時は現代。
科学技術が発達した昨今の社会のなかで、平和が約束されている世界。
だが、人々は知らない―――その平和を脅かす者たちが闇で蠢いていること
そして、名も知らぬ人間のために、その魔を切り払う者もいることを―――
ここは、現代に蘇った妖魔やそれを退治する退魔者になりきって楽しむスレです。
妖魔になって民間人を襲ってエロールするもよし、退魔者となって仲間との絆を深めるもよし。
色々と展開を広げて、楽しんでいきましょう。
【ルール】
・煽り、荒らしは華麗にスルー。
・民間人やその他能力を持たないキャラハンの参加も可能です。
・スレの性質上、強姦や特殊プレイも可ですが、きちんと相手の了承を得ましょう。
・いくら退魔モノだからとはいえ、険悪な展開はやめましょう。(相手の了承なく妖魔を殺害など)
・言うまでもないですが、最強厨も禁止。
・設定などは上手いこと、その時その時、都合を合わせていきましょう。
小さな矛盾とか気にしない気にしない。(無茶な矛盾はNGですが)
・相手のことを考えて、まったりと和やかな雰囲気でいきましょう。
・sage進行でお願いします
前スレ
【妖魔】現代退魔戦記 第六章【退魔】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/erochara2/1150289138/ ■現代退魔戦記まとめサイト
http://vepar42.h.fc2.com/ ■現代退魔戦記板
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/6589/
【前スレが512kオーバーだったので】
【しばらく、待機しています】
【ついでにプロフを再投下】
【名前】ハナ
【年齢】外見年齢は16歳位
【性別】女
【サイド】中立
【組織】無所属
【サイズ】身長155cm程度
【容姿】肩までの砂色のはねっ毛に、瞳は漆黒。相手の眼を凝視する癖がある。
【能力】精神干渉、特に読心、錯視、相手の感覚情報を「騙す」術。
鬼火を操るが、式としての制限があり、人間を物理的に攻撃することができない。
【武器】『尾』を変化させた鬼火(最大三つ)。
応用範囲は広いが、人間には物理効果を与えられない。
【得意】妖力を得るために、非敵対的な人や妖と交わる。
その際、相手が欲望や想いを抱く相手の姿を借りることも。
【NG】 陵辱可。NGは死亡、過度に猟奇的なもの。IFは無しの方向で。
【弱点】腕っ節は外見並み。真名と犬笛。野良なので、ガス欠は致命傷。
【備考】術者を破滅に追い込み、退魔組織から殲滅指定された野良の狗神(狐)。
見掛けは、勝気で奔放、古風な身形の少女。逃亡、もとい放浪生活中。
>>1乙。
お相手したいが今は無理なのでな、即死回避に留めておこう。
【ご苦労様です〜】
分厚いのストールの前を掻き合わせ。頬を膨らませて呟く。
「もう、寒いったらないのっ。寒いったら寒いったらっ。
このベンチだって、石の上に三年とは言うけれど、全く温もらないではないの」
>>4 【すまんこっです】
【そういえば即死回避の存在をすっかり忘れておりました】
【名前】億月 楓(おくつき かえで)
【年齢】見た目は20代半ば。実年齢不明(長く生き過ぎて覚えていない)
【性別】女
【サイド】妖魔
【組織】七妖会・土妖
【サイズ】身長:170センチ 体重:59キロ B/W/H:89/56/86
【容姿】東洋系の顔立ち。
黒い瞳(吸血衝動が高まったり、邪眼を使う時には紅に染まる)
長い髪をポニーティルにしている。気分次第で変えたりする。
ラフな格好を好み、ジーンズなどを好んで履く。
【得意】百合・和姦・(基本的にこちらが責める)
【能力】人間を無造作に引き裂く怪力。邪眼。
剣術。柔術。使い魔の使役。精神操作系無効。
【武器】本庄正宗。投擲用ナイフ。
【NG】スカ・グロ(リセット非推奨なので隷属なども遠慮したい)
【弱点】心臓への一撃。
十字の図形(見ると眩暈・吐き気などがしてほぼ無力化する)
【備考】
遠い昔から生きている女吸血鬼。長く生き過ぎて本人もどれくらい生きているのか
定かではない。記憶の過剰詰め込みに対する、脳内の防衛機構が働いているため、
所々記憶がない。人間に対しても妖魔に対しても、よほどのことがない限りは友好的。
現在、七妖会に所属している。人間の生活を模倣するのが好きで、アルバイトをしていたりする。
吸血行為に罪悪感はないが、やたらと血を吸って夜の世界の均衡を崩す同類には容赦がない。
また、徒に眷属を増やすことを厭い、血を吸った相手は必要な場合を除いて必ず殺している。
日光を浴びても灰にならないが、朝から夕暮れ時にかけては軽い倦怠感が苛み、身体能力は
常人並みに落ちる。再生能力もなくなり、普通の攻撃でも死滅させられる可能性がある。
土妖であるのは、情報収集という名目で遊びまわるためである。
現在、日妖・佐竹漣率いる、新しい部隊の土妖として抜擢された。
戦闘能力はそれなりに高いが、基本的に荒事は回避する方向で動いている。
>1
【プロ投下するよ。】
【スレ立てお疲れさまー。今日はちょっと無理っぽ、です。】
【また相手してやってくださいませノシ】
>>6 【ありがとございマスー】
【明日までに30いかまないと即死でしょうか】
ふわり、と、街路灯の下で赤いスカーフが舞う。
立ち上がった少女は、ステップを踏むようにくるりと回り―――
「そろそろ、野宿は勘弁したいのだけれど……ねぐらを探すのも一苦労なのだわ」
【待機を解除します】
【即死が少し心配】
保守
【本スレ初待機。】
【内容はお任せするよ】
【時間が悪かったみたい】
【また来るよノシ】
12 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 14:13:30 ID:UzIDTuHx
ほ
守
15 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/16(木) 15:09:19 ID:d4kqrYvx
マジスカ
マジ・・・だという夢を見て今朝起きた。
保守。
新人20人は嬉しいが、斬鬼衆だと厄介だな……。
【待機してみたり】
【気軽に声かけて欲しいかも】
壁|ω・`)っ【「貴女のご主人様が喜ぶ100の仕草」(凸凹書房・\2500)】
……おや、何だかえらくピンポイントな本だな。
(「貴女の(ry)を手に取り、パラパラめくる)
ふむふむ……実に興味深い。今度試してみるとしよう。
壁|ω・`)……これもあげる…。
壁|ω・`)っ□←「隷属の極意」
壁|ω・`)っ□←「同性愛の向こうに…」
壁|ω・`)っ□←「バレずにこっそり!味見の仕方」
壁|ω・`)っ□←「きな粉棒大全」
壁|ω・`)ノ
壁|ミ サッ
あ、ああ……。
(どっさり差し出された書物を呆然と見つめ)
意図がよくわからないけど頂いておくよ、ありがとう名無しさん……。
でも、できればお相手して欲しかったぞ?
今宵は日が悪かったようだな。
また訪れるとしよう……。
(風呂敷に本を包んで背負い、立ち去る)
【待機解除しますノシ】
>>23 乙ー。
どんどん待機してくれ。
このスレには期待している。
同じく。
26 :
御剣朱音:2006/11/18(土) 20:01:13 ID:6zsZZlHw
【名前】御剣朱音
【年齢】16
【性別】女
【サイド】退魔
【組織】「無所属」
【サイズ】身長:150センチ 体重:59キロ B/W/H:76/56/68
【容姿】黒髪黒目、やや童顔
【得意】洗脳、従属系(受け)
【能力】自分の血を自在に操る事ができる
【武器】血を変化させた武装
【NG】死亡、過度の残虐
【弱点血液の消費し武装を作るため、長期戦に不利、体質として洗脳に耐性が無い
【備考】代々の退魔士の家系の長女で、当主を継ぐための最終試験として
100の妖魔を狩らなくてはならない
使命感が強く、自分の役目に誇りを持っている
【新規参入 プロ投下&待機します】
【トリップつけてみるテスト】
________
|  ̄ ̄ ̄ ̄ |
{` r'" ̄ ̄ ´}
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_l‐‐‐-ーーー-‐‐‐l
=ニ二 ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ 二ニ= 斬鬼ではないが… 新人が… 来たぞ……?
 ̄ フ テ6〒 '' ーrrrァ、''ミl ̄
く こ ノ ミシ リミミ.ヽ …
>>14… 奴は一体……!?
{{lll、 、シ`‐'lミミミ}
__}⊇ミ.、 .、シ >''´ _}_
/ (}.}.}.l.l.l.l.l、シ__ / // `ヽ
/ 〃 ̄/ ̄_____ / / ヽ
>>26 プロフは問題ないと思います。
今度お相手願います。
お相手頂けますか?
日が悪いんですかね……?
落ちます
【待機解除しました】
【待機します】
【待機解除です】
一足遅かったか
斬鬼追加しても良いのかな?
近い将来、このプロフィールも変わりそうな気もするが一応投下しておく。
現状に合わせて多少追記。
【名前】戸田 瑞希(とだ みずき)
【年齢】25歳/大学院生(ただし休学中)
【性別】女
【サイド】中立(やや妖魔より)
【組織】無所属(帝都大学大学院)
【サイズ】身長:169cm 体重:56kg B/W/H:86/59/88
【容姿】髪型は黒のセミロング(二の腕くらいまでの長さ)、
知性的なやや釣りあがった目。
私服ではボーイッシュな格好を好むが、
「仕事」のときには闇色のローブを着用する。
コンタクトレンズを愛用しているが、気分次第で眼鏡の時もある。
【得意】和姦、羞恥・快楽責め
【能力】中級程度の地・水・風・火の魔術、使い魔の使役、飛行やテレポート
【武器】魔法杖“ケーリュケイオン”
【NG】四肢切断などのグロ系、ハードなスカ(浣腸、放尿程度ならOK)
【弱点】多少鍛えているものの、一般人程度の筋力しかない。
使い魔で防御するぐらいで本人の近接戦闘能力は素人同然。
各種呪文の詠唱の際に本人は無防備になるうえ、
高等な呪文を使用するには魔力の制御媒体として杖が必要。
【備考】帝都大学大学院に在籍する院生にして
裏世界で「漆黒の魔女」の異名を持つ女魔術師。
妖魔がらみの事件で実は半妖であった恋人が危篤状態となった。
その後、恋人を回復させるには特殊な魔法薬が必要で、
材料に妖魔や退魔士などの異能者の肉体の一部が必要とわかった。
現在は大学を休学して薬の材料を集めており、
異能者が集結しているとの情報を得てこの辺りにやってきた。
薬の材料を収集中に「契約者」水上竜斗の雌奴隷となったが、
水上の前以外ではそれまでとさほど変わらぬ生活を送っている。
本質的には真面目でさっぱりした性格で、義に厚く一途で素直。
しかし、それを知るのは瑞希が心を許したわずかな相手のみであり、
普段はぶっきらぼうでそっけなく、他人を寄せ付けないオーラを放っている。
>>34 個人的には、別に構わないと思う。
【名前】槙 円(まき まどか)
【年齢】16
【性別】♀
【サイド】退魔
【組織】天洸院・斬鬼衆
【サイズ】145cm、B74W59H80
【性格】真面目で優等生だが実戦経験が少なく、戦闘時人に頼らざるを得ない状況を不服に思っている。
【容姿】茶髪のショートカット 銀縁の眼鏡
基本的にスーツを着ている
私服は露出の高い服を好む。
【能力】呪符を使って結界を張るのが得意。基本的に後方支援・補助系。
呪符を飛ばして攻撃することも出来るが高い効果は望めない。
自分の武器や仲間の武器に属性(光・炎・氷・水・風・土)を付加させることができる。
自らの命を使って魔符を精製する。
魔符は通常の符より強力な力を持ち強力な妖魔を妖魔を一時的にだが強制的に封印するほどの力を持つ。
符が尽きた・もったいない・効かない場合は風火圏という円形の武器を使う。
相手を倒すと言うよりは攻撃を受け流し、一撃を加え怯ませることを目的とした闘い方をする。
【武器】風火圏(乾坤圏の一種) 魔符 支給品の符
【得意】洗脳・陵辱系 羞恥快楽責め
【NG】グロ系
【弱点】肉弾戦が苦手
魔符を破壊されると呪詛返しによって大きなダメージを受けてしまう。
また一度に5枚以上破壊されると死亡する。
【備考】基本的に単独行動を好むがその能力の性質上、単独行動は禁止されている。
献身的な能力の割りに努めて冷たい口調や表情を作っている。
クールな外見・性格とは裏腹に涙もろくよく一人で泣いている。
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=ニ二 ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ 二ニ= 斬鬼の… 新人が… 来たぞ……?
 ̄ フ テ6〒 '' ーrrrァ、''ミl ̄
く こ ノ ミシ リミミ.ヽ …
>>14… 奴は一体……!?
{{lll、 、シ`‐'lミミミ}
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/ (}.}.}.l.l.l.l.l、シ__ / // `ヽ
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では、この調子で後19人……も来たら凄いな。
それこそ奴は一体何者だ、と言う事になるか。
【しばし待機】
>>38 【一応、まだいますけど・・・どうします?】
【じゃあ、慣らし運転も兼ねて出会ってみようか?】
【シチュエーションとか、書き出しはどうする?】
【出会って見ましょうか】
【シチュエーションが考え付かないのですが】
【そちらに良い案などありませんか?】
【こんばんは。一応挨拶だけしておきます>槙円さん】
【これからよろしくノシ】
【
>>42こんばんは。これから色々お世話になります】
【出会いということだから、偶然居合わせる感じかな】
【ぱっと思いつくのは喫茶店とかだけど……若干不自然かもw】
【なんならこちらから書き出してみるね?しばしお待ちを】
しとしとと冷たい雨の降る日曜日。
季節が一気に秋から冬へと移り変わりつつある中、瑞希は商店街に買い物に来ていた。
(急に寒くなるとは……目星をつけていたから良かったものの、
冬物のコートは大きな出費だな……)
そんなことを考えながら、大きな紙袋を提げて歩く。
ここしばらくは「仕事」で忙しかったため、買い物をする暇もなかった。
その意味では、天気は悪いがいい気分転換だなと思う。
「……この気配は?」
ふと、妖魔の気配を感じて立ち止まる。
下級妖魔の気配。近くに……いる。
「まったく、せっかくの休日を……っ!」
独り言を呟きながら、紙袋を片手に駆け出す。
通りを一本入った裏路地。
そこで瑞希が見たのは、3,4体の下級妖魔と見知らぬ退魔師が今まさに戦っている現場だった。
【上であんなこと言っておきながら、こんな書き出し】
【さくっとやっつけて、その後会話……って感じかな】
単独行動を控えろ―その命令を無視して私は、今日も妖魔を狩る。
(早く強くなりたいんだ。補助系?この私が?冗談ではない。)
この程度の妖魔ならば符は必要ない。
「ふッ!!」
愛用の圏で攻撃を弾き、急所に一撃を加えさっと飛びのく。
的確で理にかなった戦闘は良くも悪くも理に頼りすぎていた。
熟練者の目から見れば危うく見えるのである。
これでは中級以上、即座の判断が求められる相手とは危なくて
闘わせることはできない。
最後の妖魔を斃し死骸を結界に包む。
『ボッ・・・。』
火炎が結界の中に充満し証拠を消していく。
煙もでないので小火騒ぎにもならない。
「・・・誰?」
ちょうど最後の妖魔を斃した辺りから気配を感じていた。
魔符を忍ばせていたのだが襲い掛かってこないものだから無視していたのだが。
「出てきなさいよ。敵意はないんでしょう?」
あっという間に妖魔を片付けた見知らぬ退魔師。
(それなりに洗練された動きだが……まだ若いな)
効果的に攻撃を加えているが、その戦い方は良くも悪くも的確すぎる。
型にはまった戦い方では、もっと強い相手には対応できない。
それでも、手早く死骸を処分した様子から大分手馴れた人間である事がわかる。
冷静に分析しながら観察していたところ、ようやく気付いたのか声が掛けられた。
とりあえず紙袋を立てかけ、両手を挙げて無抵抗の意志を示しながら姿を晒す。
「ああ、すまない。なかなか面白いものを見せてもらったのでな。
見とれてしまっていた……というのは、どうだ?」
何の感情も読み取れない、無機質な表情と声色で語りかける。
瞳はただまっすぐに相手を見据え、そして問うた。
「私は、戸田瑞希と言う。フリーの魔術師だ。
……君は?」
「どうだ・・・と言われてもね。」
感情を消すとはこのようにするのだろうか。
無機質を装うのが常だが、ここまで感情を消すことは出来ない。
経験の差か、それとも天性のものか。
いずれ、超えて見せる・・・。
感情が対抗意識を燃やす一方理性はこの相手に対する対策を考えていた。
まだ警戒を解くべきではない。それだけの力を、相手から感じる。
「戸田?。フリーの魔術師?」
目線を下に逸らして表情を隠しながら呟く。
どこかで聞いた覚えがある。危険人物のリストだったか・・・。それとも・・・
手が自然に魔符に触れた瞬間、閃いた。
「―!!!(漆黒の魔女・・・)」
円は比較的斬鬼の中では裏世界に精通している。
どの相手にどんな技が聞くか、攻撃法はどうか。
知っておくのが補助系の勤めだからだ。
そのレベルの相手に戦闘を見られたのは不味かった。
魔符を握り締め攻撃しよとする本能を必死に抑えながら
無表情の仮面を被り答える。
「・・・斬鬼衆が一人、槙円。」
自分の名を聞いた退魔師が驚いた……ように感じられた。
必死に無表情の仮面で隠してはいるが、瑞希はかすかな狼狽も見逃さない。
直接的な戦闘能力では劣る魔術師は、
こうした相手の機微に聡くなければ生き残れないからだ。
見たところ似た感じの戦種の彼女は、まだまだそこのところがわかっていないらしい。
名乗りを聞きながらわずかに苦笑する。
「円君か……うん、覚えたよ」
口の端を少し吊り上げて答える。
彼女はこちらを警戒しているようだが……少しは名が知れてきたと言う事か。
自分が闇の世界でどういう存在として捉えられているのか興味はないが、
それでも感情としてあまり悪い気分ではない。
「まあ、そんなに警戒しないでくれ……。
君を見かけたのはたまたまだからね。ほら、見ればわかるだろう?」
紙袋を指差す。
服装はラフな格好、傍らには紙袋。
彼女を狙っていたわけではないと、遠まわしに主張してみる。
相手が苦笑したかに見えた。
動揺したのが悟られたらしい。
恥ずかしさと嫉妬が同時に込み上げて来る。
これが力を持つものとの差かと。
相手に敵意がないのも明らかだろう。
私と戦っても無事であることを相手は分かっている上で話しかけてきたのだろう。
その余裕。
その気配。
それだけでただならぬ存在感がある。相手は「異名持ち」であるのだ。
ぽっと出の自分とは何もかもが違う。―だが。いずれ成り上がって見せよう。
心の中で静かに近い、まずは相手と相対する。
せめて堂々としていなければ。
魔符を仕舞い込み背筋を伸ばして一礼して答える。
「あなたがあのご高名な漆黒の魔女とは知らずに失礼しました。
このような所で何を?」
「漆黒の魔女?……随分と仰々しい呼び名だな。
そんな大層なものじゃないよ、私は。
それに、そんなに畏まらないでくれ……なんだか恥ずかしい」
そう言いながらも、急に改まって問いかけてくる彼女に、瑞希は感心する。
(さすがは斬鬼衆、状況即応力はなかなかのものか)
そういえば、この町で最初に出会った斬鬼衆の金髪の少年も、
冷静に、動揺を見せることなく自分に対応していた。
「何をしていたか、と言うと……。近頃急に寒くなってきただろう?
だから、冬物のコートを買いに来た。
その帰り道で、妖魔の気配を感じたから来てみれば君がいた、と言うわけさ」
要点を簡潔に述べ、にっこりと微笑んでみる。
「手助けは、要らなかったようだしね」
視線を彼女の懐にやる。
武器は先ほどの刃物の他にもありそうだが……さて。
ほんの少しの皮肉を込めた挨拶のつもりだったのだが。
漆黒の魔女―特に気に入った相手とは体力の続く限り交わり続ける女。
懐に相手の視線を感じる。
魔符に気づいてるのだろうが・・・解説することもないだろう。
これ以上手の打ちをさらすのも危険だ。
いずれ敵対するかもしれない相手なのだから。
「自らの呼び名を知らないのですか・・・?」
「……知らないな。他人が私をどう呼ぼうと関係ない。
私は私、それ以上でもそれ以下でもない」
柔和な笑みを浮かべつつ、きっぱりと言い切る。
実際、面と向かってそのような二つ名を呼ばれた事はなかった。
せいぜい、退魔師が息絶える直前に「この魔女め……」などと悪態をつくくらいだ。
だから、闇の世界での呼び名は今日が初耳だった。
「ところで……」
すうっ、と目を細めて話題を変える。
笑みは崩さず、眼光だけが鋭さを増す。
(せっかくの機会だ、この娘からも情報を仕入れるとしようか)
「君は見た事のない顔だが、斬鬼衆はこの街に人員を随分割いているようだね?」
瑞希自身、そしておそらくは瑞希の主も天洸院の動向を知りたがっている。
人に仇なす人……その存在を、かの組織が座視し続けるはずもない。
少しでも情報を得る事で、動きが取れなくなるような事態は避けられるだろう。
急に眼光が鋭くなった。気圧される。心が萎縮する。
それを一瞬で押さえ込んで、心の中だけで身構える。
「知りませんね。私は指示通りに動くだけですから。」
多少冷たく言い放つ円。
駒に過ぎない自分を再認識させられたからだ。
その苦々しさを抑えて答えた。
実際にはある程度理由がある。ここ最近この街に”力”が集まる傾向があるのだ。
「それにしても―
「どうしてそんな事を知りたがるのですか?」
くすっと笑って、攻勢に出る。
ここまでお前の情報を知っているぞ。と示せば相手も警戒するはずだ。
「薬の材料の方が大事なのでは?」
「……ふふっ、そうか。無粋な事を訊いた」
ふ、と表情を和らげる。
直接言葉には表さずとも、答えは自ずから見えてくる。
これからこうした退魔師に出会う機会も増えるに違いない。
無理に今事を構えるよりも、
次に出会ったその時に、じっくりと聞き出せばいいだけのこと……。
その光景を想像して、瑞希は妖しく唇を湿らせた。
次の瞬間。
彼女の言葉に瑞希はかすかに目を見張った。
「……どこでそれを?」
心中の動揺を覆い隠すかのように問う。
誰にも自分の「仕事」の事は明かしていない。
可能性があるとすれば……。
「我らの情報収集能力を舐めないでもらいたいものですね。」
死者と会話する異能の男が居る。
その男に伝に全ての情報を仕入れている円だ。
これは自分の手柄ではないが、舌戦のためにせいぜい誇らせてもらおう。
現在のこの街に集う異能な力。
その力の詳細の調査が今、円の最大の任務だ。
パワースポット。この街もそれなのだろうか。
「ふふ・・・。お互い大変ですね。」
そう呟いて時計をさりげなく見る。
それにしても遅い。
増援が来ない。何かあったのだろうか?
「なるほど、さすがは伝統ある天洸院、という事か……」
それは、個人には限界のあること。
しかし集団、組織ならば相互に情報を共有し、補完する事ができる。
目の前の少女が全部調べた訳ではなかろうが、
逆に言えばその程度の情報は既に握られている、という事になる。
(これからは少々やりにくいな……)
よりにもよって国内最大級の退魔組織に情報を握られている事に
多少の不安を覚えながらも、以後気をつけることを心に誓うのであった。
「そうだな……」
彼女の呟きに苦笑で答える。
気を緩めたわけではないが、どこか和やかな空気が漂う。
「そう言えば……何をそんなに気にしている?」
どこか上の空になった彼女を見咎めて訊く。
ちょっとした仕草が気になるのは、神経質すぎるだろうか?
自分の直感を信じつつ、様子を見る。
―気づかれたか?
さすが、というべきか。勘も鋭いらしい。
増援が来ないならしょうがない、この女と戦う訳にもいかない。
その自分の力の無さがくやしかった。
「いや、待ち合わせの相手が来ないもので」
嘘ではない。
嘘を言えば表情に出るだろう。それを必ずこの相手は見破ってくる。
ここは多少警戒される内容でも真実をぼかした内容を答えなければならない。
「!」
ふと一瞬前方から妖魔の気配がした。気のせいだろうか?
「今……」
言いかけて、止める。なぜか嫌な予感がしたからだ。
「ふむ、それは……恋人かな?」
ニヤニヤとしながら畳み掛けてみる。
必ずしも真実を語っているわけではないのだろうが、
嘘を言っている目にも見えない。
カマをかけてみてもいいのだが、ちょっとだけ意趣返しがしてみたくなった。
「……」
表情が一転、真剣な顔になる。
妖魔の気配がしたからだ。
(できればこちらの手の内を晒したくはないが……)
余計な情報を与えたくない気持ちが強いが、妖魔が襲ってくればそうは言っていられない。
臨機応変に対応できるよう周囲に注意を払いながら密かに準備をする。
「……どうした?」
囁くように聞き返す。こういうときの退魔師の直感は、当たる事が多い。
どんな些細な兆候でも、気付いていればあるいは……。
【風呂に入るのでしばらく離席します】
【30分はかからないでしょうが……申し訳ありません】
「恋人なんていませんよ。」
恋人のために薬を準備する彼女
(……羨ましいな)
一瞬そう思った自分自身にうろたえる。
何を考えてるんだ私は!?
「!」
……妖魔の気配だ。
だがこちらは良い。だがソレよりも気になる「魔」の気配。
目の前に居る戸田から感じるのだ。
「……なんでもない。それよりもあなたに最近体に変調がないなら良いのだが」
【了解です】
【これからの展開、どうしよう……】
【お待たせしました】
【レスは今から書きますw】
【>展開 ……いや、お迎えが来て終わるものだとばかり(苦笑】
【とりあえず一緒に倒しますか!】
【了解です】
【そうですねー……お迎えどうしましょうかねー……】
【色々申し訳ないです。倒しますか。とりあえず。】
「残念だ、私の勘は良く当たると思っていたのに」
おどけたように言う。
こういうところで正直な辺り、根は真っ直ぐな性格なのだろうと思う。
「そうか……。身体の調子は特に悪くないが、それがどうか?」
少々場違いな問いだと思ったが、とりあえず答えておく。
あまり人のことは言えないなと思い、苦笑。
自分が発している気配の事には思い至らない。
瑞希にとっては、それが自然な事だから。
「さて、おしゃべりはここまでのようだ……来るぞ!」
言い放つや否や、路地の正面から妖魔が3体襲い掛かってきた。
地獄の猟犬(ヘルハウンド)。青白い炎を身に纏った、中級の妖魔だ。
すばやく接近し、唸りながら二人を威嚇する。
「厄介な相手だ……そっちはやれるか?」
背中合わせに妖魔に対峙し、魔法杖を本来の形に戻して様子を窺う。
ここまで接近されると正直厳しいが、弱みは見せられない。
この期に及んで出し惜しみしている場合ではないと考え、全力で行こうと思った。
「……」(面倒な時に来たな。)
舌打ちを一つして、愛用の圏と、支給の符を取り出して構える。
中級妖魔三体。この女の力。自分の能力。
勝てる。が、それは手の内をお互いが晒すことになる。
(やれやれ、しょうがないか……)
背中越しに声を掛ける。この短期間だけ彼女が私のパートナーだ。
「あなたの杖を貸して。」
「杖を……?これは、私専用にチューンされているから君には扱えないぞ?」
疑問を発しながらもとりあえず手渡す。
杖が無いと自分の身を守るくらいの魔術しか使えないが、
実質的に近接戦闘である事を考えるとあまり変わりは無い。
ならば、言われたとおりにしてやろうと思った。
(お互いに、お手並み拝見といったところか……)
円を描くようにこちらの様子を窺う三体のヘルハウンド。
それを睨みつけながら、呪文を詠唱する。
さほどダメージを与えられるとは思わないが、牽制くらいにはなるだろう。
「Windschuneide!(風の刃よ!)」
魔力によって人為的に作り出された真空の刃が一体のヘルハウンドに襲い掛かる。
しかし、殺すまでには至らない。
(やはり、未熟……!)
攻撃を避けながら符を3枚取り出して周囲に放る。
「……結界を張った。今のうちに上位の魔法でも唱えて。
それからコイツらは水が弱点だから水系をおねがいします。」
そういって自分の仕事に戻る。
なかなか強力な杖だと思う。魔力が溢れて出ている。
杖に手をかざし詠唱を始める。
「水精よ、力を貸して……」
青白く杖が光りだし、一時的に水精が杖に宿る。
「はい、コレを。出来れば一撃で決めてください。奥の手、お互いに出したくないでしょ?」
珍しく笑いを含んで『他人』に話しかける。心が高揚しているのか軽口を叩いてみたい気分になった。
(私、何だかんだで補助系なんだな……。)
仲間が傷つけられた事に怒ったのか、
残り二体のヘルハウンドが口から火炎を吐き出す。
(いけない……間に合わない!)
この場にいない使い魔の事を思い出しながら目を閉じた瞬間、円が符を放った。
「ああ……ありがとう。そうさせてもらおう」
図らずも命を救われた形になり、内心冷や汗をかきながら礼を言う。
年下の彼女の指示を素直に聞き入れ、自分の使える最上位の水の呪文を詠唱する。
「そうか、それが君の能力か……。任せてくれ、一撃で仕留めてやるさ」
詠唱を続けながら水精の宿った杖を受け取る。
同時に自分の身体に魔力がみなぎってくるのを感じる。
そして、一種の精神的な高揚感をともなって、呪文が完成した。
「Sturmwind!(嵐よ!)」
局所的な暴風雨が吹き荒れる。
横殴りの雨はヘルハウンドの纏う炎を消し、
同時に発生したカマイタチがその身体を切り刻む。
暴風雨が収まったその後には、物言わぬ死体が三つ転がっていた。
「……すごい。」
雨と風が妖魔を包み込んだ次の瞬間戦闘は終わっていた。
本当に一つの魔法で終わるとは……。
杖に宿らせる必要なかったんじゃないのか?
念のために自分の符にも水精を宿らせていたのに。
呆然としながらも体が勝手に死体を処理している。
習慣というのは怖いものだ。自然と体が動いてしまう。
魔符を使わずに済んだのは正直ありがたい。
「おかげ様で」
頭を下げて礼を言う。命を削らずに済んだ礼だ。
目を丸くした円の顔を見て、くすりと笑う。
それもそうだ。いくら水精と杖で魔力がブーストされているとはいえ、
あれだけの威力の高等魔術を見せられれば大抵の退魔師は腰を抜かす。
だからこそ、あまり目立ちたくはないのだが。
「驚かせてしまったかな?」
妖魔の死骸を処理し始めた彼女に話しかける。
こちとら「材料」集めの機会を見逃すわけにも行かないので、
全て処理されてしまう前にヘルハウンドの血を絞って小瓶へと入れる。
「なに、困った時はお互い様だよ」
頭を下げる彼女を手で制して言う。
その一方で小瓶からこぼれた血を人差し指で拭き取り、舐める。
ねっとりと、見せ付けるように。
「もっとも、どうしても礼がしたいというのならこちらも遠慮しないが……?」
妖しい笑みを浮かべてそう呟いた。「漆黒の魔女は両刀使いだ」
こんな情報を、彼女は持っているのだろうか。そう考えると少し可笑しくなった。
「もちろん、驚きましたよ。……まだ力を隠していると思うとね」
情報どおり死骸から血を絞り取るのを見ながら
結界の二つに火を付ける。
「礼……?」
訝しげに頭を上げると妖しい笑みを浮かべた魔女。
慌てて無意味に眼鏡を拭きながら下を向く。
(どうしよう……)
その顔は少し赤くなっていた。
「そう思うか……?まだ、私は力を隠していると?」
いささか過剰評価に近い推測に苦笑する。
勝手に想像されるのは不愉快だが、対峙する分には不都合は無い。
自分達が作り出した幻影に怯える斬鬼衆を想像して、瑞希は笑った。
「……なになに、ちょっと期待しちゃった?」
赤くなって下を向いてしまった円の顔を、しゃがんで下から覗き込む。
浮かべる笑みは、チェシャ猫のそれ。
しっかりと目を合わせようとするが、逸らされてしまってうまくいかない。
(この初々しい感じが可愛い……どうしよう、本気になっちゃいそう)
だが、とりあえず今はその時ではないと判断して理性で感情を押し留める。
なぜなら、ようやく状況に気付いたのであろう天洸院の退魔師の気配を感じたからだ。
「残念、時間切れ……。お迎えが来たみたいだからな。
次に会った時は、じっくり楽しませてもらうとするさ」
素早く杖を元のピアスに戻し、紙袋を抱えて闇に紛れる。
(女の子のハーレムって、面白いかも……)
そんなことを考えながら、家路に着く瑞希だった。
【ちょっと強引ですがこんな感じで締め】
【長い時間お疲れ様でした。中断やら遅筆やら申し訳ないorz】
【次はエロールを目指しますよーw】
【では、お先に失礼しますノシ】
【長い時間ありがとうございました】
【こちらこそつたないロールで申し訳ありません】
【エロール……、了解ですw】
【こちらで付け足す事もないのでコレで終了と言う事で】
【実はテンプレの得意ロールにミスがあるのであとで書き換えます】
【ではでは】
74 :
妖狩 彩音:2006/11/20(月) 21:45:07 ID:uNcfb7J4
【こんばんわ、久しぶりですが待機です】
【プロフは前スレ371に】
【腹ボテの再起不能にまでの鬼畜シチュでお願いしますー(グロ過ぎるのは×です)】
75 :
妖狩 彩音:2006/11/20(月) 21:53:06 ID:uNcfb7J4
【プロフサルベージ出来たので貼っておきますー】
【名前】 妖狩 彩音
【年齢】 19
【性別】 女
【サイド】 退魔側。
【組織】 なし。
【サイズ】 163cm B/ 83 W/ 59 H/ 81
【容姿】 古風な巫女装束を着た巫女。穏やかで清楚な感じ。 長い黒髪・黒瞳。
【得意】 輪姦、腹ぼて、妖魔の出産。
【能力】 陰陽術(犯されて封印済み)
【武器】 二の太刀いらずと称される退魔刀「ヒイラギ」(捕獲された時に、摂取済み)
【NG】 かなりのグロ、汚物。
【弱点】 妖魔の手中にある。
【備考】 古より妖魔を屠る事を生業とする妖狩の巫女。
抜きん出た法力、鋭い太刀筋で途方もないほどの妖魔の屍山を築いたが
それ故に危険視され、圧倒的な数の暴力の前に敗北→捕獲。
妖魔の手中に落ちてからは、彼らの苗床とされている…。
76 :
妖狩 彩音:2006/11/20(月) 22:16:14 ID:uNcfb7J4
【やっぱりこのシチュは苦しいでしょうか】
【落ちます】
ああっ…遅かった…挑戦しようと…
>>76 【落ちてしまわれたかな?】
【もう捕まってしまったシチュから開始なんですか】
>>76 そのシチュエーションは好きだがタイミングが悪かった
【一時間ほど待機します】
【どなたでもどうぞー】
【♂を虐める趣味はおありで?】
【構わないですよー。慣れて居ないので、上手くやれる保障は】
【ありませんが。ただ、虐める場合は少し違う私になると思います】
【プロフにもまだ追加していないことなんですが、歪みモードがあるんです】
【では、そんな感じでお願いします】
【NGはグロ、スカで】
【はいはい、お願いします。NGはそんな感じで。】
【過去のロールは専用スレの第二スレにあるんですが】
【そちらを見て頂ければやりやすいかと】
【既読なら結構なのですが】
【んーむ、読んでみましたがよく分からないですね…】
【どうしましょうか……】
【ロールは三回ほどしているわけですが】
【その内二回の分は過去ログになってますねー】
【見ようと思えばブラウザで見れるんですが】
【普段はお気楽吸血鬼。人間の生活をしている】
【ただ、血に飢えると錯乱する吸血鬼と理解してもらえれば】
【うーむ…やはり名無しが気楽に入れそうなスレでは無い様で…】
【申し訳有りませんがこれで失礼します】
【ああ、すみません】
【私も落ちますねノシ】
【失礼します】
【名前】槙 円(まき まどか)
【年齢】16
【性別】♀
【サイド】退魔
【組織】天洸院・斬鬼衆
【サイズ】145cm、B74W59H80
【性格】真面目で優等生だが実戦経験が少なく、戦闘時人に頼らざるを得ない状況を不服に思っている。
【容姿】茶髪のショートカット 銀縁の眼鏡
基本的にスーツを着ている
私服は露出の高い服を好む。
【能力】呪符を使って結界を張るのが得意。基本的に後方支援・補助系。
呪符を飛ばして攻撃することも出来るが高い効果は望めない。
自分の武器や仲間の武器に属性(光・炎・氷・水・風・土)を付加させることができる。
自らの命を使って魔符を精製する。
魔符は通常の符より強力な力を持ち強力な妖魔を妖魔を一時的にだが強制的に封印するほどの力を持つ。
符が尽きた・もったいない・効かない場合は風火圏という円形の武器を使う。
相手を倒すと言うよりは攻撃を受け流し、一撃を加え怯ませることを目的とした闘い方をする。
【武器】風火圏(乾坤圏の一種) 魔符 支給品の符
【得意】陵辱系 快楽責め
【NG】グロ系
【弱点】肉弾戦が苦手
魔符を破壊されると呪詛返しによって大きなダメージを受けてしまう。
また一度に5枚以上破壊されると死亡する。
【備考】基本的に単独行動を好むがその能力の性質上、単独行動は禁止されている。
献身的な能力の割りに努めて冷たい口調や表情を作っている。
クールな外見・性格とは裏腹に涙もろくよく一人で泣いている。
【プロフ訂正&待機です】
【まだいらっしゃいますか?】
【ロールをお願いしたいのですが】
【まだいますよ】
【ロールをお願いしたのですが】
【大丈夫ですか?】
【共闘後会話みたいな流れを考えていますが】
【ああ、あなたでしたかw】
【大丈夫です。】
【了解です。書き出しはそちらからお願いしてもよろしいですか?】
【紛らわしくて申し訳ない】
【では書き出すので暫し時間を】
夜。尖った細い月が夜空に浮かぶ。その頼りない光を照明として、
無数の影が躍る。舞台は廃墟と化した開発地区。
不景気の煽りを受け開発が中断し、廃墟とならざるを得なかった
見捨てられた場所。そこに踊るのは人間ではない。
爪牙を持つ凶暴な獣。這いずり回る粘塊質の生き物。
ギチギチと顎を鳴らす巨大な蟲たち。
人の悪夢を具現化したようなそれらは、『妖魔』と呼ばれる存在。
空想の産物と言われ続けていたそれらは、常に人の傍らに在り続ける。
例え、人間が『妖魔』が遠い昔から存在していたことを忘却の淵へ追いやろうと。
彼らは確固として存在し続ける。夜の闇の中で。
銃声が響く。汚快な苦鳴が響く。
今日も今日とて、御影義虎は殺戮の一人舞台を演じていた。
鉄槌の如き拳が唸る。刃が閃く。妖魔が駆逐されてゆく。
円は風人気の無い廃墟。寒気、腐臭を感じながら落ち葉を踏締め行く。
妖魔の気配を辿ってここまで来たのに先客が居るらしい。
とりあえず屋上から「観」に徹することにした。
危ないなら助け、違う組織なら戦い方を覚えておこうと思ったからだ。
塵で汚れた眼鏡を拭いて目を凝らせば、舞うように闘う男が一人。
(……相変わらず無茶をする……)
普通あれだけの妖魔と対峙するなら一人で戦うべきではないのに。
だが、確実に避け相手に致命傷を与えていく姿は全く危なげなく見えた。
―別に羨ましくなどない。まして憧れてなど、決して。
そう自分に言い聞かせ円は屋上からその戦いを見ていた。
何故そう動けるのか。何故その体勢からその攻撃を避けれるのか。
理だけでは説明の付かない動き。決して自分には出来ない動き。
感嘆と舌打ちを同時にした次の瞬間、円は飛び退いた。
襲い掛かる妖魔の伸ばしたその腕を圏で断ち、胴に符を貼って滅していく。
(合流したほうが得策……かな?それも癪だけど)
思考を巡らす円。合理的な動きはだが思考によって乱され
あろうことか大失態を演じてしまった。
「うわっと……」
妖魔の一撃が床を壊し慌てて飛び退いた先は―下だった。
落ちながら御影義虎が近づくのが見える。
(あーあ……)
妖魔を狩る者。その名を退魔士と呼ぶ。
彼は、その退魔士のひとりだった。
少なくとも彼を知る周囲からはそう認知されている。
斬鬼衆のひとり、御影義虎。
古来より、日本の霊的守護を担ってきた集団がある。
その集団は時代と共に呼び名を変え、妖魔の脅威から人々を守ってきた。
現在、その集団は日本全国に支部を置く一大組織となった。
天洸院。そしてその実戦部隊を斬鬼衆と呼ぶ。
鬼切りの刃。そして万民の盾。それが斬鬼衆。
拳から伝わる感触。命を絶つ感触。
微塵の迷いも無く彼は殺戮の舞踏を舞う。
それはさながら一匹の修羅。
避ける。動く。鮮血が舞う。刃が閃く。断末魔。
苦鳴。悲鳴。銃声。硝煙。雄叫び。嘶く妖魔の群れ。
別段、妖魔たちは同志というわけではない。
所詮食うか食われるかの関係だ。だが、今夜に限っては同じ敵を討つ仲間である。
彼を中心とした包囲網が縮まる。一匹一匹駆逐されながらも、妖魔たちは際限なく
成果の上がらない集団攻撃を継続する。
ふん、と彼が鼻先で嘲笑った時だ。
近くで――頭上から音がした。反射的に見上げる。誰かが宙に浮いていた。
しかし、人間は空を飛べない。当たり前のことだが、時折忘れる者もいるらしい。
当然の帰結として、その人は落下した。何者か見定めるより先に、彼は駆け出す。
妖魔の包囲網を無造作に蹴散らす。大地を蹴る。夜空へと跳躍する。
手順としてはこうだ。空中で抱きとめる。なんとかして落下の衝撃からその人を守る。
それだけだ。計算も作戦もありはしない。しかし彼はそれを選んだ。
「わっ……」
自分の体が加速しているのが分かる。
みるみる地面が近づく。
妙に冷静に高校物理の力学の授業を思い出していた。
(加速度が9.8m/毎秒毎秒だから……ってそんな場合じゃないか)
くるりと空中で半回転しながら懐から符を取り出して結界を張る、が。
「……って嘘ッ!?ああ、もう!!」
何と御影義虎が目の前に居る。
(全く根は優しいんだから……)
瞬時に結界を解いて体が御影義虎の腕に触れた瞬間張り直す。
落下直後の奇襲を防ぐことを考える辺り、体に補助の役目が染み付いているらしい。
抱きとめた感触からして相手は女、らしい。
かなり小柄だ。一瞬、顔を覗き込む。
呆気に取られたような顔。知っている顔だった。
「・・・槙?」
――何故お前がここに?何でこんなことになってるんだ?
だが、問いかける暇はなかった。
人間は空を自由に飛べたりしない。インドの山奥で隠遁している修行者なら
可能かもしれないが、生憎と彼はそういう方向の修行はしていない。
当然の帰結として、ゆっくりと落下した。
ゆっくり?それは主観的な感覚でしかない。
彼女の手が腕に触れる。覆われる感覚。結界を張ったらしい。
門外漢なので原理は不明だが――助ける必要もなかったのかも知れない。
――まあいいか。
彼は切り捨てて、次の行動に移る。
すなわち、妖魔の殲滅だ。
着地は軽やかだった。呆気に取られた様な妖魔達。
反射的に攻撃を再開するが、結界に阻まれる。
「10秒後、結界を解け」
それだけ言って、彼は拳銃に弾丸を装填する。
斬鬼にも多くのタイプが居る。
近接攻撃が得意な義虎のような者。
遠距離攻撃が得意な者。
治療が得意なもの。
それらをサポートし、動きやすくする円のようなタイプ。
「他の者が連携の基本はコミュニケーションから!」
普段ならそう文句を言うところだが言っても無駄なのは分かっている。
それに自分を助けようとしてくれたのだ、大目に見るとしよう。
「分かったわ。」
短く答えて素早く義虎の拳銃に手を添える。
「……我らに聖なる加護を」
瞬間、拳銃が微かに光りだし、聖の属性を帯びる。
「とりあえずこの辺りの妖魔の弱点は大体ソレだから…それから、さっきはありがとね。」
そういって圏を取り出し構えながらカウントダウンを始める。
「……3、2、1」
結界が解け同時に符が飛び、妖魔の手足を切り刻んで行く。
結界に守られながら、弾丸の装填を終える。
コトルパイソン357マグナム。グロックM19。
装填された弾丸は、退魔の刻印を弾頭に刻んだ特別製。
兵器工学と退魔の技術の結晶に、彼女の手が添えられる。
流れ込む力。彼女の得意とする加護の力だ。
『とりあえずこの辺りの妖魔の弱点は大体ソレだから…
それから、さっきはありがとね。』
拳銃が微かに光を帯びる。
加護が宿った証だ。門外漢であるが故、やはり原理はわからない。
けれど、使える物は遠慮なく使うのが当然だ。
「お互い様だ。いつも世話になっている。」
毎度の如く抑揚なの答え、二挺拳銃を構える。
『……3、2、1』
符が乱れ飛び、同時に銃弾の嵐が妖魔を穿つ。
次々と手足を切り裂かれ、額や胴体を銃弾が貫く。
ほぼ壊滅状態となった妖魔たちに、刃を引き抜いて追撃を行う。
乾いた銃弾の音と妖魔共の悲鳴。
正確に急所を射抜かれ崩れ落ちる妖魔を尻目に走る男を追いかけて
円も征く。
残り少ない妖魔を一匹一匹、だが確実に斃していく。
派手さは無いがそれだけに隙が無く知能の低い妖魔如きでは勝負にならない。
乾坤圏の中でも風火圏と呼ばれる得物は三日月状の刃が外についたものだ。
相手の喉や腱を掻き斬る珍しい武器。
これも今は聖属性を帯びて淡く光っていて、妖魔の体を易々と切り裂くほどになっている。
今は義虎の背中を守るために全力を尽くそう。
非常のときのための魔符を握り締めてそう呟いた。
殺戮。鬼切りの刃の使命。明滅する想い。
それらを振り捨てる様に、彼は加速する。
旋風のように動き、回避と攻撃をほぼタイムラグなしで行う。
槙も乾坤圏を振り回し、妖魔を切り裂いて薙ぎ倒している。
お互いの死角を補完するように動き、やがて最後の妖魔を仕留めた。
世界に静寂が戻った。
「槙・・・・また単独行動か」
お疲れ、という代わりに彼はそう言った。
彼女、槙円はその能力の性質上、単独行動を禁じられている。
命に関わるからだ。だから、支部長がそう命じた。
それでも彼女は納得しない。一人でもやっていけると証明するように、
今夜も一人狩りに出たのだろう。彼はそれを非難しているわけではない。
ただ、疑問なのだ。
「お前、死にたいのか?」
『また単独行動か』
非難の口調ではない。それは分かっている。
命令違反の後ろめたさからか、うつむいて無言になってしまう。
「……私がいつまでも後方支援をやっているわけにはいかないんだ。」
戦力が不足している。自分が抜けた先輩達の穴を埋めたい。
義虎は分かってくれないのだろうか。即戦力だった、君は。
返り血を浴びた眼鏡を外して顔を上げる。
「……すまない……だけど、見逃してくれないか。」
「お前が焦るのもわからんでもない。確かに、最近妖魔どもの様子もおかしいし。
例の七妖会とやらが、妙に静かなのも気になるしな・・・・」
俯く彼女に対し、彼は例の如く平坦な声で言う。
この街は特異点だ。妖魔が次から次へと湧き出し、そして外部からも
新たな妖魔や妖術師が競うようにこの街に流れ込んでくる。
対して、斬鬼衆の人数は少ない。全てをカバーするには、余りにも。
後方支援専門の彼女が、前線に立たなければと思うほどに状況は
刻一刻と悪化してゆく。だが――
「だがな、だからといってお前が特攻して、状況が改善するとは思えない。
重藤も斬鬼辞めて、お前まで死んだら誰が俺たち切り込み役の援護をするんだ?」
ふぅ、とため息をつく。
長いセリフは疲れる。何より柄ではない。
それでも、言わなければならない時があるのだ。
今がその時だろう。
「単独行動には眼を瞑るさ。いつも世話なってるしな。
だがな、その代わり勝手に死ぬな。いいか?」
「……」
義虎のいうことは一々最もだ。
だが、円が前線に立とうと思ったのは使命感だけではない。
そこらのレベルの低い前線の者よりよっぽど自分の方が強いという自信。
プライドがあるいは円の目を曇らせていたのかもしれない。
本質は補助にこそ向いている。誰の目にも明らかなその事実を無視するほど。
溜息まじりに反省をして頭を下げる。
「……分かった。気をつけるよ……すまなかった。」
眼鏡を掛け直し、普段どおりの口調に努めて戻す。
学級委員はクールに、そして淀みなく、だ。
「またここに、次の朔に今度はより多くの妖魔が来るだろう。
本当は一人で狩るつもりだったんだが……手伝ってくれないか?」
「了解した。どうせ俺たちがやらねばならぬことだ。
その時は呼ぶといい。任務が入らなければ手伝ってやる」
やれやれと言わんばかりに肩を竦める。
これでこの件に関しては終わりだ。仕事を引き摺るのは精神的によくない。
ドライに割り切ることも必要だ。だから彼はいつもの如くそれを実践した。
携帯で処理班に連絡して、処理を任せる。
「さっさと帰るか、単車で送ってもいいがどうする?」
どちらでもいい、と言った風情で問う。
この辺、根は優しいのか、本当に冷酷なのか、それは誰にもわからない。
【次あたりで〆ますか。長時間お疲れさまでした】
「ありがとう。よろしく頼む。」
律儀に頭を下げて後片付けに入る。
「私が処理していくよ。先に帰っていてくれ。」
そう言いながら結界を次々に張っていく。
照れ隠しだと見破られてもしょうがない。
妖魔の消え去ったせいか空気が澄んで、風が心地よい。
声が反響していつもより大きく響き、空はより綺麗に見えた。
(早く戦いが終わりますように……)
去っていくバイクに手を振る衝動にかられて、慌ててまた背を向けた。
【了解です。ありがとうございました】
【それではまたの機会にノシ】
【久しぶりですが待機を】
【プロフはまとめサイトをご確認くださいまし】
ちいさい方なんですね。
セレスティア様キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
お、お相手よろしいですか?(ドキドキ(ぇ
俺はとりあえず去る
あら、それがどうかして?
私のように小さく優秀なる者は洗練されているという事ですわ。
大きく無能なものは単に邪魔なだけしてよ。
そう…例えるならば、私を見下ろしている貴方かしら。
>>114 煩いですわ、愚民。少しお静かになさい。
吼えるだけしか能がないの?
でもまぁ…熱烈な歓迎は「塵くらいには」嬉しく思いますわ。
3人は無理だから、
>>113さんかどちらかで。
>>114 【それでは始めましょう】
【そちらから何か提案はあって?】
>>115 【お休みなさいませ】
>>117 【実は以前呼びかけさせていただいたものです】
【その際のご提案……「狩り」の邪魔をした同業者を捕まえ、拷問するが隙をつき逆襲され、逆に拷問・調教されて奴隷に堕ちる、と言うので如何でしょうか?】
>>118 【構わなくてよ】
【では時間も有限ですから「捕獲して、拷問中」もしくは「もう逆襲されて〜」の】
【どちらか、から始めたいのですけれど】
>>119 【では、拷問中からで。軽く拷問をしていただき、隙をついて逆襲と参りたい次第】
>>120 【承知いたしましたわ】
【同業者を城の地下牢で拘束しているという事で…次から始めますわ】
【ちなみに貴方は人間という認識でよろしいのですわよね?】
>>121 【はい、お願いします】
【ええ、人間です。少々小狡いだけですね】
湖畔にそびえる吸血鬼の古城。
絢爛たる佇まいとは裏腹に、その地下では今宵も狂乱の宴が・・・
「ふふん……御機嫌よう、名も無き道化さん?
今宵も私と遊びましょう」
高飛車な嘲笑とともに拷問部屋へと入ってくる。
相手の捕虜は既に数日に渡って甚振っており
更に脱走させないように足首に鉄球を架せているため、手にしているのは獲物は鞭のみ。
「へっ、こっちとしてはダンスの相手は別にって言いてえが……
言って聞くわけでもないだろうな」
数日に渡り、拷問を受けながらも変わらず皮肉を返す。
それが彼女を苛つかせると知っていながら。
「あら、いつ私が家畜――人間如きにダンスのお相手をお願いしたのかしら?」
不遜な態度を見せる男に手を腰に当て眉を潜めた。
苛立ちに自然と言葉も刺々しくなり。
「折角、こうして生かしてあげているというのに…
そうやって思い上がるのもいい加減にして頂きたいですわね」
床へ垂らした鞭をしならせ、身動きの取れない男の右肩を叩いた。
そうして息つく間もなく鞭を振り上げ、地下牢の床・壁に鮮血の華を咲かせていく。
>>125 「人間を家畜呼ばわりか。へっ、あんたも大概の妖魔連中とそう変わらねえな」
明らかにそのような場合でもないにも関わらず、不遜な態度と皮肉の口調を止めない。
それは、鞭の一撃を受けてなお崩れもしない。
「へっ、こんなものかい?こんなのじゃ肩こりにも効きゃしないぜ」
「――ふん、そうやって軽口叩きながら死んでいきなさい」
一向に堪えた様子のない男に冷たく言い放つ。
これでは暇つぶしの遊びにもならないと思い直し、鞭を無造作に捨てて踵を返す。
確か、城の何処かに保管していた特注品のギロチンがあるはず。
「今からその「肩こり」すら感じさせなくして差し上げますわよ」
それを執事に持ってこさせようと男に背を向けて
机の上に置いてある呼び鈴へと手を伸ばし。
【もしかして返し難くて?】
【でしたら私、元のなりきり()方式即行レスへ変えますわよ】
【実のところ私もこのやり方は少々不慣れなので】
【幻滅させてしまったようですわね(謝)】
【落ちますわ】
「さてねえ、お嬢様に殺しまで出来るのかね」
なおも軽口を止めない。
その自信はどこから来るのか……簡単だ。
「――それに、お嬢ちゃん。
あんた、甘いよ」
昨日の内に、苦労しながら拘束の鍵を全て破り、既にその身はいつでも自由を得られるようになっている。
それが最大の理由だ。
そして、今、その自由を得……逆襲の時。
【幻滅と言うよりも、慣れていないのが最大の原因でして……】
【どうにも気負いばかりでこちらの能力がついて行っていない次第】
【とりあえずは返させていただきます。その上でもしお宜しければまたこの続きを願えればと思います】
【それでは】
【こんばんわ。待機してみます】
【こんばんは〜プロフィールは有りますか?】
【まとめサイトの中にあります……】
【お手数ですがそちらでご確認いただけますか?】
【無理ですっ!ごめんなさい…】
【スミマセン、お邪魔しました…ノシ】
【……そうですか、了解です。】
【引き続き待機します……。】
【気合いと、根性と、変換プラウザでプロフィール見ましたが…】
【陵辱は厳しいっす、良いお相手が見つかるといいですね〜では、失礼しましたノシ】
【……落ちますね……】
>>137 これにメゲずにまた待機してくださいねノシ
――喉が渇いた・・・・
意識が覚醒して思ったのはまずそれだった。
棺桶から這い出て、頭を振る。
口の中が粘ついている。もう一ヶ月近く生き血を吸っていないせいだ。
しなやかな裸体を晒し、冷蔵庫まで這いずる。寝る時は服を着ない主義である。
白い乳房も腹も背中も腰も太腿も、秘めやかな部分まで晒している。
有体に言えば全裸である。だが、見ている者いないので気にしない。
冷蔵庫の中にある血の入ったパックに齧り付く。尖った犬歯が容易くパックを食い破る。
一気に飲み干す。口の端から血が垂れる。足りない。
三パックほど空けて、無意味さに気づいて止める。
生き血を啜らなければこの渇きは止まらない。
そんなことは、『発生』してすぐにわかっていたことだ。
だから彼女は食事に出かける。
喉笛に噛み付き、息の根を止める。首筋に歯を立てて、迸る滴りを嚥下する。
ごくり、ごくり、ごくり・・・・
夕暮れ時の公園だった。
有無を言わさず邪眼で麻痺させて薮の中に連れ込み、一気に事を終わらせた。
後は処理をするだけだ。傍らに控えている遣い魔に、まだ暖かい肉を喰らわせる。
(―そろそろ帰らないとまずいかな……?)
遠く風見ヶ原の地に来て数日になる。
単独行動への度重なる注意は少なからず円のプライドを刺激していた。
注意の意味が分からないわけではない。皆の警告は最もだ。
しかし。私は強くならなくてはならない……。
その想いが円を、皆に隠れて白清から離れ修行させている。
毎夜毎夜人知れず妖魔を誘き寄せては狩っていたが、今夜は強い妖気を感じていた。
夕暮れ時の公園。そこだけ異質な空気が漂っている。
胸が躍った。ここ数日手ごたえがなさすぎたことが油断に繋がったのかもしれない。
強烈な鉄の匂い。生命の残り香。
「はッ」
茂みの中に符を連続して打ち込む。
ドンッと音がして爆風にのって草が吹き飛ぶ。
先手必勝。手ごたえ有りだ。
ゾブッと湿った音がして、ぐちゃぐちゃと肉が咀嚼されてゆく。
黒い大きな狼の腹の中に、人肉が詰め込まれてゆく。
血はそれほど飛び散らない。それは既に粗方飲んだからだ。
・・・・とは言え、痕跡はどうしても残る。
細かくなった人体を、狼が地面に穴を掘って埋めてゆく。
ここまで食い尽くせば、屍喰いにも吸血鬼にもならない
隠蔽作業は一先ず終了した。犬などなら気づくだろうが問題はない。
退魔士に勘づかれなければそれでいい。
だと言うのに。
誰かか来た。
血に酔い痴れていた感覚で朧に感じ取る。
「っきゃう!?」
突然、地面が爆発した。無様に転がる姿は、何百年も闇夜に在り続けてきた
不死者とは、とても思えなかった。もう一度爆発。今度は受身を取る。
遣い魔のクロが、何処か哀れんだ眼で見ていた。屈辱である。
「って、何処のどなた様ですか貴女は!?」
薮の中から飛び出る。
そこに居たのは、小柄な少女。符を構えていることから察するに、
「げっ、ヤバっ」
相手は退魔士だった。
一目散に逃げ出す。物凄い速さだった。
「……速い。」
―だが、追えない速度ではない。
すぐさま追いかけて符を取り出す。
すぐに逃げ出したこと、その狼狽ぶりからして戦闘は不慣れらしい。
修行にはならないにしても実際人を食っていたのだ。逃がすわけには行かない。
「……縛呪」
符が飛び、楓の体に張り付くがすぐに燃え尽きてしまう。
どうやら力の有る妖魔であるのは間違いなさそうだ。
「これだけは使いたくなかったけれど……。魔符よ、奴を閉じ込めろ!」
四方に散った魔の符―円の命を削って作られたそれは
妖魔を一匹たりとも逃がさない、巨大な結界を生成する。
これで閉じ込めた。後は近づいて残りの一枚の魔符を貼り付けて封じれば勝ちだ。
逸る気持ちを抑えて符を構えながら近づいていく。
――うぁ、背中に何かが張り付いたよお母さん。
駆ける。
――お母さんいないけど。あっ、勝手に燃え尽きた。
駆ける。駆ける。
――低級の妖魔ならともかく、蓄えてきた力が違うのよ。
出口まで50メートル・・・・40メートル・・・・
『――魔符よ、奴を閉じ込めろ!』
符が舞い、四方を囲み、巨大な結界を生成する。
符術士。彼女は舌打ちした。勝利を確信したのか、少女がゆっくりと近づく。
「面倒ごとは嫌いなんだけどね・・・・」
先刻飲んだ血が身体を駆け巡る。心臓が高鳴っている。
闘争。正直面倒だ。だが、おめおめと殺されてやるつもりもない。
――クロ。
薮に潜んでいた使い魔に命令を送る。
巨大な狼が少女の背後から飛び掛る。
同時に駆け出す。押さえ込めば後は簡単だ。
吸血鬼はとても力持ちなのだから。
「くッ!?」
背後から突然飛び出してきた狼に符を投げつけ横に飛ぶ。
一瞬で圏を取り出して構える。
この間1秒にも満たない。
(油断していた……)
左肩に掠り傷。動きに支障は無い。
ちらっと追いかけていた妖魔を見ると猛スピードで駆けて来ている。
一瞬の迷い。理を求めて動きが止まる。
クロが符を貼り付けられ動きを止められる。
少女が圏を取り出し構える。
訓練されたいい動きだった。だが、判断を迷ったらしく動きが止まる。
それは刹那の出来事。それでも戦いには致命的な隙だっだ。
「チェックメイト」
爛っ・・・眼が紅く染まる。邪眼の行使。相手の動きを封じる能力だ。
それに抵抗しようとしまいと、隙はどうしても出来る。
だから彼女はそのまま勢いに任せて押し倒した。
喉を片手で締め、片手で武器を持った腕を封じる。
――なんとも他愛のない。
闘争に滾った血が、その捌け口を求めていた。
『チェックメイト』
勝利宣言が耳に入った。
(チェックメイト?どこが!?)
狼を封じて一瞬の後、妖魔に向かって攻撃を仕掛ける―はずだった。
手足が一瞬硬直した。
「な……ッ!……ゲホッ」
腕がビクともしない。こんな細腕で抑えられているだけなのに。
咳き込みながら自分を押さえつけた妖魔を初めて近距離で見る。
美しいと思った。ソレも一瞬。
―反撃をー……。
無造作に両腕を押さえ込み、動きを封じる。
「名前は?」
邪眼を使い瞳を正面から覗き込む。
この距離で、状態なら、よほど精神力が強い者でも邪眼に
抗い切れないだろう。吸血鬼の魔力が精神に絡み付いて自由意志を
奪い去ろうとしている。少なくとも問いかけには答えざるを得ない。
「今から貴女を犯すよ。抵抗してもいいけど無駄だと知りなさい」
耳を舐める。音を立てて舐める。聴覚を犯す。
首筋をチロっと舐める。ちゅっと吸い付く。牙は突き立てない。
少なくとも今は。この高鳴りをどうにかするまでは。
【質問。服は制服?それとも私服?】
「……名など聞いて……どう…する……?ま…きまど…か」
名など聞いてどうする?関係ないだろうと続けるつもりが
勝手に口が答えてしまう。この赤い目のせいだろうか。
(何とかして隙を付いて魔符を貼り付ければ……)
唯一の勝機を逃すまいと必死に頭をめぐらせる。
(どうすればいい?どうすれば……)
それだけを繰り返す思考を停止させたのは妖魔の一言だった。
(おかす……?私を?)
「いやあッ!」
異性と性交渉の無い体は敏感に責めの全てを感じ取っていく。
【私服ですね。単独行動に制服は不向きなため】
【私服:緑のタンクトップに黒のGパン、銀淵の眼鏡。黒の下着】
【展開的に最終的に血を吸われ瀕死→増援の流れが妥当ですかね】
「そう、まどか・・・・円ね。私を愉しませなさい」
不遜にして妖艶な声で命じる。
違う、と彼女を知る者は言うだろう。
これは自分の知る億月楓ではないと。
だが、これも紛れもなく彼女の秘めた一面なのだ。
圧し掛かる。
タンクトップの上から小ぶりな乳房を撫でる。
その先端にある尖りを指で探り出し、指で弄る。
その間も耳を、首筋を舐める。
「色気のない格好ね。趣味は近いけど」
空いた手で、Gパンのベルトを外そうとする。
【服装了解です】
【天洸院特製の携帯でSOS信号発信】
【直前で金髪ライダー乱入でしょうかw】
「く…ッ…うぅん…ッ…誰が…あぁッ」
息が荒くなり、次第に色を帯びていくのが自分でも分かる。
これは妖魔のせいなのだ。妖魔に惑わされているだけなのだと。
自分に言い聞かせ声を抑えようとするが……。
「はあッ…はッ、あッ……ふうぅ…ん」
顔に赤みが差し初め眼鏡が吐息で曇る。
力の差からか大人しくされるがままになっていた円も
さすがに声を上げる。足をばたつかせ、必死に抵抗を始めた。
「やだ、やだってば……この……」
【それでいいと思いますよーw】
チロチロと舌を這わせる。
耳に、耳の裏に、首筋に、喉に。
徐々に彼女の体温が上がってゆく。
「んっ・・・ちゅっ・・・」
まだ抵抗を止めない口を、唇で塞ぐ。
歯を舌で舐め回して、押し開こうとする。
その間にも器用にベルトを抜き去る。
ホックを外し、ジッパーを下げる。
下着は黒かった。意外と大胆な色である。
必死に抵抗する少女に、少し苛立つ。
唇を離し、服に手を掛け、無造作に引き千切る。
吸血鬼の前では紙に等しい抵抗だ。
ブラも黒だった。案外遊んでいるのかもしれない。
だが、感触からして未経験だと思ったのだが。
「大胆な色の下着ね。彼氏の好みかしら?」
再び邪眼を使い尋問する。
「…んッ、んッ……。くっ、あ…」
下が体の敏感な部分を這うたびに甘い刺激が円の体を蝕む。
「…!」
(あ…服が…。しまった……ッ)
裂かれると同時に仕込んでいた符が飛び散る。
反撃のすべがこの時点で皆無になった。
絶望の影が表情を暗ます。
そうしている間にも下着だけにされて行く。
「……彼氏なんて……いない」
もう喉も耳も顎も唾液で濡れ光っている。
黒い下着姿で、闇色に染まる公園で同性に犯されている。
なんとも倒錯的な匂いのする状況だった。
楓の心臓が更に高鳴る。
彼女の顔が絶望の色に染まりつつある。
それもまた愉快だった。
「じゃあどうしてこんな大胆なの付けてるのかな?」
ブラの上から乳首を突付く。
ショーツの上から股間を指で探る。
房術にはある程度自信がある。
経験は何百年分も蓄えられているのだから。
「……べ、別に理由なんて……」
恥じらいながら答える。それだけで体が熱くなっていく。
自分の張った結界の中で、妖魔に犯される。
これ以上無い屈辱だった。
悔しさで涙が出る。
「ふあッ…ああっ……いやあッ」
的確に感じる所を探られる気がして、とっさに自ら禁じた業を発動させる
キッと睨んで右手を上げ、命を削り魔符を生成し押し付ける!
さッと飛びのいて圏に飛びつき、戦闘態勢に入る。
だが円は重要なことを忘れていた。魔符が敗れること、それは即ち―
【ちょっと展開を外したかもしれません】
【魔符を破ってトドメにして下さい。】
【結界×4+今ので1枚なので、1枚残して全て破壊するといいと思います。】
「うっ?」
最後の力を振り絞ったのか、符を手から生み出し、
それが生み出す力により押しのけられる。
――この結界を破壊するのが先決か。
文字通り頭に血が登っていたとは言え、うっかりしていた。
相手の手元に武器を残しておいてしまったとは。
ポケットから投擲用ナイフを取り出す。
都合四本。一本を宙に舞う符に投げつける。
消滅。
もう一本投げる。消滅。
更にもう一本。消滅。
最後の一本。投げつけて消滅。
結界そのものが消滅する。
「で、まだ抵抗するのかしら?」
【こんな感じで】
飛び掛ろうとした瞬間、符が破壊される。
「うぐ……ッ……あッ…」
衝撃が円の体を走る。圏を取り落とし必死に苦痛に耐える。
「あッ、がッ……」
一枚符が破壊される毎にさらに衝撃が走る。
「うあッ、ぐうぅぅッ……」
口から血が流れ、膝が落ちる。
それでもなお楓を見据えていたが誰の目にも戦えないのは明らかだった。
4枚目が破壊された瞬間に雷に打たれた木のように崩れ落ちる円。
ドサッ……。
結界の消滅と共に闘う力を失い、力尽きた。
「ッ……。」
「あら?」
符の破壊と共に、円と名乗った少女の身体が崩れ落ちてゆく。
これも一種の呪詛返し、というべきか。
口から血を吐き出しながら、少女は倒れた。
「もうオヤスミなのかな?まだ不完全燃焼なんだけど」
襲っても、もう反応しそうにない。
これでは楽しめそうにない。
――仕方ないか。
頭を振って、少女に近づく。血を啜る。それが故に吸血鬼。
彼女は自分に正直だった。血を吸おう。彼女はそう思う。
この底無しの虚ろをほんの少しでも、ほんの一時でも忘れるために。
【えーっと、どうしましょう?】
【反撃なり救援なりします?】
「う……。くあぁ……ッ」
立てない。全身から力が抜けたようだ。
考えははっきりしているのに体がぴくりとも動かない。
楓に向かって手を伸ばす。最後まで抵抗する意思の表れ。
うつぶせの体を仰向けにして楓を見やる。
「はあッ……はあッ……。」
【いや、そのまま責めてもらって大丈夫です。】
【致命傷はまだ受けてないですし。】
「あ、まだ動けるんだ」
ごろり、と寝返りをうつような緩慢な動きで
うつ伏せから仰向けになる。まだ眼が死んでいない。
つまり、まだ楽しめるということである。
ふふっ、と笑みが零れる。捕食者の笑みだ。
獲物を自由に嬲るのは、捕食者の特権だ。
――最後まで嬲り尽くしてから血を啜ってやろう
横腹を軽く蹴りを入れて、動きを止める。
そのまま圧し掛かって、最後の二枚を脱がしにかかる。
指が黒いブラに掛かり、一瞬の躊躇いもなくそれを剥ぎ取った。
手が楓に伸びてはぷるぷると震えて地に落ちる。
それしか道がないかのように楓を睨みつけ続けている円。
「あぐッ……」
横腹に蹴りを入れられ呻く。
ブラジャーを脱がされた時、円は羞恥心さえ苦痛に奪われていた。
小ぶりの胸があらわになる。
相当な深手を負っているにも関わらず外傷は特に無く、
弱弱しく動いた左手が下着を守ろうと微かに動いた。
「……はあッ……。うぐッ……。」
小ぶりな乳房を掌で包み、円を描く動きで撫で回す。
掌に感じる、微かに尖った感触が楽しい。
呻く彼女の唇にもう一度口付け。
「じゅっ・・・ちゅっ・・・んっ・・・」
唾液を送り込む。
血生臭いのは、血を吸ったからだ。
左手が動く。
今にも力尽きそうな動きだった。
下着を守ろうとしているのだ。
その手を、楓は無造作に押しのける。
その時、円の指先に何かが当たる。
それは、斬鬼衆御用達の携帯電話。
救援信号を送れば、受信した斬鬼の者が駆けつけてくれるだろう。
「ん……。ふぁあッ……」
巧みに胸を弄ばれ思わず声を上げてしまう円。
こうして弄ばれるのは初めての上に相手はその道心得があるからたまらなかった。
「あうぅ……うっ。やだッ…」
無造作に退けられた手が携帯に当る。
チラッと楓の方を見る。
(……気づかれてはならない。)
瞬時にこれが運命の境目と悟った円は腹をくくった。
「うあッあ、……あっ…あん……」
だんだんと色を付けて声を出して責めに夢中にさせて置いて救援信号を送る。
―……二つ問題点があった。
救援信号が届くまで時間がかかる事が一つ。
もう一つは演技でも自分から厭らしい声を出してしまえば、
自ら気分も盛り上げてしまい結果感度が上がってしまう事だった。
しかもそれを円は経験の少なさ故に知らない。
少しずつ、円の声に艶が滲んできた。
肌が少し汗ばんでいる。
「大分乗ってきたねー。お姉さんはうれしいよ」
両方の乳首を弄びながら、ふざけたことを言う。
乳首を口に含み、舌で転がす。
強弱を付けて断続的に吸う。
脇腹を十本の指で撫で回す。
身体中にキスの雨を降らせる。
楓は愉しんでいた。没頭していた。故に気づかなかった。
肌に舌を這わせ、唾液を塗りつける。
臍にも舌を這わせ、舌先で中を擽る。
円の身体を完全に蕩けさせるまで、延々と愛撫を続ける。
「ひッ……あぁッ…ん…ぁッ」
舌が這うたび、指でつままれるたびにビクッと痙攣してしまう。
小さな乳首は膵液に濡れて愛撫を待ち焦がれているかのように立っている。
「ふぁッ…!そこは……だめぇ…ッうあぁぁぁッ……」
体が溶けて行く。世界が白く明るくなっていく。
もはや演技でもなんでもなく円は声を上げ続けた。
「うああッ、あっ……きもちッ…いいっ…」
「そろそろ頃合かな?イキたいの、円?」
全部の愛撫を止めて、最後に残ったショーツに手をかける。
陥落してしまえば、あとは堕ちてゆくのみ。
最後まで達したなら、この娘は喜んで喉を差し出すだろう。
その時、だった。
排気音が響き渡る。近い。
ふと顔を上げると、黒い単車が乗り込んできたところだった。
公園に、単車に乗った青年が。髪は金色だった。
アクセルを吹かし、一瞬の躊躇いもなくこちらへ突撃してくる。
「マジでっ!?」
一瞬、硬直するが、それでも円から飛び退き回避に専念する。
単車が進路を微調整してこちらへ。
狂気の笑みを口元に張り付かせて突撃してくる青年。
斬鬼衆の凶戦士・御影義虎。
何故彼がここに?
槙円はにとっては幸運なことに、彼は今日、風見ヶ原の骨董屋にゆく用事があったのだ。
【少しご都合ですがこんな感じで】
「イキ……たい……ですッ……」
遂に陥落した瞬間、円は救われた。
「義……虎……?どうして……」
まだ携帯を使ってさえいないのに、何故。
僅かに残った理性が疑問を持っている。
だが一度火をつけられた体は快楽を貪っていた。
左手を胸に右手を陰核を刺激して手早く自らにトドメをさす。
「うあッ……あッ……駄目、イクッ……」
体が一瞬でのけぞり、快感で頭が真っ白になる。
だが余韻に浸るまもなく円は己を取り戻している。
裸のまま服を拾い上げ符を取り出し楓に投げつようとする。
―が、立ち上がった時点で膝が落ち、再び地に伏してしまう。
「……くっ……」
拳が乱れ飛ぶ。刃が空を切り裂く。
二つの獣が月下に舞っていた。
斬鬼衆の御影義虎。七妖会の億月楓。
切り結び離れ、そして再びぶつかり合う。
その舞い踊るような闘争に、もう一匹の獣が飛び込む。楓の遣い魔だ。
彼――御影義虎の動きを止めようとする。
当然、回避しようとする。その隙を逃さず、彼女の眼が紅く染まる。
邪眼の行使。よろめく彼に、一人と一匹は一目散に逃走に移った。
唐突に始まった闘争は、唐突に戦闘は終わっていた。
彼が呪縛から開放された時、吸血鬼と遣い魔は消えていた。
痕跡を辿る気力はなかった。
「手酷くやられたな、槙。だから単独行動は控えろと言われるんだ」
ほぼ全裸で蹲っている戦友に、相変わらず素っ気無い声を掛ける。
内心までは定かではないが。
「……助かった、ありがとう……。」
安心感からぐったりと体を伸ばす。無論、うつぶせにだ。
この男が居る限りどんな妖魔が現れようと平気だ。
そんな事さえ思ってしまう。
「人が殺されてた。放って置けなかったんだよ。……すまない。」
この前せっかく忠告してくれたばかりなのにまた世話になる。
気恥ずかしさと悔しさから目を合わせずに謝罪する。
ふーっと溜息を一つついて恩人にもう一つ、いや二つ甘える。
「……服……。ちょっと貸してくれないか。
それと魔符を4枚破壊されたんだ。動けないんだ……。」
「ったく、本当にお前らは・・・・」
ガシガシと頭を掻く。「お前ら」と複数形なのは、
他の斬鬼の者も含めているからだろう。
「後方支援系のお前が俺に助けられてどうするんだよ。
立場が逆だろうに普通は」
ブレザーを脱いで、彼女の身体に掛けてやる。
そして携帯で知り合いに連絡を取る。
「少し待ってろ、風見ヶ原の知り合いに連絡を取る」
後ろを向いて、小声で電話先の相手と何やら交渉している。
時折僅かに音量が跳ね上がる。貸しだの、借りだの、相殺だの、
そんな単語が彼の口から出てくる。難航しているらしい。
やがて彼は通話を終える。
「話はついた。とりあえず着替えを借りにいくか」
手を差し伸べ、捕まるように促す。
「はは……。全くそうだ。その通りだね。」
力なく笑ってブレザーにもそもそと手を通す。
「今度は、必ず私が助けるよ……」
御影が電話している間
ぐったりとうつぶせになったままほかの事を考えていた。
(あの妖魔……恐らく吸血鬼。弱点を探さないと……)
(次は……滅してみせる)
悔しさから決意を新たにしているとどうやら話が付いたらしい。
伸ばされた手を掴むがうまく立ち上がれない。
ブレザーが肌蹴ないように慎重に起き上がろうとする。
「そうしてくれ。俺もいつまた死に掛けるか、わからんしな」
幾度となく死地に立ち、幾度となく死の淵から生還してきた。
それでも、次は死ぬかもしれない。明日のことなどわからない。
それでも彼は戦いを辞めない。
それが、たったひとつの拠り所であるかのように。
そうすることでしか、生きていけないかのように。
上手く立ち上がれない彼女に肩を貸す。
敢えて彼女の状態は考えないようにする。
脳裏で、八雲天音が氷の微笑を浮かべているからだ。
しかも二刀を携えて、今にも切りかかって来そうだ。
倒れたバイクを片手で起こし、エンジンを始動させる。
槙円を後部座席に乗せ、彼は走り出す。
【少しご都合でしたが、そろそろ限界なのですみません】
【こちらはこれにて〆です。ありがとうございましたノシ】
【こちらこそ申し訳ないです】
【またよろしくお願いします】
【おやすみなさい】
【こちらは特に付け足すこともないのでこのまま〆で】
【槙様待ち(?)です】
【初手でえらく時間が掛かってしまったのですが……】
【まだ、いらっしゃいますでしょうか?】
174 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/29(水) 01:36:59 ID:eMyJEk+B
【うっかり寝そうでした……】
【まだ居ますよ。】
【↑色々間違えましたorz】
【あ、申し訳ないです】
【すんません……やっぱストーリーロールは不慣れだorz】
【よろしくお願いしますです】
夜の街角で、追跡劇は続いていた。
それは、ありふれた光景。狩る者と、狩られる者。
狩られる者―――蒼炎に暗がりを惑わせる獣の姿は、常なる人には捉えざるもの。
少女の姿ではない、これが彼女の本性だった。
小型の犬を思わせる、影にも似た獣。その、足が止まる。
夕闇を射てその姿に迫った符が、青い炎に防がれる。
空気を激しく叩いて、閃光が走る。
その力量差は、一見、互角―――しかし。
すでに、勝負はついていた。
判断の誤りに気付いたのは、自らの位置を正確に捕捉して、向けられた敵意を認めた時だ。
咄嗟に鬼火を放ち、続けて放たれた符、それ自体を、防ごうとも、接近されてしまえば、
彼女は人を傷つける手段を持たない。感覚への干渉を怠った―――
死角と見えた場所を抜けられる、と断じた。それが悪手。
相手の、霊的感覚の鋭敏さは、認識していた筈なのだ。
今回の追っ手はヒトにしては鋭敏な感覚の持ち主で、
実体を一度掴まれてしまったら、勝ち目は無さそうだ、と彼女は判断していた。
何より、こちらは妖力に余裕が無い。ゆえに、捉えられたら、逃げ切れなければ、負ける。
結界。針にも似た苦痛が、獣の姿、その半径数メートルを捕捉する。
逃れる余力は、最早残っていない。脳髄を揺るがす衝撃。
「……っ、あ」
獣の姿が、解ける。
座り込んでいるのは、古風な臙脂のワンピースに身を包んだ、幼げな少女だ。
【すいません、待ってたら眠気が限界に……orz】
【これ書いたら凍結で良いですか?(涙)】
夜の街。
犬を追いかける少女。
それだけならば微笑ましいものなのだろうが―
追うは退魔師、追われるものは殲滅指定された元・式。
狩りと言うべきか。それとも殺し合いか。
双方とも戦闘が専門でないため高度ではないが、激しい攻防を繰り広げていた。
殲滅指定された危険な者を斬鬼として逃がすわけにはいかない。
軽快に駆けながら符を取り出し、飛ばす。
妖魔の動きを封じ、滅するはずのソレは張り付く直前に燃え尽きてしまう。
これでもう何度目か分からない。残りの符ももう少ない。
先の闘いの後遺症がまだ残っていて、魔符は使えない円である。
ハナが見覚えのある通りに逃げ込むのを見て会心の笑みを浮かべた。
「……捕らえた。」
その声と同時に街の各所に伏せていた符の一部が発動する。
淡い光りが獣を包みこみ、その動きを封じる。
人にあらざる者が通ると反応するトラップを仕掛けていたのだ。
圏を構えて歩み寄る。
「……狐が化かそうとしてるのかしら?」
>>177 【なんと謝ったものか、時間取りすぎたこちらの責任ですので……】
【数日内、早いうちにやれたらいいかもしれません】
【最寄だと何日くらいになりますか?】
【今夜12時30ですねぇ…】
【申し訳ないです】
>>179 【了解しました、ありがとうございます】
【それでは、その辺りで待機させていただく方向でお願いします】
【了解です】
【それでは……】
【ちょっと早いですが、待機してます】
183 :
槙円:2006/11/30(木) 00:22:25 ID:2f5GXRwr
【トリップ無し失礼します。只今帰宅中ですが、少し遅れそうです。申し訳ございません。】
【了解しました、お待ちしています】
185 :
槙円:2006/11/30(木) 00:42:47 ID:2f5GXRwr
【先に書いててもらえますか?前回私が最後だったと思うので……】
【帰宅しました】
【ではでは、宜しくお願いします】
淡い光が去った後、面前に立つ退魔士、そして構えられた圏を睨みつけるのは漆黒の瞳だ。
人の姿を得た妖に、人としての思考が、言葉が戻る。
「―――迂闊」
まず、出た言葉がそれだった。
「虎ばさみに掛かるだなんて。人里に在れば勘も鈍る、ということかしら……?」
その身を捕縛しているのは単純な術式。そこから脱すること自体は相応の消耗を要求されるとはいえ、
不可能ではない、と彼女は判断する。しかし。
接近を許した。最大の問題はそれだった。未だ「使鬼」である彼女は、『人を』傷つけることができない。
構えられた圏―――相手は物理的な攻撃手段を持っており、こちらは持っていない。
対等に渡り合うことは、それだけで難しくなる。
そして。逃げ切れると踏んだ矢先の罠。
―――まだ、仕掛けられているとしたら、危険。
直感が、そう告げている。
圧力に逆らって、彼女は膝を立て、身体を起こす。
『……狐が化かそうとしてるのかしら?』
少女の姿へのものであろう、相手の言葉に、唇を歪める。
「術を使う者が相手ならば、あちらの姿のほうが逃げやすいと踏んだのよ。貴方が周到だったから、
上手く行かなかったけれど―――」
両の手を広げ。
「化かしている、のではないわ。今となってはこれもまた、ハナの現し身のひとつだもの」
目の前に立つ退魔士の姿が、あらためて認識される。
その姿を認めてみれば、人としてはまだ幼い。熾烈ながらも捻りの少なかった、その攻撃―――故に、
彼女はトラップを見落としたのだが―――戦いの場に立った経験は、いかほどか。
その圏を構える姿勢に、不意に、好奇心が働いた。
「あなたは、手の中のソレを使って、ハナを殺めるつもりかしら?」
反応を斥いながら、声を掛けてみる。
漆黒の瞳が、蒼炎と同じ色の光を淡く帯びた。
この狐は数百歳だという。
その狡知に引っかかるわけにはいかない。
油断無く圏を構えて詰め寄る足は、だがハナの行動によって止まる。
(あの結界の中で立つか……)
罠に仕掛けた結界はさほど強力なものではなかったが、
それでも想定していたハナの強さでは動くことさえままならないはずであった。
(魔符……使うか!?……しかし……)
先日の吸血鬼に簡単に撃破され、かつ重傷を負わされた事から
魔符の使用は躊躇われた。
突然投げかけられた自分を殺すのか?という疑問。
当然だ。殲滅指定のものを逃す退魔師などいない。
だが本当にこの相手は殺されるべきなのか?と、円は疑問に思っていた。
何故、式を外れたのか。何故。
その想いとは別に口にだしたのは作られた冷たい口調、台詞。
「ええ、そうよ。」
返答の冷たい口調を、黙して受け止める。
そこに表情の変化は無い。
―――ヒトの姿をしたものを相手にすると、人は迷いを大きくする。
そこで迷うということは、未だ、彼女は退魔士になりきれていない、ということだ。
相手の口調にある匂い。戸惑い。それらを、彼女は嗅ぎ取る。
だから、彼女は目の前の少女へ、行使しかけた妖力を身の裡に収めた。
瞳に宿った蒼い光が、すぅと消える。
「迷うの?」
茶化すことなく問いかける口調で、彼女は告げた。
片腕を持ち上げると、霊的な檻はふわりと揺らぐ。
術が簡素だったから動けたとはいえ、容赦の無い相手であれば、
数刻前には、妖力を封じられるか、あるいは完膚なきまでに潰されるか。
彼女は致命的な自体に陥っていただろう。
「ハナがもっと強かったら、あなた、もう、命を落としてる」
……もっとも、それは彼女も同じなのだが。
―世の中の事が本当に全部善と悪ならどれだけ楽なんだろう。
尊敬する先輩の言葉を今も強く覚えている。
自らを絶対の正義、教えのようにそれに敵対するモノを絶対の悪として考えるには
妖魔も人も、円の少ない経験で見てきた数如きでさえも多種多様であり過ぎた。
(もっと分かり易い程凶悪で危険な相手ならいいのに)
―他の斬鬼なら鼻で笑うかもしれないこの悩みに、円は恥じらいを覚えた。
いつもいつも考え過ぎてしまうのだ。
自分の間合いまであと5歩。そこで円の足はハナの言葉にとめられた。
『ハナがもっと強かったら、あなた、もう、命を落としてる』
ハッとした。今までも何度も死に掛けている。
この甘さがいつか本当の命取りになるやも知れない。
さて、この相手は殺すべきか?逃がすべきか?
もう一歩近づく。
圏に光を付加させる。淡く輝く円。
魔なる物が忽ちその組織を犯す毒になるだろう。
中途半端な気持ちのままもう一歩。
彼女が面前の退魔士を攻撃していないのは、単純に「できない」からだ。
逃走に万全を期すための、「相手を行動不能にする」という手段が、彼女には取れない。
術から逃げ出すだけなら、不可能ではないのだが、一度の捕捉を許してしまった以上、
終わりのない鬼ごっこを続けるのはいささか分が悪かった。
追跡の任務にあたりながら、こうして「迷い」を見せる退魔士は多い。彼女が追い詰められた時にしばしば
人の形を見せるのは、経験知に基づく行動である。
彼女は積極的に狡知を駆使する「性格」ではない。
すべては、直観上の判断であり、そこにはしばしば感情が介入する。
語りかけたのは、確実に逃げ延びる状況を作り出すための選択であると同時に。
同時に、彼女の個人的な心情によるものでもあった。
「以前ね、この街で会った退魔士のひとがハナに『お前は殺すか』と問うたのよ」
滔々と語る。
「ハナが、人を望んで殺すなら、ハナを殺すと。……変な人でね、父様と似たようなことを言ってる人がいる
なって。そう思って、腹立たしいから、ハナは答えなかった」
面前の少女の手元に、力が集まるのを感じる。得物を構えてはいるが、そこにまだ、明確な敵意が無い。
「ハナは、殺さないわ。理由(いみ)が無いのなら……答える機会は、どうやら無くなってしまったけれど」
相手の様子を伺う。
「あなたは、何のためにハナを殺すの?」
彼女は知っている。
――― 『退魔士』は、迷う。
彼女を見出し、育てた人物もまた、かつて退魔士の肩書きを持っていた人間だった。
それは、数多ある退魔組織の多くに、「和平派」などという存在は影もなかった頃。
迷い、孤立し、人間同士の諍いに巻き込まれ、命を落とした
……終いには、自らが目を掛けた妖魔に命を奪われた。
だから、迷う彼らの姿に呼び起こされるのは僅かな苛立ちだ。
彼らは、何の為に戦っているのか?答えを持たぬ者の、いかにも多いこと。
だとしたら、自分は、何から逃げているのだろう?
―――たとえば、報復の為に彼女を殺す人間がいるとしたら、それは。
彼らなどではないはずなのに。
答えを待っているのか、仕掛けてくるのを待っているのか。
少女はその無防備な姿勢を崩さないままに、淡く光る円の裡に立っている。
「……―それが役目だからよ。」
さらに強力に圏に力を込める。
(人を害す妖魔を倒すのは確かに必要だ。だけど―……)
だけど、この相手は殺すべきなのだろうか。
「あなたは殲滅指定を受けている。私はその命令に従わないといけない。」
(本当にそれでいいの……?)
(私は、命令を黙って受けているだけだった……それでいいと思ってた……)
円は迷うことになれては居なかった。
苛立ちが圏に込める力を強くし、圏は眩しい程に輝きだす。
「貴女を殺すわ。それが命令だもの。今の私のそれが答え」
迷いを捨てるために距離をもう一歩詰める。
あと一歩。あと一歩詰めれば圏が届く。迷いごと相手を斬りすれてば良い。
「貴女は…―何の抵抗もしないで私に斬られるつもり?」
「……もう、遅いのよ」
化かす時に、化かすと告げる莫迦はいない。
だから彼女は、悪戯っぽく、笑う。邪気のまるでない笑顔で。
"銀ト金トデ掛ケタ橋"
鈴を振るにも似た声音が朗、と空気を振るわせる。
"一晩タッタラナクナッタ。ミンナ、ミンィナ、盗マレタ"
がたん、と、笑み交じりに少女が告げる。
円の術が形成していた力場が、蒼い光に塗り替えられた。
詩が途切れると共に、四散する。
狐精の力が強い、のではない。
元から簡素な術式が、異なる力によって、時間を経て解かれた、それだけの現象。
同時に、雲隠れしていた月の明かりが両者の姿を照らした。
妖魔の少女は、朗じた喉元に手を当てたままの姿勢で、圏を構えて迫る円の姿を見ている。
招く、ように―――その瞳が、円を捉えた。
(遅い?何が?)
そう思った瞬間に耳に聞こえてきたのは玲瓏な声に乗った奇妙な歌。
瞬間、結界が切れる。
「嘘……?……ッ」
もはや迷うことは無かった。
結界をといて逃げるであろう敵を斬る。
圏を構え、最大の速力で迫ろうとしたが―足が動かない。
否、動かないのは全身だ。
視線が、いや、体の全てがハナの黒い瞳に張り付いて動かない。
【眠気で元々無い文章力がさらにガタ落ちしているような……orz】
【また凍結……でよろしいでしょうか(涙】
【私はこれでいったん落ちます……】
【本当にごめんなさい】
【避難所の待ち合わせスレで再開日程を決めましょう】
【了解ですー ていうか、反応遅れてスミマセン】
【いや、ものっそい遅筆にお付き合い頂いてしまって】
【締めるつもりで書いてたらなんか益々長くorz】
【こんにちは】
【今度専用でイベントをしよう思っているので】
【興味のある方は一度覗いてみてください】
【祭りの前だが、しばらく待機してみますね】
(´・ω・`)
【待機解除。落ちます】
【お久しぶりです】
【少し暇が出来たので着てみました】
【お相手よろしいですか?】
【反応早いですね……(汗】
【大丈夫ですけどリミットが来る可能性があります】
【書き出しそちらからして頂ければ対応します】
【了解しましたでは早め早めに回して行こう。】
その野原には白い昆虫のような妖が異常に発生していた……。
多くの人が犠牲になり、ついには何人かの退魔師さえもその餌食となる。
それらは一匹の妖の分身。
野原に罠を張り通りかかる者を喰う。
今日もまた……
夕暮れの野原。
陽の残滓を反射して短剣が舞う。
「はあ、はあ、……」
もう何匹倒しただろう。再現なく出現する化け物達。
打ち抜かれ切り裂かれると霧散してまた新たな妖が発生する。
弾丸は尽き、退魔使用とはいえその短剣はもはや切れ味はなくなっていた。
「ぐっ!?」
十重二十重に包囲され、背中から妖魔の一撃が遂に女を捉え始めた。
普段着の白いパーカーは毒々しい妖魔の血だけでなく赤に染まり始めた。
ドサッ……。
ついに力尽き倒れ伏す。
かなり粘られたが、女は倒れた。
隠れた本体は分身達に次の指令を出す。
動きを完全に封じその体を犯し尽くせ、と。
白い化物達はあかねの体に次々と媚薬の効果のある成分の体液を吐き出し、さらに触手によって縛り上げていく。
胸を、ふとももを、終には股まで舐めまわす触手。
疲労と苦痛によって混濁した意識にも自分が何をされているかは分かった。
これがこの妖魔の『食事』なのだろうか。
拘束された部分から体が熱く火照ってくる。
「あ、あっ……。ああ……」
成す術もなく全身を刺激され蜜が溢れては妖魔に吸い取られていく。
(誰がこのまま……!)
口を入った触手は噛み切り、吐き出すあかねだったが……
この妖にも怒りはある。
獲物に抵抗されて怒った妖は分身達に次の指令を出す。
服を剥ぎ取り、血管から直接体液を吸収させよ、と。
次にある程度傷めつけよ!
さらに最も太い触手をあかねの秘部に挿入させあかねの体液を吸い取り始める!
グチュ……グチュ……。
突然触手たちの動きが変わる。
「くっ……」
服を剥れ、霰も無い格好にされていく。
その恥かしさを感じる間もなく全身を苦痛が襲う。
血管に管を刺していて、そこから何かを注入しているようだ、と感じた瞬間、
「ひッ…ああッ……やだ……こんなぁ」
全身がさらに熱く疼き甘い声を出し始めてしまう。
「うああぁッ……!」
化け物の容赦の無い攻撃が全身を覆う。
鮮血が舞い、徐々にあかねから力が抜けて行く。
「…うあ…あっ…あぁっ…ふぁぁ…」
痛みさえも快楽に換えて化け物の体液は体を犯し尽くしていく。
「んッんんんッッ!あ……はあッ」
太い触手に貫かれ天を仰いで絶叫―いや嬌声を上げる。
グチュグチュ……
絶えず触手を出し入れしながら全身を責め尽くす。
奇怪な形ペニスが現れ太い触手に取って替る。本体が現れたのだ
(イケ……)
触手の動きはいよいよ激しくなる。
さらに止めとばかり極細の触手が神経に絡み付き快楽を直接流し出し始めた!
同時に種を体内に流し込む!
「くはあッ……はあ…はッ…はあぁ…」
責めに屈し快楽を貪るが次に現れた物を見てぎょっとすると同時に察した。
(こいつが……本体……でも……どうして……?)
「ひうぅぅうッ!?」
本体に侵入され、同時に激しく動き出す触手の動きに耐えることなど出来ないのに。
(だめだ……イク…ッ)
「うッ……ああぁッ」
同時に放たれた止めと種。許容範囲をはるかに超えてあかねの意識を遠くに
飛ばしてしまう。
「……かッ……はあぁ……」
意識を失いだらりと触手に身をまかせてしまう。
【次で〆ます?】
ぐったりとした女。
だが本体は何度も何度も種を植え付ける。
痙攣さえも無くなりかけた頃になってようやくあかねを離し、巣に放り込む。
そこには同じように犯され尽した女が何人も倒れていた……
【ありがとうございました。こちらは〆で。リセット……にしてください、申し訳ないです】
【・・・あ、はいではリセットで。昼間からどうもありがとうございました】
【それでは】
ある寒い日の放課後のことである。都立白清高校の某所にある『執務室』。
そこは代々の斬鬼衆支部長が、執務を執り行ってきた重要な場所である。
だが、現在そこで書類の山と格闘しているのは、男装の麗人ではない。
金髪の凶戦士、御影義虎である。
――いやぁ、実にいいタイミングだね。
樹紅羽が晴れやかな声で言った。第二会議室でストーブに当たりながら、
三人で雑談していた時のことである。彼女が言ったのは以下の内容である。
――今から所用で『法月退魔士事務所』に出かけなければならない。
――だが、書類が溜まっている。だから代理でやってくれないかね?
・・・いつものことではあった
三人でノルマを決め、大量の書類にサインや必要事項を記していった。
真っ先に仕上げたのは大恩慈零である。
『お疲れー、また明日』
薄情にもさっさと帰った彼女を、後日締めると決めた。
二十分後に日ノ本薫も仕上げた。
『めんご、限界で手伝えないから頑張ってくらはいねー』
物凄く適当な挨拶を残して帰っていった。
かくして、彼だけが残った。
「はっ!せいっ!とうっ!!」
闘気を纏った回転蹴りを妖魔に当てる。
打撃と霊撃により四散する妖魔だったモノ。
「作戦終了。これより本部に戻ります。」
報告と装備のチューニングの為に本部へと向かう。
本当は、寒さと少々の飢えをしのぐ為もあるのだが・・・。
片付けを済ませ、シャワーを浴びる。
少々色気に欠ける己の体型を気にしながら早々と着替える。
「そうだ・・・、支部長に手伝い頼まれていましたね・・・。」
――もし、時間が空いたら少々、書類の整理を手伝ってくれないか?
疲れた体にはこたえるが、支部長の苦労を思えば・・・。
そう、考えると執務室へと足を運ぶ。
軽くノックをして扉を開けると、そこに居たのは支部長ではなく金髪の少年だった。
「あれ?御影く・・・ん?支部長はどこかにいかれましたか??」
その体格に似合わないデスクワークを続ける少年に問いかける。
今年度も色々と忙しかったが、そろそろ終わろうとしている。
だがその前に、来年度に向けて準備しなければならないことがある。
この書類もその一環だと思えば、疎かにはできない。
じっくりと丁寧に書類に眼を通す。代理のサインをする。
その時、ドアの向こうに気配がした。
此処は関係者以外には到達できないし、認識もできない『執務室』である。
薄情者の戦友が戻ってきたのか、それとも・・・
ノックの音がする。返事を待たずドアが開く。
入ってきたのは小柄な少女。風間莉々だった。
夏の終わりに白清支部に戻ってきた、斬鬼衆の一人だ。
『あれ?御影く・・・ん?支部長はどこかにいかれましたか??』
「風間か・・・支部長なら出かけたぞ」
法月退魔士事務所に言った旨を伝え、執務に戻ろうとする。
だが、 もう一度彼女に視線を戻し、じっと見つめる。
『気』が消耗している。恐らく戦闘の後なのだろう。
「そこに座れ、茶でも入れてやる」
ソファを指し示し、自分は紅茶の用意をする。
金髪の戦友の説明によると支部長は外出中との事。
それならば出直すか・・・と、思うと意外な一言。
『そこに座れ、茶でも入れてやる』
疲れているし、断る理由も無い。
男性にお茶を入れてもらうのには少々恐縮するが、言葉に甘えさせてもらう事にする。
「気を使わせてすみません・・・。っと・・・、ははぁ・・・、なるほど・・・。」
彼が格闘している相手に目を向けると、それはある意味彼にとっては下手妖魔よりも強敵かも知れない。
書類に軽く目を通すと正確無比、驚くべき速度で事務処理をこなして行く。
以前、戦力として役に立たなかった頃は、この手の仕事をやる事が多く
他の斬鬼衆に比べて慣れている為に手際よくこなす事が出来る。
「あぁ、この書類ですね・・・、うん・・・、あぁ、御影くん、すみませんけど向こうのファイル取ってくれませんか?」
金髪の戦友に指示を出しつつも、別のファイルを手に取り前例を比較して効率よく作業を進める。
その早さ、実に先程の戦友二人を足してもまだ足りない程の早さである。
「御影くん、こちらの一級書類は代理サイン不可なのでまとめておいて下さいね。」
ズンッと、書類の束を机の端に寄せる。
備え置きのインスタントのティーパクを白磁の器に入れ、ポットのお湯を注いでゆく。
インスタントでもきちんと淹れれば美味しいと主張する支部長だが、生憎とそのきちん
と淹れる方法を彼は知らない。
ふと視線を戻すと、風間莉々がもの凄い勢いで執務をこなしている。
三人で協力してやるより迅速で、的確な動作だった。
紅茶を彼女の前に差し出して、指示通りに動く。
「悪い、助かる」
あっという間に片付いてゆく書類の山。速さの秘訣は処理能力の的確さもさることながら、
何よりも手馴れているという点だ。支部長もいつもこのくらいの速さで執務をたったひとりで
こなしてゆく。
「次の支部長はお前かもな」
ひと段落ついた頃、彼はそう呟いた。
二人きりの部屋なら、彼女にもきちんと届く音量だが。
トポトポとお湯が注がれ、紅茶の甘い良い香りが部屋を満たす。
戦闘時とは全くちがう穏やかな・・・、大型の動物にも似た気が近づく。
台詞もいつもは聞かない様な感謝の言葉を述べられる。
あまり男性にそう言う事を言われた事がないので少々同様しつつも作業を進める。
「いえ、気にしないで下さい。これも任務の一つですから・・・。」
以前、友人に同様すると耳が赤くなると言われた事がある。
今もそうなっていないか心配だ・・・、もし指摘されたら寒いからと答えよう。
「御影くんは書類をまとめてくれれば大丈夫です。後は私が・・・。」
ペンと書類を揃える音だけが響く室内で、彼が意外な事を言う。
『次の支部長はお前かもな』
ガタッと席を立ち、顔と耳を赤くして答える。
「そ、それはありえない話しです・・・!あるとすれば事務長・・・です。」
我に帰り再び作業を続ける。
「そういえば先日、天音ちゃんの話しをしたら慌てていましたが・・・、彼女と何か気まずい事でも?」
悪気なく金髪の獅子の心臓をえぐる一言を発する。
現在の白清支部が直面している問題。それが次期支部長の選任である。
正直、樹紅羽ほどの指導能力、及び執務能力と、何よりカリスマを持っている者は、
現在の白清支部には存在しない。戦闘能力はこの際問題ではない。
全体を見渡す視野、冷静な判断力、中立的な思想。
それらを兼ね備えている者が支部長に選ばれるのが常である。
『三国の乱』にて前支部長が死亡し、暫定的に樹紅羽が戦の指揮を執った。
見事戦乱を乗り切り、その功績を称えられそのまま彼女が支部長になったのが
去年の秋頃だ。誰も異を唱えなかった。
現在の白清支部には、それに相応しいものがいない。
全員一長一短だからだ。
――重藤柚紀なら或いは・・・・
彼は密かにそう思っていたが、その彼はもういない。
「本気だぜ、俺は。大体俺や他の奴が務まると思うか?」
動揺しまくっているのが簡単に理解できる彼女を他所に、自分用の
紅茶を淹れる。
『そういえば先日、天音ちゃんの話しをしたら慌てていましたが・・・、
彼女と何か気まずい事でも?』
「あ、まね・・・・?」
今度は自分が動揺する番だった。さて、どう答えたものか。
実は八雲天音との付き合いは知られている。薄情者の戦友二人にはだが。
先日酒の席で問い詰められ、渋々白状してしまったのだ。
次期支部長問題。
急に自分に話しを振ってきたのは、からかう為ではない事は分かる。
『本気だぜ、俺は。大体俺や他の奴が務まると思うか? 』
確かにそれに対して完全に否定は出来ない。
だが、それは自分も含めての事である。
「いずれは決めなければいけないでしょうね・・・、誰かに・・・。」
思い当たる所では日ノ本薫あたりであろうか?
だが、それも決定的と言う感じもないので黙る事にする。
さて、八雲天音の話しを振ると以前の様に変な声を絞り出す。
一体これはどう言う事なのであろうか??
「えぇ、天音ちゃんです。天は二物を与えていますよね・・・。」
美と勇を兼ね備えた存在。
自分には到底真似の出来ない存在である。
「もしかして彼女に思いを寄せているとか・・・でしょうか?
もし、そうなのであれば今後の任務にも影響がでるかも知れませんので教えて頂きたいです。」
半分は本当、半分は興味深々だからである。
態度や行動は真面目にしていても、所詮年頃の少女には代わり無い。
「槙 円あたりも悪くないが、微妙だな・・・・」
微妙に何処か抜けている眼鏡の符術士を思い出す。
先日、風見ヶ原の某所で女妖魔に手篭めにされかけていた
場面に偶然遭遇してしまった。お陰で彼女の裸体を見てしまったが・・・
それは別の話だ。精神衛生上よくないのでそういうことにしておく。
「俺は切り込み役が性にあってるからな。まあ、いずれ決まるか」
ため息をひとつ。こればかりは此処で思案していても仕方ない。
現支部長にも考えはあるはずだ。
『えぇ、天音ちゃんです。天は二物を与えていますよね・・・。』
彼女の言葉に含みはないだろう。
八雲天音が半陰陽――両性具有だと知っているはずがない。
単に、天音の勇猛さと美しさを評価しているのだろう。
『もしかして彼女に思いを寄せているとか・・・でしょうか?
もし、そうなのであれば今後の任務にも影響がでるかも知れませんので教えて頂きたいです。』
確かに想いを寄せていた時期もある。だがそれは、あくまで憧憬である。
決して手に届かない物を見ている時のような感覚で、ずっと彼女を遠くから見ていた。
「・・・・・いや、ぶっちゃけると付き合ってるんだけどな、俺と天音」
正直にぶっちゃけてみた。隠すのにも疲れていたということもある。
何より、変に話が広まるよりは余程いい。
あの時、薫は我が事のように喜んで祝福してくれた。
じたばたと暴れる零を羽交い絞めにしながら。
『槙 円あたりも悪くないが、微妙だな・・・・』
「えぇ・・・。」
正直彼女とは殆ど面識が無く、コメントが難しい所だ。
『俺は切り込み役が性にあってるからな。まあ、いずれ決まるか』
「えぇ・・・。」
適当に返事をしているわけでは無いのだが、いずれもコメントが難しい話しだ。
だが、彼の言う通り支部長にも色々考えがあるのだろう。
『・・・・・いや、ぶっちゃけると付き合ってるんだけどな、俺と天音』
先程の問いに対する答え。
正直、一番予想をしていない答えが帰ってきたのだが・・・。
余り驚くのも問題の様な気がするし、無関心と言うのも人間味に欠ける。
さて、何と言えば良いのだろうか・・・。
「そ、そう・・・なんですか?へ、へぇ・・・、ちょっ、ちょ、ちょとー以外ですた。」
立場が逆転、こちらが変な日本語使いになってしまった・・・。
「ま、その・・・、任務に支障が出なければ良いのではないでしょうか・・・。」
勉強、退魔、恋愛。
その三足の草鞋を履くとはなかなかの猛者だ・・・。
自分には真似できない事が増えてしまったと、紅茶を飲んで溜め息を一つ。
『そ、そう・・・なんですか?へ、へぇ・・・、ちょっ、ちょ、ちょとー意外ですた。』
変な日本語になる風間莉々。中国の陰陽機関『龍』で一年以上修行していた所為で、
日本語を忘れかけていたのかも知れない。
『ま、その・・・、任務に支障が出なければ良いのではないでしょうか・・・。』
「了解。こちらからも頼むが、下手に言い触らさないでくれ。
薫と零は知ってるけどな」
動揺している彼女に対し、無難に話を纏めにかかる。
――八雲天音が男女交際をしている。それも御影義虎と。
そんな話を天音ファンが聞いたら、恐らく暴動が起きるだろう。
学校という閉鎖的な社会で、そのような騒動に巻き込まれるのは厄介だ。
彼はそれを望まないし、八雲天音もそれを望まないだろう。
「お前も、色恋のひとつもしてみたらどうだ?任務に支障のない範囲でな」
お返しとばかりに薮を突付いてみる。鬼と出るか蛇とでるか。
『了解。こちらからも頼むが、下手に言い触らさないでくれ。
薫と零は知ってるけどな』
「その点はご心配なく・・・。斬鬼衆の中では私の様な注意でおさまるでしょうけど・・・。」
学内での彼女の評判、そして彼の評判から察するに恐ろしくて言えたものでは無い。
「私も無駄に学内の平和を乱したいわけではありませんから。」
一呼吸置くと再び作業を再開する・・・が、しかし。
『お前も、色恋のひとつもしてみたらどうだ?任務に支障のない範囲でな』
言われるかも知れない・・・、予測をしていたわけではないが言われてしまった・・・。
「そうですね・・・、自慢じゃありませんが惚れた事も惚れられた事もありません。」
興味がないわけでもないが、祖父母の言っていた
――恋愛は縁起物
その言葉を信じるしかなかった。
「ま、戦士としても女としても未熟ですからね。」
『そうですね・・・、自慢じゃありませんが惚れた事も惚れられた事もありません。』
確かに自慢にならない。だが、学校で生活していれば誰かを慕う心や、誰かに惹かれる
気持ちは自然と湧き上がってくるものだ。それが恋愛に直結するとは限らないが、恋に
落ちる切欠にはなるだろう。己の経験から彼はそう思う。
「連れ合いはいた方がいいと思うぜ」
自分の紅茶を啜りながら彼は言う。
こんな話は正直苦手なのだが。それでもいい機会ではある。
「俺が一年の時、今の支部長が言ってた。『大切な者を守ろうとした時、人間は本当に
強くなれるのだよ』ってな。それに卓美先輩もこう言ってた。『誰かのためにと強く思う
ことが、本当に強くなるための第一歩なんだよ』って」
本当に強くなるために。本当に強いということ。
自分の為にしか刃を振るえない己には、到底到達できない境地である。
その種の強さとは、正反対の位置にいるのが御影義虎という退魔士である。
「風間、お前は何の為に戦う?
何故力を求め『龍』へ行った?何故、妖魔を狩る?」
いつしか真剣な眼差しで彼女を見つめる。
彼の話しに耳を傾ける。
それは恋愛に関する事であり、万人の護り刀である斬鬼衆の思想でもある。
「連れ合い・・・ですか・・・。難しいですね。」
耳を傾けながらも手は止めずに動かす。
「正論ですね、実際に検出されているデータにも防衛、守備の戦いの方が
戦績は良いみたいです。」
黙々を手を動かしながら返事をする。
『風間、お前は何の為に戦う?
何故力を求め『龍』へ行った?何故、妖魔を狩る?』
彼の言葉にその手を止め、立ち上がり背のびをする。
ある程度のボディラインが浮き出るものの八雲天音のそれには程遠い・・・。
「一言で説明するのが難しい問いですね。」
新たに紅茶を入れると自分と彼のカップに注ぐ。
ちょっとしたコツだが彼の入れたそれとは風味が少々異なる。
「誰かがやらなきゃいけない事だと思っています。退魔業って。
その為に選ばれたのに無力な自分を呪い『龍』に渡りました。
そして、両親や友人の命を奪った、そしてこれからも奪おうとしている妖魔は憎いから駆逐します。」
真剣な眼差しに見合った眼差しで答える。
「って、それは表向きの答えですね。」
先ほどの表情とはうって変わり緩やかな表情で答える。
「正直分かりません。目の前にある山を一つ一つ登っているだけです。
そうすれば何か分かる気がしているだけです。
って、適当にやっていると思われると嫌だから言わないでくださいね。」
ペロッと舌を出してウィンクをする。
その表情はその年齢に相応しい表情だった。
彼女の手により新たに注がれた紅茶。
静かに啜ってみる。正直同じティーパックの味ではない。
支部長の淹れたのと近いな・・・・と彼は聞こえないくらいの声で呟く。
『誰かがやらなきゃいけない事だと思っています。退魔業って。
その為に選ばれたのに無力な自分を呪い『龍』に渡りました。
そして、両親や友人の命を奪った、そしてこれからも奪おうとしている妖魔は憎いから駆逐します。』
視線を絡ませながら、彼女の話に耳を傾ける。
それは至極平均的で、至極当然に聞こえる意見。
私怨と憤怒で戦っている自分よりはマシではあろうが。
『って、それは表向きの答えですね。』
一転、彼女の表情が穏やかになる。
どうやら本音は別の部分にあるようだ。
『正直分かりません。目の前にある山を一つ一つ登っているだけです。
そうすれば何か分かる気がしているだけです。
って、適当にやっていると思われると嫌だから言わないでくださいね。』
それは酷く幼いとさえ言える意見。曖昧でとりとめがない夢想。
けれど、むしろそちらの方が納得できるし、何より胸に響いた。
愛らしい仕草で舌を出しウィンクする彼女。照れ隠しだろうか。
「・・・そうか」
素っ気無く呟く。これは毎度のことである。
だが、冷たくはない。これも毎度のことではある。
「もうこんな時間だな・・・・そろそろ帰ろうぜ。
帰りに何か食ってくか?」
書類を支部長のディスクに置き、帰り支度を始める。
【そろそろ〆ますか】
素っ気無い彼の返事だが、嘘や冷たさは無い。
おそらく不器用なだけなのであろう。
少しだけ、あの八雲天音が惹かれた気分が分かる。
「そうですね・・・、今日は終わりにしましょうか。」
食べ物の話しをされると余計に腹の虫が騒ぐ。
「今美味しい屋台のラーメン屋が出てるんですよ。
味の方はインターネットと私の鼻で検索済みです。」
荷物を整理しながら淡々と話しを進める。
最早、彼には何処に行くかの選択の予知はなさそうな勢いで。
「あ、天音ちゃんには秘密にしておきますから、ご心配無く。」
もう一度ウインクをすると、軽やかに執務室を飛び出した。
さて、屋台についたらもう少し二人の進展具合を聞く事にしよう。
【それではこちらはこれで〆させていただきます。】
【遅レス、駄文にお付き合いいただきありがとう御座いました。】
【また機会がありましたらよろしくお願いします。おやすみなさいノシノシ】
「へぇ、屋台か。偶にはいいかもな」
早々と帰り支度を始める風間莉々。
他の場所へ行こうといえる雰囲気ではない。
別に嫌いというわけでもないから、それでもいいが。
『あ、天音ちゃんには秘密にしておきますから、ご心配無く。』
「・・・そうしてくれると助かるな」
何せ彼女の嫉妬深さは半端ではない。
仕事仲間だから、と納得はするだろうが、いい顔はしないだろう。
この後屋台にて、天音との仲についてあれこれ質問され、精神的に
へこまされるのだが、ラーメンは評判通り美味しかったと表記しておく。
【いえいえ、テンポよくできたと思いますよ】
【それではまたいずれノシ】
【道迷氏待ち】
灰色の空、灰色の雲、そして、いつもと変わらぬ灰色の街。
そんな中、例によって、店と店との間で、何かの書類を読みながらブツブツと呟く影が一つ。
「…該当個体の危険度をBとする、か…。
…Bどころじゃないような気もしますけどね。」
呟きながら、今回の標的を探す……正直、今回の仕事は乗り気ではなかった。
何せ相手が、過去に敗北…しかも、なんていうか、嫌な噂を持っていたりするのだから。
けれど、正直、仕方がない。だって、元とは言え、上司がアレだもの。
「と、いう訳で前回と同じ手ですけれど…。
……引っ掛かってくれますかねぇ?」
『…ソウ願ウシカナイダロウ。』
商店街を歩く人々。誰が誰とも分からぬ雑多。
その中の一人に向かい、影が迫る。以前の時とは比べ物にならないスピードで。
【お待たせしました〜…】
ご主人様の奴隷となってからというもの、恋人の見舞いに行く頻度が減りつつある。
もちろん「仕事」は継続しているし、「材料」は集め続けている。
……しかし、それまでのように熱意を持って打ち込む事がどうしてもできないでいた。
自分の中にある、アンビバレントな感情。
恋人と共に在りたいと願う気持ちと、ご主人様の元で仕えたいと願う気持ち。
そのどちらもを抱えた不安定な存在が、瑞希という一人の人間であった。
(私は……どうしたいのか……どうすればいい?)
心の中で自問自答するが、すっきりした答えは出てこなかった。
いずれは決断を下さなければならない事は予感しているのだが、
果たして自分がどう決断するのかは自分でもわからないだろう。
考え事をしながら歩いていたから、ソレに気付くのは遅くなった。
【遅くなりましたが、よろしくお願いします】
―――該当個体と、水上竜斗と思しき人物との接触を示すような情報が報告されている。
さらに、「斬鬼衆」・御影義虎と該当個体との接触を確認。早急な調査が必要―――。
頭の中で、あの書類に書かれた文を反芻する。
「…最悪だ、本当に最悪だ。」
本音を呟く。正直、余り斬鬼衆とか、物騒なものにはかかわりたくないのに。
そんな事を考えている内に、雑多の中―――目標の足に、影が触れた。
「…OK、掛かったッ!!」
笑いながら、陰が街を侵蝕する。いや、彼女にはそう見えている筈だ。
けれど、変わったのは街では無く、彼女が居た場所。
白から黒へ、現実から虚構へ、そして、『こちら側』から『向こう側』へ―――
引きずり込んだ。此方の世界へ。
「……すいませんねぇ、手荒な真似をして。
いやー、すぐに元の場所にお送りしますので、御容赦下さい。」
『エエ、本当ニスグ済ミマスカラ。』
黒い街。燕尾服と山高帽の男。その右手には黒紫の鋏。
彼女の目の前に立つ一匹と一本。以前彼女に敗北?した奇妙な妖魔。
「えーと、戸田瑞希さんですよね?あの、「漆黒の魔女」の。
ああ、名乗る時は自分からでしたね、失礼。えーと、ワタクシ、世死見道迷と申します。
えーと、既に御存知かとは存じますが、ワタクシ、妖魔をやっております。あ、名刺どうぞ。」
立て掛けた板に水を流すように喋り終えると、軽く礼をし、『七妖会・金妖:世死見道迷』と書かれた名刺を差し出す。
妖魔のくせに、名刺受け渡しにやたら動作慣れしているところは、何か寂しいものを感じさせた。
「――なッ?!」
ふと気付いた時には、もう既に遅く。
どこか見覚えのある空間に、瑞希は居た。
そして、目の前に現れた見覚えのある妖魔。
少し前に遭遇し、何だかよくわからないままに逃げていった妖魔だ。
どこか胡散臭い笑みを浮かべながら謝罪し、自己紹介をする。
その様子を呆然と見つめたのち、はっと正気に返る。
相手のペースに飲まれている事にいらだつが、こればかりはどうしようもない。
「……貴殿もその名で私を呼ぶのか。そこまで大層な存在ではないと思っているのだが」
差し出された名刺を社交辞令的に受け取り、チラリと眺めて懐にしまう。
何せこの街で組織というものにあまり触れる機会がなかったので構図が良くつかめていない。
瑞希が「材料」としてきた妖魔は、幸か不幸か意志を持たない中級以下の妖魔が多かったために、
妖魔の組織というものにも接した事がなかったのだ。
(七妖会……?……少し、調べてみる必要があるか)
とりあえず落ち着きを取り戻して最初に考えたのは、
情報収集という、魔術師にとっては基礎基本となる作業だった。
「それで、七妖会の世死見道迷殿がこの私に何の用だね?
このようなおもてなしをしていただいたのだから、
相応のお礼はさせてもらわねばならないが……」
やや冷たさを感じさせる声色を意図的に作り出し、目の前の妖魔を睨みつける。
さすがに使い魔はすぐに呼べないし、当面の時間稼ぎを兼ねて話をしようと思う。
「いえいえそのような事は。
我が組織においても、貴女の知名度は中々のものですよ?」
―――そう、彼に接触したからね。
続くはずだった言葉を飲み込み、無駄に動きを付けて話す。
この人間は気付かないのだろうか?突然、どうしてフリーの魔術師に、妖魔組織などが接触したのか。
「えーと、今回は仕事でして。時間は取らせませんので、ニ・三質問をしても宜しいでしょうか?
その後は煮るなり焼くなりもうなんなりとしてしまってよろしいので…。」
『エエ、本当スグニ済ミマスノデ…』
妖魔とは思えない程ニコニコと笑いながら、手をこすりながら頼む目の前の妖魔。
標的はどう思うだろうか?多分、「コイツ阿呆か」とか思っているのだろうけど。
…いや、そちらの方がありがたい。今やっている事がとても嫌な仕事だという事少し忘れられるから。
「んじゃその一。
…えーと、使い魔さんの性別は?」
『チョッ!?』
相手の返事も待たず、先手必勝とばかりに問いかける。
我ながら、馬鹿な問いかけ。…嫌だった。どうしても嫌だった。
自分が、巻き込まれる事が。自分の部下が、巻き込まれる事が。
『…道迷。』
「分かりました、分かりましたよ。今度は真面目にやりますって!
…それでは、其のニ。」
妖魔の目から、微笑みが消えた。
「―――水上竜斗さんを、御存知ですか?」
今回の仕事。
戸田瑞希と水上竜斗の接触情報の再調査。
そして、該当個体がもし水上竜斗による操作、または術式に陥っている場合には―――
―――該当個体の捕獲、または 。
【ここで例によって三択です、はい。
@、通常状態で襲い掛かる。
A、羅刹状態で襲い掛かる。
B、発狂して襲い掛かる。
えーと、どれか選んで頂ければ幸いです、ハイ。】
凄みを利かせたつもりなのだが、目の前の妖魔は全く動じた様子がない。
気にならないのか、あるいは気にもされないのか。
底の知れなさに少し不安を覚えたところで、問いが発せられた。
「……ふざけているのか?まあいい、答えてやる。
猫の方が雌で、烏は雄だ。……こういう言い方をすると怒るのだがな?」
ふふ、と苦笑を浮かべながら一つ目の問いに答える。
他愛のない質問だが、警戒は怠らない。
どうでもいいような質問の中に本当の意図を潜り込ませるのは、
軍の尋問などに良く使われる、その筋では割と一般的な手法だ。
そして、二つ目の質問。
笑みを消して放たれた言葉に、こちらも目を細めて一言だけ。
「ああ――よく、知っている」
よくぞそこまで調べたものだ、と内心感心するが、今はそんな場合ではない。
七妖会なる組織が何を自分に求めているのかは今もって判らないが、
迂闊な行動は命取りになりかねないことは十分理解できる。
だから――当たり障りのない答えで誤魔化そうと試みた。
【お好きにどうぞ……と言いたい所ですがw、それでは困るでしょうから】
【せっかくだから、私はこの赤のAを選ぶぜ!という事で】
『「……ふざけているのか?まあいい、答えてやる。
猫の方が雌で、烏は雄だ。……こういう言い方をすると怒るのだがな?」』
「猫ちゃんが女の子で、鳥さんが男の子ですか。
ん〜…将来が楽しみですねぇ。」
どうでもいい質問。当たり障りの無い答えで返す。
そんな事より。そんな事より重要なのは。
『「ああ――よく、知っている」』
知っている。即ち、接触した事は、事実。
よっぽど自信があるのか、それとも意味を分かっていないのか。
…ここで嘘でも言ってくれれば、そうですか、と帰ることが出来たのに。
(…最悪、というやつですねぇ。)
「…該当個体と水上竜斗との接触した事実を確認。
該当個体の状態を再確認する必要有。」
ボソリ、と呟く。相手には、聞こえないように。
「…本当に、すいませんねぇ。
もう少しだけ、付き合って頂きたいのですが…。」
精一杯の作り笑いを作り、相手に話しかける。
もう、どうしようも出来ないくらい、崩れてはいたけれど。
―――どうする?どうする?どうする?
捕獲・ 、どちらにせよ、水上に手を出すことになる。
自分が、自分の部下が、危険に晒される事になる。
―――嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
自分達のようなデキソコナイが、あの最悪な「向こう側」からやってきて。
でも、最初はただのバケモノで。自我が落ち着いた後も色々最悪な事があって。
それでも、今、頑張れたのは。いつか、幸せになってやると頑張れたのは。
―――部下が、こんな自分の事を仲間と認めてくれるあいつらが居たからじゃないか?
「……………本当に、すいません。
彼と接触した事実がある以上、このまま此処から出す訳にはいかなくなりました。」
崩れた笑いで、謝罪する。手にはこういう事態の為に持ってきた輸血パック。
この女さえ居なければ、こんなに気に病む必要はなかったのに。
輸血パックの口を、魔鋏に押し当て、一度に吸収させる。
成長する魔鋏、自分にも力がみなぎる、この凶暴な感覚。
「…行くぞ、ミトオティン。」
『哀レナ女ダ―――貴様ノ業、我ガ喰ラッテヤロウ…
魂 ノ 一 欠 ケ ラ モ 残 サ ズ ナ ッ ! ! 』
【了解しました〜。
…えーと、デスクリムゾ(ry】
「……」
自分の発した答えを聞き、何事か呟いた妖魔を見る。
もちろん、この程度で誤魔化せるとは思っていない。
知っている事の重みを何よりも理解しているのが自分だ。
敵を知り、己を知らば百戦危うからず。
古の格言を引くまでもなく情報の量が絶大な差を生むのだ。
「ああ、いいさ。こちらも貴殿にはお付き合い頂きたかった所だ」
泣き笑いのような表情を浮かべる妖魔に相対する。
短く呪文を唱え、魔法杖を顕現。同時に念話で使い魔を呼ぶ。
(……すまん、また例の妙ちきりんな妖魔だ。どうも今回は本気みたい)
(こちらから気配は感じ取れないのだけど、場所が異空間なのね?)
(少々時間がかかるが、必ず辿り着く。それまでの辛抱だ)
ほんのわずかな時間でそれだけの情報を伝え終わると、集中力を高める。
妖魔は、このまま此処から出すわけにはいかない、と言った。
ならば状況を変化させてやればいい。そう――相手を斃すか、それに近い状況に。
明らかに様子が変わった妖魔に対しても動じることなく、迎え撃つ。
目の前に魔法杖を掲げ、呪文の詠唱に入る。牽制になれば十分だと思いながら。
【……久しぶりで時間がかかるかかるorz】
【なんか全然勝てる気しないし。滅びの道へ一直線か?】
【申し訳ないですが予定通りここまでで。再開の日にちはまた適当に伝言スレにでも】
【うーん…返しにくい駄文すいません。いや、本当に。】
【いや、必ず勝たせます。どんな事があっても……多分。】
【いえいえ、無理をさせてしまってゴメンナサイ。それではまた後日〜】
>>239 …ふと、思った。この女は、自分の事をどう思っているのだろう?
ただただ快楽に身を任せ、大切な者を裏切ろうとしている自分の事を。
……………分からない。分かりたくも無い。
頭を切り替える、現状に集中する。これは仕事。目の前の女は標的。
しかし、目の前の女が水上竜斗に通じている以上、殺す訳にはいかない。
かと言って、もう接触してしまった以上、このまま放っておく訳にもいかない。
(頭の中を弄くって匿名でそれとなく警告になるような事をしておきましょうかね。『飼い主』に。)
(…我ハアノ女ノ頭ヲ閲覧スルノハソレトナク拒否スル事ヲ希望シタイノダガ。)
軽く、相方である魔鋏と意思を疎通する。寄生体と宿主との一種のテレパス、
いや、無線ではないから、ケーブルテレビとでもいったところだろうか。
(私が対象の頭部を固定します。
最優先事項は、我々に関する記憶の改竄、余裕があれば小細工を仕込む―――異論は?)
(コノ状況デ異論ヲ返ス程、余裕ガ有ルト思ウノカ?)
『「ああ、いいさ。こちらも貴殿にはお付き合い頂きたかった所だ」』
杖を掲げ、呪文を唱え始める人間。もう後には戻れない。
『(標的ノ敵意ヲ確認、呪文ノ内容カラ軽度ノ攻撃魔術ト推測、
詠唱終了マデニ標的ニ到達スル確率25%―――)
―――フン、堕チルト思考マデ単純ニナルラシイ。』
「(牽制で距離を離されると不利ですねぇ…。魔鋏を盾にしつつ接近する。
攻撃する事は考えず、防御に専念して下さい―――)
―――いきなり目の前で呪文詠唱。…工夫が無いですねぇ。」
軽く挑発してから、魔鋏を盾にして一気に駆ける。
狙いは懐。その場所に着きさえすれば、勝負が決まる。
【戸田さん待ちです。】
【もし宜しければ頭を弄くろうかと考えていたりするのですが、御希望がありましたら御遠慮なくどうぞ(オイ】
詠唱に集中すると、瑞希自身は無防備になる。
わざわざ隙を晒してまで大技を仕込むのは、本気の証。
――それを、彼は果たして理解しているのだろうか。
何やら嘲笑めいた言葉が発せられるが、意識する事もない。
直線的に駆け寄ってくる妖魔の目の前に、壁を築くイメージ。
「――Felswand(岩壁よ)」
地響きとともに岩盤がせり上がり、強固な壁となる。
地形すら変えるこの魔術だが、単純故に応用範囲が少ない。
だが、おそらく足止めには十分だ。
懐にさえ入られなければ、少なくとも負けはない。
思考の切り替えが咄嗟には出来なかったが、一度切り替わればどうとでもなる。
すぐに次の一手を考えながら、とりあえず走り出す。
【遅くなりました、よろしくお願いします】
【脳を弄るよりは暗示っぽい方が好みかも。グロいのは苦手です><】
『「――Felswand(岩壁よ)」』
『…。』
「…。」
予想していたのは、軽い攻撃による牽制。
まさか岩の壁とは思っていなかった。
『…攻撃魔術ダロ?一応。』
「…なるほど。ま、そう簡単には懐に潜れるとは思っていませんでしたが…。
…まぁ、いいさ。こちらも少し確認したい事がある。」
普段のエクソシスト的な体術を使えば、登れないほどの壁ではない。というか、登った方が手っ取り早い。
けれど、少しばかり気になることがあった。
「あらら、これでは通れませんね、どうしましょうか。」
『…?』
唐突に、喋り出す。どうという事は無い、といった口調で。
相手に聞こえるように、わざとらしく。
「…そうそう、そういえばここに来る前に病院に行きまして。
まぁ、身内以外面会してはいけないというからこっそり忍び込んだのですがね。」
壁の向こう側では、大技でも仕込んでいるのだろう。
「半妖と聞いたので、少しは使えるかなと思ったのですが…
…ずーっと意識も無いらしいですし、アレは駄目。使い物にならない。」
戸田瑞希の資料にあった、恋人の事が何故か頭にこびりつく。
何故か、大切な事を忘れているような。思い出しそうで、思い出せない。そんな感覚。
「それに食肉にしても駄目ですね、肉にまで消毒液の匂いが染み付いていて。
不味くて途中で放り出してきましたよ…無論、途中で着替えましたが。」
…無論、ハッタリだ。病人の半妖など、喰う気もしない。
小耳に挟んだ話だが、魔術は術者の精神に強く影響されるという。
ならば、その精神を揺さぶってやれば魔術にも何らかの影響が出る筈。
そこで一気に…………いや、本当はそうではない。本当に知りたいのは。
―――一体、この女の心にどの程度恋人は残っているのだろう。
いや、残っていたとしても反応するかどうかは分からない。
それでも、何故か、言わなければならないような気がした。自分でも不思議なほどに。
【了解しました〜。】
十分な距離を取ったところで一息。
山ん婆の昔話ではないが、逃げながら障害を配置すれば追いつかれることはないだろう。
それだけの魔術は有している。
(――まだかかるか?)
(近くには居ると思うんだけど、はっきりとは感じられないのよね)
(何か、強い反応があれば別だが……)
強い反応ね、と一人呟く。
魔術でもいいのだが、それだけの大技は詠唱時間も長い。
その間に稼いだ距離を縮められるわけに行かない。難しい選択だ。
――と、そこに聞こえてきたのは思わず耳を疑うような話だった。
(……まさか?!)
動揺して、魔法杖を取り落とす。全身の震えが止まらない。
目の前が真っ暗になるような感覚。
慌てて杖を拾おうとするが、それもうまくいかず。
(くそっ、惑わされるな!相手は嘘を言っているに決まっている!)
冷静に考えればすぐに計略だと分かる事。
それに、極論を言えば瑞希自身には関係ないとして切り捨てる事もできる。
だが、冷静さを欠いた今の瑞希にとっては十分に効果的な攻撃だった。
存在が薄れてきているとは言え、恋人は恋人。
何より、この国に帰ってきて初めて親身になって接してくれた男の存在は大きかった。
「…どうです?ミトオティン。」
『生体反応ノ検索、対象ト思シキ反応有。…対象ノ呼吸ガ乱レタ。心拍数モ増加シテイル。
クダラン戯言ダガ、効果ハアッタヨウダ。』
「そうですか、それは良かった。」
少しだけ、安心する。何に安心したかは分からないが。
それでも、まぁいいだろう。後は、標的を恐怖に叩き落しながら追い詰めるのみ。
「んじゃ、御主人様に捨てられるかもね〜って、傷口に塩をすり込まなくてもいい訳だ。
…なんとなく良かったけど、ちょっと残念。」
『我ガ思ウニ、オ前カナリ性格悪イ。テカサリゲナク楽シンデナイカ?』
岩の壁を駆け上がる。女の足ならば、そこまで遠くに行っていない筈、
ってかまだ近くに居る。『普通ニ位置ハ把握シテルシ、我等ノ世界デスカラ。』
「モノローグに余計な解説は入れるな。
…さて、十分時間は経ったでしょう、鬼ごっこを始めますか。」
『…。』
標的が居る場所に向かって駆け出す。
動揺した魔術師、追いつくのは赤子の手をひねるより容易いだろう。
二匹の使い魔も気になるが、大した障害ではない。
「〜〜〜〜〜♪」
『………。』
最初の最悪な気分はどこへやら。
狩人と獲物が決定した今、世死見道迷は、最高にハイというヤツだった。
ひとたび疑心暗鬼に陥ると、性格上復帰しがたい。
逆に言えば、精神面の脆さが魔術師としては致命的な欠点であると言える。
疑わずに従っていれば用は済む雌奴隷の身に堕ちた事で、余計にその傾向は強まっていて。
(私のしてきた事は一体なんだったのか……)
頭を抱えたまま、瑞希は一歩も動けないままで居た。
妖魔の接近にはさすがに気づいているが、意思に反して身体が動こうとはしない。
深層意識が行動を拒否しているのかもしれなかった。
(動け……私の足よ……動いてくれ……!)
こんな所で終わるわけにはいかない。
自分の目で確かめるまでは、信じない。
必死に心を奮い立たせようとするも、体の震えは止まらず集中も出来ない。
今まで屠ってきた数多の人間や妖魔も、このような感情と向き合ってきたのだろうか。
再び狩られる立場になって久しぶりに蘇る恐怖という感情が、
瑞希の全てを支配しようとしていた。
頭の中でフラッシュバックするのは、かつての記憶。
後ろから靴音が近づいてくる。ゆっくりと、ちょうど散歩するような速さで。
コツ、コツ、コツ―――
他の音が無いだけに、余計に強調されるその音。
コツ、コツ、コツ―――
誰の足音か、聞くまでも無い。此処には、一人の人間と、一匹の妖魔しかいないのだから。
コツ、コツ、コツ―――
近づいてくる音と気配、それは丁度真後ろまで来たところで。
―――コツ。
足音が、止まった。
「………呪文を唱えている様子も無い。かといって、距離を離そうとする訳でもない。
…おや?震えていますね、何か怖い事でもあったのですか?」
背後から響く、妖魔の声。背後から伸びる、妖魔の影。
ただでさえ動揺する人間に、彼の姿はどう見えるだろうか?
いや、もうそんな事はどうでもいい。
どうせ、すぐにこの仕事は済むのだから。
「ふむ、その愛情に敬意を評して、御褒美を差し上げましょう。あの話、実は嘘です。
病人なんて、いくら私でも食べませんよ…安心しました?」
―――とは言え、もう遅いですけどね。」
阿呆なのか、それとも自信があるのか、種を明かす妖魔の声。
きっと、魔術師は烈火の如く激怒するに違いないけれど。
きっと、躊躇無く攻撃魔術を放ってくるのだろうけれど。
…既に、妖魔の手は魔術師の頭を固定していた。
『標的ノ頭部ノ固定ヲ確認、識別名「人形使イ」展開…標的ノ精神操作作業開始。』
魔鋏の、牛の頭蓋骨の装飾のみが伸び、魔術師の前にきて機械的に呟く。
その目に当たる部分からは、怪しげな光が漏れていた。
過去に沈んでいる瑞希には、妖魔の声は聞こえない。
しかし、足音だけは聞こえていた――違う音に変換されて。
ドンドンドン! ガン!ガンッ!
(――そうだ。あの時もこんな風に妖魔がドアを叩いた)
友人達と悪戯半分に黒い森の奥に立っていた古い石碑を倒した。
その日から一人、また一人と友人は病に倒れたり、
なますのように切り裂かれたむごたらしい姿で発見されたり。
町では封じられていた妖魔の祟りだと噂され、
それを信じなかった自分達は無謀にももう一度石碑のあった場所へと向かったのだった。
そこで起こったのは――惨劇。
現れた妖魔に友人は皆殺され、自分は命からがら近くの炭焼き小屋に逃げ込んだ。
そして――
(ドアを破られ、まさに命の危険が迫ったそのとき、私は魔術に目覚めたのだった)
衝動的に発した呪文が小屋もろとも妖魔を焼き尽くし、自分ひとりが怪我もなく無事だった。
家に帰るとそのまま意識を無くし、目覚めたのは三日後。
その時には、あれほど親しかった近所の人々が皆私を避けるようになっていた。
口さがないある女性は、わざわざ私に聞こえるようにこう言ったものだ。
『東洋人の魔女め!あんたさえ居なければうちの息子は死ななかったのに!』
『案外、子ども達を殺したのもあんたなんじゃないのかい?この悪魔が!』
(日に日に酷くなる嫌がらせに耐えられず、家族は町を離れ、私は一人日本に帰った)
「――あ」
再び意識を取り戻したときには、もはや妖魔の術から逃れることは出来ず。
全くの無抵抗のまま、再び意識は闇に落ちた。
瞳は焦点を失い、うつろな表情のままで立ち尽くす。
【さて、今更ですが次のレスくらいで時間です】
【このまま〆てもいいですが、続けるならまとまった時間が取れそうなのは金曜日の晩ですね】
【暗示は一回こっきりのものにしていただけると幸い。不可逆的後催眠は困りますw】
【裏設定(ふたつ)の消化が出来てよかったー】
「(…え?あの『操り人形』ってのは使わないの?
ほら、刃の一部をフィラメント状にして頭に刺すやつ。)」
『(ぐろイカラナ、見タ目…ジャナクテ、野良犬ニ試シタラ、次ノ日二足歩行デ歩キナガラ新聞ヲ読ンデイタ。
モウ少シ改良ヲ加エル必要ガアル。)』
「(ふーん…いや、そのままでいいんじゃないか?)」
『(裏話ハイイカラ本題本題)』
うつろな表情。光の無い瞳。人形の様なその顔。
洗脳される人間というのは、普通こんな表情なのだろうか。正直怖い。
『我等ニ関スル記憶ノ改竄―――きーわーど:「水上竜斗」及ビ「七妖会」ノ消去、
今回ノ件ハ我々ノ個人的ナ復讐ニ改竄…』
順調に標的の記憶を改竄していく魔鋏。これで足が付く事もないだろう。多分。
震える体。動かない足。漆黒の魔女の、余りにも脆いその姿。
…その姿を見て、ふと気になった事を口に出してみる。
「…今回の件で分かったのですが、この人、かなり精神が不安定になってますねぇ。
『飼い主』の前ではそうでもないようですけど。」
『「操リ人形」ナラトモカク、「人形使イ」デハ情報ヲ引キ出ス事ハ不可能。
簡単ニ言エバソノ原因ハ不明ダ。』
何か、重要な事件にかかわっていたのではないかと、一抹の不安を覚える。
…いや、杞憂だ。もしそうだとすれば、とっくの昔に情報が入っている。
どうせ、初めて妖魔を倒した時の記憶がトラウマにでもなっているのだろう。退魔師には良くある事だ。
「いや、いい。予想はつく。…しかし、好都合ですねぇ。元から素質があるのなら、我々はそれを助長させればいいだけの話。
『何時か捨てられる事の無い玩具はなく』、『捨てられない為には、自分が相手を支配すればいい』
とでも刷り込んでおけば、勝手に『飼い主』に楯突いてくれるんじゃないですか?うん。」
『きーわーど:「廃棄ニ対スル恐怖」及ビ「御主人ヘノ反旗」登録。…デモ効果ハ余リ持タナイゾ、コレ。』
効果が持つかどうかはどうでもいい。ただ、きっかけさえ与えてやれば。
転がりだした雪球が、次第に大きくなっていくようにこの人間の中で不安は増長するだろう。
「別にいいさ。我々が手を出さずとも、いつかは通る道だよ。勤め妖魔やってるといやでもわかるって、下克上の精神は。
…証拠隠滅、ちゃんとしたよね?」
『無論。』
「んじゃ宜しい。」
魔術師の頭から手を離し、抱き止め、担ぐ。
後は、恋人の居る病室にでも置いてくればいいだろう。
―――とっとと止めないと、恋人が何処かに行っちゃいますよ?
心で、見た事の無い半妖にそう呟いて、一匹と一本は何処かに黒い街へと消えていった。
ちなみに。
この後やってきた二匹の使い魔にこてんぱんにされたのはまた別の話。
「あの黒ネコさん、可愛かったなぁ…。」
『…オイ。』
【了解しました〜。】
【いえいえ、これ以上御時間を取らせる訳には。有難う御座いました〜。】
【反骨精神注入というか、下克上を期待するというか。まぁ、大したものではないですが、効果は一回こっきりという事で。】
イリネ…、佐々木さんお帰りなさいwww
またワンp…、素晴らしいエロール期待してますwww
夜の繁華街をそぞろ歩く。
漆黒のライダースーツ。金色の髪。
精悍な顔立ちと鋭い眼で、夜の街を睥睨する。
賑やかなネオンサインと、人間の欲望で彩られる新都の夜だ。
今夜はパトロールだった。いつもなら単車で隣町まで巡回するのだが、
偶には交代しろと相棒の剣士に言われたので、仕方なく交代した。
彼は一人ではなく、隣に小柄な少女を連れ立って歩いている。
風間莉々だ。今日は彼女と一緒であった。これも珍しいことである。
今夜は日ノ本くんとのパトロール予定だったのだが、急遽相手が変わった。
この辺の退魔師、妖魔問わず名前の通った御影義虎である。
彼とは最近知り合ったばかりで実務をこなすのは初めてだ。
そんな事もあるので、日ノ本くんが気をまわしたのかも知れない。
繁華街のパトロールは色々と困難が多い。
妖魔を選別するのも難しいのだが、私の場合容姿の問題で
警察や私服警官に呼びとめられることも多く、
不道徳な若者に声をかけられる事もある。
今回の場合後者は彼の視線で一蹴されているわけだが・・・。
「最近寒くなってきましたね・・・、一息入れて何か飲みませんか?」
特別店に入る気もしないので、数メートル先の自動販売機に
目線を向けながら彼に問う。
人ごみの中を歩く。無造作な足取りだが、その実周囲の変化に対して
敏感に気を配っている。無数の気配が入り乱れる中にこそ、賢い妖魔は
潜んでいるからだ。それを感じ取り追い詰め狩るのが彼の仕事なのだ。
十二月なのでそれなりに寒い。それなりで済むのは、体内で『気』を活性化し、
体温を上昇させているからだ。
『最近寒くなってきましたね・・・、一息入れて何か飲みませんか?』
風間莉々が提案する。
数メートル先の自販機が目当てのようだ。
「修行が足りないな、風間」
そう言いながら自販機に向けて歩く。
――薫のやつめ・・・・
相棒の剣士が交代しろと言い出したのは、彼女と親睦を深めろという彼なりの
思い遣りなのだろう。彼はそういう奴なのだと、二年近い付き合いでよくわかっている。
――今夜はどうにも成果が上がりそうにないな。
そんな事を思いながらお汁粉ドリンク(暖)を購入する。
『修行が足りないな、風間』
私の提案に皮肉めいた彼の返事。
御影流の同意といった所だ。
「無駄に気を使いたくないだけですよ。」
同じく皮肉めいた返事をしてしまうのは、
何処かにた部分がある所為なのかも知れない。
「お、お汁粉ですか???」
思っていた物とかけ離れた物を購入したので思わず声をあげてしまう。
コーヒーを購入し、文字通り一息付く。
「さて・・・、一応気には触れるような存在はありませんでしたが・・・。」
鞄から斬鬼衆印の入った小型PCを取り出し起動する。
「一応、体温やらその辺も感知しておきましょうか?」
彼にも見えるようにPCを置くと色々な探知機能を起動させる。
『お、お汁粉ですか???』
「不思議か?」
甘い汁粉を啜る。甘い物が好きになったのは誰の影響だろうか。
多分、現白清支部支部長のお菓子好きの影響だろう。
クッキー、ケーキ、シュークリーム。
洋菓子製作専門の彼女だが、和菓子も時折作る。
それも至極美味であり、白清支部内で好評を得ている。
そんな彼女の菓子を食べ続けたせいか、甘い物に食べる習慣がついたのだ。
だが、彼の容姿からすると似合わないと言われるのが大半である。
「どうにも今日は剣呑な気配がしないが、やるにこしたことはないな」
無難に賛同し、汁粉を啜り続ける。
その間も気配を探り続けているが、不審な点は特にない。
穏やか過ぎるくらいだ。逆にそれが奇妙だった。
「不思議と言う事はありませんが・・・。まぁ、良いでしょう。」
女と言うものは甘い物が基本的に好きである。
八雲天音と付き合うのだから、それに慣れても不思議はないと自分に言い聞かせる。
「さて・・・と、んー・・・。」
モニターと睨めっこをするが何も反応は無い。
特に何も無しと言うことだろうか・・・?
気も感じる事はないが、何か胸に引っかかるものがある。
「何もありませんが・・・。」
彼も同じ様な妙な気分にとらわれていないだろうか?
自分の気のせいか否か確認をする。
「気になるならもう一回りしてますか?」
「そうだな・・・・」
飲み終えた缶を握り潰し、圧縮し、専用のゴミ箱に入れる。
気配に異常はない。むしろ無さ過ぎるくらいだ。
だが、この感覚はよくないと深奥で告げる者がいる。
「今度は路地裏を中心に探ってみるか」
返事を待つより先に歩き出す。
新都に来るのは久しぶりだが、以前はもっと気配が澱んでいた。
だが、今が清浄というわけではない。根こそぎ雑草を刈り取ったあとの
平地のような寒々しさがある。何者かがそれを刈り取ったのだろうか。
そしてそれを行った者がいたとしたら――恐らくそれは人間ではあるまい。
『そうだな・・・・』
考える含みを残した返事だったが彼の行動が明確な返事となっている。
どうやら彼も『何か』を感じている様子だ。
PCを片付け、空き缶をボールリフティングのように遊びながらゴミ箱に入れる。
「そうですね・・・、表現しにくい何かを感じます。」
彼の半歩後ろを歩き、緊急の際に動けるように歩く。
全く気配の無い相手だとすれば、回避もままならない場合がある。
その様な時は彼のような強靭な肉体の者に頼るしかない。
勿論、即座に反撃をするためでもある。
「南の治安が悪い方から周りますか?」
彼の背中に問いかける。
「そうしてみるか。だが、少し考えがある」
今度はやり方を変えてみる。
気配の『在る』方角ではなく、『無い』方角に脚を向ける。
濃度の高い場所から低い場所へ。
必然的に周囲に人がいない場所を歩くことになる。
開発地区。
不景気の煽りを受け、開発途中で放置された地区だ。
今では浮浪者と野良犬と妖魔の巣窟になっている。
だが。
「・・・妙だな」
やはり、というか、気配がしない。
先日此処に来た時には、確かに妖魔が湧いていた。
周期的に妖魔が湧き出るスポットというのは、確実にある。
だが、今日は完全に何の気配もしない。
「どういうことだ・・・?」
自分に問うような口調で呟く。
「成る程、発想の転換ですか。やってみる価値はあると思います。」
同意し、彼と共に向かったのは未だ開発途上の区域。
普段なら小物でも発見できる場所ではあるが・・・。
『・・・妙だな』
私の心を投影するような彼の呟き。
「魔力隠蔽能力の様なものでしょうか?あるいは・・・。」
最悪の事態になりかねないので言いたくはないが、
可能性の一つとして提唱してみる。
「土地・・・、大きな結界が張られている・・・?のでしょうか?」
先程より気を張り、彼と背中合わせに立つ。
『土地・・・、大きな結界が張られている・・・?のでしょうか?』
彼女が背中合わせに立ちながら言う。 或いはそうかも知れないが――
そんな魔力の使い方をするのは、人間並みの知性を持った高等妖魔ぐらいだ。
もうひとつの可能性を上げる。
「・・・・根こそぎ、喰われた、のか?」
強力な妖魔が自分より弱い妖魔を喰うのは自然のことだ。
そうやって喰い合いながら、矮小な妖魔が強力な妖魔もになること。
だが、それにも一定の調和が存在する。動物の自然界がそうであるように。
一匹の妖魔が周囲全ての妖魔を食い尽くすことは有り得ない。
あるとすれば、他の区域からやってきた強力な妖魔がそのバランスを崩すほど
食欲旺盛だった場合だ。ブラックバスが放流された池の如く、根もうこそぎ喰われたのだろうか。
「何にしても、少し探ってみないとな・・・」
彼は手近な廃墟に足を踏み入れる。
【ここで凍結でよろしく】
【また土曜日にノシ】
新たに彼の打ち出した可能性。
『・・・・根こそぎ、喰われた、のか?』
考えられない事ではないが、それもかなり恐ろしい可能性だ。
「まさか・・・、いくら低級妖魔だからって・・・数が・・・。」
底無しの様な胃袋の持ち主か、あるいは・・・。
彼に同意して廃墟へと足を進める。
【了解です。】
【それでは土曜日にノシノシ】
寧ろ逆に言うとだ、ルールが作られるのはそれだけ板の内に不便な点があるって事になる。
この論は決してロールの正当性を主張するもんではないのだが、名無しに頼りたくなるような板作っちゃ駄目だろうって思うんだよなあ。
イベント・雑談の類は兎も角として、それこそ
>>385みたいな意見はキャラハン内にあって良い筈。
どーも名無しってのはROMの心情をいまいち解ってないんだよなぁ、とか思う。このスレに限らずな。
誤爆?
建設途中で廃棄されたビル。
闇の中、窓ガラスの越しに差し込む月明かりを頼りに探索する。
気配はない。冷たい虚ろが音も無く横たわっているだけだ。
気配を感知することに長けた二人の退魔士ですら、何も感知できない。
目視に頼りながらひとつひとつ確認してゆく。
浮浪者も、野良猫も、野良犬も、何もない。妖魔も当然のようにいない。
微かな残滓すらない。これで一時間は経過しただろうか。
「このビルはこれで終わりか」
屋上に出て呟く。これで二つ目のビルの探索が空振りに終わったわけだ。
探索を継続するかどうか思案する。何も無いならそれに越したことはない。
だが、当然のようにあると思われていたものがないのが、不自然に思えて仕方ない。
「結界により気配隠蔽、か。その可能性を採用するとして、俺たちがそれを
突破する方法は今のところ無い。増援を呼ぶか?」
今日の相棒に尋ねてみる。
彼の後について建築途中のビルを捜索する。
そこには浮浪者がかつていた様な跡、空き缶やゴミ袋が散乱している。
「妙ですね・・・、酸性雨で生き物がいなくなった湖みたい・・・。」
壁に手を当て、何かを感じ取ろうとするも何も感じる事は出来ない。
増援要請をするかと彼に問われ、暫し思案して口を開く。
「そうですね・・・、とりわけ私達は感知や魔術に長けていませんし、
せめてその系統に明るい人材を要請するのは良いかも知れません。」
気味の悪い空気を感じながら彼に応える。
「じゃあ、零を呼び出すか」
漆黒の長い髪を持つ妖術師の名を上げる。
付き合いが長いので、呼び出すことに気後れは今更感じない。
天洸院謹製の携帯電話を取り出す。マニュアルに書いてあることが
確かなら、現在市販で流通している携帯電話より、遥かに高性能らしい。
確かに機能は不要だと思われるほどに備わっている。
――だというのに。
「・・・・・?」
普通の携帯と違い、電波が届かないということは有り得ない。
だが、呼び出し音がしない。携帯のディスプレイを見る。
『電波が遮断されています。原因は以下の可能性があります。
1・結界による遮断。2・使用者が異相世界に転移した』
・・・・流石は退魔士の組織が作った携帯電話であった。
しかし、現状では役に立たない。
「どうやら、ここら一帯は結界の内側らしいな」
役立たずと化した携帯を仕舞いこみ、これからのことを考える。
歩いて此処に来れた、ということは物理的な防御力は持たないタイプの結界と
判断できる。人間の感覚と電子機器に作用する結界だろう。つまり、ここら一帯に
探られたくない何かがあるということだ。
――以上のことを相棒に簡単に説明して、探索を継続するか否かを問う。
「面倒事には間違いないだろうが、先に済ませた方がいいと俺は思うがな」
斬鬼衆である以上、こういった事態に巡り合うのは必然だ。
巡り合うのを先にするか、後にするか彼は問うているのだ。
同じく斬鬼衆の妖術師に連絡をとると言うので暫し待つ・・・が。
「どうしました?」
様子のおかしい彼に問う。
その答えは予測していた『嫌な事』の方だった。
「そうですか・・・。」
こちらが思案する間もなく提案が来る。
捜索を続けるか否かと。
斬鬼衆の特攻隊長格である彼ならば続けて捜索したいのであろう。
しかし私の考えは少々異なる、私は彼ほど強くは無い。
「まずは外界と再び交信ができるか元に戻ってみましょう。
この状況からすると戻れるかは分かりませんが・・・。」
――適わぬなら先に進もうと言葉を付け足す。
気配が感知できない。増援が呼べない。何より目的地が不明瞭だ。
一度此処を出て、後日増援を呼んで探索した方が確実ではある。
だが、このような奇妙な事態を見過ごして、手遅れになったとしたら?
些細な怠慢が、致命的な事態に繋がることは多々ある。
癌は早期発見すれば治療はできる。治る可能性も上がる。
それと同じことだ。少なくとも今夜はもう少し探索を続けるべきだろう。
『まずは外界と再び交信ができるか元に戻ってみましょう。
この状況からすると戻れるかは分かりませんが・・・。』
彼女の意見はもう少し建設的だった。
彼は一度屋上から眼下を見下ろす。暗い路地があるだけだ。
「・・・此処に来れた、ということは戻れる公算が高いな」
彼は賛同し、踵を返した。だが、もう一度眼下を見る。
視界の端に映った物が気になったのだ。
東の方から何かが走ってくる。鬼火を纏った黒い馬車だ。
蹄鉄の音はしない。馬の嘶きも聞こえない。
御者の容姿はここからでは細部まで視認できない。
だが、問題は馬車の後ろから付いてくるモノの方だった。
それは、多種多様の妖魔の群れ、
列を作り、馬車を猛烈な勢いで追いかけている。
「妖魔が・・・・」
視認できるだけでも五十は超えているだろう。
これはどういう事態なのか。捜し求めていたモノたちが馬車に釣られるように
とあるビルの一角に吸い込まれてゆく。
彼にも色々考えがあるようだが、とりあえず確認の為に戻ろうとする。
しかし、私達の目には信じられない光景が広がる。
「あれは・・・、一体・・・?」
怪訝な顔で彼の顔を見上げ頷く。
鞄の中からレガースとグローブを取り出すと手早く装着する。
「ハロウィンはもう終わった筈ですが・・・。
季節外れの仮装パーティーに招待されたようですね。」
ポケットから飴玉を取り出し彼に一つ渡す。
一つは自分の口に入れながら、流れ行く妖魔の列を見据える。
「・・・何にせよ、行くしかないな」
差し出された飴玉を受け取り口に含む。甘い。
階段を落下するように駆け下り、出口を目指す。あれが何にせよ、
気配が感知できない以上、手掛かりを見失うわけにはいかない。
跳ねるように駆ける。突発的な加速にも鍛えた身体は応えてくれた。
ビルから出た時には、最後尾の妖魔が角を曲がったところだった。
この距離でようやく気配が感知できた。恐ろしく精密な撹乱作用のある
結界だった。張った本人は相当高度な魔力の使い手らしい。
角を曲がり、今にも結界により消されそうな妖気の残滓を辿る。
辿りついた先は、小さな教会であった。この中にいると今なら確信できる。
入り口の前で止まり、拳銃を抜く。コルトパイソンとグロック。二つとも愛用の拳銃だ。
「俺が先に行く。一分後、ついて来い」
一方的に手順を決め、返事を待たず入ろうとする。
状況がわからない以上、同時に踏み込むのは浅慮過ぎると判断したのだ。
『・・・何にせよ、行くしかないな』
彼の問いかけに無言で頷く。
特別探知能力に長けているわけでない私達にはそれ以外の方法は無い。
足場の悪い瓦礫を彼と共に駆け抜ける。
この速さで移動できるなら、彼もなかなかのものだ。
小さい教会に辿り付くや否や彼の指示が飛ぶ。
「了解した。」
手元の時計と、彼の足を見比べる。
斥候としては私より彼の方が長けている。
そして私の方が素早く移動が可能である。
現状では最良の選択だろう。
これだけ気配の無い相手だけに待機するにも気を抜く事は許されない。
気を張り巡らせ、時間を待つ。
これほど長く感じる一分は久し振りだ。
開かれているドアを潜り、教会の中に踏み込む。
祭壇は破壊されていた。十字架の影も形もない。
信徒の座る椅子も破壊されている。徹底した破壊の痕跡。
ここにいる者は余程教会と相性が悪いらしい。
だというのに、ここを塒にする理由とは果たして?
神父が控える為の部屋に足を踏み込む。
何も無い。だか、何かがある。
――そろそろ一分経過した頃か。
極端に物の無い部屋を探る。何も無い。
階段が見つかる。二階は神父の泊まる部屋なのだろうか。
階段を登り、そこにある部屋を隈なく探索する。
「そろそろ・・・ですか。」
待ちわびた一分が経過する。
彼の痕跡を辿り内部へと向かう。
そこにあるのは凄惨な光景か何か?
荒れ果てた聖堂に入ると階段だけが目に付く。
特に争った形跡もないので階段を上り彼と落ちあう。
「あいつらは?」
依然警戒したままで彼に問いかける。
二階の探索を終え、一階に戻る。
途中で風間莉々が待っていた。
「何も無かった。痕跡もな」
あれだけの数の妖魔が、こんな狭い場所に入りきれるはずもない。
だとしたら、隠し通路の存在も考慮しなくてはならない。
そこから何処かへと行ったのか。相棒を促し一旦聖堂に戻る。
「さて、面倒なことになってきたな」
珍しく気軽な口調。だが視線は鋭く、射抜くように聖堂を念入りに見回している。
破壊された信徒席。破壊された祭壇。パイプオルガン。
突き破られたガラスから月明かりが差し込む。
「ん・・・・?」
そこだけ破壊を免れたパイプオルガンに視線が向く。
近づいて、鍵盤を叩く。当然の様に何の音もしないが・・・
「此処か」
それだけ呟いて、拳を叩き込む。ひとつ、ふたつ。
蹴りも入れる。ひとつ、ふたつ。
叩く、そして蹴る。一分も掛けず破壊する。パイプオルガンの中に大きな空洞があった。
妖気がそこから立ち上ってくる。入り口はここだったらしい。
『何も無かった。痕跡もな』
「そうですか・・・。」
おかしい、必ず何かあるはずだ。
彼も考えは勿論同じで、さらに部屋の捜索を開始する。
ガンガンと物音のする方向に目を向けると、
唯一破壊を免れたパイプオルガンを破壊している。
彼の予測は正しかったらしく、そこから妖気が立ちこめる。
「成る程、今日は全て逆を辿れば正解に結びつきそうですね。」
冷ややかな視線でその入り口を見据える。
「行きましょうか?最悪の場合、私が離脱して本部と連絡を取ります。」
戦う前から仲間を見捨てるような台詞を吐く。
分からぬ者にはそうとしか取れないが、それは斬鬼衆としての覚悟と務め。
そして、力量を信じての進言である。
『行きましょうか?最悪の場合、私が離脱して本部と連絡を取ります。』
彼女が事務的に言う。
確かにそれは斬鬼衆として正しい判断だ。
彼は頷いた。そして空洞を見つめる。
「先に行く。一分後について来い」
先刻と同じ指示を出し、空洞に身を投げ入れる。
落下の途中で壁に両手両足をつけて、ブレーキを掛ける。
慎重に降りてゆき、無事に着地する。石造りの床。暗い空間。
眼を凝らす。そこは墓地であった。
「地下墓地か・・・・」
呟きながら妖気のする方角へ。恐らく、此処は人間の墓場ではない。
恐らくは妖魔の墓場だ。墓碑銘も何も無い。漂う妖気は妖魔の屍の発するものも
混ざっているらしい。此処を塒にした理由は恐らくこの地下墓地が要因なのだろう。
『先に行く。一分後について来い』
彼の言葉に黙って頷く。
先程と同じ様に時間を計り、1分後に空洞へと身を躍らせる。
時折、風を作りながら自然の法則に逆らいゆっくりと降下する。
嫌な臭気をかぎながら最下部へと乗り込む。
腐臭がした。血臭がした。そして死臭がした。
その方角へ向けて脚を運ぶ。後方から相棒が到着したらしい。彼は振り向かず進む。
暗い墓地を音も無く歩く。その姿は、冥界から彷徨い出た漆黒の魔物にも似ている。
やがて、音が聞こえ始めた。
ぐちゃぐちゃ・・・・と肉を咀嚼する音。
ガリッ、ガリッ・・・と硬い物を噛み砕く音。
喰われているのは何だろう。
喰っているのは誰だろう。
分厚い扉。荘厳な意匠を凝らした扉の向こうから音がする。
何より妖気の発信源はこの向こう側である。
彼はもう一度拳銃を抜き放ち、扉を渾身の力で蹴り開ける。
積み重なる屍の山。
ボリボリグチャグチャと屍を貪る『何か』。
首筋から噛み付いて食い破り、血を啜る。
吸い尽くした吸い滓に牙を立てる。
一瞬、眩暈がした。
―俺は・・・・コイツを知っている・・・・?
煤けた銀色の長い髪。長身痩躯。漂う鬼気。
脳内で記憶が駆け巡る。それを遮るかのように声が掛かる。
「久しいな、鬼切りの刃よ」
それは、老人の声だった。
屍を貪っている傍らの老人がこちらを視認して、そう言ったのだ。
「お前・・・・あの時の・・・・」
記憶が蘇った。あれは『三国の乱』の時のことだった。
彼に続き空洞の底から奥へと進むと、凄惨な光景が目に入る。
そこに対峙する老人と彼。
何やら悪い意味での顔見知りの様だが、私の知る所ではない。
いつでも攻撃をしかけられる様に、回避できる様に身構えるだけだ。
彼が一年生の時のことだった。
それぞれ『領主』『主』『暴君』と名乗る妖魔がそれぞれの軍勢を率いて、
新都を中心としたあちこちで戦い、その覇権を争っていた。
それに介入した天洸院・斬鬼衆白清支部。
四つの組織の戦いは、凄惨を極めた。
前代支部長はその戦いで死亡した。
ここにいる二人の妖魔――いや、一匹の妖魔と一人の魔術師は、
かつて彼が戦った『領主』とその側近であるヨーゼフ・メンゲレだ。
「何故だ!」
後ろに相棒がいることも気に留めず彼は叫ぶ。
「貴様らは・・・・そこにいる領主は俺たちが滅ぼしたはずだ!
俺と、薫と零で、確かに!心の臓腑を貫いて灰にしたはずだ!」
「はは、確かに。お前たちの様な年端もいかぬ退魔士に、伯爵様が滅ぼされた時は
信じられなかったよ。だがな少年。私を生かしておいたのが間違いだった」
老人は醜悪な顔を歪め笑う。人間でありながら、その精神の在り様は妖魔に近く、
そうであるが故に妖魔の組織に加担した、外道の魔術師が彼なのだ。
「伯爵様の灰を集め、棺桶に処女の血を満たし、私は待ったのだよ。
そして一週間前、ついに目覚められたのだ!」
歓喜。それは紛れも無く歓喜である。死んだ恋人が蘇った時のような、
この世界には有り得ない、そんな奇跡を体験した者の放つ歓喜の声だ。
「伯爵様は何も覚えておられなかった。力が満ちてあらぬと判断した私は、
近隣の人間どもと妖魔どもを招きよせ、伯爵様への供物としたのだ」
それが、ここら辺一帯に妖魔が居なかった原因だったのか。
屍を貪っていた『領主』がこちらを向いた。虚ろな紅い瞳が確かにこちらを視認する。
次の瞬間、『領主』が吼えた。空間が腐敗するような咆哮。
「俺を、覚えているのか・・・」
呟きながら、背後の相棒に囁く。冷静さを取り戻したらしい。
「奴は強い。俺が仕掛けるまで手を出すな」
彼と老人のやりとりからすると、
私が留学中の大きな事件の話しの様だ。
記録は目に通したが、その悲劇がまた繰り返されようとは・・・。
そうなると相手は彼の言う通り只者ではない。
先刻話しを通した通りに離脱した方が良さそうである。
二人では『全滅』の可能性も低くは無い。
「本部へ連絡に戻ります。」
そう彼に伝えると、本部へと向かう。
【すみません、私の力量ですとレスが希薄に・・・orz】
「おお、そうか。お前のことを思い出したと、そうか」
嬉しそうに顔を歪めたまま、こちらに向けて指を指す。
魔術師が宣言する。
「伯爵様、怨敵の斬鬼衆がそこに!
さあ、今そこ愚か者たちに裁きの鉄槌を――・・・・・」
彼はその言葉を、最後まで言い終えることは出来なかった。
首が横にずれて、ポロリと落ちて転がったからだ。
猫の手技のように軽く振った『領主』の手が、それを成し遂げたのだ。
次の刹那、『領主』の姿が掻き消えた。
次の瞬間、彼は吹き飛ばされていた。
背後に庇っていた風間と共に。
・・・頭に響いた。
咄嗟に防御したが脚の踏ん張りが利かなかった。
「すまん、大丈夫か?」
のろのろと立ち上がる。
『領主』は地下墓地を獣のように撥ね回っている。
違和感があった。それは――
「復活が完全じゃないようだ。以前より力を感じない」
拳に力を溜める。拳銃は咄嗟に手放したらしい。
「今、ここで仕留めるぞ」
【というか、こちらの趣味が出すぎなだけなので・・・・】
【申し訳在りません。もう少しお付き合いを】
何かの大きな力――と、言うよりは威圧。
かなりの重圧によって跳ね飛ばされる。
気を持ち直すと彼が言う。
『復活が完全じゃないようだ。以前より力を感じない』
戦闘態勢をとる彼を見ると、今が好機の様だ。
彼の指示に併せ身構える。
彼の攻撃が当たるにしても回避されるにしても、
必ずそこに隙が生じる。
その一度のタイミングを逃さない様に気を練る。
【いえ、気の利いた台詞まわしが浮かばず申し訳ないです・・・】
【過去のロールも拝見しているので合わせる事ができると思ったのですが(;´д⊂)】
かつての『領主』は紅の甲冑を纏っていた。
そして身の丈はある剣を振るっていた。
今の『領主』は全裸で、知性の欠片も無く跳ね回っているだけだ。
確か妖力という点ではその辺の妖魔など問題にならないが、かつて対峙
した時と比べれば、威圧感は幾らか薄れている。
「アイツは吸血鬼だ。高度な再生能力を持っている。
心臓への一撃以外は無効だと思え」
かつての戦闘から得た情報を告げて、風間の前に立つ。
要するに、持久戦では勝ち目が無いということだ。
半身に構え、相手の動きを観察する。
「冥府に送り返してやるよ、伯爵」
台詞に反応したのか。うねるような動きから、弾丸のように『領主』が
一直線に飛んでくる。威力は大砲以上だろう。まともに食らうつもりはない。
――いつもなら。
彼は双掌に力を篭め、動きに合わせて突進した。
正面から激突する。身体が四散しないのが不思議な衝撃。
同極の磁石の様に反発して弾け跳ぶ。
――単独ならこんなことはしない。
けれど、今の彼には相棒がいる。
領主がよろめいて立ち上がる。衝撃で脳が揺れている、らしい。
『アイツは吸血鬼だ。高度な再生能力を持っている。
心臓への一撃以外は無効だと思え』
ただですら異様なまでの妖気を放っているのにまだ・・・。
「分かりました。十秒お願いします。」
短く返す。
長く喋っている余裕もなさそうだ。
普段は絶対に使わない技。
チャクラを全開にし、腰を落とす。
足を緩やかに動かすと、引きずった足跡が金色の龍となって浮かび上がる。
『領主』と激しくぶつかり合う御影義虎。
勇猛果敢な姿はまさしく虎そのもの。
「・・・・・・行きます!」
金色の龍を脚に纏い超跳躍をする。
急降下する金色の龍が狙うは『伯爵』の心臓。
ぐるり、と『領主』の眼が上空を見る。
風間莉々に狙いを付けたらしい。
いや、単に動くものに反応しているだけか。
ともかく、瞬く間に脳震盪から回復した『領主』が四肢を撓める。
吼えながら跳ぶ。
金色の龍が流星の様に降り注ごうとしていた。
それを迎え討つのは凶ツ鳥。
そこに割り込むのは金色の虎。
「お前の相手は俺だ」
ほぼ同時に跳躍していた彼が、『領主』の胴体を掴んでいる。
姿勢が乱れる。そのまま跳躍の勢いを殺し、バックドロップを仕掛ける。
高空から叩き落すようなバックドロップ。衝撃は半端ではない。
自身も当然のように大ダメージを食らった。だがそれでいい。
時間が稼げれば、後は彼女に任せるのみだ。
『領主』が大の字になって、呆然と金色の龍を見つめている。
完全に仕留められると思ったが、
『領主』の回復力は想像以上だった。
先程、御影義虎が相殺した程の衝撃が来れば
心臓に当てることは困難になる。
それどころか、こちらの身も危うい。
――しかし、信じる仲間がいる。
期待通りに金色の虎が舞う。
目を合わせる事も、言葉発する事もないが、意思の疎通は出来ている。
それが斬鬼衆、共に戦う仲間と言うものだ。
彼の捨て身の攻撃に合わせ、金色の龍を『領主』の心臓に突き刺す。
『領主』と金色の龍虎が重なり合う。
――― 一瞬時が止まる。
ゆっくりと脚を引き抜いて、その場に倒れこむ。
最早何も出来ない。
・・・・どれ程そうしていたか。
受身を取らずプロレス技などを繰り出した所為で頭がぐらぐらしている。
いや、本当ならあの様な大跳躍などできない状態だったのだ。
それでも無理を通した。その甲斐があったらしい。
ゆっくりと立ち上がる。
寝転がる風間莉々。
そして――・・・・
「・・・・・今度こそ、仕留めたか・・・・」
金色の龍が『領主』の心臓を食い尽くしたらしい。
胸から罅割れが生じ、炭化してゆく。塵に戻るのだ。
その紅い瞳がこちらを見つめている。何か言いたそうな気配が伝わる。
けれど、侵食は止まらない。だから彼は言ってやった。
「お休み、伯爵・・・・」
その紅玉の瞳が揺れたような気がした。
けれど、それは感傷に過ぎないのかも知れない。
次の瞬間、伯爵と塵に還った。
「即席だったが、上手くいったな」
疲労困憊な風間の背中に手を回し、抱き起こす。
手ごたえ、いやこの場合足になるのだろうか?
それはともかく、捕らえた感覚はあった。
だが、それを確かめるだけの余裕も無かったのだが・・・。
『お休み、伯爵・・・・』
微かに彼の声が聞こえる。
『即席だったが、上手くいったな』
次の声は確実に聞こえた。
しかし、普段は使わない『金色の龍』を使った代償が
ここに来て出てしまう。
彼の声を聞き終わるか、その前にみっともない声を上げてしまう。
「ひやっ!んんっ・・・、や・・・めてぇ・・・。」
這いずる様に彼の腕から逃れる。
全てのチャクラを開放してしまう為に、戦闘が終わり緊張が解けると
全身が性感帯の様になってしまう。
正直、自分の性感帯が分からない為に『・・・の様な』と、しか表現できないのだが・・・。
自分では分からないが、普段は決して見せる事のない『潤んだ女の瞳』と、
言うものになっているのだろう・・・。
「ごっ、ごめんね・・・、御影くっ・・・ん。技の副作用っ・・・。」
息を荒げながらなんとか話す。
服が擦れるのも正直辛い。
こんな場所でなければ艶っぽいのかも知れないが。
戦闘時間の短さに反して、二人とも疲れていた。
初手の段階で全開で動いていれば、誰でもこうなる。
だが、だからこそ勝てたとも言える。
あのままずるずると長期戦になれば、恐らく敗北していただろう。
もちろん、風間の大技が決まっていなくても負けていただろうが。
『ひやっ!んんっ・・・、や・・・めてぇ・・・。』
這いずる様に風間が彼の腕から逃れる。
何故か彼女の瞳が潤んでいた。壮絶に嫌な予感。
デジャビュというやつか。八雲天音の顔が横切る。
『ごっ、ごめんね・・・、御影くっ・・・ん。技の副作用っ・・・。』
案の定、彼女は熱っぽい吐息を吐きながらそう言った。
彼は盛大なため息をついた。
「性的興奮を覚えているのか・・・・」
戦闘の余韻も何も無い。全く面倒な。
斬鬼衆は面倒な女が多すぎると思う。
「どうすればいい?手伝った方がいいか?」
この場合の手伝いとはひとつしかない。
『性的興奮を覚えているのか・・・・』
確かにそうなのだが、ズバリ言われると辛い、恥ずかしい・・・。
「そう・・・、だけど・・・、言わないでぇ・・・、そう言うのぉ・・・。」
普通に喋れない、顔は勿論、耳まで赤くしての抗議である。
『どうすればいい?手伝った方がいいか? 』
半ば呆れたような口調で彼が言う。
先日あれほど語っていた彼女がありながら良く言えたものだ。
御影流親切心なのかも知れないが・・・。
「手伝うって・・・、何を手伝うのよぅー!ふぁ・・・、んっ・・・、もういやぁ・・・。」
もう、フニャフニャのグニャグニャだ・・・。
「んっ・・・、はぁ・・・、んっっ・・・、見ちゃぁ・・・、いやだぁ・・・。」
半分泣きながら、自らの体を抱きしめながら、身をくねらせる。
見られても困るし、置いて行かれても困る・・・。
これだから滅多に使わない・・・、むしろ実戦では始めて使ったのだが・・・。
【展開は天音ちゃんの事もありますのでお任せしますv】
【つつくも良し、食べるもよし、強引に本部連行でもOKですvv】
色っぽい、とは言えない奇妙な態度。
くねくねぐねぐね身を捩じらせている。
「あー、どうすっかなー・・・・」
彼にしては投げ槍な態度でぼやいて、思案する。
正直、彼女に性的魅力は感じないのだが、性格には好感を抱いている。
だからと言って、だから抱くというのも違う気がするし、誰もそんなことは
望んでいないだろう。八雲天音のことが思い浮かぶ。背筋が凍った。
――要するに風間を一度満足させればいい。
――何も抱く必要はない。
「じゃあ、折衷案ってことで」
よっこらしょと立ち上がり、もう一度風間を抱きしめる。
服の上から軽く乳房に触れる。想像通り、なかった。
八雲天音と比べることすらできない。
それでも尖った部分を指で探り当て、弄る。
【つつくということで】
『あー、どうすっかなー・・・・』
人が窮地に立っていると言うのに、なんと投げやりな・・・。
その間も私は「あー」だの、「うー」だの情けない声を上げている。
『じゃあ、折衷案ってことで』
ヤレヤレと言う感じで彼が言った直後に恐ろしいことが起こる。
「ちょ・・・、せっちゅーあんて・・・、なんなのよぅ・・・、もぅ・・・。」
言うや否や抱きしめられる。
もうこの時点で意識がどうにかなりそうだ。
「きゃっ!いやっ!んっ・・・、いや・・・、なのに・・・、もぅ・・・、いやぁんっ!」
敏感な部分をいとも簡単に探り当てられると、全身に衝撃が走る。
目を瞑り、歯を食いしばる。
払い落とせば簡単に払える彼の手を阻止する事を
私の中の『女』が遮る。
「はぁ・・・、だめぇ・・・、天音ちゃ・・・、おこ・・・る・・・、んんっ!」
快楽に溺れつつも友人の顔が浮かぶ。
でも、もう少しで何かが来る気がする。
それが何だかは分からないが・・・。
【了解しました】
【そろそろ〆ですかね??】
無数の蝋燭が照らし出す、屍に満ちた部屋。
――何やってんだかね、俺は・・・
自嘲するしかない。
先刻まで此処で死闘を繰り広げていたというのに。
――いや、だからこそか。
極限の状況では、生存本能が目覚めるのが人間というものだ。
極限の状況で目覚める突発的な愛の正体は、大抵これだ。
『はぁ・・・、だめぇ・・・、天音ちゃ・・・、おこ・・・る・・・、んんっ!』
「それを言うな、俺だって色々辛いんだよ、わかれ」
理不尽なことを言う。仲間だからこそこんなことも言える。
やってることは痴漢行為だが。
気恥ずかしいので、さっさと終わらせることにする。
後ろに回りこみ抱きかかえる。
ブレザーを肌蹴け、ブラウスのボタンを外す。
指を滑り込ませ、直接指に挟んでこりこりと弄り回す。
毒を食らわば皿まで、という。両方の乳首を刺激して彼女を絶頂に導く。
普段ならこんな愛撫で達する者はいないだろうが、今の彼女ならこれで足りるはずだ。
というか、足りて欲しい。指に情熱と技巧を注いで駆使する。
【あと少しですね】
蝋燭が揺れている。
自分がグラグラしているのか?地面が揺れているのか?
朦朧とした感覚になってくる。
『それを言うな、俺だって色々辛いんだよ、わかれ』
心のなかで「わからない」と、答えるも口からでるのは吐息のみ。
「んんっ・・・、何か・・・、きちゃう・・・よぉ・・・。」
彼にもたれかかり、自然と手が秘所へと伸びる。
「ねぇ?なんでぇ・・・?何なのぉ・・・、もぅ・・・。」
訳の分からない問いを彼にぶつける。
空いた手が自然と彼の股間へと伸びる。
それを見つけると、無意識に小さな手が彼自身を刺激する。
「きゃっ!そこっ!だめぇー!あっ、あっ、あっ!いやっ!いやぁーーっ!」
思わず彼自身を強く握り締めると、達し、ぐったりと倒れこむ。
「はぁーっ・・・、はぁーっ・・・、あぁ・・・、もぅ・・・。」
ブレザーを手繰り寄せ、頭から被ると何か独り言を呟く。
――ああ、世界に果てってあるのかな?
現実逃避気味に考えていると、彼女は自分の秘所に手を伸ばしていた。
次に、彼の股間に彼女の手が伸びて擦る。
触るまでも無く、当然の現象として、それは勃起していた。
――だから辛いといったのに・・・・
刺激を強くしてゆくと、徐々に昂ぶってノンストップで絶頂に
上り詰めて行く。やがて辿りつく解放の境地。忘我の瞬間。
『きゃっ!そこっ!だめぇー!あっ、あっ、あっ!いやっ!いやぁーーっ!』
同時に股間が強く握られた。
無意識なのだろうが、何にせよ辛いことには変わらない。
――ああ、どうしよ。
今から帰って自己処理というのも後味が悪い。
八雲天音を呼び出すというのも気が引ける。
そもそも自分の都合で彼女を利用するつもりはない。
「・・・・帰るか」
やるせなさを抱えつつ提案する。
降りてきた空洞以外にも出入り口があるといいのだが。
ふと、我に帰る。
今日の出来事を整理してみる。
訓練→授業→訓練→見回り→索敵→戦闘→考えたくない
身なりを整え、顔をパシパシ叩く。
ほぼ同時に彼から声がかかる。
『・・・・帰るか』
その時、彼も相当酷い顔をしていたらしいが、
直視する事が出来なかったので事実確認なされていない。
「あぁ、あの・・・、ご迷惑かけてすみませんでした・・・。」
蚊の鳴くような声で呟く。
やばさと恥ずかしさが混じった複雑な心境である。
彼の事も考えずに、ある程度回復した気巧を使い空洞を昇る。
彼にその能力がない事に気が付いたのは昇りきった後だった。
結局、他の出口はなかった。
ロッククライミングの要領で微かな引っかかりを手掛かりに、
自重を支えながら、登ってゆく。
風間莉々がバツの悪そうな顔で佇んでいる。
何かを言うべきか。こういう時は下手につつかない方がいいか。
「緊急事態だったからな、人工呼吸と似たようなもんだ」
努めて平坦な声を出す。いつも通りに振舞おうとする。
彼自身、そう割り切らないとこの悶々とした気持ちのやり場がない。
「・・・・・天音には内緒にしておいてくれ」
結局、それが最重要事項であるあたり、完全に尻に敷かれている。
『緊急事態だったからな、人工呼吸と似たようなもんだ』
彼からの返答。
「あぁ・・・、はい。」
『・・・・・天音には内緒にしておいてくれ』
青白く変色した彼からの要望。
「あぁ・・・、はい。」
普段とかわらぬようにすればする程ぎこちない二人。
さしあたり本業?のコンビネーションは問題なかったので良しとするべきか?
次の課題は天音ちゃんに会った時かな・・・。
そう思いつつ本部へと足を運んだ。
【キリが良いのでこちらはこれで〆させていただきます】
【エピローグ的な物があればお願い致します】
【長時間ロール有難う御座いました_(._.)_】
悶々とした気持ちを抱えたまま夜を過ごす。
それからというもの、彼は風間莉々を以前とは違った感覚で
意識することになるのだが。
――要するに天音の時と同じじゃねえか・・・・
人は日々成長する生き物である。
だからこそ、進歩が無いというのは辛い。
ともあれ、彼のやり場のない気持ちは妖魔への怒りに転化される。
今日も今日とて彼は妖魔を狩り続ける。
【いえ、こちらこそ自己満足的ロールにつき合わせて】
【本当に申し訳ないですorz】
【本当にありがとうございましたノシ】
【いえいえ、今回の件で色々と繋がりができたと思いますので】
【またお時間があるときによろしくお願いします】
【おやすみなさいノシ】
季節は冬。場所は公園。時は夜。
某イベントが迫ったこの季節、風が必要以上にやたらと寒く感じるのは気のせいだろうか。
「…さ、寒い…。」
『……ハ、早ク終ワレセテ帰ロウ、ナ…。』
例によって寒さに歯(刃)をガチガチ震わせる一匹と一本。
その目は何かを探すかのように、右へ左へと揺らめいていた。
…と、言う訳で今回の雑用(イジメ。
「えーと、ハナっていうはぐれ式神がいるんだけど、彼女を組織に勧誘してきて。
え?理由?今日は寒いしー、もう日も暮れたしー、そして尚且つアタシが暇だから!
つー訳でさっさと逝ってらっしゃーい♪」(この台詞はあくまで道迷の記憶の中のものであり以下省略
「……あの腐れ妖魔、何時か絶対殺しちゃる……!」
『……モ、モウイイダロ…見ツカラナカッタトイウ事デ帰ロウ…。』
「…い、いや…見つけないとまた給料が…!」
歯(刃)が噛みあわないほど震えながら、標的を探す。
己の為、相棒の魔鋏の為、そして何よりも給料の為に。
【ハナさん待ちですー。】
【遅くなってすいません…。】
>>303 公園の片隅、ちょこんと腰掛ける影がある。
そこは彼女の定位置。
……つい先日、斬鬼衆との追いかけっこに勤しんでいたのにも懲りず、
危機感のまるで無い様子で、その少女は腰掛けている。
歳の頃は15か16。ここがお世辞にも「安全な」場所ではないことが、その存在を違和感で装っていた。
塾帰りの中学生が立ち寄るには、人通りが少なすぎる。しかも、いささか風変わりかつ時代錯誤な装い。
切れかけた電灯の明かり。みつめる目線は、公園を流浪う、あからさまに不審な人物へと向けられていた。
ぶつぶつと独り言を呟きながら徘徊する、手品師にも似たひょろ長い男。
―――お嬢さんお逃げなさい、というフレーズを髣髴とさせる光景。
彼女は豪胆にも逃げ出すことをしない。
獣のそれを連想させる、黒い瞳をひたと固定して、じい、とその様子を観察している。
ゆるゆると、時間は経過する。
世界から隔絶されたかのような薄明の中、注がれる目線を意識してか。
果てなく夕闇と人口の明かりの迫間を彷っていたその男の目線が。
少女のそれと、ようやくかち合った。
【はじめてみたはいいものの、不安材料しかないorz】
【よろしくお願いします】
>>304 『ネ、眠イ………』
「ね、寝るなミトオティン、寝たら死ぬぞ…。」
寒い。寒い。寒い。というかここ二日間何も食べてないから余計寒い。
魔鋏が何ていうかもう瀕死っぽいし、今日はもう帰ろう。
そう考え、最後に公園の中を見渡し―――
―――人工の光が、少女の姿を照らしていた。
「……ね、アレ。」
『……該当個体ヲ確認。』
標的が見つかったと喜ぶべきなのだろうか、それとも帰れない事を悲しむべきなのだろうか。
空腹の為どちらも考えられず、ゆっくり、ふらふらと標的に近づく。
何故、こんな怪しげな男がふら付いているのに、あの少女は逃げ出さないのかと考えもせずに。
「初めまして。…えーと、ハナさん、ですよね?」
式神の少女と、中間管理職のバケモノ。
切れかけた電灯の明かりの元、何はともあれ二匹は出会った。
文字通り、獣のそれを思わせる、漆黒の瞳。
そこには険もないが、かといって好意的というのでもない。
ふらつく男の道化た仕草に感慨を抱くでもなく、観察する目線。
―――匂いがない。
「人に仕える」者として彼女を定義する術式は、男を人間、と認識している。
時を経て、霊性を得たケモノとしての嗅覚は、それに否を唱える。
同調を意識するでもなく、その思考はだだ漏れだ。匂いを嗅ぐように、音を聞くように、
彼女にはそれを感知できる……つまり、精神干渉への耐性を持つような、修練を経た類の人間ではない。
一方で、彼女の知覚では感知しきれない、異様な存在感。
寒い寒い寒いというかここ二日間何も食べていないから余計寒い今日はもう帰ろう、と、
脳裏を霞めた思考に自らの飢えを思い出して、ハナと名を持つその妖は、僅かに眉を寄せる。
『初めまして。…えーと、ハナさん、ですよね?』
喋った。
条件反射的に、首を傾げて、更に相手を見る。
言葉は出ない。
相手が何であるのか、その結論を、彼女は出しかねていたのである。
…首を傾げられた。いや、あの、もっと別の反応を……まぁいいや。
「…間違えたかな…?(ボソ」
『イヤ、間違イナイトハ思ウガ…ホラ、写真。(ボソボソ』
魔鋏の刃が伸び、器用に懐にあった写真を渡す。
黒い瞳、古めかしい膝丈のワンピース、そして砂色のはねッ毛。写真には、目の前に居る少女が写っていた。
んー、はねっ毛がちょっと、妻の若い頃に似て…………
…ふっと、一人の女性が思い浮かぶ。愛しくて、それでいてこれ以上ないほど憎い―――
―――…御前ニハ、妻ナドイナイダロウ?
…あれ?妻?…ワタシャ独り身でしょうに。ああ、哀しいシングルベル。
まぁ、とりあえず逃げない、という事は多分本人なのだろう、そう思うことにして話を進める。
「……えーと、ワタクシ七妖会という組織で金妖を勤めております、世死見道迷と申します。
あ、どうぞ、これ名刺です。」
軽く礼をしてから、手馴れた様子で名刺を差し出す。先程の対応を見ると受け取ってもらえそうにないけれど。
というか、何でそんな観察するような目でコチラを見るのお嬢さん。
「えーと、ハナさん。唐突な話なのですけれど七妖会に入る気は御座いませんか?
いや、上のものがハナさんの実力を買っておりまして、是非にと。」
『決シテ悪イ話デハ無イト思ウノデスガ、ドウデショウ。
ア、資料モ色々ト御座イマス。チョット目ヲ通スダケデモ御願イデキナイデショウカ?』
寒さの中、精一杯の営業スマイルで資料を並べる一匹と一本。
目の前の少女が自分達の存在を色々と疑っている事など、全く思いもせずに。
彼らの言葉を反芻してみる。
(七妖、会)
僅かに、胸の奥が灼けるような感触。この言葉にまつわる記憶は、あまり良いものではない。
だが、それ以上に、引っかかったのは、なにやら別の存在―――こちらは全うに、妖魔と呼ばれる
存在のようだった―――と遣り取りする、そのあいだに、奇妙な男の姿をしたソレが見せた、
ひどく強烈な『感情』だった。人間の思考を擬態しているかのような、必要以上に「人間らしすぎる」
振る舞いから覗いた、なにか。
(つよい、気持ち)
(憎い/愛しい/愛しい/愛しい/憎い)
ほんの一瞬の、『ぶれ』。それが、彼女の興味を引いた。
好奇心とは、肉食獣の捕食行動ですら、同一の文脈で語り得るという、本質的には残酷性を伴うものだ。
その志向性は、少女の振る舞い人間に似せて見せると同時に、その本質があくまでヒトとは異なるものであることを示す。
(ニンゲンの、ココロ)
模造でも擬態でもなく、生々しいなにか。
会いたい。
狐精の精神感応力は、男の、異界のモノと置き換えられた精神に形を止めた、その一念を引きあてる。
好奇心は猫をも殺す……それは猫に限ったことではなく、犬であろうと、キツネであろうと、妖魔であろうと同様の事態は
起こりえる。しかし、僅かな共感が、後押しした。
「……あいたい?」
夢遊病者のように、呆、と囁いた少女の瞳が蒼を帯び、その姿が、朦と霞む。
はじめから別の何かであったかのように「見せる」、それが彼女の異能。
資料を広げている間に、チラリと相手の少女を見る。
…やっぱ資料見てないよ。やってられないよ神様。
『「「……あいたい?」」』
「…へ?誰にですか?」
少女の瞳が蒼を帯び、その姿が霞む。
それを見ている内に、何か何処かに引き込まれるような、そんな感覚を覚え―――
―――肩まで伸びた、紅いはねっ毛。吸い込まれそうなエメラルドの瞳。
目の前に居たのは、漆黒のドレスを纏った、何処と無く陰のある美しい女性。
「?…まぁいいか、資料の説明を…
…あれ?ハナさんってこんな感じ…でしたね、んじゃ説明を。」
『…イヤ、騙サレルナ。御前シッカリ化カサレテル。』
―――ドクン。
…自分の中で、何かが動いた。
「…あ…れ…?何だか…おかしいですね…。
何故かあの女性…見覚えが…。」
『……道迷?…!マズイ、精神操作ガ…!』
…気分が悪い。何かは分からないが、あの女性はとても嫌なモノだ。
やめろ、私達を乱さないでくれ。頼む、苦しい、助けて…。
頬に、手に、服に。妖魔、人間関わらず。場所を選ばずに浮かび上がる、大量の顔。
そこに浮かんでいるのは、一つの例外も無く苦悶の表情。
「…私に…一体何を…。苦し…。」
『マサカ…心ヲ読マレタノカ?クソッ!
スグニヤメロ!貴様、自分デ何ヲシタカワカッテイルノカ!?』
魔鋏が叫ぶ。すぐにやめろと。
けれども、少女が世死見を化かした時点で。その姿が、道迷の目に写った時点で。
その時点で、もう、既に手遅れだった。
(かなしい)
(なんて狂おしい)
望んで行ったと見えて、そうではなく。
好奇心と見えたものですら、彼女のものではなかったのかもしれない。
ヒトという存在に憧れた狐精の、その心を求める志向性―――それこそが鍵。
気付かぬうちに、呑まれていたのだ。
既に違うモノへと変わり果てながら、ある男の願望のみでヒトの形を保つ、その怪物の本質に。
『スグニヤメロ!貴様、自分デ何ヲシタカワカッテイルノカ!?』
男が手にしていた、魔鋏が「号ぶ」。
その声に刹那、意思というものが欠落していた少女の眼に、常なる光が戻った。
行使したのは『錯視』。感応した感情に呼応する存在を、相手の視界の自らの姿と置き換える術。
相手の目に何が映ったのか、最早彼女には確認できない。
感応しうるヒトの思考を、相手の存在が逸脱してしまっているのだ。
「これは何」
細い声が呟く。
頬に当てた指先を通して気付かないうちに自らの頬を伝っていた感触に気付くが、
目の前に在るものを認めてしまえば事態はそれどころではない。
ごく普通の、真夜中の公園だった、その筈の空間。視界の至る場所が歪んで……
文字通り、歪んでいる。極彩色とも無色とも取れる、理を逸脱した色彩を二重写しに。
繊細に過ぎる嗅覚が、湿った泥の匂いにも、腐った肉の匂いにも似た、不快な空気を捉え、
人間のそれを模した視界の、その三半規管が平衡感覚を喪失する。
「ハナは、何をしていた……?」
いまだ幼い妖の、決して広くはない、認識世界を大きく逸脱する光景。
かつて、育ての親たる人間に聞かされた話を思い出す。
ヒトと妖魔の理が相克するこの世界の裏側に、その理さえも通じない、より異質な『すきま』が存在する、という。
神に隠された存在が落とされる場所。ヒトでない者が、時に現れ出でる夕刻。
広がり出でようとしているのがその世界であると悟った。焦り、すらも及ばない。立ち尽くす―――
『「ハナは、何をしていた……?」』
『…チッ!呑マレテイタノカッ!』
時折、「世死見道迷」に意識を呑み込まれる者がいる。例えば、道迷と同じような体験をした者。例えば、道迷と同じような心の傷を持つ者。
目の前の妖魔も、道迷に通ずるところがあったのだろう。意識を呑まれ…そして、「世死見道迷」のもっとも望む姿を見せた訳だ。
―――通リデ目ニ生気ガ無カッタ訳ダ、クソッ!!
寄生者である魔鋏にとっての最悪の失態。何としてでも、宿主がバケモノに戻る事だけは阻止しなければ。
憤怒、嫉妬、憎悪。爆発したかのように、様々な感情が溢れ出る。空間を歪ませ、狂わせ、それでもまだ止まらない。
勝手に口が、言葉をつむぐ。まるで、誰かに体を乗っ取られたかのように。
「君が悪いんだ、君が私を裏切るから…ッ!!
…我ながら哀れですねぇ、所詮政略結婚だったのに、本当に愛されているとでも思ったのでしょうか。」
『落チ着ケ道迷!あれハ幻ダ、惑ワサレルナ!』
一部が崩れ、一部が膨れ、人間としての姿から巨大な肉塊へと変じていく。
彼と、彼を取り巻く世界が変わる、『正気』から『狂気』へ、『表』から『裏』へ、そして、『こちら側』から『向こう側』へ。
今まで取り込んだ様々な者達の恨みや憎悪。大量のそれに飲み込まれそうになる、自分自身の自我と意識。
…いや、違う、これは、この感情、この恨み、この憎悪の持ち主は。
「世死見道迷」の素体である、私自身。
この恨みが私のものなら、混乱している私は誰だ?
―――七妖会の金妖?…違う…。
―――妻を寝取られた哀れな人間?…違う。
―――人を、妖魔を欲望のままに喰らうバケモノ?違うッ!!
「私は、私は本当に君を愛していたッ!なのに君は…
…哀れな私、本当に私は彼女を愛していたのでしょうか?…いや、ただ彼女を所有したかっただけだ。」
『…ッ!!識別名「操リ人形」展開!出力150%!、200!―――』
魔鋏が、叫んでいる。彼を、自分の主人である者をバケモノへ戻すまいと。
それは、一体誰だ?…分からない、妻?私に妻が居たのか?何故忘れていた、何故こんなに私は怯える、
何故。私は何者だ、妖魔か?人間か?何故分からないのだ、自分の事なのだぞ、私は、私は、
私は、私は私ハわたシはワタシハ私ハWAタシHaワタしはわたわたしわたしはァァァアアァアァアァァァァァアアアアアッ!!!
『―――250!、300!、350!、400%ッ!!』
魔鋏の叫ぶ数字が増える、同時に段々と元の姿を取り戻す辺り一帯。それと同時に肉塊も、元の男の姿に戻ってゆく。
『宿主ノ意識支配、失敗……………………道迷?…大丈夫…カ?』
「…………ああ、大丈夫だ。それにしても…久しぶりに思い出したよ、昔の事を。
それが忌々しく、永遠に思い出したくなかった記憶であったとしても、一応礼は言っておくものなのかな?」
軽く、目の前の妖魔に一礼する。
忌まわしい記憶。愛した者に裏切られた、そして、自分がバケモノになる切っ掛けであった、あの時の記憶。
「…過度な激情により、君が精神を操作しきれなくなった、といったところか。
ま、そのお陰で意識を保ったまま元の力を行使できる訳だがね。我ながら、良い相棒を得たものだな、私は。
…初めまして、式神のお嬢さん。…そしていただきます。君の犠牲は無駄にはしないよ。」
式の少女の前に立つそれは、もはや先程までの妖魔ではなく。
向こう側の妖魔としての「世死見道迷」は、目の前の「餌」を見て、ニヤリと笑った。
種を明かせば、彼女の意思が、まともに機能していたのは、目が合った時点までだった。
不可解でありながら、霊的にはあまりに無防備な男の存在の奇妙さ。
そこに興味を持ったのが過ちだった。ひとつ言えるのは、それが無邪気な好奇心によるものだったにせよ、
その過ちが招いたのは、力なき妖魔一匹を食い殺すには充分な状況だった、ということである。
相手の感覚・思考を、自らのものであるかのように「見る」。
同調、それ自体は行為というよりも、狐精である彼女の持つ「錯視」という能力、その付随的な特性。
相手の思考そのものに干渉する術を持っているわけではない。
対象に強い志向性を持つ感情が宿っていれば、時に引き摺られる。
よく似た志向性が、彼女自身に宿っていれば尚更。
―――「いない」人間を求める、妄執。
押し殺した筈のソレが強く共鳴した、その残滓だけが、
面前で展開される異様な光景に至った道程を示している。
『…ッ!!識別名「操リ人形」展開!出力150%!、200!―――』
叫んでいるのが男の手中にある道具―――人間が、主に紙、を切るのに使う鋏、その奇妙に大きなものであると
認めるが、そのシュールな絵図とて、それが意味するものを理解し得ない彼女にとっては、さしあたっての救いにもならない。
「っ……嘘っ……」
こんな。
歪曲してあたまを揺らす、男の絶叫。
こんな。
不快感だけが迫りあがって、気付けば膝をついている。
「……!」
叫ぶな。訴えようとした言葉が、声にならない。
知らない。こんなモノ、知らない……!
不協和音が収束したのちも、少女はしばし、身を起こせずにいた。
異界の光景が男の裡に織り込まれ、人口の光に淡く照らされた、薄明の光景が戻ってくる。
―――それでも、威圧感は消えることなく。
燕尾服に山高帽の、ひょろ長い男が、元のようにその場所に立っていることに、
その言葉を聞いて、彼女はようやく気付いた。
【凍結申請……】
【(中の人が)陥落警報発令中、申し訳ない……!】
【煮ても焼いても可。死ななければ。】
【再開は、さしあたっては遭遇時、行けそうならお声をお掛けくださいませ】
『…オイ、貴様ラシクナイゾ。イキナリ妖魔ヲ…』
「―――黙れ、私は君の主人だろう。指図をするな。」
『…!………。』
宿主の豹変にも、何も言えない魔鋏。
否。今、この状態のこの妖魔に何かを言える存在などそうそう居ない。
…不意に、左胸に手を当てる。
「…ふむ、力と共に核もこちら側に来てしまったか…。」
左胸―――丁度、心臓のあるであろう場所が光っている…核、素体である「世死見道迷」の心臓であった器官。
破壊されれば、それは即ち「消滅」を意味する、彼にとっての唯一の急所。
「ま、その心配は無い…か。」
意識を失っているのだろうか、薄明りの中目の前で蹲る式の少女。
その光景に、生前の記憶がフラッシュバックする。
自分の手には一振りの鉈。目の前に倒れている、紅い髪の女。
いや、その紅は髪本来の色ではない。それは彼女の体から流れ出す、紅い液体の色。
そしてその四肢を?ぎ取り、肉を―――
「…いや、その前に楽しむのも悪くは無い、な。」
呟きながら、少女へ歩みを進める―――
―――人工の光に照らし出されたその影だけが、肉と触手の塊である彼の本性を映し出していた。
【了解しました…すみません、こちらが遅い所為で…。】
【中途半端な鬼畜になりそうな悪寒。…いや、いっその事実は嘘でした、てへっ…ってドンデン返すのも…。】
【それでは、次の機会に。こんな時間までお付き合いいただき、有難う御座いました〜。】
――深い静寂。深夜の新都。
金色の髪、漆黒のライダースーツ。
鋭き双眸に冷たい殺意を凶戦士が立ち尽くす。
繁華街と住宅地の隙間にある小さな公園。
街灯に照らされ彼は立ち尽くしていた。
その足元に転がるのは妖魔の屍。
黒い豹に似た、だがもっと別の生き物の屍だ。
ジャングルジムが歪み、ベンチが破砕されている。
「くだらねえな・・・・」
短く吐き捨てる。いつものことではあった。
いつものこと。それはその妖魔にとっても同じこと。
いつものように元上司に苛められ、いつものように退魔師と接触し、
そして、いつものように返り討ち。嗚呼、これが流行の『わぁきんぐぷーさん』という奴なのか。
…という訳で今回の仕事(イジメ)
「えーと、ちょっと最近七妖会の影が薄くなっているから、たまには組織らしいこともしなきゃと思う。
と、ゆー訳で今某公園で某退魔師が暴れているから、適当に情報収集してきてちょーだい。ああ、特別手当もつけるから、頑張ってね☆」
とりあえず、命令を受けた時に、特に☆に殺意が湧いたのは、自分の器が小さいからなのだろうか。
閑話休題、そういう訳で。
「もしもしそこのライダースーツのお兄さん。
お名前とご住所と生年月日とメルアドと恋人の名前を教えていただけると有り難いのですが。」
『エエ、ソレ聞イタラスグ帰リマスンデ、チョット暴力沙汰ハ勘弁シテクダサイ。』
人気の無い小さな公園、その中に立ち尽くすライダースーツの少年の影。
彼に向かい、遠目の間合いから手をパタパタと振って喋りかける妖魔の男。
…え?何で近づかないのか?いやだって既に誰か死んでるし。死ぬの怖いし。
「(特別手当特別手当特別手当特別手当…)
あの、とりあえず戦闘能力とかそんなものはどうでもいいので、まかり間違っても暴力沙汰は勘弁していただきたいのですが。」
『…エエ、マァ、チョコット見逃シテイタダケルトアリガタイノデスガ、エエ。』
弱腰に語りかける。というか、どっちが妖魔だか分からない。
そして、大体次に退魔師が起こすだろう行動も、いつものことであった。
『領主』と呼ばれた妖魔の復活を画策した魔術師がいた。
そのため、新都一帯の妖魔が軒並み『領主』の生贄に捧げられた。
その『領主』も先日確実に滅ぼした。
その影響なのか、早速このような下級妖魔が再び湧き出し始めている。
彼は寒さに耐え忍び、日課の巡回をこなしている。
この妖魔を狩ったのはその最中に発見したからだ。
・・・手遅れだった。
喉笛を噛み千切られ、絶命している女性に視線を向ける。
まだ若い。OLだろうか。血の海に沈む女性に束の間の黙祷を捧げる。
それを阻むように、小さな声が聞こえた。
――「もしもしそこのライダースーツのお兄さん。
お名前とご住所と生年月日とメルアドと恋人の名前を教えていただけると有り難いのですが。」
――『エエ、ソレ聞イタラスグ帰リマスンデ、チョット暴力沙汰ハ勘弁シテクダサイ。』
振り向く。鋭い視線を向ける。微かな妖気を発する存在に対して。
『ソレ』はいかにも怪しげな風体をしていた。
一々特徴を羅列するのも面倒なので、『怪しい』の一言で済ませる。
「・・・お前も妖魔だな?」
自然体のまま拳を軽く握る。そのまま軽く歩き出す。
散歩に出るような気軽な足取り。
無論、その果てにあるのは、対象物の絶対的な死あるのみだが。
ついこの間、やたら強い吸血鬼が復活しようとしたらしい。
で、その吸血鬼は、やたら強い退魔師が倒したらしい。
…どちらにせよ、自分にはあまり関係ないけれど。
退魔師の近くに広がる血の海、その中に浮かぶ肉の塊。
遠目からではよく分からないが、人間の女性だろうか。
運が悪かったのだろう。その目、その口、その顔は、どう見ても生きているようには見えなかった。
「…あー、この度はご愁傷様です。もしかして、お知り合い?」
『…………。』
退魔師が振り向く。彼は…………………
……え?御影義虎?いや、聞イテナイデスヨ?
御影義虎。「斬鬼衆」に所属する危険度Aの超危険人物。
…とりあえず、目の前の少年が誰であったかを認識した瞬間、少し目の前が暗くなった。
相手は有名な絶滅主義者だ、見逃してもらえるとは思えない。
『「・・・お前も妖魔だな?」』
「いえいえいえいえ、違います。私は善良な市民です、妖魔などとは一切無縁な、ただの善良な市民で御座いますッ!
だから、ゆえにそんな怖い顔をせずに近づかないでいただけると嬉しいのですが!」
『…南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…。』
既に逃げ腰。いや、まぁ、逃げ切れないだろうけど。
この展開、このパターン。結末は、予想するまでもなかった。
――刃を握る意味。刃を振るう意義。
正直わからない。どれだけ考えてもわからない。
足取りは軽い。拳には無駄な力みが入っていない。
正中線にブレがない。無造作に見えてその実高度な歩法。
――けれど、このような理不尽な死を迎える者が一人でも減るのなら。
この戦いにもきっと意味があるのだろう。
ソレが何かを喚いている。
別の声も聞こえる気がするが些細なことだ。
――我らは斬鬼衆。望むのは万民の笑顔。
願うのは万民の平穏。
我らはその為の刃となり、闇を切り裂き祓い光を齎す。
我らはその為の盾となり、万民を穢れから守る。
だから。
「聞こえないな」
突如加速。緩から急。静から動。目標を射程圏に捉える。
疾風の歩法から繰り出される鋭き殺傷の拳。
力無き正義は無力、正義無き力は暴力と、誰かが言っていたけれど。
そんな事はどうでもいい、要は勝った奴が正義なのだから。
近づいてくる退魔師。この少年も要は自分の為に闘っている。
単に人間の世の方がが、妖魔が世よりも都合がいいから。
…自分は、その逆だけれども。
そうだ。皆自分の都合で生きている。それは妖魔だろうが人間だろうが同じこと。
どうせそうなら、自分の野望をかなえてやる。他人の都合なんざ知った事か。
――人間だと?くだらない?ヒトも妖魔も所詮は同じよ。
欲望のままに、舞台の上で踊り続ける哀れな我等。
そこに何の違いがある?そこにどんな違いがある。
人間の求めるものは、我等にとっても同じというのに。
駄目で元々、覚悟を決める。
…どうせ再生能力だけは超一流だし。
「…道迷式歪曲系空間転移術特許出願中ッ!」
退魔師の拳が触れた瞬間に、紙テープとなって弾ける妖魔。
空間移動術――自身の体を瞬間的に異空間へ飛ばし、移動する術式。
『向こう側』の妖魔である道迷、たとえその力の殆どが封じられていようとも
多少の移動は訳はない―――
「死、死ぬかと思った…。」
『…イヤ、相手ノ背後ニ移動シタダケジャンッ?!』
…事も、無いらしい。
期末試験も終わり、補修もない。聖夜が近い。
街がクリスマスカラーで彩られている。
刹那に等しい時間の中で彼は想う。
このOLにも聖夜を共に過ごす約束を相手がいたのだろうか?
帰りを待つ者はいたのだろうか?今も待っているのだろうか?
無関係だとわかりつつ、けれど胸が軋んだ。どうしようもなく軋む。
その理由はきっと――
拳が触れる。『内気』がそれを媒介にして打ち込まれる。
違和感。弾ける何か。紙テープ?気配が一瞬にして掻き消える。
突如、背後に気配の主が出現する。
即座に振り向く。
「空間転移だと?」
呟きながらも攻撃は続く。足元に転がる缶を爪先で蹴り上げ、
次の瞬間それが撃ち出される。霞んだ手によって。
弾丸の如く撃ち出される空き缶を追いかけ跳躍。跳び蹴りを放つ。
もし適当にあしらえたら、あの死体、持って帰ろう。
現実逃避か、やたら現実的な事が頭をよぎる。
あそこにあるのは肉の塊。それだけだ。
ヒトが肉を食べる時、その家畜の生涯に思いを馳せるか?
何かを食べる時、どれだけのヒトがその事に感謝する?
それは妖魔も同じ事。
結局、喰わなければ死ぬし、喰う為には殺すしかない。
ま、確かに遊びで殺す奴も居るには居るが結局のところ、
無駄に殺戮を好む奴は、他の妖魔からも疎まれているものなのだ。
背後、即ち、退魔師にとっての死角。
妖魔の手には、懐から取り出された、大量の丸くて黒くて導火線のついた物騒な物体。
それらを一斉に目の前の退魔師に向かって投げ―――
「燃ゆる想い、今貴方…はうッ!?」
―――空き缶が、カウンターヒットした。
「…はらひりふれ…ひでぶッ!!?」
―――ついでに跳び蹴りも、モロに喰らった。
当然の様に倒れ、ピクピクと痙攣する妖魔。
とりあえず、勝敗は誰の目から見ても明らかだった。
――空間転移。
その名の通り空間を捻って渡る術である。
妖魔が時折使う移動方法だが、無制限に使えるはずもない。
環境や条件に左右される移動方法だからだ。
もし無制限に使えるならすでに『ソレ』は逃走しているだろう。
空き缶は動きを見極める為の布石。
跳び蹴りは大雑把に見えるが、相手の虚を突くには最適。
外れても次の行動には差支えがない、少なくとも彼にとっては。
『燃ゆる想い、今貴方…はうッ!?』
――呆気ないほど簡単に空き缶がヒット。
『…はらひりふれ…ひでぶッ!!?』
ふらついている『ソレ』の顔面に跳び蹴りが深々と突き刺さる。
当然のように倒れる。痙攣している。
「・・・・なんだコイツ」
呆気がなさすぎる。
とりあえずどうしようか、などと考えてしまう。
「・・・・面倒だし殺すか」
最初からそのつもりだったが、その結論に到達するのに何故か
時間がかかってしまった。彼は軽く跳躍し『ソレ』の顔面を思いっきり踏みつける。
【そろそろ締めでしょうか?】
【とりあえず、死んだと思い込んでそのまま立ち去る→そちら復活】
【という流れでしょうか?】
空間転移までしたのに、空き缶にやられた。せめて、銃で屠って欲しかったのに。
…まぁ、飛び道具には極端に弱いので、仕方が無いのかも知れないけれど。
「死、死ぬ…ほんとに死ぬ……」
ピクピクと痙攣するも、一応意識はあるのか呟いている。
嗚呼、目の前には退魔師が、銃で殺されるのか?それとも拳で?
え、なんで跳躍―――目の前に何故か靴底が―――
「ブギュッ………」
何だか妙な効果音を立てて、粘土のように押し潰れ、沈黙する。
押し潰したところから、紙片へと変わり…後には、右手首と鋏だけが残った。
【ですねー、眠気が…】
【そういう流れで御願いしますー。】
【あ、もちろん何かして下さっても構いませんよ〜、一部を持ち帰るとか、更に追い討ちとか。】
確かな手応え。踏み潰し命を絶つ感触。
押し潰した部分が紙片に変わり・・・・後には右手首と鋏だけが残った。
「変な妖魔だったな・・・・」
呟いて、残った右手を持ち上げる。まだ暖かい。
何故持ち上げたのか、自分でもわからない。
地面に落とし、残った鋏で地面に串刺しにしておいた。
あとは処理班に連絡すればどうとでもしてくれるだろう。
女性の死体も豹の屍も同様にしてくれるはず。
携帯で連絡する。通話を終え、公園を後にする。
・・・何故か、途中で振り返った。
もう屍と静寂しかないというのに。
首を傾げつつ彼はその場を立ち去った。
【では、こんな感じで】
【今度は吸血鬼の方でよろしくお願いしますね】
踏み潰される。己の体が、己の生命が。
己の体から生命が消えてゆく、この感触。それは死ではなく、完璧な魂の消滅。
これでまた、「世死見道迷」に取り込まれた魂が一つ、闇へと消えた。
…そう、今まで取り込んだ、数え切れない程の魂のうちの一つが。
『ツッテモ、通常状態ジャシブトクテモ大シテ意味ナイケドネ。弱イシ。』
いや、余計な突っ込みはいらない。…とりあえず本題に戻ると。
仕事を終えた退魔師を見送る、一本の鋏と手首。
『…行ッタゾ。』
退魔師が、完全に見えなくなったところで鋏が呟く。と同時に、瀕死の蜘蛛の様に動きだす手首。
体全体(?)器用に鋏を抜くと、疲れた、と言わんばかりにグッタリと寝そべった(?)。
『エ〜、自分ガ連レテ帰ルノカ?
…エ?…アア、血液ネ。…ハイハイ、我侭ナ御主人ダ…。』
一通り愚痴り終えてから、刃を器用に使って、手首を引き摺り血の海まで這いずる鋏。
そしてその紅い液体に刃を浸し―――
―――結局のところ、処理班は殆ど仕事をする必要は無かった。
彼等が現場に来た時には、血の染みこんだと思しき跡と、紙片の山はあったものの、
妖魔や、人間の死体など、影も形も無かったのだから。
【自分の駄文にお付き合いいただき、有難う御座います…。】
【此方こそ宜しくお願いしますね〜。】
【めぐみ待ちで待機させていただく】
【お待たせしました。】
【佐々木君の戦力等分からない部分もあるので】
【書き出しお願いしてもよろしいかな?】
【了解しました。では適当に…】
夜更け。一日も終わり、ほとんどの人間が眠りにつく頃、
オレは失踪した姉の行方を探すために、夜の街を彷徨っていた。
人の気配が殆どしない街の路地裏を歩く。
やはり辺りはひっそりと静まり返り、不気味を通り越して一種の世界を作り出しているように思えた。
そう、この時点で選択を間違えていた。なぜ、それが「異常」だと気づかなかったのか。
「………この辺りみたいだが」
姉の情報を持っているかもしれないと紹介された情報屋の居場所を探して、
たどり着いた場所は袋小路。しかし、やはりそこにも人影ひとつみつからない。
「…騙されたか」
思い返してみれば、オレに情報を与えたヤツはどうも信用の出来ない小物っぽさがありありと出ていた。
まぁ、この場合騙された方が悪い、ということになるのだろうが。
少しばかりの苛立ちを抑えながら、踵を返そうとしたその時―――、背中を何者かに強打され身体が思い切り吹き飛ばされる。
「か、はっ………!」
鋭利な刃物で貫かれるよりも、苛烈な衝撃。
あまりの突然の衝撃に、受身ひとつ取ることが出来ず、きりもみ状に吹き飛ばされアスファルトに叩き付けられた。
たったの一撃。たったの一撃だというのに、あまりの激痛に一気に力が抜けていく。
ただオレに許されている行為はひとつ。痛みに喘ぐことだけ。
「あ、が……ぐっ……、だ、れ、だよ…!」
犯人を捜そうと上を向くが、そこに存在したのはまさに「化けモノ」
醜い顔をした、落ち武者のような化けもの。その手にしている刀は血に塗れており、
オレはある種の恐怖を抱いた。
【ありがとう、よろしくお願いします。】
――聖なる夜。
煌びやかな街、愛を語り合うカップル。
いずれも私には関係がない事だ。
とくに面白みもなく、下らない行事の一つにしか見えない。
寂しい訳ではないが、鬱陶しいので街外れまで足を伸ばす事にする。
特に理由もないが、後から考えれば『異形』の気に捕らわれていたのかも知れない。
自動販売機でコーヒーを買い、タバコに火を付け、その場にしゃがみ込む。
一服してコーヒーを一口飲む。
いつもならそれから今日の宿を探すのだが、今夜はそうも行かない様子だ。
響く声――おそらくは青年だろうか?
感じる妖気――中級の妖魔だろうか?
放っておいても構わないのだが、なんとなく興味を抱き足を向ける。
予想通りの光景が広がっている。
ポケットに手をいれたまま、咥えタバコでそこにゆっくりと近づく。
「今日は仮装パーティーじゃなくてクリスマスだぞ?」
タバコを捨て、足でもみ消しながら異形の者に問いかける。
【こちらこそ、よろしくお願いします】
情けないことだが、うつ伏せに倒れたまま身体が思うように動かない。
――こんなことになるくらいなら、もっと鍛えていればよかった。
そう思うと同時に、ああここでオレは死ぬんだなと諦めのようなものをどこか悟っていた。
『今日は仮装パーティーじゃなくてクリスマスだぞ?』
と、その時不意に聞こえてきた声の方向へ顔を向ける。
男か女かはその暗さでは分からない。が、声を聞く限りではなんとなく女だと言うことが分かる。
「なに…してるんだ…! こいつ、普通じゃない……ッ」
あんたも巻き込まれてしまう。だから、さっさと逃げろ。
そう伝えたかったが、ビリビリと全身を走る痛みにさえぎられてそれを口にすることが出来なかった。
すると落ち武者は新しい獲物が来たと思ったのだろうか。
標的をあっさりオレから『彼女』へと変えた様子で、その顔には醜悪な表情が更に深められていた。
生温かい、じとっとした嫌な風が吹く。
何かと思ったら、その落ち武者が女性へと向かって刀を振りかざしながら襲い掛かっていた。
逃げろ。
そう伝える前に、落ち武者は『彼女』の頭の上に跳躍し
首を切り落とさんばかりの勢いで刀を一気に振りぬいた。
『なに…してるんだ…! こいつ、普通じゃない……ッ』
そんな事は言われなくても分かっている。
そう答える間もなく異形が飛びかかる。
振りかかる火の粉は払うしかない。
軽くバックステップで異形の攻撃を避け、腹部に蹴りを見舞う。
左手をポケットから出し一言呟く。
「・・・双龍。」
次元に亀裂が入り、長剣と銃を一体化した得物が手元に届く。
銃口を向け引き金を引くと、異形に炎の弾丸が数発打ち込まれる。
「不気味なクリスマスキャンドルだな。」
冷ややかな視線で炎に包まれ苦しむ異形を見据える。
>>332 なんなんだ、これは。
アクション映画の撮影か、何かか。
『彼女』は鮮やかな脚を鞭のようにしならせて、化けものの腹部に蹴りを叩き込む。
その勢いに押され、化け物は後ずさりどこかうろたえているように見える。
気がつくと『彼女』の手には何やら握られており、その先を化け物に向けると
この不気味な静寂を打ち破るかのような轟音と共に火炎弾を連続して
その化け物に叩き込まれる。
聞くもおぞましい断末魔をあげながら、
化け物は全身を煉獄の炎に包まれ、悶え苦しんでいた。
そして、その炎が消えるまでにはその化け物は灰燼と帰して、消滅してしまった。
なんてことはない、たったの数分間。
オレはただ呆然とその様子を眺めることしかできなかった。
けれども、彼女のその姿はあまりにも鮮烈すぎて、しばらく我を忘れていた。
「……すまない。礼を言っておく。オレは……八式。
一応聞いてみるが……あの化け物、そして、あんたは何なんだ?」
苦しみ、灰燼と化して行く異形。
とくに恨みがある訳ではないが目障りな者は消す。
時同じくして手元から双龍が消えて行く。
一つ気になる事もあり、青年に近づく。
彼の方から先に話しかけてきた。
素直にその問いに答える。
「いや、礼には及ばないよ。さっきのは見たまま化け物さ。」
フッと、笑いながら答える。
「私は那珂川めぐみ・・・、ああ言うのを倒して金を稼いだりしている。
今日は特別、八式君へのクリスマスプレゼントだ。金はいらない。」
返答しながら彼の身体をサラッと見る。
あの異形に襲われてこの程度で済むとは・・・、まだ未熟だが能力者なのだろうか?
「・・・これからまた、ああ言うのに会うかも知れないな、君は。
強くなるか、逃げ足を速くなるか・・・、引き篭もる様にした方が良い。」
それじゃと、手を挙げて踵を返す。
【そろそろ〆ましょうか?】
「めぐみさん……か。 ……所謂ハンターってヤツ…か?
クリスマスプレゼントにしては…ずいぶんと物騒だけれどな」
気づけばそんな軽口を叩いていた。
緊張の糸が切れてしまったのか、どうかは分からないけれど
彼女に助けてもらったことは感謝しきれてもしきれないぐらいだ。
「……いやだな。それは勘弁してもらいたい。
じゃなきゃ、いくら命と身体があっても物足りなくなる……
それに、オレも引きこもるにはいかない事情があって……な」
確かに先ほどの戦いは強烈だった。恐怖も感じた。
けれど、それより何よりも、姉の行方を突き止めなければ納得することができない。
強く……なれるのだろうか? でも……それでも、やらなくちゃいけないことなのかもしれない。
「……分かった。肝に銘じておく。また、な」
彼女とはいずれまた出会う。
そんな気がしてならなかった。
【それではこんな感じで締めということで。
どうもお付き合いしていただいてありがとうございました。
どこかぎこちないロールで申し訳ありません…今度は慣らしていきたいと思います】
【遅くまでお付き合いさせてしまって申し訳ありませんでした。それではお疲れ様でした、おやすみなさい】
何か訳ありの様子だが、私には関係の無い話しだ。
だが、割と可愛い顔をしているし機会があれば助けてやるか。
そんな事を考えながら今日の宿を探す。
【それではこちらもこれで失礼するよ。】
【こちらこそ慣れないロールで申し訳なかった。】
【また機会があれば是非お願いする。ゆっくり休んでくれ、良い夢をノシノシ】
【名前】天神 志穂(あまかみ しほ)
【年齢】21
【性別】♀
【サイド】中立
【組織】?
【サイズ】168cm、B84W58H86
【性格】浮世離れしている。言葉遣いが硬く、男のようだが、不器用なだけ。
但し、その使命と経験から、人間にも妖魔にも心を開くことを知らない。
【容姿】束ねて後ろで一本の三つ編みにした長い黒髪。
巫女装束に白篭手と白い刀身の日本刀。
【能力】天神流剣打術/雷術/精神系術無効
【武器】雷光(日本刀)、白篭手
【得意】和姦、強姦(対妖魔のみ)
【NG】グロ、隷属、スカ
【弱点】雷撃の効果がない地属性系統の魔族、闇系の術(抵抗が低い)
【備考】出雲天神の元系にして、裏へと隠れた神社を継ぐ戦巫女。
雷神の血を受け継いでおり、人間としては異例の雷撃術を扱う事が出来る。
だが、普段は術そのものを戒めており、神刀「雷光」をもって戦う。
通常の剣術と異なり、打撃、蹴撃も絡めた総合格闘との混合戦術である。
雷光は、その名の通り、使用者の力によって雷撃を纏う事が出来るが、
刀自体の攻撃力は通常の日本刀と然程変わらない。
現世の妖魔と人間の均衡を保つ事を使命としており、状況に応じては
妖魔側にも人間側にも立ちうる。
その完全中立な立場ゆえに、退魔側からも妖魔側からも疎まれる存在であるが、
神の血を受け継いだ能力と歴戦により、己が使命を果たしながら生き抜いてきた。
妖魔からの陵辱や人間からの迫害など、両者の暗黒面を経験しているため、
いずれに対しても救済や義意識は持ち合わせていない。
ただ、この世界の均衡を保つためだけに、その身を削っているのである。
七妖会、天洸院共に、使命のために構成員を滅した事があり、いずれの組織にも
追われている身でもある。
また、彼女にはある特殊な事情があり、精神系を含める隷属化が効果がない。
いずれ、ロール等で明かされるかもしれない。
【投下&少し待機します。】
【長くはいられないので、投下だけになりそうですが。】
【すみません、落ちるであります。】
【また後日。】
新キャライイヨイイヨー
イメージ的には某灰色の魔女?
均衡を保つとは具体的にどういうことか、考えてたらあちらにでも書いておくんな。
>>339 【イメージ的には、そんな感じです。ただあれと違って総意を持つ何かが背後にいる感じかと。】
【過ぎたる力を振るう存在を滅せんとして活動するような感じです。】
【それには、退魔も妖魔もないと。】
【あちらというのは板の事ですか。】
【一応、こちら主体にしたいと思っているので、向こうには顔を出さないつもりです。】
【雑談よりロールをしたいので。】
>>340 雑談不参加は構わないが打ち合わせは必要だろ。
弱点が土属性にダメ出せない、闇属性に弱いってキャラハンでは居ないしな。
基本名無ししか相手しないって事か?
それなら構わないがキャラハンも相手する気あるなら、もう少し隙として弱点付けないとやりにくいぞ?
名無しにしても偏るしな。
>>341 【打ち合わせというのが何を意味するのか分かりませんが、弱点は確かに。】
【仰るとおり、プロフィールスレには顔を出しておきましょう。助言有難う御座いました。】
>>342 打ち合わせとは今やっているようなやり取り。
弱点がどうとか、雑談は好まないとかの意思表示。
こだわりあるのか知らないが、円滑に事を進める為にある場所は利用すべきかと。
【義虎待ちで待機】
【すみません。言い方が悪かったようで】
【ストーリー設定スレで打ち合わせしましょう】
【色々詰めたい部分があるので】
【すまない、こっちの理解不足だった。ではそちらに行こうか】
全ては己の為である。
生きること。喰らうこと。戦うこと。守ること。
こうして風の中に身を置くのも自分の為だ。だがそれでいいと思う。
単車のライトが闇を切り裂く。風を切る音。冷たい空気の壁。振動。
佐々木優希が失踪したと聞いたのは、最近のことだった。
二ヶ月ほど学校の方に顔を出さず、そして家の方にもいないと聞かされた。
情報源は半妖・幸原尚。佐々木優希の後輩であり、彼の保護下にある少女だ。
彼は別段気にしなかった。妖魔に喰われたのか、修行の旅にでも出たのか。
彼にとっては知る由もない。生きているならまた会えるだろうと考えている。
全ては己の為である。だから彼女のことは気にしない。探そうとも思わないし、そんな理由もない。
そんな間柄ではないし、会って問い質すこともない。
それでも――彼女の事を心の片隅に留めながら、彼は今日も巡回していた。
くそ……、今日も空振りか…。
(夕暮れも近づく頃、丘の上にある海の見える公園へと訪れていた。
息を切らし、肩を上下させながらゆっくりと公園内の広場を歩いて)
もしかしたら、と思ったが……そう簡単にはいかない、か。
でなきゃ、オレもこんなに苦労はしてないし…姉さん、どこで何をしてるんだか。
(ぶっきら棒な言い方ではあったが、確かにそこには心配の色が含まれていて、
近くにあったベンチに腰をかけ、呆然と紫色に染まりつつある空を見上げていた)
(そよ風に木々の葉はざわめき、枝はしなり、涼やかな風がすり抜ける)
暫く走った後、彼は単車を停める。
海の見える公園。秋の日は釣瓶落としと言う。
辺りはあっという間に闇に包まれている。
彼は歩く。用事はない。
ただ、以前ここで妖魔と戦闘になったことがあり、その関係で
また出るかも知れないという予感を抱いただけだ。
妖魔が定期的に出現する場所というのは、存在するのだ。
園内に人影はない。彼の歩みは止まらない。
ベンチに誰かが腰掛けている。彼は気にしない。
その少年が何者だろうと関係ない。そのまま前を通り過ぎようとした時だ。
全身の鳥肌が立った。
妖気の発生を感知。それもかなりのレベルだ。
彼は油断なく周囲を見回し、出現に備えた。
人がいない時ならともかく、今は不味い。少年を巻き込まないようにしなければ。
………?
(夕暮れの、冬の寒い日に公園を散歩するとは珍しい。
と、目の前を過ぎていく人影を認めて、心うちでぼやく)
まあ、オレも人のことを言えたわけじゃないが―――。
(と、そこまで独り言を言いかけて言葉を止める。
ざわっとした嫌悪感を一瞬感じた。それが何かは分からない。
ただ「危険だ」と自分のなかの何かが告げる。早くこの場から逃げろと、何かが言う)
……なんだ、この、……気持ち悪い……っ。
(吐き気まで帯びてくるこの気持ち悪さに首を振る。
この場から逃れようと、よろめきながら立ち上がったその時―――)
虚空から這いずる『何か』。地面から音もなく浮き出てくる『何か』。
瞬く間に名状し難い『何か』に囲まれる。血管のように収縮し、爛々とした眼が
身体中に浮き出ている『何か』を、彼は便宜上妖魔と呼ぶ。
『何か』の正体を、彼は知らない。また知る気もない。
人間の害敵であり、人の生活を蹂躙するモノなら、彼にとって全ては抹殺対象だ。
「おい、そこのお前」
状況に相応しくない静かな声を出す。
ホルスターから拳銃を抜き放つ。同時に射撃。
銃声。弾丸がめり込む。だが効果はない。
無造作に弾頭がひしゃげ落ちた。彼は動じた風もなくナイフを取り出す。
「暫く隠れてろ。少し手荒にいく」
刹那、彼の姿が掻き消える。
次の刹那、彼は妖魔の懐に入っていた。
閃光の刃が燐光を放ち、妖魔の胴体を半ば切り裂く。
あんた……!?
あんたもあの人と同じ……?
(先日遭った女性のことを思い出して、はっと我に帰る。
そんなことよりも、今はここから逃げ出さなければ。
敵う存在ではないのは先日の戦いで十分に思い知らされている)
……くっ…、すまない……!
(どこぞの誰とも知らない人間に助けられることは自分のちっぽけなプライドが
多少抵抗感を持ったが、そんなことも言ってられないと思いその場から駆け出す)
……はぁっ…、はぁっ……!
(わき目も振らずただただ公園から逃れようとする。
しかし公園の出口が遠く思えるほど、自身は緊張し焦っていた)
え―――っ……あぐぁああああっ…!?
(そして、あともう少し―――、と言ったところで、肉体が粉々に粉砕されるような衝撃が背中に走り
………そして、意識を手放し、地面へとうつ伏せに倒れてしまう)
蠢く血管のような蛇。身体に浮き上がった無数の眼が生理的に気持ち悪い。
その眼がカッと開くと同時に、ギチリという音と共に空間が凍りつく。
ベンチが凍りついた。そのベンチが砂のように崩壊してゆく。
指定した空間を任意に凍らせることが、その妖魔の能力らしい。
見た目より頑丈で、しかも手数が多い。身体を撓らせ突撃してくる。
彼は縦横無尽に駆け巡りながら攻撃を回避し、回避を続ける。
逃げ出す少年を守るようにしながらも、回避しながら刃を振るう。
切り伏せる。切り伏せる。殴りつける。まだ数が減らない。
叩き伏せる。回避。凍る。地面がボロリと崩壊する。
その崩壊した粒子を、それらは口に当たる器官で吸い込んでいる。
少年の苦鳴が聞こえた。致命的な失策。数が多すぎて手が回らない。
少年に突撃し背中からぶつかったそれが、眼を見開こうとしている。
「させるか!」
叫ぶと共に彼は駆ける。
間に合わないと理性は言う。
それがどうしたと感情が吼える。
斬鬼衆の誓いと、自身の戦う理由のため彼は駆ける。
――その時、だった。
「―――ありがとうございます」
空気をも裂くような烈風。
一瞬遅れて、異形のモノはその身体を真っ二つに引き裂かれる。
まるで、予めそういう結末に終わってしまうかのように、綺麗に。
謝罪の言葉と共に現れたのは―――、剣を振り上げたひとりの少女だった。
黒のズボンにボロボロの外套を身に纏い、少し長くなった髪をゴムでひとつに纏めてはいたが。
それは、彼がよく知る生真面目な理想主義者の姿だった。
「……私の弟を救ってくださって」
にこりと微笑む。
その再開の間に時間など無かったように。
周りの異形のモノの醜い声など聞こえないかのように。
呆れるほど、柔らかい笑顔を浮かべていた。
くだらない予定調和だと彼は思う。
気になる単語が聞こえたが、今は流す。ともあれ、彼女が眼の前にいる。
失踪したと聞いた彼女は、以前と少しだけ雰囲気を変え、しかし確実に芯は同じだと
思わせる笑顔で、そこに、いた。感動も何もないし、そんな必要はない。
「佐々木、優希」
金色と漆黒の殲滅者が言う。
少しだけ優しくなった声で。
少しだけ柔らかくなった声で。
そして変わらない鉄のような無愛想な声で。
「いくぞ、こいつらを冥府に送り返す」
それが当然のように彼は言う。
彼女が手を貸すが必然であるかのように。
他の言葉など、必要ないかのように。
それが御影義虎と、佐々木優希の再会であった。
彼の『気』が膨れ上がり空間を振動させる。戦闘が再開する。
拳と漆黒の刃。二人の異なる力が重なり、妖魔に挑む。
「―――もとより、承知」
自然と不敵な笑みが浮かぶ。
相変わらず、愛想の無い人だ。そう思うと同時に、どこか安堵する。
この人といると自然と、自分に自信という炎が灯る。
苦笑してしまう。
ああ、なんだかんだ言って、この人とは腐れ縁だなと。
さて、もうこれ以上お客様を待たせてもいけない。
そろそろステージの幕を開け、血色に染まった演劇を再開させよう。
彼と背中合わせに、辺りを見渡しながら呟いた。
「闇より黒きもの、闇より果て無きもの、闇より罪深きもの。
―――その身を煉獄の炎に包まれながら、黄泉路へと赴くがいい。
我らは貴様らを灼く光の刃なり。さあ、覚悟は如何か。行きます、……啼け! 闇烏ッ!!」
役者は役者らしく、その役を務めるまで。
迷いは無い。害を為すというのなら、切って払うのみ。
ふたりは同時に大地を蹴り飛ばした。
二人が大地を蹴る。瞬く間に妖魔たちが数を減らす。
一人が二人に増えただけなのに、戦闘力が驚異的なほど跳ね上がっている。
拳の切れが違う。動きに余裕がある。時に舞うように軽く、そして時に銃弾のように素早い。
お互いがお互いの死角を補完する。動きが連携している。漆黒の刃が唸れば拳が唸る。
お互いの呼吸が合っている。打ち合わせる時間などないし、即興で合わせられる様な信頼関係もない。
だというのに、無言の内にフォローし合って戦っている。
――最初は嫌悪しかなかったはずだ。
共闘もしたがそれ以上に衝突もしたはずだ。
何より思想的に認め合えない二人だったはずだ。
――だというのに。この安心感の出所はどこだろうか。
もう何年も共に戦っているような、そんな感覚。
腐れ縁。そう形容するしかない。他の誰とも違う想いを抱く彼女と共に、彼は舞う。
「ラスト!」
組み合わさった双掌が異界の蛇を突き飛ばす。
その方向は丁度彼女がいる地点。彼女が刃を構えているところだ。
打ち合わせなどしていない。けれど、呼吸が合っている。
それが当然であるかのように。
本当に出来すぎている。私たちのコンビは。
なぜ、ここまでお互いのフォローが出来てしまうのか、可笑しくて思わず笑みがこぼれてしまう。
最初に共闘したとき、それは共闘と呼べるものではなかった。
そこにはコンビネーションなどなかったし、結局のところ相手には勝ち逃げされてしまった。
それがいつしかお互いの動きを覚えていたというのか。
いや覚えているというよりは、殆ど無意識に近い。なるほど、もう慣れてしまっているのか。彼の動きに。
――――本当に出来すぎた必然だ。
まるでダンスを踊るかのように、ふたりは刃と拳を振るう。
爽快感さえ覚えるほどの動きやすさ、そして、安心感。
「すみませんね、良いところを取ってしまって」
分かっている。
それは決められた必然だと思えるほど、鮮明に理解している。
ああ、本当に―――、私たちは出来すぎている。
そして、その刃を振りかざし、一閃と共に異形のモノを一刀両断し―――
―――その蠢きを、絶つ。
終わらない夜がないように、異形との戦いが幕を閉じる。
閉ざしたのは漆黒の刃、闇烏。
それを担うのは、硬き信念と理想を抱く少女・佐々木優希。
屍すら残さず、異界からの来訪者たちは姿を消した。
残ったのは二人だけ。御影義虎と佐々木優希。
凶戦士と理想主義者。鬼切りの刃と信念の刃。
彼はじっと彼女の顔を見つめ――ふと、何かに気づく。
凶戦士は倒れ伏す少年に近づいて傷を見る。
「お前の弟だと?なるほど、骨格が似てるな」
感想、それだけ。掌を翳して、気を集約する。
内気による治療を試みているのだ。
理論的には可能なはずだが、今までやったことがなかった。
じっくりと力を溜め、ゆっくりと放出する。
「幸原から聞いたが、二ヶ月ほど失踪してたらしいな。
何処をほっつき歩いてた?」
治療しながら彼は問う。どうでもいいはずだった。
彼女が生きていようと死んでいようと、関わりのないことだったはずだ。
お互いにやるべきことがあるし、例えそれが同じ地点に繋がっていても、
またいずれ右と左に別れる間柄だったからだ。
彼は彼女のやること手伝う時間はないし、またその義理も義務もない。
逆に言えば、彼女も彼と同様のはずである。ならば問うことに意味はないはずだった。
――結局、気になってたわけか・・・
彼は渋々それを認める。
「すみませんね、私は治癒術が使えないもので。
……ええ、そうです。見ないうちにすくすく育ったみたいですけど」
苦笑いをしながら、傷を癒す彼を見つめながら呟いた。
弟には悪いことをしていると思いながらも、それを今謝るときではない。
私にはまだまだやるべきことが残っている。
それまで心配はかけてしまうが、それは我慢してもらうしかない。
私はしゃがみこんで、彼の頭を撫でてみた。
「………理想をかなえるための勉強、ですかね。
妖魔も人間も共存できる社会を作るための組織で勉強させてもらっているんです。
…小さい組織ではありますけど。それでも、そこでは実現しているんです。
人間も妖魔も、半魔も。だから私はそこで学ぶべきことを学び、それを自分のものにしたいんです」
理想。
まだまだ小さい光ではあるけれど、確かにそれは灯っていた。
私がそこを訪れたときは少なからず、ショックを受けた。
それまで幻でしかないと思っていたものが、現実としてあったのだから。
確かに、そこまでに至る苦労や問題、そしてこれからの課題というのはいくらでもある。
正直に言えば、どちらかがどちらかを滅ぼすよりもはるかに難しい理想だというのは分かる。
それでも、それは。
「……私がまだまだ未熟だということは理解しました。
少しずつ、ではありますが、私は私の道を歩いていこうと思っています」
「ふん・・・・そうか」
彼女の話に耳を傾け、治療を続ける。じわりと額に汗を掻いている。
治療用の気功は戦闘用のそれと違って、細心の注意を払って放出しなければならない。
気の流れは一人一人違うし、何より彼は膨大な力を出すのは得意だが、細かい微調整
というのは不得手なのだ。自分の身体なら把握しているので簡単に治せるのだが。
「これでいいはずだ。あとは知らん」
無責任とも言える言葉と共に治療を終える。
佐々木優希の弟の顔色が、大分よくなっている。これなら自前の回復力に任せてもいいはずだ。
言葉と裏腹にきちんと仕事をこなしているのは、一応プロとしての自覚があるからだろう。
「砂上の楼閣だな。そんなことが可能なら天洸院か何処かの組織が
すでに達成しているだろうし、そうなれば退魔士も斬鬼衆も必要ないな」
その様な活動をしている組織は確かにある。彼も名前だけなら幾つも知っている。
理想は遠く彼方にあり、困難は限りなくあるのが現状のようだが。
「好きにすればいいさ。少なくとも俺には真似できん。
妖魔に眼の前で娘喰われた遺族に『この妖魔は人を襲いませんから平気です』とは
口が裂けても言えない。天洸院の一般隊員たちはな、妖魔に身内を喰われた者がたくさんいる」
彼は天を見上げる。
その彼方で、人間の営みを見守っている何者かに挑むような、そんな眼で。
「天洸院はな、人間の共同体だ。妖魔に対抗するために力無き者達が作り上げた砦だ。
悲しみや憤りを抱えながら、無力さに唇を噛み締めながらそれでも戦っている者たちだ。
そんな者たちがいる限り、斬鬼衆は妖魔を狩り続ける。千年以上も前から続けられていることだ」
珍しい長広舌。少なくとも彼女に対してこんな長い台詞を言ったのは初めてだ。
何が彼をそうさせるのか。答えは彼のみが知る。
「……ありがとうございます。
これでひとつ貴方に借りが出来てしまいましたね。…まぁ、この借りはまた今度返しますよ」
ぶっきらぼうな言葉とは反対に、傷はほぼ完治していた。
これには感謝しておくべきだろう。彼に世話になるとは思っていなかったので、苦笑してしまったが。
「そんなこと百も承知です。
……だからといって一方的に妖魔を虐殺していいというものではありません。それに」
彼の言っていることは分かる。
きれいごとではすべてが解決できるわけがない、ということだ。
それは分かっている。だからどうしたらいいのか試行錯誤しているところにいるのだ。
それが正しいのかどうなのかは分からない。けれども、進まなくては答えが出るはずも無い。
「……それは妖魔も同じですよ。
傷つかなくていい妖魔が容赦なく惨殺され、人間…特に退魔士は彼らの生活をぶち壊している。
……共存を望んでいるヒトたちだって同じですよ。みな、誰かを失ったり非道な裏切りに遭っている。
妖魔も人間も問わずに、ね」
そして深呼吸をして、しっかりと笑う。
「貴方の忠告は受け取りました。貴方が言わんとしていることも。
でも、私は戦います。人間だとか、妖魔だとか。そんなことと関係なく、悲しさを知るヒトたちのために。
きっと私のしようとしていることは並大抵の努力では叶わないのでしょう。そして、それが綺麗ごとだということ」
もう、迷いは無い。
「私は私の道を行きます。だから貴方は貴方の信じる道を行ってください。
そこで衝突するようであれば、私は全力であなた方に抗いますから」
宣戦布告。
そう、結局のところ彼と私は似たもの同士なのだ。そのベクトルが違うだけで。
自分の考えを変えない頑固者。
それが寂しいことなのか、立派なことなのかは他人が決めることだ。
私たちは自分が進む道を決めた。ならば、あとはその道を歩くしかないのだ。何を言われたとしても。
「……そして、ひとつお願いがあります。
出来ればこの子の面倒を見てあげてくれませんか。私はまだこの子の元には戻れません。
…借りがふたつ出来てしまいますけど、こんなことを頼めるのはあなたしかいないんです」
ちらりと自分の弟の顔を眺め見る。
……本当は私がこの子を守るべきなのに。でも生半可な私では彼を守ることは出来ない。
でも、いつか、きっと。本当に大切な存在を守れるようになったら、そのときは。
「どうかよろしくお願いします」
私は初めてそのとき彼に向けて頭を下げた。
「その理想が――お前たちの理想が人間の
世界の平穏を崩すなら、俺たち斬鬼衆が相手になる」
平坦な声で宣戦布告を受け取る。
結局のところ、戦わないという選択肢を選べないのだ。彼にしても彼女にしても。
立ち位置が違うというだけで、本質的に理不尽に抗う者なのだろう。二人とも。
「お前・・・・弟を、身内を他人に任せるってのか?」
妹のことを思い出す。
彼が守れなかった最愛の存在。彼が守るべきだった最初の存在。
その心の傷はどれだけの時間が過ぎても、完全に塞がることはない。
彼女が頭を下げる。彼女の決意はわかる。
自分の事情に巻き込むことを良しとしないのだろう。
けれど。
「コイツがそれを望むとも思えないな・・・・それでもいいのか?」
「ええ、軽蔑してくださっても構いません。
でも、私が今この子に出来ることはこれぐらいしかありません」
そう、これも私が選んだ選択。
この結末が最悪だった場合、私は悔いながら生きなければならない。
そして何より、この子を不幸に陥れることになる。
それでも、今のままでは私はこの子を守れない。
私が望む理想のなかには、私もこの子も含まれているのだ。
だから、それまでは。
「……わがままを言ってすみません。
ええ。貴方に預けた以上は、貴方が思うようにしてくださればいいですから。
……この子を放置すること以外は」
もう一度彼を眺める。
それでも、彼は不幸になってほしくない。もし、私が最悪の状態に陥ったとしても。
「どうかお願いします。 ……すみませんね。
それでは、私はそろそろ行かなくてはなりません。申し訳ありませんが、貴方から説明してあげてください。
本当迷惑をかけます。…今度会ったときには愚痴でも何でも聞きますから。それでは……また」
私はそれだけ言い伝えると、その場を立ち去る。
いつかきっと、迎えに行くから――――。
【すみません、そろそろ眠気が……orz
こちらはこれで締めてよろしいでしょうか?】
「・・・くそったれが」
それだけ吐き捨てる。
佐々木優希に対してか、彼女の『弟』に対してか。
或いは、その頼みを断れそうにない自分に対してか。
ともあれ彼女は立ち去り、彼と気絶したままの『弟』が残された。
彼女を引き止めるという選択肢が思い浮かばなかったのは何故だろう。
やれやれと肩を竦める。
やはり彼女に関わると碌なことにならない。
今度会ったら有無を言わさず抹殺するべきか。
ともあれ彼は事態の説明する台詞を考えながら、『弟』を叩き起こす。
かくして、彼と彼女の再会編は幕を閉じる。
そして、彼と『弟』の物語が始まる。
【了解】
【お疲れさまですノシ】
【お付き合いいただいてありがとうございましたノシ
お疲れ様でした…おやすみなさいっ】
佐々木も久保も北条も消えたのにわくな。
【到着しました。今書いている最中なので少々お待ちください】
【わかりました、お待ちしております】
一人の男が、人気のない公園に佇んでいる。
白衣を着込んだその男は、自分の横に転がっているものへと視線を向けた。
視線の先には、先ほど自分で倒した一人の男。しかしその手には一振りの日本刀が握られている。
「退魔士ですか・・・ちょっと、やっかいですね」
白衣の男、南 京次にとって、退魔士という存在は貴重な実験体にあたる。
それを倒したと言う事実は、普段であれば喜ばしい事態なのだろう。
発明を動かす電力をほとんど失った状態で、
転がった男の仲間がすぐ近くにいる気配を感じ取っていることを、除けば。
「さて・・・と、見逃してもらえませんか?」
京次は視線を己が後方、公園の出口のほうへと向けた。
【すみません、ちょっと腹痛で記入遅れました・・・】
「寒い・・・。」
人気のない夜道を少女が一人歩く。
その手には一冊のファイルが抱えられている。
少女の名は原玲音、法月退魔師事務所に身を置いている。
それ故にお使い程度の仕事を頼まれる事は少なくは無い。
多少の危険をはらむ物もあるが、多少の危険なら退ける『力』を彼女は有している。
「ここの公園・・・、か。」
そのお使いを遂行すべく辿り付いた場所は、事務所から10分程の公園である。
公園の中を見ると人影が一つ、待ち合わせの人物であろうか?
ゆっくりと近づくと、それがその人物で無い事が分かる。
――血の匂い。
所謂、血液の匂いとは異なる、『死』の香りである。
緊張が走る、この出会った危険が『多少』の物である事を祈る。
「君・・・、何やってるんだ・・・。」
視線は公園とは不似合いな白衣の男に向けられていた。
【お気になさらず、こちらこそ遅筆お許し下さい】
「いえいえ・・・何をやっていると問われても、ちょっとしたライフワークを」
いいながら、京次は体を現れた少女へと向け、視線が空へと浮く。
その視線の先には、後二晩ほどで満ちるであろう月が浮かんでいた。
〔いい月ですねぇ・・・いくらバッテリー残量がないと言っても・・・〕
そして、視線を再び下に。
自分へと心地よい敵意を向けてくる少女へと戻す。
〔こんな夜に出会ってしまった以上、何もしないで帰ると言う選択肢はないですよね〕
じゃりっ、と、足元の砂を蹴り、愉悦を浮かべた表情のまま、
ゆっくりと左手を足元の男へと向ける。
「いいですね貴女・・・その纏った獣の匂い、ぞくぞくしますよ。
普段なら是非とも一曲踊っていただくのですが、今日は日が悪いもので。
今回はこの男だけで我慢しますので、お互い何も無かった事にして済ませませんかねえ?」
言葉とは間逆の意を孕んだ明らかに挑発的な物言いで、
謡うように少女へと声を投げかけ・・・
左手をヒュンと、少女へと向ける!
「ふざけたライフワーク・・・だな。」
白衣の男も横たわる男もどうでも良いのだが、お使いが達成できないのは困る。
会話を進めながらも男の挙動は見逃せない。
ある程度の自体は予測していたものの、思っている以上に交戦的な様だ。
向けられた左手を反射的にバック転で回避する。
ファイルを置くと同時に足元から退魔用のナイフを引き抜く。
「生憎ペットは飼っていないけど・・・。」
低姿勢のまま相手を睨む。
退魔師を一人屠った男故に油断は禁物である。
「無駄な抵抗はやめろ・・・、すぐに斬鬼が来るよ・・・。」
法月の指導通り、セオリーの警告を促す。
「斬鬼・・・? ふむ、天洸院の死神達ですか」
少し思案して見せるものの、その表情には焦りも翳りもまったく見えない。
「それは少々困りますね。ただの人間に相手に出来る相手じゃないですから・・・」
言って京次は、左手からポトポトと何かを落とす。
そして右手を左腕の上を走らせると、落ちた『何か』がふわりと浮かぶ。
「私に出来ることなど・・・せいぜい怖いお嬢さんにパチンコ玉をぶつけることくらいですよ」
宣言と同時に、宙に浮いた七つのパチンコ玉が銃弾のような勢いで少女に向かって放たれる!
斬鬼衆の名前を出しても怯む事のない態度、
余程腕に自信があるか、逃げ足に自信があるか、愚か者か?
「・・・・・・・・・・・・。」
沈黙。だが、その放たれた視線が彼への答えとなっているだろう。
『私に出来ることなど・・・せいぜい怖いお嬢さんにパチンコ玉をぶつけることくらいですよ』
言うや否や散弾銃のように飛び交う弾丸。
低姿勢で構えていた事が幸いする。
ナイフ地面に突き刺し、それを支点として大きく宙に舞う。
その間も視線を彼からは逃すことはない。
大きく間を空け着地すると、愛用の拳銃を抜く。
して呟きながら三発の銃弾を男に向かって放つ。
――・・・悪趣味。
パチンコ玉を放つと同時に、京次は既に次のアクションを起こしていた。
左腕につけられたコンソールの上を指が舞い、刹那、京次の周囲に紫色の光が走る。
そして少女より放たれた銃弾は、しかし着弾の寸前にガキィッ! と甲高い音を立てて弾かれ、
放物線上を描いて二人のちょうど間へと落ちる。
「退魔系の武器ですか・・・? いくら女の子にパチンコ玉投げつける変質者だからって、
そんなものを一般人に向けないでくださいよ?」
余裕を見せた声色は一切変えずに、右手は左腕のコンソールを激しく叩きながら、
一歩、そして二歩、京次はゆっくりと少女へと向かって歩いていく。
「どうしました? それだけの気迫を有していて、
まさかそんな豆鉄砲が貴女の全力ではないでしょう?」
周囲に薄い光の膜を展開しながら、
自らのすべてをもって挑発するように、悠々と二人の距離を縮めていく。
「・・・・・・厄介な奴だな。」
銃弾が弾かれ、倒れている退魔師の得物が長剣である事から
遠近共に対策を施している様子だ。
その相手からは息切れも感じない。
獣や妖魔、退魔師独特の匂いも感じない。
無機質で機械的な印象さえ覚える。
『どうしました? それだけの気迫を有していて、
まさかそんな豆鉄砲が貴女の全力ではないでしょう?』
挑発する言葉には余裕すら感じる、挑発に乗るのは得策では無さそうだ。
「どうだろうね・・・?」
残りの銃弾を打ち込みながら、公園の出口へと少しづつ後退する。
放たれる銃弾が光の膜に触れる度に、
金属同士の擦れ合う甲高い音を立てて銃弾はあさっての方向へと飛んでいく。
「おや、逃げられるのですか? まだ貴女の言う斬鬼の方々は来ていらっしゃらないよう・・・!?」
余裕を持った京次の言葉が、不意に途切れる。
その左腕からピィーーーーッとアラーム音が響いたと思うと、突如京次を覆う光の膜が消失する。
「チィッ! まだあった筈なのに!?」
今までの余裕が嘘のようにその表情を歪め、声を張り上げ、
懐から拳銃を取り出しながら距離をとろうと後ろへ飛びのく。
打ち込まれる弾丸の全てが磁石の反発のように弾かれる。
おそらくあの光の膜が原因なのだろうが正体が分からない以上、
下手に手出しは出来ない。
『チィッ! まだあった筈なのに!?』
鳴り響くアラーム、消える光の膜、ようやく人間らしい表情と声を上げる男。
――作戦か、本当に窮地に立たされているのか?
「シンデレラ?」
呟くと同時に引き金を引く。
だが、その既に弾丸は尽きていて発砲される事は無かった。
それは承知の上、代わりに放たれたのはフラッシュの閃光。
彼女は一枚の写真を収めた。
彼の位置を支点に円を描くように移動すると、地面に刺さったナイフを引き抜く。
再び腰を低く落とすと、鋭い眼光で彼を見据える。
「シンデレラ? それはまた素敵なものに例えられたものですっ!」
焦りの表情を浮かべたまま、右手でもって銃弾を防ごうと曲げ・・・
それがフラッシュだと気付くと同時に、左手の銃を連続で撃ち放つ!
しかしそれは素人同然の精度で、例え彼女が止まっていたとしても当たらないだろう。
相手がナイフを手に取ると同時に、足元の男の持つ日本刀を右手で拾い、
銃を持った左手はだらんと下げたまま右手の刀を少女へと向ける。
「私の写真なんて取ってどうするおつもりですか?
定期入れの中にでも忍ばせていただけるのでしたら割と本気にしちゃうかもしれませんよ?」
挑発にも表情にも、明らかな焦りと怯えが交じる。
そして一歩、今度は距離を遠ざけるために京次は足を動かした。
『私の写真なんて取ってどうするおつもりですか?
定期入れの中にでも忍ばせていただけるのでしたら割と本気にしちゃうかもしれませんよ?』
そう言いながら手にした日本刀だが、どうも持ちなれていない感じがする。
銃を放った・・・、フリをした時に確実に右手で庇おうとした。
生き物として当然の行動だろう。
――それは今まで彼がとらなかった行動でもある。
「そう?・・・・・・・、僕も本気だ。」
言うが早いか、動くが早いか。
左右にステップを踏みながら、天性の物とバスケットで訓練された
『フェイント』を駆使して彼に駆け寄る、いや、跳ね寄るが正しいだろうか?
懐に飛び込み右手の日本刀をナイフで弾くと、彼の右頬に殴りかかる・・・・・・・。
――それもフェイントで、狙いは左の鎖骨に右肘を叩き付けんと振り下ろす。
早い―――!
京次に出来たのはそう考えることだけ。
言葉を発する間もなく瞬時に懐に飛び込まれ、何も出来ずに刀を弾かれる。
しかし本能的な行動として、刀を弾かれた瞬間に頭を守ろうと腕を引き、
拳の一撃を直に受けることだけは避けられる・・・!
その考えを持つことさえ京次には許されなかった。
肩に走る激痛と、体の中に響く鈍く嫌な音。
あまりの痛さに悲鳴を上げることさえ許されない。
何も許されない・・・それは、京次が何の力も持たない無力な人間ゆえ。
ならば、それが力を持った人間ならどうなのか?
言葉すら発することの出来ない痛みの中、京次はぎりっと歯を食いしばり・・・笑う!
まったく同じタイミングに、弾かれた日本刀の柄がそこに存在する『三人目』の手に収まり、
雷光の如き剣戟が少女へと襲い掛かる!
それは、先ほどまで倒れていた筈の、味方である筈の男が放った一撃だった。
どうやら演技では無かったようだ。
全ての攻撃が思い通りに決まる。
完全に彼の鎖骨は折れている。
――全治三ヶ月と、いったところだろうか?
もう少しでお使いが終わる。
ホッとした瞬間、それらが覆される。彼の忌まわしき微笑と共に。
ありえない角度、ありえない人物からの攻撃。
反射的にバックステップを取るも、彼に一撃浴びせたあとで体勢が整っていない。
脇腹に痛みが走る。衣服が裂け、皮膚が切り裂かれる。
内臓や骨に達していないのがせめてもの救いだ。
「クッ・・・、なんで・・・!」
顔を顰め彼を睨む。
額に脂汗を浮かべ、歯を食いしばりながら立ち上がる京次の横で、
ドサリと倒れ付す、刀を持った退魔士。
「・・・こう・・・までして・・・力を、使いませんか・・・」
激痛を堪えながら、搾り出すようにして声を発する京次。
そうして体を前屈みに倒し・・・
「仕方・・・ないですね・・・今回は、引かせて、いただきます・・・!」
京次の右手が瞬時に左腕のコンソールに走り、
同時に彼の足元に一瞬スパークが走ったと思うと・・・
次の瞬間、京次は一回の跳躍で公園の出入り口とは間逆の端まで跳んでいた。
「・・・貴女には、またいずれ、絶対に私と、踊って、いただきます・・・
私の名は、南・・・京次。覚えておいて・・・くださいね」
言って、煙の上がっている足を引きずるようにして物陰へと隠れ・・・
刹那、爆音のようなエンジン音が公園全体に鳴り響く!
【すみません、私は次で締めにさせていただいてもかまいませんでしょうか?】
『・・・貴女には、またいずれ、絶対に私と、踊って、いただきます・・・
私の名は、南・・・京次。覚えておいて・・・くださいね』
そう告げると姿を消す彼、いや、南京次。
それに答えようとするも痛みで言葉を発する事が出来ない。
故障か、電源の問題か分からないが彼の操作している機器に
異常が発生した事で救われたようである。
もし、彼が万全の状態だったら?そして何故、自分の内なる力を知っていたのか?
全くもって不明である・・・。
「いたっ・・・!クッ・・・。」
痛みをこらえ立ち上がると鳴り響く轟音、それと同時に多くの気を感じる。
おそらく異変を察知して事務所の人間か、斬鬼衆が来てくれたのであろう。
ベンチに腰をかけ、援軍を待つ。
いつか彼、南京次と再開した時には力を開放する時が来るかもしれない。
そう感じながら、彼の行方を目だけで追った。
【了解しました。こちらはこれで締めさせていただきます。】
【長い時間、遅筆、雑文にお付き合いいただき、ありがとうございました。】
【また機会がありましたらよろしくおねがいします。】
自分の手駒である、操った人間の駆るバイクの後部座席に腰掛け、
京次はギリッと歯を食いしばる。
左肩の痛みも、電撃で強制的にリミッターを外した両足の痛みも、今は気にならない。
左腕へと視線を送ると、バッテリー残量を教えてくれるランプが・・・消えた。
今、自分の持っている全てを使った。
退魔士の男から情報を聞き出し、
銃弾を全て使わせた後にバッテリーが切れたように見せかける罠をもって懐へと呼び込み、
自分への攻撃に反応させ、男に着床させたナノマシンの人体操作で攻撃を浴びせ・・・
左肩を折られ、両足が焼け爛れ、バッテリーを全て使い切り。
不完全なプロテクト解除状態で無理矢理操った男の体内のナノマシンもショートしているだろう。
それでもなお、力を使わせることさえ出来なかった。
「今回は、私の完敗です・・・この屈辱、忘れませんよ・・・」
誓った再戦の折にはどのように踊ろうか?
ククッと笑う京次の乗ったバイクは、やがて闇の中へと消えていった・・・
【こちらもこれで締めにさせていただきます】
【こちらこそ、私の駄文に付き合っていただいてありがとうございました】
【とても楽しかったです、また機会がありましたらその時は是非】
【それでは、お疲れ様でした】
――駅前。
かつて白清高校に来た当初は通っていた場所。
単車の免許を取ってからは、縁遠い場所となっていた。
改札に入る人。改札から出てくる人。人の波。
電車の走る音。警笛。
コインロッカーの前で、金髪の青年が立ち尽くす。
都立白清高校の制服であるブレザーを、屈強な肉体に纏っている。
背が高い。何より発散する雰囲気が常人とは異なる。
彼の名は御影義虎という。天洸院という退魔組織、その実戦部隊である斬鬼衆の一人である。
無論、その事を知っているものは限られている。
仕事仲間、面識のある同業者、そして妖魔。
彼は、とある任務のため立ち尽くしていた。
待ち合わせである。
「また・・・、僕か・・・。」
昨夜未遂に終わった仕事を再び自分が任される事になった。
腹部に受けた切り傷はほぼ完治している。
それ故に再び自分が行くハメになり、こんな時は少々自分の回復力が恨めしく感じる。
電車に乗り二駅ほど乗ると待ち合わせの駅に辿りつく。
ここまで無事、何も無し。
今日の待ち合わせは斬鬼衆の腕効きと聞いている。
昨日よりは少々安堵感がある。
待ち合わせ場所付近に近づくと人目で分かった。
その雰囲気からして常人のそれではない。
何よりも天性の嗅覚が彼だと告げる。
真っ直ぐに彼の方へ向かい声をかける。
「・・・・・・待たせたな。法月退魔師事務所の者だ。」
同じ様に待ち合わせする学生服の連中とは、全く異質な会話が始まる。
待ち合わせ時刻まで多少時間があった。
手持ち無沙汰なので、人間観察をしてみる。
女子高生の一団。あの制服は水ヶ瀬学園のものだっだろうか。
佐々木優希のことを思い出す。彼女は今どうしているのか。
――人間も妖魔も半妖も、共存できる世界。
単なる妄想である。少なくとも彼にとっては。
だが、小規模ながらそれを実現している組織もある。
法月退魔師事務所。今から落ち合う予定の相手の所属する場所である。
そこは、退魔士も妖魔も半妖も別け隔てなく受け入れる場所である。
組織というには規模が小さいが、それでも一応成立し、機能している。
ふと、異質な気配を感じる。獣型の妖魔の如き臭気。
向こうからやってくる少女――水ヶ瀬の制服を纏っている――からだ。
真っ直ぐにこちらに向かってくる。
『・・・・・・待たせたな。法月退魔師事務所の者だ。』
彼は少しだけ、胡乱な目付きをしたが――相手は共存主義を唱える
法月蒼一郎の眼鏡に適った相手だ。事を荒立てる必要はない。
「斬鬼衆の御影義虎だ。白清支部支部長の命令で、そちらから
ファイルを受け取れと言われてきた」
じっと、相手の目を見据える。
「名前は?」
――人と、妖魔の気配が入り混じっている。半妖か?
そんな感想を抱きながら名を尋ねる。
なかなか感が強い。
いや、この程度は見分けられないと仕事にならないのか?
自分から発する独特の気の流れを読み取り一瞬彼の表情が変わる。
所謂、退魔師と呼ばれる連中でこの様な態度を取らないのは法月だけだろう。
聞くところによると『墓無』と言う組織は自分に似た人種が多いらしいが、今の所接触は控えている。
「僕は原玲音・・・、これは約束のファイル・・・。
中身は知らないから、そちらで確認を頼む。」
彼の目を見ながらサッとファイルを差し出す。
今回の任務は、端的に言うと遣い走りである。
放課後、男装の麗人はいつもの如き笑みを浮かべ、彼にこう言ったのだ。
――法月退魔師事務所に頼んでいた資料があってね。今から受け取りに行ってくれないか?
――駅のコインロッカー前だよ。いかにもそれっぽい場所だよねえ?
――もしかしたら半妖か妖魔の事務員が来るかもしれないが、事を荒立てないように。
――もし何かあったら・・・・ふふっ・・・・
放課後の会話を要約すると、こんな感じになる。
彼は直ちに学校を飛び出した。それ以上は怖くて聞けなかった。
情けないと言うなかれ。彼女にはあらゆる面で適わないのだ。
精神的にも肉体的にも。
『僕は原玲音・・・、これは約束のファイル・・・。
中身は知らないから、そちらで確認を頼む。』
玲音。レオン。獅子。ライオンか。
虎とライオン。奇妙な符号である。
視線を絡ませたまま、ファイルを受け取る。
内容にさっと眼を通す。水ヶ瀬における妖魔に関する資料だ。
解決した事件の詳細な資料や、妖魔出現ポイントの監視結果など、
様々なことが詳しく、そしてわかりやすく書かれている。優秀な事務員がいるらしい。
「確かに受け取った」
ファイルを脇に抱えた防水バックに仕舞いこみ、あとはこれを届ければ任務完了となる。
もう一度彼女を見据える。人間に見える。発散する野生の気配さえなければ。
禍々しさはないし、敵意もない。鋭さはあるが、それは退魔士としてはある意味当然だ。
「任務ご苦労。
寒いから、ジュースでも飲むか?」
そこにある自販機を指し示す。
彼がファイルに目を通す間に一応周囲を確認する。
昨日の今日だけにあまり油断はできない。
流石に退魔師二人、かつこんな場所じゃ仕掛けては来ないだろうが。
今まで何人もの退魔師、妖魔を会った事があるが、
彼ほど真っ直ぐに、隠さずに気を放つ者も珍しい。
分かりやすく言えば『喧嘩上等』と妖魔に言っているようなものだ。
『任務ご苦労。
寒いから、ジュースでも飲むか?』
そんな事を考えていると予想もしない声をかけられる。
ナンパと言う雰囲気でもないし、言葉通りの解釈で良さそうだ。
丁度喉も渇いていたし、その言葉に頷く。
「・・・・・・でも、あれは嫌だな・・・。」
瞳を閉じて鼻をスンっと鳴らす。
「ここからそんなに遠くない所に美味しい喫茶店があるだろ・・・?」
この駅で降りるのは始めてだが、新鮮な果実を絞る香りがする。
その方向を指差し彼に尋ねる。
『ここからそんなに遠くない所に美味しい喫茶店があるだろ・・・?』
嗅覚がよいらしい。確かに駅前には喫茶店はある。
彼自身脚を運んだぶことは稀だが。やはり獣系の妖魔の系統だろうか。
「ああ、確かにあるな。
折角ご足労願ったんだ。よければ行こうか」
口ではそう言いながら、
――獣人か。そんな妖魔を殺したこともあったな。
脳内でそんな事を思い出す。
思い出しながら、彼女を伴って歩き出す。
人の流れの多い場所には、妖魔がいる。
知能も知性も持たない、淀みのような妖魔が。
ベンチの下、自販機の下、コインロッカーの中。
人の発散する精気を少しずつ啜り、少しずつ大きくなる。
ある程度大きくなった時点で自我と呼ぶべきものが芽生える。
そこから先、どうなるのかは確率次第だ。
似たような存在の餌となるのか、或いは、より強い妖魔となるのか。
ぼんやりと想いを馳せていると、ビクンと背筋が震えた。
妖気。単体。近い。何処だ?気の感知機能を上げる。
始めての街と言うのは、少々の怖さと希望で構成されている。
少々の怖さの種類が一般の人達とは異なるのが悲しいが。
彼の同意を得て目的地に向かう。
地元で他校の生徒と歩いているのを目撃されると、何かと五月蝿い事もある。
少なくともこの場所には知っている匂いもしないし安心できる。
友達が欲しくない訳ではないが、
トラブルに巻き込んでしまうかもしれない恐怖からあまり作らない様にしている。
その点、今一緒にいる彼は巻き込まれても色々な意味で大丈夫だろう。
任務を終えて一休みと言う所だったが、それは許されない事らしく
彼もそれには十分気付いている様子だった。
「・・・・・・この街には気が効かない輩がいるんだな。」
再び鼻を鳴らす。
彼と目配せをした後に、嫌な臭いの方向を見据える。
こういった感知能力では自分の右にでる者はなかなか居ない。
「そちらの街も、こちらのことを言えまい」
普段は半分ほど眠らせている機能を呼び覚ます。
人の多いところで感覚の精度をあげると、大量の『気』に当てられて
逆に精度が鈍ってしまう。だから普段は機能停止させているのだが、
この場合は仕方ない。ひとつひとつを捕らえず全体として捕らえ、認識する。
その中にある違和感を、その根源を辿る。
妖気は一瞬で小さくなった。捕捉し損ねたのだ。
「原玲音――そちらの鼻に頼らせてもらっていいか?
こうも人が多いと妖気を捕捉するのが難しい」
淡々と囁くような声で言う。相手が何者であれ、例え妖魔であれ半妖であれ、
使える者は使う。躊躇もなく遠慮もなく。その辺の機転は退魔士にとって必要不可欠なものだ。
彼にはわからない感覚も、彼女になら分かるだろうと期待している。
彼にはわからない『嫌な匂い』は、二人が待ち合わせたコインロッカー、その反対側のロッカーからしている。
「ここよりは少しマシかな・・・。」
彼に似た淡々とした口調で答える。
明らかに嫌な臭いがしているが、強くなったり弱くなったりしている。
こんな時きつい香水をつけている輩がいると非常に邪魔である。
『原玲音――そちらの鼻に頼らせてもらっていいか?
こうも人が多いと妖気を捕捉するのが難しい』
当然断る理由もなく即答する。
「分かった・・・、あそこのカップルの香水が邪魔だ・・・。
ガンでも飛ばして向こうに追いやってくれ。」
少々無茶な注文だが、彼に頼るのが得策だろう。
きつい風貌も役に立つな思う。
彼の活躍もあり、程なくして場所が限定される。
「御影・・・・・・。」
短く呟くとロッカーの反対側を見て頷く。
言われた通り、カップルに視線を向ける。そして殺意の塊を放出する。
常人でも肌で感知が出来て、居た堪れなくレベルのそれを投擲、命中。
カップルは居心地悪そうにその場を離脱した。
彼女に促されるままに歩く。
その間も『気』の感知機能は上げている。
大体の方向さえ掴めれば、捕捉できるばずだ。
彼女が指し示したのは、さっき待ち合わせたロッカー。
その反対側の面のロッカーだった。小さいが、異様な気配を発している。
もう特定できた。特定できたなら、捕捉するのは簡単だった。
――ほぎゃっ、ほぎゃっ・・・
赤子の鳴き声がした。小さいが、確実に聞こえる声で。
コインロッカーに捨てられた赤子。そんな単語が横切る。
ロッカーに手をかける。泣き声が増した。妖気も増した。
――助けを求めているのか、威嚇しているのか。
彼には判断できない。天井の蛍光灯が不自然に明滅した。
力を込める。ゆっくりと開けようとする。
泣き声が響く。何故か、力が抜けた。妖気の根源は此処だというのに。
脳内に伝わるイメージ。それは言語ではなく感覚で伝わってくる。
冷たい感覚。死。死という概念すら知らぬまま迎えた死。
群がる淀の如き妖魔。囚われた魂。寒い。ひもじい。悲しい。
「原・・・・悪いが開けてくれ」
彼にしては有り得ないことだが、妖魔を前にして退いた。
彼、御影義虎と共にロッカーに向かう。
――嫌な声、感覚、臭い。
彼が先にロッカーに手を掛ける。
『原・・・・悪いが開けてくれ』
妙な気にあてられたのだろうか?
距離を取っていてもこれだけの感覚が伝わるのだ。
直接に干渉すれば無理もない事だろう。
ここに捨てられ、そして魔にあてられた魂だろうか?
自分も少し発見が遅れていたら同じ運命だったかも知れない。
そんな事を思いつつ、少し憂いを帯びた瞳で彼を見つめ、答える。
「――いいよ。」
人の心とは強くて脆い物。
少し、獣の心の領域を強くして扉に手をかける。
「開けるぞ・・・・・。」
少々語気を強くして扉を開いた。
――それは最初、矮小なモノに過ぎなかった。
蟲の如き矮小な、普通の人間からすら本能的に逃げ回る存在だった。
少しずつ小さな命を啜り、少しずつ自分を育てていった。
ある時、自我というものに目覚めた。自分という存在が何なのか自覚したのだ。
同じような存在と喰らい合いながら、生きる日々に変わりはなかったが。
そんな時である。この場所で滋養のある生き物を発見したのだ。
人間の赤子。その時のソレがそれを知るわけもなく、それでも食べられると本能的に
理解した。捨てられて、死にかけていた赤子の身体に潜り込んだ。肉体から離れ行く魂を啜った。
その瞬間、『彼』は無垢なる魂と融合したのだ。取り込んだはずが、取り込まれていたのだ。
肉体から離脱できず、赤子の本能として親を求めた。
ロッカーから出てきたのは布に包まれた赤子である。
同時に、人間の肉体をもった妖魔でもある。
『彼』は彼女の顔を見た。無垢だが、確かに意思のある瞳で。
「妖魔・・・・なのか?」
後ろから覗き込んだ御影義虎が疑問符付きで言う。
「どうするんだよ、それ」
端的に問う。
流石に赤子を殺すのは、どうにも憚られるらしい。
ロッカーの中から出てきたのは赤ちゃんと融合した妖魔。
共に不完全であるが故に無垢である。
本能のままに育った妖魔と、本能で温もりや食事を求める赤ちゃん。
『妖魔・・・・なのか?』
「そうだろうな・・・。不完全だが。」
彼の問いに冷ややかに答える。
『どうするんだよ、それ』
布に包まれた『それ』を抱き上げる。
いかにもと言った感触と温もりが伝わる。
「・・・うん。君達なら例外なく殺すんだろう?
僕も斬鬼衆に拾われていたら殺されていたかも知れないな。」
怒りではなく、憂いの瞳で彼を見つめ、
自分の答えは言わずに『それ』を彼に差し出す。
「抱っこしてみろ・・・。抱き方は分かるか?」
「多少誤解があるようだが。
俺の知ってる斬鬼衆なら、多分殺さないと思う」
少なくとも、彼の知っている剣士と妖術師なら。辞めた弓兵もそうだろう。
無論、彼なら殺していただろう。いつもの彼なら、容赦なく殺すだろう。
しかし、今の彼は赤子の想いをダイレクトに感じてしまったのだ。殺せるはずもない。
『抱っこしてみろ・・・。抱き方は分かるか?』
差し出されるおくるみ。赤子は大人しくしている。
反射的に受け取ってしまう。妖魔だとわかっているのだが。こんな
「いや、知らないけどな」
ぎこちなく抱いてみる。嫌悪感は不思議となかった。
恐らく、今この瞬間だけのことだろうが。
軽く揺すってみる。思えば、自分も時期があり、母に抱かれていたはずなのだ。
一瞬、胸がどうしようもなく軋んだ。唇を噛み締めて堪える、深奥に押し込む。
赤子が笑っているように見える。軋みが消えた。
「コイツ、お前の事務所で、預かってもらえないか?
流石に俺が面倒見るわけにもいかんし」
もう殺す気はなくなってしまった。
【というわけで、突発的なイベントなわけですが】
【このまま事務所に連れて帰るという展開はOKですか?】
「そうか、それを聞いて安心した・・・。もっと固い奴等ばかりだと思っていた。」
ぎこちなく赤ちゃんをあやす彼を見て少しだけ面白く感じた。
人の手は命を奪う事も、生み出す事も、育む事もできるのだ。
「可愛いな。」
いつもは浮かべない少女らしい笑顔になる。
それが赤ちゃん特有の力なのかも知れない。
『コイツ、お前の事務所で、預かってもらえないか?
流石に俺が面倒見るわけにもいかんし』
「そうだな、斬鬼衆だと・・・、色々困るだろうからな。法月は僕が説得しておく。」
内心、赤ちゃんの顔をみたら即OKが出るだろうと言う心算はある。
自分も同じ様に『法月退魔師事務所』と言う仮初めの家庭にいるのだから。
「御影・・・、君は結構育児のセンスもあるのかも知れないな。」
至極真面目な顔で、赤ちゃんを受け取りながら話す。
【そうですね、流れ的に事務所行きですね】
「やめてくれ、そういう家庭的なことは苦手だ」
渋い顔をしながら、赤子を彼女に渡す。
結婚など考えたこともない。現在付き合っている相手はいるものの、
これから先も共に生きてゆける保障など、どこにもないのだ。
どちらかが死ぬか、どちらも死ぬか。
斬鬼衆なら、どうなっても不思議ではない。
「ところで、名前とかどうするんだ?
一応お前が拾ったんだし、お前がつけるか?」
何気なく提案して、一緒に発見した自分の責任を回避しようとしている。
支部長には報告せねばならないのは変わりないが。
多分、彼女は笑うだろう。そしてみんなに言い触らすだろう。正直止めて欲しかった。
【ありがとうこざいます】
【今後のロールに使うかはそちらで決めてください】
「そうか・・・、悪くないと思うけど・・・。」
同じ退魔師とは言うものの、斬鬼衆と自分とでは危険のレベルも
覚悟もかなり違うものだと言う事は知っている。
だが、折角普通の人間なのに勿体無いとも思う。
「名前・・・か・・・。そうだな・・・、事務所のみんなで考える事にするよ。
流石に僕も16歳で親には・・・な、ドラマじゃあるまいし・・・。」
ふと先日事務所でゴロゴロと皆で見ていたドラマを思い出す。
【お気になさらず、法月さんにも話しを振っておきますね】
「ともかく、頼んだぜ。喫茶店は、また今度にしてくれ」
ぽんと彼女の肩を叩き、別れを告げる。
名前が決まったら報せてくれとも付け加えて。
後に彼は思う。あの時、どうしてあの赤子に気づいたのかを。
あの時、あのロッカーの知覚には二人の退魔士がいた。
それを、妖魔の本能が感知したのだろう。
そして、赤子の本能が助けを求めたのだろう。
だから、あんなにすんなり彼らに保護されたのだろう。
全ては憶測に過ぎない。
だが、こじ付けでも辻褄が合えば精神衛生上安らかに過ごせる。
少なくとも、あの赤子は無事に育つだろう。
そのことに安堵している自分に気づき、彼は少しだけ動揺した。
【では、これで〆ます】
【ありがとうざいましたノシ】
「分かった・・・、また今度。」
仕事は無事に終わったが、新たな仕事が増えてしまった。
とりあえず帰りにあれこれ買って帰らないと・・・。
そう思いつつ彼と別れる。
別れ際にその日まで無事でと付け加えて。
「おむつ・・・、ミルク・・・、あと何だ・・・?」
赤ちゃんを抱いた女子高生が独り言を呟きながら家路に着く。
帰りに数回警察に呼びとめられたと言う事を追記しておく。
【こちらも〆ます】
【どうもありがとうございました】
笹危、糞募、呆嬢は失せろ。
一度辞めたヤシうぜぇ。
>>409 巣にカエレ!!
復帰しちゃいけないなんてルールはどこにもない。
>>410 【ルール】
・煽り、荒らしは華麗にスルー。
>>412 スマソ…我慢できんかった。
ちなみに、俺は復帰した人間じゃないから。
【何だか不穏ですが待機しますね】
【お相手希望者様がいらっしゃらない様なので
お相手願いますでしょうか?】
【はい、構いませんよ】
【展開と書き出しはいかがしましょうか?】
【ありがとうございます】
【ロール内容は何でも大丈夫です、
書き出しはお任せしてもよろしいでしょうか?】
【それでは、とりあえず軽く会話して共闘の初対面お決まりコースで行きましょうかw】
【書き出しの件は了解しました。少々お待ちくださいませ(ペコリ】
【分かりました、お待ちしております】
「寒いなぁ、これだからこの時期に出歩きたくないんだ……」
ぶつぶつと呟きながら独り深夜の人気が絶えた道を歩く。
大学の指導教官に呼び出されての帰り道だ。
夜中に呼び出されたので何用かと思って急いだのだが、大した用事でもなかった。
ゼミの新年会に参加しなかった理由を問われただけだった。
「まったく、本当の事など言えるわけないだろうに。
それに、私は休学中のはずなんだがな……?」
誰も聞いていないと思うと、愚痴も自然とこぼれるものだ。
瑞希自身の周囲でも色々と起こっているせいで、余計に独り言が多くなる。
(まあまあ、あまり気にする事じゃないと思うけど?)
(それだけ主が気にかかるという事なのでしょう)
傍らにいる一羽と一匹の使い魔が慰めるように体を寄せる。
それをくすぐったく思いながら歩いていると、小さな公園のそばに差し掛かった。
「おや、あれは……もしや?」
公園には、法月退魔師事務所で一度だけ見かけた少女の姿。
名前は聞かなかったが、確か獣人であると説明を受けた覚えがある。
どうやら、妖魔と戦っているらしい。
それに気づいた時、瑞希は自然と駆け出していた。
『玲音君、ちょっと草刈りのお使いを頼まれてくれないか?』
いつもの呑気な笑顔と共に頼まれて深夜の公園に向かう。
深夜に草刈りなど普通はするものでは無い。
ま、普通じゃない草刈りだから深夜に行うわけなのだが・・・。
「・・・・・・しつこいな。」
公園に茂る芝生から幾つもの蔓が伸びる。
それを素早く回避しながらナイフで切り裂く。
ある程度弱ったところで小型の火炎放射器で焼き払えとの指示であったが、
なかなかそこまで到達する事が出来ない。
「この程度で変身も情けない・・・な。」
変身――獣人化すれば数倍早く片付く仕事ではあるが、
獣人化する為には服を脱ぐか破かなければならない。
肌を晒す事や、醜い姿の自分を見たく無い。
そんな年頃の少女の部分が変身をなかなか許さないでいる。
「そろそろ・・・、いいかな・・・?」
数歩後ろに跳躍すると火炎放射器を手にする――が、
まだ早かったのか、蔓にそれを弾かれてしまい、
一瞬生まれた隙から蔓に足を取られ宙吊りになってしまう。
「・・・・・・!」
慌ててナイフを投擲するも蔓は次から次へと襲いかかる。
そんな彼女には公園の外から駆け寄る魔女の気配には気付かずにいた。
【植物系、葉っぱカッターと蔓の鞭の妖怪でお願いします】
【その他適当にアレンジしてください。単純に倒しても淫蔓にしてもw】
「マリスは防護を、スパイトは加速を頼む」
手短に要求を伝え、自分は魔法杖を顕現させて公園へ飛び込む。
使い魔は念話で返答を返す事もない。
いちいちそこまでしなくとも十分にこちらの意思は伝わっているからだ。
次の瞬間には、それぞれが唱えた呪文が効力を発揮し瑞希は普段の戦闘スタイルに変わる。
植え込みに遮られてどんな妖魔を相手にしているのかは見えなかったが、
公園に入れば一目瞭然だった。
「植物の妖魔か……っ!?」
全体像を捉えた瞬間に、獣人の少女は長い蔓に巻かれて宙吊りとなっていた。
思わぬ事態に焦っているのか、懸命に応戦しているものの有効なダメージは与えられていない。
「法月退魔師事務所の方とお見受けする。お困りのようだが助太刀するとしよう」
言うが早いか火球を投じ、足に絡んだ蔓を燃やす。
蔓は瞬時に灰となり、虚空に少女の体は投げ出される。
しかし、そこまで構っている余裕はなかった。
獲物を奪われたことに怒ったからか、瑞希の方にも勢い良く数本の蔓が伸びてきたからだ。
「くっ……」
素早く身体を捻る事でかろうじて避けているものの、衣服を切り裂く蔓に防戦一方だ。
(このままではまずいな……)
攻撃に転じるには、何とかして相手に隙を作らねばならない。
【では、ややエロ風味で行ってみましょうか】
【樹液が媚薬で、悶えながらも何とか倒す感じでw】
もともと火炎放射器といってもごく小さな物だった。
それで仕留められる『はず』だったからである。
新たな匂いを感じる、人間と・・・、別の匂い。
『法月退魔師事務所の方とお見受けする。お困りのようだが助太刀するとしよう』
投げかけられる言葉、断る理由はない。
「・・・・・・すまない。」
手短に返事をして助けを待つ・・・が、その助けとは火球。
燃える炎が自分に向かって飛んでくる。
蔓が焼き払われフワリと宙に浮く。
普段であれば難なく着地できるはずが、そのまま地面に体を打つ。
幼い頃より、炎や強い光をみると足がすくんでしまう。
「くそっ・・・・・・。」
頭では理解していても体が動かない。
その間にも蔓は己を巻き取り、そのまま地面に張りつけにされてしまう。
自分を助けてくれた魔女も苦戦している様子だ。
本来ならば自分が蔓を薙ぎ、彼女が火球を飛ばせば良いのだろうが・・・。
「逃げて・・・、くれ・・・。」
声を絞り出す。
二人の苦しむ姿を楽しむ様に草の妖は玲音の服を鋭い葉で切り裂く。
そして今までとは異なる形状の蔓・・・、花弁の様な蔓がうねりながら
玲音の太ももを滑り始める。
「なっ・・・!」
不快な冷たさと感触に悪寒を覚えた。
「逃げる?……馬鹿な。助けに来た人間が逃げるわけないだろう?」
どういう訳か着地に失敗し、動けないでいる少女。
放たれた言葉に無表情に答えながらも頭の中では戦略を練り続けていた。
見る間に蔓は少女を絡め取っていった。
(どういう意図かはわからないが、あまりいい兆候ではないな……)
妖魔の目的がわからない以上、迂闊な手出しは出来ない。
それに、先ほどの光景から考えると少女は炎に恐怖心を抱いている様子。
(まあ、獣人だし仕方ないんじゃない?)
(好き好んで火に近づく獣も居ないからな)
念話で伝えられる言葉に今更反省するが、過ぎた事は仕方がない。
「……!」
ほんのわずかな気の緩みを見逃さず、蔓が瑞希の両足を絡め取る。
魔術師としての武器の一つである機動力を封じられると非常に厳しい。
ふと少女の方を見れば、やや今までとは形状の異なる蔓が股間に向かって伸びていく。
「それが目的か……下賤な事おぶっ」
皮肉を込めた台詞に逆上したのか、同じような蔓が強引に口の中に侵入してくる。
瑞希のローブはずたぼろに切り裂かれ、ほぼ全裸に近い格好で立ち尽くす。
詠唱までも封じられると、魔術師としての戦闘力は皆無に近くなってしまう。
まるで勝ち誇るかのように、ゆっくりと瑞希の秘所にも悪魔の蔓が迫っていた。
「僕は大丈夫だから・・・、逃げっ・・・!」
彼女に言葉を伝えきる前に、ぬめりを帯びた蔓が下腹部を撫でる。
ショーツの上から、敏感な部分を探り出しゆっくりと、擦り付ける様に上下する。
こんな醜悪な物に、こんな恥ずかしい状態ならば不快でしかない・・・筈だが、
その蔓から滴る粘液の催淫効果により、奇妙な感覚を覚え始める。
「くっ・・・!やめっ・・・!」
必死に太ももを擦り合わせ、その動きを遮ろうとするが上手くいかない。
その間にもじょじょに増す感覚。
横目で見れば助けに入った魔女もその肌を晒している。
(どうにかしないと・・・、このまま・・・じゃ・・・。)
頬を赤く染め、歯を食いしばりながら抵抗する。
蔓は玲音の上半身の服を裂き、その柔らかな胸を締め付ける物も切り裂く。
露わになった双丘が重力に従い少し横に広がるが、新たな蔓がそれを締め付け
尖端の敏感な部分をくすぐりながら、下腹部同様に淫汁を塗りつける。
「くっ・・・、んっ・・・、んんっ!」
首を大きく左右に振り、精神が堕ちない様に、そして晒されている恥ずかしさに抵抗する。
ギュッ!と、蔓が体を持ち上げると同じ様に絡めとられている魔女の方へ運ぶ。
もう一度全身に淫汁を塗りつけると魔女と体を重ね合わせ、お互いの双丘を擦り合わせる。
お互いの温もりと柔らかさが伝わり、さらにその精神を堕落させていく。
「くぅ・・・んっ・・・、すま・・・ない・・・。」
恥ずかしさに顔を見る事は出来ないが、声をかける。
彼女の髪や肌の匂いを強く感じると、秘所から熱いものが流れるのを感じ、
更に恥ずかしさが倍増する。
戦いを終わらせると言う望みとは別の望みが生まれ始めていた。
必死に逃げるように言う少女。
その健気な姿に愛しささえ覚えるが、それができるような状況にないことは判っていないらしい。
少女の想像とは裏腹に、ある意味慣れ親しんだ状況に瑞希は内心歓喜さえ覚えていた。
「んんっ……ぐぶっ……!」
口内でのたくる蔓は同時に甘い粘液を大量に放出する。
為す術もなくその全てを嚥下すると、身体が急に火照りだした。
(まずい……媚薬か……!)
頬を染め、太い蔓に貫かれた秘所から溢れ出した愛液の感覚に震える。
幸い口の中を犯されているために嬌声を少女に聞かれる心配はない。
雌の浅ましい姿を初対面の少女に見られたくはなかった。
しかし、その淡い期待もすぐに打ち砕かれる。
妖魔は少女を瑞希の前に移動させ、身体を重ね合わせたのだ。
「っ……んん〜っ」
擦れ合う双丘の頂と股間の蔓がもたらす甘美な刺激に溺れそうになるが、必死で耐える。
互いに顔は見えず、瑞希は声も出せないけれども少女の言葉に懸命に応じようとして。
身体が密着しているのをいい事に、少しだけ動く右手で少女の手を握り締める。
快楽に負けないように。勝利を諦めないように。
そんな励ましの意味を込めた握手が、きっとわかってもらえると信じて。
「んん……んんんむ……んっ」
それでも、着実に二人は高みに登りつめようとしていた。
――少しだけ特異体質なだけで、至って健全。
そう自分に言い聞かせてきたが、それは間違いだったようだ。
彼女の温もりと柔らかさを感じ、彼女の吐息を感じる。
そして、蔓にがんじがらめに捕らえられながらも快楽を感じている。
(もうどうなってもいいや・・・。)
そんな感情が頭を過る。
その時握られた手。
「僕って・・・、欲張り・・・、かも・・・。」
頬を赤く染めながら一瞬に不適な笑みを浮かべる。
――その瞳は闇夜に反して輝きを帯びている。
彼女の口を犯している蔓に噛み付く。
――そこに見えるは獣の牙。
蔓を喰い千切ると、そのまま彼女の唇を奪い舌を忍び込ませる。
その舌は人間のそれとは異なり、独特のザラッとした感触があった。
「おいし・・・。」
舌なめずりをして、そのまま首筋から耳にかけて愛撫を続ける。
そして耳元で囁く。
「このまま・・・、いって・・・、その時に隙が出来る・・・。」
言うと激しく体を擦り合わせ、己の秘所を彼女の太ももに擦り付ける。
玲音自身も下腹部から熱い感覚が昇り始める。
「あはっ・・・、すごっ・・・、いい・・・。」
獣の舌が彼女を絶頂へと導くように鎖骨を愛撫する。
(欲張り……?)
少女の呟きに内心首を傾げるが、笑みを見れば意図が伝わった事がわかる。
そして、輝きを増した瞳――獣化の兆候――を読み取る。
なんと純粋で、なんと美しい眼差しか。
野生の雰囲気を残した瞳に知らず知らずのうちに吸い込まれてしまう。
ふと気が付けば、瑞希の口の中からは蔓が取り除かれていた。そのままディープキスへと移行する。
ザラついた舌の感触に一瞬眉を顰めるが、素直に少女に身を任せる。
何か考えあっての行動だろう。
「んっ……判った。その後は、こちらに、任せてくれ……うぅん」
愛撫一つ一つが絶妙なタッチで、瑞希の敏感になった皮膚を刺激する。
全身が性感帯になったような感覚に、はしたない喘ぎ声を漏らしながら悶えた。
「それ駄目……感じすぎちゃう……あぁん!ひゃぁん!」
太腿に少女の秘所が擦り付けられると、急速に昂ぶっていく様子がわかる。
そして、瑞希自身も達しようとしていた所にもたらされた鎖骨への愛撫が堤防を決壊させた。
頭の中で白い閃光が激しくスパークする。
「イく……はしたない姿を見られてイっちゃう……いいぃぃぃぃぃぃっっっっ!」
くたりと脱力しながらも、逆転の秘策を頭の中で素早く組み立てていく。
行動の自由さえ確保できれば、どうにでもなる。
後は、十分に発動できる状態にまで練られた呪文を解き放つだけだ。
それで全てが終わる。
(受け入れてくれるみたいだな・・・。)
遠慮の無い愛撫が続く。
玲音自身も自らを絶頂へと導く様に、
彼女の体を借りて自慰行為にも似た行動を取り続ける。
「すごく・・・、いいよ・・・、いい・・・。」
静かに息を荒げながら、絶頂を迎えようとする彼女を見て興奮する。
自分にそんな一面がある事は少々意外だった、だが止らない。
「あはっ・・・、僕も・・・、僕も一緒に・・・!」
ビクンッと、体が一瞬跳ね、硬直する。
蔓が一気に二人を開放すると、捕食の為か、
別の意図があるのか不明だがうねりながら夜空に伸びる。
「美味しいかった・・・、ゴチソウサマ・・・。」
先程とは趣きの異なるフレンチキスを交すと、踵を返し蔓の化け物を睨む。
「トランス・・・。」
呟くや否や少女の柔らかな肌は獣毛と筋肉に包まれた
2m程のビーストへと変化する。
月明かりに照らされたその姿は、余計に畏怖と強靭さを強調している。
「フゥゥ・・・、ウァァァォ!!」
言葉とも咆哮ともとれる声を上げると夜空にその身を翻す。
人間の視力では感知できない素早さで蔓を次々と薙ぎ払い、
独自の嗅覚でその『主根』を掘りあてる。
「イマダァァァァ!!」
どんなに鋭い爪で斬撃を与えてもこの根に致命傷は与えられない。
この戦いを締めくくれるのは炎の力、魔女の一撃に期待するしか無い。
「んっ……こちらこそ……」
ようやく身体が解放されたことに安堵し、こきこきと肩を鳴らす。
強張った筋肉をほぐし、妖魔からは距離を取る。
この戦いを終わらせるために。
精神を集中させるために目を閉じる。
感覚が研ぎ澄まされ、空気の動きだけで周囲で何が起きているのか手に取るようにわかる。
少女がその身を獣へと変じた事も、圧倒的な身体能力で妖魔の本体を探り当てた事も。
月夜に響く咆哮は本来なら聞く者を萎縮させる魔力を秘めているのだろうが、
精神統一状態に入った瑞希には何の影響もない。
『イマダァァァァ!!』
少女が上げた叫び声に合わせ、目をカッと見開いて詠唱を終えた呪文を発動させる。
多少の迷惑をかけることになるだろうが――仕方あるまい。
この手に勝利を掴むために。
「――Weltenbrand(劫火よ)」
妖魔の本体が、激しく燃えている。
青白い煉獄の炎。超高温のそれは、生けとし生けるもの全てを灰すら残さずに葬り去る。
異常に長い詠唱時間ときわめて狭い効果範囲が欠点だが、瑞希の使える魔術でも最高位のもの。
炎は見る間に妖魔の全体に燃え広がり――そして跡形もなく消え去った。
ただ、地面に黒く焼け焦げた後が残るだけ。
『――Weltenbrand(劫火よ)』
魔女の紡ぐその言葉は植物の妖魔にとっては死の宣告。
燃え盛る炎が全てを包み込み、無へと帰す。
激しい炎と光を目の当たりにして、脱力する。
苦手な感覚と緊張が解れた事が相まって普段の姿へと戻る。
「改めて・・・、例を言うよ・・・。」
裸で隠す物も無く、先程の事もあり少々気恥ずかしいが
黙っている訳にもいかない。
「僕は・・・、法月退魔師事務所の原・・・玲音、君は・・・?」
順番が全くの逆であるが、報告もしなければならない。
それとは義務とは別に興味もあるのだが。
【次あたりで〆でしょうか?タイミング的に】
「ふふ、こちらこそ。助けに入ったつもりが、逆に助けられるとはね……。
炎、苦手なんだろう?……すまなかったな」
微笑を浮かべながら応える。
裸を晒すのが今更恥ずかしいのか、少し耳が赤い。
そんな所も可愛らしいと思う。
「フリーの魔術師、戸田瑞希だ。法月蒼一郎君とはちょっとした知り合いでね。
一度事務所にお邪魔した時君を見かけたけれど、覚えてないかな?」
見覚えはあるけど話はしなかったよなぁ、と思いながらも一応尋ねる。
そして、名前を互いに知った所でそっと口を寄せる。
柔らかく、ほのかに甘い味がする唇にそっと触れるだけのキス。
「……ありがとう。これはささやかな感謝の気持ちだよ」
耳元で囁くように告げると、どこからか現れた二人の使い魔が玲音と瑞希に上着をかける。
【そうですね、大分時間が遅いですし次ぐらいで〆ますか】
【遅筆でごめんなさい……orz】
『ふふ、こちらこそ。助けに入ったつもりが、逆に助けられるとはね……。
炎、苦手なんだろう?……すまなかったな』
彼女の言葉に首を横に振る。
「いや・・・、君がいなければ・・・、危なかったから・・・。」
助けてくれた理由は法月を知り合いで自分を見かけた事があるからと言う。
それだけの理由でここまでしてくれるとは、正直すまないと思った。
「法月の・・・知り合い・・・。んん・・・、ごめん、覚えていない・・・。」
普段はあまり嗅覚を鋭敏にしていないために覚えは無かった。
今では彼女の全ての匂いを判別できるが。
「あっ・・・。」
先ほどと違い、いつもの自分はそういう事に積極的では無い。
だが、驚きと共に触れる柔らかい感触は心地よい物だった。
「いや・・・、こちらこそ・・・んっ?」
人ならざる匂いの人物。
あれだけの魔術の使い手ならば、何らかの僕がいても不思議は無い。
そんな話しを法月の抗議で聞いた事があった。
「ありがとう・・・。」
改めて二人の使い魔と彼女、戸田瑞希に礼を言う。
「また・・・、会えると思うけど・・・、事務所の近くに来たら寄ってくれ・・・。」
告げると踵を返し自らの体を抱きしめる様に上着を纏うと、足早に立ち去る。
少し火照った頬と体の感覚を夜の風に当てて冷ましながら家路へ向かった。
この火照った感覚が自分の物か、先程の妖魔の所為かは分からないが。
【こちらはこれで〆させていただきます】
【遅筆なら私も・・・(汗)】
【とても楽しかったです、また機会があればよろしくです】
【お疲れ様でした、おやすみなさいノシ】
「どういたしまして」
頭を下げる玲音に、こちらも一礼して応える。
言葉や身振りの端々から彼女の、見た目に反して純朴で優しい性格が読み取れる。
「ああ、判った。是非お邪魔させてもらうよ」
そう言いながら彼女が上着を纏って立ち去る姿を見送る。
後ろ姿が見えなくなったのを確認してから、瑞希はもう一つの作業に移った。
そう、「材料」の採取である。
「……んっ、さすがに量は少ないけど、いけるかな?」
「まあ、あの状況では上出来でしょう」
スパイトと話しながら太股に残る玲音の愛液を小瓶に垂らす。
ほんのわずかな量ではあるが、無いよりはよっぽどいい。
「マスター、ありました」
「ああ、今行く」
生垣の向こうからマリスが手招きする。そこに近寄って確認する。
確かに、先ほど玲音に投げ捨てられた妖魔の蔓の一部がそこにあった。
そこから得られる粘液も、重要な「材料」の一部である。
(それに、うまくすれば使い道がありそうだからな、この媚薬は)
色々な意味で有益な物を得られた事に喜びながら、闇へと瑞希たちは消えていった。
【はい、お疲れ様でした】
【こちらもちょっと毛色の違うロールで楽しかったです】
【……全然進歩してない自分に幻滅しましたが】
【次の機会を楽しみに、今宵はこれで失礼させていただきますね】
【では、お休みなさい……ノシノシ】
「…………せいっ!!」
これで6体目。
大きな鋼鉄の刃はあっさりとその命と共に妖魔の身体を分断してしまう。
不気味な色をした血しぶきが噴出し、その返り血を浴びる…が、戦いの途中に
そんなことにかまけている余裕はなかった。
妖魔の返り血を浴びたまま、辺りを見渡す。
あと極少数の妖魔が敵意をむき出しにして、こちらを見据えている。
普段ならば子どもたちで賑わうこの公園も、今は血生臭い戦場と化していた。
そこで命を落とさずに済むのは、偶然出会った退魔士の女性が協力してくれていたお陰だった。
まだ未熟な私がこの数を相手取れば、良くても重傷を負っていたかもしれない。
「ありがとうございます。……あなたのお陰で早めにシャワーを浴びることが出来そうです」
そう、背中合わせに戦う協力者に声をかけた。
【瑞希さんとのロールにスレを使わせていただきます】
「……Windschneide(風の刃)」
瞑目しながら呪文を発動させる。
目を開ければ、今まさに瑞希に飛び掛らんとしていた妖魔が真っ二つに切り裂かれていた。
重い音を立てて物言わぬ死体がまたひとつ出来上がる。
公園を散歩していたら、不意に妖魔の集団に襲われた。
たまたま出会った少女退魔士に協力して、妖魔退治に突入する。
急増のコンビではあるが、我ながらなかなか息が合っていると思う。
背中合わせに声を掛けられたので、軽口で応えた。
「ふふ、さっさと終わらせてゆっくりお茶でも飲みたいな」
見れば、明らかに妖魔はその数を減じ残りは数少ない。
全滅させるにもそう時間はかかるまい。
まるで焦っているかのように、次々と飛び掛ってくる妖魔。
そちらは少女剣士に任せることにして、自分はリーダー格の妖魔に狙いを絞る。
【それでは、よろしくお願い致します】
【さくっと殺っちゃってください】
「ええ。とにかく終わらせてしまいましょう」
女性の言葉に頷きながら、私は飛び掛ってくる妖魔を相手取る。
短い間しか、彼女の戦い方を見ていないが、かなりの熟練した腕だということは分かる。
ならば、リーダー格を任せてもしくじることはないだろう。
私は私の仕事をするだけ。
ぐっ、と両手にする柄に力をこめて大きく頭上へと剣を振りかぶり、大きく深呼吸する。
「―――これで、終わりです。
…せぃぁああああ――――ッ!!」
大地ごと叩き割らんばかりの勢いで、襲い掛かってくる妖魔たちに向けて剣を振り落とす。
豪快な斬撃と共に、凍てつく氷の刃が前方に向けて散弾銃のように爆散する。
ある者は身体を引きちぎられ、ある者は氷の刃で貫かれるがその結末は同じ。
その一撃で辺りの妖魔は一蹴し、絶命させた。
襲い掛かるタイミングがズレたためか、助かった残りの妖魔は一目散に逃げ、あっという間に消えた。
さあ、これで、終わる。
…少なくとも、このとき、私は油断していたに違いない。
【こちらこそ、よろしくお願いします。罠の方はお任せしますねー】
――なかなかやるな。
呪文の詠唱中のために声は掛けられないが、心の中で賛嘆していた。
年齢の割には戦い慣れていて、相当の修羅場をくぐって来た事をうかがわせる。
聞くもおぞましい叫び声を上げて絶命する妖魔たちに、逃げ去る妖魔。
集団戦闘においてパニックに陥る事は、すなわち死を意味する。
……ただ独り残ったリーダー格の妖魔に向かって、瑞希は最後の一撃を放った。
「Elektroschock(電撃)」
魔法杖から放たれた一条の電撃が妖魔に襲い掛かる。
――が、事は予想外の事態へと発展した。
電撃をその身に受けた妖魔だったが、崩れ落ちる瞬間にお返しとばかりに二人に向かって妙な液体を吹きかけたのだ。
液体は青い霧状に広がり、二人の全身を襲う。
――どくん。
(……こ、これは!?)
不意に瑞希は、体の芯から沸き起こる衝動を感じた。
それも、目の前の少女に対しての邪な感情。
欲しい。少女のまだ未成熟な肉体を味わいたい。奏でる音を聞きたい。
自覚した瞬間に、瑞希は行動に移っていた。手が少女の形のいい胸へと伸びていく。
【では、体液が媚薬(惚れ薬系)だったというありがちなオチで】
【すみません、誤ってPCが一度堕ちてしまったので、書き直します…orz
もう少しお待ちください】
【だいじょぶですよ〜】
【……単純に魅了にすればよかったと今更後悔orz】
【ときがもどったら〜ときがもどったら〜】
「なっ……!」
それが何か。
それに気づく前に、私はその一撃を身に受けてしまう。
甘い痺れが、一瞬身体全体に走り、その一瞬で理性という名の鎧は脱がされてしまう。
「あ……あっ……!」
呼吸と共に吸引してしまった甘い匂いの霧は、
私のなにかを狂わせて行く。そう、それを疑うこともせずに。
「んぁっ、やっ……、そ、そこはっ…んふっ…!?」
――――ダメだ。
頭のどこかでは分かっているものの、私の胸に絡み付いてくる女性のほっそりとした指は
振りほどくことが出来なかった。むしろ、もっとせがむように、私は彼女の手の上から自分の手を重ねる。
衣服の上からとはいえ、私の乳房は押しつぶされ、ぐにゅりと変形されてしまう。
「あ…はっ………♪」
「ふふ……触り心地のいい胸だ……」
まるで自分を後押しするかのように重ねられた手に指を絡めながら、柔らかな乳房を揉み解していく。
反応の一つ一つが瑞希を昂ぶらせ、更なる反応を引き出そうと行為はエスカレートしていく。
目の前の少女が愛おしくてたまらない。
ほっそりしたうなじが、上気して紅に染まった頬が、切なげに吐き出される息が。
「……私のことも触ってくれ」
耳を甘噛みしながら囁く。
もう片方の手をとって、自分の胸へと導く。
「んっ……そうだ、気持ちいいよ……」
どうしてこんなことになったのか。
ピンクのもやがかかった意識の中でそのような事も考えるが、敏感な部分を触られると思考も霧消してしまう。
「ねえ……貴女の名前は……?」
「はぁっ……、や、だ……んくっ…!」
何が嫌なのか。それすらまともに思考することさえ、この快感は許してはくれなかった。
まるで、全身の快感が引き出すように、女性はどんどん指の動きを大胆なものにしていく。
私自身もまたそれに応じるかのように、ぷち、ぷちとゆっくり制服のボタンを外していき、
自らの身体を彼女に向けてオープンさせていく。
「ひゃっ…ぁ…。 貴女の……、すごく、柔らかい……」
私と同様にどこかうっとりとしている彼女の乳房に触れ、くにゅっとその乳房を揉んで見る。
他人の乳房を揉むという行為は滅多にするようなものではないが、
その柔らかさに私は思わず何か発見したような子どものように、繰り返して控えめながら揉んで行く。
ここが街外れの公園とはいえ、街中でこんな淫らな行為に走っていることに、そのときの私はなんら疑問を持たなかった。
それだけ、彼女の肉体が魅力的に思え、むさぼりたいと思うほどまでに、興奮は高まっていた。
「私は……優希、佐々木優希です」
ブラに包まれた乳房をむき出しにしたまま、ぼそりと答える。
イリネアイラネ
「っ……かわいいよ、優希……んんっ」
自ら肌を晒し、名を名乗り、求めに応じてくれる少女――佐々木優希。
彼女に触れられた部分が甘く疼き、自然と乳首が硬度を増していく。
ローブの上からでも判るほどに勃起したそれを見て恥ずかしいと思うが、それもすぐに忘れてしまう。
繰り返し執拗に責めてくる優希に、淫らに微笑みながら応える。
「あん、私は……戸田、瑞希……だ……っ」
それと同時に、フリーになった手を自分の肩に掛けてローブをはだけさせる。
優希を巧みに愛撫するのも止めない。
緩急をつけて、リズミカルにふにふにと弾力のある乳房を刺激する。
もっと――もっと、喘ぎ声が聞きたい。
「ふふ、おっぱいの先をこんなにびんびんにしちゃって……えっちな娘」
言いながらブラをするすると外していく。
「んんっ……あっ…! や、やだぁっ…い、言わないでぇ…」
胸の頂きを指摘され、一瞬恥ずかしさがこみ上げてくるが、すぐに襲う刺激に掻き消されてしまう。
乳房を揉まれるたびに、自分が自分で無くなっていくようで、少しばかりの不安があったが
それを考えさせないかのように、彼女の愛撫は一層過激になっていく。
「や、は……っ!」
ブラをするりと外されると、ぷるんと軽く震えて乳房が外気に触れさせられる。
その先はというと、淫らに思えるほどぷっくりと硬く尖っており、乳房が揉まれるごとにぷるっと揺れてしまう。
「瑞希…さんだって……っ」
だが、彼女が私を淫靡な気持ちに誘うと同時に私もまた彼女を食べてしまいたいという欲求に駆られる。
ローブの上からもくっきりと浮かび上がる乳首をきゅっと親指と人差し指で摘むと、軽く押しつぶす。
それでは物足りなく、ぐりぐりと摘んだまま円を描くように乳首を引っ張ったりしながら弄んでいく。
「乳首がこんなにびくびくしてて…いやらしいです……っ。
おっぱいだってすごくエッチ……」
ローブの留め金を完全に外し、彼女の身体を楽しむには邪魔なそれを剥ぎ取る。
彼女の胸を乳牛の乳を搾るかのように根元からきゅっと搾り、左右交互に揉みしだく。
448 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 00:22:28 ID:psQu0hEp
イリネアイラネ
「んっ、そうだな……ふたりとも、えっちだ……ふぁあっ!」
自分よりも年下の、しかも女の子に肉体を蹂躙されていると思うと興奮してしまう。
ローブが剥ぎ取られて素肌を夜風に晒すと、その冷たさに一瞬眉をしかめる。
だが、優希の責めにすぐさま表情は蕩けていく。
「もしかしたら……淫らな者同士……お似合いなのかもしれないな」
熱に浮かされたように呟き、ぎゅっと優希の体を密着させる。
スカートの下に手を回し、すでにぐっしょり濡れているショーツの上から秘所を刺激する。
秘唇の形もわかってしまうほどに濡れたそこに指を擦りつけて。
「ほら、もうこんなになっている……ぁん!」
スカートから手を引き抜いてわざと見せ付ける。
親指と人差し指の間に、銀色の橋がかかって垂れ落ちた。
むわっと雌の発情臭が辺りに立ち込める。
「……あむっ…、んっ、ちゅるっ……ぢゅるっ」
自分の淫らさを見せ付けられ、
赤面しそうになるが、今の私たちにはそれは興奮のスパイスにしかならない。
見せ付けられた指先を口に含むと、男性のものを含むように
ぢゅるぢゅるとはしたない音を立てながら、彼女の指先を愛液ごと啜り、しゃぶる。
指の股までにまで、舌を伸ばして丹念に舐めた。
発情した雌。今の自分たちを評価するなら、そう口にするだろう。
理性も道徳も捨てて、ただ快楽を貪るその姿は、雌以外の何でもなかった。
既に着衣していることすら歯がゆく思えてきて、スカートのホックを外し脱ぎ落とした。
ぐしょぐしょになった下着も邪魔だと、丸めて脱ぎ捨て、完全に彼女へと下半身をさらけ出す。
秘所はやはり愛液によって湿りを持っており、脚を絡ませてその股間を彼女の太ももへと擦り付ける。
「むむぅ……ぷふぁっ……。 なら、とことん…淫らになりましょう…?」
もう歯止めが利かない。
そう宣言するかのように、私は手を伸ばして自分と同じところを指先で弄った。
指先全体に彼女の愛液を染み込ませるようにぐりぐりと執拗に押し付けて、つぷっと押し込む
451 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 00:57:36 ID:psQu0hEp
イリネアイラネ
「うわぁ……」
唾液を絡ませ、淫らな水音を立てて指を啜る優希。
その淫欲に溺れる姿に圧倒されるが、同時に自分の興奮も高められていく。
報復のように秘所に押し付けられた指がそれを助長する。
「うん……そうするぅ……ぁぁん、くぅん!」
優希の巧みな愛撫に身を任せ、送られてくる快感のパルスに身悶えする。
そして、丹念に舌を這わせる彼女をねぎらうかの如くにその唇を奪う。
「むちゅ……んっ……ちゅ……」
最初から舌を入れる本格的なディープキス。
歯茎をなぞるように横方向に舌を動かし、甘い唾液を交換する。
優希の舌に自分の舌を絡め、貪るように吸い上げる。
「んはぁ……」
いったん口を離すと、どちらからともなく熱い吐息が漏れる。
キスを続ける間にも自由な手は互いの乳房と性器を弄り続けている。
瑞希の下着も用を成さなくなり、不快な感触に耐え切れずに脱ぎ去ってしまう。
「むっんっ……ちゅっ、ちゅうっ…れろぉ…」
歯茎をねろっと舐められて、ぞくぞくとした快感が身を襲う。
送られてきた唾液も、嬉々として喉を鳴らして飲み込み、こちらもぐじゅぐちゅと
唾液を泡立てて、多めにその唾液を送り返す。
しばらく、舌と舌が性交するかのように何度も絡め合わせてお互いの口腔を犯していく。
「はっ……ぁ、もう、我慢、できません…。
瑞希さんのあそこも、おっぱいも、全部、食べちゃいます……」
口の端から垂れる唾液をそのままにし、私は彼女の身体を押し倒した。
乳房と乳房、乳首と乳首、そして秘所と秘所が絡み合うように彼女の身体を抱き寄せ、
お互いに溶け合ってしまうのではないかと思うぐらいに強く抱きしめる。
「んう…! ふぁ……瑞希っ…さんっ…! もっとぉっ…!」
はしたなく強請る様に、身体を揺り動かし、敏感な部分同士を擦りつけあい、快感を高めあう。
男性がそうするように激しく身体を押し付けて、何度も何度も唇を重ね合わせ深いキスを交わし合う。
454 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 01:31:00 ID:psQu0hEp
イリネアイラネ
「ひゃうっ!もう……せっかちなんだから……」
長く続いたディープキスにとうとう欲望が抑えきれなくなったのか、優希に押し倒される。
汗にぬめる互いの肉体を一分の隙間もないほどに密着させれば疼きも一層激しくなる。
疼きに耐えかねてびしょびしょの秘所を相手の体で拭おうとする。
「優希……優希……!」
名前を呼び合いながら激しく貪るように唇を重ねる。
全身が性感帯となり、肌が触れ合っている所は熱く燃えている。
優希の手に自身の手を絡め、ゆっくりと、しかし確実に訪れようとしている頂点に向かって加速する。
「いぃ……良すぎて、そろそろ……はふぅん!」
必死に抑えようとするも、同性の体である以上的確に快感のツボを突かれてしまう。
自分のほうが年上だというささやかなプライドが、かろうじて瑞希を支えていた。
「瑞希、さんっ………!! わ、わたしっ、もうっ……!」
彼女の身体を嬲る一方で、自身の快感も最大限に彼女によって引き出されてくる。
だが、その頂きに至るまでに少しでも彼女の体の味を貪り覚えようとするのか、
逆に動きは激しくなり、重なりあう秘所からは愛液同士が絡み合い、淫靡な水音を立てている。
絡めた手を強く握り、それが自身の限界が近づいていることを示していた。
だらしなく舌を突き出し、涎をたらしたままにしても、彼女の身体を貪るということだけは止めず、
腰を淫靡にくねらせて、8の字を描くように秘所を強く擦り付け、絶頂へとお互いを強引に導いていく。
「あっ、はっ…♪ 瑞希ッ…瑞希、瑞希ぃっ…!! 気持ちいいですっ…♪
と、とまらな…♥ 止まらなくなっちゃうっ…、も、もうだめっ…!!
わ、わたひっ、おかしく……な、なっちゃうううううっ!!!」
そしてとうとう限界に達し、びくびくんと大きく身体を震わせるとぷしゃぁっと派手に愛液を吹き出し
そのまま瑞希の秘所を更に濡らしてしまう。
暫くの間、だらしのない蕩けきった表情のまま彼女の身体を抱き寄せて荒く吐息をあげていた。
【眠気が……orz そろそろ締めてもよろしいでしょうか?】
「いいよ……イっても……ふぁぁっ!」
自分と同じく絶頂に達しようとしている優希に蕩けた笑顔で赦しを与える。
その口調とは裏腹に、瑞希自身も実際には抑えきれないところに来ていたが。
うねる肢体に眩暈がしそうなほどの悦楽を感じながら登りつめる。
絶頂にわななく優希に一瞬遅れて、瑞希の我慢も限界に達した。
「ひぁっ!優希っ!私も……止まらないよぉ……
出ちゃう……えっちなおつゆが、一杯出ちゃうの……!イっ、イくぅ〜〜〜〜っ!」
全身を弛緩させ、はあはあと互いの荒い息の音だけを聞く。
温かい体がすぐそばにあることに、瑞希は不思議と心が安らいだ。
【こちらも頭が回らなくなってきました、ごめんなさい……】
【次くらいで〆てくだされば、こちらも適当に終わらせますので】
※ ※ ※
それからどれだけの時間が経っただろうか。
流石に寒さを感じてのそのそと着替え始める。
あれだけの痴態を目の前の女性に晒してしまったことはもちろん恥ずかしいし、
今になって理性が回復し、どうしてあんな淫行に走ってしまったのか、自己嫌悪に苛まれる。
それでも、彼女は魅力ある人物だと思った。
それが何かとは言えないが、どこか子どものような素直さを感じ取ることができたのだ。
「あの……申し訳ありません、その、色々と」
恥ずかしげに目線を送りながら、謝罪を口にする。形はどうあれ、彼女と交わったのは事実だ。
「こういうことを抜いて、またどこかで出会えたらそのときはよろしくお願いします。
貴女と出会えてよかったと思いますよ」
くすりと微笑を浮かべて着衣を正す。多少の恥ずかしさはあったものの、今口にした言葉もまた事実。
またどこかで会えたときはこんな形ではなく、友人として会えることができるのだろうか。
「……それでは、瑞希さん。私はこれで。
またどこかで出会いましょう?」
彼女が着衣を正すのを待ってから、私は一時の別れの言葉を口にした。
彼女とはまたきっとどこかで会う。そんな予感めいたものを感じながら、笑顔を浮かべて私はその場をあとにした。
【それではこちらはこれで締めとさせていただきます。
どうも長時間お付き合いさせていただいてありがとうございましたっ。
遅レスだったり、もう少し展開を早くしておけばよかったなと申し訳ない点はありましたが、
また機会があれば、付き合ってくださると嬉しいです。それではお疲れ様でした、おやすみなさいノシ】
気だるい時間をしばし過ごした後、隣の優希が動き出したのを見て自分も動き始める。
愛液でぐっしょり濡れたショーツを身に付ける事は諦め、
すっかり冷えてしまった体にローブだけを羽織る。
一度達した事で妖魔の体液は効力を失ったのか、瑞希の意識はクリアだ。
恥ずかしげに謝罪の言葉を口にする彼女をじっと見つめながら、口を開く。
「何、気にする事はない。
元はと言えば私が奴をちゃんと仕留めなかったせいでこんな事になってしまったのだからな。
……すまなかった」
居住まいを正しながら、きちんと向き直って謝る。
今回の一件を通じて彼女がどういう人物かわかったような気がする。
きっと――いや、間違いなく芯が強い。それも、並大抵の事では屈しない、誇り高き剣士なのだろう。
「こちらこそ貴女と出会えてよかった。次に会うときには、もっと精進するよ」
何が、とはあえて言わなかった。久しぶりに遭遇した極上の友人だ、言うだけ野暮だろう。
彼女がその場を立ち去るのを見送ってから、瑞希は使い魔を呼び出していつも通りの行動に出る。
その最中ずっと瑞希は柔らかい笑みを浮かべていたが、誰も何も言わない。
冬の澄んだ夜空に輝く星々だけが本当の笑みの理由を知っていた。
【長時間お疲れ様でした。実質はぢめての百合百合にもうドキドキしっぱなしでw】
【遅レスはこちらの方が顕著なので、もっと精進します……orz】
【目標であり憧れだった優希ちゃんとのエロールが出来て本当に嬉しかったです】
【私ごときでよろしければ可能なかぎりいつでもお付き合いしますので、
どうかこれからもよろしくお願いします。それではスレをお返ししますノシノシ】
460 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 10:42:05 ID:psQu0hEp
フタリトモワンパデスネ
落ちますー。
また今度宜しくお願いしますねっ♪
【やっぱりもう少し居てみます。
気軽に声をかけてくださいませー】
>>463 【こんばんは、宜しければお相手願えますか?】
【反応遅れてすいません】
【はい、お願いしますー。】
【シチュどうしましょうかね?】
>>465 【いえ、遅くもないと思いますよ】
【こちらこそ宜しくお願いいたします】
【そうですね、やはり斬鬼の訓練か何かの一環で手合わせ、と言うのが無難かと思いますが】
【ただ、えっちはなしな方向になりそうですが】
【そうですね、こちらも馴らしが必要なのでそれが一番かと。】
【こちらは新入生なので道場等に最初から居るのは不自然ですね】
【八雲様が訓練中に通りかかるとか、校内の案内→稽古のどちらかが自然でしょうか】
>>467 【では基本はお互いの馴らし、出来るならえっちも、の方向で行きましょうか】
【校内の案内→手合わせ、が無難でしょうか?】
【まあ、えっちに関しては出来なくても出来ても今日は構いません。】
【次回以降はお願いしたいところですがw】
【ではその方向でお願いします】
【書き出しはこちらからがよろしいでしょうか?】
>>469 【そうですね、まずはキャラのお披露目と考えていただくのが適切かと】
【はい、では校内の案内から手合わせと言うことで】
【其方から願えますか? お恥ずかしながら、書き出しはどうにも苦手なものでして】
1月某日、センター試験によって人気の無い校門を一人の女の子がくぐった。
幾月後にはその青い髪に、擦れ違う高校生は驚きと好奇の目を向けるだろう。
古志千草、15歳。この春既に白清高校への入学が決まっていた。
高校進学と同時に斬鬼衆への配属が決定している。
今日はその斬鬼衆の先輩への挨拶と施設の案内のために呼び出されている。
「わ、大きな校舎〜♪広〜い!」
明るく口笛を吹きながら校庭の真ん中で立ち止まる。
「えっと・・・・・・八雲さんって人か・・・・・・どんな人なんだろ・・・・・・?あっ!せんぱーい!すいません!」
手をぶんぶん振りながら黒髪の女性へ向かって走り出す。
「はちくも・・・・・・さん?ってこの辺で見かけなかったですか?」
新入生、そして斬鬼の新たな仲間。
種々の事情により、員数の減ってしまった斬鬼の補充、と言う話を聞いていたが天音はそれを懐疑的に捉えていた。
(あれほどの人材が、そうそういるものではない)
口には出さないが、義虎以下、他の斬鬼も同じ思いだろう。
失ったものは大きく、埋めがたい。
だが、支部長が直々にとのことだ。否やもない。だが、天音はそこで珍しい行動に出た。
「その新入生の案内をわたくしにやらせていただけませんか?」
常は他者との関わりを出来るだけ避ける天音らしからぬ願いに、仲間たちも驚き戸惑った。
だが、支部長だけは薄く笑いさえ浮かべて即許可をおろした。
それほどに、天音にとって「斬鬼」とは重いものなのだと、知っていたから。
そして、一月某日。
校門にほど近い、校庭の入り口で天音は新入生を待っていた。
写真と一緒に渡された資料によると、新入生の名は「古志千草」
見た目だけならば、活発で明るそうな少女。
だが、斬鬼に来る者が、見た目通りとは限らない。彼女の中にはどのような「鬼」が居るのだろうか。
つらつらと考えていると声を掛けられた。
人を捜しているらしき少女だ。そして……それが古志千草だ。
「はちくもではなく、やくもと申します。こんにちは、古志様」
柔和な微笑みを浮かべ、挨拶をする。
「や・・・・・・く・・・・・・も・・・・・・?ああ、やくもって読むんだ、確かにそっちが自然かも、うん」
宙に八・雲と書いて名前を確認している。来る途中ははちくもなんて変な苗字だななどと失礼な事を思っていた。
「あ、先輩が八雲さん?、一発で会えるなんて今日はラッキー♪・・・・・・今日はよろしく・・・・・・お願いします♪」
取ってつけたような敬語はおしとやかな先輩の態度とまるで対照的で、深く考えることなど何もなさそうに見えただろう。
じっとしているのが退屈でたまらない性格で、挨拶もそこそこに早く行こうと身振り手振り交えてねだる。
「せんぱーい、早く行きましょうよー!」
「むしろ、はちくもと言う読み方が不自然ではないでしょうか?」
おっとりと言うに相応しい調子ながら、何気に辛辣。
いつもよりも三割程は厳しい、と自覚もしているが。
「此方こそ宜しくお願いします。
……少しは落ち着かれてはどうです? 案内先は逃げたりしませんよ」
やんわりとたしなめながら、す、と千草の前に出る。
自然で流麗な動き。
「では、参りましょう。此方へ……」
少しだけ後ろの千草を見、すぐに歩き出す。
「確かにそうだけど、じゃないや、ですけど・・・・・・。あ、はーいッ!」
前に出るまでの流れるような動きに一瞬見惚れるも、すぐに後を追いかける。
年長者の様に静かで、流れるように動くのでなく、バタバタと足音が煩い。
人気の無い学校に入った事があまりないのもあってか、物珍しそうにキョロキョロと落ち着かない。
「あれは何ですか???弓道場!?すっごーい!あれは、あれは?」
先輩が口を開くより先に矢次早に質問を浴びせる。
「もう少し静かに歩けませんか?」
至極冷静に、或いは冷徹なほどにそう言葉を掛ける。
この少女は、あまりにも少女でありすぎる。
「彼方は、ええ、弓道場です。それと少し離れたところにあるあれが柔剣道場。
地下には温水プールもあります」
白清高校の設備はそこそこ以上に整っている。
無論、天洸院が絡んでいるためである。
斬鬼の者を研ぎ澄ませるためにはそれなりの器が必要なのだ。
だが……この少女は、本当に斬鬼たりえるのか。
天音の疑念は、一つの行動となった。
手に握り込んだ五円玉。
お守り代わりのそれを礫として、千草に向かって撃つ。
先輩の言葉に突然目を輝かせる。温水プール!憧れである。
冷たい口調など歯牙にもかけず益々その声は熱を帯びた。
「ほ、本当に温水プール!?それも地下に?早く入りたい!」
視界の端に捕らえたのは極普通の五円玉らしい。
並外れた動体視力と思考能力でそう判断すると自然に手を伸ばした。
五円玉が綺麗にその中に納まる。
わざとらしく目を丸くして八雲に向き直る。
「えっと……くれるんですか?コレ」
「お風呂ではないのですけれど」
呆れたような口調でそう返す。
言葉がさらに冷ややかになったのは気のせいだろう、多分。
だが、その冷ややかさが凍り付いた。
視界の端、目測できるかどうかのところからはなった礫はいとも容易く受け止められた。
「いえ、むしろ挑戦状かしら。
……地下に降りましょう。そちらに修練場があります」
「・・・・・・挑戦状・・・・・・?しゅうれんば・・・・・・?」
首をかしげて後へ続く。
地下への道は冒険のようで、楽しそうに着いて行く。
五円玉を器用に手で弾いて弄ぶ。
「♪〜」
トンッ、トンッとリズミカルに五円玉が手の甲、足の甲を跳ねて行く。
踊るように硬貨と戯れている。
「温水プール、温水プール♪水着持って来ればよかったなぁ・・・・・・」
着いたのは残念ながら温水プールではなく、殺風景な修練場だった。
困惑のまなざしを向けた。
「ええ、ここが修練場です。
つまり……」
ひゅん、と腕を振れば、そこには一降りの刃。
黒く光るそれは陰の刀。
「温水プールで泳ぐのではなく、ここで舞っていただきます。
貴方が、どれほどのものなのかを示す、舞を」
そう言って、刀を構える。
「・・・・・・えー。」
不満げに口を尖らせる。が、急に笑顔になる。
それはそれで面白そうだ、と思ったのだ。
瞳を輝かせて刀を相手の見つめる。
「それじゃあ、私も刀でお相手しますね。一応三種類ほどあるんですが。」
そういって私服に仕込んだ黒刀を取り出す。光りを全く反射しない闇の刀。
普通なら昼間は斬糸を使うが、剣技の腕試しならこちらが適切だろう。
だらり、と腕を垂らして相手を待つ。
どうしようかな、先に仕掛けようかなと、にやけながら考えている。
「得物の種類が優位を示すわけではありませんよ?」
言わずもがなの言葉を投げかける。
少女への感情は既に固まりつつあり、そしてそれは最悪と言って良かった。
その感情が、らしからぬ、そして苛烈な行動に繋がった。
気が、体内で破裂する感覚。
全ての限界を突破した一瞬だけの超機動。
音すら立てず、陰の刃が奔る。
「・・・・・・わっ・・・・・・と・・・・・・」
人を超えた動体視力は動きを完全に捉えてはいた。
最小限で避けたはずの刀が服を軽く切り裂いて下のスーツを露出させていた。
「酷いなあ・・・・・・この服、高かったのに・・・・・・」
トンッと後ろに跳ねて今度は自分の番だとばかりに突進する。
相手の舞うような動きとは似て非なる踊るような動き。
優美さよりも苛烈さが際立つ。黒刀は正確に避ける方向に追尾する。
最速の一撃は躱された。
僅かに服一枚を切るに過ぎない結果は、不本意に過ぎる。
だが、これが現実だ。
これが、斬鬼に入ろうとする少女の力だ。
「なるほど……」
動体視力、そして反射神経。
どちらも極限を遙かに越えた位置にある代物。これが、少女の力か。
そして、ひとたびそれが攻撃に転ずれば。
全てを切り裂く苛烈なる嵐。
だが。
「柳に雪折れなし、と申します……」
言葉の通り、苛烈で正確な斬撃を刃を以て流し、避ける。
正確な攻撃はそれ故に読みやすい。
そして……
「……松風」
天音の動きが変わった。
いや、正確には上半身と下半身の動きが、変わった。
上体は一切揺れることなく、動く。
足捌きと丹田を経由する気の支柱故に出来る、理の極みにある理外の動き。
そして、その状態から、刃が再び奔る。
ピンッっときた。あの攻撃はヤバイ。
「ああ、もう面倒くさいッ!」
対人に使うのは初めてではなかろうか。
毒飛礫「風花」妖魔の内部に突き刺さり毒を流し込む極小の飛び道具。
さらに服を切られながらも3連射しつつ後ろへ下がる。
手にはもはや黒刀ではなく斬糸が握られていた。
手首が何度も翻されると見えない斬撃の暴風が襲う。
「くっ」
見えない極小のそれを感じ取れたのは僥倖か否か。
空いた手に気を凝縮させ、もう一振りの刃を生み出す。
白銀色に輝くそれは陽の刃。
刃風が、礫をかろうじて弾く。
だが、その時間は相手に体勢を整えさせるのに充分な時間だった。
見えない斬撃の暴風が、天音を襲う。
巫女服が切り裂かれ、白い肌に血が滲む。
嵐の前に今にも頽れそうで……だが。
「……ふっ」
一息、吐く。
その瞬間、拍子が全て揃った。
一の刃のリズム、二の刃のリズム。
そのリズムに合わせ、舞うその動きは、刃の嵐をすり抜ける。
そして、二振りの刃が、顎のように千草を襲う。
「・・・・・・げっ。」
不味い。
見えてても体が動かないという事は人間にはよくあること。
それは千草とて例外では無い。
入学前から先輩に切り殺されましたとか洒落にならないなあ。
自分を切り裂くであろう二つに刃を他人事のように眺めた。
刃が、千草を両断……することはなかった。
両の刃とも、千草の身体に触れる前で止まっている。
「勝負あり、で宜しいですか?」
荒い息をつきながら、静かに宣告する。
事実、これが限界だ。
これ以上続けることは不可能……身体が持たない。
「・・・・・・はーい。」
刃から目を離さないまま、諸手を挙げて降参する。
なるほど、さすがは先輩。
ここまで追い詰められた事は今までそうない。
口に含んでいた毒飛礫を吐き出し賞賛する。
「松風?すっごいね、あの動き!全然読めない!」
そのうち、奥の手も見てみたいなあと心中に呟いた。
「動きを読めないような動きが身上ですから。
そちらは少々目に頼りすぎですね」
厳しく短所を指摘しながら、その言葉に先程までの険はない。
態度に相応しい、それなり以上の実力の持ち主であると理解したからか。
「基礎能力が高いのは結構ですが、それに頼りすぎてはいけません。
技も練るべきです」
そう言って、ふぅ、と息をつく。
天音にしても、限界だったからだ。
「手厳しいなあ・・・・・・。見えちゃうんだからしょうがないってのもあるんだけど・・・・・・」
先ほどまでの殺気を消して、また活発なだけの少女に戻る。
目が疲れたのか、軽く充血している。少し痒くてゴシゴシと拭いている様は猫を思わせる。
あ、そういえば。
「怪我・・・・・・大丈夫・・・・・・!?先輩のおかげで私はないけど、多分そっちは掠ったでしょ?」
「見えるものだけに気を囚われてはいけない、と言うことです。
見えないものにも気を配らないと、こうやって幻惑されてしまうのですから」
優しい、とさえ言える口調で教え諭す。
「んっ、大丈夫です。気を使って自己治癒できる範囲ですから。
そちらに怪我がないなら何よりです」
にこり、と優しく微笑む。
「さて、それでは……後はプールに行きますか?
わたくしはご一緒しませんが、それでも宜しければ」
「うーん、その辺は勘で何とかやりくりしてるからなあ。
あの動きは無理だったから何も言い返せないケド」
やや憮然として返答する。
「本当に・・・・・・大丈夫・・・・・・?ならよかったぁ」
安堵してこちらもにこりと微笑み返す。
自分の脆さを基準に考えるとどうしても人に傷をつけた罪悪感が大きい。
「プール!プール!・・・・・・あとは図書館とか、教室とか、色々見たいな〜♪」
自分よりやや背の高い先輩の腕に抱き付いて見学の続きを催促した。
【この辺りで〆ましょうか】
「見る、と言うのは効果が大きい反面、それを逆手に取られると危険ですから。
これからは、勘ではなくてちゃんと鍛えましょうね」
くすり、と微笑みかける。
「ええ、大事ありません。
そちらも大丈夫なようですから、良かった」
試しで怪我をさせるわけにもいかない。
この試しにしても、余人に知られては拙いのは変わらないのだし。
「……現金ですね。
ではまずプールを案内してからにしましょうね」
腕に抱きつく千草を優しく見つめてから歩き出す。
今度は、一緒に。
【はい、ではこちらはこれにて締めます】
【拙いロールにお付き合い、ありがとうございました】
【ありがとうございました】
【お付き合いいただきありがとうございます】
【また機会があればお願いしますね。それでは】
【雑談スレより南雲氏と約束アル】
月の明かりも雲に隠され、冷たい風だけが吹き抜ける。
少し町から外れたこの辺りは余計に寒く感じる。
「はぁーっ、こんな日に外回りとは・・・、ついてないアルぅ・・・。」
李小鈴――中国に本部を持つ『龍』からの留学生。
現在は天洸院斬鬼衆、白清支部に身を置いている。
その任務の一環としてのパトロールだが、本人は不満タラタラである。
「A地区以上無しネ。あとはB地区の・・・、スクラップ工場アル。」
大小の工場を抜けてスクラップ工場へと向かう。
今はあまり繁盛していないらしく、この時間になると人気は殆ど無い。
稀に不道徳な若者が溜まっていたりする程度だ。
「んー、面倒だけど一応中も見るアルね・・・。」
懐中電灯の光を頼りに薄暗い工場内へと足を運ぶ。
あまり集中もしておらず、光もあまり無い状態。
そこに潜む『魔』の力には気付かずにいた。
【よろしくお願いしますアル】
―――今日の塒はここにしておくか。
以前に使っていた棲家を追われて、どの位経ったか。
中々気に入った場所と言うのは見つからない物だ。
ここも悪くはないのだが、やはりあまり雑多だと気が乗らない。
それに、ここには稀とは言え人が訪れる。
単数ならば特に問題はないのだが、多くは複数人でだ。
下手をして正体に気が付かれれば、逃がさずに全員を始末する必要がある。
しくじる可能性も無きにしも非ず。
自分から要らぬ苦労を背負い込むのは、ただの愚か者だ。
虚空に目線を彷徨わせながら、益体もない事を思考していたその時。
細い細い、触れただけで切れる様な警戒用の糸。
入り口に張っておいたそれが切れた感触。
それが瞬時に自分の元へと伝えられる。
その瞬間、反射的に自らの気配を消した。
視線だけで、入り口の方向を見遣る。
しかし、見えるのは懐中電灯の光と人影と分かる物だけ。
気付かれないためとは言え、極限まで力を抑えていては闇を見通す事は叶わない。
――仕方があるまいな。
相手の確認が出来ないと、いざ見付かったという時に最適な行動を取れない。
敵の携えた獲物が分かっているだけでも大違いだ。まあ、杞憂であれば、それでいいのだが。
危険があるのは分かっている。だがそれでも。
そして、ほんの少しだけ力を解放した。その眼が闇を見通す分、誓ってそれだけの、極少量の力を。
【こちらこそよろしく頼む。自分から嬉々として襲い掛かる事は無いので戦闘に
入るまでに少々苦労を掛けるだろうが、見逃していただきたい】
「誰かいるアルかー?子供がいたら早く帰って寝るアルよー。」
何ともやる気の無い声。
一応、懐中電灯で工場内を照らしてはみるが、細心の注意を払う妖魔を見つける事は敵わない。
「さて、定時連絡の時間アルね・・・。あれ?これ・・・、ちがっ・・・、ん〜。」
携帯電話との格闘が始まる。
どうしても支給されたこの『便利』な道具が『不便』で仕方が無い。
もし、この機器との格闘がなければ何も知らずに終わっていたのであろう。
しかし、この作業により気が一点に集中してしまう。
「えっと、このボタ・・・ん?」
本当に一瞬だけ、髪の毛がくすぐられる様な独特の気の流れを感じる。
唯の小動物か、探している『ソレ』かは不明だが。
「んー・・・、仕事は仕事アル。」
携帯電話を仕舞い、懐中電灯をそっと床に置く。
――シャリン、シャリン。
独特の輪の付いた錫杖を鳴らし、床にトンと突き立てる。
全てを見通す程では無いが、暗がりでも不自由しない感覚を得る。
気を張り巡らせると微かな流れ。
小さい生き物か、遠くにいるのか、気を殺しているのか?
それを判断するには、あまりにも情報が少な過ぎた。
光の動き、最も警戒すべきはそれ。
こちらに向けられる気配があれば、予想される射線から音を立てず退く。
このような事で見付かれば、それこそ申し開きの一つも出来ない。
……しかし、気が抜ける。
廃工場の中に響く、緊張感の無い声。
そこまでやる気が無いなら、中に入って来なければ双方にとって良かったと言うのに。
この状況では考えても詮無い事だが。
聞き耳を立てていると、とある言葉が耳に付いた。
『定時連絡』
この時点で、見た目通りの少女であるという希望的観測は完全に出来なくなった。
錫杖を持っている時点で半ば覚悟していた事ではあるが。
息を殺し、周囲の空気の流れに乗る様に動いていく。目指すは割れた窓。
入り口から逃げ出そうにも、相手の方が距離が近い。
場に一瞬にして、先とは違う空気が満ちた。
多少の息苦しさを感じる程だ。かなりの使い手と見るのが賢明だろう。
――さて、どうした物か。
これでは下手に動けばすぐさま気取られる事になり兼ねない。
手近な物陰に身を潜め、注意深く様子を伺う。
自ら動くか。それとも待ち構えるか。出方を見極めるのは重要な事だ。
それによって、こちらも対応を変えて行ける。
―――気が動かない。
さて、この様な場合には色々な考えや対処法がある。
人によってそれは様々なのだが。
知能が低い動物、あるいは妖魔の場合、そして遠くにいる場合は
気が多少動いたり、大きさが変わる事が多い。
だが、今感じている気は動かない。
つまり、『この場に何者かが潜んでいる』可能性が高く、
『こちらの様子を伺っている』と、考えられる。
不用意に動くのは危険、まずは工場内の配置を確認する。
大型のスクラップ用の機械、詰まれた車の山、事務用の棚、机。
隠れられるならこの辺りだろうか?
しかし、相手が姿を消している可能性もあれば、ガスや液状かも知れない。
そして出入り出来る場所は割れた窓と今通った出入り口のみ。
「まずは対等な立場になって貰うネ・・・。」
―――シャリン・・・、シャリン・・・、シャリン・・・。
錫杖の輪が踊る。
少し白い気を孕んだ錫状が地面に立つと、非常に微かな気が工場に流れる。
気によって形成された波紋。
闇に潜むそれが波紋に触れた時、無機質な物とは異なる波が立つ。
見張られる者と見張る者。
その双方が相手の存在に気付いていて、尚且つ見張る者の正確な位置を相手が知らない場合。
大抵は先に痺れを切らすのは前者である。故に、今現在はこちらが有利。
相手が構えを取った時点で、存在には気付かれているものと考えた。
で、あれば待ちの一手。相手が動けば、必ず隙が出来る。そこを衝いて、逃走。
何の問題もない。
闇の中をも見通す妖魔の眼が、錫杖の動きを捉えた。
何の意味があるのか。これ自体に攻撃の意図はあるまい。
ほぼ確実にこちらの位置を確かめるための物だろうが、それがどういった方法か。
――分からんが、場所を移動した方が良いか。
音色の残響に気配と音を溶かし、場所を移る。
気付かれない様に細心の注意を払って、だ。
一瞬迷うが、出来る筈だと行動に移そうとした。まさにその時。
地面に着いていた掌に微かな違和感が感じられた。
ほんの微かな、先程の行動が無ければ見逃してしまいそうな、それ。
反射的にその違和感から逃れる様に地を蹴った。
背後へ、音を極力消して影が跳ぶ。
だが、動揺から来たものか小さな物音が立っていた。
それを自らの耳で聞き、表情が苦々しげに歪む。
――我ながら何と無様な。
不甲斐ない己をなじるが、過ぎた事。
相手を見据え、その動きへ対処する事を考える。
今ある札は、数条の粘糸。相手の手札は一体何か。
確かに気が揺れ、動き、物音がする。
それを逃してやる程甘くは無い。
不利な状況とは相手の『隙』を誘う好機でもある。
音、人影、俊敏な動き、非交戦的、気の隠蔽、暗視、ねぐらを必要とする事。
随分と相手と言う物が分かってくる。
物理攻撃可能、高回避力、低殺傷力、用意周到。
未知な部分としては擬態をしていた場合である。
注意しなければ本来の姿をとった時に大きく要素が変わる場合もあるからである。
相手が潜んでいると思われる場所を見据えながらジリジリと移動する。
背中に入り口、右側面に窓。
薄い光と冷たい風を背中に纏う。
正中線に錫杖を構え気を流し込む。
己の体内で覚醒させるは動態視力。
「北風と太陽・・・、時には北風が良い場合もあるネ。」
錫杖をゆっくりと、大きく八の字に動かし始める。
気を一点に放つ攻撃は分が悪い。
得られた情報から選択された攻撃方法は、気を相手にぶつけるのではなく
気を使って北風の冷気でうねりを作り、相手をいぶり出し行動速度を落とす事である。
流石に大きな風をうけては動きも鈍るであろう。
ましてや『ねぐら』を必要とする者であれば冷たい風は気持ちが悪いに相違無い。
背後に跳び、着地した直後再度跳んだ。無論、今度は無音でだ。
ただ一度跳んだだけでは、大まかな位置は確実に特定される。
であれば、再び大きく移動しておくべき。気休め程度に過ぎないが。
窓はこちらから見て相手の左、入り口は真後ろ。
跳んだ場所も悪かった。袋の鼠と言った所か。
だが不幸中の幸いと言うべきか、一気に攻め込んでくる事は無い様ではある。
であれば、糸を織っておく方がいいだろう。武器は多いに越した事はない。
そして掌中に蜘蛛の糸が続けて数条産み落とされた時、闇の中に浮かび上がる光を目に収め、
同時にとある御伽噺の名を聞いた。この様な身でも一応は知っている、御伽噺。
時には北風が良い場合もある、と言う事はまさか――!
素早く周囲に目を走らせる。
あるのは車、机、大型機械、棚……机があるのであれば、あれもある筈。どこだ?
そこまで考えたその時、予感の的中を知らせる物が到達した。
涼風の域に留まらない、冷風。ゆっくりと体温を奪い去る死神の手。
募るは焦燥。思うように体が動かなくなる前に、何とかしなければ。
削ぎ落とされていく余裕。もしもの時は突撃を掛けなければならないかもしれない。
だがその前に、やれる事は済ませよう。
そして、視界にそれが写った時。人蜘蛛は迷わず糸をそれに向けて放った。
可能な限り、早く、迅速に。この身体が満足に動く内に。
「……ッ!」
糸を引き、弛みを無くす。糸の先にある物に、体の捻りと腕力を以て勢いを与える。
その先に括り付けられているのは、何の変哲も無いパイプ椅子。
この姿の時は妖魔としては非力な部類だ。だが、これにある程度の勢いを与える程度なら。
そして、その腕力を補填するのは遠心力。位置は糸の弛みを調節すればいい。
相手が纏った光もあり、所在は容易に確認できる。
その頭上から唸りを上げ、殺人をも辞さない勢いで糸に縛られた椅子が振り下ろされた。
ヒューヒューと言う音からゴウゴウと言う音に風が変わる頃、闇に潜むそれは動き出した。
素早く伸びる手・・・、ではなく『糸』。
この時点で想像できるのは『糸』を生成できる『昆虫の類の妖』、かつ『夜行性』。
そんな分析をしていると、パイプ椅子の鉄槌が襲いかかる。
風に煽られながらも上手にコントロールされ、確実にこちらに振り下ろされる。
効果的と思われる攻撃を中断するのは惜しかったが、そんな場合では無い。
「ハイッッ!!」
八の字に回転させている錫杖の力と、自身の体も半回転させパイプ椅子を払う。
「それっっ!!」
そのまま自身の体をさらに半回転させ『糸』の根本、
それが居ると思われる場所に大きく一歩踏み出し錫杖の先から気弾を打ち込む。
そのまま追撃を見舞いたい所だが、狡猾、俊敏な相手にそれは控えるべきである。
もっとも金髪の先輩程の力があれば別だが。
ここは一つ、旅に出てしまった明るい先輩の真似をしようか?
無理に追わず、心を落ち着かせ獲物を見つめる。
生まれ持つ『速さ』には追いつけなくても、訓練によって身に付けた『早さ』がある。
無駄な行動を取らず、コンパクトな動きでそれの反応を待つ。
払われた椅子、その直後に襲い掛かるは気弾。
普段であれば危うい所だとしても避ける事は出来ただろう。
だが、今この状態、体温を奪われ、身体の動きが鈍っていては――
「間に合わんか……!」
とは言え、それは自らの意思で身体を動かし、回避を行おうとした場合だ。
力を抜く。気弾の発射前、相手が行った行動は椅子を払う事。
気を放つと言うのはその後の一動作だ。
であれば、その払われた椅子の勢いに引かれれば良い。
体勢を崩す事になるが、それは仕方のない事。
気弾は回避できたが、体勢を立て直すのが遅れて机に強かに身体が叩き付けられた。
それが支えになり、無様に転倒する事は免れたが、代わりに机がけたたましい音を立てて倒れる。
思うより僅かに遅れて動き出す、自分の身体に嫌気が差すが、この状況では仕方ないか。
いや、今はどう切り抜けるかを考えろ。
何か使える物はないか。そう思い一歩踏み出した時、足に何かがぶつかる。
机から転げ落ちた物だろうか? 何気なく目を遣り、そして―
それを見て、蜘蛛の目はゆっくりと細められた。
風切り音が、廃工場の中に響く。
手に携えた糸の先、そこに何かが粘糸によって縛られているのは先と同じ。
ただ、違うのはその大きさと、複数であると言う事。
こういう時、相手が慎重だと言うのは都合が良い。無闇な追撃を控えてくれる。
左手に握ったカッターナイフ、それを投擲してから僅かにタイミングをずらし、右手の先で
回転を続けていたドライバーを撃ち放った。
先の椅子と違い、この大きさなら引き戻すも微妙な調整をする事もできる。
闇を引き裂きながら、錆びた鉄が肉を噛まんと一直線に襲い掛かっていく。
【大分遅くなったが、如何する?凍結か、〆に持っていくか。
それに関してはお任せするが】
気を落ち着かせる。
ここで追撃しても息を切らせてしまう。
手応えはあったが、相手の反射神経はなかなかの様子だ。
タイミングをずらし投擲されるナイフとドライバー。
呼吸を整え錫杖を回転させ打ち降ろしナイフを落とし、打ち上げながらドライバーを弾く。
腰を落とし、錫杖を構え相手を見て不適に笑う。
「私は天洸院、斬鬼衆、李小鈴アル。名を名乗るよろし。」
相手は唯の妖魔では無い。
恐ろしい力は今の所覗えないが、恐ろしい程の経験、生存術の持ち主だろう。
闇に潜み長生きした妖魔にはそれなりの価値がある。
相手のデータはかなり揃った、後は条件を揃えて『狩る』のみ。
【凍結にてお願いしますアル。日取りは伝言スレにかくよろし。】
【今日の所はこれにて〆させていただくアル。】
【遅レス雑文にお付き合い戴き謝謝!】
【南雲さんの文章力は凄いアル〜、続きを楽しみにしているアルよ。】
【それではお疲れ様&おやすみアル。再見〜ノシ】
【承った。が、今週であれば開いているのは週末くらいだな】
【来週はまだ分からんが。一応はそれだけだ】
【いや、こちらとしてはそちらを見習いたいくらいだ】
【私の方こそ、遅筆拙文だと自認しているのだが、そう言われると嬉しくもあるな…】
【ではこれにて。遅くまでお疲れ様だ。私も次を楽しみにしておく】
【道迷サンとの待ち合わせです】
【宜しくお願いします】
――――5時間前――――
『情報。深夜1時頃、あの廃ビル付近をうろつく妖魔が居るらしいわ』
――――情報?依頼で無くて、情報か。
『そう。報酬は当然発生しない。』
――――その妖魔は?
『此ね。』
そう言って彼女は、二枚のファイルを差し出した。
その対象の容姿や性格などが事細かにかかれたそれを手に取り眺めながら、ふと正宗は呟く。
――――七妖会か。
『ええ。しかも唯の雑兵で無くて、とある部隊の金妖を務めているわ』
――――危険性は?
『普通ならば、精々C+ね。けれど、この妖魔には、七妖に入る以前の経歴が一切無いの』
――――奇妙だな。
『行くの?』
――――あぁ。一先ずは様子見に。
夜風が廃ビルの隙間を抜け、不気味な音を立てる。
時期が時季ならば、心霊スポットにでも使われていそうな建物を横目に、白い息を吐きながら少年は歩いた。
音は一切立てずに。ただ目と耳を研ぎ澄ませて。
対象の妖魔――――世死見道迷を見つけ出す為に。
>>508 拝啓、元上司様
朝に白い息を吐きながら登校する女子高生が増えてまいりました今日この頃、如何御過ごしでしょうか。
私の方は、貴女様から承った勧誘の雑用に、某廃墟に通っている毎日です。
ところで、対象の妖魔が見当たらないのですが、ひょっとしてこれっていじm
「…まぁ、ね。分かってはいるんですよ、九割九分九厘嘘だろうって事は。
でも、ひょっとしたら一厘の確率で本当に滅茶苦茶美形の少女の姿をした妖魔がいたら―――」
『道迷。希望的観測ヲ言ッタトコロデ事態ハ全ク改善シナイ訳ダガ。』
イジメ
そんな訳で、今回の雑用はこんな感じです。
ええ、シリアスな雰囲気をぶち壊し。それが道迷クオリティ。
「…寒いよ、寒いよー…。」
『……帰ロウヨ、普通ニ。』
「駄目ですよ…何故かバレるし。…うー…。」
そんな訳で廃墟の中で寒さに震える一匹と一本。
彼等は、全く気付いていないようだった。
ついさっき此処にやってきた退魔師の少年、そしてそれさえも元上司のイジメに含まれているという事も。
【遅れて申し訳なかとです…】
【宜しく御願いしますー。】
>>509 ――――何というか、親切な奴だ。
如何にして相手の口を割らせるか、多種多様な拷問、尋問の術を用意したのに。
既に妖魔の目的は知れた。話の内容はおおよそ少年の行動に影響する物でなく、
また、さして当面脅威に成る物でもなさそうだ。プラフの可能性もほぼ無いだろう。
――――それでは、このまま帰途に付くのか?
褐色の少年は腕組みをして暫く思案に浸り、つと不敵な笑みを浮かべた。
ピンと耳元のピアスを弾き、無造作に部屋の中に入り込む。
「あれ?誰か居るのか?」
さも偶然通りがかった一般人の様な顔をして。
小野正宗は、世死見道迷と接触した。
『「あれ?誰か居るのか?」』
突然の、予期せぬ来訪者―――とりあえず、想像してみて欲しい。
誰も居ない廃墟の中で、ランプ一つだけが頼みの綱の暗闇の中。
ただでさえ過敏気味な今、いきなり声をかけられたらどうなるか。
「 さ だ b く ぁ w せ d r f t g y ふ じ こ l p ; @ : ッ ! ! ! ! ?」
『 亜 z s x d c f v g b h ん j m k 、 l 。 ; ・ : ¥ ! ! ! ? 』
当然、こうなる。
「わわわわ、私を食べてもお美味しくないですすよッ!?」
『ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ…』
人間を相手に取り乱す、全く持って妖魔らしくない妖魔。
とりあえず、相手の退魔師―――小野正宗に対しての第一印象は、この時点で決定した。
だって、雑用(イジメ)ですから。
――――正直、勘弁して欲しい。
毒気を抜かれたような気だるげな表情で、正宗は溜め息をついた。
表情とは言え目元は長い前髪で、口の辺りは茶色のマフラーで覆われており、
端からそれを感じ取るのは、少しばかり難しかったかもしれない。
「…あー…怖くない、怖くない。俺は幽霊じゃねーからさ」
安心させるように両手を上げながら、ゆっくりと道迷に近づく。
殺すつもりだったなら、最初から声などかけずに隙を見せた一瞬に背後から忍び寄ればいい。
けれど危険を犯してまでこの妖魔に接近したのは、彼の性質を見極めたかったから。
――――ただの人間相手に怯える妖魔か。
そもそも、あやかしや物の怪の類である妖魔が何故幽霊を恐れるのか。
――――なんか頭痛くなってきたな。
「俺は不破慎二。で…あんたさぁ、こんな所で何やってんだ?
まさか、ホームレスって奴か?」
気の毒そうな視線で、冷たい床の上に立つ妖魔を眺めた。
仕事上で使う偽名を舌に乗せながら、一応は彼に探りを入れていく。
>>512 『「…あー…怖くない、怖くない。俺は幽霊じゃねーからさ」』
「わーッ!ぎゃーッ!こーろーさー……え?
あ?ああ…何だ、びっくりした…。」
『…………。』
妖魔だって嫌なものは嫌だし、怖いものは怖い。
かの有名なテレビから這い出てくる某S子を見た時には、三日ぐらい悪夢にうなされた事は今でもくっきりと覚えている。
一通り騒ぎ終わり、突然の侵入者をまっすぐと見る。目の前に居たのは、茶色のマフラーをした前髪の長い少年。
―――良かった、警官じゃなかった…。
なんてどうでもいい事に内心安堵していたりするのは、此処に来る途中で職務質問を受けていたからであり、
何故だか少年から軽蔑されている様な気がするのは、きっと気のせいなのだろう、そうだろう。
『「俺は不破慎二。で…あんたさぁ、こんな所で何やってんだ?
まさか、ホームレスって奴か?」』
「違いますよッ!私はただ仕事で……ぬぁんだぁ!その目は!
…って、不破信二?…はて、どこかできいたような。まぁいいや。」
ちょっとばかり某北斗の拳の物真似をしながら突っ込みを入れる。
不破信二。何処かで聞いた事のあるような名前だが、思い出せない。…まぁいいや。
…ちらりと、少年を見る。やたらゴテゴテと防寒具を付けている所為で、その表情は窺えない。
―――金、持っていそうですねぇ…
…ふと、考えた。今月の生活費は殆ど無い、てか元々殆ど無い。
+その上雑用をやらされて、寒くてひもじい思いをしていたりする今現在。
+そして、都合良く現れた目の前の存在+今此処にはこの少年しかいないという事実
−他人に迷惑をかけてはいけないという自責の念=…
―――…何考エテル?
右手に握られている、魔鋏の声が心の中に響く。
でも気にしない。というか、もう決めたし。
「…クク…なっはっはー!!此処で私に会ったのが運の尽きでしたねぇ、少年!
なんだ、アレだ、命が惜しければ財布に入っている金を帰りの電車賃を残して私に寄越しなさーい!!
もし寄越さないと、アレやナニしてコレしてからソレしますよぉッ!?」
『……………セコイ…………。』
『違いますよッ!私はただ仕事で……ぬぁんだぁ!その目は!』
「ぷっ……あははっ」
少年は屈託の無い笑みを浮かべると、腹を押さえながら少し笑った。
――――全く、妖魔にしちゃ珍しいタイプだ。是非友達に欲しい位な。
しかしその後半を伺う限りじゃ、間違いなく七妖会の一員ではあるらしい。
この名前は、日常生活ではまず使う事は無いのだから。
偶然同姓同名の知り合いがいるという可能性は否定させて頂く。
そんな事を呑気に考えている正宗、突如目の前の、彼の妖魔が騒ぎ出した。
何でも今から、この少年をカツアゲするつもりらしい。
悲しい程小物臭が溢れる行動にまた褐色の少年は、穏やかに微笑んでみせた。
「別にいいぜ」
あっさりと道迷の提案を了承した正宗。
ただ、すっと自分の前髪を払う。
黒と灰色の奥に見える茶色の瞳が、そこに立つ妖魔を静かに見据えていた。
「あんたがこれから人間を襲わないって誓えばさ――――世死見道迷サン」
>>514 『「別にいいぜ」 』
「…へ?今、なんと?」
『…………?』
一瞬、理解が出来かった程、予期せぬ言葉。
いや、此処でそんなに素直に返されたらカツアゲじゃないような、
というか、ちょっとだけ色々やってみたかったのに。いや、やらな(ryじゃないですよ。
―――いや、普通ココは少年が抵抗して私が返り討ちに―――
『「あんたがこれから人間を襲わないって誓えばさ――――世死見道迷サン」』
…………。
バレていた、自分の名前―――そして、正体も。
知らぬは本人ばかりなり、つまりは踊っていた訳だ。目の前の、この誰だか分からない―――
十中八九、退魔師であろう少年の前で。
「…ま、確かにこんな時間にこんな所へ、こんな少年が来る事自体おかしいと言えばおかしいですよねぇ。
まさか、私の事を知っているとまでは思いませんでしたけど。」
軽く、何かを諦めたかのように溜息を吐く。
その目は先程とは変わって静かに―――少年と同じ、静かな目付きで、視線を返す。
「残念ですが、その提案は呑めません。これでも私は妖魔の端くれ。
己の欲望を満たす為、少々考えている事が御座います故に。
…………分かっていますよ。
私がこう答えたら、この次に一体どうなるか、なんて事は…ね。」
『残念ですが、その提案は呑めません』
――――だろうな。
予想はしていた。こんな調子の良い人間のような彼でも、七妖会に入っているのだ。
いや、寧ろそんな彼だからこそ、何の目的も持たずに、
ただ人間を食らう為だけに組織に入るなどありえなかったろう。
何故か、正宗は笑っていた。嬉しかったのだ。
自分の命を危険に晒してでも、その場しのぎの嘘などつかずに、真摯に答えてくれた事が。
己を貫き通すその姿が、自分に似て。
「勿体無ぇなぁ…こんな立場じゃなけりゃ、な」
一人愚痴るように呟いた後、少年は学生服の懐から、白い袋を取り出した。
酸素と化合して熱を発生させる粉―――
一般には使い捨てカイロと呼ばれるそれを、目の前の妖魔に投げ渡す。
「寒いだろ。それ、使ってな」
そう素っ気なく言い放った少年は、ポケットに手を突っ込みながら、
ゆっくりと部屋の外へと歩みを向けていった。
丁度出入り口の前で止まり、後ろを振り返って、鋭い瞳で道迷を睨む。
「一度だけ、あんたを見逃す。幸い、あんたに殺された人間や妖魔を、俺はまだ知らないから。
けど、次は無い。次に出会ったら、俺はあんたを殺す。道迷サン」
【次で〆ますぜー】
>>516 次に来るのは、刃だと思っていた。
次に見えるのは、闇だと思っていた。
次にする行動は、肉体の再構成だと思っていた。
普段と同じ展開、普段と同じ結末。
出会い、対象と雪で作ったの糸のように脆い関係を築き、そして敗北する。
それが普通、それが日常。痛いし、辛いけれど、仕方の無い事。
―――共存派、か…。
目の前に要る少年は、妖魔との共存を望むらしい。
勿体無い事だ、その力を人間との共存に役立てればいいのに。
殆どの妖魔と人間は分かり合うことなど出来ない、
そんな事は、妖魔である自分自身が一番よく知っているのに。
少年が何かを呟いている、何か、残念そうな様子で。
一体何が残念だったのかは、自分には分からないし、予想も全くつかないけれど。
『「寒いだろ。それ、使ってな」』
投げ渡されたのは、一つの白いカイロ。
予想外の行動、予定外の事象、だが、決してそれは不快なものではなく。
「…?…はは、まさか退魔師に情けをかけられるとは…全く思いませんでしたよ。
……………どうも、有難う御座います。」
渡されたカイロで手を温めながら、また、此処には居ないであろう妖魔を待つ。
どんなに意味がないように思えても、この行動自体が仕事、やらざるを得ない。
少年が鋭い瞳で自分を睨んだ時も、その気持ちに変化が起こることはなかった。
「…やれやれ、こんな何処にでもいるような少年にさえ気をつけなければいけないとは、全く嫌な世の中だ。
大丈夫ですよ、こう見えても私は運だけはいいんです。貴方に会う事は、きっともうありませんよ。」
嘘を吐いた。
―――きっと、この少年とはまた何処かで会う事になるだろう、そんな気がする。
【了解しました〜。】
>>517 「情け、なんて安っぽいモンじゃねぇよ」
なら、なんだと言うのだろう。彼は自問する。
だが、それを上手く口にする事は出来ない。
何故なら、困難に陥った人を助けるのと同じく、力を持たない弱者を守るのと同じく、
それは全て少年にとって、当たり前の行動だから。
退魔師。魔を退ける者。その肩書きを持ちながらも、彼が討つのは魔に有らず。
理不尽に命を奪う強者を絶つ。争いを作り出す道化を絶つ。殺して殺して平和を作る。
共存、と呼ぶには余りにも血生臭く、残酷だ。
けれど、此の道が彼自身で選んだ道だから。
だから、いつかは目の前の、快い青年も必ず殺さなくてはならない。
――――それでも、後悔はない。
「そうか。なら、これでお別れだな」
そんなのは間違いなく嘘だ。両者ともそれは理解している。
口には決して出さないけれど。
「小野、正宗だ」
突風が割れたガラス窓から入り込む。甲高い音がビル中に響き渡る。
それらが過ぎ去った時、そこにあの褐色の少年は、もう居なかった。
【ではこれで。長時間、遅筆にお付き合い有り難うございました】
【やはり道迷サンは面白いなぁと思いつつ。ノシ】
偶には誰か待機して欲しいなと思いつつ活性化あげ
【到着しましたー】
521 :
医師:2007/01/29(月) 21:03:37 ID:90OnXmAA
白清からまったく無関係なほど遠く離れたとある場所。
斬鬼衆としてのツテとコネを辿り、彼女はそこに辿りついた。
「ふぅむ、キミが患者だね。待っていたよ」
道士の服を纏、長い髪を垂らした男が言う。
鋼のように落ち着いた声は、患者を安心させるだろう。
年齢は――よくわからない。若いようにも見えるし、老いているようにも見える。
東洋系の顔立ちをしているが、日本人とは断定できない。
裏の業界でも確かな腕を持つと言われる医師である。
彼は診療室で椅子に掛けるように言い、まずその様な症状が
出るに至った経緯について問いかける。
【こんな書き出しですがよろしく】
仲間にも隠して今日も単独行動をする。
今日はいつもより幾分遠く、そして目的が違う。
激情のまま無謀な戦いを仕掛け、破れた後遺症―"種"の治療がそれだ。
日に日に増す発症のその頻度、激しさに耐えることが出来なくなってしまった。
斬鬼衆の医療部も匙を投げたその治療を、或いは出来る男が居るらしい。
それを聞いた時、その話にすぐさま飛び付いた。いや飛びつかざるを得なかった。
……そして今、俯き加減に症状を説明する。
恥かしさと怒りで少し顔が紅潮している。
「……私の命の欠片、えっと魔符というものですが…はい、それと男の
気でしょうかそれを合わせたものだと思います……」
「症状は……数日に一度…えっと、その…」
523 :
医師:2007/01/29(月) 21:23:55 ID:90OnXmAA
「ふむ・・・なるほど」
それだけ言い問診を終える。必要な情報は手に入った。
後は直接検査し、治療法を見出すまでだ。
「では、服を脱いで診療第に横たわってくれ」
平然と、それが当然のように言う。確かに彼にとっては治療に
必要な行為であるので躊躇うことはない。
「術式展開」
ポゥ・・・と一瞬、診療台が淡い光に包まれる。
外部からの干渉を防ぎ、そして内部から発する呪いや妖魔を
抑えるための結界である。
【純粋に治療行為ですので】
【ラブラブ苦手なら無理しなくてもよいです】
「え、あ、はい……。」
名医たる所以なのだろうか、有無を言わせないものを感じた。
本当に大丈夫だろうか?そう思いつつもおそるおそる服を脱ぐ。
丁寧に畳んだ服の上に眼鏡を置いて、横たわる。
最後に符を目を瞑ってゆっくりと剥した。
見る見る体が火照って行く。
「えっと……んッ…これで…宜しいでしょうか……?」
【そうなんですかw】
【了解です。頑張って合わせようと思います。】
525 :
医師:2007/01/29(月) 21:40:57 ID:90OnXmAA
掌を額から爪先まで這わせて体内を《気》を放出し、
その反響具合で容態を判定する。
円の青い果実を思わせる裸体を医師の大きく暖かい掌が撫でる。
その顔が微かに曇る。思ったより悪い。自己申告どおりということだ。
だが、その様なことは表には出さない。患者が不安になるからだ。
「癒着具合からすると、剥離は困難だ。不可能ではないが、
その場合キミの生命に関わるだろう。だが植えられた「種」の活性化を
抑えるだけではやがては符も無意味となるだろう」
淡々と事実だけを述べる。その上で対処法を述べる。
「少しずつ薬を服用し、他者の気を通わせることで「種」の効能は
半減できるだろう。まずはそれからだ」
棚から数種類の壷を取り出し、薬液を調合する。
ドロリとしたそれをコップに注ぐ。いかにも漢方といった風情である。
「まずはこれを」
「……くッ……ぅ」
感じてはいけない。そう思うのに種が開放された状態の今はどうしようもない。
暖かな手が肌を撫でる度に甘く軽い痺れが来る。
「やはり、そうですか……。」
殆ど同じ事を医療部にも言われた。符による緩和も直に無駄になる、と。
この名医でやはり無理だったのか。目の前が真っ暗になるようだった。
「なんとか、なるんですか……。本当に……!」
光明を見出したような顔になって必死に耳を傾ける。
苦いものは苦手だが、そんな事をいってられない。
コップの中身を一気に飲み干した。
「苦ぁ……。」
すぐには体に変調はないようだ。取り合えず先生の指示を待った。
527 :
医師:2007/01/29(月) 21:57:49 ID:90OnXmAA
「良薬は口に苦いというからね。後で一か月分の薬を渡そう。
ああ、粉末状のものにするから運ぶ手間はかからないよ」
医師は平坦な声で言い、次にとんでもないことを言う。
「では、脚を開いて、下着を脱いで。安心しなさい、
体内に直接気を注ぐだけだ」
医師の説明にを要約すると、性交渉を持ち、その繋がった瞬間に
《気》をこめて《種》を弱らせるということだった。
その為の通路を開けば、後は他の者でも治療自体は可能だと言う。
「分かりました……。それでは一月したらまた来れば良いんですね?」
一瞬、一月で完治するのを期待してしまったがそれは無いだろう。
それでも今度から楽に動けるだろうと期待して上機嫌だった。
だったのだが……耳を疑った。
「……えっと……本当に……?」
だが、それで治るのならば仕方ないと諦めて恐る恐る残った下着を脱ぐ。
種の効果か、少しだけ濡れている。
顔をさらに紅潮させ手で覆う。
「うう、早く……して…くださいッ…」
529 :
医師:2007/01/29(月) 22:12:09 ID:90OnXmAA
脚を開いて舌で花弁を湿らせる。
丁寧に丁寧に、既に濡れていた花弁を綻ばせる。
ぴちゅっ・・・・ぢゅっ・・・・
湿った音が響く。陰核を刺激し、手馴れた感じで全身を愛撫する。
手管ではその辺の色事師にも勝る。治療に必要な行為だったからだ。
「では、力を抜いて」
優しく言い聞かせ、ジッパーから自分の意思で勃起させた
男根を取り出し、花弁を擦る。ゆっくりと挿入する。
長い男根が膣壁を擦り、抉り、子宮口を突く。
そしてゆっくりと動かす。
「う……くっ、は、あぁぁッ……」
男性にこんなに丁寧に責められたのは初めてかもしれない。
今までと違い我慢する必要はない―我慢できるはずもないのだが。
「くは、うぅ……は、はいぃ……、あ、ふぁぁぁ、んッ…」
(イク……)
相当力んでは居たのだが、種に蝕まれた体はあっさりと受け入れる。
愛撫だけでも既に寸前だった。
種が一気に"芽吹く"
「や、あ、だめ、だめぇ……」
白く細い手が医師の背中に回る。
531 :
医師:2007/01/29(月) 22:31:19 ID:90OnXmAA
「種」が芽吹くのを感じる。
繋がった部分からその「種」への「通路」を慎重に構築してゆく。
失敗は許されない。だが医師は焦らない。
その間も丁寧にゆっくりと膣を掻き混ぜる。神経を尖らせ、
しかし相手への愛情も忘れず、一方的な動きにならないように。
「我慢しなくていい」
それだけ言う。
「通路」は繋がった。ゆっくりと気を通してゆく。
下手に暴発させないように、ゆっくりと芽を捕らえ、そして抑える。
そしてやや強めに突くと同時に《気》を大量に注入する。
暴れる芽がやがて沈静化してゆく。
あとは彼女の動きに合わせて、彼女が果てるのを待つ。
「だめ、は、ああっ、きもち、いいッ……まだ、イキたくな、いよっ…」
医師の言葉にぶんぶんと首を振る。
自分にとっての、初めての異性との情のある行為だった。
一瞬でも長く感じて居たくて必死で、妖魔への対抗心でもなく
必死で我慢した。
だが、この体は絶対に我慢が出来ない体になっている。
強いひと突きと共にあっさり達してしまう。
「や、駄目、も、もぅ我慢できな……、あ、ああぁッ……!」
さらに強く医師に抱きつき長い絶頂を味わう
533 :
医師:2007/01/29(月) 22:43:02 ID:90OnXmAA
医師は放たずに引き抜いた。
放心状態にある彼女から身体を離す。
少女は名残惜しそうだったが、それでも身体を離してタオルを渡す。
「気分は晴れたようだね。さっきも言ったが通路は既に開いている。
私以外でも治療は可能だが、避妊はきちんとするように」
医師らしい忠告をして、次に彼女に渡す薬の準備をする。
「一ヵ月後、容態に変化がなくともまた来るように」
【そろそろきりが良いので締めましょうか】
返事はしなかった。放心状態でソレどころではない。
呼吸が落ち着かないままぼうタオルで体を隠す。
顔は紅潮したままだった。
「1月後……遠いですね……」
残念そうに呟きながら、さっきから生まれた感情を敢えて無視した。
お代を払って出口に向かう。
何度も後ろを振り返りながら。
【拙いロールで本当すいません】
【機会があればまたお願いします】
【では〆で】
535 :
医師:2007/01/29(月) 22:53:43 ID:90OnXmAA
【ではこちらも締めますね】
【またよろしくノシ】
【お二方、お疲れ様でした】
【1:00頃まで待機しています】
【えー、もし宜しければ御相手御願い出来ますでしょうか?】
【既にこんな時間ですけれど…。】
【何か希望・腹案等ありますでしょうか】
【特に無ければ適当に書き出しますが…】
【すいません、全く無かったり…orz イヤ ホント ウマレテキテ ゴメンナサイ】
【あ、それじゃ書き出しは御願いしますー。】
【んではー】
【時間的にも、軽めに小話っぽい感じでしょーか】
寒空の一角を染める、甘い匂いがある。
小さな人だかり。不恰好に曲がりくねった行列、そこから離れた人々は、
手に手に小さな紙袋を手にしていた。
がしゃん。
じー、がしゃん。
がしゃんがしゃん。
乳白色の液体がチューブから吐き出されて、銅製の型に収まる。
それがぐるっと動いて、動いて、隣の円筒からぽとんと白いものが落ちる。
その上から、更にどろりと落ちる液体。それを引っくり返す動きの度に、
プレハブの店屋の硝子越しに香ばしい音がする。
きつね色に焼きあがった表面に熊猫の判が押されて、それらは初老の女性の手で
取り上げられていく。
ガラスケースに貼り付くようにして、その様を凝視する影ひとつ。
外聞も何もない。季節柄やたらと寒そうな、長袖のワンピースに肩掛け一枚
という格好。その唇から何やら粘液がこぼれ落ちたように見えなくもないが、
気にしてはいけない。
頭がくらくらする。正確には肉体を持って生を営んでいるわけでない彼女に
とって、その原因は単純な空腹ではなく、妖力の枯渇なのだが、
それでも快いことはそれだけで「足し」になる。なるのだが……
生憎、彼女に手持ちがあるはずもなく。
「うー……」
澄んだ漆黒の瞳が、機械の回転に吸い込まれる。
……硝子にべったり貼り付けた白く小さな手のひらが、結露に濡れる。
似姿とはいえ、気化熱と北風は容赦なくその体温を奪い去る。
それにも構わず、彼女は凝視している。
「うぅ、お山に帰りたい……」
がっくりうなだれたその背中、脈絡の無い呟きがこぼれた。
なんというか、端的に、みっともない。
時代錯誤に育ちの良さそうな背格好と相俟って、余計に滑稽さを醸し出していた。
【了解しました〜】
>>540 「…………………。」
『…………………。』
その寒空の下、にソレは居た。
「ドラ焼き」とかいう名前の焼き菓子を売る店、そしてそれを手に入れるために並ぶ人間の行列、
甘い香りに白い湯気、それは普段通りの一般的な光景―――
―――見知らぬ少女が、やたら鬼気迫りながらドラ焼きを凝視している事を除いては。
(前回の件に関する記憶、というか都合の悪い記憶は全てミトオティンによって消されています。ご了承下さい。)
その行列の先の方―――というか、すでに
服は普段通りの燕尾服、何故か後ろの人間が中々先に進もうとしないのは気のせいだろう。
「ドラ焼きを、五つ。」
手渡される紙袋の代わりに、先程ネコババした1000円札を渡す。
五つの焼き菓子、二つは自分に、二つは相棒に。一つは―――
>「うぅ、お山に帰りたい……」
何か少女が涎をたらしながら呟いている。
空腹の余り幻覚でも見ているのだろうか、何だかやっぱり目が怖ひ。
「…………もしもし。」
トントン、と少女の肩を叩く不審者…もとい、道迷の手。
その手にはドラ焼きの入った紙袋。
―――何ヲスルツモリサ?
心の中で、いつものように魔鋏が語りかける。
何だかちょっと、咎める様な口調で。
―――無論、餌付けです。
―――…。
七妖会・金妖、世死見道迷。彼はこういう妖魔である。
>>541 もしもし、と、肩に人間の手。
「……。」
肩までの髪を揺らして、彼女は振り返ろうと試みる。
あれ、と、かすかな違和感。
どこかで知った気配だと、彼女の感覚が告げている。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
とっさに飛びのいた。距離にして2米弱。
この年頃の少女が、呼び動作なしにリアクションではない。
あんまりな挙動に、微妙に衆目が集まる。
が、声を掛ける人間はいない。
さて。
威嚇の鳴き声を上げそうな勢いで、彼女は相手を睨みつける。
……ちなみに、彼女の少ない記憶容量の中では、先日の出来事は
「なんだか嫌な目にあった」としか記録されていない。
便利というべきか、いい加減というべきか。
不吉、の二文字だけがその思考を占拠している。
そして。
不審な「黒ずくめ」の手元、紙袋に目が行った。
ひたと、彼女の目線が静止。
やけに大仰に、唾を飲み込む音が響く。
「……あ。」
そして彼女は小さく呟いた。
>>542 ―――道迷、ソレハ地味ニ犯罪ダ、視覚的ニ。
―――冗談ですって。
心の中ではいつもの漫才。
何故か、やらないと落ち着かない。
気紛れの、他意の無い情け。信じられないようだけれど、一応本当。
まぁ、確かにちょっとロマンスも期待しましたよ、一応男ですから。ええ。
閑話休題、そんな訳で、少女が此方を振り向き………いきなり飛び退かれた。
「うわっ!?」
少女の突飛な行動に、思わずこちらが驚き、尻餅をつく。
ゴキリ、と嫌な音がしたような気もしたけれど、気にしない。
いや、もう、色々と勘弁してください。
目立ってしまった所為か、何だか周りの目が痛い。まだ何もやってないのに。やるつもりも無かったのに。
なんだか目の前の少女もやたら怖い目つきで睨んでいるし、私が一体なにしたってんですかママン。
何故か、ミトオティンも口をもごもごさせちゃってるし。
(くどい様ですが、道迷はミトオティンによって都合の悪い記憶は消去されています。)
少女の動きが止まった。
視線の先には、自分の持つ紙袋。というか、紙袋の中にあるドラ焼き。
少女の喉仏がやたら強調されて上下に動く。
物欲しげな瞳、その可愛らしい喉、とりあえず色々とたまりません。
「…んー。」
不意にドラ焼きを取り出すと、それを懐からとりだした紙袋の中に入れて少女に渡す。
たった一つのドラ焼きが入った、貧相な袋を。
「まだ、食べちゃ駄目ですよ?」
……反射的に受け取ってしまった。
「……あなた」
硬い声。少女の目線が、男の顔に移動した。
一切の色を含まない、濡れた黒色の瞳。
こいつ何企んでるんだ、という意思が、言葉を放つ前からありありと読んで取れる。
エサ
「ハナを食餌で釣って何するつもりかしらっ」
言った声が微妙に切羽詰っていたのは、実際に切羽詰っていたからである。
いくら子細に出来事を覚えていないとはいえ、少女にとって先日の件が快い出来事でなかった
のは間違いない。世話になった鋏の気配も近くにある、しかし。
安全、と判断するには早い、と彼女は考える。しかしだがしかし。
手元から漂ってくる、甘く香ばしい匂いはどうにも抗し難い。
今から破棄せよと理性が判断したところで、中に毒が仕込まれていたとしても、彼女には不可能だ。
そして、この場で封を破いて手をつけてしまいたい衝動を見越したような(実際、そうだったとしても
この場を離れるまで我慢する程度の節度は幸いにして彼女も持ち合わせていたが)、
男の言葉が腹立たしい。
緊張の一瞬。
そこに、割って入る声があった。
「ちょっと、君」
無遠慮な闖入者を、見返す男と少女(と鋏)。
この場に『人間』は無い。三者一様に人外の者。
しかし、人間で有ろうと無かろうと、見た目が人間なら、彼にとってはどうでもいいのである。
だから、闖入者たる彼は容赦しなかった。
とんとん、と、男に歩み寄った影が肩を叩くのを、少女は首を傾げて見ていた。
「ちょっと、署まで来てもらおうか」
つい先ほどまで、行列にいた一人。
その手元には、人間社会の番人たる特定の人種が携行している、菊の紋の入った黒く鈍く
光るあの手帳があった。制服も制帽もない。ぱっと見には一般人に見える。私服警官か、
あるいは非番だったのか。とにかくも、闖入者は、黒い手帳を慣れた手つきで開くと、
『黒づくめ』の面前に突きつける。威厳すら伴ってぴしりと揺るぎ無く掲げられた、
その黒い手帳が何なのか、少女は知る由もなかったが―――
【時間的にも長丁場が難しそうなのでw】
【何も考えないで導入を書いたものの、読めた展開のようなそうでもないようなw】
【上手く〆られたー!?いえいえ、お付き合い有難う御座いました〜。】
【最後の展開に牛乳を吹いた自分がいたり居なかったり。まさか逮捕とは。b】
【なんて言いますか、これ以上私が何か付け足しても蛇足になりそうなので、此処で〆という事に…】
【お付き合い真に有難う御座いました〜。】
【;゚Д゚)Σエッ、チョ、マッ…】
【こっちはこっちでw】
【お疲れさまです、ありがとうございました〜。】
「この地が…そうか…」
幾歳を経て、辿り着いたであろう。
冬場の薄ら寒い風の吹きすさぶ中、彼女は幽鬼のように高台から街を見下ろしていた。
真一文字に引き締められた唇は、旅路の苦慮を語る事はない。
紅と白の巫女装束に身を包み、編み上げた黒髪を寒風に晒す。
「死と欲望と悪意の混じる風だ…」
手にした濃紫の布に包まれるは、彼女の扱う長物。
昨今の警察の監視の目にもかからぬのは、彼女の辿る道が一般道と離れた獣道ゆえか。
「乱れているな…この地の旋律も」
目を細めると、常人には見えない何かを感じているかのように頷く。
…決めた。
この場所が、暫くは己が腰を据えるべき地だと。
ひとまずは、己が居を構えるべき場所を探さなければなるまい。
目立たず、それでいて、無理のない場所を。
【暫くだけ待機します。あまり長く居られませんが。】
【落ちます。】
【もういらっしゃいませんか?】
【時間が時間なので、きりの良い所で凍結か、短めのものになりますが……】
【落ちます】
新月。月の光りさえ無い真っ暗な闇の中。
馬頭の巨体の化け物と戯れるようにして追い駆けている。
追いかけっこの一方は必死に、もう一方は楽しげに軽やかに走っている。
追いかけられる側の姿が林に消える。
「あれ、林の中に隠れたの?…無駄なことするなあ。」
耳を澄ませて探知しようとした、その矢先。
「……近い。近づいて来てる……って近ッ!?……げふッ」
紅い目を爛々と光らせた馬頭がすぐそばにあった。一瞬の迷いが動きを止める。
林の奥からの突然の奇襲だった。化け物の拳が腹に入り、勢いそのまま近くの木に叩きつけられた。
圧倒的なスピード、反射神経の代わりに失った防御力。それを補うためのスーツなのだが……。
それにしても限界がある。
「……このおッ!」
怒りが、痛みを無視して爆発する。黒刀が闇に溶けて妖魔を切り裂いた。
一閃・二閃、目と喉を順に切り裂かれた巨体が沈む。
「あ、いたたた……。危なかった〜。お仕事、完了♪」
552 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 19:53:00 ID:usNd61qZ
「一足違いか・・・・」
少女の背後から、鋭い刃のような声がする。
長身痩躯の青年がそこにいた。
髪は短く、怜悧な双眸を銀縁眼鏡の下に隠している。
蒼いロングコートを纏い、一見秀才型の学生にも見える。
だが、一般人がこんなところに来るはずもなかった。
「キミは退魔士だな?その妖魔には懸賞金が
掛けられていたが、キミもそれが目当てなのかな?」
つまり、自分もそれが目当てだと言っているのである。
――操水師・沼上涼真。
無所属の妖魔ハンターであった。
「やれやれ、わざわざ情報屋に大枚をはたいて塒を突き止めたかと
思ったら蛻の殻。追跡してみればこんな小娘に先を越されるとは」
肩を竦めるが、その目付きは酷薄で鋭い。
その対象は眼前の少女だ。
(嘘!?)
気配を全く感じない相手が後ろに居た。
こんな”異常事態”は中々無い。
気配を読み違える失態を一日に二度も犯したのか、それとも男が異様なのか。
「え?何それ?これはこの後滅却するんだけど……」
懸賞金がかかった妖魔とは知らず半分滅却処理をしようとしていたところだった。
相手の話を半分も聞いてはいない。
「小娘!?……何、その目つき?喧嘩売ってるの?」
554 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 20:13:13 ID:usNd61qZ
「滅却処分か。好きにするといい、ボクに口を挟む権利は無い」
だが――と彼は続ける。
「自分の不手際とは言え、やはり腹が立つものだ」
ポケットから500mlのペットボトルを取り出す。
中身は水だ。器用に指一本だけで回し蓋を外す。
それを地面に垂らす。準備は完了した。
垂らされた水が蛇のように蠢き、そして彼の痩躯を渦を巻くようにして包む。
思念を込めた水を操る力。それが彼の能力。
「少し、憂さ晴らしをさせてもらおうか、キミの身体で」
彼は一見冷静に見えて、その実苛立っていた。
妖魔を狩るのは、賞金と、そして何より闘争の愉悦を得るためだ。
その片方だけでも満たさなければ、収まりがつかないのだ。
「踊れ」
水の鞭が撓る。一つ、二つ、三つ。
一つは右から孤を描いて襲う。
当たれば服など簡単に切り裂く。
一つは左から孤を描いて襲う。
当たれば服など簡単に切り裂く。
一つは這うようにして足元を狙う。
当たれば捕らえられる。
「じゃ、好きにするよ♪1.2.3BOM♪」
楽しげな合図と共に四散し、滅却される妖魔の骸。
妖魔の残り火を背に乱入者に向き直る。
「憂さ……晴らし?何の?……踊れ?私、踊るのは好きだけどって、わッ!?」
お互いに相手の話など聞いてはいないようだった。
迫り来る水のムチ。正面からの攻撃で千草に当たる攻撃など皆無だ。
全部”見えて”いる。
―だが、妖魔の一撃がその機動性を奪っていた。
全弾命中。
「ちょ!?体が動かな……かはッ……」
服とスーツを左右から大きく切り裂かれ、水の呪縛にかかってしまった。
556 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 20:31:12 ID:usNd61qZ
「どうやら、ダメージを受けているらしいな」
淡々と指摘し、半裸の少女を束ねた水の鞭で束縛する。
そして間近に引き寄せる。
少女の服の裂け目から、乳房や肌が露出している。
それを冷徹に観察する。
「これでは憂さ晴らしにもならないな。
まあ、女として使えなくも無いか」
鞭が枝分かれして、服の隙間から進入する。
水が蛇のように這い、乳房を締め上げ、先端が乳首を刺激する。
「少しキミの身体を使わせてもらおう」
そして宴が始まる。
細かく枝分かれした《蛇》が、肌を愛撫し、乳首を刺激する。
耳を撫でる《蛇》。首筋を這う《蛇》。臍を擽る《蛇》。
割れ目にも侵入し、丁寧に、人間の指より精密な動きで花弁を擦る。
557 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 20:32:37 ID:usNd61qZ
【暫く落ちます、すぐに戻りますゆえノシ】
「……怪我してなきゃ、こんなのなんて……」
悔しそうに嘆きながら男をにらみつける。
近くで見ると思ってた通り暗そうな顔。嫌いなタイプだ。
「ちょっと……!何を……ひぅッ」
父に改造され、慰み者になっていた幼い頃以来だ。
嫌悪と甘美な刺激が同時に体を走る。
気分ではなくても、どんな時だろうとスーツなしでは愛撫を受け入れてしまう。
理性ではどうしようもない。そのように造られたのだから。
「何を、あんッ、か、か、かってに……いやぁッ」
耐えようとはしても、蛇が体をなぞるたびに力が抜けて行く。
熱く湿り気のある吐息を出して震える。
男から目を背け小さく喘ぎ続けた。
560 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 20:59:21 ID:usNd61qZ
「ふん、なかなか感度がいいな。
ひょっとして経験済みなのか。見かけにはよらないな」
喘ぐ少女を鋭い視線で見つめながら言う。
自分の手を伸ばし、指で乳首をきゅっと摘んで捻る。
指で弾いて、爪でつつく。
その間にも《蛇》の動きは止まらない。
花弁を丁寧に撫で上げ、そして尖った先端が陰核を刺激する。
菊座にも《蛇》が這い、ゆっくりと撫で上げ解してゆく。
【ただ今戻りました。質問。雑談を拝見したのですが】
【下はスカートではなくジーンズ系だと解釈してよろしいですか?】
「うる、…さいぃ…ひゃ、あぁ、あぁッ」
顔、年の割りに熟れていて、だが敏感すぎる体。
あらゆる性感は開発されている。”改造”は至る所に及んでいた。
「だめ、だめ、、、だめ……あッ!ひぐ、あはぁぁあぁ……」
目を固く閉じ、歯を食いしばる。体に全く力が入らない。
父が、事の時に抵抗されないように施した処置だった。
【ええ、そうです】
562 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 22:45:29 ID:usNd61qZ
「もう乳首が硬くなっているな。
見知らぬ男に犯されて感じるとは、真性のマゾか変態だな」
淡々とした言葉で嬲りながら、乳首を吸う。
ちゅう・・・・と音を立てて強く吸う。そして甘く噛む。
舌で舐め廻して唾液塗れにする。
「じゃあ、そろそろ使わせてもらうか」
少女のジーンズのベルトを外し、ジッパーを下ろす。
ジーンズを膝まで引きおろす。
「ん?妙な物を着ているな。ウェットスーツかな?」
花弁を愛撫していた《蛇》が、股間の部分を覆う生地を突き破る。
それを自分の指で切り裂いて穴を広げる。
片足に《蛇》を絡ませて、操り人形の様に片足を広げさせる。
自分のペニスを取り出し、それを少女に見せ付ける。
そして無慈悲な動作で花弁に、一気に突き入れる。
鋭い突きで、一気に深奥まで貫いた。
563 :
古志千草(M):2007/01/31(水) 22:47:00 ID:usNd61qZ
「ちが、私は変態なんかじゃ、うぁあぁっ、噛んじゃ、いやぁ……」
体の芯から力が入らなくなって、抵抗するどころか喜んで責めを受け入れている。
心も、体も。そういう造りなのだから。
スーツを破かれ、こもっていた淫気が外気に触れる。
空気が密着していたスーツと肌との間に入り込んでいく。
―世界が一変した。
何もかもが気持ち良い。
男が見せたソレが自分の中に入るのをを嬉々として見つめ……。
「は、うあぁぁあぁん……。溢れ、溢れちゃうよぉ…」
言葉の通り体液が外に掻き出され始めた。
出し入れと共に音を立てて地面を塗らす。
564 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 22:47:57 ID:usNd61qZ
「こんなにスケベな汁を垂らしておいて、よくそんなことを言えるな」
嬉々としてペニスを受け入れ始めた少女を、昂ぶりのまま攻め立てる。
ぐちゅっ、じゅぷっ・・・・ぐちゅ・・・・
卑猥な音とともに、結合部から愛液が垂れて落ちる。
細く華奢な腰を掴んで腰を振るい、膣壁を抉って擦る。
子宮口を亀頭が刺激する。相手のことなど考えない、自分の欲求のまま動く。
「この雌猫め、犯されて発情するとはな。
こんな変態には仕置きが必要だな」
《蛇》がのたうって、解していた菊座を貫く。
深々と抉って腸の中で奔放に動いく。
「ひ、はぁぁうぅぅ、ご、め、んなさいぃぃ」
泣きそうな顔をしながらも地面を濡らす液の量は増えるばかり。
体の力は完全に抜け、水に身を任せるばかり。
「かッ……そこはぁ、くう、おあ、あぁぁぁぁああぁッ」
目から光りが消え、口からは涎を垂らす。
締め付けを一際強くしておねだりする。
「め、わたし、んあッ、あ、イッテ、いい?も、だめなのぉ」
566 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 22:49:41 ID:usNd61qZ
「勝手にイクな。
俺がイクまでに達したら、また犯すぞ」
無慈悲に告げ、ペニスと《蛇》で前後の穴を犯し続ける。
玩具のようになった少女を、犯し続ける。
ペニスはパイルバンカーの様に機械的に動く。
膣壁を抉り、子宮口にただ打ち付ける。
《蛇》は生き物のように精密に動く。
腸の中を嘗め回すように動き、蠕動する。
「まだイクなよ」
戯れのように陰核を指で捻って止めを指す。
「そ、そ、、 、んなむ、無理ぃ……」
焦点を失った目で虚空を見ながら答える。
意識だけは、改造によって失わないようになっている。
快楽と苦痛。刺激の生き地獄の沼に浸りながらも意識を失うことが出来ない。
「ああ、アアアァッ!」
小さく叫んであっけなく達してしまった。
568 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 22:51:21 ID:usNd61qZ
「ふん、堪え性の無い雌猫め。
ボクはまだ満足していないぞ」
それを証明するようにまだ硬いペニスで強く突く
彼が達するまで、少女の生き地獄が続く。
《蛇》が再び少女の身体に複雑に絡み、細かく振動し全身をマッサージする。
彼が動く。膣が抉られる。《蛇》が動く。腸が犯される。振動。敏感な全身が刺激される。
際限なく際限なく彼の責め苦が少女を苛む。
少女が再び達しそうになった瞬間、彼は少女の膣の中に射精した。
白濁が膣を満たし、逆流する。愛液と精液の混合液が結合部から垂れる。
「ふあ、ぁあ、あぁ、ああぁぁ、あぁッ」
常人なら神経が灼き切れ死に至る程の刺激を受け、これで計二度達した。
虚ろな瞳は空を見つめ、口は涎を垂れ流している。
無残に犯され、力を失った肢体はほんの少しだけ震えている。
「ごめんなさ、い…ごめんなさい、」
570 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 22:52:43 ID:usNd61qZ
「二回イッて一回か、まあ少しは気が晴れたな」
《蛇》をただの水に戻す。
戒めから解放された少女が、子犬のように地面で震えている。
ごめんなさい、と言っている。
誰に謝っているのか。
或いは許しを乞うているのか。
「ふん・・・」
彼は残った水を使い、それを少女に飲ませる。
「吐き出すなよ」
それは彼の能力によって、鎮静作用のある薬液に変質した水。
使い方次第で、水は毒にも薬にもなる。
これで少しは楽になるはずだ。
「ボクは沼上涼真(ぬまかみ りょうま)。
水と共にある操水師だ。キミは?」
「ケホッ、ケホッ……」
―夢を、父に弄ばれていた夢を見ていた。
少し咽て水を飲む。
不思議な事に目に光りが戻りまともに話すことが出来るようになる。
「……千草、古志、千草」
まだ呆けた顔でそう短く答える。
斬鬼衆の発信機が鳴り出した。
572 :
沼上涼真:2007/01/31(水) 22:54:10 ID:usNd61qZ
「古志千草・・・・ボクを憎むなり恨むなり好きにすればいい。
リベンジはいつでも受け付ける。キミが万全でも負けるつもりはないがな」
事実、彼には負けない自信があった。
変幻自在の水の業はまだ幾らでも引き出しがあるのだ。
電子音が鳴り響く。
彼は気にせず彼女に近づき――唇を奪った。
強引に舌を絡めて吸う。反応する前に離れて、踵を返す。
そして冷酷な操水師は、再び闇の中に消えていった。
【入れるようになったので、勝手ながら貼り付け作業しておきます】
【待機します】
【お相手、お願いできますか?】
【本スレはチェックしていたのに、第二スレは未確認でした;】
【申し訳ない】
【喜んでお相手させていただきます】
【慣れていないので、そちらからお好みのシチュを用意してくだされば幸いです】
【人の多い場所で遭遇して、こちらの本性を訝しんだ其方が尾行】
【人気の少ない場所で戦闘、自由を奪って以下略……といった感じでしょうか】
【こちらの誘いに気付いた上で乗られるか、気付かずに乗られるかはお任せします】
【天洸院などの大きな組織にまだこちらの顔は割れていないということで】
【その辺りとの繋がりが弱い相手は、こちらとしては好都合……と】
【こんな感じかなぁ。OKなら書き出してみますね】
【OKです!そのシチュでお願いします】
【それでは、お世話になります。。】
力を取り戻して、これだけ「人間」の多い場所に出るのはおよそ数ヶ月ぶりだった。
日の光に当たることは、嫌いではない。蟲たちの聲は懐かしかったが、
常人としての暮らしを経てしまえば、七妖会での生活も、それはそれで息が詰まる。
寒さの厳しい日だったが、不思議と不快には感じない。
青いコートの長い裾を翻しながら、歩く。
烏の濡れ羽根を思わせるゆるく巻かれた黒髪を、北風がからかってゆく。
―――人間たちの、無数の気配。彼女の「子供たち」の、餌。
適当にみつくろう。蟲の餌としても、支障のなさそうな相手を。
そうやってぶらつくうちに、大きな建物が見えてきた。
彼女もすこし前までは縁があった、ハイティーンの子供たちの通う学舎。
(この辺じゃあ―――ちょっとむずかしいかな)
姦しく喋りあう少女たちとすれ違いながら、内心でひとりごちる。
丸ごと「喰わせて」しまっても大した食餌にならない可能性もあったし、
これだけの学校に通うような子供がいなくなれば、縁のある者が黙ってはいるまい。
もう少し、人の集まる場所がいい。それも、類縁の少ないような人種が。
そう判断して違う方向に足を向けかけた所で、特異な気配に気付いた。
「……あら。」
呟く。迂がり角の向こうから、こちらに向かってくる少女。
「普通の人間」でない、しかし紛れもない人間の気配。
(妖魔の血の匂い。退魔の。それから……加護、されている?神ながらの者かな)
そして、濃密で、活力に満ちた「力」。
相手は、自分に気付いているだろうか?
まだ気付いていないとしても……気付いてもらわなくては。
(此処も、天洸院の管轄のはずだけれど……データベースには無かったわ、この子)
娘の血の気の少ない、しかしかたちのよい唇が、くぃと釣りあがる。
まずは、悪くない餌になりそうだった。
人目につくのは本意でない。
すれ違う瞬間、普段は巧妙に隠された、自らの「気」を垣間見せてやる。
幼さを残した、小柄な少女。彼女を、食事に良い場所に誘い出すために。
【?こちらから何かアクションをすべき?】
【ご心配かけてごめんなさい;】
【もう少し早めを心掛けますね】
【なるほど、タッチの差でしたね】
学校帰り、何時もなら修行の為と言う事で借りたワンルームマンションへと帰っている時間であるが、朱音は1人の女性の後をつけていた
(今擦れ違った女の人……変な気配がした……)
妖魔なのだろうか?もしそうであるならば、学校の近くと言うのが気に掛かる
(もしかしたら、学校の誰かを狙っているかも……)
朱音にとってそれは許せない事だ、転校して間もないが、明るいクラスメート、親切な教師……それらは既に朱音にとって掛け替えのない物に成りつつあった
(守らなきゃ……私が)
前の女性はどんどん人気の無い場所へと足を踏み入れていく……
朱音は、気付かれないように気配を消しながら、後を追っていく……
すれ違ってしばらく、自らの後につづくひかえめな足音。
心の内で、悪戯っぽい笑みをかたづくる。
―――かかった。
蟲たちの「飢え」。彼らの依り主である彼女にとって、それは自らを嘖むものに等しい。
それが満たされることは、形容しがたい喜びだった。
眠りについている間にがらりと変わった、この地の風景。
覚えている限りでは雑木林が延々と連なっていた区画は、今は無表情な集合住宅で
埋め尽くされている。見えてきたのは、築10年ほどになろうか、いくらか旧びたマンション。
その―――裏手。やや小高い場所にある、ちいさな草叢。
かつ、かつ、と、ほんのすこしだけかかとのある靴がコンクリートの舗装を踏み越える。
打ち捨てられた祠が、そこにはある。
この場所こそが―――彼女の子供たちが眠る、仮宿のひとつ。
「揺籃」の幾つかは開発の途上で手をつけられて使い物にならなくなっていたが、
その中でも、まだじゅうぶん使える形で残されたのが、この場所だった。
立ち止まる。客人があやまたずにここへ辿りつくと確信して、待つ。
心が、踊りだしそうに弾んでいる。
そして、朱音が追って居た彼女は、人気の無い住宅街の奥にある小さな草叢で立ち止まった
こんな所に、何の用があるのだろう?
「……こんなところで、何をしてるの?お姉さん」
人型の者に、声を掛けずに襲い掛かるのは朱音の流儀に反する……
それに、確かに異様な雰囲気ではあるが、妖魔を従えたり身体に住まわす退魔士も居ないわけではない
不審を隠しながらも、平静を装った声。
浮き立つ心は、彼女自身のものだけではない。
ご馳走を目の前に、じっと息を凝らす、蟲たちのものでもある。
「こんにちは、お嬢さん」
楽しげに、歌うように、彼女は応じた。
少なくとも見掛けにして、まだぎりぎり成人していない……そんな娘が、
歳の頃がいくつも変わらない少女相手に「お嬢さん」と呼ぶ。
ふふ、と、堪えきれない笑みがこぼれる。
「貴方、天洸院の子じゃないよね……一通り写真を確認したけど、無かったし」
唇に乗せたのは、この辺りにもその影響力を色濃く与える、一大退魔組織の名。
「一応、確認させてね」
面倒ごとは好きじゃないの、と、少女に聞こえないように呟く。
今しがた少女が立ち止まった、その頭上の樹に意識を向けながら。
「うん、うちの家はそのあたり厳しくて……一族以外の組織に属しちゃいけないの」
警戒心を保ちながら、朱音は答える
相手は一見友好的に見えるが、それが表面に過ぎないと、心のどこかで感じていた……
うちの家、と少女は言った。
(戦後に入って退魔士の家系はあらかたあの組織に吸収された、と聞いていたけれど……)
彼女が家と呼ぶところ。そうではない、ということなのだろう。
ほそい指先を、顎先に当てて思案の仕草を取る。
「……ふぅん」
青褪めた唇を弄りながら、彼女は呟いた。
「それじゃあ」
ほんの少しだけ大人びた、可憐な娘。
せいいっぱいに強がってみせる、そのふっくらとした頬に乗った顔の造作をうっとりと眺めながら―――
思考。わかりやすい術、または能力を用いる退魔士であれば、
あらかたの攻略法は彼女の思考に組み込まれている。
しかし、組織に属さない家系というのは、奇異な能力を継承していることが多い。
その秘伝を知られることを嫌えばこそ、大樹の陰に寄らない。
純粋な戦闘能力で劣る彼女にとって相性の悪い相手であることもありうる。
目の前の少女は、彼女を警戒してはいるが、まだ、その目線に殺気はない―――
だから。
先手必勝。
決断は早かった。
前の言葉から次の言葉。
散歩の行き先を決めるかのように口にするまで、一秒もない。
・ ・ ・
「―――おいで、わたしの愛し子たち」
曇った青色を帯びた瞳がすうと細まる。
ばたばたばたばたばたばたばたばた。
湿った音が、たてつづけに土を叩く。
冗句のように振り落ちてきた、それは、大人の男の指先よりも一回りほど太くて大きい、
―――しろい、むし。
糸を引くように、人間の女の愛液にも似た透明な粘液質を纏って、目の前の少女にまとわりつく。
じっとりと、慈しむように。
(しまっ……!!)
反応が遅れた事を呪いながら、朱音はまとわりつく白い蟲を祓おうとする
だが……
チク
(……え……?)
身体中の、力が、抜けた
そして、じっとりと身体中を這いずられるのを力の入らぬ身体で見つめる
(なん、で?)
【あ、そろそろ時間のようです……一時凍結で、次はたぶん、月曜ですかね】
久しぶりの餌にむしゃぶりつく、「それら」を愉しげに見下ろして―――
生半可な数、ではない。少女にまとわりついて、さらに直径1.5メートルほど。
その部分の草叢がびっしりと白くぬらりと光る蠢きで見えなくなる。
「まぁだ、駄目。……久しぶりだからってがっつかないの。齧っちゃ駄目だからね」
その言葉は、少女の身体に張り付いた「それら」へのものだ。
そして、今度は少女に向けて、言う。
「びっくりした?……ね、驚くでしょう?女の子だものね」
少女の衣服、布地の隙間から、「彼ら」が潜り込んで行く。
性衝動を催す作用を持つその体液を塗りたくりながら、白く柔らかな彼女の分身たちが、
少女の身体にむしゃぶりついている。
瑞々しい、肌の感触。知らず、頬が緩んだ。
【今の服装、容姿などをお願いします……ってすっかり忘れてた】
【脳内イメージだけで進めかけてましたorzゴメンナサイ】
【リロードしてなかった;】
【わかりました、月曜日なら大丈夫です】
【伝言スレあたりで声かけていただけば】
【待機します】
【一応伝言して行ったのですが、若干遅くなりました、申し訳ないです】
【お待たせしました】
【いえいえ、それほど待ってないです】
【そういえば容姿と服装でしたか?一応セピア色のブレザーの制服、黒髪黒目の童顔、髪型はロングのストレートで】
【了解致しました】
【前回はこちらで終わっているので、よろしくお願いしますー。】
「これ……何?貴方、私に、何、したの?」
先ほどから、自由に身体が動かない、それに……
(……熱い……うずうずする……?)
先程から蟲が身体を這い回る度にそこが熱を持ち、下腹部を中心に疼きが巻き起こる
「っ……!駄目!そんなところ、入っちゃ、やだぁ……」
日向を知らない女の指先を思わせる、白。
少女の肌を、どこか艶めかしさすら感じさせる、不規則な動きでもって這いずり、粘ついた跡を残す。
その喉元を柔らかな節足で撫でる者、慎ましい胸の膨らみに、下着を押し退けて潜り込む者、
腹部をなぞって更に下を目指す者。
「あぁ……熱いの?もう?」
戸惑う少女にくすくすと笑い、まるで自らの指先を使うかのように……宙に掲げた人差し指をすうと下ろしてみせる。
動きにシンクロしたように、這いずり回っていた蟲の一匹が、心中線を辿って、臍のすきまに頭を突っ込む。
「この子たち、薬はそんなに仕込んでないんだけどなぁ……こんなに盛っちゃって」
そう言って、目を細める。
「さぁ、これ、何かな?何だとおもう?」
今しがた掲げた人差し指をぺろりと舐めて、彼女はそう言った。
「む、蟲……?」
乏しい知識を使い、答えを出してみるが、何の救いにもならない
いまだ自由の利かぬままの、どんどん熱くなる身体……
朱音の能力上、今の段階で身体が動かないと言う事は、致命的ですらある
せめて、敵が直接攻撃系統なら何とかなるのだが……
「それは見たらわかるよ。もうちょっと、たのしませて欲しいな」
出来の悪い生徒を嗜める、おおらかな教師のような口調で。
「退魔の『家』に生まれた子なら、もうちょっと知ってること、あるんじゃない?」
問いかける言葉は、少女から更なる情報をひきだそうとする手管に他ならない。
―――反撃の可能性は?
―――今のところは、無し。……
それなら、このままで。
軽く思考を巡らせて、蟲たちの歓喜のこえに意識を呼び戻す。
延い回る蟲たちの粘性の体液。そこに、芳しい匂いが混ざり始める。
少女の汗腺が、帯びた熱を吐き出すべく、活動をはじめる。
落とされた飼料にいっせいに喰らいつく金魚を思わせて、蟲たちの動きが激しくなった。
波打つ脚―――と、呼ぶには数が多く、柔らかなそれで延い回るだけだったのが、
そのちいさな口で、皮膚を舐め始めたのだ。幾百の、彼らの同胞と共に。
「……そこはまだ駄目。楽しみがなくなっちゃうでしょう?」
娘の言葉に従ったのか、熱を持ち始めた下腹部、その更に下は素通りして、
敏感な脚の付け根を伝う。重力に逆らいきれずに、何匹かがぼたぼたとスカートの裾から地に落ちて、
再び、今度は靴の爪先から、不器用によじ登り始めている。
「そんな、事、言われても……」
御剣の家には確かに数多の妖魔について書かれた書があり、その知識は膨大だが……
「私、まだ、家督、継承、してない……」
当主になるまでに閲覧を許される書物はさほど多くなく、そこにはこのような蟲は載っていなかった
「家督……ね。ま、いっか」
ふう、と、小さく息を吐いて。
「―――わたしの役に立たないのなら、この子達の餌になってもらうから」
思案げに人差し指で自らの黒髪を弄りながら、言う。
小声で、しかし、少女に聞こえるように。
迂闊に手も出せないのなら、常套に頼るまでだ。
「いい感じに熟してきたけど、もうちょっと、かな」
少女の、乳房に取りついた者たちがざわざわと、瑞々しい張り詰めた感触の上で脚をざわめかせ。
頂きの周りを敢えて避けるかのように、縦横に這っている。
背に、脇に、指先に。
「あぁ、もう、駄目じゃない、そこ―――我慢できないからって、入れないよ」
先ほどの一匹が、臍の窪みに頭を突っ込んでもぞもぞと蠢いている。
柔らかな、しかし明確な異物感が、少女の内臓に通じる一点を刺激する。
異物を受け入れるようにはつくられていない、その地点に。
「それとも、中から食べてしまいたいの……?」
「……餌……!?中から……!?」
女性の台詞に背筋が冷たくなる
戦って敗れるのならいい、だが、こうして手も足も出ない状況で、少しずつ食べられてしまう事は、別種の恐怖を朱音に抱かせた
「いや、やだぁ……!」
「あーあ、折角の熱が引いちゃった……」
じわりと少女の立てた、鳥肌の感触が伝わる。
「わたしの所為か。食べるなんて言って、ごめんね?……怖かった?」
謝辞を述べる口調は、あくまでも、ほんの悪戯を詫びる程度の軽いもの。
「まずは、気持ちよくなってくれたほうが嬉しいな……この子たち、あなたの汗や涙や、
それから……うん、そういう物も大好きだから。ほら、喜んでるでしょ?」
少女の耳、じっとりと汗を孕んだその付け根を、若い少女特有の匂いを放つほっそりと筋ばった脇を、
白い蟲たちがその小さく柔らかな口で、一心に舐めている。
ヒトの感覚を鋭敏にして快感を引き出す、白い全身から噴き出す体液を塗りたくりながら。
「それでも……もっと、力が貰えるのはそういうのじゃないんだけど」
そして、ブレザーのスカートから覗く太腿に、白いそれらがゆっくりと這い寄る。
いわく難い、そしてもどかしい快感を刷り込みながら。
「ねぇ、貴方。もうちょっと、強いの……欲しくならない?」
「……冗談、だったの?」
あまりの相手の軽い口調に混乱する
そして……
「汗や、なみ、だ?あっ、くぅ、んっ……擽った……」
もしかして、自分は餌と言う言葉から誤解していたのだろうか?
緊張が解け、それが身体の反応を引き出す
だが……もどかしい刺激に、徐々に不満が沸きあがっていく
(身体が、どんどん、疼いて……私、もっと欲しがってる……?)
そこに、女性の見透かすような発言が来て、驚きながらも問いかける
「もう、ちょっと、強い、の?」
「冗談?まさか。この子たち、わたしが眠っている間ロクに御飯も食べられなくて。
ほんとうに飢えているのよ。あなたは餌としては上々だから、
この子たち、すっごく食べたがってるの。わかるでしょ?」
にっこりと笑って、青いセーターの彼女は饒舌に語る。
「あなたのお腹がひっくり返った蛙みたいにひくひくしてるとき、貴方の体液は只そのままより、
ちょっとだけあなたの霊力を媒介しやすい状態になっているの。だから、ほら、こんなに嬉しそう」
一匹の動きをトレースするように、指先を動かして。
―――蟲たちの感覚は、主である彼女のそれと連携している。
蟲一匹あたりの情報量は少ないとはいえ、直接取り込んだら人間一人では処理しきれないため、
ある程度セーブしてはいるが。彼女を微笑させているのは、優位に立ったことから来る余裕ではなく、
蟲たちが返してくる喜悦に他ならない。
「今でもこんなに美味しいのに、熟れ落ちたら、ねえ、どんな味がするんだろう―――?」
うっとりと囁いて。自らの肩を抱く動作。
「そんなに脚をもじもじさせなくても、ね?この子たちも我慢できなくなってくる……」
胸元が平らに開いたセーターの、肩口に付き立った指先。そこに、傍目にもわかるほど力がこもる。
「あぁ、でも、今のままだと齧っちゃうかな?貴方が、わたしの役に立つって確証があったら
親であるわたしが止めてやってもいいんだけど……やだ、そんなに熱っぽい目で見ないで?」
驚きを孕んだ目を見返して、どこか虚ろな娘の目が再び、しなる。
熱を帯びているのは、彼女自身の瞳―――と、言えなくもない。
「やだぁ……齧らないで、お願い……」
冷静になれば、自らの血を武器とする朱音にとっては直接身体に傷をつけられたほうが有利だと思い至ったはずである
だが、今の彼女は捕食の恐怖と快楽への期待に混乱し、判断力を欠いていた
「如何、すれば、いいの?私、人を、傷つける、のは……」
しかし、冷静さを欠き、快楽におぼれつつある朱音にとっても、それは譲れぬ事であった
「ふぅん……そう」
「釣り餌にでもなってくれないかな、って……あ、手を下すのは貴方じゃないわ。それでも無理?」
思案げに……しかし、散歩のコースでも決めるかのように、気楽な調子。
「蟲に、あなたのその身体を使わせてやってもいいんだけど……それは、流石に嫌?」
実際には、今の手持ちでは、蟲を寄生させた人間に器用なことはさせられない。
会話が覚束無くなる上に、結局扱うのに骨が折れるし、「家」とやらに知られても都合が悪い―――
ただの、脅迫。蟲を少女の脳に直接使うとしたら、行動を監視させる位が精々だろう。
まぁいっか、と、軽く手を打って、彼女は笑う。
「あなたがそこまで嫌がるなら、考えてあげる。とりあえず、わたくしに協力、する?」
―――利用するのに重要なのは、まずは相手の精神を折ること。
使命感のつよい退魔士であれば、危険性を削ぐのには尚のこと必要だ。
蟲たちは蠢く場所を変えている。
ひとどころに集まったその動きは、少女の脳髄に送り込む快感を、より鋭敏なものにしていた。
じれったい、と、そう訴えるように……「大事な場所」の、入り口近く。脚の付け根に、下腹に、
集まってはぼたぼたと地面に落ちて、諦めきれないかのように幾度もにじりよる。
「答えて?」
「あ、くぅん!ヒトを、傷、つけなくて、いいの?それなら……」
未だ残る捕食への恐怖、急に増した快感ともどかしさ、そして用意された逃げ道……
理性は警鐘を鳴らしている、だが……
「する、協力、するからぁ……」
膨れ上がる欲求に、気付けば協力を約束し、さらに……
「私を、齧んないで!それから、もっと!もっと気持ち、気持ちよくしてぇ!」
「いい子」
吐息を一つ。それは安堵に拠るものとも、欲情によるものとも取れた。
彼女の唇が浅く釣り上がる。
「そうね……まずは」
笑顔と共に、言葉をはなつ。
彼女の「子供」と呼ぶ、白い蛆虫に許可を与える。
「ほら、その子を喜ばせてあげて?」
耳元をくすぐるようなアルト。
命じられて、「それ」が、我先にと、分泌液の影響を免れていたその場所に殺到する。
じりじりと、彼らは進む。
彼らの体表から、文字通り染み出す快感が、少女の敏感な場所に沁透しはじめる。
肉芽の覆いをものともせずに、刺すような快感をもたらすその場所を腫れあがらせて。
ぴっちりとした亀裂をつくる、肉を疼かせながら。
そして、ひらきはじめたそこを押し開いて、数匹が、そのちいさく湿った頭をめりこませた。
「―――はじめてかな?多少は手加減してあげたほうがいい?」
うたうように言いながら、肩を竦める。心底、愉悦を感じた様子で。
「ああぁあん!良い!気持ち、いぃ!凄ぃい!」
いままで放置されていた其処を這い回られ、与えられる快感に朱音は惑乱していた
蠢く度に敏感な部分が熱く燃え上がり、そして其処をまた刺激され……
そして、蟲が決定的な部分に潜り込もうとするのを感じた朱音は
恐怖と、そして期待に打ち震え……
手加減はいるかという問いに、迷わず答えた
「初めて、だけど、だいじょうぶ……思いっきりして、いいよ……蟲さん、いっぱい気持ち、よくなって……ね?」
「……ですって」
内緒話でも打ち明けるような口調。
語り掛けるのは、少女へではない。
その秘所に群がる、彼女の蟲たちに。
声掛けに応じるように、彼らがその動きを激しくする。
ひたすらに少女の体液を啜るもの、先へ進もうと他の蟲を押しのける者。
それら全てが、より一層、少女の快感を強める足跡を残す。
―――ぐちゅ、と、綻んだその場所に、白くてかる、柔らかな感触が潜り込んだ。
彼らは悶える少女の動きにも頓着することはない。閉じられていたその場所が一息に押し開かれる。
透明な、わずかに濁りを帯びた液体が溢れ出す。粘液と交じり合うそれ―――愛液を潤滑剤に。
一匹一匹は小さなそれらが、尻まで一度に滑りこむ。
あは、と、その様子を眺めていた娘が小さく吐息を吐いた。
「溶けちゃいそう……」
囁いて、自らの胸元に指を立てる。
一息に、それまで男の肉すら知らなかった―――穢れなき場所がひらかれた。
女の指を思わせる白、おぞましい軟質の結節のゆるやかな結合に、
ちいさく膨らんだ頭とも呼べそうな部位の先端、その舌を張り付かせ、
ヒトを狂わせる分泌物をまとわりつかせた、異形の肉質に。
一匹一匹が小さいながらも、全体の質量は大きい。
懸命に、ぬめる少女の胎内を押し進もうと蠢動する蟲たちの動きは、己ずと激しいものとなり。
全身で、少女の与える美味を味わおうと、一斉に動き始める。
「ふふ、あんまり濡らしているから、血も出なかった。そんなに、よかったんだ……?」
彼らの身体が進むのは、彼ら自身の動きによるものというより―――膣の外から押し上げる、
同胞たちの必死の尽力によるものが大きい。殆ど、流れ込むように、波うちながら少女の胎内、
その肉襞をなぞりあげる。快楽中枢を灼ききりそうな、その感触でもって。
「喜んでる。あぁ、でも待ってね、あんまりしたら壊れちゃう」
蟲たちの「喜悦」のフィードバックを受けて、その瞳を潤ませていた娘が、呟いた。
「―――折角の苗床、大事に使わなきゃ、ね?」
少女が許諾の言葉を告げた瞬間に決めていた、その行き先を示唆する一言。
【〆が近いかな、と……】
【落とし所ははっきり決めていなかったんですが】
【うっかり血が出た時に反撃か】
【数日苗床あたりに使って青姫当人は離脱、その後誰かに助けられて……か】
【責めやった経験が著しく少ない身で、順当な落ちが思い浮かばないのです;】
【因縁なり、従属?なり、次があったら繋がる流れのほうがいいかな、とは思っているのですが】
「あ、あああぁああああぁああああああああああああ!!」
蟲が胎内に潜り込んだ瞬間、快感が爆発した
「良い!気持ち良い!きもちいいよぉ!」
身体が燃える、精神が焼き尽くされるほどの凄まじい快感に我を忘れる
「もっと、もっともっともっとぉ!!」
朱音の暴走は止まる気配を見せず、どんどん加速していく……
【そうですね……従属落ちが良いかな?ただし蟲を多少こっちでも操れるようにすると、内側から破る事でシングルアクションで攻撃が出来るようになるから便利かも?】
びくん、と、なかば達していたのか―――その胎が、収縮した。
ほとんど絶叫して善がる少女を見る、その目線。
「いく、って、言葉にする暇もなかったかな?それとも―――まだ、大丈夫?」
視姦にも似て、プリーツスカートの裾を捲くり挙げて、群がる蟲たちの様子を観察している。
「あーあ、はしたなく漏らして……ねえ、あなたは知ってる?
女の体から出てくる『それ』、感じていると白くなるの」
どこか、嘲りすら含む声。
「貴方の脚を濡らしているのも、ほんとうにどろどろ……いいのかなぁ?
退魔の家系の跡取り子が、ね?こんなことで」
彼女が語る間にも、蟲たちは少女の胎に殺到している。
異性すら知らない襞をめくって、撫で上げ、舐めずり、這いまわる―――決定的に剔るでも、
掻き回すでもない。しかし、少女がより反応を見せた箇所にはおのずと蟲が集まり、
炙り責めるような快楽が、許容量を越えて注ぎ込まれる。
「あぁ、そうそう。聞いておかなくちゃね。貴方の退魔士としての力―――それをおしえてくれたら、
とびっきりのご褒美を上げる」
【しまった、リロード忘れてました】
【ええっと、従属落ちやったことないんです。どんな感じなんだろう……】
【従属しちゃうと其方で話が広げにくくなるって問題点がありますよね】
【今回は快楽漬けで〆、とか考えてました……<問題先延ばし】
【良さげな〆方があったらご教授願います;】
「ごほうび……うん、教える……!」
熱に浮かされた口調で続ける
「私の、力は……血を操って、武器に、変えて……妖魔の、血を、取り込んで、どんどん、強く、なるのぉ……」
御剣の家の秘中の秘を口にした
【そろそろ時間ですので、そちらで締めてください】
【わかりました、では此方で】
「……そう」
首肯。
「それじゃ、齧っちゃったら危なかった、と―――」
もう一度、感じ入ったように頷いて。
「うん、いい子ね。齧られちゃ嫌って、そんなにこの子たちが気に入ったんだ?
そして……快楽欲しさに、いちばん大切なことを口にして。
言わなければ、わたしを破ることもできたでしょうに。
ほんとうに、あなたはいい子……それじゃ、丁重に扱ってあげなきゃ、ね」
ぱちん。娘は指を鳴らした。
「いちばん奥の奥、女の身体が一番善がる場所まで。まずは、埋め尽くしてあげなさい?」
すでにぎりぎりまで押し開かれていた―――そうも見える、少女の入り口を、よりいっぱいに押し広げて。
異性のモノでは到達しえない、微細な襞のひとつひとつまでを、蟲たちは犯し始める。
感じ得ない場所、感じ得ない領域を、はるかに決壊させる。
痙攣する少女の躰を、お構いなしに―――「丁重に」という言葉はどこへ消えたのか、
そんな感慨すら抱かせる激しさで、「彼ら」は少女を貪り始めた。
その身体から零れ落ちる甘露を、余さず啜りたてるように。
* * * * *
犯しぬかれる退魔士の少女と、それを見つめる青いセーターの娘。
ふわりと、二人の頭上から落ちてきたものがある。
霞みのような。粉雪のような、それは―――
ふわりと、真白い羽根をはためかせて、舞い降りたものがある。
雪のように真白い、ずんぐりとした躰と美しい羽根を持った、しかし、常ならぬ大きさの。
―――振り落ちたのは、それの振り撒く、微細な粉。
生物の意識を掻き乱す作用を持つ、夢幻の燐粉を纏って。
「―――この女の子がね、わたしたちの子供をそだててくれるみたい」
語り掛けて、青いセーターの少女は微笑む。
今しがた少女に向けていた笑みよりも、もっと―――浮いたような、違和感の無い、近しげな笑み。
少女の快楽を汲み取って数を増やせば、共食いさせて餌を得ることもできる。
上々、だろう。肉まで食わせなくとも。手駒に出来るなら、思いがけない収穫だ。
だから、彼女は満足している。
「うん、子供たちも喜んでいるし……ほんとうに、厭らしい子なの。ね?」
問いかけの答えは……絶え絶えの、嬌声。
快感の余韻に虚脱してなお、責め立てられる少女、言葉を掛ける。
「あなたのこと、もっと気持ちよくしてあげる―――こうして、蟲たちに責められている時でなくても、
けらくを忘れられないように。それまでは」
酷薄な表情が、その顔立ちに浮かび上がった。
「この子たちに、可愛がって貰いなさい?」
呼応するように、少女の身体に、更に群がり始めた……どこから現れたのか、判然としない蟲たちが
ざわりとうごめいた。そして彼女は、たえまなく送られてくる歓喜の喜びをじっくりと味わいながら、『揺籃』を後にする。
振り返ることはない―――彼女の分身たちが、いまも、捧げられた少女のまわりには満ちているのだから。
【では、ここまでで】
【お疲れ様でした〜】
619 :
名無しさん@ピンキー:2007/02/06(火) 15:47:20 ID:vQAj5PML
久々にここで酷いロール見たわ…。
>>619 大人なら思ったことはすぐ表に出すべきではないと思うがね。
俺には何がひどいのか良くわからない。
【小野さん待ちです】
【よろしくお願いします。】
【次レスで書いた導入を投下するので、簡単に補足説明などを】
【そちらが、怪異に気付くなり調査中なりで】
【逆方向から、変な行動を取っている鼠たちに気付いて追跡、遭遇……といった流れ?】
【単騎で対抗はキツいので、キャッチ後、適当な場所に離脱するのが妥当だと思います】
【爆発物を携帯とかしていたら、追い払うのも不可能ではないかもしれません】
コンクリートで固められた闇を疾駆する、ちいさな影。
獣の輪郭が、薄明かりの中を駆け抜ける。
進む先で蠢く幾つかの異形の塊を、蒼い炎が打ち落とした。
よく見れば、それはこういった場所ではよく見られる小動物―――鼠、にも見える。
つぶらな瞳を爛々と輝かせて、ひとかたまりに狭い通路に押し寄せる。
太い尾でバランスを取りながら、水路の脇、狭い足場を縫うようにして、獣は疾駆する。
飛ぶように滑るように動く獣の影を、異形の大群はやすやすと追いかけていた。
―――おかしい、と、彼女は思考する。
彼女がしばしば通り道に使う、廃棄された水の道。人間の立ち寄らない場所とはいえ。
こんな風に、無差別な敵意を撒き散らす場所ではなかったのに。
今の「追っ手」は、常ならば彼女の餌ともなる生物だ。しかし、これだけの数、これだけの敵意。
そして何より、何らかの霊的、あるいは呪術的な力が作用している。
その一噛み一噛みが、彼女の脅威になりうるだけの。
走る。覚えていた道順がただしいならば、出口は、そう遠くない筈だった。
直径にして人間一人がゆうに通れる高さの、
半ばほどまで鉄柵で仕切られた、近隣の河川に通じた排水口。
彼女はひたすらに、視界の先に開いた光を目指す。
思考能力に欠く分、逃げ出すのは容易な筈。
彼女はそう、判断していた。しかし、
―――しまった。
獣の瞳が、「出口からも」一塊の敵が押し寄せてくる様子を捉える。
蒼炎が、黒い影を焼き払って幾つか。だが、足りない。
飛び掛ってくる黒い影、その一つ一つが手のひら大の弾丸に近く。
回避は間に合わない。拮抗した速度において、勝るのは数。
きゃん、と、甲高い鳴き声が上がった。
反響を残して、コンクリートの洞に響く。
>>622 【はい、宜しくお願いします】
【内容は大体把握出来ました。正宗は逃げるのは得意なので、問題ありません】
【もう一時ですが、そちらは大丈夫でしょうか?】
【あと二時間くらいは】
【ちょっと開始時間遅かったですね…】
【凍結か、離脱・会話後に〆てしまうか】
【そちらで決めていただけると助かります;】
腐臭が漂う下水道。その光無き世界をさ迷う一人の影。
辛うじて足元が見える程度の道筋を、危なげなく無造作に歩いて行く。
その闇に良く馴染む褐色の肌と黒い学生服を身にまとった少年は、耳のピアスを一弾きした。
「何か異変は?」
『今の所は感じられないわ』
足を止め、周囲を見渡すがそこは静寂。
一切動く物はなく、また一切音を立てる物もなく。
『この先は只の出口よ。気の性では無くて?』
ピアスを模した小型通信機の先の上司が、怪訝そうな声で訪ねる。
だが、正宗は確かに感じた。何か、微かな地響きのような唸りがこの中から発生したのを。
再び道を見据え、足を進ませようとしたその時――――
『居たわ、その先。よく分からない存在が一名、鼠に追われてる』
返事は必要無かった。ただもう一度ピアスを弾き通信を終えると、
足に『氣』を貯める。同時に姿勢を限界まで下げ、駆け出す正宗。
その速度は人間の動きとはかけ離れていて、目的の地点にたどり着くまで十秒とかからなかったろう。
視界に映る鼠の群れ。そして倒れている少女。成す事は決まった。
すれ違い様2、3匹の鼠を蹴り飛ばし、少女の前で反転、鼠と正対する。
しかし、数が多すぎた。
>>625 【前回と同じですね…反省を活かせてないですがorz】
【申し訳ありません…】
【では、3時前後になって区切りが良ければ〆】
【そうでなければ凍結で、いかがでしょう?】
「―――ぅ」
小声を挙げて、頭を持ち上げる。
衝撃を受けた後、どれほどかの距離を弾き飛ばされたらしい。
白と黒ではない、視界。獣のものではない、人間のそれ。
中型犬様の獣の姿もまた、彼女の本来の姿ではないが、人の姿よりはいくらか燃費がいいというのに。
気が緩んだ際に、馴染んだこちらの姿になってしまったのか―――
しかし、視界に人間の後ろ姿が収まると同時に、その幸運に彼女は安堵した。
相手が退魔士ならば、この姿のほうがいくらか都合が良い。
小さな猛獣、その大群に相対した、黒い詰め襟。
(イチレンタクショウ……)
漠然と、あたまに浮かんだ言葉がある。
窮地に陥れば敵も味方もないのだと、彼女の『父親』はそう云った。
「『灯れ灯れよ天まれ焦がせ』―――そこの、下がってッ」
強、と、幻聴を伴い。
蒼炎が盛る。
一群を焼き尽くすには足りないが、怯ませるには充分な熱量。
>>627 【わかりました、ありがとうございます】
【いえ、コチラも一向に……いえ、よろしくお願いします】
――――さて、どうしたもんかね。
動物よりも人間や妖魔の命を重く見る彼としては、特に行動は悩む所では無い。
しかし、今思案すべきはこの現状。
元より一対一を想定された体術に特化された正宗は、あのような数、
しかも小型の敵を相手にするのは極めて苦手だった。
どうにかして背後の少女だけでも逃がす方法を考えていた。
《『灯れ灯れよ天まれ焦がせ』―――そこの、下がってッ》
背後の少女が何かを叫ぶ。と同時に広がる炎が、黒い塊を炙っていった。
それに驚く暇もない。ただ生じたこの一瞬を見逃さない。
少女の体を抱きかかえ、鉄柵を踏み越え跳躍。
そのまま下水道から可能な限り距離を置くべく、ひたすら走る。
人一人程度ならその動きに支障は出ない。そのまま川縁にまで移動した。
「あー…何者か、訊いてもいーか」
腕の中の少女をそこに静かに下ろし、目をあわせずに質問した。
それは、答えても答えずともいいという意思表示。
>>630 連携を意図したわけではない。
あっさりと抱え上げられた事に驚きの声をあげる間もなく、少年はその場を離れた。
こっそりと、荒い呼吸を幾つか。
少女の似姿とはいえ、人間一人の重量を抱えて軽々と走る様子、
過ぎ去る河岸の光景に、物珍しげに目を落として。
「……速いのね。河岸も一緒に流れていたみたい」
下ろされた後で、そう口にする。
「名前はハナ」
名告ってから、何者とは?と、逆に問い返す。
彼女には立場もなく、属する信条も無い。
更に、自らの置かれた状況を「何者か」の一言に収斂させられるほどに賢くもない。
―――故あって術者の元から逃げ出した式神。本来の姿は3ツ尾の狐精。
これだけの饒舌な回答を期待するのは無茶と言えた。
「―――それで、あなたは?」
言って、相手の逸らした目線を追いかける。
何者か、と問うことは、彼女にとってはすなわち名を問うこと。
「ハナ、か。ハナさん」
今聞いた彼女の名前を、反芻するように復唱する。
嘘をついてる様子は無かったが、生憎とその名前に関するデータは、思い当たらなかったようだ。
『何者とは?』
そう彼女が訊く。その声は決して情報戦をやり合おうとするそれでなく、
ただ純粋に正宗の言葉に疑問を持ったからのようだ。
――――不思議な子だ。
「俺は、不破――――」
使い慣れた偽名を使おうかと思ったが、彼女の真っ直ぐな瞳を見て、気が殺がれたのか。
一旦言葉を切ると、両手をポケットに突っ込んだまま、本当の名前を口にする。
「いや、小野正宗だ」
来た道を振り返り、あの鼠どもが排水溝から追ってきてない事を確認すると、
気だるそうに前髪を上げ、また少女に問いかけをした。
「何者か、か。あの炎を何故扱えるのか、に質問を変えよう。
それと異常な鼠どもに、そいつらに狙われてた理由。ハナさんが分かる限りで、教えてくれねーか」
「オノ―――」
オノマサムネ、と、音を思考で復唱。
この辺りでは見かけないその容姿をしげしげと眺めて、記憶に収める。
……名前を覚えないことを「とうさま」によく笑われはしたが、一度覚えた個体、
そのものは忘れない。
ただ人ではない。
しかし、退魔士としては、彼女が知る限りでは、反応が異なる。
冷静に彼女に問うてきた言葉に、首をかしげながらも応じる。
「炎……これ?」
最初に、生じたのは三ツの砂色の尾。
犬のそれと呼ぶには太く、そして長い。
ワンピースの裾から現れて、その輪郭が溶ける。
一瞬の変化―――そして、少女の背後にあるのは三つの炎。
生じる場所は腰のやや下から、生え際は見えない。
それが、ゆらゆらと揺れる。
「キツネビ―――人がそう呼ぶもの」
これでいい?と、目線で問い、つづけて答える。
「あれらが追ってきた理由は、ハナは知らない。この道をハナは良く使うけれど、
こんなことは初めてだもの。しいて言うなら……」
言葉を切って、思案の仕草を数秒。
「……いいえ、やっぱりわからない。肉があろうとなかろうと、あれは飢えていて」
飢え。もはや本来の意識を持つのか怪しい、鼠の群体が、
撒き散らしていた意識はそれだ。喰え、全てを取り込め。
「近付いたものなら、なんでも食べたかった―――たぶん、そう」
あれは、つくられた場。何らかの、誰かの意図が作用している。
だから、来た道を振り返る少年を見遣りながら、
あの鼠たちが追いかけてくることはないだろう、と漠然と判断する。
「ハナに答えられるのはこれだけ。まだ、知りたいことはある?」
意図を含まない、単純な質問。
というよりも、相手が何を意図しているのかが掴めない。
だから、彼女は問う。自分から何を得ようとしているのか、と。
【あと一往復くらいで〆られますか?】
【そちらの時間的に無理な場合は、凍結でお願いします】
【流れで言えば可能ですが、レスの時間で一往復後は三時半過ぎになってしまいそうです】
【そちらが宜しければ一旦凍結にしましょうか】
【わかりました〜】
【再開ですが、今週だと、土日までは行けますので、21:00以降に声を掛けていただければ】
【それ以降ですと、伝言スレで細かく打ち合わせた方が確実だと思います】
【はい、了解しました。こちらは早くとも21:30以降になりそうです】
【では明日の22:00、再開としますか?】
【それでは、明日(今日?)の22時再開で】
【ひとまず、今夜はお疲れ様でした】
>>633 『炎……これ?』
そう言って彼女のワンピースの裾が翻り、三本の尾が飛び出てきた。
狐の化生だろうか、と少年は適当な憶測を立てる。
こういった知識に関しては、当然上司の方が詳しいだろう。また後で訪ねればいい。
そもそも彼が最も知りたかった事は、彼女が少年の敵と成り得るか、そこだったのだから。
炎に変化したそれをじっと見つめながら、これでいいか、と無言で尋ねる彼女に頷いた。
そのままあの奇妙な下水道についても聴取する。
それは近日中の変化。自然界では有り得ない現象。
空腹故に食すのとは違う、ただそこに物が在るから食す鼠の群れ。
どんな愚鈍な者でも分かる、あからさまに作為的な物を感じるだろう。
「……面倒くせー事になってきたな」
表情を歪め、煩わしげに頭を掻く。
――――取り敢えず、あの下水道は暫く立ち入り禁止にしとかねーと。
その後の処理について色々と頭を巡らせていると、今度は少女からの問い。
他に質問はあるのか、と。
目を伏せ、少し躊躇うかのような時間の後、正宗は口を開いた。
「これから何処へ向かい、何をするつもりなんだ?」
>>638 【これは酷い時差ボケ…今日の22:00でした】
【最後にレスをして、今夜はお疲れ様でした】
【小野さん待ちです。】
【……でも、こちらからなので、しばらくお待ち下さいませ。】
【お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ】
「なにをする?……どこへ?」
復唱。
「向かう、先?」
ふっと、少女の姿をとった、妖の目線が泳ぐ。
枯れ草をさざめかせて、冷えた風が通り過ぎる。
河向こうに、街の明かり。それから、沈黙。
長身痩躯からわずかに離れて、少女の影が動いた。
「なにもしないし、どこへもいかない」
海老色に萎れた草の色も、夕闇にあっては見えない。
黒い靴の、ころんとした爪先が、湿った土と枯れ草とを擦り合わせて、かすれた音を立てる。
「父様が死ぬなと言ったから。それに、ハナはまだ消えたく……死にたくないから」
ステップを踏む爪先。
「生きているの。それだけ」
それも、もうすぐ終わる。
とん、と、目先のブロックに飛び移り。
「あなたは?どこかへ行きたいの?」
振り返る。肩までの、癖のある砂色が揺れる。
わずかに光を帯びる、人外の瞳。
【こちらもお待たせしました】
【よろしくお願いします】
少女の視線の先を、黙って追った。
その先に見える街の景色を見て、彼女は何を思ったのだろう。
『なにもしないし、どこへもいかない』
そう呟く砂色の髪の少女の声は、どこか空虚で。
何故か正宗の心を微かに締め付けた。
「死にたくないから生きる、か」
少年は空を見上げ、その言葉に在る意味を噛み締める。
昔その気持ちに似た思いを、彼は抱いていたから。
ひたすら死ぬ事を恐れ、生きる為なら手段を問わなかった。
昨日まで笑い合っていた仲間が、蝿と烏の餌になっている。
ただ自分もそれになることが、とても嫌だった。
けれど、今は違う。
行きたい所、そう訊かれ正宗は腕組みをして暫し下を向いた。
「……んー…」
少し悩んだ後、笑顔と共に少年はゆっくりと語り始めた。
「平等な社会。弱い者を虐げる者の居ない、平和で、優しい世界」
ははっ、と自嘲するように笑って、少年はまた街の景色に視線を戻した。
「そんな世界に、俺はしたい」
少年の笑顔を、その影を、穿たんばかりに凝視する。
彼女は、少年の言葉に、共感の徴しを嗅ぎ取る。
ゆっくりと語られる言葉を、その立ち上がりから漏らすまいとするように。
偽りも、欺瞞もない。わかく真っ直ぐな意思を、そのまま受け止めながら。
「……むつかしい」
ばさりと、少女の髪が肩口から落ちた。
頭を俯けて、わずかに目を伏せる動作。
戸惑いを湛えて、彼女は河岸をみやる。
「とうさまは、このせかいが大好きだと言っていたわ」
優しい人だった、と、彼女は覚えている。
古い古い家の、古木とイグサを燻した、日向の匂い。
―――お前は、遥か先まで見届けることができるのだね。
彼女の、『父』は、言った。
娘の姿を真似て現れた、しかし見知らぬ彼女を。
死者への冒涜と憤ることなく、亡くした娘と同一視することなく、
ただ、その命を慈しんで。
―――短命なわたしたちよりも、ずっと先を。羨ましいことだ。
「あなたは、ここが、嫌い?」
細い両腕が広げられる。冷えた北西の風を、抱きとめるように。
変わる、ということ。変わらない、ということも。変える、ということも、
それを望むことも―――今の彼女にはわからない。
だから尋ねる。新しい世界を作りたいと、そう望む少年に。
難しい。そう口にした少女に、正宗は今度は楽しそうに笑った。
無理な事だと一笑されるか、甘言だと馬鹿にされるかと思っていただけに。
純粋なこの子は、自分の言葉を真摯に受け止め、考えていてくれる。
『とうさまは、このせかいが大好きだと言っていたわ」』
そうか、と正宗は振り返り頷いた。
とても優しい人だったのだろう。世界を愛するのは、言うは容易く、行うのは難しいのだから。
「昔は、大嫌いだった。天国でも地獄でも、
ここよりマシなら喜んで行きたいと思ってた」
眼前に手を突き出し、手首を見つめる。
僅かに脈動するそれは、今自分がここに生きているという証。
「でも今はほんの少しだけ、好きになれた。
俺の生きる目的が、存在意義が見つかったからな」
少年が思い浮かべたのは、二年前に逝ってしまった彼の師匠。
彼を救い出し、彼に技と、心を授けた唯一無二の恩人。
彼の志しはまだ、少年の中で生き続けている。
「生きる目的は、欲しいか?」
拳を握りしめ、正宗は尋ねた。
生きる目的の無い少女に、彼の師匠がそうしたように、その理由を探したくて。
握り締められる拳に、決意の堅さがあるの。
そこまで至る道程を、知ることはない。
ただ、その道に至るまでに、命短き者が歩んできた、積み重ねた時間、
その濃密さを、彼女は心に留める。
―――生きる目的は、欲しいか。
少女は無言で首を振った。
少年の申し出を拒絶することへの、僅かな罪悪感を滲ませて。
「ハナは―――」
あの時、彼女の『父親』が、自らの生の終着点を知っていたのかはわからない。
「ここにいたい。見ていたい。そうしなきゃいけないの。父様のかわりに」
それこそが、彼女が生きる目的。
生受けし存在として、生に固執するのとはまた違なる、生きる意味。
「たぶん、父様が望んで下さったほどに、ハナは、この世界にいられないけれど」
心昏き者によって存在の意味を書き換えられたとき、約束されていた時間はなくなった。
かの術者、利用した妖であった筈の狐精の手によって導かれた微睡みの時間を生きる、
かの術者が命を落とせば、式としての束縛が消えると同時に、彼女がこの世界に残るより巫坐もなくなる。
―――その経緯を、目の前の少年に語ることはない。
ただ、少女の語る声には、恐れと、哀惜の響き。
「覚えたわ。あなたが、強く強く、望んでいること―――」
やさしい、せかい。
この少年の、強い望みの行き着く先に、彼女は思いをはせる。
そこには彼の語る『優しい世界』があるのだろうか。そこに、彼女は、あるいは。
―――それもまた、この目に映すことができるのだろうか。
「そうか」
首をふった少女に、正宗は意外な程あっさりと引き下がった。
彼女の話す言葉の中に、先程とはまた別の存在意義を感じたからだ。
それがある限り、ヒトと言うのは強く生きられると、少年は信じている故に。
「なら、見ててくれ。無数の屍を積もうとも、その中に俺が埋もれてしまおうとも、
その先に、全ての子供達が安心して笑える世界を作りたいから」
優しい世界を作る為に少年が行っている事は、決して優しくなどない。
しかし、そんな事など彼にとってはどうでも良かった。
その先に望む世界が在るなら、幾らでも汚れよう。命すら、惜しくない。
だから、と少年は更に続ける。
「死なないでくれよ。俺も、あんたに生きていて欲しい人間の一人だから」
彼女の言葉の中に何かを感じ取ったのだろうか。
深い前髪の下の瞳が、やや不安げに揺れながら目の前の式を見つめた。
「あなたも、ハナに生きていて……欲しい」
少年の言葉をそっくりそのまま繰り返して、髪の陰に隠れた、その瞳を見返す。
目の前の少年が生きる非情な日々を、彼女は知らない。
織り込まれた切実な思い、意識して干渉しなければ、漠然としか悟ることもない。
しかし。
「……っ」
不意に、彼女の瞳が乱れた。
思い返すのは、幾つかの出会い。
彼女を害悪と見なす人間から逃げ回る日々に、諦めに苛まれながら、
辿りついたこの街での、いくつかの出会い。
自らの甘さが、命取りになっても人々を救いたいと語った彼。
そっけない素振りに木訥な優しさを隠した彼女。
人の辿りつけない領域に、妖魔の領域に至らんと必死だった彼。
迷いながらも、人を守る剣でありたいと望んだ彼女。
文字通り、ぐちゃぐちゃのばらばらの身体をひょろりと長い姿に隠したおかしな妖魔と、相棒のお節介な鋏。
そこにいない誰かに焦がれながら、その言葉の確かさを探しながら、修羅になろうと足掻いていた彼。
今、目の前で、優しい世界に辿りつきたいと語った彼。
彼らと交わした言葉は、時に交わした炎は、彼女に、たしかに残していたのだ。
彼女が生きたいと望む理由を、見届けたいと望む理由を、
もしかしたら遠い過去の追憶と同じだけ、彼女をこの世界に縛り付けた言葉と同じだけ、あざやかに。
―――それが、生きる理由でなくて、何だと言うのだろう。
約束はできない。彼女はそう判断している。
このまま何もしなければ、彼女は消えてゆくだけの存在だ。それでも。
「わかったわ。努力、する……」
語尾が、小さく掠れる。
これまで通り過ぎてきた、そして、ここにある。
出会いこそが、『父』が彼女に見せようと望んだものだと、漠然と理解して。
【そろそろ〆でしょうか……雰囲気的に。】
「ありがとな」
彼女が抱えている事情の深さも、そしてこの街での出会いの数も、正宗は知らない。
それでも生き抜こうとしてくれる彼女の言葉に、確かな嬉しさを感じた。
少女の父親代わりにはなれないけれど、と思いながら少年はそっと砂色の髪を撫でる。
「行きな。今度は、危ねぇ場所通んなよ」
まぁそしたらまた俺が助けに行くが、と冗談混じりに呟くと、
名残惜しそうに少女から手を離した。
「――――またな」
軽く手を振りながら、正宗はずっと少女の瞳を見つめていた。
その姿を、その命を、この心に刻みつけるように。
【はい、ではこちらは次で〆ますね】
―――ありがとな。
なにか、強い感情のこもった声。
礼を言われた。
何故、感謝されるのか、なにを感謝されたのか。彼女にはわからない。
それでも、伝えられたものはちゃんと受け取れた、と彼女は思う。
慣れ親しんだ似姿の、やわらかい髪越しに。
夜風に冷たくなった皮膚を通して、少年の体温が伝わる。
ひとつ頷く。それだけの動作に、ひどく時間が掛かる気がした。
踵をかえす。
走り去る先は街の明かり。煌々とひかる人々の営む場所に向けて、少女は駆けはじめる。
獣の姿に成らなかった理由を強いて挙げるなら、少年と別れた直後、ワンピースの襟にぱたぱたと落ちた、
それの感触を、まだ手放したくなかったから―――と、いうことになる。
背中に当たる、視線。
その気配が、この出会いの残したものの在所を、
彼女の胸の奥、たしかに指し示している。
【こちらも〆で】
【お疲れさまでした、ありがとうございます】
【途中にやらかした誤字が心残りです……w】
人は誰かの為に生きるのだろうか。違う、と少年は思う。
誰かの為に生きると決めたその時から、既にその願いは自分の物なのだから。
ただ、願いを求める心を他人が支えてやる事なら出来る。
今日は、その支えが増えた。願わくば、自分も彼女の支えとなっていたなら。
彼女の消えた夕焼けの川を眺めながら、正宗は耳元のピアスを弾いた。
「香澄。俺が家に帰る前に、有る全ての斬鬼衆のデータを集めてくんねーか」
『其れは構わないけれど。一体何に使うのかしら?』
「少し、鼠退治を手伝ってくれる奴を探してる」
『…分かったわ。でも、斎に取って不利益に成る様な真似はやめて頂戴?』
「承知してっから。…まぁ、努力する」
去り際の少女の言葉を借りながら、苦笑しつつ追伸を切った。
もし自分があの下水道の異変に気づいていなかったらと思うと、あまりいい気分はしない。
二度と彼女のような被害者を出さない為にも、少し、動いてみる必要がありそうだ。
「話が分かる奴らばかりだと、楽なんだが」
そう最後に希望的観測を一人ぼやきながら、来た時とはうってかわって
のんびりとした足取りで、少年は帰途についた。
>>652 【これにてこちらも〆、と】
【そんな事を言えば、こちらは誤字や誤認に溢れてますから】
【お気になさらず。二日間に渡りお疲れ様でした、お休みなさい。ノシ】
【お疲れ様でしたー】
【長いことお付き合いいただきましてありがとうございました】
【槙さん待ちです】
【よろしくお願いします】
【おおざっぱに設定。槙さんのクラスメイト】
【当人は平常時、寄生されてる自覚はない、って感じで】
【付き合いの程度、そちらの服装などは深く考えていませんw】
【流れ次第で適当に合わせていただけると助かります】
授業終了のチャイムを背後に聞きながら、
「ふぅっ……重いー。」
盛大な音を立てて、まなかはコート競技用のボールを満載したカートを止める。
ショートカットの、闊達そうな少女だ。ジャージの上着に、ハーフパンツ。
体育の授業の直後―――そういったいでたち。
「いっこだから一人でいいよ、なんて言わなきゃよおかった。まったくもー」
ぶつくさと呟きながら、まなかは体育倉庫の扉に向かう。
全開まで扉を開いて、その辺に落ちたストッパーで留めて。
それから、今度は散らかった倉庫内の、所定の位置まで移動させないといけない。
体育の授業の片付けは当番制。今日の担当は彼女らだった。
彼女「ら」。と、いうのは、彼女一人ではない。
こうなったのは生来のお節介な性分が原因だろう。
見学が多い日で、使ったボールが少なかった、というのが理由。
……だって、こんな籠一個運ぶのに5人も一緒にするのっておかしいよ。
そう思って引き受けてしまったものの、一人ではいささか面倒な仕事。
「こういうの。男子がやればいいのに」
自分で引き受けたのを棚に上げて、そんなことを呟いてみたりする。
やっぱり散らかってる。倉庫内を見渡して、溜め息をひとつ。
埃と、独得のすえた匂いに満ちたその空間は、相変わらず雑然としていた。
「このボール、片付けないとしまえないじゃん」
満載されて溢れ出したサッカーボールが、籠の指定席を占領している。
運んできた籠を表に置いて、一つ、手に取ったところで、背後から声が掛かった。
「あれぇ、円?」
振り返ると、着替え前の同級生がいる。
今日、同じく当番で……とっくに教室に戻っていた筈の、級友の一人だ。
あまり好きではない体育の授業中のことだった。
戦闘向きではないとはいえ、動体視力、身体能力は常人を軽く上回る。
セーブしながら体育をしても、楽しめようはずもない。
バレーボールに夢中になっていれば気付かなかったかも知れない。
ごくごく僅かな妖気を一瞬だけ体育館の片隅から感じた。
「……おっとっと。ああ、ごめんごめん。」
ボールを投げよこされる。自分のサーブの番らしい。
ひとまず忘れることにして、放課後調べよう。
体育の時間が終わり、皆がまばらに教室に帰っていく。
体育館を出る時、ゾクッと背中に寒気がした。嫌な予感。
妖気の出所が今、はっきりした。一人で後片付けをしようとしている彼女からだ。
「……椎木さん。ちょっといいかな?」
そういいながら自分の武器を確認する。体育の時間まで圏は持って来れない。
サイフと一緒に入っている3,4枚の符のみ。
「いや、私も手伝おうかなあってね。」
言いながら隠し持った符をクラスメイトの腹部にに軽く押し付けてみる。
真面目な子だから、手伝いに来てくれたんだろう。
歩み寄ってくる、級友の言葉に、返事をかえす。
「助かるー。引き受けちゃったはいいけど、皆、散らかしすぎ」
―――いつもの調子。
軽く語尾を伸ばして、
まなかは、級友に、
振り向いた。
級友は、既にそこにいた。
ほんの少し、おかしい、と思う。
そこ。肩と肩が密着するほどにすぐ近く。
(円って、こんなに……はやかった、っけ?)
級友としては目にすることがない、円の訓練された動作が、
まなかに首を傾げさせる。
滑りこむような身のこなしが、残像として目の端にやきついている。
何か、薄っぺらいものを押し当てられた。
喉の奥から漏れた音が、咄嗟に、自分の声だとわからなかった。
びくっ、と、まなかの身体に震えがはしる。
(……あれ?)
違和感。どうしてこんなに気持ち悪いんだろう。
下腹のあたり。円が何かをあてたのより、すこし下。
「あ……れ」
支えを求めて、手を伸ばす。
盛大な音。ふたりの傍らにあった、プラスティックカードの入った
バスケットが傾いて、落ちる。次に、衝撃。慣れない種類の。
柔らかい、温かい、感触。
「円?」
組み敷いた、少女の身体が軽かったのではない。
まなか自身の腕に込められた力が強かったのだ。
この年頃の少女にはありえない程に―――しかし、彼女は気付かない。
「ぐッ!?」
視界が一瞬で反転し、床に叩きつけられる。
―油断した、わけではないのに。この力は尋常ではない。
妖魔が化けていた?そんな馬鹿な。1年以上も隠れられているわけがない。
ならば何か。組み敷かれながらも冷静に考える。
1.意識に変化が見られないこと。
2.発している妖気が極微量であること。
3.人外の力を発揮し、明らかにこちらに敵意を持った行動をしていること。
4.自覚が無いこと。
妖魔の、恐らくは使い魔に相当するような存在に乗っ取られている。
そう見るのが最も妥当と言える。
このまま力を使わせ続ければおそらく椎木さんの体は力に耐え切れないだろう。
抵抗を一度止めて見る。
乗っ取っている妖魔の情報を得なければならない。
―それも、椎木を傷つけないように。
へんだな。
腕が、せなかが、痛い。
「どうしたの?……あれ?どうしたの、かなぁ?」
そう言葉を落とした直後。
まなかは、同級生の少女の唇に喰らいついていた。
(―――?)
そういう趣味を持っていたつもりはない。好きな男子だっているし。
けれど、こうして、粘膜同士を触れ合わせると、ひどく、ひどく、
(気持ちいいや)
どうしてだろう、とは考えない。
お腹のあたりがじんとする。頭の芯が痺れるみたい。
組み敷いた少女の、体操服に手を掛ける。
(じゃま、だなぁ、これ……)
もっと、ぴったりとひっついて、それから―――それから?
「―――ん、ちゅ」
恋愛経験に豊富なほうではない。舌が、拙いながらも貪欲な動きで、
もう一人の少女の歯朶を舐める。液体同士が混ざり合う、湿った音が、
二人だけの体育倉庫にいやに響く。この場所のすえた匂いに、互いの、汗の匂い。
当然だ、つい、いましがたまで
―――何、だっけ?
下着をずらすのももどかしく、慎ましやかな乳房に、指先いっぱいに使って
揉みしだく。方法、はわからない。ただ、もっと。
もっと。
友人の体には明らかに普段ならありえない程の負担が掛かっている。
乗っ取った妖魔によって無理やりに引き出された力の代償だろう。
これ以上この力を使えば少女の腕は自分の力で折れるだろう。
だから、押え付けられているところから力を抜いた。
「んんッ!?」
突然のキス。
不本意ながら同性のキスは初めてではない。―妖魔を含めれば、だが。
普段良く顔を合わせている女の子に口内を貪られる。
そのことに恥じらいと、ほんの少し興奮をしてしまう。
「なにするの……だめだよう……」
まなかを反射的に引き剥がそうとして思いとどまる。
ここで反抗すればまなかの体は壊されてしまうかもしれない。
敏感な胸を弄ばれながら、我を失わないように必死に堪える。
手をそまなかの手から遠ざけ、ボール籠を握り締めた。
胸の頂きの、尖り。その感触に誘われて弄る。
不意に円の体温が強く感じられた。
これが、『いい』のかな。漠然と思う。
「ぁっ……」
こんな声、あたし出したことあったっけ。
ずん、と下腹が疼いた。
唇から降りて、今、まなかの唇は円のおとがいの下を貪っている。
「しゅるっ、ず、れろ……ちゅ、ずちゅっ……」
噛みつくような勢いで口腔と肌とを触れ合わせる。しょっぱいような、しかし
甘美な味が味らいに広がる。ゆっくりと下がって、下へ―――ふと、
思いついてすこし横へ動いたのは、そちらのほうが美味しそうだと感じたからで。
しかし、ある瞬間。円が反応を見せたとき、また、ずん、と、
「ひゃぁ、ァッ」
涎が、唇の端を伝う。
次第に、少女の動作が変わってきた。
がむしゃらに接触点を求めるものから、相手の反応を期待したものへ。
―――円に、奉仕する動きへと。
しかし、ふたりの周囲に、靄のような、煙のような、放電塔が放つハロウのような、
奇怪な現象がうっすらと現れ始めていた。
人外じみて強かった腕の力は、緩み始めている。しかし、少女の腕は円に抵抗
を許さない。生じた現象を凝視する視線があれば、靄が、横たわった少女から、
圧し掛かった少女へ、ゆっくりと移動していることを認めたはずだ。
「正気に、もどって……お願い……うぅッ……」
汗を舐めら取られる、くすぐったくも、暖かい感触。
抵抗が出来ないのではなくて、自らしない、してはいけないと
思ってしないのは初めてだった。
我慢しているのに。
心の防壁音を立てて少しずつ崩れていくのを感じた。
「……ふ、あぁッ」
大きな塊が崩れ落ちる。
敏感な部分に熱い刺激が加えられた。
まなかの責めが加速度的に巧みになっていく。
もやのかかった意識の中ででそろそろかな、と思った。
少しずつ、少しずつ全身を襲う熱の中で意識が薄れていく。
……異変を感じた。
それが何かは分からない。
ただ全身の力が抜け、吸い取られていくような感覚。
ええっと。
(どういう風にしたら、気持ちよくなれるんだったかなぁ)
すっかり曝け出されたなだらかな双丘のひとつを、舐めしゃぶりながら考える。
硬くなったそこは、まるで飴のようで。かるく歯を立てると、心地いい。
歯を立てて、それからじっくりと唇で遊ばせる。
こりっ。
抵抗を失くした円の身体が、最初に触れたときより、熱く、柔らかくなったのを
彼女は感じている。可愛いなぁ、と思って、なんとなくそれを口にした。
「円、キレイな子だと思ってたけど、なんでかな。今、すごく可愛いや……」
銀縁の眼鏡になんとなく手を伸ばして、額まで押し上げる。
もう一度、唇を合わせる。今度はそっと、そして、押し入る舌の動きもあくまで優しく。
「ふぇあ……ん、ちゅ……」
まなかは、膝を深く折って、身体を屈めた。
空いた左の手が使いやすくなるように。
―――こうなったら、どうするのか。
彼女は既に経験していた。己の身をもって。つぎは……
級友の、下半身に手を伸ばす。ゴムの感触を引き伸ばすと、薄い布地に触れた。
布地越しに、大事な場所に触れる。彼女自身、ある時まで、日常生活以外において、
自らのそこに、触れる機会などロクになかった―――その場所へ。
(どこ……?妖気のでどころ……)
最初に符を押し付けた下腹部には既に妖魔の気配は無い。
靄のかかった視界から友人の体を眺める。
居ない。一体、何処へ……。
「んッ……」
思考は二回目の接吻に中断された。
絡み付いてくるまなかの舌をいなしながら、瞳の奥を覗く。
そこに正気の光は無い。
「ちょっ、そこは駄目……!」
慌てて跳ね起きてまなかを引き剥がそうとした。
―そのつもりだったが。
意に反して背中はべったりと床に付いて離れない。
縫い付けられたように動かない体。
その間にも友人の手が、ソコに……。
下着に染み込みつつあるのに、知り合いに見られてしまう恥かしさに苛まれながら、
無力感に包まれてその光景を見つめている。
【すいません、時間です。再開は伝言板の方にお願いします】
【では、あちらに】
【最初の段取りが悪くてごめんなさいです】
【お疲れ様でした】
【しばらく待機しまぁす。】
【プロフは下記の通りデス。】
【名前】天使 美夏(あまつか みか)
【年齢】15歳・都立白清高校一年(入学予定、現在は中3)
【性別】女
【サイド】退魔側
【組織】天洸院・斬鬼衆/聖書白清教会
【サイズ】173cm、56kg、B90W58H89
【容姿】薄い茶色の長髪を後ろで束ねている。白い肌と大きく青い瞳が印象的。
やや丸みのある輪郭でいつも微笑んでいる様な表情を浮かべている。
モデルの様な体型とは裏腹に地味で清楚な服を好む。
天使化後は背中に大きな白い翼が生え、頭の上には輝く輪が浮く。
【得意】受け、もしくは「救済」名目でのチョイ攻め。百合、和姦。
【能力】守護天使の力による天使化。
(通常時)
護身術、神聖魔法(足止め程度の衝撃波、応急処置程度)、天使化
(天使時)
翼による飛行、透明化、癒しの手(治癒)
神の御光(天使の輪からの閃光)、天の裁き(火炎放射、火柱)
※特に悪魔、魔族、死霊、それらとの契約者、使い手には多大なダメージを与える。
【武器】裁きの剣(炎を纏った細身の剣)
【NG】死亡、隷属(ロール内は可、持続はNG)、グロ、スカ
【弱点】通常時はごく一般的な退魔師に劣る。
天使化した後は天使の輪が最大の弱点で攻撃されると大ダメージ。
掴まれると脱力してしまう(某ドラゴ○ボールの主人公状態)。
共通して専守防衛、殺めるのは最終手段。
相手が悪だとしても一度は信じてしまう。
【備考】聖書白清教会に通う敬虔なクリスチャンであったが、妖魔と牧師の戦いに偶然巻き込まれ死亡する。
その際に守護天使の力に目覚め息を吹き反す。
改めてこの世界の事を牧師より聞き、斬鬼衆としての訓練を積み白清高校へと進学する。
斬鬼衆に身を置きながらも妖魔と人間の共存を密かに願う者の一人。
元来の問題を起こしたくない性格の所為で幸か不幸か、それを知る者は牧師だけである。
また、モデル(と、言うよりはグラビアアイドル)の様な容姿だが本人に自覚はない。
まったく関係ないが、「すこぶる」が口癖である。
頗る…
わかいのに身長高いね 将来モデルにでもなれるんじゃない
脚も長いんじゃないのかな
はい、すこぶるですw
身長は昔から高かったですけど・・・。
モデルって私がですか???
ん〜〜、でも、そういうのは興味ありませんねぇ〜。
闘うのが好きなのですか?
いえ〜、好きではありませんよぅ。
話し合いで分かっていただけるのであればすこぶる嬉しいですね〜。
あと、普通のお話しでしたら専用板の方が良いかと思うのですが〜?
しこしこしてもいいのかな?
ん〜、とりあえず時間も時間ですのでお暇致しますね〜。
そっち関係はロールの内容次第でしょうか〜?
それではまたぁノシノシ
【待機解除します。】