母親が他人に犯される作品 #2.2

このエントリーをはてなブックマークに追加
574241
「………………」
からかわれているのかな? と当然な疑いをわかせる裕樹。
しかし、高本の口ぶりには皮肉や揶揄の調子はなかった。
だいたい、オチョくることだけが目的にしては、手がこみすぎている、と思う。
「……わかったよ。とりあえず、話を聞くよ。
 僕なんかじゃ、なにもわかんないと思うけど…」
「ああ、ありがてえ。うん、聞くだけ聞いて、越野が思うことを言ってくれりゃいいよ」
気楽に言って、高本は身を乗り出してくる。
「そんでな。そのダチが惚れた女ってのが、まあ、ちょっとムズかしいのよ」
「むずかしい?」
「そう。まず、かなり年上なんだな」
「いくつなの?」
「えーと……いくつ? あの女」
隣を向いて、市村に尋ねる。
市村は、ちょっと考えて、
「……三十は越えてるんじゃないか」
「そんなに? え、その高本くんの友達は、いくつなの?」
「タメだよ。な、驚くよな?」
「う、うん」
「たしかにさあ、オレや市やんも見たんだけど、いい女ではあるのよ。
 顔もいいし、体つきも色っぽいしさ。だけど、なあ?
 けっこう大きなガキもいるってんだぜ、その女」
「結婚してるの!?」
「う、ああ……えっと」
また市村に頼る高本。
「結婚してたけど、いまは旦那はいないらしい。
 ……母ひとり子ひとり、だったかな」
「そうなんだ…」
うちと同じか、と裕樹は思った。
575241:03/06/13 18:21
「まあ、独りものだから、不倫とかってことにゃあならねえんだけども。
 なにも、そんな年上に惚れなくたってなあ?」
「う、うん……」
「オレにゃあ、理解できねえんだけどさ。そいつはマジ惚れしちゃってるわけよ。
 どう思うよ、越野?」
「どう、って……」
「ダチの気持ち、理解できる?」
「え、どうだろ……」
「越野は、どうよ? 年上、好き?」
「そ、そんなの、急に聞かれたって…」
そう言いながら、母のことを思い浮かべてしまう裕樹。
(ママみたいなひとだったら……)などと考えると、満更でもなく思えて。
なんとなくだが、その高本の友人の気持ちもわかる気がした。
「それで……その高本くんの友達は、なにか行動に出てるの?」
裕樹の方から質問した。少しづつ話題に引きこまれている。
「ああ。かなりアプローチはかけてるみたいよ。な?」
「うん。なかなか涙ぐましいものがあるな。あれは」
「そうなんだ。なんか、スゴイね」
「スゴイっちゅうか、まあ、ようやるわとは思うね。あんなオバサン相手によ」
「オバサン……かな?」
その呼び方には違和感があって、つい反駁してしまった。
「うん?」
「い、いや、それくらいの年なら、まだオバサンとは言えないんじゃないかって」
市村の言葉から、裕樹は、話題の女性は三十歳くらいなのだと思いこんでしまっていた。
ならば、裕樹の母・佐知子よりも、だいぶ若い。
美しい母のことを、オバサンなどと思ったことはない裕樹だから、
つい、その見知らぬ女性のことも庇いたくなってしまったのだった。

               (続)