まあ、年甲斐もないウブさ加減も、佐知子の魅力ではあるし。
仕込んでやるのも、また楽しからずや、と。
まずは最初のレッスンに取り掛かる達也である。佐知子の手をとって。
「もっと、こう……親指は、この裏側のクビレのあたりに…そう、そこ」
細かく、指の位置まで決めてやる、懇切丁寧な指導ぶり。
「た、達也くん……」
佐知子がたじろいだのは、わずかに指のかたちを変えただけで、
淫猥な戯れ、という色合いがあからさまになってしまったからだったが。
「いい感じだよ。そのまま、ゆっくり擦ってみて」
快美を告げる達也の言葉に、これで早く終わらせられるならと、
妥協させられてしまう。ズルズルと。
「うん、イイよ。そのまま、力を加減しながら先っぽまで」
「…………」
調子に乗る達也の指図のまま、意識的に避けていた先端部まで手を滑らせていく。
凶悪に張りつめた肉傘の独特の感触が、ひどく生々しくて、佐知子は固い唾を飲み下した。
「ああ、イイよ。そこは敏感な場所だからね」
だから、とっとと終わらせたければ……という狡猾な示唆を受けいれて、
慄く白い指を、充血しきった鎌首に這わせていく。
恐る恐る、撫でるように指を動かせば、ドス赤い肉瘤はビクリと反応して、
切っ先から随喜のヨダレを吹きこぼした。
溢れ出る粘液が、佐知子の掌を汚す。そのヌラついた感触が、ゾワゾワと肌を粟立たせる。
(……すごい……こんなに……)
溜めこんだエネルギーの膨大さを物語るかのように、達也の先ぶれは多量で。
そして濃厚だった。手指に絡みつく粘い感触と、鼻を衝く強い性臭。
(……すごい、匂い……)
嗅いでいると、頭の芯がボーッと熱くなって。クラクラする。
「……もっと、手でこねまわすようにしてみて」
若い雄の精気にアテられて。痺れかかった意識に達也の声が届く。
「……こう…?」
佐知子は従順にそれに応じて。巨大な肉瘤に手を被せて、こねくるような動きを与える。
ネチャネチャと、擦れあう肌の間で、粘っこい音が立つ。
その響きの淫猥さに、また佐知子の胸は熱くなる。
「ああ、いい、気持ちいいよ、佐知子さん」
眼を細め、快感の声を洩らす達也を見て、佐知子の中に“もっと”という衝動が生じる。
(……そうよ、そうしなければ……終わらないもの……)
言いわけじみた科白を胸に吐いて、佐知子は行為に熱をこめていく。
達也の肉体を擦り、こねくる手の動きは、どんどん積極的になり、淫らがましくなっていって。
「……気持ち、いい? 達也くん」
潤んだ眼を達也に向けて、昂ぶりにかすれた声で訊いた。
「うん、すごくいいよ、佐知子さん」
蕩けた表情の裏では、冷静に佐知子のハマりこみようを観察している達也である。
「ねえ、そのまま、根元も扱いてみてよ、そうすれば、僕、すぐにイケそうだよ」
「……こう?」
誘導されて、佐知子はベッドに突いていた左手で、怒張の野太い根っこを握る。
「うん、そう、それで、同時に」
強まった快感に気もそぞろ(というフリ)の達也に促されるまま、両手で捧げるように
持った巨根に扱きをくれてやる。まさに“両手に余る”長大さに感嘆しながら。
「あぁ、いいよ、佐知子さん」
あえぐような達也の声。両の手の中でひときわ強まる脈動。
佐知子もまた、両手の動きを激しくする。額に汗を浮かべ、荒い息をついて。
しかし、達也は、まだ爆ぜようとしない。
「……まだ? まだなの、達也くん?」
肩をあえがせながら、佐知子は訊いて。達也の顔を見た。見上げた。
いつの間にか、視点が低くなっている。
両手で達也の怒張を愛撫するために、自然と体勢が崩れて。
いまの佐知子は、ベッドに乗りかかるようにして。大きく広げた達也の脚の間に、
ほとんど腹這う姿勢になっていた。
両肘で支える上体は、豊かな胸乳が重たく垂れ下がって、わずかに乱れた白衣の合わせからは、
深い谷間さえ覗かせているのだ。
無論、達也は、ヌケ目なくその景色を楽しんでおり、そこへと手を差しこんで、見るからに
柔らかそうな熟れ乳を思い切り揉みまくってやりたい衝動も感じていたが。
「もうすぐ、もう少しだよ、佐知子さん。続けて」
いやいや、ここは初志貫徹だ、と。グッと堪えて、佐知子を促す。
あぁ…と、切なげに嘆息して、佐知子は、握りしめたものへと眼を戻した。
「……早く…はやく、終わって……」
聳え立つ巨大な肉根へ直接訴えかけるように、そう呟いて、再び攻勢を強めていく。
(ケッ。そんなに出してほしけりゃ、先っちょにキスのひとつもしてみろっつーの)
実際、姿勢が崩れたことで、佐知子の顔と達也のペニスも、かなり接近しているのだった。
ケタ外れなデカブツを間近に眺めて。若い雄の臭気を濃く嗅いで。
佐知子が、その血肉を昂ぶらせていることは明らかだった。
その美貌も、細い首までも赤く朱を昇らせ、荒い呼気をついて。
上体だけをベッドに伏せた窮屈な体勢の腰が、微妙なくねりを見せている。
こんなもの……ちょいと腕を引いて、抱きすくめて。ハードなキスをかましながら、
軽く乳や尻を撫でてやれば、楽勝だ、と達也は倣岸に確信する。
だが、それは予定とは違うのだ。
(まったく。美学にこだわる自分が恨めしいぜ)
ここでは、達也はこのまま佐知子の手コキで欲望を遂げるつもりである。
ようやく腰の奥で遂情が兆しはじめてもいた。
入院以来の禁欲は本当だ。それは“いまさら、オナニーなんかしてらんない”という
実にふざけた理由もあったが。この機会を待っていたのも事実である。
(こんだけ溜めこんでなきゃ、到底イケなかったな)
思った以上に、佐知子は性的な技巧に不慣れであった。そのこと自体は、
達也にとって不愉快ではなかったが。
しかし、このままでは、やはり物足りないので。達也は、もう少し遊ぶことにする。
グッと丹田に力を入れた。
「ああっ!?」
途端に佐知子が、驚愕の声を上げた。
佐知子の手の中、猛り立った肉鉄が、さらに硬度を増して、ググッと反り返ったのだ。
「……ああぁ…す、すごい……」
肝を拉がれて。剥き出しの驚嘆が、震える唇からこぼれる。
「凄い? 佐知子さん。僕のって凄いかな?」
「……すごい、わ……」
呆然と眼を見開いた佐知子は、達也の悪趣味な質問にも、素直に実感を答えてしまう。
「どう凄いの? 大きいってこと?」
「お、大きいわ……とても……怖いくらい…」
佐知子のボウとけぶった瞳は、達也の怒張に釘づけられたまま。両手は、巨大な肉柱を
擦りたてる動きを続けながら。耳に届く達也の問いかけに、口が勝手に答えを返すのだった。
「それから?」
「……すごく、熱くて……硬い…」
それを確かめるように、佐知子の手指に力がこもる。
「……ああ、すごい……こんな、こんなの……」
「こんなの、見たことない?」
コクリ、と。佐知子はうなずいた。
そりゃそうだろうぜ、と自惚れつつ。
「佐知子さんのことを思って、こんなになってるんだよ」
「……あぁ……」
絶えいるような声を洩らして。佐知子の腰がブルッと震えた。
……こんなもんか、と満足する達也。
すっかり発情した風情の佐知子の色香に煽られて、いよいよ欲望がせくり上がってきている。
「ああ、もうイキそうだよ、出してほしい? 佐知子さん」
「あっ……」
“出す”という言葉の生々しさに、一瞬、佐知子の迷妄が払われる。
「ちょ、ちょっと待って、達也くん」
達也を射精まで導くために奮闘していたわけだが(途中からは目的を忘れて
いたきらいは多いにあるにしても)。
いざ、その時を迎えて、対処する体勢がまったく出来ていない。
慌てて、体を起こそうとした佐知子だったが、片手をガッシリと掴まれてしまう。
今度こそ爆発寸前の達也の怒張を、握ったかたちのまま。
「は、放して、達也くん」
「ああ、イキそう」
佐知子の懇願など聞かず、掴んだ手でガシガシと最後の扱きをくれて、腰を慄かせた達也。
「ま、待って」
ブワッと膨らむ感触に戦慄しながら、自由なほうの手を伸ばして、放り置かれたタオルを
取ろうとする佐知子。しかし、手が届かずに。
「達也くん、待っ……キャアッ!?」
制止の声は悲鳴へと変わる。ついに起こった噴火に。
その形容がまったく相応しいほどの、達也の爆発は盛大だった。
ビュッビュと音立てて噴き上がった男精の第一波は、咄嗟に仰け反った佐知子の顎先を
掠めて、ボタボタと重たい音をさせてシーツの上に降り注いだ。
「……あ……あぁ……」
片手を中途半端な姿勢で凍りついて。佐知子は茫然と見つめた。
達也の噴火は続いて。波状的に白濁のマグマを噴出する。
凄まじい勢いで、信じられないほどに大量の精を吐き出し続ける。
それは、長大な肉の砲身を伝って、根元を握らされた佐知子の手にも流れた。
(……熱い……)
火傷しそうな、と感じながら、しかし汚される手を引こうともせず。
顎に付着した達也の体液を拭おうともせずに。
佐知子は息をつめて。ただ、達也の長い長い爆発を見守っていた。
(続)