「やっぱり、そうなんだ」
無理やり佐知子に快感を白状させて、達也はようやく荒っぽいいたぶりを止めた。
しかし、それで佐知子の双つの肉葡萄を解放したわけではなくて、
「じゃあ、ここは優しく触らないとね」
指先を、隆起した大きめの乳暈にそっとあてて、軽く圧迫しながら、なぞっていく。
ゆっくりと数回、屹立した乳首の周りに円を描いてから。
親指の腹で、セピア色のしこりを根から先端へと擦り上げた。
「……フ…ハァ…ア……」
佐知子が感じ入った吐息をもらして、喉を震わせた。
硬くしこった乳首の独特の肉感が、達也の指を楽しませたが。無論、佐知子の感じる
感覚のほうがはるかに強い。
「……ア……あぁ、達也…く…ん……」
ヌルヌルとした汗をまぶした、柔らかな指の腹で乳首を擦られるのは、たまらない感覚だった。
手荒い玩弄の後の優しい愛撫が、ことさらに効く。ジンジンと響いてくる。
「すごいな。こんなにビンビンになって」
「……いやぁ……」
感嘆する達也に、羞恥の声をかえしながらも。
佐知子は、刺激に眩む眼を薄く開いて、嬲られる己が乳房を盗み見た。
(……あぁ……こんな……)
達也の言葉通り、“ビンビンに”勃起した乳首。いまは二本の指に摘まれて、
ユルユルと扱かれて、切ない快感を乳肉全体へと波のように走らせている。
「敏感なんだね。佐知子さんの乳首」
「あぁ、いやっ、ちがうの」
確かに、そこが感じやすい場所だという認識は、以前からあった。
母子の秘密の閨で、裕樹が特に執着を示すこともあって(……というよりも。
乳房を吸われること以外では、肉的な快感を得ることがなかったので)
佐知子にとっては、唯一の快感のポイントとして意識するのが、その個所だった。
しかし。
「……ちがう、の…こんな、こんなに……」
「こんなに? 感じたことはないって?」
達也の問いかけに、佐知子はコクリとうなずいた。
その通りだ。こんなに感じたことはない。こんな感覚は知らない。
「……達也くん、だから……こんなに…」
秘密を明かすように、ひっそりと呟いた。
恥ずかしげに、しかし、甘い媚びを含んだ眼で見つめながら。
「うれしいよ」
達也は笑って。佐知子の頬に、軽く口づけて。
「もっともっと、気持ちよくしてあげる」
「……あぁ……」
伏し目になった佐知子の、長い睫毛が震える。
怯えと期待の半ばした慄きにとらわれながら、達也が掬い上げた肉丘の頂へと
口を寄せていくのを、佐知子は眺めて。
「……ア…ア……アァッ!」
唇が触れるのと、佐知子が昂ぶった叫びを張り上げて背を反らせるのと、
どちらが先だったか、微妙なところ。
硬く尖った乳頭を唇で挟みこんで、チロリと舌を這わせた達也。
それだけでも、甲高い悲鳴を上げて身悶える佐知子の逆上せぶりを見て取ると、
一気に烈しい攻勢に出た。
大きく開いた口にデカ乳を咥えこんで、音たてて吸い上げ、こそげるように舐めずり、
歯で柔らかく噛んで扱きたて、しこった乳首を舌で転がした。
「ヒイイィッ、アヒ、ん…あああっ、ヒアアァッ」
暴虐的なほどに苛烈な刺激に双乳を攻め立てられて、佐知子はただ甲走った叫びを
引っ切り無しに洩らして、身悶え、のたうった。
「ア、アァッ、いや、こんな、ダメェッ」
味わったことのない感覚、鋭すぎる快感は、いくら叫んでも身もがいても
身体から出ていかずに。肉体の奥深くで凝り固まり、膨れ上がっていく。
「た、達也くん…達也、くん…」
経験したことのない肉の異変に怯えて、佐知子はすがるように達也の名を呼んだ
肩を掴んでいた両手は、いつしか達也の頸にまわされて、抱きつくかたちになっている。
「……いいんだよ」
くらいついていた乳房から口をズラして、達也が囁く。
「このまま、もっと気持ちよくなって」
「…アァ……でも、こんな……ヒイイィッ」
達也は再びかぶりつく。すでに、より感度がいいと見破った佐知子の左胸へと。
「ア、ああぁッ、アッアッ…」
ひときわ苛烈な口舌の攻撃を受けて。
燃え盛る乳肉の快楽が急速に高まり、一点へと収束していって……
「……ア……ヒイイィィッ!」
爆ぜた。
ギリリッと達也の歯が、乳首の根を強く噛みしめた瞬間に。
圧し掛かる達也の体を跳ね上げるようにエビ反った佐知子の肢体が、数秒硬直する。
“イッ”と歯を食いしばって、苦しげな皺を眉間に刻んだ顔を、
頸が折れそうなほど、うしろへとふりかぶって。
ギューッと、達也の首を抱いた腕に力がこもって。
乱れた髪の先から反り返った足の指まで。数瞬の間、ピーンと硬直させて。
それから、ドサリと重たい音をたてて、崩れ落ちたのだった。
(続)