【異能】黄昏の学園14【異端】

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452島田 六花@置きレス ◆Rikka6HNi6
>>451
で、ですよね。しょーたろーさんが、そんな意地悪、しませんよねっ。
(以前、自分がここで全く同じ冗談を言ったことは、六花の頭から綺麗さっぱり抜け落ちていた)
それは、困りますし……それに、すぐなくなってしまうのも、嫌なのです。
(そう言って紅茶のカップを手にしたところで、彼がもうひと切れをお皿に乗せてくれた)
(ゆっくり味わって食べれば、このしあわせな気持ちはもうしばらく続きそうだ)

ん、じゃあもう、きれいになってますでしょうか。
(ティッシュを畳むと、再び顔を彼のほうへと向けて)
(そこで、もしまだ汚れていたら恥ずかしいなとふと思う)
(……そもそも、口の周りにクリームをつけている時点で恥ずかしいことではないか)
(それに気づくと、自分のはしたなさに少し落ち込む)
(同時に、そんな自分をあれこれと気遣ってくれる彼は、本当に「おとな」だと)

え、でもでも、わたしはもう、自分で食べましたから。
これは、これだけは全部、しょーたろーさんのもの、なのです。
(そんな彼のことだから、プレゼントさえも分け合おうと言ってくれることは予想できた)
(けれど、これを六花が貰ってしまっては意味がないのだ。箱の中身は全て、彼のもの)
チョコレート、全部種類が違うのです。わたしが食べてしまったら、しょーたろーさん、
その味のが食べれなくなってしまうですよ。
(それだけは、はっきり宣言しなければならない)

(彼の手が蓋を開けると、中から艶やかなチョコレートのアソートが現れた)
(六花が自分の意思で選んだ、初めての贈りものだ)
ですよね。これなんて、絵が描いてあるのです。
(と、表面にピンクのチョコレートで、小さな花が描かれたものを指差す)
わたしは、これとこれと、これ……を、食べました。
(続けて指差すのは、オーソドックスなトリュフ、ミルクたっぷりのガナッシュ、アーモンドのプラリネ)
どれも、すごく甘くって口の中でふわっとして、ほんとうにおいしかったのですっ。
(あの美味しさを伝えたいのに、自分の語彙の貧弱さが恨めしい)
(しかし、その味を伝えたいものは目の前にある。実際に食べて貰ったほうがずっと早そうだ)
おすきなのから、どうぞ。

…………ん。
(六花の行動は、ふたつ目が正解だった)
(ひと粒選んで食べようとする彼の動向を、瞬きもせずにじっと見つめている)
(穴があくほど見ているのに、彼の顔が耳まで紅潮しているのに気付かないのは)
(いつの間にかそれだけの精神の余裕を喪失していたからか、あるいは)
(自分の心臓の鼓動が速すぎて、視界全体に霞がかかっていたからか)

(そして、彼は『おいしい』と言ってくれた)
(もちろん、そのチョコレートがおいしいのは分かっていたけれど、それより何より)
…………良かった。
(六花の想いが、ちゃんと届いた。そんな気が、したのだ)