母親が他人に犯される作品 #2.2

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(248から、続く)

……家へと向かうタクシーの中。
裕樹はチラチラと隣に座った母の表情をうかがっていた。
佐知子は、窓の外に視線を固定して、不機嫌な横顔をこちらに向けている。
(……まずいなぁ)
母の本気の怒りを感じとって、裕樹はため息をつくと、自分も車外へと目をやった。
毎日通りなれた通学路の風景が流れ過ぎていく。
学校から越野家へは徒歩で20分ほどの距離だが、今日は佐知子の服装のことがあるので
タクシーを呼んだのだ。
夕方にしては混雑も少なく、車は順調に家へと近づいているのだが。
帰宅してからのことを思うと、裕樹は気が重かった。

相談室での、担任教諭との話し合いは、あの後すぐに終わった。
結局、煙草は“たまたま拾ったもの”であり、裕樹には何もお咎めはなし。
佐知子から追及されたイジメの件については、そのような問題は起こっていない
の一言で退けて、担任教師は勝手に話を収拾してしまったのだ。
無論、佐知子にすれば、まったく納得いかなかったが、
完全に逃げ腰になっている担任教師と、押し黙り続ける息子の態度に、
矛先をおさめるしかなかったのだった。
259241:03/05/05 17:38
住宅街の一隅、ありふれた一戸建ての前に車は停まった。
先に降り立った裕樹は、その場で母を待つ。
支払いを済ませた佐知子が車を降りる時、白衣の裾が乱れて、
ムッチリとした太腿が、少しだけ覗いた。
佐知子は裕樹を無視するように、低い門扉を開けて玄関へと向かっていく。
裕樹は、慌てて後を追いながら、
「運転手が、ママのこと、ジロジロ見てたね」
「…………」
「やっぱり、看護婦の格好って、外だと目立つんだね」
なんとか母から反応と言葉を引き出そうと、裕樹なりに懸命だったのだが。
まあ、この場面には、あまり良いフリとは言えなかった。
ガチャリと、差込んだ鍵を乱暴にまわして、佐知子がふりむく。
「誰のせいだと思っているの!?」
「…っ!!」
滅多に聞かせぬ怒声に打たれて、裕樹は息をのんで硬直し。
そして、泣きそうに顔を歪めて、うなだれた。
「………………」
しばし、佐知子はキツく睨みつけていたが。
やがて、フウと深く嘆息して。
「……いいから。入りなさい」
表情と声を和らげて、そう言った。
「…うん」
ホッと、安堵の色を見せる裕樹。
佐知子は、開けた扉を押さえて、裕樹を中へと通しながら、
「……晩御飯の後で、ちゃんと話してもらうわよ。
 全部、隠さずにママに聞かせるのよ」
「うん」
素直に、裕樹はうなずいた。