母親が他人に犯される作品 #2.2

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特別病室のドアは、閉めきられずに薄く開いていた。
ノックに応えはない。
少し待ってから、佐知子はそっとドアを押した。
「……失礼します」
室内は静かだった。見舞いの、二人の中学生の姿は消えている。
宇崎達也は眠っていた。
ベッドを浅い角度に起こしたまま、上掛けは腰のあたりで折り返したままで。
腹の上に組んだ両手を乗せて、いかにも、うたた寝といったふうに。
「……………」
室内は静かだ。聞こえるのは、達也のかすかな寝息だけ。
佐知子が、その場に立ち竦んでしまったからだ。
閉じた瞼に、その意志的な双眸を隠した達也の寝顔は、少しだけ、
年相応な少年らしさを覗かせているようにも見える。
だが同時に、表情をなくしたことで、その怜悧なまでの端正さが強調されてもいた。
「……………」
……と、開け放たれた窓から吹きこんだ緩やかな風が、眠る達也の前髪を揺らした。
毛先に擽られた目元がしかめられて。
そして、達也はパチリと目を開いた。
「…っ!」
我知らず、その寝顔に見入ってしまっていた佐知子は、目覚めた達也と
正面から見つめあうこととなって、慌てて眼を逸らした。
奇妙な後ろめたさに、頬に血が昇るのを感じた。
だが、寝起きの達也は、そんな佐知子の焦りに気づいたようすは見せずに、
「あ…寝ちゃってたや」
まだ寝惚けたような声で、呟いた。
324241:03/05/19 17:46
佐知子は気を落ち着かせて、テーブルからトレイを取ると、
入り口の壁際に寄せ置かれたワゴンへと運んだ。
「…あ、ごちそうさまでした」
ボンヤリと、目覚めきらぬ達也の声が、背にかけられる。
考えてみれば、昨夜の入院から、まとまった睡眠はとっていないはずである。
「眠るなら、ちゃんと寝たほうがいいですよ」
ナースの顔で達也に振り向いて、忠告した。
「あ、はい…そうしようかな」
「……窓、閉めますね」
そう言って、キビキビとした動きで窓辺へ向かう佐知子の、
白いタイツに包まれた脹脛の肉づきに。
陽射しを調節しようとカーテンを引いた時の、腰の僅かなよじれに。
白衣のスカートを張りつめた、豊かな臀の丸みに。
達也は、舌なめずりするような表情を浮かべて、粘い視線を這い回らせた。
「越野さん」
しかし、円熟の色香に満ちた背姿に掛けた声は、何気ないものであり。
呼ばれた佐知子が振り向いた時には、その双眸からも危険な色は霧消して、
他意のない表情に切り替わっていた。
「越野さんて、うちのクラスの越野くんの、お母さんなんでしょう?」
「………ええ」
佐知子の返答には、少しの間と躊躇の気配。
「やっぱり、そうだったんだ。どうして、教えてくれなかったんです?」
「……特に、言う必要はないと思ったから…」
「ええ? そういうものかなあ」
どこか弁解がましい口調になる佐知子に、達也は納得できないという顔になる。
無論、意図的に作った表情だった。