母親が他人に犯される作品 #2.2

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……その一日は、いつもとまったく変わらぬように始まった。表面的には。
「おはよう、佐知子さん」
「お、おはよう、達也くん」
いつも通りの笑顔で迎えた達也に、ぎこちなく挨拶をかえして。
朝の検診をしようと、ベッドの傍近くに寄った時に、
「……あっ」
腕を捉えた達也の手に柔らかく引き寄せられて。次の瞬間には、佐知子の身体は達也の腕の中にあった。
「今日も、綺麗だね」
間近に見つめて、惚れぼれと述懐した達也が口を寄せる。
「……ん…」
少しの抵抗も示さずに、佐知子はそれを迎えて。唇が合わさると、ギュッと達也の肩にしがみついた。
「……ふ…ん……」
達也の舌が滑りこめば、はや昂ぶった息を鼻から洩らして。
待ちかねたように自分から舌をからめて吸いついた。
ここ数日の習慣となった朝の挨拶。それが、この日も行われたことが佐知子を安堵させ喜ばせた。
昨日の達也の自戒の科白、“キスや身体に触れることも控える”という言葉が気にかかって、
胸を重くさせていたから……。
あっという間に口舌の快楽に嵌まりこんで、ふんふんと鼻を鳴らしながら、
熱っぽい体を押しつけてくる佐知子のノボセ面を、達也は観察する。
今朝の佐知子は、特に念入りな化粧を施しているのだが。
しかし、その下の憔悴の色を隠しきれていなかった。
(クク…悶々と、眠れぬ夜を過ごしたってとこだな)
独り寝の褥で、熟れた肉体の火照りに、朝まで身悶え続ける佐知子の姿が目に浮かぶようだった。
(俺の指を思い出して、自分で慰めたのか? 俺にされるみたいに気持ちよくなれたかよ?)
まあ、無理だろうな、と倣岸に確信する。
いくら自分の指で疼く体をイジくりましたって、望むような快感は得られずに。
結局、肉の昂ぶりを鎮めるどころか煽りたてるだけで終わったのだろうと。
(また、そんな辛い夜を過ごしたいか? とっとと楽になっちまえよ)
苦しみから解放されるにはどうすればいいのか、いい加減に理解しろ、と。
(まあ、佐知子が素直になれるように、俺も協力してやるけどな)
恩着せがましく、そう内心に呟くが。
“協力”などという名目で、実際にやろうとしていることは……。
841241:03/07/08 17:42
優しく佐知子を抱きとめていた達也の手が滑って、肩から二の腕を撫で下ろした。
「……フン……ンフ……」
それだけで、佐知子はビクリと身体を震わせて、鼻から洩れる息を甘くする。
全身の肌が、驚くほど敏感になっていた。
一晩中、官能の火に炙られ続けたせいだ。
隠せぬ憔悴があらわす通り、佐知子はほとんど眠っていなかった。
長い夜の煩悶ぶりも、達也の見抜いたとおり。
素っ裸で、ベッドの上を転げまわるようにして。
切なく達也の名を呼びながら、自分の手で張りつめた乳を揉みたくり、
濡れそぼる女肉をコネまわした。
懸命に達也の愛撫をなぞって、しかし、得られる快感は達也の与えてくれるものとは
程遠く、あまりにも頼りないもので。
夜が白む頃に、疲弊によって短く浅い眠りにつくまで、ついに満足は得られなかった。
肉奥の火は燃え続けて、身体の熱は高まり続けている。
だから、朝っぱらから達也が仕掛けた接触に、佐知子は歓喜して縋りつく。
むしゃぶりつく、という気ぶりを口舌の激しい蠢きにあらわして、
腕を達也の首に巻きつける。
クタリとしなだれかかった柔らかな身体、その総身から、
なにもかも受け容れるという心情が滲み出ていた。
どうにでもして、と。
この苦しみから救ってもらえるなら、なにをされてもいいから、と。
なにを……されても……
842241:03/07/08 17:47
「……ンフウウッ」
佐知子が、喉の中で歓悦の叫びを上げる。
白衣に包まれた豊満な胸の膨らみに、達也の手が触れたのだ。
閉じた瞼の裏に光が弾けた。
どうして、達也の手はこんなにも気持ちいいのだろう。
まだ、着衣の上から、そっと掴まれただけなのに。昨夜、自分の手で裸の胸を強く握って、
どれだけ激しく揉みしだいても得られなかった鮮烈な快感が、熱く滾った肉房から身体中へと伝わっていく。
(……もっと……もっと……)
さらなる快楽を求めて、達也の手へ乳房を押しつける佐知子。それに応えて、達也の指に力がこもる。
(……あぁ……)
ソフトなタッチで、熱く体温をのぼらせた乳肉を揉みほぐされて、
佐知子の背に甘い痺れが広がる。うっとりと眉宇がひらいていく。
だが、一夜の焦燥に炙られた肉体には、その繊細な刺激は、切なさを増すだけだった。
(……もっと……もっと強く揉んでっ)
口を塞がれていなければ、その求めは言葉になって吐き出されていた。
代わりに、なおも軽い愛撫を続ける達也の手を掴んだ。それは、もっと強い行為を促すためだったのだが。
(あぁっ!?)
あっさりと、達也は佐知子の胸から手を外してしまった。
「わかってるよ」
キスも解いて。達也は、目を見開いた佐知子にうなずいてみせた。
「控えるって、昨日約束したもんね」
「ち、違っ…」
愕然として。そんなつもりではなかったと訴えかける佐知子をよそに。
「どうしても誘惑に負けちゃうんだよなあ。佐知子さんを前にすると」
自嘲するように呟いた達也は、佐知子の肩を抱いた腕も離してしまう。
「た、達也く…」
「……どんどん、佐知子さんへの想いが強くなってるってことだろうな。危ないよね。謹まないと」
「………………」
苦笑する達也に、なにも言えなくなって。
佐知子は泣くように顔を歪めて、呆然と達也を見つめていた。
……佐知子の、長く辛い一日は、まだはじまったばかりだった。
                       (続)