【迫水先輩とのロールにお借りします】
(できるだけゆっくりと歩いているつもりが、校舎内に入ったとたんに早足になった)
(普段は禁止されているので電源を入れていない携帯を取り出し、耳に当てる)
直さん?津綺子です。いまどちらに……ええ、急いでお会いしたいの。
○号棟の屋上に来ていただけませんか?
(早足で自分もその後者に向かいながら、周囲を憚って声を落とす)
直さんに親切にされたという中学生に会いました。
お礼をしたいって……卯月ひのわさんをご存じですか?
(自分でも、ぞっとするほどその瞬間の声は冷たかった)
(たった今、出会ったばかりの異能者・卯月ひのわ──彼女は何者なのか)
(心の中で、彼女の存在が乾燥してざらつきを増す)
(いがらっぽく自我の表面に引っかかり、ざらざらと嫌な感触でこすれる)
なぜ異能であることを隠さなかったの──
なぜあの子を助けたの──
あの子は──何者なの?
(屋上に出る)
(ドアを開けた瞬間、夏の夕暮れの風が髪をなぶり、ざらついた心をなぶる)
(手すりにもたれ、そこへ顔を突っ伏した)
【改めましてこんばんは】
【こんな形で始めさせていただきました】
【今夜もよろしくお願いします】