連れ込み旅館「淫水荘」 6階

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206迫水 直 ◆mkbuDdznjc
…分かった
(恋人の告げる望みに、一瞬の間をおいて答えると)
(逃がさないように、はなさないように、胸に抱える腕に力を込めて)

しっかり、掴まってて。怖かったら、目を閉じて…
(津綺子のしがみつく力が無くても決して離れることはないくらいに)
(しっかりと、ピッタリとお互いの体を密着させて)
いいね、いくよ……っ!
(津綺子の視界の外で、瞳の奥に青白い火を点らせ)
(脚に満ちた妖の力を一息に解放すると、夜の近付く空に身を踊らせる)

(できる限りの速度で駆け、できる限りの高さを跳び、ほとんど一直線に自宅のあるマンションへと)
(その後を追うように、遥か遠くの山際へと沈んだ太陽の残滓が溶けて消えて)
(やがてゆっくりと、晴れた夜空にひとつ、またひとつと星がままたきはじめる)

………
(津綺子を抱いたまま、扉に施した鍵を開ける)