「どうしてさ? 可愛いじゃないか」
達也の言葉が、いっそう佐知子の恥辱を刺激する。
はるか年下の若者に、いいように身体を玩弄されて。その結果、引き出された
肉体の反応を、“可愛い”などと評されて。
情けなくて、悲しくて……しかし、蕩けさせられた胸には、
そんな思いすら、奇妙に甘く迫ってきて。
「……もう…ゆるして……達也くん…」
結局、佐知子に出来るのは、頼りない声で、達也のゆるしを乞うことだけだった。
「ゆるして、なんて。佐知子さんをイジめてるつもりはないんだけど」
微笑をはりつけたまま、達也がうそぶく。
「ただ、気持ちよくなってほしいだけだよ。僕の手で、気持ちよくしてあげたいだけ」
そう言って、また、指を微妙に蠢かせた。
トロトロに蕩けた豊乳を、ジンワリと揉みこんでいく。
「アッ、だ、ダメッ」
たちまち、佐知子の声が鼻からぬける。
火をつけられた乳房に、じれったいほどの、ゆるやかな愛撫。
思わず、“もっと強く”と求めたくなってしまって。
しかし、これ以上の耽溺の行きつく先への恐れだけは、佐知子の意識を離れない。
佐知子はせくり上がる感覚を振り払うように頭をふって、精一杯に強い声で断じた。
「ダメ、駄目よッ、いけない」
すると、達也は、佐知子の耳元に口を寄せて、
「大丈夫。これ以上のことはしない。誓うよ」
佐知子の心を読んだような言葉を、真剣な声音で囁いた。
「もう、バスト以外の場所には触らないから」
「………………」
「だから、もう少しだけ。僕の手を感じていてよ」
「…………本当に…?」
「嘘はつかないよ。佐知子さんのいやがることは、したくないから」
「………………」
「だから、ね? もっと気持ちよくなってよ」
「……や、約束よ?」
ついに、佐知子は許諾を与えてしまう。
「ほ、本当に、胸だけよ? それ以上は…」
せいぜい、達也の強引さに押し切られたようなかたちを繕って。
佐知子自身も、そう思いこもうとしていたが。
心の底での計算と妥協は、見え透いてしまっていた。すなわち、
“これ以上、危うい域に踏みこまないのならば……もう少し、この愉悦を
味わっていたい”と。
「わかってる。約束は守るから」
内心の嘲笑は、無論おくびにも出さず、達也はもう一度請け負った。
「………………」
達也の手をつかんで、かたちばかりの抵抗を示していた佐知子の手が
下ろされる。まだ迷いの気配を見せながらも。
達也の手が、佐知子の白衣を、さらに大きくはだけさせた。
双乳の裾野に絡んだブラを、鳩尾へと引き下ろした。
「……恥ずかしい……」
改めて、裸の胸を達也の前に開陳することに、強い羞恥を感じて。
佐知子は、か細い声で呟いて、眼を伏せた。
「……あまり、見ないで……達也くん……」
「どうして? こんなに綺麗なのに」
「……もう、若くないから……」
火照った頬に、寂しげな翳りを刷いて、佐知子は言った。
子を産み育てた中年の母親の乳房が、若い達也の眼にどのように映るかと思うと……。
「そんなことないよ。本当に綺麗だよ、佐知子さんの胸」
「………………」
達也が力をこめて告げた言葉も、そのままに受け取ることは出来なかったが。
それでも、ひとまずの安堵と、くすぐったいような喜びを、佐知子は胸にわかせる。
達也にしても、それは本音からの評価だった。
いい乳だ、と本心から思った。
たわわな量感と、艶美な曲線。あくまで白く滑らかな肌もいい。
確かに、若い娘のような張りはなく、仰向けのこの姿勢では、自重に負けて、
わずかに潰れるようになっている。
また、地肌の白さのせいで強調される乳輪や乳頭の色の濃さや、肥大ぶりも
佐知子の気にするように年齢のあらわれであり、子持ちの熟女らしさといえるだろうが。
そんな特徴のすべてが、年増趣味の達也の好みに合っている。
あえて文句をつけるとすれば、むしろ、年のわりには淫色が薄いことだと思った。
(……まあ、それは、これからってことだな)
内心に呟きながら、達也は、こんもりと隆起した肉丘に手を這わせた。
「こんなに大きくて、柔らかいし」
賞賛の言葉を佐知子に聞かせながら、それを確かめるように、指に力をこめる。
ズブズブと指が埋まりこんでいくような柔らかさ。しかし、その奥に、
まだしっかりとした弾力を残していて。
(いいねえ)
やはり、形もボリュームも肉質も、極上の熟れ乳だと喜ぶ。
(……それに。感度もバッチリだしな)
軽い接触にも、佐知子は切なげに眉をたわめて、鼻から荒い息を洩らす。
乳房には、熱く体温がのぼっていて。
消えない快楽のおき火に、炙られ続けていることは明らかだった。
(さて。またひとつ、教えてやるか。ウブな佐知子ちゃんに)
この二日間で、キスの快楽をたっぷり仕込んでやったように。
また、新たな快楽を植えつけてやろう、と。
達也は、大きく両手の指を広げて、巨大な双つの肉を掴みなおした。
(続)