………知っています。
彼が自分が最も愛した人を殺せるような、そんな愚かなものであることも。
そのくせ、それに絶望して世界を否定したことも!
(さらに言えばそれすらも半端に終わり、その罪の意識すらも否定し
今を生きているといってもいい。)
――それがどうしたんですか。私やあなたが殺した異形や異能者――もっと言えば警察などの公的機関が
罪人と認める者たちは本当にすべて罪を持っているのですか?
命を奪うことが罪だというならば、戯れだとか、罪の有無だとかそんなのは関係ないです。
――ましてや、私は彼が何を思ったのかを知っている。
過去に行ったことは確かに愚行です………けれども、中途半端で無責任な気まぐれに、救われた人間だっているんです。
(法がどうのと言ってはいるが、その目からはもっと別のものが正義感だとかそんなきれいなものじゃない
もっと人間味のあふれる感情がぶつけられてくる。
――こういう人間を作ってきた、自分に優しくしてきた、どれも同じ彼の過去。)
………あはは、自分に酔えるほど自分に自信はないですよ。私は
私が自分の恋愛感情に酔えるとしたら、それを貫き通したときでしょうかね。
神が許さなくとも、私が許します。神にも挑もうっていうのにただの人間に怯んでいられると思いますか?
(震える腕を見て、先ほどまでの冷静な態度ではない彼の仕草に苦笑を漏らす。)
すみません、あきらめたほうがいいなんて言うのはわかってるんです。
けど………馬鹿はあきらめが悪く、救えないものなんですよ