(夜も遅く、虫が泣きわめいている公園の中)
(足元が芝生に覆われ、周りに木々が連なる広場でその人型の化け物はその姿を見ていた)
来ました。来ました。やはり噂を流すと一発やね。
(その木の上から、こちらに来る少女を見ている魔の者)
(彼はこの公園で魔物が人をさらっている。そんな噂をこのあたりに流しておいた)
(以前、圧倒的な実力差にみじめな敗北の末、命からがら逃げだすという失態を犯させた剣士をおびき出すためだ)
というわけで、早速姿をお披露目しちゃいますか。
(そうすると、奇声を挙げながら、彼女に近づくとその前に降り立つ)
待ってたぜぇ。
正義の剣士さまよぉ。
(表した姿は、人間のようにもみえるが、少なくても肌の色が違う)
(全身が黄土色をしており、ぬらぬらとした粘液にまみれている)
(その顔や姿は、人とはかけ離れている)
久しぶりだなぁ、おじょうちゃんよぉ。
(かつて、目の前の少女に敗北していた雑魚が今、彼女の目の前にいた)
【それではよろしくお願いします】
この公園か? 誰か知らないが、これ以上は好きにさせない…
(女子高生の傍ら、退魔剣士として戦っている律子)
(ここ最近、この公園で魔物が人々を拉致しているとの噂を聞きつけ、
事件を終らせようと深夜に出向いて来た彼女の前に現れた相手に一瞬
目を丸くして)
誰かと思えばオマエか、大人しく逃げたままにしていれば命だけは救えた物を…
(公園に入った時点で悪刀娘へと変身して対峙した相手との以前の戦いを思い出し、
やれやれと困った様子でため息をつきながら、胸元の宝珠から愛刀を取り出して、
構え、剣の切っ先を向けて)
今度は前の様に見逃してはやらない、覚悟しろっ…
(僅かな隙をつかれ逃走した相手に止めを刺せなかった為に、犠牲者を出した事を
後悔しながら、気迫の込もった声を上げて)
【こちらもよろしくお願いします】
命だけはぁ?
へっ、何を言われようがテメェの為だけに俺はここにいるんだ。
(首をコキコキと鳴らしながら、腕を構える)
ふへへへ、あの時は本当に世話になったもんだ。
正直、あの屈辱は忘れねぇからよ。今度はおまえに恥をかかせてやるよ。
(そう言うと、彼の体がウネウネと盛り上がる)
(そのまま、彼女の二倍くらいの体格になって、拳を構えた)
(その姿は、実に気色悪いものだ。そして、目の前の剣士が以前にやりあった時と同じ行動)
それはこっちのセリフだぁ。以前と同じようにとは思うなよぉ?
(そう言うと、彼は拳を構えて悪刀娘に向かって走り出す)
(そのまま、巨大な拳で彼女の殴りつけようとした)
(だが、そのスピードも隙の大きさも彼女が勝った時と成長していない)
くらえぇぇぇぇ!
そのつもりだったが、人間を襲っているなら見逃す訳にはいかない
(相手の強気の原因がわからない為に、警戒しながらも、彼の身勝手な
言い分に憤りを感じて)
ハッ…?! なるほど、そう言う手を使える様になったか…
(自身の体を2倍ほどに膨張させた怪物の姿と言葉に腰を落として身構えて
切り掛かる隙を計っていたが、自分へ向かい駆け出す相手の速度と隙だらけの
動きも以前のままなのに気付き、内心、二度目の勝利を確信して)
体だけは大きくなっても、他は変わらないか、それでは無意味だっ!
(刀身に気を込め、自分に向かって来る魔物に刀を振り下ろして)
(それは、以前と同じく魔物の体を易々と切り裂く筈だったが…
はっはっは、そうだ。そうやって、やられたんだな。
(そのまま刃が魔物の体に食い込む)
だが、残念だったな。お前の為にスペシャルを用意しといたぜ?
(だが、その刃は体表面の粘液層と皮膚で止まっていた)
どうだ? 俺のスペシャルなボディーは?
(ゴムのような粘液が刀身を飲み込んでおり、皮膚には傷一つ付いていない)
(引いて斬ろうとしても粘着質にまみれた刀は動かない)
(逆に押しても、ぐにゃぐにゃした皮膚に押し返されるだけだ)
お前の気を吸収して、なおかつ刃を通さない皮膚粘膜。珍しいだろ? お前の為に身につけたんだぜ?
(そう言うと刀を持っている両腕をがっちりと粘液まみれの手でつかむ)
らっしゃおらぁぁぁ!
(そのまま彼女の両腕を柄代わりにして、彼女の草むらに投げつける)
くふふ、どうだぁ? 気分は?
(投げつけた後い彼女に近づいていく魔物)
その状態じゃまともに刀も振れないよなぁ?
(どういって、彼女を見る。刀から両腕まで彼の気持ち悪い液でべとべとになっている)
(しかも、それに邪魔されて気が手から込める事も出来ないし、その邪魔ものを取ることもできない)
決め… な、何だ、これはっ?! 動かないっ、こんな手に引っかかるなんて…
(魔物の体に食い込んだ刀身はその体表を覆う粘液質層で止まり、押しても引いても
ビクとも動かずに、悔しがる悪刀娘に得意そうに秘策を説明する魔物は彼女の腕を掴み、
そのまま背後の草むらへ投げ飛ばし、そのまま近付いて行く)
うあぁっ、あぁ…
(草がクッション替わりになった為に対したダメージは無いが、唯一にして最大の武器である
愛刀・奪魂丸を封じられてしまい、実質上、無力化されているが、気丈に振舞って)
どんな気分かって、オマエの望む答えなど言う訳無いだろうっ!
(両足を広げ立ち、魔物を見据える視線には、今だ戦いの意思が見えていて)
そうだな。でも、俺の望む答えにしてほしいだよな。
(そう言うと、立ち上がった少女に向かって拳を何発も繰り出していく)
おらっ! どうだ!
(拳は簡単によけられるし、当たっても大したダメージにはなっていない)
ふふ、どうしたんだよ!
(まさに、雑魚の攻撃だ。だが、そんな雑魚にさえ彼女は……)
くくく、反撃がねぇな。
(一方的に攻撃しているを見て、面白そうに笑う)
さっきから必死にそいつを剥がそうとしてるけど、無駄なこった。
(そういうと、一気に助走をつけていく)
(彼女の疲労した隙をついて一気に突撃した)
くらぇぇぇ!
(そのまま彼女へと抱きかけるように体をぶつける)
(同時に腕をまわして抱きかかえるように捕まえた)
ふざけるな、誰がキサマの望む通りの言葉など吐く訳無いだろうっ
(立ち上がる事は出来たが、両腕と武器が使えないハンデは大きく、
次の手を出せないでいる悪刀娘に向かって魔物は連続で拳を打ち込んで
行く)
んっ、くうっ、このぉっ…
(両足でステップを踏む様に拳を避けるが、刀を持ったまま固定された両腕で
バランスが取れずに、普通なら避けられる拳を数発受けてしまう)
腕が刀さえ使えれば、こんな奴…? うあぁっ!!
(必死に両腕を自由にしようと苦戦している隙をつかれ、魔物にタックルされ、
そのまま下草の生えた地面に抱き抱えられる姿勢で、押し倒されて)
残念だな。捕まえたぞ。
(地面に押し倒したまま、そのまま地面に押しつぶす)
ふはは、苦しかろう。だけど、これで殺す気はないぞ。
(そう言うと、魔物は胸のあたりに悪刀娘をぬいぐるみのように抱きながら立ち上がる)
ふぅ、どうだ? 魔物に抱きかかえられる気分は?
(腕によって、身動きを封じた魔物は楽しそうに話しかける)
(彼の巨体もあり、まさにおもちゃで遊んでいる気分なのだろう)
どうなんだ? こんな雑魚に負けた気分はよ?
そろそろ、命乞いでもしたらどうだ?
(気持ち悪い腕と体に挟まれた少女に向かって話しかける魔物)
それとも、まだ捕まってなければ勝てるとか思っちゃってるんですかぁ?
このっ、離せ、離せっ!
(ジタバタと無様に不自由な手足をバタつかせるが、今の状況では何の手も打てずにいて)
くっ、やはりそう来るか…
(殺す気は無い、との言葉に、これから魔物が自分にどの様な攻めを行うのかを不安に思いながらも、
それを表情と声には出さない様に隠して)
気持ちいい訳ないだろう、わざわざ聞くなっ…
(勝ち誇った様子で軽々と自分を抱き抱える魔物の問いに、悔しそうに答えて)
冗談じゃない、オマエなんかに命乞いなどする物か…
(上から自分を見下ろし話しかける魔物の次の問いに、売り言葉に買い言葉で答えて)
当たり前だ、こんな卑屈な手に落ちていなければ…
(悔しそうに言葉を濁して)
【凍結をお願い出来ますか?】
【今週中は土曜まで21〜23時ころまでお相手出来ます】