>>483 ちょっと、貧血になるくらいだと思うけど。
……まあ、あの時は相手が相手だったしね。微妙なところだ。
(かつての相手は完全なる異能。だが、今の相手はどうだろう)
(少なくとも、生命力に満ち溢れた、超常の力の使い手……には見えづらい)
だろーね。人から奪ってまで生き延びようだなんて、見苦しいにもほどがある。
別にすぐに生き死にに関わるようなことにはならないだろうけど、面倒ごとは増えそうだな。
……だが、まあ。そうしなけりゃ誰の手にかかることもなく、私は死ぬわけだ。
消えると言っておいたほうがいいかい?
(力の入らぬ身体を無理やり引き起こして、立ち上がる)
一度死んでみて、大分いろんなことへの執着ってのが薄れた気がするけど。
それでもね、私は自分の存在ってやつへの執着は、まだまだ捨てきれないみたいだ。
……だから、あんたが拒むなら。私は。
(その目に、久しく宿すことのなかった狂気を宿して)
あんたから、奪うことにするよ。
(そして、迫り来る)
【凍結するか、そのまま〆るかはそっちで決めてくれ、私はどっちでも対応できるからね】
【まともにレスできなさそうなので、とりあえず凍結で】
【車椅子の都でも逃げられる/見逃されるのなら、朝に1レスして〆にできますが】
【護身用のスタンガンで隙をつくれるなら、とか】
【では、限界ぎりぎりなので、お先におやすみなさい】
【逃げようと思えば、いくらでも逃げようはあるだろう】
【今の私は非常に弱っているし、何せ痛みだけは元のまま存在する】
【どうとでも逃げてくれて構わないよ】
【それじゃあ、お休み】
【待機っ! プロフは
>>353の辺りに。気軽に声をかけてくれよー】
壁|ω・) いつもROMの名無しからの伝言なんだぜ
規制中の紅鮭が避難所でよんでるよー
>>488 おっ、サンキューっ。
それじゃ行ってみるかな。
……休日の静かすぎる昼下がりなので、望み薄ではありましょうけれど、
ということには目をそむけながら、失礼してしばし待機させてください。(一礼)
プロフは
>>2です。
シチュは相談次第で、ということで……参考にしてくだされば幸いです。
残念、お前のプロフは
>>3だ!
そして俺のプロフは
>>42だ。一つ、お相手願えるか?
一応、シチュ案としては、以前話してた、お前がこっちを探って逆に…というのを提案しておこう。
>>491 ……プロフ間違えるって私は一体何なのですかっ。(額押さえた)
とりあえず、訂正とお声掛けありがとうございます……ふふ、お会いできて嬉しいです。
それでは、せっかくなのでお話していたそのシチュでいければ、と思います。
こちらについてどの程度知っているかは――お任せ、ですね。
えっと、他に書き出しの場面とか……何か、お話しておきたいことは、ありましょうか?
>>492 ああ、俺も会えて嬉しい。ようやく組織分が補充されそうだ(←)。
ふむ、そうだな…そちらの情報収集の方法が気になったが、それはお前の書き出しを見れば問題ないか。
そっちについては、存在と、ある程度の組織目的を知っている程度に留めておく。
それで特に問題がなければ、そちらから書き出してくれ。
情報収集中に俺が割り込むというか、直接出向いて…という形で良いだろう、多分。
>>493 ええ、私もそれが拝見できそうで十全に重畳です。(←)
そうですね……私は情報ツテとかそういうの手繰ったりするのだと思いますが
とりあえず、「仮面の男」=貴方であるという情報だけつきとめて、
それを見つけて尾行――してみたものの、途中で見失うというか、反対に見つかる、というのを考えました。
↑みたいな感じで宜しかったら、見失ったところから書き出してみようと思います。
>>494 オーケイだ…まあ、ぶっちゃけしっかり密着してれば俺=仮面の男なんてすぐ分かるしなぁ。
では、そちらから書き出してくれ。適当な所で背後を取らせてもらう。
……まあ、戦闘にはならない方針で。
(「紫一久」――迫水という青年から貰ったその名前をもって本人を突きとめるのは容易かった。
彼はごく普通に学園の生徒として生活していたからだ。
問題なのは、どれだけ調べても彼が“ごく普通に”しか生活していなかった、ということ)
(もちろん、彼の挙動を一秒たりとも見逃さずに観察できるわけでない。
ただ、校内で得られた情報では迂闊な言動はないとのことで――どうにも、厄介な相手だと思った)
(校内で尻尾を出さないのなら、結局自分が頼るのは夜の人間。
深凪でよく世話になる情報筋にいくらか頼んでおいたが、彼らも夜の情報屋――
そこで得られたのは「仮面の男」についての情報。情報筋は、伝えられるのはこれだけだと言った)
…………けど。
(夜も深まった頃の、とある裏路地。明らかに異形を“狩った”あとがあるその場所で、
黒い服に身を包み、帽子をかぶった一人の人間がポツリと呟いた――
服で隠れているのか元々の体形に凹凸が少ないのか、
パッと見れば長身も相まって青年に見えないこともない)
―――見失った、か。
(厄介だとでも言うように浅く息をついた)
(自分の暗器の位置をさっと脳内で確認する――本当に“見失った”ならまだいい方だ。
そんなことを考えながら、“彼女”はその狩りの形跡を確かめ始めた。手掛かりを、探すように)
【それではこのような感じで……け、結構描写に確定が入っておりますので】
【不都合なときはどうぞ申し出てくださいませ。それでは、宜しくお願い致します。(一礼)】
【あ、あとどうでもいい補足なのですけれどっ……
こちらですが、帽子かぶっているので髪はその中にしまっているかと思います。
だから長髪には見えないですね……たまにする、仕事スタイル、です】
(嫌な感覚があった)
(尾けられる、というのとは少し違う、ふと見られるような感覚)
(たとえば腕時計のように、常に注視する訳でもないが、時間の節目節目に確かめるようにこちらを窺うかのような)
(しかし、紫 一久は腕時計ではない。だから、その感覚は決して無視できるものではなかった)
(そしてある日、情報屋が売ってきた「お前に関する情報」)
(日々の食費と、武器代と睨み合い、ちょっと値切りつつ、得た情報)
「あんた、狙われてるぜ」
(…それだけか、と軽くそいつを小突いたりもしたが、予感が確信に変わっただけで十分とも言えた)
(そして、その情報を得てからいくつかめの夜)
(自分を狙う誰かを捉えるべく、ある程度の痕跡を残しての狩りを続けて、いくつかめの夜だ)
(そいつは、果たしてそこに姿を現した)
…………
(先程まで狩りをしていた裏路地…に、面した建物の、屋根の軒下)
(普通の人間が本来潜むべきではないそこに、紫 一久は張り付いていた)
(右手から伸ばした"指"でしっかり身体を固定すれば、割と造作もない事なのである)
………ふん
(一見して細身の男かとも思ったが、猫を連想させるかのような、丸みのある柔らかな動きは女のもの)
(きっと彼女は、俺が残した痕跡を検分しつつも、周囲に気を配っているに違いない)
(――さすがに、上にまでは気は向かないようだが)
――っと。
(静かに、静かに、気づかれるぎりぎりまで身を降ろしつつ、小さくかけ声一つ)
(軒下から路地裏、その影の背後に飛び降りる)
(右手のワイヤーをやや急いで巻き戻しつつ、左手に構えた銃――実は空だ――を、構えて)
…とりあえず、動くな、とか言ってみるか。
(軽く、きわめて軽く、まるで挨拶のように、言葉を掛けた)
【っと……待たせたな。よろしく頼むぜ】
(多分、彼女は「紫一久」について少しばかり甘く見すぎていた)
(校内で情報収集して得た情報によれば、昼間は明るい生活の青年、でしかなかった。
だからこそ本来なら気づくべきだった。それこそ、そんな「仮面」をつけられる手練なのだ、と)
……―――っ。
(―――だから、背後に声がしたときに後悔した。
加えて思った、あの情報筋を一回殴っておこう、と――…
まあ、大したことはないかもしれないと、お金を積まなかった自分が悪いのだけれど)
………なら、とりあえず動かないことにするが、
動かなかったら動かなかった、バンッとかそういう展開はあまり好ましく思わない。
(ひらり、と片手をあげながら、昼間とは違うぞんざいな口調。
自分の事をどこまで知られているか知らないが、学園での「媛名葵」と結びつけられないなら
結び付けられないことにこしたことはない――…と、そう思ったのかもしれない)
――で、振り返るくらいは許してもらえるのか?
(ワイヤーを巻き戻すような機械音を背後で聞きながら、後ろ向きのまま首をかしげる)
(余裕を装ってはいた。それでも、内心まったく動揺がないわけではない。
つまりのこと、自分は尾行していたはずがいつの間にか後ろをとられているのだから)
(極めて軽い彼の挨拶も、緊迫して焦ったような声よりずっと、怖いものに思える)
……ふん。
(人の声とは当てにならないもので)
(澄んだ声を聞くと、果たしてそれが男の物か、女の物かを判断するとき、その内容に依拠してしまう事が多い)
(それは今ですらも例外ではなく、一瞬、声の主が男かもしれない、という疑念を抱いてしまった)
(……まあ、男とか女とか、別に何も、これからする事に影響がある訳ではないんだが)
…安心しろ。
別にお前を撃ち殺す事が目的じゃないんだ。これでも無用な殺人は嫌いでな。
(少々、声に重みをのせてやる。一言一言、相手に押しつけるような語調で)
ただ、分かるだろう? 何とも知れない奴が自分の事を見ている、自分を尾けている事が、不快な事であることぐらい。
別にお前がただのストーカーのような可愛らしい奴なら、電話のボタン三つで解決してやるんだが、そういう訳でもあるまい。
(少なくとも、仮に本当にただのストーカーであれば、何かしら目に付くアプローチもあるはずだ)
振り返る前に、ちょっとお互いの事を知っておくことにしようじゃないか。
自己紹介だよ、コミュニケーションの第一歩。互いを知らずして有益な会話は成り立たない。
(話しながら姿勢は変えず、一歩、影へと歩み寄る。わざとくさいくらいに足音を立てて)
(あと四、五歩で影の後頭部に銃口がキスをする事になるだろう。そのくらいの緊張に耐えられる相手でなければ、それまでだ)
……まず、所属。それと名前。
本当は俺を尾け回した理由も知りたい所だが、まあそれは何となく分かるから後でで良い。
――俺もお前と同じ立場だったらそうするさ。
(ちょっと肩を竦めてみせて、更に一歩、距離を詰める)
そういえば、そっちは「狩る」以外にも「捕獲」も請け負っていたか?
――無益な殺人とはいうが、こっちは残念なことに何の異能も持ってないタダビト。
そっちの素性、知られたら困るんじゃないのか……夜にほっつき歩く身としては、さ。
(ストーカー発言にあたりに、普段だったら思わず小さく笑ってしまうところだが、
流石に今の状況では笑えるはずもない。でも、あとでちゃんとそこのところは弁解しておこう)
(だなんてそんな思考をしながら、後ろから聞こえる音に耳を立てる)
個人的には、どうせならフェイストゥフェイスでコミュニケーション取った方がいいと考えるが
……どうにも、そこらの考え方は違うらしいな。
(近づいてくる声、足音――確かに、威圧感を持ったその存在)
(ダガーを取り出そうとした片手を途中で止めた……多分、気づかれると思った。
それに、あまり厄介なことにする必要はない。今のところ敵対する理由は無いのだし――
組織間での軋轢を生むような行為は、自分の≪ご主人様≫は快く思わないはずだから)
―――≪深凪≫第八席、剣糸。
たまに違う呼ばれ方もしたりするが、基本的に戴いているのはこの所属名。
(後頭部に銃口があと三、四歩くらいのところに来た時。
彼女は諦めたように一息ついて、降参とでも言わんばかりにひらり、と手を振って告げた)
(これさえ告げてしまえば、あとはあっちが高等部三年「媛名葵」まで結びつけるだけの
時間を得るのも時間の問題――なら、手っ取り早く話してしまった方がいいはずだ)
ムラサキ、カズヒサ――とか、そういった呼び名の方をご所望なら、さ
(銃口が近付いてくる、なんだかうすら寒い感覚に帽子の上から軽く後頭部を掻く。
あんまり偽っても、後ろからじりじりとまるで獣の牙に似た威圧感を漂わせる、
この“ムラサキカズヒサ”には通用しなさそうだと判断したか――帽子を取って、その黒髪を晒す)
―――ヒメナアオイ、って名前もありますけれど、どちらがお好みですか?
……いや? そんな事もないぜ。活きのいい人間はいるに越した事はない。
(異能を持っていない、という言葉に、心中で小さく首を傾げつつ、言葉を続ける)
異能でない、たとえば医学でも、いまだに生体実験は合法的に行われている。
一般的には、治験、とか言うがな。
(それに自分だって、素養があったとはいえ元は"タダビト"だ)
そういう意味では、いくらでも使い道があるんだよ。全ての人間にはな。
――その結果死ぬことがあれば、それは実に有益だと思わないか?
(言葉の端に、ほんの少しだけ愉悦を浮かべる)
(それは間違いなく、紫 一久という男の、傲慢な一面がもたらすもの)
……《深凪》。
(聞いたことはあった。異形狩りの組織……いや、組織と言うよりは、集団と言うべきか)
(凝り固まった遺物の集まり、と、上司の研究者が愚痴をこぼしていたのを思い出す)
(そして告げられた自分の名前に、図らずとも緊張する)
(どこから自分を追ったのか、とは思っていたが、まさか名前から――)
(もっと言うなら、名前から裏の情報を辿り、ここに行き着いたとは)
……ふん。くく。
(小さな頷き、そして笑み)
(銃から手を放した。かたり、と音がする)
脅迫用の道具はあまり必要なさそうだな。
…お互い、十分に身分が割れた。次につきつけるべきは本物の刃だろう。
(言って、たんたん、と軽く三歩ほど後じさり、壁によりかかり)
こっち向いて良いぜ。えっと……アオイ。
呼び捨ては気に食わんならアオイさん、でも良いが。
(艶やかに流れ落ちた黒髪を見て、笑った)
ご許可いただけまして光栄であります、「ムラサキカズヒサ」さん。
(カタリ、と音がして、そうして彼の小さく笑う声。
それに少しだけ全身の緊張が抜けた気がした――もちろん、決して気を許していい相手ではないが
それでも少なくとも、一気に戦闘に持ち込まれることは……恐らくないと思う)
(自分の後ろにいる彼は、少なくともそんな“無益”なことはしない人間に思えた)
……お好きに、お呼びになって。
あまり呼び名には頓着致しません、アオイでもヒメナでも、犬っころでも、
ストーカー……は、ちょっと矜持的に無理があるので、無難に名前が望ましく思います。
(頓着せぬは少し語弊がある――名前を呼んでもらいたい、と思う人はいるから。
それでも、年上だから年下だからで呼び方を気にするような女でも、彼女はなかった)
(そうやって振り向いた彼女は、ようやく初めて「彼」を真っ正面から黒い瞳で見た)
(無駄のないしなやかな体つき。そうして、昼間見たときには見せなかったような表情。
やや大人びた整った顔が闇の中にあると、昼と随分違うものに見えるものだと、ぼんやり思った)
さて、ここで生きのいい人間には質問があります。
それこそ“治験”にでもまわされて、“私じゃない誰かにとっての”実益になる前に――
(彼の夜の一面がさっき零した言葉を、そんな風にもって使い回しながら
自分もまっすぐと、壁に背を預けた男を見据えた――多分、場合によってはこの男、
それこそ「ヒト」を治験に回すことなど、そう躊躇わずやってのける残忍さがある、ような気がしながら)
次は、私が貴方のことを、じっくり知る番ではないでしょうか?
貴方の言うほど……私は貴方の身分を割っていない。
私ばかりが焦らされるなど、実にわりにあわぬと、私は存じております……意地悪、です。
(甘やかめいた囁きが言葉面通りに甘いはずもない。
真っ黒の瞳は明らかに彼を警戒するように、笑みを浮かべた男を見据えていた)
……犬っころは矜持的に無理、ないのか。すごいなお前。
ふん……なら、アオイ、にしよう。
漢字と発音は、一文字のアレで良いか? くさかんむりに、何か変な奴。
あ、俺の事は紫、でも一久、でもどっちでも。フルネームは少し煩わしいな。
(呼び名をエサにペラペラと口を回しつつ、それとなく媛名 葵を観察する)
(年の頃は…同じか、若干上程度、だろうか。年下の可能性もなくはないが、薄い)
(動かすには実に適した体つき。少々女性らしさには欠けるが、可能ならば貰いたいくらいの身体だ)
(首から上は、大人しめ。口調にも落ち着きがあり、育ちの良さと隙のなさを両立させている)
(――武家の娘のような女だ)
…ふむ。理には適っているな。
(壁にもたれかかりながら腕を組み、ぴ、と指を一本立てる)
とりあえず一つ、安心しろ。別にお前を実験に回す気はない。
(隠し立てなく、ストレートに、実験、と言ってやった)
組織同士の対立は実によろしくない。相手に被害を与えたら、同時にこちらも被害を受けるからだ。
少なくとも考えなしに先手必勝! なんて真似はしない。
(次に立てた、二つ目の指)
……俺の身分か。ふむ。
名前は紫 一久。パープルの紫に、漢数字の一、久しぶりの久。
お前の名乗りに則るなら――≪十三天梯≫対異能実働部隊。二つ名は"ガントレット"。
…ま、活動内容は知っての通り、異形を捕まえたり異能を捕まえたり多岐にわたる。
(躊躇なく、組織名まで明かしてやった)
(組織名だけでどうこうできる訳でもなし、ついでに言うなら……彼女の口から、まだ聞きたい事もあった)
さて、今度はこっちが投げて良いかな?
(自分の名前を彼女が言った時から、もっとも気に懸けていた事項)
――どこのグズだ、俺の名前を漏らした奴は。
思い至る限り、候補は結構少ないんだが。うん?
凄い、だなんて。かように褒められると照れてしまいます?
(最後に疑問符をつけながら、何事もなく小首をかしげる。
愛媛県の「媛」に名前の「名」、向日葵を漢字で書いた時の「葵」で――ヒメナアオイ、と告げながら)
……因果応報。
目には目を歯には歯を――…ええ、我々も組織間の軋轢はあまり望みません。
我らの道を邪魔するもの以外の足を、わざわざ踏みたくはありませぬ。
(饒舌にその口を回す男を観察する――多分、実質その口ほどに軽い男なのか否か、
それはまだ自分の目では見極められそうにないと、思いながら
彼女は、その「高等部二年生」にしては大人びた顔を見ていた。そして、その瞳を)
(「生体実験」――行うなら大人よりも、きっと子供の方が良かったはずだと、思いながら)
紫、一久。
―――≪一三天梯≫の、“ガントレット”……。
(彼の言葉を大人しく復唱する。思い至る噂は幾つか手に入れていた。
だとしたら、あまり“優しい”相手ではなさそうだ。尾ひれ足ひれのついた噂の中にも真実があるなら)
(昔、自分の当主は呟いた――「≪一三天梯(アイツら)≫はいつか異形を作り出すだろうぜ」と……酷く、楽しそうに)
(だが、そんな回想からも引き戻される)
(それは、目の前の彼が情報源を尋ねてきたからだ――自分は基本的に立場は中立なつもりだ。
もちろん、それは、明らかに依怙贔屓している人物とて数名いるのだけれど、
あの妖魔憑きの彼に格段の義理があるかといえば多少首をかしげるところだ――だけれど、)
紫さんのお名前なら、貴方の素性を探らせていただく段階で
何度も何度も、沢山の方々から学校でお聞きいたしました……明るい方だとのご評判で。
ときに料理部にも出入りされているなんて噂もお聞きいたしましたけれど、あれ本当ですか?
(彼女は不思議そうに、首をかしげた)
(簡単に話すつもりはないのか、それとも目の前の男がどんな風に反応するのか見たかったのか。
それでも――その黒い目にはどこか悪戯な色が孕んでいる。
「聞きだしてみろ」とでも、言いたげに――もちろん、彼にとってそこまで重要な情報とは、思えぬのだけれど)
【とんだ、とんだ誤字ばかりでっ!「十三」でありますね……誠に申し訳ありませんッ。
と、あとですね……18時以降、少し夕食に抜けさせていただけたら、と思うのですけれど
ご都合等、いかがでありましょうか?】
…そういう事だ。お互い、方針はそれほど違ってはいなさそうだしな。
世界平和のために異形を狩る。我ながら、いや我々ながら崇高な使命じゃないか。なあ?
(――未知を討つ事しか知らん、旧体質の野蛮人どもめが)
(胸中で毒を吐き出しつつ、気楽な笑顔を浮かべたまま応える)
……
(自分と、組織の名を聞き、少しばかり思案に耽る葵の顔)
(さすがに表情までは読み取れないが、何かしらの噂程度は掴んでいるようで)
………っふ。
(とぼけたような葵の言動に、口の端から息が漏れた)
(隠し通そうという表情ではない。とぼけてやろう、試してやろう…そういう表情をしている)
(非常に気に食わなかった)
…そうだな。
こういう仕事は印象第一だからな。特に、異能に関わる噂なんぞ、大体は話半分の与太話だ。
そうなると、そういう情報をあつめるには、そういう関係を築く必要がある。
料理部は……美味いし、無料だしな。食費を切り詰める足しにはなる。よく利用させてもらってるぜ。
(彼女の打ち出した質問には、軽く返答を返し)
だがな、お前だって何のきっかけもなく俺の事を知りたいとは思わないだろう?
例えば走る姿が素敵だったとか、ちっちゃくて可愛いとか、胸が大きいとか……いや、まあ、具体例はともかくだ。
(何となーく、相手が気にしていそうな所を軽く煽ったりもしてみつつ)
それが何か、俺は知りたい訳だ。結構俺、汎用で目立たない男を装ってるつもりだからな。
そうなれば、俺の"汎用じゃない"面を漏らした奴がいた、という訳だ。
そうすると、そいつとの関わり方を考え直さなきゃいけなくなるだろう? そのために教えて欲しいんだよ。
……ま、活動協力の要請だと思ってくれ。
(何とか、詰まる事なく理屈を捻り出す)
(――こういう理屈っぽい事は、どうにも苦手なのだ)
【うむ、ではここで一旦中断か】
【俺は多分、今夜中なら八時半か九時か……そのくらいに再開できると思う】
……料理部に出入りされておられますは、実質であられましたか。
食費を切り詰めるとお聞きいたしますと、実に逼迫したご生活をなされらおられますようで。
(彼曰く「旧体質の野蛮人」は、もう一度、反対側に小首をかしげる)
(多分そこらあたりは本当なのだろうな、と思うと、少し愉快な人間なのではないか、
と、そんなことを考えていた矢先――彼が続けざまにした言葉の数々に、僅かに眉根が寄った)
………ええ、そうですね。
(多分、此処でイラッとしたら負けだ。負けなのだ、と。
自分を落ち着かせながら息を吐く――ちょっとだけ、彼という人間がつかめた気がした)
ですけれど、もしかすれば、
たまたまお見かけして一目惚れってことだって、あるやもしれません。
―― 一目見かけたその日から……という? さすがに、これはうすら寒くなりましょうけれど。
(頬に手をあて、小首をかしげながら小さく笑う。
隙のない理屈――あまり得手ではないのだろうけれど、それでも捻りだした言葉は的確だった)
(恐らく自分の意図に感づいていながらも、それでもこうスラリと乗っているのだろう。
だとしたら、ただ単に「狩り」と「捕獲」を行うだけの男じゃない……きっと、確実な狡さ(かしこさ)を持つだろう、と)
……協力要請、など申されましたけれど、
私が貴方に協力して、なんのご褒美をいただけましょう?
それに本来、貴方がたは私たちをきっと快く思われないないのに――貴方がたの餌を、よく狩ってしまうから。
そうして我々も敵視することはせずも、快くなぞ思っていない――我々の獲物を生け捕りになさるから。
………関わり方を考えるにしても、
物騒な事件が起こりますは、私はあまり快く存じません。
それに加えまして、貴方はそんな細かな情報をうっかり洩らされたくらいで、
目くじら立てるようなちっちゃい男ではあられませんでしょうに。
(頭の片隅で、どうして自分はあの妖魔憑きを庇っているのだろう?と冷静な自分が問いかけた。
きっとこの男ならそんなことすんなり見つけ出してしまうだろうし、
下手すればこんな会話ですら感づかれてしまうかもしれない――…ただ、ふとよぎったのが、
妖魔憑きの青年よりも、「あの人に手を出さないで」とそう懇願した、高嶺の花の方であった)
【とりあえず……これだけ、お返しいたしましてから。
こちらのご都合に合わせていただき、申し訳ありません。そして、ありがとうございますっ(深々と一礼)】
【その時間でこちらは問題ありません……その頃に覗きますので、
その時にレスをいただいて再開でも
次に返していただければ、それに私が時間までにお返ししてから再開でも、どちらでもです。
――それでは、少し失礼させていただきます。(一礼)】
……一目惚れか? いや、なかなか悪い気分ではないが。
しかし、お前は一目惚れするというより、されるタイプじゃないか…と俺は思うぜ。
黙っていればまあ美人だしな、お前は。
(内心、そののらくらとした態度に焦れつつも、それを悟らせぬように言葉を絶やさない)
(心が乱れることは構わない。だが、それを表に出した時点で、こういう対話においては負けになるのだ)
――細かな点をしっかりできない奴に、大事は為せんよ。
なるほど確かに、そういう意味では俺たちの仲は決して良くはないかもしれない。
…だがな、お互い、こういう活動を表沙汰にしたくないという点は共通してるんじゃないか?
何、実力行使には及ばない……ただ、そいつとの関わり方を考える。言葉通りだ。深意はない。
(そう言いつつも…彼女の言にはどこか奇妙な物が感じられた)
(言ってみれば、機械が予期せぬ動きをするような、震え、乱れ……情? のようなものが)
(あくまで直感レベルの話だ。まだ、それを使って踏み込める程の強い確信ではない)
……言い方を変えてみようか。
例えば、「異形は動物の進化であり、それを狩るのは自然の摂理に反する大罪だ!」とかほざく組織があった、としよう。
(実際、そういう組織もまた少なからず存在していて、その相手をする事もなきにしもあらず、である)
その組織は無視しきれない程の軍事力を持ち、散発的にお前たち組織、<<深凪>>に攻撃をしかけていた。
そしてその組織に対し、例えば俺が、お前の情報…普段どこで活動し、どこに住み、どんな生活をしているか?
名前や容姿、その能力…等々の情報を漏らされたら、お前は困るだろう?
(と、腕組みを解き、壁に背中を預けるのを止め、媛名 葵の真正面に立った)
(正面切っての対決姿勢)
この世界において、口が軽いことは罪だ。
だから、そういう奴の事は知っておくべき――知識は共有しておくべきだ。
確かに、今この時点でお前にメリットはないな。
(ここでまた、ぴ、と指を立てる。話を印象づける手法であり、クセでもあった)
だが、こういう形でお前は俺に"恩"を売る事ができる訳だ。
俺だって恩義を感じる。人間だからな。
つまり、長い目で見れば……これは双方の利益になる。
いがみ合う所はいがみ合い、協力できる所は協力する。賢い在り方だろう。
実に社会的だ。
(そこまで喋り、口を噤み、瞼を降ろす)
(余計な感情は漏らさないように……正直、自分でもこれ以上理屈をこねられるか、自信がなかったのだ)
【と……返事をさせてもらって、俺も落ちるとしよう】
【それでは、後ほど】
(「何、実力行使には及ばない……ただ、そいつとの関わり方を考える。言葉通りだ。深意はない。」)
(そう言われても、彼女はいつものようにすんなりとは信じることができなかった。
彼は「組織」に属する人間だから――夜にある組織がどういうものか、彼女はよく知っている)
(もちろん、あの妖魔憑きが簡単に堕ちるとも思えない。
それに、彼から「紫一久」という名前を聞けたということは、つまりそこまで関わったことがあるということ)
……別に、構いません。
そうなれば私を囮にすればいいだけの話。私が切り捨てられても頭が残れば、
我が≪深凪≫は存続できる――あとは、≪深凪≫総出で「鏖戦」が行われるだけです。
(微笑んで、また首をかしげた)
(こんなの自分でも無茶な言葉だと分かっている。確かに、個人情報の流出は痛い。
しかし、自分の情報であれば――≪深凪≫自体に差しさわりないと告げるように、続けた)
(――それは事実でもあり、実質はゆっくり思考する時間を稼いでいるだけ、でもあるのだけど)
…………。
(くしゃり、と疲れたように前髪をかきあげた――だから、何で自分は、「彼ら」に情など。
奇妙な感覚に襲われるのは、それこそ目の前にいる男が、言葉を巧みに紡ぐからでもあった)
(近づいた距離――……少しだけ、彼に呑まれかけているような気がした)
ですが、貴方が自らの名と幾らかの素性をバラしておきながら、
口止めもしなかったような輩――それが、夜の人間であるはずがないでしょうに。
少なくとも、それこそ我々のように夜を本職としている人間ではない――…それでも、情報は必要か?
(髪を仕舞わぬまま、もう一度帽子をかぶりなおした。まるで正面の彼の顔を見ないように)
(導き出さなければならない。
この男の言葉に呑みこまれずに、自分にとってより良い立ち位置に立つ方法を)
……この場にはいらっしゃいますでしょう?
若くして異なる力をもちながらも、まだ夜に入ったばかりの扱いやすい輩が、ごろごろと。
(息を吐きだす。元の口調に戻してから、今度は帽子の中から一久をしっかりと見つめた)
【お返事を返させていただきつつ、紫さんとのロール再開のために
またしばらく、失礼して場所をお貸しくだされば、幸いに存じます。(一礼)】
【っとー、今から書かせてもらうぜ。暫しお待ちを、だ】
【……っと、時間ができましたのでこちらが勝手に早めに来ていただけですからっ】
【どうぞ、慌てることなくごゆっくり書いてくだされば十全ですっ、でありますよ?
先んじてのご挨拶になりますけれど、もうしばしのお付き合い宜しくお願い致します。(一礼っ)】
………っ。
(やはり、共謀せよの言葉には乗らないか。果たしてその原因が何かは分からないが)
(まあ、もし逆に提案されたとしても、やはり自分は乗らなかっただろうし…少し考えれば、然る結果でもあった)
(細かな動作がもたらす音に、右目を開く)
(彼女の凜とした雰囲気、寂々とした佇まいからはやや連想しがたい、やや無駄な動作)
(相手が普通の少女であれば気に留める程でもない事だが、洗練された者には似つかわしくない)
(…これでも、少しは動揺しているのだろうか)
――ふむ。
(己の表情を隠す手段なのか、他にも意味があるかは、さておき)
(帽子の向こう、視線、心を遮るにはあまりに薄い防壁の向こうの媛名 葵の瞳を、半ば睨むように覗き込む)
………まず、一つ誤解を解いておきたいんだが。
組織の事を話してまで口止め…という行為は、当然にする事だよな? 俺もする。当然する。
少なくとも、俺の記憶にある限り、そういう話をした相手には必ず、口止めはした。
たとえそれが、夜の人間でなかろうとな。
(実のところ、記憶が曖昧な所もあるのだが…問題はそれが事実であるか、ではない)
(何故目の前の少女がそこまで感情を揺らがせているか、だ)
(そこに鍵はあるだろう)
……だから、そういう事を漏らす奴は……少なからず俺に、敵意か、悪意か、警戒心か。
その類の感情を持っていたことになるわけだよ。もしくは利益の匂いをかぎつけた、でも、構わん。
そういう意味では、俺はそれこそ、裏の情報筋、の人間を疑っていた訳だ、が。
(――ここまでは本音。最初は、本当に、その筋の人間が流した物だと思っていた)
(肩を竦める。口の端に小さく笑みを浮かべ、小さく首を振る)
(芝居めいた仕草。事実、半分くらいは芝居の気分だ。が、もう半分は本気だ)
……なるほどな。
"この場にいらっしゃる""若くして異なる力をもつ""夜に入ったばかりの扱いやすい輩"か。
それだけ分かれば、十分すぎるくらいだ。
(言いつつ、ゆらりと左手を肩の高さまで上げてみせる)
(しかし視線は、媛名 葵から外す事はなく)
………ふむ。
(少し考え、立てた指は三本)
……いや。
(その後すぐ、指を一本降ろす)
二人、二人だ。候補に挙げられるのは二人。
(――組織に関して話し、かつ、夜に身を投じ…そのテの事に疎そうな人間は二人だ)
(片方の名は瀬尾 司と言い、もう片方の名は迫水 直と言った)
(あとは、博打。相手の反応から、どちらなのかを図るしかない)
(考える。答えを引き出すには、果たしてどうすれば良いのか)
(要は、相反する性格の二人のうち、どちらかを答えとして、引きずり出せば良い)
(そして、そういう情報を交換するということは、ある程度、互いを知っている、という事)
(……かつて、ただ情報をよこせと殴り込みに行って、何も得られず帰ってきた苦渋の過去)
(あれを思えば、そういう判断を下すのも容易い)
(――鎌をかける、か)
(指を一つ、降ろす。立っている指は、ただ一本。紫としても、可能性が高い一本ではあった)
……ま、時期的に考えたら、こちらだろうな。
(声色に、いや表情にも、半ば本心からの嘲りを含ませて)
――大食らいの異形は、口一つ閉じられない、という訳だ。
(しかしその目は、確と相手の表情を捉え、些末な変化も逃すまいとしていた)
【済まん、長くなった……っつーか書いてて俺も微妙に――ッ!】
【問題あれば遠慮無く言ってくれ。もしかしたら微妙に履き違えてたりするかもしれんッ!】
なら、口止めしてもしきれていなかったのでしょう。貴方がよほど酷い扱いをした、など。
もしくは――その人にとってなんら、貴方との約束は効力のあるものでなかった、などなど。
(彼と同じように指をたてたりしながら、目を細める。
情報は信頼の価値で決まる。信頼できない人間からの口止めなど、あまり意味をなさぬ)
(敵意、悪意、警戒心。それらを抱かせた理由は自分にあるのじゃないかと、言っているのだ)
――もしくは、私が無理矢理に割らせた、とかですね。
(もちろん、彼女自身も常日頃そういうことをしていないこともないから、そう言えるわけだけれど)
……三人、いえ、二人でありますか。
まったくと、敵の多いこと。初対面の私まで、心配に至ってしまいます。
(あまり表情の宿らぬその貌で一久を見つめながら、彼のたてた指に注目する。
自分が零した言葉を的確に読み取ってきたその男。
その言葉を聞きもらさぬように最大限の注意を払いながら、必死にその唇が紡ぐ言葉に意識を向けた)
(この付近のもので、若くして異なる力をもち、夜に入ったばかり。
つまり、根っからのあの「学園の生徒」―――そのうち、彼の脳内に引っかかったのは、二人)
(多分、それは「本命」も含まれているはずだ。
そうして、この聡い男であれば必ず本命を当てるであろう。この短時間対峙しただけであるが、
そんな奇妙な確信があった。彼は狡い(かしこい)はずだと、勝手な断定にも似た思いがあった)
(ならば――)
………どうでしょう。もしかしたら、そうかもしれません。
(穏やかに小首をかしげて、そう伝えた)
(どこか“嬉しそうに”肯定して見せる。でも、その嬉しさはまるで必死に押し隠しているように見えるよう、
きちんと無表情を装いながら――……。
彼はきっと自分の反応をみるはずだ、それなら――こうやって応えれば、どうなる、か)
(驚くでなく、まるで狙いがそらされたことを安堵するような表情を浮かべれば、
―――どこまで通用するかは分からない。だから、賭け――最も、最初から一人に絞られていたらすぐに賭けは負けたのだけど)
【こ、こっちこそっ……遅れてすみませんっ。長くなった、と思って削っていたら更に時間を……】
【いえ、問題は全く……も、もしこちらこそ履き違えていたらバシンッと言っちゃってください。
……ひ、久々の駆け引きなもので、手に汗を、です。】
(――読めなかった)
(その表情が、嬉しさを押し隠しているのか、押し隠しているように、見せているのか……)
(…ここで表情を、まっすぐに乱しはしないか)
……そうか。
(残念そうな表情を作り、手をポケットにつっこんだ)
(まっすぐだった姿勢も解き、相対も崩す。視線だって、どこか別の方向へ向けてしまう)
("もう問いかけは終わった"という姿勢を"作り出して"しまう)
…ったくよ。少しは動揺して見せろよ、可愛げのない奴だ。
可愛げで異形が狩れる訳でもない、が。
――ま、結果的には変わらん。
どうせ片方叩けば、もう片方も釣れる。仲睦まじいからな、あの二人。
知ってるか? クリスマスも二人で過ごしたらしいぜ。
どっちも一人暮らしって訳でもないだろうし、っつーか高校生だってのに、よくやる。
(くつくつと、愉快そうな笑みを浮かべて、反応を窺う)
【いや、問題はない、が…ちょっとこっちも時間、余計に食ってるかもしれんッ!】
【こう、何だ……気にしない方針で頼む!】
(つかの間の、安堵――それは彼が、残念そうな表情で自分と相対する格好を崩したからだ。
質問は終わりだと。そう告げるようにこっちに対して軽口を紡いでくる彼に対して……)
……可愛い、だなんてそうそう言われるような容姿でもありません。
愛らしさで異形が揺らぐのでしたら、私も頑張って磨いてみせようと思いますけれど。
――紫さんは、愛らしい女の方が、お好みでありますか?
(彼女は小首をかしげてから、少し考え込むような仕草を"とった"。
そのまま話をそらしこんでしまおうと、したのかもしれない。彼が気を変えないうちに――と)
(しかし、その想像はいくらなんでも甘すぎた)
………。
(彼は、食い下がった)
(僅かに出そうになった動揺はどうにか表に出す前に押し込めたものの、
困ったことに彼が当てはめた二人は――実際は「瀬尾」と「迫水」なのだが――よりにあの二人。
これならば、どっちに転んでも一緒の事でないか――…だから、何で自分がこんなに彼らに、情を…っ)
(そんな風に頭の中はぐっちゃぐちゃになりかけているくせに、表面はきちんと凪いでいた)
……よほど、その仲睦まじい二人、とやらにご執心のご様子です。
その何処かにいらっしゃるカップルらしきお二人の片っ方に……横恋慕でも?
(距離を一気に、二、三歩つめた。
2cmほど高い彼の瞳を覗き込むようにしながら、小首をかしげて見せる。それから――)
――ねえ、教えたら、貴方に“恩”を売れると、貴方はそう申しましたよね?
私の愛らしいお願い、ひとつ聞いてくださるなら、教えて差し上げますよ。
(埒が明かない、早く帰らせてほしい、とでも言うように。
ふっと瞬間的に考えを変えたように、彼女はそう言って小首をかしげた)
【いえ、全く気ならないくらいです……ふふ、全く楽しませてもらっておりっですね】
【ではお互いに気にしない!の方向でッ……何だか妙なテンションですが、眠気等の時は遠慮なくです。(一礼)】
――ふ。
(脈アリ)
(焦り、そして迫るような動作)
(もし本当に、"これ以上相手をしていられない"なら、そもあの軽口を、あの風に流す事はない、はずだ)
おいおい…何をそんな、"焦って"いるんだよ? 媛名葵。剣糸。
(意外そうな声音を作り、たしなめるように言ってやる)
まるで、そのカップルとお前が知り合いみたいじゃないか。……まあ、ありえないよな。
片や異形と、それに落とされて、庇い続ける馬鹿な女。…異形狩りなら、どちらも生かしておく理由、ないよな?
(もはや、言外に断定する勢いで、挑発するような言葉を紡ぐ)
(落ちるならあと一押し、のはずだ)
…誤魔化すな、その瞳から考えが透けて見苦しいレベルだ。
(鼻で笑い、受け流すように背を向ける)
(……どちらにせよ、その"お願い"を聞く事はありえない。恩とは押しつけるものであり、売り込むものではないからだ)
それに、たった今用事が出来たんだ。目が覚めるまで放って置こうかとも思っていたが……
(携帯電話を懐から取り出し、背後からも見えるようにディスプレイを――周辺地図が映されたディスプレイを、ちらつかせる)
ここからだとあいつの家、は……っと。
あっちだったらさすがに如何ともできなかったが、腕力がないこっちなら、どうとでも………
(呟きながら、携帯電話を操作し続ける)
―――はい、頑張られてくださいませ。
(携帯を弄う彼を見て、彼女は鮮烈な微笑を浮かべた)
少し色の白いその指先を自分に唇にあて――微笑を浮かべたまま、反対に首をかしげた)
どうぞそのまま、携帯を弄りなさい――私のことなど、お気になさらず。
そのあっちがどっちであいつがどっちかは、まだ見当がつきかねますけれど、
貴方までのお方がこんな風な些細なことで駒を動かすほどの存在なら――知っていて損じゃない。
………かようにも、貴方にとって脅威たる存在がおられるのですね?
そうして、それはカップルであり、
片方は異形、そうして片方は……それを知りながら匿っている。それは罪に足ります。
……ええ、異形ならば生かしておく価値はありません。
そうして貴方がそんなにも執拗にも狩ろうと求めるような存在であれば――
私は、貴方がたにそれを「捕獲」させるのは、あまり好ましくない――もちろん、貴方は狩るつもりかもしれませんが。
……貴方がたが大きく動いたとき、その先にきっと、大きな獲物がある。
つまりそれを、あなたは私に吐露した――狩るなら、私が横取りしても、全くと問題ないと、取ってよろしいでしょうか?
(酷く毒のある微笑だった。
たぶん、それこそ近しい人間に垣間見せすらしなかったような――蜘蛛が巣に掛った獲物を見るような)
(――ただ、問題なのがこれが彼女の全身全霊のハッタリであるということだ)
(別に本来なら認めてしまってもいい。こんなやりとりをしてまで、彼らを庇っている自分の意味が分からない。
でも、彼女はここでたぶんかなりのハッタリをかました。無理は、ある……ありあまるほどに)
(それでも、最後のあがきには違いなかった。これを破られたら、こっちの負けだ)
……ん、んー、と。
(媛名 葵の毒を背中で受け、誤魔化すような言葉を並べる)
(仮に――もし仮に、本当に、彼女の言う事が本当ならば、自分ならどうしようか)
(……ここまでは言うまい。わざわざ狙うなどと、宣言する理由が見あたらない)
(しかし、証拠としては弱い…何かもう一揺すり、ほしい物だが)
(――たった今、携帯を取り出すときに気づいたのだ)
(手汗が、凄い。凄まじく緊張をしていた)
……そうか。助かる。
(緊張に気づき、ギリギリと喉を絞られるような感覚に苛まれつつ、言葉を捻り出す)
いや、俺たちとしてもな…アレばかりは始末に困っていてな。ああ。
そういう事なら都合が良い………そうだ。都合が良い。
(電話のボタンを操作。電話帳を開き、目的の番号を呼び出す…音はたったの三つ)
………
(耳に当てた携帯電話から、コール音が漏れ聞こえ、すぐに相手が出る音がした)
…俺だ。紫 一久――ガントレット、だよ。コードD-330を要請する。
ああ。今まで野放しにしていたが、正直言って目に余ることをしてくれた。これ以上生かすと俺にもダメージが来る。
……ああ、その事なら安心してくれて構わない。実は強力な助っ人がいて、な。
<<深凪>>の、娘だよ。そこそこできそうだ。……ああ。
(少し、不自然なくらいに声を上げて話を続けて)
(ふと、媛名 葵に半分ほど向き直り)
………うちの上司だ。
共同戦線を申し込みたい、らしい。…今、代わるか?
(ちらり、と横目を窺った)
(――繋いだ相手は、177……天気予報な訳だが)