成人向けオンライン小説の筆者によるアンソロ Part2

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 漆黒の闇の中、ゴボゴボという音が近付いてくる。
 私は身じろぎすら出来ない、四つん這いの姿勢のまま、身を硬くして
これから起こる出来事に身構える。
 しばらくすると、大きく拡げっぱなしにされたお尻の穴から、冷たい
液がゆっくりとお腹の中に注がれる。
 それは少しずつ体の中心へと染み込んでゆき、じわじわと圧力を増し
てゆく。

 突然、嵐のような便意が私を襲う。
 悲鳴すら上げられない状態の中で、耐え難い圧迫が私を苦しめる。
 残酷な注入は規定量に達するまで止まらない。
 この「殻」の中でどんなに全身を小刻みに震わせてみても、張り裂け
そうな苦しさは全く外に伝わらない。
 穏やかに形造られたまま固定されている自分の表情が恨めしい。

 やっと注入が終わり、便意は最高潮に達する。
 身もだえも禁止。
 絶叫も禁止。
 ただひたすら密閉された空間で脂汗を流し、次々と強弱を繰り返す
便意の波に堪えるだけだ。
 暗闇を見つめる瞼の裏に星が飛び、意識が消え入りそうになった頃、
突然圧力が解放された。
 溜まった汚物の塊は溶解されて吸い出され、その解放感にしばし
陶然となる。
 しばらくすると、今度は温かいお湯が注がれる。
 今度は我慢する事なく吸い出され、また温かいお湯が注がれる。
 3回それが繰り返されると私の下半身は軽くなり、死ぬほどの便意に
堪えたことも、数秒後には良い想い出のように感じてしまう。

 1日1回のこの大作業が終わると、こんな状況にありながらお腹が
鳴って、急に空腹感が増してくる。
 1日2回の食事のうちの1回が、すぐに与えられる。
 といっても、口で食べられるわけもなく、口から胃まで差し込まれた
チューブから、流動食が注がれるだけだ。
 無音のまま静かに胃が膨らみ、流動食を洗い流すように水が注がれる。
 それでおしまい。
 あとはまた、静かな闇が広がる。
 しかし、完全に無音・無感覚ではない。
 風の音、鳥のさえずり、車寄せに入る自動車の音、来客の声、庭師の
掃除の音などが聞こえて来るし、日が当たれば温かくも暑くもなる。
 雨の夜は一時的に体温を奪われるが、しばらくすると保温ヒーターで
風邪を引かない程度には温かくなる。

 そして、一番嬉しいもの。それはご主人様の声。
 日に一度は必ず声を掛けてくれる。
 そして気まぐれでスイッチを入れ、アソコに挿入されたバイブを動か
せてもらえることもある。
 何度かに一度は、私の気分と刺激のタイミングがぴったり合い、こん
な姿のままでも激しく逝くことができる。

 そして、ご主人様の気まぐれの中でも、最高のご褒美……
 それが「旅行」だ。
 落ち葉を踏み締める音が近づいてくる。
 それが目の前で止まる。
「2か月、よくがんばったな、沙織。お前の番だぞ」
 その言葉に全身を震わせて歓喜する。

 間もなく、激しい回転音とともに、体中が振動する。
 その振動が顔の回りを縦に一周すると、顔の正面がごそっと軽くなった。
 頭はまだ全部ラバーマスクで覆われているので、ラバー越しにそう
感じるだけだ。
 次に振動が首回りを一周し、頭を覆っていた石膏が全部外れた。
 うなじに手がかかり、全頭マスクのジッパーが引き上げられてゆく。
 封印されていた長い髪がこぼれ、私は外界の明るさに慣れず、思わず
目を閉じた。
 目をしばたかせながら、やっとご主人様を見つめた。
.
がんばれ〜。
 チューブを噛み潰さないためのゴムの口枷が外される。
「ごひゅッ…… ゴホ! ゴホッ!」
「焦るな。今、抜いてやる」
 口から胃まで挿入されていたチューブが引き抜かれる。
「オエッ!」
 一瞬むせたが、すぐに治った。口に酸い味が残る。
「ごひゅりんはま……」
 うまく喋れない。

 見上げる私を無視して、ご主人様は作業を続ける。
 石膏を切り裂くカッターが唸りを上げ、肩からお尻にかけて何カ所か
当てられると、私の全身を戒めていた石膏がバカッと塊で剥がれ落ちた。
 最後に指先が埋まっている部分を丁寧に掘り出され、四つん這いの
姿勢のまま、真っ黒いラバースーツに包まれた私の全身が現れた。
「立って見ろ」
 私の日常を維持する機械が収められた彫像台からゆっくりと降りる。
 スーツに内蔵された電極で強制的に筋肉運動させられていたとはいえ、
平衡感覚すら怪しくなっている私は、力が入らずフラフラと倒れ込んだ。
 ラバースーツから出ている電線とお尻に繋がるパイプを外され、突然
ご主人様に抱え上げられた。
「きゃっ!」
 そのままお屋敷の方へ運ばれて行く。
「軽くなったな」
「じ、自分で歩きます」
「この前のように廊下を汚されたらたまらないからな」
「ああっ!」
 私は真っ赤になった。
 前回解放された時、自力で歩くと言い張って、お屋敷のお風呂場に
着く直前、開けっ放しにされたお尻の穴からドロリと汚物を垂れ流し
てしまったのだ。
「……そうでした。済みません」
 お風呂場に運び込まれると、ラバースーツを脱がされ、お尻に差し込
まれた極太のパイプを引き抜かれた。
「中まで丸見えだな」
「ああ……」
 解放される僅かな時間ではとても筋肉が戻らないので、ほぼ同じ太さ
のプラグで栓をしてもらう。
 プラグは空気で膨らまされ、自力では抜くことができなくなった。

 自分の手を見ると、爪は伸びきり指はふやけてブヨブヨ、体には何層
も溜まった垢がこびりついていて、正直ひどい臭いだ。
 それをご主人様に丁寧に洗ってもらう。
 自分だけでお風呂に入ったのはもう何年も前のことだ。
 このお屋敷に仕えるようになって、まずメイドになって、それから……
 半ばもう思い出せない。
 お風呂から上がると全身に乳液を塗り込まれた。
 自分の汗とともに密閉された空間に浸されて、ふやけ切った皮膚が
急な乾燥にひび割れるのを防ぐためだ。
 そして異常に伸びて丸まっている爪を切った。

 昔あてがわれた部屋へ、ご主人様と一緒に戻る。
 そこは、前回見た時の記憶から何も変わっていない。
 薄明るい部屋のクローゼットからお気に入りのワンピースと下着類を
取り出す。
 お尻の栓を嵌められている以外は、全く普通に下着を着け、フリルが
多めのワンピースを着る。

「着終わったら車庫へ来なさい」
「はい」
 ご主人様は先に部屋を出た。
 ハッとお化粧や身だしなみのことを思い出した。
 そんなことすらすでに忘れてしまっている。
 恐る恐る腕を上げ腋を覗くと、そこはまだ無毛だった。
 完全に専門家の手で処理されてからこの生活に入ったけれど、新たに
できた毛根から生えて来ることもあるそうだ。
 ほっと安堵の溜息をつく。

 鏡を覗く。
 頬がこけ気味なのは仕方ないとして、目のクマだけは避けたいと思った。
 クマが大丈夫なのを確かめて、再び安堵の溜息。

 お気に入りのルージュを取り出し、少しも減っていないのを見て苦笑
し、鏡に向き直って狭めに引いた。
 忘れていた口紅の味が、彫像としての暮らしから普通の人に戻ったこ
とを教えてくれた。
■連続投稿規制解除支援〜。
 車庫に着くと、ご主人様はもう車にエンジンを掛けて待っていた。
「遅くなりました」
「乗りなさい」
「はい」
 オープンカーのドアを開け、幅広の敷居をまたぐようにしてシートに
身を沈める。
「あうッ!」
 お尻のディルドーに突き上げられた。
「不注意だな」
「すみません」
 シートに挟まった洋服を手で捌いて、シートベルトを嵌めた。

 車が車庫を出た。
 車庫から門までの小路の脇に、3体の彫像がある。
 その中の1つ、股間を高々と天に上げるようなポーズの像を見て、私
のソコが熱くなる。
 あ…… あんなポーズのまま……?
 天に向かって割り拡げられた股間からは短い棒が上に伸び、
その上には庭園灯が載っている。
 ああ…… あの棒は絶対あそこに刺さっているはず……
 お尻から台座へ伸びる透明なパイプを見て、あんな姿勢のまま汚物を
全部噴出する瞬間の快感を思わず想像して、淫らな期待にゾクゾクして
しまった。
 車はお屋敷を出て、市街地を高速のインターに向かって走る。
 ご主人様と私の取り合わせが奇妙に映るのか、この車がすごい車なのか、
信号で停まるたびにジロジロと見られてしまう。

 車が高速に乗ると、ご主人は私に野球帽をくれた。
 オープンでも風の巻き込みは少ないが、頭のてっぺんだけはバサバサ
と毛が引っ張られる。
 ワンピースにロングヘアに野球帽。ちょっとおかしくて、クスッと笑
った。

 いったいどれだけスピードが出てるのかわからない。
 左の車線を走る車が止まっているように見える。
 背中のエンジンがカン高い音を立てて熱くなる。
 不思議と耳障りではない強烈なノイズ。
 でも、ご主人様と会話できるほど静かではない。
 ご主人様は黙々と車を飛ばす。
 高速道路の景色の様子から、向かっている目的地をあれこれ想像して楽しむ。
 今まで連れて行っていただいた所のどこかだろうか?
 豪華なオーベルジュで最高のフランス料理。
 露天風呂の温泉。
 プライベートビーチ。

 車は高速を降り、山道へと入った。
 狭い道、狭いトンネル、小さな町、それらを抜て、湖畔の道路から
脇道へ入った。

 ―「レイクサイドキャンプ場」―

 キャンプ場?
 意外な場所で少し驚いた。
 ご主人様は管理小屋で手続きすると中まで車を乗り入れた。
 季節のせいもあり、中はガラガラだった。
 ご主人様は一番見晴らしのいい場所に車を停め、私を車に乗せたまま、
狭いトランクからいくつかの道具と丸い不思議な布の板を取り出した。
 ご主人様がその布の板をくるりと捻ると、とたんにおにぎり形の大き
なテントになった。
 ご主人様は信じられない手際で、次々と電動ドリルで地面に穴を明け
ると、テントの留め金を打ち込み、防水シートごとテントを固定した。

「降りて、中で着替えなさい」
 ありきたりなジーパンとトレーナーを渡された。
 テントの中で着替え、靴もスニーカーに替えた。
「交替だ」
 私が外に出ると、ご主人様が中でジーンズに穿き替えた。
 ご主人様は、小さな折り畳み椅子2脚と、小さなガスコンロ2台を
出して来た。
「気をつけて座れよ」
「はい」
 しかし低く腰を落として座るタイプの折り畳み椅子なのでいくら気を
付けてもプラグは奥へ食い込む。
「……ん…… あ! はぐッ!!」
 お尻の穴ごと、一番膨らんでいる部分が奥底へめり込む感じがして
悲鳴を上げた。
 冷や汗を垂らす私を一瞥して、ご主人様は飯盒にお米を研いで入れ、
ガスコンロの一台に掛けた。

 ぐーーっと私のお腹が鳴り、私ははしたなさに顔が燃えるほど赤面した。
「ハハハ、いつもなら給餌の時間だからな、無理も無い。少し待ちなさい」
「すみません……」
 俯く私。

 火照りを冷ますために顔を上げ、辺りを見渡した。
 山の中のこぢんまりした湖は、秋が深いせいもあってかなり寒々しく、
人もほとんど居ない。
 対岸の一角にウインドサーフィンに来ている人達がちらほらと見え
る程度だ。
 湖面を照らす秋の陽も、かえって山陰の暗さを強調しているように
見える。
 ご主人様は寡黙に火の調節をしている。
 その手元をぼんやり見つめる私の視線に気付き、
「野趣があるのは炭なんだが、この車には積み切れなかったからな」
 と、言い訳した。

 こうしてぼんやりと火を眺めていると、心がゆるゆると解放される。
 ご主人様は炭酸をプラスチックのグラスに注ぐと、私に勧めた。
「いただきます」
 2ヶ月ぶりに直接口にする飲み物。
 程よい甘さと炭酸の喉越しが心地よい。
 胃の中から身体全体に染み渡るような気がして、同時に体が火照ってきた。
「おいしい。何ですか?」
「杏酒のソーダ割りだ」
 もう一杯ぐびっと煽って、ぼーっとしてしまう。
「あまり飲むなよ。沙織は寝てしまうだろう」
「そ、そうでした」
 とろんとした目に、飯盒から噴き出る蒸気の動きが面白く映る。
 2台目のコンロに火を入れたご主人様が、一口サイズの肉を焼き始めた。
 タンタンと塩コショウして、ちょと炙ったらすぐ返し、焼き目がついたら弱火で少々放置。
 肉を2つのお皿に分け、空いたフライパンでインゲンを炒めて、炊けたご飯と一緒にお皿に盛った。
「食べなさい」
 ぼーっとした頭が、ご主人様の声で緊張する。
「ハイッ! いただきます!」
 姿勢まで正してお皿を受け取った。

 口に入れただけで溶けそうなお肉。
 肉汁に浸されたケーキのよう。
「噛めるか? 無理するな」
 口一杯に頬張っていて返事も出来ず、ガクンガクンと大振りに頷く。
「インゲンも固いから無理するな。これしか無かった」
 ご主人様が厨房の冷蔵庫を漁っている姿を想像して、ちょっと笑った。
 相変わらず寡黙なご主人様と会話も交わさぬまま、一気に全部食べて
しまった。
 お皿を片付けようとするご主人様。
「お皿くらい片付けます。片付けさせてください!」
 ご主人様を制して叫び声を上げてしまった。
「たのむ」
 ビニール袋に入ったアクリルたわしを渡された。
 支配者の威厳と対称的な細やかさに戸惑いながら、それを持っておぼ
つかない足取りで共同の流し場へ行く。
 お皿やフライパンを洗っていると、管理小屋へ入るご主人様が見えた。

 洗い終わって私がテントへ戻ると、ご主人様は居なかった。
 すぐに背後から足音がして、棒アイスを2本持ったご主人様が帰ってきた。
「食べなさい」
「ありがとうございます」
 古風なミルクバーを受け取り、銀紙を剥いて食べる。
 ご主人様は椅子を湖面に向けて、私と同じように食べている。

 棒までペロペロはしたなく舐めて、ふと見ると文字が。
 ――あたり――
「あ、当たった!」
「貸してみなさい。ほう、本当だ」
 アイスの棒に焼き印で刻まれた文字を凝視する。
「だが、沙織が当たりの分を口にすることはもう無いと思うから、私が
預かってってもいいかね?」
 ゴクッと息を呑む。
 穏やかなキャンプの気分の中に居ても、自分の身分がまるで変わって
いないことを思い知らされた。

 たった今だけの、ご主人様の奴隷へのサービス。
 僅かでも時が過ぎれば、飲食の自由すら奪われる身分。

「も、もちろんです……」
 伏し目がちに答えながら、体の奥からドロリと熱いものが染み出た。
 しばらくぼんやりと湖を見ていた。
 既に湖面は夕暮れの暗さになっていて、見上げた山の端をかすめる陽
差しだけ不思議に明るかった。
 バッサバッサとウインドサーフィンの帆の水を払い、片付け始める
低い音が湖面を伝って来た。
 ご主人様が古めかしいランタンに火を入れ、夜の支度をはじめた。

 テントの中でガタガタと音がする。
 手伝いもせずにいいのかと思いながらも、体が動かない。
 酔いも手伝って、超拘束から安寧な日常へ解放された楽さに浸り切っ
ている。
 間もなくテントへ招き入れられた。

 狭い中に組立式ベッドが置いてあり、その上には汗を吸って裏地が
飴色になった革製の手枷・足枷・首輪が置いてあった。

 私はふやけた顔から真顔に戻り、着ている物を全部脱ぐと、枷一式を
身に着けた。
「失礼します」
 一礼してベッドに横たわる。
 ご主人様は下半身だけ脱ぎ、私の身体を開いて重なって来た。
 いつもご主人様のモノを模ったバイブを入れっぱなしにされている
ソコは、容易に本物を受け容れる。
 一番奥まで差し込まれると、まるで刀が鞘に収まるように膣全体が
ソレに一致して密着した。
 このために……こうしてご主人様を迎えるためだけに、何カ月もバイブ
を咥えたまま過ごして筋の訓練をしているのだ。

 膣全体を締める。
「うおっ!」
 ご主人様が身を硬くした。
 更に締めると、お尻に刺さったままの極太プラグごと締め付けられ、
私自身もすごくイイ。
 ご主人様が少し動く。
 しっかり締めたままだと、内臓ごとずれそうな気分。
「はあァァァッ!」
「あまり大声を出すと湖一帯に聞こえるぞ」
「ンンンンンンンッ!!」
 アソコでご主人様のを咥えたまま、子宮ごと掴み出されそう!
 ご主人様の形に合った私の膣から、本物がガクンとズレると、それが
とてつもない刺激になって私を襲う。
 そして次第に運動のストロークが長くなり、抽送の間隔が短くなる。
「ンッ! ンッ! ンッ! ンッ! ンッ! ンッ! ンッ!」
「ンッ! ンッ! ンッ! ンッ! ンッ! ンッ! ンッ!」
 お尻の中のものがゴリゴリと当たる!
「ンッ! ンッ! ンッ! ンッ! ンッ! ンッ! ンッ!」
「ンンンンンンン〜〜〜!!」
 引き付けて激しくイク。
 同時にご主人様の熱い迸りを身体の奥で受け止めた。

 快感の痺れで弛緩しきった私の身体は、枷同士を鎖で繋がれ、寝袋に
押し込まれた。
 そのままご主人様のベッドの横に転がされ、一瞬のまどろみの後、
深海に沈むように一気に寝入った。
 翌朝、寝袋から出され、枷を外された。
 ワンピースを着込み、朝食もそこそこにキャンプ場を後にした。

 帰りの車の中でご主人様に聞かれた。
 行きほどスピードを出していないので、会話はできた。

「気分転換はできたか」
「はい、ありがとうございました」
「良く訓練していたようだな」
「そ、そんなことないです。漫然と入れてただけです」
「まあいい。褒美に1つだけわがままをきいてやろう。こんどはどんな
ポーズがいい?」
 私は行く時に見た、辛そうな開脚のポーズをすぐに思い出した。
 あの絶望的な姿が頭から離れなかった。
 それが自分の首を絞めることになるとわかっていても、脳みそが焼き
切れそうなほどの刺激に憧れてしまう。

 もはやどちらが「旅行」なのかわからなくなってきた。
 異常な生活の気分転換に旅行に連れ出されるのか。
 短い期間の普通の生活から、ずっと逝きっぱなしの異常な生活へ
旅立つのか。

 しばらく考えてから、自分自身に言い聞かせるように口を開いた。
「ご主人様が一番きついと思うポーズでお願いします」
「いいだろう」
 ご主人様は運転しながら表情を変えずに言った。
 お屋敷に戻ると、すぐに私を彫像にするための準備が始まった。
 この前まで私が彫像にされていた台座には、もう他の子が載っていた。
 庭の奥の、あまり人の来ないような木立ちの間にひっそりと設置さ
れた台座の前に、次々と運ばれてくる機材を見て、私はいつもと少し
違うのに気づいた。
 石膏を練ってコテで塗り上げる道具が無く、ただの四角い木枠が
置いてあった。
 その木枠は、どう見ても私の身体を収めるには小さ過ぎる。
 背筋に冷たいものが走った。

 何カ月に一度かの儀式が始まった。
 アナルプラグ抜いて排便用の筒に戻され、尿道カテーテルと膣の
バイブをセットされた。
 生理を止める薬を飲んだあと、胃までのチューブが挿入された。
  筋肉に電気刺激を与える電極の内蔵されたラバースーツを着せられ、
まだ体が自由なうちに柔軟体操をしてフィット状態を確認する。
 体内に一杯に詰め込まれた器具がゴロゴロして煩わしい。
 今の段階では非常に緊張しているので、被虐の快感などはまるで
興らない。
 バイブをテスト動作されて、苦痛で腰をくの字に曲げた。
 目の前に置いてあった木枠が分解され、底板だけになった。
 底板の中央近くには頑丈そうな金属の環が出ていた。
「今日からこれが沙織の全生活空間だ。良く見ておくんだ」
 ご主人様のその言葉に、私の願いが聞き入れられたのだと知り、甘美
な恐怖感で全身が震えてきた。

 全頭マスクが被せられ、ついに何も見えなくなった。
 鼻チューブからだけ許された、短く、浅い呼吸。
 その姿のまま肩を抱かれ、ゆっくり前進すると、板の上に載ったよう
な感覚があった。
「あぐらをかくように座るんだ」
 言われたように座ると、少し位置を直された。
 四方から体が圧迫される。
 ガタガタと周囲が組み立てられている。
 手を後ろで留められ、あぐら座りのまま、やや前のめりに小さく
まとめられてゆく。
 箱の上部は開いているらしく、頭は自由だ。

 首に、ガチャリと首輪が巻かれた。
 足元でジャリッと鎖の音がする。
 首に何かが引っ掛けられ、ジャリジャリと引き絞られる。
「ウーーーッ!!」
 訳も分からず叫ぶ。

 あぐらの状態から狭く立て膝にされたような足の位置で、膝と膝の
間に頭がめり込んで行く。
 背骨が折れそうなほど畳まれたら、やっと止まった。
 このままの姿勢で……何カ月も……?

 それは苦しすぎる!
 せめてもう少し背中を伸ばして欲しくて、激しく暴れた。
 しかし狭い空間に折り畳まれた私の体には、抵抗する隙間すら残さ
れていなかった。
「ウーーーーーッ!!!」
 恐怖のあまり絶叫してみたが、とても聞き入れてもらえるとは思え
なかった。

 抵抗も虚しく、ドロリと石膏が流れ込んで来た。
 冷たい!
 私の肉体以外の空間が、冷たい石膏で満たされてゆく。

 本当に、本当に、このまま固められるんだ!
 そう思った時、めくるめく被虐の快感に襲われ、短く昇りつめた。
 すでに体全体が石膏に沈んでいるのがわかる。

 そのうち硬化が始まり全身が熱くなってきた。

「ウーーッ」
 熱の逃げ場がないやり切れなさに、苦しみもがくがピクリとも動けない。
 石膏が固まってゆくと、筋肉に力を入れる程度の肉体の拡がりすら
許されなくなってきた。
 もうすでに私の頭はドロドロのもやに支配され、それまで手足のあっ
た人間であったことすら、もうどうでも良くなってきた。

 しばらくして石膏が完全に冷えると、ゴトゴトと木枠が外されるよう
な音がして、それから上下逆さにひっくり返された。
 うつ伏せより仰向けの方がいくらか楽で助かった。
 併せて天に向かって排泄するという希望も叶う結果となった。

 しばらく外側を塗り直しているような音がしたあと、全くの無音に
なった。
 今度は耳が石膏の奥にあるので、ほとんど外界の音は入って来ない。

 ―異常な生活の気分転換に旅行に連れ出されるのか―

 ―短い期間の普通の生活から、ずっと逝きっぱなしの異常な生活へ旅立つのか―


 何本かのパイプが出ている以外は、トウフかサイコロのような
ただの白い直方体にされてしまった自分の姿を想像して、またゆるくイッた。


 突然、冷たいものが胃に注がれたのがわかった。
 一体、何?

「『あたり』の分だ」

  どこか遠くでご主人様の声が聞こえたような気がした。



 ― 了 ―


では、僭越ながらトップバッターを行かせていただきます


・作品名:「旅行」
・執筆者:名無しさん@ピンキー
・段階表示:【EASY】
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  連続投稿防止がかかってしまうので、途中別IPから書き込んだりしたレスも含みます。