「あら、ご主人様?」
『ご主人…様……?』
不意に姿を現したご主人様に対しても、誘うような流し目を送ってみせる。
その間も、手は男の股間を撫で擦り続けていて。
「ふふ……もうこれで宜しいのですか?
せっかくこれからこの男を射精のことしか考えられない獣にして
野に放とうと考えていましたのに……」
『ぐぎゃあぁあぁぁぁぁあぁっっ!』
「ああん、勿体無い……んふっ、血と精液のいい匂い。
そうですね、発情…しているのかもしれません。
まだ繁華街までは距離がありますけど……」
即座に態度を切り替えられるわけでもない。
支配者にして奴隷の中途半端な状態で話すのは、本当に久しぶり。
ご主人様の笑みに対しても、比較的余裕のある態度で応えることができた。
――もっとも、欲情に潤んだ瞳で説得力があるかといわれれば怪しいのだが。
ぶくぶくと泡を吹いて転がっている男を一瞥すると、ご主人様の方へと擦り寄り身体を預けた。