うさんくさい能力だけど、僕も人間だからねん。
人に対してはそれなりに誠実でありたいわけだー。
信じてくれるなら、全力で答えて見せますとも。
(どうやら、経験のあるらしい奏さんは猫の額ほどの時間立ち直ってくれたようだ)
(格闘に関してはズブの素人だが、それでも目の前のフォームが美麗だとは感じる)
(こんな切迫した状況でなければ月明かりと合わさって、思わず見とれてしまっただろう)
(100パーセントの力を出してくれたなら、こちらも釣り合うだけの援護をしないと――)
いやはー、やっぱり右は段違いに凄いのだねん。
けど、そうとわかった時点で左を襲うのは賢くない。
相手に読まれまくってるわけだからねん。
やっぱり、もう一度右から行くべきかにゃー?
(雑木のしなりを利用したこと、にも関わらず命中率の良くない射撃に怯んでいること)
(あのネコ科の獣の行動を総合すると、どうやら知能面では最も相性が良いらしい)
(ないわけでもないが中途半端、幼子を誘導するようにもっともらしく語れば操れる)
(右へ、右へ。前衛の彼女を抜いた異形に襲われるんじゃないかというくらいにずれた)
(徹底的に不徹底な陣形を敷かねば、相手は野性の本能に基づき弱点の左から来てしまう)
答えてくれてありがとー、おかげでプランは整ったよ。
ただ、回復できても痛い思いをさせたくはないからね。
最後の手段が何度も使える……て感じで作戦を立てるよ?
(また負担を強いることになる、そう考えていたところにかけられた言葉が温かかった)
(後ろで考え込んでいる幻術師のことを、彼女は危険に晒されながらも理解してくれたのだ)
(その信頼に報いるために、勝利を。それもあの子が傷つかないで済むような勝利を!)
おーけい、それにはそうだね……あと三回くらい右からの攻撃を受けてくれるかい?
四足歩行の動物はだいたい、硬い背中を上にして腹を守ろうとするものだからね。
"最初の"左はダメだったし、右もダメ。仕方ないから上に飛ぼう。
あの子がそーゆーふーに考えるまで待たないとねん?
(と獣の意志に沿って攻略する道を示しつつ、左については通用しないと断じる)
(左からならトンファー使いを傷つけられたという結果を重視されては困る)
(第一撃、野性において最も相手の隙の大きい攻撃で仕留められなかった)
(そこを強調して、死角からの攻撃が来る確率を限りなくゼロへと近づけて行くk)
まー、その点のしかかりされたら体重差をモロに受けるわけだ。
そーとー苦しい戦いになるけど、耐えられそーかい?
(半分はパートナーの望み通りにターゲットの行動を導くため、もう半分は純粋に心配して問う)
(決してそれは、守るべきか弱い女の子に向かって発せられた上から目線の問いかけではない)
(他にも方法はとれるよ、と暗に示した上での最終確認だ)
実際にプロセスが始まったら正ちゃんは手伝えない。
だから今のうちに、良いことを教えたげよー。
(あの怪異の頭脳がこちらの示した思考を理解するまでの待ち時間、安心材料を増やそうと舌を回す)
(焦らずゆっくりと、こっちには余裕があるんだぞと甲羅の中身に示しながら単語を文章に紡いでいって)
人間ってねー、片目でもある程度の距離感はわかるんだ。
水晶体の厚みを調整する筋肉が、遠くを見る時は緊張するからねん。
どれくらい力が入ってるか、奏さんの頭に幻術で教えたげる。
(本当に無粋な邪魔者さんだ。猫ちゃんは、アドバイスが終わってないのに頭の回転が追いついたらしい)
邪魔にならないよう、銃を構えた時だけね!
(最後の一言を言いきると、あとは命を含め全てを前衛さんに託すこととした)