先輩の、人間関係……
(なんとなく、思い込みで発してしまった言葉だったが)
(よく考えてみれば、紅裂が誰かと接しているのを、直接見たことが無くて)
(あの、可愛らしくも悲痛な瞳を持った中学生の後輩とは、面識があることぐらいしか知らず)
(己の考えの無さの発言に、さすがに少し反省したのか、少しだけ項垂れた。)
………?
(困ったような、そして少し訝しく思いながら、自分のことを『キミ』と呼ぶ紅裂を見た。)
(軽薄で、いつもふざけたような紅裂も、きっと本当の彼だけれど)
(けれど、今、目の前に居る少年も、間違いなく紅裂の心の一部であるのだろう、と)
(あまり鮮明な写真ではなかったけれど、きっと美しくも残酷な笑顔で、夜を歩いている姿も、)
(きっと、あの写真で見た彼も、本当の紅裂の一部。)
(彼を構成するものは、なんと複雑なのだろう―――)
わたしが、いなくなったら?寂しい?
(どういう表情を見せていいか解からずに、無表情で俯いて、繰り返す。)
わたしだって……
(くっ、と、唇を噛み、息を吸い込んで)
――わたしだって、先輩がいなくなったら、寂しい。
だけどいつか、先輩は、わたしの前から居なくなる…かも、しれなくて。
わたしは、それを止めることができなくて。
先輩のことを、認めることもできなくて。
わたしは――、わたしは、何も出来ない子供で―――っ
(自分でも、泣いていないのが、不思議だった。)
―――っ
(口走ったことに息を飲み、小さく深呼吸して)
………ご、ごめんなさい。意味、わかんないですわよね。
(顔をあげ、これ以上、自分に聞いてくれるなとばかり、笑顔を向けて)
ね、先輩。今度、あの…甘いの――なんでしたっけ?
なんとかミルクと、オムライス。一緒に作って食べましょう。
わたしと約束、してくれます?
(右手の小指を立てて、紅裂の目の前に差し出した。)