(薄暗い場末のゲームセンターでも体感シュミレーターくらいは設置してある)
(一世代くらい前の筐体でも、コアな人気を誇るゲームが入っていることがある)
(コクピットを模した座席から伝わる振動を制御しつつ、葵は手足を動かして照準を素早く移動させる)
(モノアイが敵機を視認。同時に射撃。振動。被弾。被弾。被弾。肩の装甲が弾かれる)
(急いでパージして旋回。ヘヴィマシンガンのトリガーを引く)
(振動。反動。伝わる手応え。見事に撃破した)
損傷率……80%か。
三機倒してこれくらいなら上出来だよね。
(荒地に乱立する壊れたビル群。まるで墓石みたいだなんて思う。スコアーは上出来の部類だったので)
(自己満足に浸りつつ次のミッションに移行する。学校の帰り道、暇つぶしのゲーム)
(金を消費しつつ時間を潰す。ギャラリーは四人ほど)
(画面に映る戦闘ぶりより、葵自身に対する好奇心や性的な関心の方が強い)
(唇の端を吊り上げて足を組み替えるとミニスカートから覗く太腿がちらりちらり)
おっと、お客さんだね。
(すると、隣の席に誰かか座る)
(対戦希望者は、同じ学校の制服を着ていた。葵はぺろりと舌舐めずりをした)
【それじゃあ、こんな感じでよろしく頼むよ】
667 :
葉室 志保 ◆8YJpuuB2sE :2012/02/13(月) 21:47:31.04 ID:sLPmA9at
大した強さだね。これは少し燃えてきた。一つ、よろしく頼むよ。
(対戦相手の少女はそう、ややハスキーな声で葵に声をかけた。それから、するりと筐体に乗り込んだ。手馴れていることから、結構のプレーヤーだということがわかる)
(彼女の選択したロボットは、実弾兵装に特化した、恐らくはWW2におけるドイツ軍兵士をモチーフにされているロボットだ)
Randolfは見た目倒しのネタ機体扱いされている風潮はあるらしいけどね。私がそんな俗説を吹き飛ばしてやろう。
(彼女はこのゲームに相当の自信があるらしい。口元には余裕そうな笑みすら湛えている)
(制服を着崩さずに着用している彼女には、ギャラリーの劣情を煽るに至らず、目線は葵に向きがちだろう)
【よろしくお願いします】
おや、これはご丁寧に。
ひとつよろしく頼むよ。
これやるのは久しぶりなんで、手加減して欲しいかな。
(マナーなのか、関心を惹いたのか、挨拶を寄越す対戦者の方に顔を向けて)
(にやりと笑う。実際、このゲームをやるのは実に一ケ月ぶりくらいだった)
あー、わかるわかる。
でもさ。私もビームとかより実弾系の方が好きなんだよね。
気が合うかもよ。
(迷彩色の装甲。ズングリとした体型。ずっしりとしたマシンガンを携える両腕)
(モノアイが忙しなく左右に動く。引き続き「ガウスレイ」を選ぶ)
(但し、換装パーツとして16発入りのショルダーミサイル、レッグミサイル四発を付け足す)
(その態度から相手が手練れと想定して、基本装備のみでは勝てまいと踏んだのだ)
行くよ、ガウスレイ。
(バトル開始。瓦礫が立ち並ぶ街を二つの機体が疾駆する)
(バアーニアを吹かし、脚部の後ろに備え付けられたローラーで加速しつつ瓦礫の隙間を走り抜ける)
(このようなステージでは障害物を如何に防壁として活用するか。また、如何に巧妙に隙間を見つけて)
(移動するか。ランダムで配置の変わる壊せる部分と壊せない部分を見分ける眼力も必要だ)
669 :
葉室 志保 ◆8YJpuuB2sE :2012/02/13(月) 22:11:20.28 ID:sLPmA9at
>>668 よし。ではいくぞ。
(ガスマスクモチーフのデザインの頭部カメラが赤く光る。モノアイが動くような演出は無いようだ)
(武装面ではMP40のようなサブマシンガン、柄つき手榴弾にパンツァーファウストじみたグレネードときている。トドメにはルガーに似たピストルだ)
仕掛けるぞ……!
(ロボットは壁面を蹴り上げて着地できそうなビルの屋上へと躍り出る。高所をとったことでガウスレイを補足)
(そこにすかさずSMGを乱射。少し撃ったところでサイドにステップ。隣のビルへと飛び移り、さらにそこから飛び降りる)
ちぃ、やるねえ。
けど。
(敵の行動は迅速だった。高所に登って素早く銃撃ポイントを確保し)
(進路を限定するように射撃。反撃を試みるより素早く銃撃ポイントを移行しつつ)
(隣のビルに飛び移り、更に飛び降りる。ガウスレイの追加武装を考えれば高所を取っていれば)
(ずっと有利ではないと承知しているのだ。葵とてやられっぱなしは性に合わない)
旧式だけど加速性と旋回性は一級品だよ。
(更にバーニアを吹かして加速。角を曲がる際に足からパイルを突出し地面に付きだす。その場で回転しつつ)
(パイルを引っ込めて加速、加速、加速。再現された重力が葵の身体をシートに押し付ける)
(敵機補足。サブコントローラーの操作してショルダーミサイルを撃つ。撃つ。地面を抉り爆風と瓦礫を撒き散らす)
そらそらそら!
出し惜しみはなしだっ!
(直撃はしていないが、これは目晦まし。爆炎の向こうからヘヴィマシンガンを乱射する)
671 :
葉室 志保 ◆8YJpuuB2sE :2012/02/13(月) 22:26:46.08 ID:sLPmA9at
一発あたりじゃこちらは不利だな……
(金属音が何回か響く。マシンガンの弾丸が彼女の機体の装甲にダメージを与えていることがわかる)
(しかし、ずっと撃たれつづけるわけにもいかない。そっと腰の手榴弾を手に取り、軽く転がした。爆炎と煙が災いして、音も小さく、気づきにくい)
次だ
(スラスターを強く吹かして、ビルの陰へと逃げ込む)
(急加速のせいもあってか、再現される慣性も葵に負けずすごいことになっている)
のわっ!
(調子に乗って引き金を引き続けていたら足元から衝撃)
(手榴弾が破裂したのだと理解するよりも早くRandolfは離脱して物陰に隠れた)
いてて。
調子に乗り過ぎたかな。
でもこれが醍醐味なんだよっ!
(損傷部位を確認。損害は軽微とは言えないが、移動に支障はない)
(但し、最大速度で移動しなければの話だ。手榴弾の衝撃でレッグミサイルが誘爆したので)
(本来受けるべき損傷より更に深刻な損傷度合いとなっている。時間が立てば脚は動かなくなる)
宵越しの金は持たない主義でね。
パーッと派手に散財するよっ!
(重装備が裏目に出るという、この細かい設定具合こそコアな人気の理由だった)
(だからこそ葵は滾り、今度は二本の脚で瓦礫を蹴り、跳ぶ。今度はこちらが高所を陣取りつつ)
(ヘヴィマシンガンを乱射する。更にショルダーミサイルを乱射。瓦礫ごと吹き飛ぶくらいの衝撃が地表を襲う)
(手持ちの武器を使い切るくらいの猛射は、裏を返せば凌げば相手に有利を約束する一か八かの賭けだ)
ここにきての飽和攻撃か、ロマンの極みだな……!
(やむを得ず、手榴弾を全て破棄。紐を抜き取り、適当なところに転がす。うまくいけばガウスレイの着地地点へと落ちるかもしれないからだ)
(ただし、虎の子のグレネードだけはとっておく。ミサイルに直撃しないようスラスターを細かく吹かし、ヘヴィマシンガンの攻撃を装甲で受けきる)
……っち! 間接に当たったか!
(しかし、全て防ぐことは適わない。SMGを握っている腕にマシンガンが直撃、破損し弾け飛んでしまう)
(こうなってはグレネードの温存にも意味がなくなってくる。使うは今だ、とガウスレイに向けてその弾頭を向け、発射する)
今ので外れれば武器はピストルだけだ。当たってくれよ……!
(ほとんど神頼みだ。ガウスレイが、回避にまわせるだけの出力が残っていれば避けられてしまうかもしれない)
おおおお!凄い!
(嵐のような銃撃を巧妙に避け続ける相手の感嘆の声をあげる)
(それは惜しみのない称賛を捧げるべき連続回避行動)
(敵だろうと熟練のテクニックには敬意を表するべきだろう)
(ミサイルはスラスターを巧妙に制御して避け、銃弾は装甲の厚い部分で受ける)
(その場で取りえる最善手を連続で的確にこなし続けているのだ)
っと!マグレあたりでも勝ちは勝ちっ!
(しかしそれでも一発は的中する。腕の関節部分に直撃しSMGを取り落す敵機に勝機とばかりに)
(建物から飛び降りる。しかし幸運の女神は葵には微笑まなかった)
(今まさに発射されたグレネードが右腕に直撃。派手に爆発して落下する)
ずあっ!
(更に落下地点に撒かれた手榴弾を何個か踏んでしまう)
(衝撃。連続する衝撃が座席を揺らす。)
(右腕、大破。左足、中破。武装は右足のレッグミサイルのみ)
(損傷率なんて考えるのも馬鹿らしい。これは降参した方が早いだろう)
まだ、まだぁ!
(しかし葵は降参せすせ徹底抗戦を選んだ。レッグミサイルを発射する)
(この状態では照準すらできないが、とりあえず発射すればいい)
(バーニアを吹かして残った右足のみでバランスを取りつつ突進)
(それは特攻だった。残った右足で突進して、残った左腕の拳が伸びる)
(腕に仕込んだ火薬で撃ちだすロケットアームパンチ。それが最後の武器だった)
【うん、立ち回りの差で私の負けだね、これは】
【どうか派手に決めてほしい】
……しまった、ロケットパンチか!
(ミサイルは偶然にも彼女の機体の右脚部に直撃する。バランスが崩れたところに、避けれたハズのパンチを頭部にもらう)
(カメラ機能がほぼオフになり、画面も激しく見づらくなってしまっている。しかし、相手に武器はない)
地味な終わり方で申し訳ないがね、でも、足も壊れてるんじゃこれ以上は動けないんだ。
(腰のピストルに手をかけて、ガウスレイに大体の照準をつけ、発砲する。よける手段がない以上、ピストル弾によっての幕引きは免れないだろう)
(3発ほどトリガーを引いたところで、彼女は小さく息をついた。恐らく、それで終わるからだ)
(画面が戦闘不能の文字を浮かび上がらせる)
(ほぉ……期せずして少ないギャラリーから感嘆の声が上がった)
(最初は葵目当てだった男たちも、Randolfの的確な立ち回りに眼を奪われていた)
やれやれ、立ち回りの差で完敗だったね。
(座席から出ると、ふらりと妙な感覚が頭を襲う。典型的なシュミレーター酔いだ)
(ここまで派手に急発進、急旋回を繰り返せばこの程度で済んで御の字だろう)
お疲れさん。楽しいバトルだったよ。
私、上ヶ島葵ってんだ。
よかったら名前を教えてくれないか?
(バトルを終えた余韻に浸りつつ、相手の座席に顔を突っ込んで改めて彼女の顔を観察する)
(にっこりと笑って自己紹介。一芸に長けた人間もまた葵の関心を惹く対象だった)
>>676 葉室志保という。……いやぁ、厳しい戦いだった。グレネードに当たってくれなければ負けていたよ。
(彼女はやや釣り目だが、端正な顔つきをしている。今の一戦で疲れたのか、若干の疲労の色は見えるが)
(名乗ると、やれやれと筐体から出て、彼女の全身像が改めて露になる。身長は175cm程度。そうとう大きい)
そうだな……少し、休まないか? 私も、君のことは少し気に入ったよ。話をしたい。
(彼女はそう言って、人差し指を小さな休憩スペースへと向けた)
本当の狙いはね。全弾撃ち尽くした後に接近戦を挑んで殴り勝つことだったんだ。
機動性が少し落ちる重装備をしたのも、バ火力でワンパターンに攻めるんじゃないかって
思い込ませる為。全弾撃ち尽くしたあとなら接近されてもそこまで警戒しないだろう。
もっとも、そっちの方が抜け目なかったから意味なかったけど。
(当たれば儲けものとして放った猛射を凌ぎ切った点、地面に手榴弾を罠として配置した点)
(更に言えば目晦ましにも関わらず手榴弾を使って足を攻撃した点)
(あらゆる面に置いて彼女の方が一枚と言わず上手だったと葵は分析している)
ん。何か飲む?
(誘いに乗って休憩スペースに移動する。男たちが女二人が座っていた座席の温もりだけでも)
(味わいたいとばかりに争っているが、それは関心の対象外だ。昔から殆どデザインが変わっていないと)
(言われている自動販売機に硬貨を入れる。デザインが変わっていないということは機能性に置いて完成)
(しているのと同義だろうと葵は勝手に考えている)
同じ学校だよね。
顔見たことないけど何年生?私は二年生だけど。
(制服を見れば白秋第三学園に通っていることは説明しなくてもわかるだろう)
(話題のとっかかりとして、何年生ですかと問う)
Randolfの運用を考えたら、あれが思いついただけだよ。あの手榴弾だって、当たればラッキー程度なものだ。
あのミサイルの雨じゃ、避けることが精一杯でね。とてもじゃないが細かな戦略はつめられなかったよ。
次にやったとしたら、私が負けるかもしれない。
(自信を失くしそうだ、と彼女は冗談っぽく肩をすくめた)
ああ、私も二年生だ。でも、お互いに知らないとはね。別クラスだと無理はないのかもしれないな。
(他のクラスとまで交友をもつほど、彼女は社交的ではないようだった)
いや、奢られるのは悪いな。私はこっちの……レモンティーを頂こう。
(コインを自販機に投入し、ペットボトルのレモンティーを購入)
あれを凌ぎ切ってよく言うよ、まったく。
私が同じことやられてたら、あの時点で被弾しまくってたね。
少なくともあんたほど上手く捌けないだろうさ。
(あははは笑う。負けたことは悔しくない)
(格上に挑んで格上に負けた。ただそれだけだ)
(それよりも楽しい戦いを演じられた方が葵には大事だった)
んん、そっか。
じゃあ今度は学校で探してみるよ。会えたらまた遊んで欲しいもんだね。
(ここで連絡先を交換するのもありだろうけれど、自力で探した方が達成感がある気がする)
(遠回りでも楽しい道を歩く方が葵のやり方には合っているからだ)
(レモンティーを選ぶ葉室に、葵は炭酸飲料を購入。喉を焼く刺激物を飲み干す)
ぷはー。バトルのあとの一杯は格別だね。
男とやった後の一杯もそうだけどさ。
何かやり遂げたあとの一杯は、味わい深いよね。
(屈託のない笑みを向けながら、たかがジュース一本に大げさなくらいの感想)
(それから二人は他愛のない話をだらだらと続ける)
(その時間は男と情事に耽る時間と同様に、葵にはとても楽しい時間だった)
【さて、私の方はこれで〆かな】
【そちらの練習相手が務まったかはわからないけど】
【少しは役に立てたなら幸いだよ】
>>680 あんまりこんな場所でそんな品の無いことを言うものじゃないぞ……。
まぁ、今度は学校で会おう。
(男とやったら〜の部分に苦言を呈しながらも、その後しばらく楽しく会話を続けていた……)
【ではこちらもこれで〆で。ありがとうございます。なんとなくつかめたと思います】