい」
「はい。おやすみなさい」
338名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 18:11:39 ID:p67c1Im1
 遼子の拳から力はすっと抜けていった。

 クリーニング工場の男とのやりとりで、文子は両耳を瞬間的に熱くして赧らめた。
『おかあさんとどこに行くの?』
 二車線跨いだ、向こう側のスーパーを遼子は指した。
『お買い物なの』
『きおつけてな』
『はあい』
 遼子が元気に声を出す。リネンを入れた白い布袋を担いだ男に、
文子は軽く会釈をしてから、遼子とともにその場を離れた。

 路肩を進んで横断歩道のある十字路まで行くのではなく、自転車を押しながら
手前にある陸橋を使う。横断歩道は交通量も多く、それでも遼子が高学年に近づけば
なんてことはないのだろう、と文子は遼子の背中を見た。
 上るときは遼子を先に。上で文子は遼子の自転車を追い越し、先に下りようとした。
『わたしに先に行かせて』
『だいじょうぶなの』

『ぜったいに、だいじょうぶ』
 まかせて遼子を先に行かせ、文子は声をかけた。
『きをつけてね』
『さっきも、おじさんにいわれた』
『そうだったね。こっち向いて、笑わなくてもいいからねぇ』

『そんなことしない』
 じっとしていれば遼子は日本人形みたいにきれいなのに、ちゃかちゃか動くと
いたずらな妖精にすぐなる。
『遼子、怒っちゃったの?ぶっきらぼうなんだ』
『ぶっきらぼう……?』
339名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 21:42:48 ID:p67c1Im1
『こっち向いたりしないの』
『だってぇ、おかあさんがいったんでしょう!』
 遼子に文子への怒気は感じられない。
『ねぇ、遼子』
『もう、向いたりしない』
『今年も須田さんのところに行きたい?』
『えっ。うん、いきたいよ』
 階段を降りて、遼子の弾んだ声が文子の耳に響いて渡されていた。

「うまくいえないけれど……」
文子は隆に遼子の絵のことの不安をもらしたら、
「あたりまえだろう。だって須田さんにちゃんと習っているんだからさ」、
と一笑にされた。
床に座って絵をみている文子の背を跨いで、隆が後ろのソファに腰掛けた。

「あん、よしてったら」
「どうして」
 隆の手が文子の両肩にふれる。文子は夫の隆に安心感を求めていた。
「どうしてって、遼子がやってきたらどうするの」
「あれ、なんか期待してる?」
「……」

「どうした」
「だから、こどもらしくないの……」
「それは、もうきいたよ」
 ヌードモデルは遼子にさせはしないだろう、と文子のなかで折り合いはついた。
たとえそうなったとしても、須田はモデルを性欲の対象になどならないと文子の前で
明言をした。信頼はできるのだ。問題は自身のこころだったと思った。
「じぶんに言いたいこと。もう、はっきりしているじゃないのか?」
340名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 21:49:43 ID:p67c1Im1
「じぶんに?」
「そう」
「うん……。かもしれない」
 近づいた隆の息が文子の頬にかかる。
「さみしいんだな、きっと」
「なにいってるのよ」
 なんにせよ向上したことはいいことなのだ。決して悪ではない。
「俺がいるじゃないか」
「ばか」
「ふううん」
 隆はにやにやする。

『せんせいのこと好き』と訊いた時の遼子の返事にひっかかっていたのかもしれない、
と文子は自分を納得させる……ことにする。そう、娘は恋しているのだ。
「そうよ。急に大人になっちゃうんだもん。さみしいわよ。おかあさんと
行ってもいってもいいけど、ひとりでもいいだって。いきなりななんだから」
「大人になろうとしているんだよ」

「ちがうっ。遼子は背伸びしているだけなの」
 ソファに座っている隆の両脚の淡いに、じゃれ猫みたいにして、
背中から文子は躰を捻じ込んだ。
「そりゃ、そうだろうけどさ」
『あなたの影を追って、遼子はいつかちがう男のところにいってしまうのに』
と文子は隆にいじわるしてやりたくなった。
「で、どうするんだ」
「うん」
341名無しさん@ピンキー:2005/11/20(日) 02:20:29 ID:oJVK32rD
 悪ではないけれど、そつが無さ過ぎることが不安だった。隆に言えば、
きっと贅沢な悩みなのだと言うに決まっていた。
「はっきりしないなぁ。もう答えは出ているんだったら、それでいいじゃないか」
「じゃあ、なぐさめて」
 遼子のかつての絵からは、たのしい音楽が奏でられて踊っていた。文子は
そう思っていた。降りてきていた隆の頭の髪をくしゃっと掻きまわした。

「はい、お嬢さま」
「もう。そんなこというなら」
「なんだよ」
 隆は少し力を入れて、動いた文子を羽交い締めにし引き戻した。
「あ、あん」
 指頭が遼子の脾腹を圧す。両脇に舐めるようにすっと上がって、乳房に
戻ってきた。

「ほら、どうしてほしい」
「どうって」  「いってごらんよ」
 隆の手はせり上がって、文子の乳房を押し上げる。
「なぐさめて。パパがなぐさめて」
「そりゃないだろ。これからってときに」
 最初の遼子の絵は色を知っていた。子供らしい色を。……いろ。

「わたしだけおかあさんなんだもん。たまにはママっていってほしい」
「遼子、いってただろ」
「ちょっとのあいだだけ」
「じゃあ、ママのここをさ」
 ブラウスの上から文子の乳首のしこりを摘んでくりくりと捻った。耳朶を甘噛みされ。
「あっ、ばか……」
「でもさ、さっきの言い方だと、父と娘にもなるよな」
 熱いブレスが文子をくすぐって、甘い痺れが背を伝って這い上がった。
「なにを、んっ……んあっ、あ、あっ」
342名無しさん@ピンキー:2005/11/20(日) 02:28:13 ID:oJVK32rD
 あぶない夜に滑り落ちる。ただ加速すればいいだけじゃないと、
館の男に少女の遼子は教えてもらった。
「パパって、もういちどいいなよ」
「ああっ、あっ、りょ、遼子が来たら……」
 ミニマルミュージックのように、セックスの物悲しい単調な旋律は、せつない
破壊の連続性で文子に忍びよる。
「ま×こにチンポをいれるだけじゃないよ」

「い、いいから。もう……」
 隆と文子の指がもつれ、春情をねっとりと交わす。どちらからというより、
求め奪い合うようにして。
「セックスは」
「どっ、どうでもいいから。して……して」
 隆の腕が文子の頭を掻き抱いて髪がみだらになった。
なによりも、文子は須田の淡いタッチに惹かれていた。文子も遼子とおなじように、
隆との絵を脳裏に描きはじめ、やがてモノトーンになって溺れていった。

 海に面した断崖絶壁に立って、どこまでも青い天上を仰ぐおののきとせつなさ。
真(シン)の顔が快美感に歪みそうになるのを、交媾にみだれた遼子は赫い唇を
上気した息子の頬に擦りながら、認めて律動を緩めていった。
 ダイニングに真の生臭い喘ぎが強まって、スピードをはずした遼子を責めた。
真は催促して、遼子のうしろの窄まりに納まった指の抽送のピッチを
上げて嬲り出す。

 はじまりの季節には、真の裸身を長時間に渡って遼子は弄ってやり、
頂点に届きそうになるくらいで逸らしては果てることを伸ばし、さらなる高みを
めざした。
 単純な射精ではなく、最初から絶頂を分かち合うことを真に教え込もうとした遼子。
須田という男が、稚い遼子の躰と心に処置した調教と似ていた。
343名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 21:41:38 ID:dkf2nZCC
 求めたのは雪白のうつくしさ。夢を追いかけても、凍えは遼子の素肌に
降りた素足へと確実に刺さってくる。遼子は躰だけを一方的に使われる。
『そんなことしたら、うんちがでちゃうううっ!』
 遼子の左太腿に勃起した絖る尖端がぶつかる。お尻を振りたいのに怖くてできない。
『うんちなんかが出てもかまわない。ここには、ビニルシートを敷いているだろう』
『あっ、や、やっ、あっ、ああああああぁぁぁ―――ッ!』

『練習しなければ、ガーデンルームには連れてはいかない!』
 須田の脅しだった。遼子がたとえ拒んでしまっても、華奢な怯える躰を強引に
抱きよせてしまい、仲間はずれなどにはしない。遼子と須田は絵で繋がっていた。
『する、するっ!するからああぁぁぁっ!だからぁ、遼子をおいてかないでぇ!』
 館と庭とを繋いだ、硝子張りの温室のような外観の空間。陽が降り注ぐ場所には、
菜緒子と悠美もやってくる。

 鳥かごのようなところで、陽を浴びて男に抱かれ貫かれることに、
遼子は少女的幻想を描き始めていたから、薬の効果は絶大だった。
 遼子の菊座が拡げられる。上体をベッドに載せて男に臀を向けている遼子には
どうすることもできなかった。繭になって耐えて背を丸めることも。遼子の頭上にあって、
シーツを握っていた両手は胸元へと引き戻される。
『いきむからあああぁぁぁっ!だから、だからッ!遼子をおいてなんか!
ここにひとりにして、いったりしないでぇぇぇっ!』
『いい娘だ。それでいい』

 置いていかれるのは、やるせない。いっしょになれないのなら先にひとりで
逝ってしまってもいいのかもしれない。
「遼子と真林なら大丈夫だから」
 真林を招き入れた真の囁きに躰は浮遊していても、内太腿が痙攣してしまう。
遼子はとまどいを振り払って、快楽だけに没頭し駆けた。すると真の指が
臀で不穏な動きを感じさせ、遼子の窄まりは蠢き捲れ返りそうになった。
344名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 21:48:01 ID:dkf2nZCC
 教え込まれた男の低く囁くやさしい声が遼子の心の底から響いて来る。
真の肩を掴んでいた右手を離し、目の前で手をぶれさせた。
 人差し指から薬指を曲げ小指だけを外し、赫を咲かせ口に咥えた。お臀の穴に
挿入されていた真の小指は引揚げられ、遼子の背筋に顫えが走って、盆の窪まで
昇ってきて舐めた。

「んっ、んんっ」
 記憶を手繰り寄せて退行するかのように、稚くも淫靡な貌になって、
遼子は唇と頤を濡らして、喉にも唾液を滴らせた。溜まった唾液を嚥下する音と
肉情に耽溺する呻きが洩れて、小鼻がひくついている。
「またうなされている」
 遼子はかかった髪を掻き上げもせずに、噴出した細かな珠の汗でへばりつく、
命を宿した水底でたゆたうような淫ら髪から、恍惚と苦悶に蕩ける凄艶な美貌を覗かせ、
ようやく含んだ指を唇から抜いて真の頬に指頭を埋め込んだ。

「いったわね」
 真の両耳を中指と薬指で挟んで捏ねてみせた。遼子は息を整えながら
腰に捻りを咥えて真を責め続けた。
「いったよ」
 頭を右に傾げて、眼を細めながら鼻孔を膨らませ、髪を右肩に流して真を見る。
真は果てない。どうしてと疑問に思うより、素直に男のたくましさに遼子は歓喜する。
育てたという達成感をつれて。
「ええ、うなされていたわ」
 乳房を真の胸板で拉げさせた。
「そうなんだ」
「数日前から。傷つけたいの」

345名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 21:53:27 ID:dkf2nZCC
「うん」
「ばか」
「怒ったの」
 鏡の前に立って、おとこの匂いになつかしさを感じ、クロスハンドで我が身を
抱きしめておぼろに漂う。内に閉じた淫らの世界に見た、幽玄と退廃。

 きめ細かな肌のうるおいとしなやかな指の骨の動き。肉体も、髪を掻き揚げ、
おんなの背に描いた軸骨と天使の翼のなごりを問うてみたい。両手を動かして
髪を払ってから、遼子は手の甲をかざして眺めてみる。
 甲には数個の小さなほくろが目立つのも、真の言ってくれた、素肌の白雪を
飾るためとしても、にわかに信じがたく、新しいほくろをみつけては、
衰えを食い止められない淋しさにいらついていることを知る。
 真が真林に近づいたから、自分の存在を危ぶんだ因果、
と狂った時を分析してもみたり。

 しなやかさがちがっていた。
 真林には無いものだから。
 そのことをよく理解していたのは真のほうだったが、真はしっとりとした潤いに満ちた
遼子の手に憑かれていることをたいして口にはしていなかった。ナンセンスと
判断していた。ひとつひとつが遼子の不安を除去する術であることを、知らずの内に
粗略に考えていた。

遼子が悩みをかかえていることは、真も薄々気が付いていて腐心はしていた。
真林を開かせることに傾倒して、遼子をぞんざいにしていたのだと定義して
真は心で反芻した。
 ベッドでうつ伏せになった真林を開脚させてみても、遼子のお臀との差異があるが、
どちらが好きというのではない。どっちも真は好きなのだ。
346名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 22:04:49 ID:dkf2nZCC
 遼子の成熟した臀部を知っているからこそ、真林のちっこいお臀にも惹かれ、
世代の違う女の間で夢をみてペニスで遼子を突けば、真は背中を爪で掻き毟られ、
急いて歓喜の証しを早々に遼子の練れた肉襞に呑まれながら膣内へと放出をゆるした。
 真はそれでおしまいではなかった。
 遼子は真を舐めさせて、
とおねだりしては、そのまま交渉可能な肉棒を遼子の鴇色に上気した裸身に擦りながら
移動して赫い唇に捻じ込んだ。

 稚い真林とは違う、整った顔を股間に組み敷いて、いつしか遼子の喘ぐ顔を叩くように犯し、
快楽に惑溺する怒りの化身になった。腕立て伏せのような体位で下腹だけを遼子の顔に乗せ、
律動するだけのマシンとなった真は新たにしぶく。
 遼子も心得ていた。苦悶は絶頂感の訪れに等しい。どうにも我慢できないときは、
真を含んだまま潰された鼻を僅かに圧される下腹からずらし、少しの空気を
肺に送りさえすればいい。少ない空気にめまいがしても。

 両腕で頭上にいる真の両太腿を内側から逆手に遼子は捲きつかせ、打ち付けられる
真の臀を離さない。遼子に拘束され、ストロークの幅が狭まった真はあせり。怒れる滾りで
口腔を蹂躙される快美感に呑まれつつ、ヴァギナの寂寥に心をしめつけられながらも、
また跳んでしまうのだった。
 そのあとで真に甲斐甲斐しく介抱されることを知っている。

 寝ている遼子の手首を掴んで、甲に白濁をしぶかれ、粘度の高い夥しい白濁が
つるんとした手の甲を穢して、敷布にもぼとっと落ちた。遼子の頬にまでも一部の飛沫は
届いていた。真は果ててしまっても残りを絞り出すように扱いていたら、どくんどくんと
股間に蘇りの血汐は流れ、遼子は雄の匂いに薄目を開けていた。
『し……ん』
『起こしたね。ごめん』
『……』
347名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 22:07:55 ID:dkf2nZCC
 寝ていて何度か真に揺り起こされていた。ようやく瞼をひらくと、間接照明の
橙色に浮ぶ、真の無邪気な顔が間近にある。
『それから?』
『えっ』
 遼子の瞳にうっすらと涙が張っててしまっている。薄暗がりでは気付かれることは
ないかもしれない、と心でぐちる。わたしの膣内にはくれないのね。

 あなたの所為なのに。膣ではなく、手の甲を選んだことが気になった。
みつめている真に『なんでもないわ』、
とぷいっと横を向いて真から顔を逸らした。
『遼子のこの手が好きだよ。パンを切っている所を見るのが好きなんだ』
 真の手が残滓のかかった上に重ねられる、感情はぎりぎりりまで追いつめられて
妬心に焙られてしまいそうだ。

『舐めてあげるね。どこがいい。顔。それとも精液をかけた手の甲』
『だったら、ま×こを舐めて。真のものは舐めるから』
『うん、わかった』
『その前に、して』
 真の言葉を遮って、早口になったことに遼子は頬を染めていた。
 逆に枷が外れ、子供みたいにおねだりをして唇を窄める。

 真は遼子の躰を跨いでペニスを乳房に載せて背を屈め繭になり、遼子の桜色にけぶった
火照る頬を両手で包み込んだ。
『あっ』
『心配しなくていいから。ボクに任せていて』
 奥に届かなかった真の精液がペニスといっしょに遼子の胸に擦られる。
『だから口付けして』、
と真にせがんで縋る。
348名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 22:14:16 ID:dkf2nZCC
 拗ねていたのを曖昧あいまいに、馬鹿になりきってみだらに堕ちた。遼子の顔の上で
真の片脚は跳ね上がり、しゃぶりつきたいエレクトしたペニスが揺れて。
 そのまま降りて来て、と遼子は両肩を浮かせたが、真は横臥してしまってから、
遼子のお臀をむずんと掴んだ。不意の力に遼子の下腹は波打った。肉情に支配された
真の肉栓で口腔を塞がれることに遼子は鼓動を速めた。
 その前に火照りの因子でもある、手にかかった精液を愛しみながら、啜るように
きれいに舐め取って。

 苦悶し涙を噴くことも遼子を狂わせはしたが、穏やかに真の太腿を枕にして、
ペニスをしゃぶることに没頭することも素直にうれしかった。遼子は片脚を折って
真の顔をしとどに濡れそぼる股間に誘った。互いの太腿を枕にして、性器をしゃぶりあう
ゲームに身も心も惚ける。
 いつもは清楚な遼子の唇は、牝になりきって、特に腫れぼったくなって好きモノに染まる。
吐息は熱く快楽に酔う様は唇を性器に見立て、上唇がめくれあがっている。
『気持ちよくさせて』
 頬擦りして遼子は口を大きく開けて真の逸物を呑んだ。

「あたりまえよ」
「これからも」
「そんなこと言うと、ほんきでオチンチンを痛くしてあげるんだから」
 椅子の背もたれを強固に掴んで、両腕で真を囲む。
「なにするの」
「わかっているくせに」
「おま×こ擦り切れるくらい。そんなことしたら遼子のほうが負けて、
お漏らしするんじゃないのかな」

349名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 22:15:58 ID:dkf2nZCC
 真の怒張が膣内に居つづければそうなるのかもしれない、
という不安は確かにあった。
 エキサイトして恥骨を真に烈しくぶつけていれば、真にスポットを突き上げられたなら
その前に尿の溜まった膀胱が攪拌されてどうなるのかなどわからない。
「そうなっちゃう・・・かもしれない」
「して、びしゃびしゃって」
「だっ、ダメよ。やっぱりダメ」
 遼子は早口になって、捲くし立てた。

「遼子、出して。だしてったら」
「バカ言わないで」
「どうしてバカなんだよ」
 拭いてどうこうの納まりでは済まない。
「こんなとこでしてしまったら、臭くなっちゃうのよ」
 いくらフローリングとはいえ、尿が滲みこんでしまったなら、もう取り返しはつかない。
とりかえし……。遼子の瞳は迷子のように彷徨いそうになっていた。

「どうしたの」
「ううん、ななんでもないわ」
「ぼくも手伝うからさ」
「そんなこといっても取れないの」
「知っているんだ」
 臭いことで性的興奮があるならそれでもいいかもしれないと思ったら、真の肉を
挟んでいた遼子の両太腿の付根あたりが、ひくひくと痙攣し出した。
「ば、ばか言わないで」
「遼子の怯えた貌、とってもいい感じ」
350名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 22:21:34 ID:dkf2nZCC
 真が下から腰を浮かせ、積極的に腰を振り出し遼子は呻いた。ガラス張りの
温室のような場所で知った。
 失禁してソファーのクッションに滲みて、乾いても降り注ぐ陽光に蒸れた匂いが
遼子の鼻を刺す。そこには須田の精液もかかっていて。
「ばか。お、怯えてなんかいないわ」
 嫌な臭いだったけれども男といっしょになって、稚い遼子も興奮した爛れた
時間をすごした。

「ちょっと考えていたでしょ?」
 真は遼子に屈託なく笑ってみせる。
「う、うん」
「いくら遼子の匂いでも臭きゃ、困るよね」
「ばっ、ばかあっ、あっ、あっ」
 真の白い細腰は素早く動いて遼子を責めた。

「はやくいじめて。遼子が振らなきゃ、ぼくが終わんないからね」
 遼子は真と顔を正位置に持っていって頤を引き、お臀を振った。真の右の掌は
遼子の臀と脾腹を行き来しながら、直腸に挿入されている真の左の小指が遼子の
窄まりを掻き廻している。
 置いて行かれまいと遼子も追いかけた。椅子の四脚はフローリングに細かく
タップを踏んで、それでもすぐに、真のストロークを追い越していって、
遼子のペースに持ち込んでいく。そうなるはずだった。

「はっ、はあ、はっ、あ、あっ、あっ、あ……ゆっ、ゆ……きっ……」
 ついに耐えられなくなって、遼子は軟体動物になり、がくっと真の躰に覆い被さる。
真は遼子の腋窩に手をくぐらせ、背を撫でた。それから、ちょっとしたいたずらを。
 やさしさの手は滑り降りて、遼子の臀部のやや上。下から上に遼子の背の窪みを
おもいっきり爪で掻き毟り、真は肉槍で下からガク、ガクッと突き上げ止めを刺した。

351名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 22:23:10 ID:dkf2nZCC
 射出される夥しい精に遼子の意識は混濁する。
「あっ、ああっ……」
 息を吐いて唇をOのかたちに咲かせる。脱力しつつ、ウンチをひり出すように
いきめといわれ男にアナルエントリーをされた。
「リョウコ?」
「んんっ……」
 妖しく男に操られ、少女も男を手に入れた。白閃光の舞う陽のなかで。

「遼子」
 椅子の背もたれを両手でひしと掴んで、真の躰ごと椅子を揺さぶれば、
遼子の中であのときの雪が降り続ける。
「なに……シン」
「最後になんて言おうとしたの」
 落ち着いて、果てた躰を真に撫でられ遼子はめざめる。

「ゆき」
「どうしたの」
「降っているの。まだ……」
 遼子は真の肩に頤を載せて、うつろな瞳でダイニングの橙色の灯りを見ていた。
真の手が遼子の後頭部を撫でている。
「ずっと。雪が強風に舞ってななめにふってくるの」

「遼子……」
「オレンジのなかで。とっても、きれいなのよ」
 遼子は館でカーテンを引いて、夜の外を眺めていた。
真が顔を捻って、遼子の見ているものを向くがなにもない。見えるはずはなかった。
「おかしくなったの。それにここでも」
「そんなんじやないの。灯りにチラチラと映って、ほんとにきれいなの」
352名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 22:24:59 ID:dkf2nZCC
 滞在予定の五日を過ぎた真夜中に遼子は揺り起こされていた。
「りょうこ。起きなさい」
「は、はい。おじさま……」
 遼子は寝ぼけていて、男の股間に右手を持っていこうとしていた。須田は
それをほっといて、右手で遼子の頬をぴたぴたと連続的に軽く叩いた。
「遼子、遼子、遼子」
「ご、ごめんなさい」

「いいから、服を着なさい」
「はい、おじさま」
 ベッドに載せられた衣服に、遼子は手を伸ばして引き寄せた。置時計を見ると
十一時半を差していた。
「これからみんなが行った場所に、遼子を連れて行ってあげよう」
 館から菜緒子と悠美。奈緒子の姉の茉織もいなくなっていた。
「菜緒子姉さんも悠美姉さんも帰ってなかったの……?」

「まだ、いるよ。茉織もだ。今度遼子が来たら、連れて行ってあげようと思っていた」
「うれしい、おじさま」
 遼子は今朝方、三人の娘たちが館から消えたことを知って、須田に訊いていた。
もうこの家を出て行ったよ。そういわれて、前日に悠美が熱心に遼子に作法のことを
教えていたことを思い出していた。

『遼子はもうここにはこないかもしれない。もしかしたら、またやってきて、
わたしたちと逢うことがあるかもしれない。そのときは、このことを思い出して』
 菜緒子をより慕っていた遼子だっただけに、悠美のやさしさともいえた言葉は
強く印象に残っていた。
「遼子にはつらいことになるかもしれないよ」
「がまんします」
「いい娘だ。わたしは車を用意してくるから、準備が済んだら玄関までおいで」

353名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 14:14:11 ID:dI5fuuRt
 遼子は含羞をみせていた。かげろうのようなその儚さ。須田は遼子に
お前の笑顔が好きだといった。その笑みはおとこの性欲を否定してしまうともいった。
花を散らせるという男の嗜虐心を満すものでもあったけれど。遼子はなにを
示唆されたのかもわからずに須田をもとめた。

 片手で遼子は頭を抱き寄せられ、唇を奪われて反射的に唇を開いた。
かるく重なり合う口の肉感は、ねざめの遼子のこころにやさしいペニスとなって
ずぶずぶとめり込んできた。
 遼子の口腔には唾液が溢れてくる。こぼれそうになって遼子は口を離され、
顔を男の肩に埋められて後頭部を撫でられる。少女の唇からおんなに成り切れていない
躰とおなじ頤を伝い、したたりは須田を濡らす。遼子の黒髪をかきわけて、
尖って覗く耳殻をほんのりと赧らめた。

「ほんとに、がまんするんだよ」
 毛布は遼子の躰から既に滑り落ち、下半身を隠すだけになって、真っ平らな乳房の
喘ぎを男の胸板に伝える。
「はい、おじさま」
 男の手は名残り惜しそうに離れていった。男女(おめ)の交媾の匂い、
男根を挿入された淡いの痛みもまだ馴染まない。
 遼子は釦に手をかけ、レモン色のパジャマを脱ぎ始めた。こわれそうなほど痛かった。
粉々にはならなくとも、されれば痛みに首を竦め、裸身は内側に反って交接を覗く繭となる。

 烈しく抽送されたなら、遼子は羽ばたくように薄い胸をいっぱいに須田へと突き出し、
男のためにきれいになっていって仰け反りはするけれど厳しい現実だった。
 それでも絵があって、雪の駅の痛みが遼子を記憶から離さないでいる。
雪に隠れている線路の上に裸身を横たえていても電車は来ないが、遼子は圧搾機に
放り込まれる痛みを知って、茉織、菜緒子、悠美たちと……交わった。
そして今ならわかる文子と隆の関係。

354名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 14:21:09 ID:QPAB/F/H
スレ容量480近くになったな。
355名無しさん@ピンキー:2005/11/24(木) 21:00:50 ID:ewd/cmcR
 上着を脱いで男とのつながりを記憶した、乳房からパジャマの下に隠れている
股間を眺めた。遼子はベッドから降りてズボンとガールショーツを脱いで
畳んで枕元に置いた。
 孵化したまばゆい妖精は裸身をひとりさらしながらドレッサーの前に立った。
 黄色味がかったブラウンの枠の上には、透き通った硝子に桃色の薄く溶け込んだ
五枚の花弁。その先を外側に繊細に反らして咲かせている百合が一輪あった。

 抱擁はセックスの体験となってよみがえって、遼子の肉情をリフレインさせ
熟成させようとする。
 鏡木枠の左上部に設置されている、花を模した傘の頭頂の摘みを摘んで廻し
もうひとりの遼子と向き合う。ぽうっとして唇を半開きに、目元が腫れぼったい。
「かっこわるい」
 鏡におどけてみせる遼子の発話。

 館から帰ってしまったと思われていた菜緒子と悠美がいて、茉織もまだいるという
知らせにも遼子は心傾いていた。
 須田とふたりだけで残りの日を過ごせたかもしれないことが消失した落胆と
新たな昂ぶりにとまどいながら、男がいった遼子にとって辛いこととはなんなのか
気にしていた。

 遼子は右手を口に持っていって、中指の頭で下唇の中央にそっとさわってみた。
唇を擦りあった程度なのに、須田の余熱がのこっていてじんじんとしていた。
 舌を出して上唇を舐めて、閉じないままで唾液をコクリと嚥下した。首筋が張って
交媾の痛みを堪えるようになった。
「かっこわるくなんかない……よ」
 数時間前にはドレッサーチェアに腰掛けた、男の股間に遼子は顔を埋めていた。
男の怒張を口に含んで、頭を撫でられながら遼子は顔の律動で応えた。遼子の頭にある
掌にも力が加わって旋律は加速し、深く肉棒を呑んで小鼻からは苦悶の呻きを洩らした。
356名無しさん@ピンキー:2005/11/24(木) 21:36:15 ID:ewd/cmcR
『んっ、んっ、んぐっ、んっ』
 白木の箱の蓋を取って京塵紙を取り出し、須田との抱擁にもよおした口元のよだれを、
遼子は鏡を見ながら拭い取った。それでも拭えないものはあった。
 須田との戯れの絆に遼子は没頭して、少女は男とおま×こをしていましたという、
女のあけすけな貌をつくってしまっていた。
 王様のように尊大でありながら、裸でいる須田の格好に遼子は愛らしさを
密かに感じて、すまないとしながらも決してかっこのいいものではない、と思った。
『んっ、んっ、んっ』

 茉織が全裸でドレッサーチェアに腰掛け、躰を正位置から三十度ほとずらして
開脚していた。遼子は素描をする須田に抱かれながら茉織を見ていた。
 遼子と須田はベッドの縁に腰掛けていた。遼子の股間は肉棒に突き刺さっていて、
背を須田の胸板にあずけていた。鼻息も荒く遼子の呼吸は乱れていた。
「はっ、はっ、あっ、あっ」

 肉の結び目はスケッチブックに隠れ、画紙の上を素早く走る、シュッシュッ、
という連続する小さな耳障りな鉛筆の音は、須田の胡坐の上にお尻を落として喘ぐ、
遼子を小パニックにさせ、心の中の何かをこわしてしまいそうになる。
「あっ、あっ」
「遼子。ま×こをみてごらん」
「まっ、ま×こ……。茉織、姉さんの……」

「みなさい」
 スケッチブックを持ちながら遼子の胴を囲む腕を掴みながら、踏ん張るように
躰を跳ねさせた。
「はっ、はいっ、うっ、うあっ……」
「ビラビラがすこしだけ見えちゃっているだろ。ほら」
 須田はスケッチブックと鉛筆を置いて、遼子の腹部で両手を組んで揺らし、
下腹の捲れた核(さね)を指頭で擦った。遼子は治まり悪く、ぐらぐとしていた顔を
烈しく振り立て、熱くなってあらたな涙で頬を濡らした。
357名無しさん@ピンキー:2005/11/25(金) 19:00:10 ID:mMpOcpte
「んあああ――っ、あ、あっ、やっ、やああっ」
 稚いヴァギナはいっぱいに拡げられ、だのに須田のペニスを懸命に離すまいと
頬張っている。遼子が刺し貫かれて串刺しになっている肢体を茉織が今度は見ていた。
 醜悪さをあこがれの茉織に見られながら遼子は泣いて、須田に貫かれていても
股間に感じてしまう、押え切れない茉織への熱情。妹の菜緒子とは頭ひとつ分の
身長差があり(遼子から見れば、文子と深静との区別はつくものの、菜緒子と悠美も
大人とさして変わらない)、女とも少女ともつかない存在感で肉迫する。

 男と女は全裸であっても、ただ椅子に座っているだけで絵になって、特に茉織は
なぜにこうも印象が違うのだろう、と思った。
 隆とのお風呂からのことが続いていて、つながりを想えば、ほんとうはあのときに
隆とこうなっていたかったのでは、と思うが、この世界がすべてになった暗転しそうになる。
精神も肉体も遼子は爛れていた。白い壁の少女に近づこうとする遼子だった。

 茉織が椅子から立ち上がって、須田に肉棒を突き立てられ、性的快感にではなく
あくまでも生理的に感じているだけの遼子にゆっくりと近づいてくる。意識した。
 須田の太腿に掛けた遼子の細く華奢な両脚が閉じたり開いたりを繰り返した。
乳房には羽のように胴を撫で廻されていた、両の掌が覆い動かなくなった。
軟体動物になった遼子の裸身を支えていた。
「遼子ちゃん、きもちいいの」

 茉織の瞳に遼子への悋気は皆無で、文子の瞳に似ていて、やさしかった。肉棒で
相の変わりつつあった遼子は、須田に性欲を削ぐものだと言われていても、
笑顔で茉織に応えようとした。
 数日前の遼子は瞳を細くして、含羞と細かな歯をみせながら、ちいさな顔にあふれる
笑顔で人を無防備にさせ、遼子の側に引き込んで華やかな気持ちにさせてしまっていた。
なにも穢れを知らなかった笑顔は館で交媾を教えられ、翳りが射して微かな艶を放ちだした。
 遼子は呻いてよだれを垂らし、自分の胸元を濡らした。含んでいた肉棒は膣内(なか)で
嫉妬するようにあばれて跳ねた。
358名無しさん@ピンキー:2005/11/25(金) 20:16:59 ID:mMpOcpte
 須田はふたつの掌を遼子の胸骨に埋め込むみたいに圧した。遼子は須田と交媾をして
茉織の目の前で罪の意識に苛まれて揺さぶられながら、動悸が早鐘のように
鳴り響いていた。
 ペニスを口腔に咥えていて、男の手が頭に置かれている感覚。望む旋律を
男は伝えるわけでもなく、ただ遼子の髪をさわるかのように置いているだけ。
自発的に遼子は顔をストロークはさせているのに、ささいな圧が遼子の脈拍を速める。

 遼子の緊張が高まってから、はぐらかすように須田は掌を脾腹に移動させた。
今度はさらなる圧力を遼子に加えるために。
「あ、あ、あああぁぁぁ――ッ!」
 遼子は裸身を捩っても鎖は解けない。茉織のくちびるが遼子の乳首を捉えようと
降りてくる。圧力から解放された遼子の乳房は、じんわりと熱を孕むみたいになって、
そこを茉織に吸われてしまう。

 花のように綺麗に咲かせたかたちの手を、遼子の左脇にそっと置いて、
須田に揺さぶられている左太腿にだけ茉織は弄りをしかける。
「あっ、ああっ、お姉さまあぁぁぁ……、はっ、はっ、はあ、はあ、はあっ」
 遼子の黒髪と茉織の黒髪がもつれあった。須田の掌は脾腹も離れ、波うつ遼子の
下腹に下りた。少女の骨盤の両の突起を人差し指から小指の頭でちいさく撫で廻し、
太腿と胴の付根すうっと滑ってきた。

 濡れてはいても痛みを感じている遼子の下口。醜悪な男根とやさしいかたちをしていた
遼子の秘所との肉の結びを見つめ挟むように羽となって、親指をはずした八つの指頭で、
遺物のせいで波うっている下腹を擦りあげる。痛みの記憶に拒絶反応を示したみたいになった
遼子は烈しく跳ねて痙攣し、裸身を反らし強張った腹部を茉織に向かってぐんっと突き出す。
 茉織は遼子の変化に菜緒子を重ね、無垢で柔らかい遼子の腹部の変容と臍の窪みに
異様な関心を示し、劣情をもよおした。太腿から鼠蹊部、遼子の腹部に移動しようとした
茉織の手を須田は掴んで指を絡めた。奈緒子のようになることを、須田は止めようとしていた。
359名無しさん@ピンキー:2005/11/26(土) 01:02:24 ID:DUj+7uO6
「いかせてッ!」
「遼子の核(さね)を舐めてやれ!茉織!」
「あっ、ああっ、あっ」
遼子の脾腹にはタナトスに抱かれた痕跡とも思えた、肋骨をくっきりと刻んで、
生臭い声で喘ぎ禁断の場所につれていかれた。深静が遼子に快楽は罪だといった
蝕のはじまり。家で待っている文子のことを思えば罪にはなんらかわりないことだけれど、
菜緒子と悠美とで躰を舐め弄り合って過した、快楽への没頭した涙とはどこか
異質なものだということがわかった。

『んっ、んっんっ』
ため息に近い遼子の口腔性交の小さな苦悶のみだら声。下腹の蒸れたおとこの匂いが
遼子の頬を上気させ、胸元でさえも赧らませる。こめかみは汗に濡れて髪は乱れ、
額や頬にほつれ毛がへばりついていた。
 遼子の凄艶さは、須田の太腿の脛毛や下腹には剛毛が密生する下腹に屹立した
肉棒の醜悪の極みに、稚い口腔で触れながらも、控えめであっても抗う態度だった。

 鏡の奥に映し出される遼子と須田の両脚がもつれあう、破瓜の夜からの粘膜による
擦れ合いではなく、純粋に肌と肌のふれあいにこそ、男女(おめ)の密に至る
夢をかけようとしていた。
 手と手を繋いで指を絡め合うだけで遼子は満足だった。須田の他にそこにはもうひとりいて、
連れて行ってもらえば、また逢えるという歓びに遼子は、無毛の下腹の裂から女蜜を
とろりと吐き出して濡らしていた。

 人肌のかけらを瞼の裏に映しだした遼子は随喜の熱に弾けて下腹を波うたせ、
須田の肉瘤を喉頭に無理やり押しやって、あふれる唾液と唇と舌で懸命に扱いていた。
深静のような喉奥を締めることや、ましてや茉織ほどの体力もなく、
恥戯の稚拙な遼子は徐々に置いて行かれ、気力はあっても頬を窄めることに辛さを、
舌も引き攣りそうになってしまっていた。酸欠に近い症状は遼子の頭を朦朧とさせた。
360名無しさん@ピンキー:2005/11/26(土) 01:28:50 ID:DUj+7uO6
『遼子、もういいから』
 頬を撫でられて、遼子はようやく瞼を開いて須田を仰ぎ、口の中の怒張を
そっと吐き出すことに注意を払いながら、舌に最後まで載せることを努めて、
裏筋を舐め取るようにして外気へとペニスを解放してやった。
『はっ、はあ、はあ……はあ、はあ……』
『ここに来なさい』
 肉体が弛緩しそうになって、次の目的に遼子は縋った。おんなとして生きるという
韻を須田に踏まされて。
『はっ、はあ、はあ……はあ、はあ……おじさま……いま、いきます……』

 椅子に腰かけている遼子の縦溝からは男を招き入れる体液が溢れて、こゆい緑色の
座部に貼られたビロードクッションを濡らしてしまった。
 割れ目に収まるべき肉棒はなくて、須田はいま遼子をべつな場所につれていってくれる
車の準備をしていた。でも、引出しの中に。口元を拭った塵紙で遼子はクッションに
滲みをつくらないよう慌てて拭った。生地には細かな白い粉らしき痕が付いた。
鏡から躰をずらした遼子は、お尻を椅子の縁に持っていって開脚し、
白木の箱に入っていた京塵紙を数枚また取り出し、覗きこむようにして自分の股間に
そっとあてがい擦って、背を丸めて竹で編んだくずかごに捨てた。鏡の自分を盗み見しながら。

 遼子は須田の股間から立ち上がって、お尻を向けた。細い両脚をいびつながにまたにして、
爪先立ちながらそそり立つ肉棒に指の狭間に固定し、遼子の縦溝をあてがって慎重に腰を沈めた。
痛みの喘ぎは遼子の脾腹にすぐにあらわれ、うしろから須田に躰を支えてもらっているという
状況が遼子を烈しく興奮させていった。そして、この滑稽なまでの自分の格好。
 須田は遼子が沈み切ると、繋がった躰を静かに動かして鏡を見せた。姿見ではなかったので、
少年のような胸と、遼子の躰では隠しきれないでいる、少女をたべようとしている
逞しい男の肉体が映されていた。須田に載った遼子は、人形を抱かれるようにして
くまなく愛玩された。
361名無しさん@ピンキー:2005/11/26(土) 02:13:31 ID:DUj+7uO6
『遼子、もう馴れたかい』
 須田の掌が遼子の肌をねっとりと舐める。
『……』
『どうした』
『わ、わかりません……』
 遼子は、交じる、交じわらないにかかわらず、須田の膝に載せられて最後の夜を
いっしょに過していた。鏡に映される角度は微妙に変化していた。

『おちんちんのかたちは、もう好きにはなったか』
『……』
『じゃあ、また練習しなくちゃな』
 須田はドレッサーに置いていた、シリコンの模造ペニスを取って、遼子にスイッチを
入れさせた。
『さあ、咥えてごらん』

 須田は喉笛を掻き切る短刀のように持って、遼子の唇に近づけた。唾液がバイブで
引伸ばされて、遼子の二番目の性器を擦った。遼子の顫える肉の尖り。
『瞼は瞑っちゃいけないな』
 瞼を薄く開いてしまった遼子の泣き顔はいびつになって歪んでいた。茉織には遥かに
遠くなった。

『んっ、んんっ』
 息を継げないで遼子は小鼻を膨らませた。相の変容を目の当たりにして、
遼子の頬には恥辱の涙が伝う。須田は模造ペニスを遼子のほんものを含んでいる
下腹に持って行こうとした。不気味な振動が肉の結びに降ろされて、遼子はけものの声を
張り上げていた。
『うあああっ、うあ、ああっ、あ……』
『遼子、舌を、舌をだせ。早くッ!』
362名無しさん@ピンキー:2005/11/26(土) 02:44:32 ID:DUj+7uO6
『はっ、はっ、はあ、はあ、あ、ああ……あ』
 口蓋垂までも見せるように、大きく口を開いて、遼子は犬みたいな声で
息継ぎをしながら荒れてなどいないきれいな舌を鏡に晒した。昨夜からの須田の
遼子への指示だった。
『遼子はそんなにチンポが咥えたいのかな』
『は、はあ、はあい、はあ、はあ、あ、あぁ……あ、あ、あっ』

 遼子はゆっくりと瞼を閉じて須田に躰をまかせる。鏡の前でいっぱいに
口をあけて舌も十分過ぎるほど出した自分の顔がどんなものかは確認した。
 舌先を遼子は唇で挟んで、そこを紫と赤と黒の入り混じった須田の尖端で
こじ開けられ含まされる絵を想い描く。上と下からも責められ、苦しむなら一気に
してほしいという気持ちでいっぱいになりながらも、苦悶の時に遼子はたゆたう。

 遼子はドレッサーのチェアに座る須田に、背をあずけて跨って串刺しになり、
須田の欲望を下から繰り出せない分、模造ペニスで喉奥を抉られることを甘受する。
『ぐふっ、んぐっ、んんっ、んっ』
『ロッキングチェアのほうがいいかもしれないな』
 それでも、壁にもたれて開脚して、恍惚となる少女の絵に繋がっていると思うと、
耐え忍ぶことができるのだった。
 
「んッ」
 鏡に躰を戻して唾液を喉奥に流し込む、遼子の小さな声。背中の軸骨を少女は
背になにごともなかったように戻して、少量のラメの入ったピンクのコームを取った。
遼子は濃やかな黒髪をていねいに梳いて、引き出しから二つのヘアピンを取り出す。
こなれた仕草で両サイドから髪を捻って一本、二本と後頭部に持っていって、
唇に挟んだピンで留め、ふたつの捻りを加えた髪束を茉織がくれたパールの髪飾りで
ひとつに仕上げた。まだ両脇を鏡に映したまま、ピンがちゃんと髪に隠れているかを
遼子はしきりに気にしていた。
 絵画教室にあった精彩で緻密な大作の少女を描いた油絵が、遼子を茉織に何度も
近づけていった。
363名無しさん@ピンキー:2005/11/26(土) 21:33:03 ID:DUj+7uO6
 両サイドからのひねりを咥えたふたつの髪束に挟まれた漆黒。脆弱なる白い背に
垂れる流れは、男の嗜虐心を満足させるたぐいの怜悧をも装っていた。
 裸のままの遼子は、須田からもらったアンティークのハートを臙脂色の
ジュエリーボックスから出して胸元に飾った。ロケットの中にはなにもなかったが、
四日間のここでの想いが込められていた。
 遼子はベッドに戻って、白いオーバーニーソックスを穿いて爪先を黒靴に入れ、
ストラップをしめる。遼子はベビーピンクのコートに裸身を包んで白い釦を嵌めた。
 裸身にコートの裏地は違和感があったが、襟周りの白い毛皮が心地いい。
遼子は物語を紡ぎに須田とふたりで交わった部屋を出て行った。

 エントランスに出ると、さすがに寒い。須田が待っていて車の向側に、
赤いテールランプが闇の中に消えていったのを見た。
「寒くはないか」
「いいえ」
「車の中はヒーターが効いているから、早く入りなさい」
 個室の不自然な熱さは、遼子は嫌いだった。駅で裸になって素描されているよりも、
楽ではあるけれど。針の刺すような痛みはない。
「はい、おじさま」
 先に出て行った車のほうの闇を見ながら遼子はドアを開けてシートに座った。

 館を離れ、車は雪の降る闇の中を走って遼子をどこかへと連れて行く。
『もしも、遼子がまた来ることがあるなら、館の人たちに逆らってはダメ』
『わたし……』
『悪くはなくても、あやまるのよ。いい、わかった』
『……』
『従順さが癇にさわる人もいて、お仕置きもされるの。それでもあやまり続けて』
『はい、悠美姉さん』
『でもね、ちゃんとご主人様に理由は訊かなきゃだめよ。どこがいけなかったのかを』
「すぐにつく」
 遼子は右手を須田の太腿に置いた。
「はい……」
364名無しさん@ピンキー:2005/11/26(土) 22:24:16 ID:DUj+7uO6
 遼子の右手は須田の太腿に五指だけを押し付けて擦った。
「遼子、チンポをさわってくれ」
「はい、おじさま」
「出さなくていいからな」
「わかりました」
 闇に囚われていた力が遼子の手から、すっと抜けて須田の股間をさわった。
肉棒はふくらみかけているのがわかって、遼子はいったん手を戻し、
シートベルトを外した。

「出さなくともいいといった」
「だめだ、直ぐに着く」
 べつに急ぐことではなかったかもしれない。引き渡すのがたとえ遅れても。
「おねがい」
「ダメだ」
「じゃあ、上から舐める」
 遼子は須田の股間に助手席の横から顔をもぐりこませた。黒髪が闇に妖しく
揺れ動いていた。魔物、そんな言葉が不意に浮ぶ。なら、遼子に肉情を抱いている
自分は何者なのかと須田は苦笑しながら、車は細道に入り込んでいった。

 遼子は須田と添い寝をしながら、肉棒を指でいらっていたことがあった。
『なにをしているんだ』
『ごめんなさい』
 乳房を上から須田の胸板に置いて、寝ていた須田に頭を抱かれていた。遼子の手淫に
覚醒して須田は訊いていた。
 遼子は親指と人差し指、そして中指を駆使して、くにくにと動かしていた。
これなら起きないだろうという加減で。
『怒ってはいないから』
『……』
『どうした』
『ひゃっ……冷たいの。おじさまのチンポ、ちいさくなっているの。死んでいるみたい』

365名無しさん@ピンキー:2005/11/27(日) 00:55:50 ID:q4m9+NBF
『遼子がほしくてそうなる。そんなことしていると、ほんとにお股に入れるぞ』
『おこりんぼになるの。なら、遼子にいれて、おじさま』
 灼ける肉棒が、冷たくなっていたことを遼子は単純に心配していた。茉織のときにも
似たようなことがあったことを思い出した。菜緒子、悠美にもそれに近い体験があって、
少女の性的な好奇心によるものだと解釈していた。
 生まれながらの少女は母。そしておんなでもあった。

 朝霧立ちこめる中にひとり。遼子はワインと湧き水が吐息になって絡み合う
夢を見ていた。比率でいえばシーツが6で血が2。燐光のように光る水の色が1。
遼子は白にやさしく抱かれながら血の色が天上侵食し始め、かろうじてアクアブルーが
片隅で自己主張をした。それもいまは時間の問題。遼子は須田の胸板から降ろされて、
側面から責められた。
『あ、あっ、あっ』
『さむくはないか』
 男の唇が肩口をねぶりながら遼子の粒状の乳首を吸い立て、陰裂を指弄した。
『あ、熱い。熱いッ!』

 痛みは依然として存在しても、遼子は男に抱かれることの迷いは無くなりつつあった。
アトリエで見た男の大作の絵が遼子の頭を掠める。夢のようでありながら、緻密な筆致は
恐怖すら覚えた。白い壁に塗り込まれるように、クィーンタイプのソファーに黒髪の、
モノトーンだったからたぶんそうと思うだけで、少女が腰掛ける像が結ばれて、
除々に色が付いてゆくのは遼子自身だった。

 須田は遼子の両脚を束ね、軽がると上げて横臥位での挿入を試みた。男が肉棒を掴んで、
濡れた遼子に尖端を近づけた。須田は自分を横臥位の受け月に見立て、遼子を仰臥にし、
男の描く月に腰掛けさせる絵を完成させようとしていた。
 皮膚組織が壊死したような赤銅色の節くれ立った偉容。遼子の臀下の夢想に
圧倒されながらも、やがて来るほんとうの時を待つ。
366名無しさん@ピンキー:2005/11/27(日) 01:18:43 ID:q4m9+NBF
 遼子は男を抱きしめたくて、華奢な胴を捩り、両腕をじたばたとさせていた。
『遼子、見るんだ』
 月に腰掛ける遼子は須田と互いの頬を擦り合せ、頭を抱かれていまのかたちを
まざまざと観せつけられた。ファンタジーを掻き立てる装置に遼子は興奮し、
瞳を潤ませた。
 すべてにおいて美しいセックスではなかったが、アクティビティに男女が求めだすと
渦の中に埋没した。
 喉頭を抉られる苦しみの涙を知り、惚けた顔で半開きにした口から愛らしい舌を
だれに向けるでもなく差し出して、下腹に逞しい肉棒をまた稚い女陰へと
迎え入れようとした。
 男を受け入れる自分がかわいいと思って、遼子の総身に残酷な快美感が走る。
 弱々しい声質。ミニマルミュージックが流れる。泣きのカテゴリに属する
タイプのものだったが、遼子がいま、交媾での甲高いあられもない声を上げていた。

 少女を犯す。
 だからといって愛でないわけではない。かといって愛し過ぎているわけでもなかった。
でなければ勃起した肉棒で交媾に及ぶことすらできないだろう。
 泣き腫らした顔で遠くをみつめる遼子。
 男は片肘を突いてじっと遼子を見下ろしていた。
 人形に宿っていた魂がどこかへ行ってしまったのではないかとさえ思えてくる。
 忘れていた痛みが遼子と須田に蘇っていた。
 遼子は男の視線に気づいて、微笑を送った。なぜそんなことができたのかもわからなかった。
367名無しさん@ピンキー:2005/11/27(日) 02:07:33 ID:q4m9+NBF
 気持ちまでも裸になったのか。どこかで、男を心配させたくなかったからなのか。
少女でありながら、すでに母ともいえた。
 アクロバティックな体位とか緊縛を用いた女体の変容。それを覗けば交媾の種類は
限られていた。存在が無になるセックスを須田は遼子に処した。
 膣内にあった果てた肉棒はこわれたように血汐を装填し膨張した。須田はふたたび
遼子の両脚を束ねて片腕に担ぎ、遼子を二つ折りにして愛した。

 クリムトの接吻に描かれている至福の顔。
 もしくは入水して、胸から顔、両の掌をかかげていた、ジョン・エヴァレット・ミレイの
悲劇の姫オフィーリア。忍びよるタナトスの翳り。須田の腰の律動は遼子を
抉るようにして加速した。
『くっ、くるしい』
 仰臥して烈しく顔を振る遼子の黒髪はボリュームを増した。
『遼子!遼子!りょうこ!』
『いっ、痛いっ』
『がまんしろ』
『痛いのはいやああっ』

 エレクトした肉棒に抉り立てられる突きに遼子は跳ばされないようにと、
必死になって男に守ってと躰はいっている。
 須田は、ひ弱な少女がより儚く守るべきものとして、自分を抱きしめてくれようとする
母のようにも思えた。乙女の気持ちを壊すに等しい、相反した行為に男の肉情は弾けた。

 男の渇きを癒そうと獣欲に身をゆだねて、力で組み敷かれる、性愛を受け入れるだけの
遼子は、なんとか躰を捩り、たくましい首に両腕を巻きつけ縋っていって――
世界でひとつの存在として認めた。
 きっかけはいつも些細なことだ。安っぽくても心はときめく、きらきら光る
硝子のビー玉を見つけたみたいになって心は昂ぶる。
368名無しさん@ピンキー
 唐突で理不尽な破壊の抽送に遼子は耐えられなくなって、眉間に縦皺を刻み
眉を吊り上げていた。口蓋垂までもを見せて、遼子は泣き叫んだ。
『遼子、繭になれ』
 須田が引き起こした嵐に、遼子の絡んでいた腕は、荒れる白い波に投げ出され、
折れた枝のようになっていた。少女の細い腕はマネキンの無機質ぶりを見せ付けて
小さく跳ねた。指は花のように咲いたかと思えば、くなっと手首を折って須田を誘った。
曝ける少女の柔らかな腋窩を貪り吸いたてる男の唇。
『あっ、あっ、あ』
『繭になれ』
 頭上に両手を上げられ、踊らされる遼子は、シーツの白波に磔の贄。
血汐の滾る男根に、遼子の孔はいっぱいに拡げられ、裂けよとばかりにビルドアップし、
交媾の果てへと近づこうとした。永遠と思われる苦悶の回廊にけりが付いた。
 無理やり連れて行かれた場所で、無上の歓びに男が先に往く。
苦行にも近い命を削られるような行為に遼子は顫え、白閃光に灼かれる前に意識は
闇に滑り堕ち、須田のこわれてしまった律動は尚も続いていて、徐々にゆるくてなりはしたが、
最後はズン!ズン!と腰を振り穿たれて、心地よい疲労感に浸って、もう一度突上げて
呻かせてから遼子の横に躰を動かした。秘所への肉棒の攪拌は収束した。
 眠りから醒めた時に、仰臥した男の右視界には遼子の背が映って、
介抱してやらなかったことを後悔した。遼子は須田の所業の荒淫の痕を眺めているのか、
頭を落としたまま動かない。後ろから見る少女は寝起きのようにぼうっとしていた。
 暗がりにおぼろに浮かんだ像。白い背には肩胛骨の尖りとチューブのような細い軸骨を
立てに走らせている。男の腕が伸びて、痛々しい姿に掌がふれて撫でた。性懲りもなく
勃起してしまいそうにはなるが、いたわりの言葉を須田は遼子にかけた。
「おこりんぼだった。遼子、怒っているか」
 少女は頭を落としたまま横に顔を烈しく振った。男には遼子がどんな顔でそうしたのか
見ることはできなかった。