ロリ小説を作ろう!

このエントリーをはてなブックマークに追加
『202』

「ぼくをかわいそうだと思ったか」
 少年の腰の近くには、ズボンから抜き取られた、黒い皮のベルトが落ちている。鮎夏には、
それが生き物に見えた。いまにも動いて蛇になりそうな気がする。きっと、少年の手によって
蛇になるのだろうと鮎夏は思った。だから、少年は腰から抜いたんだと。
 でも鮎夏は、少年に遊ばれていることの意味を知らない。どうして、少年に遊ばれているのかも、
わからないでいる。下着が濡れた嫌な感触。なにもわからないで、遊ばれている自分に動悸が
烈しくなって苦しくなる。

「戻ってきたなら、しゃがめよ」
 また抑揚のない声。
「……」
「わからないか。座れ」
 少年の右手が鮎夏の細い足首をガシッと掴む。
「い、いやっ、いやぁ、やだぁ」
「じゃあ、なんで戻ってきた」
 足首を掴まえていた少年の力がいったんきつくなってから緩んだ。鮎夏のサンダルの足が
少年の手首を踏みつけていた。緊張から聞こえなくなっていた、蝉の声の喧騒が突然に響き出す。
「しゃがみな」
 優位に立てたと一瞬だけ思ったのに……鮎夏の脚が顫える。
「はっ、はっ……、いっ、いやあっ」
 小さく息を断続的に吸っていて、やっとの思いで少年に答える。

「綺麗だな。おまえの髪」
 この頃の鮎夏は、腰まで伸ばし、黒髪の裾は綺麗に切り揃えられていた。額に掛かる前髪も
眉毛の少し上のところで揃えられている。
「き、きれい……?」
「ああ、とても綺麗だよ」
 アップルグリーンの棚と黒髪のコントラスト。それに着ていたのは赤のワンピース。少女の
躰付きを緑の天井から浮き上がらせて、無意識に鮎夏は少年のペニスを挑発している。
『203』

『さわってもいい、パパ?』
 大きな胸に背中を預けていた鮎夏のあどけなく、好奇心に満ちた顔で父親のほうを
振り向いて、湯舟が波立つ。
『鮎夏。ダメだから、よしなさい』
『どうして。さわりたいのっ!』
急に黙って苦笑している父に、鮎夏は喜んでなおも愛らしい少女の声で食い下がるので、
しぶしぶ了承のつもりでやさしく娘に口をひらいた。
『大事ところだからだよ』 『だいじ?』 『そうだよ』 『そっとさわるから。ねっ、パパ』
『そっとだからな』と頷いた父を見て、湯舟のなかの大きなペニスを鮎夏の小さな手が
包み込む。ぐにゃぐにゃした感じから、鮎夏はにぎにぎをしてしまい怒られ、手のなかの
ものが少し膨れたような感じが残っていた。そんな気がする。

 鮎夏は黒いベルトと少年のズボンの膨らみを交互に盗み見て、スカートの裾が動かして、
少年の手首を黄色のサンダルが踏みつける。綺麗の呪文がペニスをもたげさせると知った
夏の出来事。
「ゆっくりとしゃがみな」
 何を思ったのか少年の手首から足をゆっくりとどけて、やわらかい土の上に少年の
言うとおりに鮎夏は腰を下ろした。

「ほんとに、綺麗な髪だな」
 少年が上体を捻って起き、肩肘を付いて鮎夏をじっと見ていた。また、蝉の声が
聞こえなくなっている。鮎夏のどこを見ているのかがわかる。そう、赤いスカートのなか、
合わさる膝の向こう側。少年の足首を掴んでいた手は、鮎夏の脚を下から指がすうっと
撫で上げて来る。
「あっ」
 ぞくっとした妖しい感じが少女の躰を駆け抜けて、下腹がきゅううっと引き攣りを
みせると、鮎夏は少年へと前のめりに倒れこんで抱きとめられる。少年の躰に黒髪が
ふわっと掛かって、おんなの誘惑を仕掛ける。もうイヤ、とは叫ばなかった。
『204』

 鮎夏はくなっとなった躰を抱きとめられ、頤を少年の肩に預けてもたれ掛かる。
「びっくりしたか?」
 いたわってくれる言葉にやすらいで、お漏らしをした居心地悪さがいくらか
和らぎかける。あの羞恥が焙り出された感覚はなんだったのだろうと、濡れた
感覚を受け入れ始めていた。そして思考は少年のことに及んだ。母の名前と
自分の名前を口にした、知らない……少年に。でも昨日の少年とは、今日は
別の存在の何かだ。それが何者なのかも鮎夏は知ろうとしていた。

 鮎夏の躰を闇に包もうとする者にかわりばえしていないのに、むろん完全に
少年を受け入れたわけではなく、怯えは微かであっても確かに鮎夏に存在する。
その因子が何なのか、喘ぎながら少女は模索した。
 少年が獣性を剥きだしてしまえば、娘のやすらぎは、花を毟り取るように
消し飛んでしまうかもしれない、あやういなかで。鮎夏は少年の腕の中で華奢な
躰を捻り、脚をカクンカクンと抗いの動作を無意識に始めている。そのことで
開いてしまった両脚の淡いに、少年の右手がすんなりと潜り込んでしまい、
反射的にお尻を突き出すような格好で思わず鮎夏は叫んだ。

「ああっ!」
 無垢が見せるノースリーブからの少女の肌はあまりにも白い。赤い服に掛かる
やわらかな黒髪にも、獣の少年は、少女を本格的に拘束しての攻撃性を
仕掛けないでいる。その間にも少年に赤いスカートをたくしあげられて、
鮎夏の丸くなって怯えている白い腰を露わにされてはいたが。
「あっ……はっ、あ、あ!」 
「気持ち悪いだろ。ぼくが脱がしてやるよ」
 このままワンピースを剥されるようにして頭から脱がされて、
裸にされるものだと思って慌て、鮎夏の脆弱なまでの細く白い脚の動きが
活発になっていた。
『205』

 そして、烈しくはなかったものの、鮎夏の上げた手が少年の顔を撫でた時に爪で
引っ掻いてしまっていたが、少年は他人事のように動じなかった。鮎夏にしても、
計算した上での行動ではなかったから、落胆によるパニックはなかったものの、逆に
自分が付けた傷に、凄く少年に悪いことをしたような痛みを感じてしまう。
鮎夏の手は少年の胸に下り、さらに突っ張ろうとした為に滑って、少年の股間へと
落ちた。鮎夏は手に男の高まった肉塊を知覚する。

『おちんちんだよ、鮎夏』
 膨らみかけた肉を確かめるように、ぎゅっと力を入れて握り締めてみた。いい匂いの
消しゴムを唇に挟んで歯を強くあてたような、誘惑を鮎夏は果たしてみる。
『うあっ!』
 だいじなところだからと言われたのに、鮎夏は好奇心を優先させて父親のペニスを
強く握り締めた。
『こらっ、鮎夏!』
 鮎夏の細い手首はがしっと父の大きな手で鷲掴まれる。

「チンチンだよ。知らないのか?」
 少年の言葉に、鮎夏の喘ぐ半開きの唇から涎が垂れていた。鮎夏は濡れたショーツを
摺り降ろされ、蒼い双臀のスリットを少年の目に晒されてしまっている。手が偶然に少年の
股間へと乗って、何か硬いものがズボンの下にあると知り鮎夏の時が凍える。

「鮎夏、チンポだよ」
『ねえ、代わりにきみのペニスをわたしに見せて頂戴……』 『えっ……?』
 泣き腫らした真澄の眼瞼。下のほうがぷっくりと膨らんでいて性愛の妖しさが募った、白い貌の
さめざめとした女が嗤った。愛らしい少年の顔を見て、ひみつの場所に紛れ込んできた
侵入者の頬を真澄は平手で叩いていた。少年の顔が振れて、手にしていた葡萄がやわらかい地面に
転げ落ちて、何が起こったんだろうと呆気にとられて眼を瞬かせる。
『206』

「ごめんなさい……」
 鮎夏の謝罪の言葉に、少年の手の動きも止まる。
「ん……?」
「ごめんなさい!」
「ほら、立って。脱がしてやるから」
 脇に両手を差し込まれて鮎夏は立たされ、奇妙な感覚が振り子のようにして戻って来る。
湯舟でいたずらをして、後ろから抱きかかえられて立たされた、あの感覚に。
『ほら、あがりなさい』
『いやぁだっ!』
 鮎夏に怒りを向けはしなかったが、拒まれた淋しさは辛くて痛い。
『おい、真澄!真澄!』 
『待って。いま、行くから』 
「ごめんなさい」

『いやぁ!』 
 母の声が聞こえて、鮎夏は泣きそうな声で縋り付いていた。
「わかったから、ちゃんと立てって」
 鮎夏は引き剥がされないようにと少年の首に細い腕を巻きつけた。赤いスカートを捲くられて、
丸まった背骨を白い肌に薄っすらと浮き彫りにする。緑の棚の下で晒したのは、ショーツも
下げられて剥き出している鮎夏の華奢なお尻。

 少女は怪物に赦しを請うてしがみ付いていて、少年のペニスは潮が引くみたく、みるみる
萎れていた。鮎夏の背を撫でまわす少年の手。暫らく鮎夏は少年の抱擁をおとなしく受け入れていた。
 鮎夏は立たされずに、棚の灰色の柱に背をもたれかけらされ、人形のようになって、両脚を
やや拡げられ、投出す格好で座らされる。少年は背を丸めて鮎夏の前に腰を落とすと、赤い
スカートの裾を捲くり上げて、少女は太腿を少年に明け渡した。
「すこし、お尻をあげて」 
 腿を撫でていた少年の手がおしっこで濡れた下着に掛かっていた。
「はい」
『207』

鮎夏は言われた通りに、やわらかい土に両手を付いて腰を上げる。唇は半開きになっていて、
瞼は泣いた為にやけに腫れぼったくなってしまっている。白の無垢のなかに、異質の朱が
はっきりと浮き上がっていた。その様子をじっとみつめて、従順になった鮎夏を前にすると、
すでに獣性を取り戻しており、左脚を折り畳んで、お漏らしで濡らしてしまった下着をゆっくりと
鮎夏から抜き取った。

「おにいちゃん……」
 少年は鮎夏の左膝に手を掛けてスカートの奥の無毛のスリットを眺めていた(そこは鮎夏の
尿でしょっぱい味がする筈だ)。
「なんだ」
 少年は鮎夏へ顔を上げる。
「なにするの?」
 鮎夏の少女の声から感情がごっそりと(人形みたいに)削ぎ落ちてしまっていることに気づく。

「教えてほしいのか」
 少年の手が伸びて、左の頬に触れると鮎夏はこくりと頷いてから、改めて怪物にはいと
返事をしていた。
「真澄さんにされたことを返す。そして、ぼくがしたいことをお前にする」
「したいこと……?」

「手を前に出せ」
 鮎夏は土に付いていた両手を少年の前に差し出した。すると少年はポケットから
ハンカチを出して鮎夏の顔を拭いてやってから、裏返して手を拭き取ってやっていた。
「女王さまみたい」
 鮎夏はぽつりと呟いていた。
「真澄さんも変わってるけど、お前もけっこう変わってるな」
 少年は黒いベルトを取ると、それで鮎夏の手首を一括りにした。
『208』

「女王さまがこんなことをされるか?」
「黒い蛇」
 鮎夏の泣いた瞳が拘束された両手を眺めている。
「へび……。このベルトがか?」
 少年は鮎夏の言葉に笑いそうになったが、ぼんやりとして少女の唇から発せられるモノに
魅せられ始めていた。

「うん。蛇なの」
 少年のブリーフのなかに真澄のしなやかな手が滑り込んできた。手首に近いほうで引き攣る
腹部を圧迫してくる。少年の肩を左手で鷲掴んで、乳房を押し付けて自分の手の動きを追っている。
『や、やめてください……。おねがいだから!なっ、なにもしないで!』
「じゃあ、ぼくは鮎夏を捉まえた、魔法使いのレムレス」
 女の髪の匂いを吸いながら、少年は真澄に訴える。そして上から肉を恥骨に押え付けるように
しながら、真澄はさらに少年へ圧迫を仕掛けてきた。
『ほら、ぼく。さっさとズボンを下ろしなさい』
「レムレス……?」
「そうだ。ぼくは黒いレムレスだ、鮎夏」

 拇と人差し指の淡いではペニスを挟み(それは恐怖で萎縮していた二十日鼠になっていて……)、
真澄は少年の血流を軽く止めていた。それを数回繰返しただけで、すぐにペニスに変化が現れた。
少年の萎縮していたはずのペニスは痛いまでになってしまい、ビクンビクンと跳ね上がらせる。
肉皮からは鴇色の尖端が顔を覗かせ、下着に擦れて少年は痛がって腰を引いて耐えていた。
真澄の手は、煽られる少年の強張る腹筋の硬さを確かめてから、しなやかな指で腹部を弄りつつ、
喘ぐ胸へと少年の服を掴んで押し上げてゆく。真澄の手が首筋に這いあがって、人差し指が
少年の唇を嬲りだす。意志に関係なく男の証拠は勃起し、その目には涙が張られていた。
『209』

『ズボンを下ろして。わたしの泣いているところを見た罰だから……』
 真澄の両手が顔を包んでゾクッとしていた。そして右手の拇が口の端に入ってきて、左手の
人差し指と中指が揃えられて突っ込まれる。
『んぐううっ!』
 少年の手は真澄を剥そうと必死になって、乳房を強く掴んで指を食い込ませていた。
瞼を閉じる前に見たのは、光る指輪。指を噛もうと思えば噛めるのに、そうはしようとは思わない。
「レムレスってなに、おにいちゃん?」

 少年は膝立ちになってズボンを降ろす。ブリーフもいっしょに下げたために天上を突くみたく
そびえるペニスが一気に鮎夏の眼に晒される。しなって揺れる異形のモノ。
「……へび」
 父の物とは違う物が股間からにょきっと突き出ていた。ごつごつしていなく、しなやかで、
肉皮から覗かせるへびの顔は夕焼けの予兆の鴇色をしていた。

「悪い魂が作った怪物だよ。女王さまは、悪い魔法使いに囚われたんだ」
 父親に眠りにつく時に聞かされたおとぎ話の絵本と、目の前で起っている現実に鮎夏は
眩暈を催していた。ふわっとした雲の上を歩いているみたいな感覚に包まれていた。少年の
ペニスが空を掻いて揺れる。絵本の夕焼けの鴇色が少女の鮎夏を闇へと誘う。
「鮎夏、ぼくのチンチンをさわるんだ」
 少女は怪物に言われなくとも、縛られていた両手を掲げ、両腿の淡いの肉棒へと手を
差し伸べていた。拘束されている為なのか、それともペニスにふれることができるからか、
鮎夏の手は顫えている。少年は鮎夏の胸の息遣いを注視していた。肩の揺れ。そして、ペニスに
特異な関心をよせてくる少女の貌(額をきれいに切り揃えられて隠す黒髪)。長くやわらかい
少女の肩に掛かった髪。 「どんな感じだ?」 
 鮎夏は顫える両手で花をつくって、そこに少年の黒い欲望に滾るペニスを包んでいった。
稚く白い人形のような指が曲がって絡んでくる。 「……あったかい」 そして鮎夏は少年を仰ぐ。
『210』

「ほんとに変わってるな」
 少年と鮎夏が視線を絡ませる。
「にぎにぎしてもいい、おにいちゃん?」
 二人の貌は紅潮していた。植え付けられた歪んだ性愛と好奇心が混じり合う。
「ああ、かまわない」
 ペニスがビクンビクンと脈打っている。少年を仰いだ時、アップルグリーンの棚が鮎夏には
歪んで見えていた。鮎夏はそれを制圧か殺す想いで、ペニスを強く握り締めた。

 実際には、鮎夏の手首はベルトで縛られていて、そんな強い力は出されてはいない。
「うっ……ああっ!そんなに強く握っちゃだめだ」
 少年は無抵抗な鮎夏が突然に、強く握り締めてきたことで驚いてしまっていた。
「おにいちゃん、ごめんなさい」
 鮎夏は叱られて(それでも相変わらずの抑揚のない少年の声だったが)、股間の淡いに
添えられた、縛られている手を下ろそうとした。
「そのままでいいから、ゆっくり、ゆっくりだ。鮎夏の手を閉じて、また開くんだ。やってみな」
 鮎夏の眼球が動く。
「はい、おにいちゃん」 

「そう、そういうふうに。上手だよ、鮎夏」
 鮎夏の目の前には透明な雫を垂らす鴇色の蛇がいて、それがだんだんと自分に
向かって来るような気がしていた。これが、自分のものになるんだと。鴇色の表皮は
綺麗に絖っていた。
「手」 
「なに……、おにいちゃん?」
 鮎夏はおにいちゃんと言って服従を示してはいたが、それは無意識の媚だった。
「だるくないか……?」
『211』

 鮎夏は少年の勃起したペニスを小さな手で包んでいて、その顔を少年は窺っている。
「ううん……」 
「ほんと?だるくないか?」
「うん」
「ほんとに、ほんとか」 
 なにをそんなにも気にしているのだろうと不安になった。どこか心配そうに鮎夏はじっと
見つめられての、そんな経験は初めてなこと。男と女だけのふたりの世界で、綺麗と
言われたのも初めてで、波紋が拡がってゆく。
「すこし。すこし……だけ」 
 少年はただ、逃げる理由が欲しかっただけだった。

「そっか」
 鮎夏の手が震えている。それでもペニスを握っている、鮎夏の束ねられた手首に
少年の手がふれて、拘束していたベルトをとき始めた。
「あっ!」
 何かが、離れていってしまう。拘束していた黒い皮のベルトを取ると無造作に
放り投げる。鮎夏は思わず、小さな驚きの声を上げていた。少年のペニスはまだ
硬いままでいて、その下腹は不規則に波打ってもいた。確かな牝への欲望は息づいて、
少女への憐憫とが鬩ぎ合っている。
「手を離しな」  「はっ、はあ……。やぁ、やあ!」
「なにをいってるんだ」      「やだぁ……はっ、はあ、やぁ」
「鮎夏、離せって言ってるだろ」

 もっと怒られそうで、からだが竦んでいた。少年の顔を見ていられなくて、ペニスが
生えている下腹、少年の腹部が引き攣るように、忙しなくへこんでいるのを鮎夏は見る。
「やあっ、やめないもん」
 鮎夏はペニスを握り締めながら、少年の腰に抱きついた。鮎夏の揺れる艶やかな
黒髪の感触が、敏感な少年の尖端を刺激させてしまい、欲望を噴き出してしまう。
射精した量はおびただしいもので、速射されてびたっびたっと勢いよく地面に落ちていった。
『212』

鮎夏は少年の腰に抱き付いていた為に、不意に訪れた歓喜の瞬間を見ないで済んでいた。
「鮎夏……っ」
引き離される淋しさに、鮎夏の涙がこぼれた。黒髪にはいくらかの白濁の体液がこびりついている。
泣いている。泣いて、叫びたい衝動に駆られていた。
「やめない。やめないから」
しかし、叫んでしまえば、今度は本当に少年に嫌われてしまうと思って、声を出すのを懸命に
堪えている。

「おい……、ぼくのチンチンから手を離せ」 
「やだぁ!」
「鮎夏っ!」
 鮎夏は少年の初めての声に躰をビクンとさせる。手が髪をぎゅっと掴み掛かろうとする。
鮎夏の泣き声が、その気配を感じて高くなっていた。掴みかけた髪をといて、頭のてっぺんを
少年は撫でてやる。鮎夏の手のなかの肉棒は、信じられないくらい硬度をがくんと落として、
やわらかくなってしまった。鮎夏は手のなかのモノの変容に驚く。

『花をつくりな。手でそうやって、ひらいたり、とじたりしてゆっくりと握ったり離したり』
 抱きついて握り締めている鮎夏の所為でふたたび硬度を取り戻して高まり始める。花が
ひらくようにしてみな、と言った少年のことを思い出し、抱きつきながら握ったペニスを緩めたり
握ったりを繰返す。
「鮎夏、鮎夏。ぼくを見ろって、ほら。なあ」
 真澄の愛撫とは天と地ほどの開きがあった。それはあまりにもちぐはぐで、繊細さには著しく
欠けたものであり、それ自体が欲望を誘うものではなかった。鮎夏の少女のなりが少年の心を、
また烈しく昂ぶらせていた。
『鮎夏はなにしてる』 
「やだあぁああっ!やだあぁぁぁ!」
『テレビ見ているけど。ねえ、どうしたの?』
『213』

「あうっ……!」
 ペニスをきつく握り締められた、少年の背が丸くなって呻いてしまう。
『……』
『なによう?』
『……にぎにぎしたんだよ』 
『にぎにぎ?どこをよ』
 すっとんきょな声を真澄は上げるが、へんな笑みを口元に浮かべていた。
「あっ、鮎夏、顔を上げて。ぼくを見るんだ」


『ほら、出てけよ』
『ねぇ、どこをよ』
『よ、よせったら』 
『いいじゃないの』
 パンツを取ろうと背を向けた夫の背に抱きついて、腰に巻いたタオルから真澄が手を動かして、
男のかたちを確かめようとする。
『よ、よせったら!ふざけるなったら、真澄』 
『いやだぁ。勃起してるじゃないの』
「ゃあぁああ……やぁぁぁ」

『娘をどうこうしようなんて思ってないって』 
『ほんとなのかしら……?あやしいわよ』
『ば、ばかいえ!』
『ばかってなによう。勃起して言うことかしら』
『おまえがそんなこと言うからだろ!』
 真澄の髪がゆれて、好色にいたずらっぽく赧らんでいる顔に絡んでいる。
『だから、なこと考えるわけないって。娘だぞって、おい!なにするんだよ!』
 ふたりの指が絡み合いもつれ、腰に巻かれていたタオルがはらりと床に落ちる。
『214』

『してあげるから、お口に射精して』 
真澄の手が落ちたタオルを拾い、目隠しをして両手を後頭部に持っていく。頭を下げて
突きつけられる両肘。真澄に握られた所為もあって、交渉可能なまでに肉棒は勃起していた。
『なっ、ベッドへ行こう』 
『抱いたりしたら、叫ぶ』
 あかいくちびるがほころんでる。タオルという無粋な物だったが、真澄の小鼻と絖る唇が、
男にショーツのなかのしとどに濡れるヴァギナを想起させ、ペニスへ欲望を執拗に送り込んでいる。
繋がる予兆、ときおりの半開きの唇から洩れる真澄の赫い花からの白い雫。 

『……おい』
「ほら、離せって。鮎夏」
『いやよ』
『真澄がしたいだけなんだろ』 
 じゃれあうなかで、男の匂いを小鼻で吸い込む。真澄が唇を尖らせて言う。
『そうよ。したい、したいのっ』
『だったら、ベッドへ行こう。な、真澄』
『もう!ダメ。娘に勃起したなんて、ここで懲らしめてやる……。ねぇ、わたしほしくない?』
 真澄の手がくだものの房をさわるようにして、まだ温かく少し湿っている陰嚢をやわやわと
揉みしだき始めていた。そこに目隠しをした真澄が赫い舌を差し出して、そそっと舐め上げる。

「ほら、なっ」
 少年はペニスから鮎夏の指を一本ずつ剥がしていった。鮎夏の手からペニスは解放されたが、
少年の欲望はそのままに宙ぶらりんになって、それでも泣いている鮎夏をあやす為に
抱き締めた時、真澄のにくらべて遥かに無垢で、蒼いけれどもやわらかそうなスリットへ、
インサートもしていなかったのに、少年は鮎夏とセックスをしているような、そんな気分に
囚われていた。鮎夏の耳に少年の男の荒い息使いが聞こえてくる。その息使いは烈しいままで
あるけれど、微妙に変化していた。鮎夏は熱くなった。
『215』

 黒髪についてしまった、鮎夏を穢した白い粘り。震える背中を撫でながら眺める少年。
「もう、泣くなって」
「う……あぁぁ」
「なにが、そんなに哀しい?」
「パパぁぁぁ……」
 その言葉を吐いてから、鮎夏は少年から離されて、髪についてしまっている精液を
ハンカチで拭き取られる。少年はペニスをしまわないまま、構わず鮎夏の始末を急いだ。
されている鮎夏も片脚に脱がされたままのショーツを引っ掛けて、じっとしている。
急ぐけれども、ごしごしと乱暴ではなくて、そっとふれてくるようなやさしくが伝わる。

「へんたい」
 鮎夏はそう言った。少年はぎょっとして、手の動きを止めていた。躰が自分のもので
ないような気がする少女。なぜだか、少年に言わされた、変態という言葉を意味も無く
吐いてしまっていた。少年はまた鮎夏の髪に付いた精液を拭き取っていて、手にした
髪を神経質そうに絶えず鼻に近づけては、鮎夏の臭いを嗅いでやっている。そんな姿を
鮎夏はぼんやりと見ている。ペニスがビクンと動いたのも少女は見ていた。

 少年によって鮎夏は、女王さまになった、――とは思わなかった。赤いワンピースにも
僅かだったが附着している、白いバルーンと赤の狭間に落ちた精液。
 それはベーキングパウダーを、篩いに掛け作ったクリーム。とどこか似て、ぼてっとした
感じでそこにある、ペニスから吐き出された少年の体液。シャカシャカシャカとボールを
掻きまぜ作ったパンに込める種。真澄がボールから指で掬ってみせ、お口をああんと
開けた鮎夏が舌で甘味を感じる。
『おいしい?』 
 レンジに入れる前の仕込みを舐めた。牡の快感の証拠を口に含もうとする鮎夏。
『うん!』
 できあがったクリームのような、ぼってりと服に付いている粘り気を指で掬ってみようとした。
『216』

「よせ」
「クリーム」
「そんなもんじゃない」
「クリームなんだもん」
 少年に手首をきつく掴まれた。
「ちがうから、舐めるんじゃない。鮎夏」
少年の瞳を見たら、「どうして?」とは訊けなかった。「いやぁ」とも言えなかった。
かわりに出たのが「ごめんなさい」という少女の淋しさのため息。

「もういちどぼくに言ってくれないか」
 少年は戸惑った表情を見せたが、鮎夏に舐めさせないで、指に付いてしまった自分の
精液をハンカチで丁寧に拭き取ってやった。
「なに、おにいちゃん?」
「さっき、鮎夏が言ってくれた言葉。もういちど聞きたいから」 
「へんたい」
さっきと同じように鼻に近づけて、鮎夏の細い指の臭いを嗅ぐ。
「おにいちゃんの、へんたい」
下腹のペニスは天上を突くみたいに屹立していた。

「いいにおい?」
「えっ……、いやなにおいだよ」
「なんで、嗅いでるの」
「へんな臭いがしてたら、鮎夏、困るからな」
「おにいちゃんのならいい」
少年は鮎夏の全身を見る。息を大きく吸い込んで、肩をゆっくりと下して、唾を呑み
込んだ。おもむろに、濡れている鮎夏の足元から膝頭の内側をあがっていった。
腿の淡い近くで止まって、そして、内側を丹念に拭き取り始める。
『217』

 汚れを吸い取っているガーゼタイプの白いハンカチ。確かな少女の生と性の質感をやわらかな
布越しにふれ、鮎夏の女の息吹きに近づいて、一瞬、真澄のような蒸れたセックスの気配を
手の甲の皮膚が敏感に感じ取っていた。馬鹿げていると思ったが、たしかな少女のぬくもりの
知覚があった。少年は手のひらを自分のほうに向けて、鮎夏の無毛のスリットにかざしてみる。
「鮎夏……」
「なに?」 
「……」 

「どうしたの?」 
「なんでもないから」
「おにいちゃん」
 少年は手を止めて唾を呑む。
「どうした?」
「鮎夏、きたないから、しないでいい。もう、しないで」 「いやか?」 
 母が濡れた躰を拭く感じと、どこか似ていてやさしく思えた。それなのに、粗相をしてしまって、
そうされていることが、いけない気がする。
「わからない」
 でも、なぜだかわからないが不思議な感覚を呼ぶ。考えると鮎夏の動悸が速くなっている。
熱い、あつい、手に残るペニスの感触が鮎夏を灼きつくそうとする。

「鮎夏の……おしっこなら、汚くない。ぼくは、きらったりしないから」
 絵本の女王さまと、頭のなかで言葉を見つけても、どうしてもしっくりとこない。心地いい……
止めることのできない、なにかが鮎夏のなかで拡がっていた。
「きらいにならない?ほんと?」
 口では言い表せない、不思議な感じが鮎夏を包み込んでいた。
「鮎夏」
「はい」
 少女は小気味良い返事を怪物に返す。
『218』

「スカートを少し持っていて」
「うん」
 鮎夏はスカートを持って、太腿を見せる。腿から臀部へと続くラインは後ろに、そのかわり
前方の腿から流れる突き出した腰骨のラインを少年に捧げる。その両腿の淡い、鮎夏は
無垢な女の佇まいを少年に晒してしまって。白い鮎夏の陰阜の下方の確かな縦筋、女の
証拠がくっきりと刻印され、なにも知らないとばかりに存在を誇示してある。
「きらいになんかならないから」
 無垢なものに、みだらな誘いがひっそりと息づいて佇んでいた。

「あっ!」
 内に吸い込んだような、少女の小さな呻き声が洩れる。少年はハンカチを捨てた素手で、
拇を陰阜にそっとあてがって押していた。その弾力の質感を確かめるようにしてから、
中指を忍ばせ鮎夏のスリットにふれる。
「んんっ!」
 そっと撫でつけた指が肉を掻き分け、狭間に浅く潜り込んだ。ふたりの動悸が烈しくなり、
胸がつかえているみたいに息苦しく、真澄のものを想像しながら、少年は鮎夏のつぶらな
孔に指を挿入しようとしたが、それはできなかった。鮎夏の潤んだ黒い瞳を見てしまい、
口に溜まった唾液をむりやり呑み込むと、濡れたスリットにふれた手を横にして口に指を
持っていって、自分の唇に挟むようにして含んだ。

「きたないよ」
「潮の味がする」
「きたないもん」
「どうして。鮎夏のものだろ。舐めたかった。鮎夏も舐めてみろよ」
 少年にそう言われて、頭を垂れてセックスを覗き見る。片手を動かして持っていこうと
した時だった。
「あ……。さっき」 「やめとけ」
 鮎夏は手首を掴まれていた。
『219』

「やめろ。やめないか」
「どうして。どうして。さっきもそういった。なんでぇ」
「じゃあ、ぼくの指を舐めろよ」
「……」
「ほら、これで十分だろ」
 鮎夏は少年の手を黙って、素直に受け入れた。小さな手が少年の手を掴む。少年の
手のひらの肉、やわらかな感触が信じられないくらいに心地よかった。ツンとした愛らしい
少女のあどけない上唇を、少年の差し出された人差し指の先でゆっくりと捲られる。

「はあっ」
 潜り込んで、歯茎にさわられた。
「ほら、口をひらいて」
「はっ、はぁ」
「そう、それでいいよ。目を瞑って、鮎夏」
 鮎夏は言われたとおりにした。中指が鮎夏の口腔に押し込まれる。唾液がつうーっと
したたり頤を濡らす。
「あっ、んんっ!」
 小さかったが、明らかに混乱しているふうな鮎夏の顫える声が洩れる。

「こわがらないで。ほら、舌に乗せたりして、舐めて。言われた通りにやってみな。ぼくを
感じるんだ。わかる?」
 鮎夏の瞳が少年を見る。暴虐とやさしさが交互に表れる少年に頷いて、また、ゆっくりと
瞼を閉じていた。眠りはしないけれど。
「んっ、んっ、んん」
 上唇を捲っていた人差し指も入り込んで、ぎこちない鮎夏の舌使いの動きを困らせる。
『もつれ、よじれて……むちゃくちゃにして。ひとつに蕩けなくても、いいから。激しくでいいから。
激しくよ、激しく、してほしいの。して、してちょうだい』
 真澄の声が少年に聞こえて来る。鮎夏の顔が動いて、やわらかく絖る黒髪がゆれている。
『220』

『うっ、ぐうっ、はあっ、あ、んんっ』
 口腔を蹂躙していた真澄の指が抜かれて、少年は貌を掴まれ口を吸われる。その貌を
少年は眼をひらいて見ていた。もつれて、よじれて、むちゃくちゃにして。性への関心が
ないわけではなかった。掴んでいた真澄の乳房に力を入れ、彼女の口からのくぐもった
呻きが少年の口に雪崩こんできた。ひとつにならなくてもいいから。蕩けなくても、それで
いいから。偶然に会ってしまった、泣いていた女性がいて、いきなり事故にでも巻き込まれて
しまったような目に遭う。ただいいなりになって、真澄に流されていく。少年の乳房を掴んで
いた手が緩んだ。

 真っ先に、報復はあった。真澄の膝頭が少年の両腿の淡いに押し入って来て、ペニスを
ぐいぐいと擦られる。張り詰めた股間を嬲られ、開いた腿を窄める力が働いて、腰にたまらない
感覚が走った。 『うああっ、あ、あうっ』 乳房を握り締めていた少年の手が緩むと、真澄の
手が顔を離れて甲に覆い被さる。仄かな香りがし少年は、真澄の匂いを吸い込んでいた。
『おっぱい、さわって。ねっ。好きにして揉んでみて』
 華美ではない、控えめな清楚な匂い。それでも、いい匂いだとは思わない。真澄は少年に躰を
擦り付けてくる。むしろ、きれいなのだから化粧なんかしなければいいのにとさえ思いながら、
あの感覚でたまらなくなっていた。いくら真澄のやわらかな乳房に興味があるからといっても、
迫る射精感に愛撫など気が廻るはずもなく、どんどんおろそかになる。

「んんっ、んっ、んぐうっ、うぐううっ」
 鮎夏の口腔に指を抽送することに少年は没頭していた。ナチュラルな少女の芳香、弱々しい
無力の鮎夏を思うと昂ぶってゆくのがしかたがない。存分に支配できる、牡になりきれた。
くぐもった声に無茶を強いた。鮎夏の黒髪が哀しく揺れている。
「ほら、もっと、もっと、指に舌を絡めるんだ、鮎夏。もっと、ちゃんと、ちゃんとだよ」
『あっ、ああ、でっ、でちゃいますから。おねがいだから、やめて』
 ペニスを擦って込み上げて来るのは、おしっこが洩れてしまいそうな、あの感じ。少年は腰を
引きに掛かったが、真澄にがっしりと抱き締められ、さらに膝で股間を擦りあげられる。
『221』

「はあ、はあっ、はあ、はっ、はあ、はあ……」
 鮎夏の口から唾液に濡れた指を引っこ抜いて、喘ぐ声に聞き耳を立てると、新たな
どうしようもない、暗い性愛の欲望の糧とした。
「ぼくのオチンチンを舐めるんだ。もう、できるね、鮎夏」
 涙眼の鮎夏は、少年に反射的に頷いていた。お風呂でもう少しさわっていたかった
父のペニス、少年のを握り締めて灼けるように熱かった、少年の物とはくらべものに
ならないくらいに太くて逞しい肉塊。あの感じを掴み取りたかった。依存しようとした気持ちを
むりやり湯舟から剥されていた。諦めたそれを今、少年は舐めろと言ってくれている。

 鮎夏の躰は熱を帯びていった。少年は鮎夏の火照って惚けている顔を、両手で挟み込んで
口を強く吸う。あふれる唾液を少年が吸っている。男の唇が鮎夏をすっぽりと被さって、
強く吸った。やがて舌が押し入って、鮎夏の口腔で暴れて蠢く。いっぱいにひらいた瞳、
鮎夏は瞼をぎゅっと閉じている。 強く荒ぶるままに鮎夏を犯す。官能という言葉すら
知らされていない少女には、やわらかな白い皮膚に食い込んで来るものは、獣の爪。
それは怪物でしかない。うんと返事しようとしていた、少女の唇を怪物は掠める。
それは真澄がした、やり方で。

「んんっ!ん!んっ、んんっ、んぐうっ、んん……!」
 女王様と騎士のまねごとをして、手の甲にキスをさせた記憶がまたかぶった。唾液の匂いは
嫌なものとインプリンティングがされている。父の記憶も縺れて来た。鮎夏の眉は吊りあがって、
抱きつくでもなく、困惑しながら少年の胸を手で押し退けようとする。蝉が紛れ込んで来て、
リネンのテーブルクロスに留まった透明な羽。見惚れていた鮎夏の一瞬は黒猫に奪われる。
持っていかれた蝉。猫は口に咥え、バリバリと音を立てて食べていた。
 蝉は最期まで猫の鋭く白い牙に砕かれながら声をあげて啼く。明確な拒絶が鮎夏のなかでかたちに
なろうとしたら、少年の暴れるようだった恥戯は憑き物が落ちたみたいに力が抜けて、狂乱の夏の
やさしさを鮎夏は味わう。壊れそうなくらいに、興奮していた。突き刺さる白く細身の牙。
『222』

 鮎夏の火照る顔を包んでいた手は背に廻って撫でていた。少女は徐々に馴らされていて、
時には蒼い尻を揉みしだかれ、少女にはわけのわからないみだらという概念を突きつけられた。
叫びたい衝動と、躰が反応しはじめていることに疼く。無理やりに怪物に強要されていることを、
自分が望んだことにすり替え、鮎夏は思い違いをして呑まれていった。
『ぼく、女の人がこわい?こわいのね、そうでしょう。でも、こわがらなくてもいいの。こわがらないでいて』
 こわがらせたのは、お前だろうと少年は叫びたかった。
『そっ、そんなんじゃ。ああ……、もうでちゃう』
 鮎夏は少年の下腹部に引きよせられるようにして、しゃがんだ。少女の口からは、唾液が
また流れ出た。

「鮎夏の黒髪。やわらかく、長くて、とてもきれいだよ」
 鮎夏の指が少年のペニスを掴む。ペニスのさきっぽは、もうヌルヌルになっていたが、
待ち望んでいたものがほんとうに手に入る。今度こそ。
「舌を出して舐めてごらんよ」
 鮎夏は舌をチロッと差し出すと、鴇色のへびの顔にゆっくりと近づけていった。鼻孔が
少しばかり開いて、少年の昂ぶりに火をつける。
「いい子だ、鮎夏」

『ゆるさないって言ったでしょう』
 真澄の手が下りて、彼女自身もしゃがむ。少年が落とした葡萄を拾って潰さないようにどかす。
潰されるのは自分だと思った。真澄がそんな気遣いを見せずに、しゃがんだままの脚で、
葡萄を踏み潰していたら。真澄は少年のズボンのジッパーを降ろし始める。
『はっ、はっ、ゆるしてぇ、あっ、ああっ』
 亀頭に触れた鮎夏の舌先が離された。ペニスのあじに反応した結果だった。
「鮎夏。やめるなら、終りにするよ」
 鮎夏が顔を、すぐに左右に振る。
『黙っていて。嫌がっている振りならよして。黙って、見るの。いい、わたしを見て』
『223』

「鮎夏、やめないから」
『あっ、あ、あ』
「だったら、ぼくのからだを感じて、オチンチンを舐めてみなよ」
 真澄のしなやかな指使いが強張って、下着越しのペニスの膨らみを確かめるように蠢いていた。
『見るのよ!』
 腿を掴まれ陰嚢を揉まれた。扱いてほしい棹の欲求が弾ける。指がふれたのが限界だった。
『うっ、うああっ、ああ……、やっ、やだぁ……』
 少年の躰は顫え、真澄へと倒れ掛かってきた。真澄はすぐに抱きとめてやり、背中を
撫でてやる。真澄の計算は狂ってしまっていた。白い下着越しに肉棒を唇で確かめながら揉んで
やるつもりだったから、撫でながら、少年の気持ちをを無視して、精液で夥しく汚れたブリーフを
さっさと脱がしだす。

『あっ、あ、や、やだぁ、やめてよ』
 鮎夏の涙で潤んだ瞳がペニスを見ていた。
「もう一つの手で、垂れ下がってる袋もさわってくれないか」
『どうして。こんなによごれてしまってるのに。脱がなくちゃいけないわ』
 真澄の指に粘り気の残滓が恨みがましく絡んでいた。ペニスはひくっひくっと蠢きながら、
みるみる萎みきって、男を放棄しているかのように、真澄に屈してうな垂れる。
「これのこと……」
 少年の腿の上に置かれていた手が、ペニスを握り締めていた手の下に持って行く。

「やさしく、揉むんだ。そのまま、オチンチンの先っぽに、鮎夏の唇をかぶせていって」
 少年の声が、微かな顫えを生じさせている。
「呑み込むんだ。喉の奥に入れるんだ。わかったね」 「……」 「いいね」
 鮎夏はどきどきしながら、はいと返事していた。拒まないで、自分を求めてくれている少年。
言われた通りに従おうとしているのに、小さな自分が怪物を支配しているみたいな。
鴇色の蛇を唇に含めばどんな気持ちになるのだろうと、少女のくちびるを確かな手ごたえを
求めてよせていった。
『224』

「うっ、くっ……」
 生臭い精液の臭いも、ペニスの味も気にならなかった。ぐにゃぐにゃだったものが
スイッチしてこちこちになってしまう時のふしぎ。少年の生理に父の面影を求めて追ってゆく。
「鮎夏、舌で飴を……しゃぶる……みたいにして……」
 少年の呻きに動悸が激しくなって、自分はとてつもなく酷いこと、凄いことをしている
のではないかと、稚いながらの思考で駆け巡って顔がカアッと熱くなる。素性の知らない
男の証拠は、鮎夏の口のなかに尖端を収められて、それは生きていて涙があふれた。
今までとはくらべものにならないくらいの衝撃に鮎夏の気持ちは抱かれている。

 鮎夏の鼻息にペニスがびくんと反応して跳ねた。苦しいのに、荒ぶる物をなぜだか
可愛らしく、命令を待っていた生徒は、大きな瞳で先生を見た。ツンとした唇。今は少年の
変貌した肉棒を咥えている。口を噤んだ少年の手が、鮎夏の艶やかな髪をやさしく撫でた。
男を誇示している少年に傅いていることの気持ちよさに、少女は顫えていた。
「好きにしてごらん。そうしたかったんだろう?」
 頬をやさしく撫でられたことでいくらかやすらぎ、視線を少年の股間に戻すと、瞼を
ゆっくりと閉じ合わせてみた。口に余るほど大きくなってしまったペニスを、少女は口腔に
含みながらじっとする。愛しんでというより、どうしていいかわからずに、少年が言っていたことを
実行してみせる。少女の小鼻が膨らんで、陰嚢をやわやわと揉み始めていた。
二人は蝉の声に眩暈を覚える。

 鮎夏はペニスを乗せている、小さな舌を少し動かしてみる。すぐに少年は呻いてくれた。
少年の敏感なペニスを、ぎこちない舌戯で、裏筋をれろれろと舐めた。少年のなかで真澄と鮎夏が
交互に見え隠れするのだが、ついにはすべてが一緒くたになって、欲望に昇華されてしまっていた。
『腰を落として。落すの。ゆっくり。わたしがきれいにしてあげるから』
 少年は真澄に促されて、やわらかい土に腰を下ろす。泣きながら、もうそうするしかなかった。
きれいにするという誘い文句に気持ちが酔った。夢精した気恥ずかしいような、それでいて
自棄な気持ちにもなる。すべてを大人の女に任せれば……甘美に蕩けてゆける。
『225』

『両手を後ろに付いて』
 真澄の小奇麗な貌が、啜り泣いている少年を上目使いに見ている。真澄の少し赤味
掛かった白い貌に、緑の棚の木漏れ日が射す。眉毛、小鼻、唇、セックスを感じなかった
と言えば嘘になるが……真澄の泣き貌が、淫に染まってそこにあった。少年はその瞳を
見ていたが、視線を絡めるのが急に羞ずかしくなってしまい、逸らしたところにも淫靡な
女を見つける。髪から覗いて、朱に染まった真澄の耳にペニスが反応した。
 一瞬の真澄のショットに疼きを覚え、表情が変化したように感じる。だが、実際はそうでは
なかった。少年は真澄の顔に掛かったほつれ毛のつくる表情に反応していただけで、
急にペニスが膨らんでしまう。それは、何気ない瞬間だったのに、強烈なイメージとも言えた。
羞ずかしいくらいに男が突出した。ペニスがびくんびくんと痙攣する。

『うれしいわ、思ってくれて』
 気持ちなんかない、ぬるい本能のみの性愛にどっぷりと浸かっていた。興味だけが
先走っていく。躰だけが熱くなっていて、少年の顔も赧らむ。真澄が少年の吐き出した精液の
匂いを吸い込みながら、股間に顔を埋めて、陰嚢に舌をそろっと這わしてから、下腹部に
附着している残滓を掬い舐め取っていく。
『んあっ』
 力を取り戻しつつあるペニスが真澄の顔に当たった。
『もっと、あなたの声を聞かせて』
 真澄の絖る舌がペニスを掠めて口に含んで、むくむくっと膨れあがる。

「鮎夏の口のなか、温かくて気持ちいいよ」
 鮎夏は自分に身をまかせっきりの少年の感想に歓んでいた。自分が粗相をして、少年が
丁寧に拭き取っていた身を任せる行為。気持ちよさと言い切っていいものなのか、
よくわからなかった、あのもやもやっとしたものに触れているのではないかと察していた。
鮎夏は連帯感めいたものを感じてもいた。
「鮎夏、そのままオチンチンを呑んで。そう呑むんだよ」
『226』


「ん、んんっ、ぐうっ……」
 少年の手がこめかみと耳にやさしく触れて、鮎夏を促していた。鮎夏の顎がひらいて、
根本へと進み始める。自分のこの姿を遠くから覗いている自分がいる。遠くからだから
はっきりとは見えてこない。今ここで、瞼をひらけば、遠景ではなくなるのだろうかと
ぴくりと動いた。緑の棚の上にいたはずの自分はもういなかった。

「ゆっくりだよ。そして、オチンチンぜんぶ呑み込むんだ。ゆっくり、そうだよ、鮎夏」
 しかし、それも少年の命令によって、きつく閉じられて、見えていた緑の棚の下で
遊んでいる二人の姿は闇にとけるように消えた。
「んぐうっ」
 喉奥の粘膜に尖端が触れていた。少年は両腿の顫えを殺すため、大殿筋にぎゅっと
力を込めてアヌスを引き締に掛かる。さっき吐き出したばかりだというのに、
もう込み上げて来た。

「えらいよ、鮎夏。もう少し我慢してごらん」
 少年は真澄の教えた方法で射精感を堪えた。
「んっ、んんっ」
「喉を締めてみるんだ」
 少女にはわからない。恥戯のレッスン。セックス。ペニスの味。苦しみ。……本質的には、
いいことでも、わるいことでもなかった。でも、鮎夏には、わかることがひとつだけあった。


『ママ……。ねえ、どこにいるの』
 父もあがって来ない。バスルームにいって帰ってこない真澄に気がついた。テレビを離れて、
鮎夏はバスルームのほうに歩いてゆく。濡れた躰を笑いながら拭いてくれていた真澄がいれば、
もういちど、父のペニスの、あの質感に触れられる気がしたから。
『227』

「真澄、洗面所のドアに背をつけてくれ」
 夫の腿から両手を離して、真澄は床に付いて後ろへ下がっていった。口腔性交を
しながら、真澄はペニスを噛まないように注意を払い、夫は喉を深く突かないようにと
慎重に脚を動かす。二人は、ひどく滑稽な格好なんだろうと思ったら、これほど馬鹿に
なれるものはないんじゃないかと大事に思うと、女は濡れて口のなかの男は勃った。
手と脚をつかって蜘蛛みたいに、夫のペニスを口腔に咥えながらゆっくり……ゆっくりとさがる。

 背が付くと同時に、真澄の頭が洗面所の陶器にゴンと当たった。ほんとに滑稽だと感じ、
そして深く挿って呻いていた。真澄の口腔に向けて夫の律動が始まり、真澄は容赦なく
喉奥を抉られて女になっていった。舌でペニスを追う余裕がない。唾液の立てる淫らな
音が加速する。真澄は開脚して、くの字に曲げた格好で腰を落とし、夫はその前に立っている。
洗面所の縁に両手を付いて真澄の喉を執拗に抉っていた。

 真澄は床に付いていた手を夫の腿に巻きつける。苦しさから、夫の尻を割りひらくかのように
爪を立てた。アヌスに指を潜り込ませて鉤をつくる気でいた。もっともっと、求めて、爪を引こうとして
思い留まる。強張って衝きあげてくる尻に、もっとしていてほしいと思い、両手を、がしっと
洗面所の縁を掴んでいる夫の手首を、万歳をする格好で掴もうと掲げ空を掻く。真澄は鋭い
快楽よりも、自分が綺麗に見えることを優先させ、ペニスを昂ぶらせようと試みた。左手が滑って
落ちそうになるのを夫の手がしっかりと握り締める。磔にされたような感慨に真澄は浸る。

「真澄、フィニッシュするぞ!真澄!」
 ぐいぐいと尻を押し付けてくる。次はアヌスを鉤で掻いてやろうかと思っていた。
「んっ!んぐううっ!んんっ、ぐうっ!」
 夫の濃い陰毛が真澄の鼻をくすぐる。夫の手を強く握り締める。その時、噴きこぼれる精液が、
真澄の喉奥を灼く。叩いていた。やまなかった衝きあげが徐々にゆるくなり、さらに
力強いものへと変化して真澄の喉奥を尖端が突き、ついに時が止まる。真澄は軽く達して
しまっていた。立て膝になっていた両脚が、ゆっくりと伸びていって膝裏が床に着く。
『228』

 白い喉がゴクリと蠢いていた。真澄はペニスを吐き出さないで、搾り取るように
吸引していた。陰嚢を少しだけ揉んで、ペニスを甦らせようともしていた。コップを
取って、蛇口を捻ってジャーッと水を注ぐ音がする。真澄の口腔からペニスは
抜去され、赫い唇から白の一条が流れて頤に描かれる。
「んはぁ、ああ……。き、きれいにするからぁ……」
 夫が下りて、真澄のずれてしまっている目隠しを取ってやると、髪がほつれて顔に
妖しく掛かっていた。目隠しをしていたタオルは外されて、真澄は唇を拭われる。

「んあっ」 「ほら、口を漱げよ」
 真澄は夫からコップを受け取った。夫はタオルを手にして差し出し、ここに漱いで
吐けと促していた。コップに唇を着けた時、真澄はペニスを見ていて、膨らみ
始めていた。ニコリとすると上気した貌を上げて、口腔に残っている精液といっしょに
水を飲み干した。
「吐けっていったろ」 「呑まれるの嫌だった?」 「今日のは……だ」
「セックスに怒りをまぜたりしたからでしょ」
「怒り……?」 「そう。怒りの情」
「発情っていいたいのか」

「ちがうわ。わたしへのでしょ」
「真澄へのか」 「そうよ」 「自分へのものかもしれないな」
「だったら、あなたの怒りをわたしはのんじゃったことになるのね」
「へんなこと言うなよ。真澄が挑発したりするからだろ」
「そういう気になったんですか。やっぱ、すけべ」
 おどけてみせている真澄に、夫は苦笑する。
「真澄としたくなったということだよ。ばか」
「ああっ、ばかって言ったわね」
 このまましな垂れて、騎乗位で交媾をしてもいいと思って、洗面所のカウンターに
コップを置いた。
『229』

「ママ。ママぁ……。いるの?」
 鮎夏が脱衣場のドアを開けると真澄が立っていた。
「なに、鮎夏」 
「あっ」
 なにしてたの、と言おうとしたのに鮎夏の言葉が跳んでしまっていた。
「どうしたの、鮎夏?」
『ママ、きれいになってる』 
 髪は乱れてはいない。なっていても、鮎夏の気がつかない程度のこと。しかし、真澄の
白い貌は桜色に上気していた。いままで、ここでセックスをしていました、というみだら貌の
女がそこにいた。鮎夏はそれをきれいだと思った。後ろには父がペニスを完全に勃起
したままでいて、チラッと鮎夏には見えていた。そして、真澄が泣いていた痕もわかった。
『きれい……?ありがとう、鮎夏』


「唾を呑むか、舌でオチンチンの腹を押してごらんよ」
『うん、きれいだよ』
「んんっ、んぐううっ」
 鮎夏は前者を試みる。眩暈がして、闇に包まれていた眼球が反転しかけた。鮎夏は眼を
瞬かせて、発作を起こしたように僅かに夏の光りを見ていた。
「それから、ゆっくり吐き出すようにして下がるんだ」
 鮎夏はすぐに従う。
「ゆっくりだ。ゆっくりだよ。その時はね、舌でぼくのかたちをさぐるんだ。いいよ。上手だ。
鮎夏はおりこうだ」
 黒髪の長い鮎夏の舌が少年の言葉に素直に反応する。それは、紛れもなくペニスに
自然と反応するヴァギナそのものだった。
「もっと、もっと引くんだ」
 鮎夏は躊躇った。急いで根本から引いたことが、少年の怒りに触れたのかと思った。
父から湯舟から上げられた瞬間が混じる。
『230』

せっかく含んだペニスをもう吐き出さなければならないと、思うと鮎夏は不安に陥って、
瞼をひらいていた。少年は鮎夏への口腔性交をやめて、ペニスを抜去するつもりなど
毛頭ない。オチンチンは抜いたりしないからね。先刻のペニスをぎゅっと握り締めて泣いた
反応からも、そう言ってあげればいえば、鮎夏が落ち着くだろうことはなんとはなしに
わかっていた。でも、しなかった。
「鮎夏、ぼくの命令をこれからはよく聞くんだ。いいね」
 鮎夏はペニスを咥えたままで、少年を見あげた。この怯えたように潤んでいる大きな
黒い瞳が、少年をたまらなくぞくぞくさせ、少年の両手が鮎夏の頭を掴む。何かが
始まりそうな予感に少女の胸が高鳴る。真澄の瞳に通じるものだが、それは異質な物、
鮎夏だけのもの。

「皮と瘤のあいだ。わかる、鮎夏。傘の下を舐めるんだ」
 鮎夏の動きが止まっていた。傘がどの部分なのか検討がつかなかった。
『ほら、動かないでったら。髪の毛がきれいに切れないわよ』
『でも……』
『でも、なに?』
『終ってしまいそうで、こわいの』
 真澄は髪すき鋏の手を止め、おもしろそうに鮎夏を見た。 
『それで、じっとしてられないの?』
 父と絵本を読んで聞かせてもらっているときでも、寝ようとしているときでも、
暫らくは動きたいという衝動と少女は闘わなければならなかった。

『……』
 うまく表現できる言葉を、総動員で探し捲くっていた。わかることは、子供の時間は
止まってしまっていたということだ。少年に捕まって、羽交い絞めにされたとき、
おわってしまう予感があったのに、遊びまわっていることが自然だと思っていたビフォア。
なのに、ペニスを口に含んでまで、どうしてこんなにじっとしていられるのかがわからない。
『鮎夏、終るって、なにが?』
『231』

 箱に押し込められるような感覚。でも何が終るのだろう。大晦日でもないのに、
遅くまで起きていた日。目覚まし時計の音だけが部屋にカチカチカチと聞こえる。
それと、もうひとつのパネル時計。オレンジの光りの数字と花火のような模様が
綺麗に動いていて暗がりに浮かんでいる。数字は零に近づいていて……。
『鮎夏、もう寝なさい』 『もっと、訊きたい』
『あしたになっちゃうわよ』 『あした……』 『そう、あした。一日が終るのよ』

『終るの』 『そう、もう戻っては来ない昨日』 『ママ……』 『なに』
 あしたにかわる瞬間に思ったこと。
『あの日、ママだけ泣いてて、わたしは泣けなかったの』
 済んでしまったこと。もう終ったこと。
『えっ……』
 真澄は鮎夏の返事に息を呑んでしまっていた。時間までもが、あの日の病室に
強引に引き戻されていた。夜、鮎夏をベッドに寝かしつけてから、車のなかで
号泣したことまでも。

『パパが死んだ時に泣けなかったの。パパ、天国で怒ってないかなぁ』
 娘を見る真澄の瞳が瞬く間に潤んでいった。涙があふれんばかりに張っている。
『鮎夏……、ごめんね』
 嗚咽しそうになって、声が震えて。
『ママ……ぁ』 『なに……』 『パパ、怒ってなんかないよね』
『ええ、怒ってなんかないわ』
『ほんと』
『きまってるでしょ。そんなこと、パパが鮎夏にするわけないでしょ』
『ねぇ』
『んっ、なに……』
 持ち直して、真澄は小鼻を手で擦っていた。
『232』

『どうして、さっきあやまったの?』
『ママが、すまないと思ったからよ……。わたしだけ泣いて、鮎夏をおいていったことに。
ほんとに、ごめんなさい。ごめんなさいね……。悪いママね。ママをゆるしてね、鮎夏』
 鮎夏の顔に近づいて、さっきまでやさしく撫でていた、真澄の顔が被さってきた。
『ママ、ごめんなさい。泣かないで。おねがい。泣かないでぇ』
 終った時の泣く真澄の顫える躰を、鮎夏は体感していた。


『……わかんない』
『もう、この子ったら。もうちょっとだから、我慢していてね』
『……』 
 もやもやっとしたものが鮎夏のなかで拡がっていた。真澄はそれを察して声を掛けた。
『そのあとで、おやつをたべましょ』
 鮎夏の黒い瞳に輝きがすぐに戻ってきた。
『うん!』 『ほら、うごかない、うごかない』 
 真澄はクスクス笑ってから、鋏を小気味よく動かしていった。
『はあい』
『鮎夏、お人形さんみたい』
『お人形さん……?』
 また、ふしぎが生れていた。
『きれいってこと』
 鮎夏はぬいぐるみとか、ドールを想像していた。きものを着た、黒髪の少女の人形とか。
しかし、真澄が抱いていた人形のイメージには鮎夏にはわからないエロスが含まれていた。
人形も、人形師がつくった物だった。白い肌に、長い艶やかな黒髪。肉感的なところが
皆無な少女の裸体。風呂上りに濡れた躰を拭いてやっていると、勃然と欲情して抱き
締めたくなる。 
(お人形さんか……)
『ママ。ねぇ、ママ!』 『あっ、ごめんね』
『233』

 しばらくして、鮎夏は少年を見た。少年も鮎夏を辛抱強く見ていた。
「やってごらん」
 鮎夏の舌がおずおずと動く。なにかを学んでいる。なにかを感じようとしている。
だから待つことが鮎夏にはできた。それが、おやつ。甘酸っぱい黄桃なのかは
わからない。
 缶詰から取り出した絖る黄桃。氷のような器に載せられた。もしかしたら、真澄が
咀嚼して吐き出した、ミルクのなかでくるくる廻っている黄桃なのかもしれない。

「舌でそっと舐めて、顔を引いて、そのまま先っぽの溝に這わすんだ」
 鮎夏は少年に言われた通りのことをトレースする。少年の下腹は激しく波打っていたが、
鮎夏は見ていない。
「これから四回繰返すから、苦しかったらぼくを見るんだよ。鮎夏、じゃあ始めるよ。
さあ、眼をとじて準備するんだ」
 少年の指先には力が籠っていた。それが合図ともいえた。ペニスの尖端が喉奥をめざして
ぐぐっと押し入って来る。鮎夏は少年の腿を掴んで、瞼をきつく閉じ我慢する。頬を涙が
濡らしている。鼻孔からはくぐもった呻きが洩れるが、瞼は閉じたままに。四回という限られた
時間であっても、鈴口をそっとなぞることの余裕など鮎夏にはなかった。生れるはずがない。

 先生からレッスンを受けたあとの初回からそうだった。ただ、動かすだけが精いっぱい。
喉奥に潜り込んで亀頭でぐぐっと突かれ、二度目に嘔吐感が込み上げて、「ぐううっ」と
重苦しい呻きをあげる。あと二回なんだと懸命にペニスが挿入されて来るのを鮎夏は待った。
三回目に少年の腿に添えていた、鮎夏の手が強張って肌を引っ掻いていた。
 四回目の嵐が来て、尖端が鮎夏の喉を突いて去っていった。少年は鮎夏の口腔から
ペニスを吐き出すつもりはなかったのに。不意の五回目を鮎夏に繰り出して反応を見極める
つもりだった。しかし、腰を引いて苦悶しながら耐えているのを見下ろしていたら、少年は
ペニスを鮎夏のくちびるを嬲りながら外に躍り出させた。すぐに少年は跪いて、鮎夏が空気を
吸い込もうとしていた唇に被せていって、華奢な躰をつよく抱き締めていた。少年のペニスは
下腹部を尖端で小突いてから肉棹を押し付け、その男の灼ける欲望を鮎夏に知らしめる。
『234』

「んっ、んん、んぐっ」
 鮎夏は押し付けて来るキスに呻いた。甘酸っぱい黄桃を咀嚼しないで口腔で舐め廻して、
少年の唇、そこからあふれ出る唾液に変わっていた。終ると思っていたことが、終らなかった。
少年の躰が重しのようになって、鮎夏の躰を押し倒そうとして迫って来る。
「鮎夏、寝っころがって」
「あ、はっ、はあ、はあ……、おにいちゃん……!」
 イヤイヤをして、少年の肩にしがみ付いていた。土に横になることを鮎夏は躊躇っている。
父のペニスを握り、その夜に自分のセックスをベッドに寝て、そっと指で触れてみて知った感覚のこと。
終わりなのか、はじまりなのか。びくんとした感触に、華奢な背中が丸くなる。綺麗なのか、
汚れてしまっているのか。
「いっ、いやあ……」 「鮎夏」 「いゃああ……」

 少年のペニスを含み、口吻もされて、きたないと思っていた唾液が混じり合った。命令に
従うことで、躰が熱くもなった。でも、このまま少年に押し倒されて、やわらかい黒い土のうえに
寝れば、赤いワンピースが汚れることは確かなこと。事が済んでしまって、起きて付いた
汚れを払ってしまえばおしまいとは考えなかった。
「鮎夏?」
「服がよごれるううっ」
 少年と鮎夏の会話に奇妙な間が生じていた。綺麗で可愛い人形を手にしていたとばかり
思っていたのに、そんな拒絶が鮎夏の唇から返ってくるとは想像もしていなくて
(滾るペニスを鮎夏のかわいらしい唇に咥え込ませ、それが真澄の血をひく娘だという
ことも知っていて)、呆気に取られ驚いていた。鮎夏は相変わらず荒い息をしていたけれど
(ワンピース越しにも胸を喘がせていることがわかるほどに)、けれど顔からは苦痛に喘ぐような
表情はなぜか消えていた。少年の困惑している顔を鮎夏はじっと見ていた。
「よだれ、こぼれてる」 「あっ、うん」
 半開きの口から涎が滴り落ちて、きらめいて、少年の手が動く前に鮎夏のやわらかな指が、
濡れた少年の頤を拭っていた。ペニスを握り締められた時も、そんな貌をしていた。
『235』

 少年は鮎夏に触れられて思わず笑っていた。少年はシャツの裾を掴むと、万歳をする
みたいにして脱いで地面に敷いた。それを見ていた鮎夏は笑ってはいない。べとべとする唾液。
嗅げば嫌な臭いのするものと知っている。でも、鮎夏は自分から触れていった。
どうして、そんなことをしようと思ったのかを少年の今していることを見ながら考えていた。
「鮎夏、ぼくは汚いだろう?」
 引いて下ろしていた手を少年が掴む。
「わからない。よだれは好きじゃないから。でも、なんでかわからないの」
「鮎夏はかわいいな。とても、かわいい」
「鮎夏、おにいちゃやんのオチンチンを……んっ」

「それに、きれいだし、かわいいから。だから、舐めたいよ」
 鮎夏の手の甲の薄い皮膚に唇を持っていって、躊躇いを混ぜてちょっとだけ止めた。
そっと舌を這わす。羽でくすぐるように。
「かわいい……の?」
 鮎夏の躰はジンと熱くなった。息が吹き掛かったから。半開きになった少年の唇が
永遠にも思えていた。そして、絖る舌が出され手の甲を舐められた。

「ああ。鮎夏、かわいい。だから裸になって」
「うん……」 
「きれいな赤をぼくは剥したい。そして鮎夏を見せて」
 二人の熱い息がもつれて捩れる。少年は鮎夏のワンピースを脱がしにかかり、
細い両腕を掲げ長い黒髪がもつれて絡まり、鮎夏の薄い白い胸に流れてきた。
少年は眼を見張った。外ということもあったが、艶やかな黒髪のコントラストに
白い肌が異様なまでに強烈に印象付けられていた。真澄の肌も確かに白いが
(それは少女の顔を見てもわかることだが、長い睫毛といい)、さらにうえをいく
白さで少年を興奮させていた。鮎夏の喘ぐ乳房を少年は外気に晒した。
見てはいけないもの、やってはいけないことの禁を犯した背徳の気分に、
ペニスが空を掻いて、少年は鮎夏の躰を抱き締めていた。
『236』

「痛くなんかしないから、鮎夏を抱きたいよ」
 少年のペニスの気持ちが下腹にあたり、あの夜のことを鮎夏は思う。
「おにいちゃん、汚くない」
 少年は鮎夏の躰を離してシャツを脱いだ。穢いのは自分なのだと思っていた。咀嚼された黄桃。
白のミルクのなかで、くるくる廻る。ペニスを含んで、涙をこぼしながら、これで擦ってほしいと願っていた。
「鮎夏、ここに寝なよ」
 上半身裸になり、ズボンも下げペニスを露出している少年。少女の前に膝を付いて促がした。
もう鮎夏に拒む理由はなにもなかった。鮎夏は少年の見ている前で、白く稚い裸身を、小さなお尻を
下ろして、黒い土に敷かれたシャツのうえに背中を付けていった。仰向けになって鮎夏は、喉をコクッと
鳴らして、たまっていた唾液を呑み干す。少年が鮎夏両脚を拡げて、少女の空間に入ってくる。両手が
華奢な肩の傍に下りて覆い被さってくる。ペニスの肉圧だけが、敏感な下腹部に掛かっていた。
呼吸が止まりそうなくらいに苦しい。怖くて、鮎夏は少年の腕に手を絡める。迷子になるような感覚が
鮎夏を包んでいた。だんだんと陽が傾いて夕焼けになる。きれいだけど、きれいじゃなかった。
鮎夏のスリットのうえに乗っていた熱いペニスが動き出す。
「んっ、んん」
 木漏れ日のきらめきが閉ざされる。鮎夏は少年の腕をきつく掴んで少年の律動に黙って耐えていた。
ゆっくりと、ゆっくりと時間は過ぎていった。あの夜の指がペニスになっただけ。やわらかくてかたい
ペニスに。それは、確かに鮎夏にとってははじまりだった。
 そして、少年といっしょに転げていった。長い髪に自分からラシャ鋏を入れるまでになって。


 口腔に溜まる唾液。鮎夏は少年との夏を思い出して、真林の肌から離れようとしていたら、手が
両脇に付いた鮎夏の腕に絡みつき引き止めている。
「ひとりにしないで。捨てないで……お姉さん」
 真林のお姉さんという小さな、それでいて縋りつくような声にほだされる。
「捨てる……って、どうして?」
『237』

 少年を愛したわけではない。愛という言葉さえ知らなかった。でも、鮎夏のなかでは
少年に繋がる思いがあった。ありえないこと。歪んで、捩れて、堕ちた夏。
「ごめんなさい」
真林が小さく答えると鮎夏の右手が上がって、額に乱れて掛かった髪を、ほっそりと
した指で丁寧に整えてやる。

(人形。お人形みたい)
書籍の美術コーナーで見た写真集の少女人形。一見、機械仕掛けにも見える股関節。
しかし、その瞳、唇のやわらかいかたち、肌。生きているみたいな、真林の肉体は
人形師のつくる人形。今ならわかる。でも、自分は今の真林のように、あの時、きれいで
かわいらしい存在だったのだろうかとも思う。真澄にしてもらった、人形を愛でるような
やり方で残りの髪を直してやると、手は真林の火照る耳へと触れる。

 白い躰に肉感的な部分のない無垢(鮎夏を真林が誘った事実を知っていても)。そんな
時間が鮎夏に流れていたのか、ほんとにあったのだろうかと哀しくなった。真林の太腿の
淡いにある女の刻印を思い浮かべる。鮎夏の手は頬に滑って、真林をやさしく撫でてやる。
少女の貌は耳ほどではないにしろ、頬には桜を咲かせていた。
「じゃあ、しよう。真林ちゃん」
 ぷくっとした乳暈が愛らしい。乳首はまだまだ蕾。少年にそうされたように、今度は
鮎夏自身がそうする。

「は、はい……、ありがとう」
 真林の悦びの声が鮎夏の胸に響いて、瞳が潤んでいた。今からこの少女をたべるのだ。
真林の瞳がなにかを訴えていた。
「どうしたの?」
 少年は一定のリズムで両手を付いて、鮎夏の躰のうえで尻を振っていた。
『んっ、ん、んんっ』
 鮎夏は唇を噛んで、噴き上がってくる声を殺す。
もうすぐスレ容量(512KB、表示では500くらいでカキコ不能)一杯でつ
でも続けてくれますよね? 必要なら次スレも立てますからお願いします
万一このカキコで書けなくなってしまったら姉妹スレ(「ロリ小説を作ろう」スレ)
を一時避難所にするということで 
『238』

加重をしないように気を使いながら、それでも敏感なところが熱いペニスで擦れて、
核は痛く……少女の躰はどんどんと固くなっていた。鮎夏は必死になって少年の腕にしがみつく。
少年の荒い息づかいと血が駆け抜ける音が胸に響く。沁みてくる。少年は何度も鮎夏と名を呼んで、
灼けるような肉棒を稚い陰阜に圧し付けた。少年の重みがなくなって、嵐が駆け抜けたと
鮎夏は瞳をひらいていた。そして、呻いている少年に顔を向ける。
『はっ、あっ』
 少年は呻くと鮎夏の躰から退いて、柔らかい土に横たわり、胎児のように躰を丸めていた。
少年は腰を顫わせて、なおも呻いている。

『おにいちゃん……』
 上体を起こして目に飛び込んできたのは、お漏らししたのとは違うべとつく股間。太腿には
少年の吐き出した白いものが掛かっていた。鮎夏は少年のバイブレーションを起こして
いる肩に触れる。
『だいじょうぶ?』
「まりん。真林でいいから、お姉さん」
『鮎夏……』
 恍惚とした表情で名前を呼ばれた。仰臥している薄い真林の喘ぐ乳房に、鮎夏の鼓動を
ゆっくりと合わせてゆく。挿入はなかったけれど、あの時の感覚は忘れない。罪の意識に
喘いだ鮎夏の乳房を真林の薄い胸へと貝あわせのようにして。

「わたしのことを鮎夏と言ってみて。真林。おねがいだから」
 鮎夏は真林の仰臥する躰の外に正座して座り直すと、ヒップを掲げるようにしながら
真林へと、少女の肉体に降りていった。
「あ、あゆか……さん」
「鮎夏って、もういちど」
 真林の顔が真っ赤になる。
「あゆかぁ……」
『239』

「真林、重くない?」
 体重が真林に掛かるのを気にしながら、いまいちど鮎夏は訊く。
「はい」
「鮎夏の……いのちを感じる……。かんじるの……。だから、いっ、いい!きもちいいのぉっ!」
 唇を被せようとした鮎夏の動きが止まる。真林の唇が予兆に微かに顫えている。溜めてから
唇で軽く擦って、また少し離して、二人の息を絡ませる。真林という少女の向こうに昔の
自分を見ていて欲情しているのか、少女人形という蠱惑に酔ってしまって、ねじれて廻る。

「いのち?」
 鮎夏は、この少女に誰が刻印を刻んだのかを一瞬だったが、訊いてみたいという感情が
芽生えていた。少年との一日目のセックス。ペニスの挿入はなかったが、鮎夏のセックスを
イメージ付けたもの。されることを快感と信じ、ヴァギナにペニスを頬張っている時は、
絶えず何かに耐えているという貌を鮎夏はしていた。男によって変わることもなく、潤子と
逢うまで続いた。エモーショナルにセックスを感じるようになったのは。それまでは少女の時の
セックスのまま。

「からだが消えてなくなりそう。生きているって気がするうぅ」
 鮎夏は脚を崩して右膝で真林の揃えられていた(ぴったりと揃えられてはいない、僅かな空間をこじ開け)
太腿を割って拡げていく。しかし、これはあそび。セックスは人が創ったゲーム。鮎夏の夏も
そうだったように。少年の一方的な感情を鮎夏は浴びせられ、どう理由付けようとも、錯覚に
包まれたレイプ。略奪であり破壊。鮎夏はそれを愛だと信じていた。少年にも同情し、真澄に
嫉妬もして苦しんだ。だが少女の季節に、男と女の愛はない。愛を知るのはずっとあとだ。
鮎夏はそう思いながら、息を荒くしていった。
「ああんっ、お姉さんッ!」
 真林の手が鮎夏の肩に縋るようにして触れて来る。
「苦しかったら、言って」
(誰に仕込まれたの……?おしえて、真林)
『240』

『キスをするのもためらいがちに、止めてそっとしてみる。交歓するの』
 その感覚を鮎夏は知っていた。少年から教えてもらったキッス。少年は母から教わった
と言った。潤子を好きになったのも、同じキスをしたからだ。だから、今の言葉は潤子の
なかへのパスポート。潤子は鮎夏の瞼にも口吻をする。
『お互いのクリットを愛撫するのもゆっくりと。そう、ゆっくりとやさしくね。乱暴に
しないでほしい。わたしはそれが好きなの。窪みを掻き廻さないで』

『どうして、潤子さん』
 さん付けに潤子は貌を顰めて笑った。頬を舐め廻され、首すじから鎖骨の窪みに
潤子の貌は妖しく蠢いていた。
『だって、きれいじゃないでしょ。それとも、あそこにそうしてほしいの?』
 鮎夏はみつめられて、眼を伏せる。
『ねえ、こたえて。あなたをききたい』
『ほしい。潤子さんのきれいな指を……アソコにちょうだい』

『かわいい。じゃあ、ミニマムなバイヴレーションで。指をいれたままでする時は、鮎夏のラビアを
そっと指先でなぞってあげる』
 言葉あそびもなく、眉も顰めないで潤子は微笑して、鮎夏のセックスの緊張が解け無防備になる。
『んぁ……、じゅ、じゅんこ』
 ひそめていた鮎夏の声が洩れ、牝のゆるやかな時間だけが流れて、やかずてはすべてになる。
潤子と鮎夏の波うつリズムの下腹部が合わさって、潤子の赫い唇が鮎夏の肌を這う。
『弾いてもみたり。それで、鮎夏にバイヴを引き起こして……』
 潤子に愛されているという感情といっしょに。
『ん、んん、あ、あっ、あうっ!』
(いじめるの、潤子さん……?)
『いじめたい時に荒っぽいのもたまにはいいかもね。こんなふうにして』
『241』

『んあぁああ……!』
潤子はしこった鮎夏の乳首を甘咬みして、弓なりに躰を仰け反らせ、跳ばされない
ようにとシーツを握り締める。
『でも、わたしはゆっくりが好きなだけ。だから三日ぐらい、部屋に閉じこもって
鮎夏と抱き合ってたい』
何かが終わって、何かが生れる。鮎夏は潤子の貌を見ている。
『はっ、はあ、はあ……』
潤子は鮎夏の扉をこじあけて、鮎夏自身も潤子にひらいていった。
『もっと、もっと鮎夏を見つけたい』
『見つけてぇ、みつけて!』 
喉を突っ張らせ、鮎夏は跳ねた。 
『待ってて、鮎夏』
 潤子はなめらかな動きで、鮎夏の求める場所に下りていった。
『あぁ、んああっ!』 
 真林の太腿のうえで鮎夏は腰をかるく圧しつける。


「す、好きぃぃ!」
 真林の潤んだ瞳が瞬きにより、流れて頬を濡らしていた。それは鮎夏もおなじ。
二人の熱く濡れた吐息が絡みつく。
「ほんとに、すきにするから」
 真林が鮎夏に向かって躰をひらいている。やがて躰がエモーショナルに反応して
情欲にゆさぶられる肉塊だけになっていく。無の世界に溶け込んで。実際は
絡んで捩れるだけのモーション。ひとつになりたいと願っても、どこか冷めて鮎夏は
そう思う。真林はどんな貌を見せてくれるのだろうかと残酷な気持ちになった。
セックスによって変わる少女のみだらな華。
「して、してえぇぇぇ……」
472、ありがとうございます。

続けたいというのもあるんですが
ここらで、やめといたほうが
いいような。
『242』

「はっ、ん、んんっ」  
「いいのね。いいの?ほんとに、いいのね?」
 真林のくちびるが咲いて、鮎夏のと触れ合う。やわらかい肉感の交歓に鮎夏の動悸は
烈しく高鳴った。ぴちゃ、ぴちゃっというやさしい口吻の旋律が聞こえる。あの夏の少年に
なるための儀式。上唇と下唇をひらいていって、真林との軽い重ねを繰返す。
ためらいの所作で、少女のくちびるのマシュマロの肉感を愉しんだ。おもむろに唇を
強く押し付けていって。それでいて、ぷりっとした相反する感触も確かめて昂ぶり、鮎夏の
口腔に溜まっていた唾液が、あの日からの贈物として真林へとそそがれた。
 鮎夏は男が犯すようにして臀部を振り立て、真林の躰をゆさぶる。シングルベッドが
ぎしっぎしっとスプリングの軋む音を立てていく。


『おにいちゃん……』 
『すぐ、戻るから。そのあとでお風呂に入ろう。いいね』
 真林の瞳に翳りが生じた。
『ごめんな』
 真(シン)は真林の手を握ってベッドに全裸で仰臥している少女を残して部屋を出て
いった。残された真林は出て行く真の後ろ姿を追わないで、ぼんやりと天井を見ていた。
ドアが閉まる音を聞いて、真から背を向けるようにベッドのうえで横になって躰を縮込ませて
両膝を抱きよせた。そして階下で待っている遼子の耳には、真の足音が聞こえた。
『せっかくの料理こんなにしたりして』
 遼子はテーブルに貌を伏せたまま真を見ようとはしなかった。真は遼子の背中に近づく。
『だったらインスタントラーメンでもたべて。ねぇ、真林は……?』 『疲れて寝ているよ』
『じゃあ、わたしの相手をしてくれるの、真』
『いいの、それでも?』 『それでもって……?』
『おかあさんとしたら、真林とお風呂に入るけど』
『いいわ、それでもいい。だから抱いて』
 遼子はテーブルに伏していた躰をゆっくりと起こして、貌を仰け反らせて後ろに立った
真と唇を交わす。
『242』

『そんなに、チンポがほしいの?』
 遼子の背中に立っている真(シン)は全裸だった。
『ええ、ほしいわよ!真がほしいのっ!』
 喉を突っ張らせている遼子の顔に血が昇る。遼子の顔を挟んでいた真の両手が首を軽く締め付ける。
『んっ、ひっ……!いっ、いいっ……』
『いま、どんな顔をしてるかわかる?』
『真のチンポでみたされたい……いやらしい、女の顔……』
『真林もそういう顔するよ、おかあさん』
 真の両手が遼子の釦の引き千切れたブラウス越しに、わざと乳房を揉みしだく。
『やっ、あっ、あ、さわってぇ、真……。ちゃんとやって』
『さわってるよ』
『ちっ、ちがうの。直にふれてよ!』
『真林は遼子との最高傑作だろ』
『んっ、はあっ……。う、うれしいっ。もっと、名前で呼んで』
『真林がおまXこして歔く貌。遼子とそっくりでかわいいよ』
『真林のことは、いわないでっ!』
 真の頬が遼子の頬に擦り付けられる。
『そんなこと言ったら、真林が泣いちゃうよ』
『いやあっ、いやあ!』
 遼子のほうが真にいじめられて泣いていた。真の手がショーツの引っ掛っている脚の方の
シフォンスカートを手繰り寄せる。遼子は真を手伝って自分でもスカートを捲くった。
『開脚して足をテーブルの縁に引っ掛けて』
『え、ええ、わかったわ……。でも』
『言われたとおりしてよ。倖せになれるよ。ちがう?』
 仰け反らせていた顔を戻すと、あからさまに自分のみだらで物欲しそうな陰阜が目に
入った。
『す、するわ。しますから……、ごめんなさい』
 遼子は片足をテーブルの縁に付く。すでにぬるぬるになって叢はそそけている。
ヴァギナがぱっくりと開いてしまい、愛液がとろっとこぼれて座のレザーをまた汚した。
『244』

『ほら、もう片方もしてよ』
『んっ、はい……』
 遼子は唾を短く飲んで真に返事をする。
『それで、両脚をゆっくり伸ばしていってよ』
 遼子は椅子を不安定な二本の脚で立たせることなんだと理解した。そのうえでのプレイなんだと。
『真、名前……』
 烈しく波打つ下腹部を眺めながら、座っている椅子を二本の脚で立たせ始める。遼子の頭は
真の責めにうな垂れている様に見えていた。
『遼子、またオナってみせて。そのあとで、チンポをおしゃぶりしてよ。そのままの格好で』
『あ、危ないわ……』
 遼子の両手はすでに真のペニスを求めて爛れるセックスに触れていた。
『掻き回したらダメだよ。あとで、前に回るんだから』
『こっ、このままで挿れるの……真?』
『そうだよ、遼子。だから、クリットだけ擦ってて』
『でも……』
『でも、なに?』
『こんなんじゃ、逝けないわ』
『真林が起きて来るかもしれないし』 
『そ、そんな……』
 遼子の瞳の色が変わっていた。怒りと哀しみの混ざった複雑な彩り。
『チンポ噛み切りたい?そしたら、この生活もおしまいだね、遼子』
『わたしが、そんなマネするわけないじゃない!』
 真は肩の顫えで、遼子の気持ちを見透かして遊んでいた。
『したかったら』
『しないって、いってるじゃないのッ!ああっ!』
 椅子がぐらついて、後ろに倒れ掛る背を真は支えた。
『なっ、なにがおかしいのよ!』
『だって急に怒るから、チンポが萎えちゃった』
スレ立てちゃいますたw
ぜひこちらで続きを!

ロリータ創作小説発表スレ
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erocomic/1077884976/
麗美子は三歳の時に親元を離れ、とある施設で教育を受けていた。淑女としての
たしなみと、いまひとつは夜伽の所作。なぜ、そのような教育が必要だったか、
それはひとえに家と家を繋ぐための道具にほかならない。少女の出来如何によっ
ては後々の関係が強固にもなり、娘の教育にも執心になるというもの。麗美子が
十二歳になったころに来訪者は突如として現れた。まだ、一年という時間を残して
のことだった。白いコハマギクが咲いていた。男は立ち止まってその花を見つめて
いた。黄色い中央から、真っ白な花弁が放射状にふっくらとしている、いくつもの
愛らしい小さな花が連なって咲いていた。その日はまだまだ穏やかで、温かい日
だったが男は黒づくめで異様な出で立ちをしていた。男は顔をあげて高台の海を
臨む洋館を見上げた。
十三歳になれば、麗美子は父が選んだ男と契らなければならなく選択権などは
最初からない。ただ待つだけの身なのだ。足音が絵梨のもとへと近付いていた。
麗美子の先生である緋紗美が少女の部屋の前で立ち止まる。緋紗美は左手を軽く
握ってドアをノックしようとして、ためらってからコンコンと叩いた。「麗美、支度は
出来ましたか?」「はい、緋紗美さま」麗美子はいつも緋紗美先生と彼女を呼んで
はいた。別れの日は先生と呼ばないように決めていたのだった。もう、逢えなくなっ
てしまうのだと思うと麗美子は辛くなった。緋紗美にしても、日々名を呼び合い、
手取り足取り教えて、情が生まれないわけがなかった。あえて普段通りにレミの
愛称で少女を呼んだ。なぜ、そのようなしきたりがあるのか。それは、少女に哀しみ
を教えるためにこそある。あえて記号の名で呼ばなくなって、洋館では十年が経って
いた。麗美子も新しい方針に則った、その洗礼を受けた少女のひとりということになる。
緋紗美は麗美子の部屋のドアをあけると、すでに少女は胸のところで両手を組み
合わせ、祈りを捧げて、膝を付いて跪いていた。「では、まいりましょう。さあ、お立ち
なさい」感情を押し殺して、祈っていた少女に呼びかける。
「はい、緋紗美さま」小鳥のような、きれいな声はもう緋紗美は聞けない。「麗美、
とてもきれいです」少女の細身の躰にある乳房はすでに女としてのふくらみを
有していた。しかし、少女の肉体を作る骨は未完成の美を象徴し讃えている。
鎖骨の窪み、胸板のウェーブ、そして突き出している腰骨。脾腹の肋骨。しかし、
少女は全裸ではない。ビスクドールの白さは両手と顔だけに。チャコールの
シースルーのフィットしたボディストッキングを穿かされていた。前日に緋紗美は
これを着て待つようにと言い渡していた。刺繍には、鮮やかな紫の花菖蒲で
飾られて、まるで全身に刺青を施したように見えるのだった。緋紗美は殿方が
麗美子をこれを穿かせたままで、どう扱うのか思いめぐらせると、胸が掻き毟ら
れるような心持ちになった。そして少女の足には白いブーツが履かされていた。
麗美子は立ち上がって、ゆっくりと緋紗美に近付く。麗美子の長い黒髪がふわっと
揺れる。緋紗美は少女の華奢な躰を抱き締めたい衝動に駆られた。極端な
ことを言ってしまえば、このまま麗美子を連れ去りたいとさえ思った。叶わないと
知りつつも。緋紗美も、麗美子以外の少女を教育したことはなく、その過程が終了
すれば、ある殿方のところに囲われることに決まっている。少女同様に、この洋館を
去ることになっていた。そのことは、麗美子は知らないし、知らされることもない。
 余談だが生徒が洋館を去ってから、ただ、いたずらに主人は少女に聞かせ、
その哀しむ貌を拝みたいという欲望を持つ男は少なからずいた。少女をここに、
連れて来て隠されていた事実を知らしめ、教室で交媾をするのである。
 他の少女たちの教育もそういった方針で巣立ち、この洋館は機能し成り立っている。
「麗美、そんなに固くならないでいいのよ。あなたは、この日のために、ここに来た
のでしょう」「はい、緋紗美さま」緋紗美の麗美子を見る瞳が曇っていた。唇が動いた。
「一度だけでいいの……」瞬間、瞬間が今の麗美子には尊い。「なんでしょう、緋紗美
さま?」「緋紗美といってほしいの」「で、でも……」緋紗美は麗美子の瞳が潤み始めて
いる事に気がついた。「ごめんなさい。わがまま言ったりして。ゆるして」麗美子の唇は
震えてしまっていた。
絵梨×
「緋紗美。今日まで、いろいろとありがとうございました」少女の黒髪がストッ
キングで覆う乳房へと流れてきた。雫がぽたぽたっと落ちて、床を濡らしていた。
「ごめんなさい、緋紗美さま……」緋紗美が麗美子の顫える肩を抱いて、
頬に唇を這わした。あくまでも、そっとあやすようにして。暫らくの抱擁を経て
から、緋紗美は麗美子を黒い男の待つ応接室へと案内する。そこには姿見の
大きな鏡が四つ立ててある。ドアを開けて正面の窓の所には大きなマカボニーの
机が置かれていた。壁には本棚があってずらっと書籍が並んでいる。そして
部屋の中央には長椅子が二つと何の変哲も無いロッキングチェアが一つだけ
置かれていた。「はじめまして。保科麗美子です。よろしくおねがいいたします」
「きれいに成長したね。美しい花を見るようだ。うれしいよ」黒い男は机に腰掛けて、
やわらかい声で麗美子に囁くように答えたが、その瞳は獣のものだった。
「ありがとうございます、おじさま」少女の感謝の声音には、ためらいと淋しさが
入り混じっていた。黒い男にも、緋紗美にも麗美子の感情は容易に読むことが
できた。だが、それぞれの受け取る感情は別物。