そうですね、以後気をつけます…
(自分の格好を見られ、改めて身の回りを見る)
ああ…そんな、謝らないでください…
大分時間も経っていますし、なかなか言い出せなかった俺が悪いわけです…
(ばつが悪そうにする彼女に、必死に弁解する。
折角あったばかりなのに、自分のせいで暗い雰囲気を出していた)
ええと、実はこうして遊びに行くのは初めてでして、
それに人を誘うのも初めてで、宜しく、お願いします
(改めて恭しく頭を下げた)
俺は、あんまり映画は見ない方ですが、今やってる奴を選びました
それと…お礼と言ったらこんなのしか思いつかなくて
(苦笑を漏らしながら、こくりと頷く)
はい…では、行きましょう。こちらです
(彼女の横につき、下校中の生徒の中、
一人私服の男が交じって歩き始める)
(中には優希が見知らぬ男と一緒に歩いているのを見て
ぼそぼそ良からぬ憶測を飛ばす輩もいたが、
彼は意に介せず嬉しそうに歩いていた)
(そして付いた先は、繁華街から外れた場所にある少し寂れた映画館に着いた)
つ、つきましたね…
(今更ドギマギしている)
【≫1すれ立て乙です。前回からの引き続きです】
【優希さん、旧スレで容量不足で連絡を入れられずに、すみませんでした…】
はぁ…いえ、誘ってもらうのはこちらですし。
此方こそ宜しくお願いしますね?
(なんだか奇妙な感じを覚えながら、微笑んで)
はぁ…そんな無理をして探してもらわなくても良かったんですが…。
別に私は買い物でもボウリングでも付き合いましたよ?
(そのまま、遠矢のあとを付いていき)
(憶測を耳にして不愉快に思ったが、ひと睨みして脅かすに止めて)
【すみません……もうそろそろ眠気が迫ってきていて…】
【締めるか凍結するか破棄してもらいたいんですが…】
【分かりました、では凍結でお願いしますね。
都合が付ける時間を教え頂いたら合わせます】
【…今日は、色々不都合が重なって、ロールが出来ませんでしたね…やっぱ女運がないのかな‥‥(’A`)】
【はぁ、分かりました。明日の予定が崩れたので、明日お願いできますか?】
【できれば昼頃ぐらいからお願いしたいんですが…】
【明日のお昼頃ですね、大丈夫です】
【正確な時間も指定していただけたら、合わせますね】
【では12時ぐらいからよろしくお願いします……。】
【それでは、また明日。 おやすみなさい……。】
【了解しました。また12時に会いましょう】
【それでは、こちらも落ちますね、お休みなさい…ノシ】
【少しばかり早いですが、待機しますね】
【
>>9こんにちは、お待たせしました】
【昨夜は色々ゴタゴタがありましたごめんなさい…
>>3で終ってますから、こちらから始めますね】
【はい……どうぞはじめてください】
>>3 そうでしたね、でもこちらこそよろしくですっ。
(相手に微笑んで貰えて嬉しいか、遠矢の表情が明るい笑顔に)
買い物…それなら割りとする方ですが、
それだけじゃあ味気無いと思いまして……
ボウリングはやったことなくて、なんとなく映画館を選びました。
(彼は人の多い場所は苦手なのだが、映画館は暗くて
そんなに人を気にしなくていいという印象があるのか、そちらを選んだ)
…?
どうしました、優希さん?
(誰かに睨みをきかしている優希に疑問を抱く)
(そして暫くたち、繁華街から外れた場所にある、少し古びた映画館についた)
(やつれた風の映画館だが、休日なのか人通りはポツポツと多かった)
なんとなく…ですか。
そういう意味じゃなくて…別に私に合わせることなく
、そちらの趣味で選んでもらってよかったんですが…。
―――ま、折角ですから、今日は映画を楽しむとしましょうか。
(ふぅ、と息を漏らしてから、小さく頷きを返して)
ああ、いえ。大したことじゃありませんから。
さっ―――、もう始まるようですから入りましょう?
(腕時計に目を落として、促すように)
そっちの趣味、か…
(うむぅと唸りながら、少し考え込む)
そうですね、お互い戦い漬けですし…
今日は骨休みの意味も込めて、楽しみましょう。
(ポケットに入れた手を少し出そうとする
握っているのは、映画のチケットだ)
大したこと…?
ふーん……
(興味無さそうに振る舞うが、これ以上詮索する事はないだろうと考え、頷き返す)
あ、ああっ、もうこんな時間だ…早く入らなきゃ。
行きましょう、優希さん。
(入り口に指をさし、映画館に入り、
チケットのチェックに手間取りながら真ん中らへんの席に着いた)
そうだ…確か今から見る映画は……
(改めて選んだチケットを再び見て、チェックした)
【ここで少々お遊び要素を…】
【このスレの秒数が偶数だったらアニメ映画】
【奇数だったらR指定のあれげな映画】
【それと結果を反映させるため、もう1レスお借りしますね】
【55秒、奇数でした。では…】
(今テレビの宣伝でやってる、ありがちな恋愛映画っぽいのだった)
純愛ものとか今流行りだから、無難にこれなら……
(映画のチケットを再びポケットに入れ、会場が暗転し、映画が始まる)
……え…?
(だが、暫く映画が進むうちに、何だか怪しい雰囲気になる)
おかしいな…そんなんじゃ…あ…!?
(改めてチケットを見ると、実はR指定の映画だった)
し、しかも百合物!?
(再び映画に目を移したときには、キスしあう女性の画があった…)
(ちゃんと確かめるんだった…。
そう思いながら、当の優希に目線だけを移す…)
……あれ?
(映画館のなかに入ったはいいが、やけに観客が少なく驚く)
(いくら、寂れた映画館とはいえ、時間帯から言えばもう少し多くてもいいと思うのだが)
人…少ないですね?
まあ…、ゆったりと出来ていいんですが……。
(それでも釈然としないのか、きょろきょろと落ち着かないように周りを見渡して)
…さて、そろそろ始まりますね。
(人が少ないとはいえ、携帯の電源を切り)
(そして沈黙。しばらく映画を観賞していたが、だんだん妖しげなシーンに移り変わり)
………?
……!
……!?
(顔を真っ青にしたり、真っ赤にしたりと表情を忙しなく変えて)
(終いには、まともに映画を直視できなくなったのか俯いて視線から外す)
(だが、俯いていても音声は耳から入ってくるのでどうしようもなく)
((あ、朝山さん、こ、これ、何なんですかっ!?))
(視線を遠矢へと向けて、きっと睨みつけながらぱくぱくと口を動かして)
((優希さん…ちょっとよく見ていませんでした…))
(何とか弁解をしようとするが、
ちらちらと音声が入ってしまい視線が行ってしまう)
((それに、よく映画とか見ていませんし、
ちらほらテレビの宣伝だけで…とにかくごめんなさいっ!))
(自分でもよく分からず、とにかく言うだけ)
((け、けど、テレビで紹介されるほどですから、ストーリーは……))
(などと理由をつけて再び映画に目を移す)
(映画の内容自体はしごく真面目で、
描写はR指定だが、多様な愛を描いたストーリーのようだ)
((ね…ほら……))
(そして再び優希に目線を移し、問掛ける)
…………………はぁ。
(頭痛がする錯覚を覚えながら、
溜息をついて視線をスクリーンに戻す)
(確かに、ストーリーは真面目なもので、ふたりの絡み合いもその延長上らしい)
(とはいえ、女性をこんな映画につれてくるだろうか、と嘆息する。)
(さすがに今から『帰りましょう』とはいえないし……、と諦めて)
(しかし、やはり気恥ずかしさもあるのか、映画はちらちらと見るに止まった)
よ、よかった…
(どうやら一応納得してくれたようで、ホッとする)
だけど……
((映画選び…失敗した……))
(いくらよく知らないとはいえ、
こんな映画に誘ってしまった自分は
明らかに変態な何かの類と自己嫌悪しつつ、映画に目を移す)
うん……?
(しかし、映画は佳境に入り、ストーリーも急展開を見せた)
(そして、物語は俗に言う泣き場に入り……)
う……うぅ………
(隣に優希がいるのに、人目を気にせずボロボロと情けなく涙を流していた)
(ぽろぽろと涙を流す遠矢を横目に、じっとスクリーンを眺めた)
(感情移入しやすい人だなぁ、と思いながらも、やけに冷めた気持ちで)
―――自分があの登場人物だったらどうするだろうか、と。
(所詮、作り物だ―――とは言えない)
(それは人の手とは言え、作り上げた悲劇の再現をしているのだ)
(少なくとも役者はその心になりきっているはずだ。―――いや、その登場人物そのものだろう)
(作り物とはいえ、その悲しみも、喜びも、怒りも、憎しみも、全て本物だ)
(だからこそ、自分だったらその感情をいかに抑えていくのか、それを考えていた)
(生死がいつ逆転してもおかしくない日常が、彼女の思考を現時的なものにさせていた)
(久しぶりに涙を流している自分がいた)
(こうして脇目を振らず泣くほど、自分の涙は安っぽいものなのか?)
(幾多の痛みを味わい、悲しみにさいなまれながらも、涙を流した事は余り無かった)
(だから今こうして、流している涙に、
どこかで冷めた目線で見ている自分がいる)
うぅ…ぐすっ……ずずずっ……うう……
(だが、今自分が作り物に対して、涙を流しているのは事実で
悲しく、そして感動して泣いているのは確かなことだった)
(隣の優希が何を考えているのは知るよしもなく、
無様なまでに涙を流し、鼻水も垂れ流していた)
(そして映画が終わり、会場が明るくなる)
う…うう……終わり、ましたね……
(帰る人がいる中、未だ映画の余韻に浸るように泣き続ける男がいた)
…………。
(感傷に浸る遠矢を声をかけずに、しばらく見守ったあと)
さて…そろそろ行きましょうか?
流石にいつまでもここにいるわけにはいきませんし…
ほら、次も公演もありますし―――…。
まあ、…お世辞にも選択はベストとは言えませんけど
それなりに面白かったですよ?
(ありきたりだが、最大限の評価をしてそろそろ、と外へと出る)
そ、そうですね…
(腕を使い、涙と鼻水を拭う)
確かに、明らかな選択ミスでした…
今度からは、ちゃんと情報を確かめますね。
(今度はないかもしれない、と付け加えて席を立つ)
あ、あの…これからまだ、時間がありますか?
(映画館を出て、ポケットに入れた財布を握り締めながら一歩踏み込む)
(実は本題はこれからで、ちゃんとお礼を言うにはこの時しかない)
(…だが、直前の映画が大失敗で、了承してくれるかは望み薄と感じていた)
はぁ……時間はまだありますけど……。
どうするんですか…どこか連れて行ってくれるんですか?
(はて、と首を傾げて、再度腕時計に目線を落とす)
(まだ帰宅するには時間はあるし、これといった用事もない)
はい…あの、これからお食事なんてどうでしょう。
何でもいいですよ。
(そうどもりながら、適当に近くのファミレスを指差す)
それと、ちゃんとお話をしたいんです。
あの日の事とかを……。
(消え入るような言葉を言い、手を差し出す)
分かりました。それじゃあ、行きましょうか?
私も小腹が空いていたところですし。
(小さく頷くと、横に並んで近くのファミレスへと入店する)
(入店すると店員に案内されて適当なテーブル席へと座る)
ええと、それじゃあ私はピザとポタージュスープで。
朝山さんはどうされますか?
(注文を伝えると、店員は一礼してその場から去り)
さて―――。
では貴方のお話を聞きましょうか。
(スッと双眸を細めて、面向かって朝山の顔をじっと見て)
それじゃ、行きましょうか。
(行き場の無い差し出した手を、
苦笑しながら見て、ファミレスへと入る)
(席に付き、メニューを見て)
それじゃ、オムライスを一つお願いします。
(優希にどうするか言われ、目についた品を選んだ)
はい…お話、ですね。
今日は、これをするために誘ったようなものですから。
映画に誘ったのは、いきなり話すのも何でしたから、
こう順序を置いて話そうと思いまして。
(それ自体失敗だったけれど、そう力無い笑いを浮かべながら言い、
そして改めるように彼女に向き合い、真っ直ぐ優希を見つめる)
あの日…優希さんは忘れたかも知れませんが、俺ははっきり覚えています。
あの丸い奴らにしたいようにされ、
自分に押しかかる恐怖心に負けて、暴走してしまったこと……
(瞳を少し伏せ、思い出しながら語る
まるで、懺悔をするかのようにぼつぼつと静かに言葉にする)
まずは、謝らせて下さい。
あの日、優希さんに多大なご迷惑をおかけしてしまった事を…!。
(そして、彼は勢いよく頭を下げた。
テーブルが、自分の額に当たるぎりぎりだった)
なんだ、そんなことですか―――。
(ふっと微笑を浮かべて、気にしてないと言わんばかりに首を横に振って)
私は気にしてませんよ。
―――もし、貴方があのまま止まらないのであれば、
私があなたのことを止めるつもりでしたから。
(こともなさげに、さらりと言って、先に出てきたポタージュスープをスプーンで掬い)
もし、迷惑だったと思うのならもっと強くなってください。
恐怖を押さえつける強靭な心と身体を身に付けてください。
もし、貴方が本当に暴走してしまったのなら、私だけでなく多くの人間を傷つけることになります。
……あるいは誰かを死に至らせるコトだって。
そればかりは、私にはどうしようもありません。
貴方がどのように自己を押さえるかは貴方次第です。
(そこで遠矢の顔を見据えて―――)
それが出来なかったとき―――、貴方が誰かを傷つけるようなことがあれば
私が貴方を止めて見せます。…命を賭してでも。
そ、そんなことって……!
(彼女が首を振っている理由が分からず、
思わずテーブルから身を乗り出す)
で、でも止めるといったって、
あの時の俺は何をするか分かりませんでしたし、
本気で貴方を殺そうとしましたよ!?
(あの時の殺気を、今でも明確に覚えている。
忘れたくても忘れられない、思わず声を上げてしまう)
っ………
(そして彼女の言葉の前に、口を閉じてしまう)
(全てが意に得ている事であり、自分の今までの、これからの課題であった)
(そして今でも解決出来ないまま、こうして優希の言葉の前で何も言えずにいた)
…その時は、お願いします……。
(それだけは、確かに言えた。
自分がもし自分ではなくなり、
人を傷付け、殺めるとするなら、
誰かの手でやってほしかった)
あの…言いたかったのは、これだけじゃありません……。
(まるで、反論するように口にし、伏せていた顔を再び上げる)
ちゃんと、お礼がしたくて誘いましたから。
(先程の会話から、言うことじゃないかも知れない。
だけど、だからこそ言わなければならなかった)
【またトラブルで遅れてしまいました。度々申し訳無いです…】
ええ、だから私も本気であなたのことを殺そうと思いました。
(声をあげる遠矢をよそに、静かにポタージュを啜って)
私は未熟です。
だから、あのときの貴方に手加減なんてしようとは思いませんでした。
それがすなわち貴方を殺す、ということとイコールになるとは思いませんけれど。
でも、そういう可能性はあるということです。
……はあ、何でしょうか?
(はて首を傾げて、訊ね返し)
うくっ………
(自分を殺すつもりでいた。
改めてその言葉を聞き、声を紡ぐのを止めた。
ただ場には彼女のスープをすする音がたった)
可能性…そうかも知れません。
だけどあの時の俺は、ただ全部が憎くて、
全てを壊したいと思っていました。
もし俺を殺さなくては、俺が殺してしまう。
そういう心がけでなくては、貴方は俺の手で殺されていたかも…
いや、殺していました…!
(ぎりぎりと拳を握り締める。血滴が掌から漏れていた)
だけど…そんな俺になったにも関わらず、
俺が倒れた時、優希さんは言ってくれました。
自分が友になると誓う、と……。
(拳を合わせ、思い出しながら語る)
あの時、とても嬉しかったと覚えています。
優希さんの首をしめ、傷付けたのに、貴方の言葉が嬉しくて……。
(次第に、自分の言葉に熱が篭り始める。
それに何だか、視界が揺らいでいるみたいだ)
だから、俺は立ち上がれました。
優希さんの言葉に応えたくて…。
優希さんにちゃんと、『嬉しかった、ありがとう』と言いたくて……。
(また自分の頬が熱いものが伝る
まるで自分の涙が安いようだ。そう思われても構わなかった)
(ふっと表情を緩めて頷きを返し)
ええ―――、そこの切り替えができなくちゃ
この世の中は敵ばかりになってしまいますよ。
少なくとも、「今」の貴方は私の友です。
男と女の友情は成り立たないと言いますが、私はその友情を信じたいと思います。
それ以上でも、それ以下でもない―――私のかけがえのない財産のひとつだと思いますよ?
(ふふっと微笑んで、ぽんぽんと頭をはたいて)
さっ、泣き止んでください。貴方は男の子でしょう?
強くなってください。私も―――貴方を止めることができるくらいに強くなりますから。
友情…っ!
(その言葉を聞き、何かを思い出したように顔を上げる)
(それはまるで待ち望んでいたかのように晴れた表情をし、
そしてまたそれ以外の感情を孕んだものでもあった)
俺も、貴方と同じ財産を大切にしていきます…。
せっかく得た、初めて人から貰った一つのものですから……
(ただ嬉しくて、涙と鼻水もだしている。
本当に今日は情けないなと分かっている。
だけど、だからこそ今日という日しか晒けだせないだろう)
はい…すみません……
でも、俺も貴方に手を煩わせないぐらい強くなってみますから……。
(頭をはたかれた安心感につかっていたかった。
しかしそれでは男の子として示しがつかないと思い、鼻水をすすりながら泣きやんだ)
あ、そ…それと……
(でも、まだ言葉が足りない。あと一個なのだ。
そのあと一個を言おうとした、が…踏み出せない……)
………もうそろそろ、出ましょうか……
(一口も入れていないオムライスを一瞥し、席から立ち上がった)
(この場所じゃ、言えない。
そう汗を一筋流しながら、痛みの残る拳を握り締めた)
(ピザをもしゃもしゃと食べながら、小さく頷く)
はい、貴方が強くなる日を楽しみにして待ってますね?
(くすくす、とおどけたように笑みを漏らして、遠矢の頭を撫でて)
…あれ?もういいんですか。
食べてないじゃないですか……勿体無い……。
(ちらちらとオムライスと遠矢の顔を見比べて、
しばらくして諦めたのかため息をつくと立ち上がり、レジに代金を支払うと外に出て)
あー…食べた食べた。美味しかった……。
んー…それじゃあそろそろ帰りましょうか?
ええ…待っていてくださいね、必ず……。
(頭を撫でられるのは恥ずかしかった。
だがそれを遥かに勝る喜びが、自分の中にあった)
そ、そうでした、確か行く前にご飯済ましていたような………
(自分とオムライスを見比べられ、誤魔化す様に笑いを浮かべる)
(そして会計を済ませ、外にでる。
冬を越した春の夕方の風が、心地よく二人を撫でた)
そうでしたね………
では、もうそろそろ帰りましょうか…
(名残惜しそうに優希の言葉に従い、彼女と並び帰路につく)
(そしていつも来る公園の前に着き、彼は決意を固めた)
あ、あの…優希さんっ…!
(少し距離を置き、その間に春の夕風がなびく)
(今しかなかった。本当に、自分が言いたかった事を伝えるのは…)
(風になびく髪を掻きあげながら振り向いて)
―――……はい、なんでしょうか?
(不思議そうにきょとんと、彼の顔を見て小首をかしげ)
何かありました? 財布を落としたとか……。
財布は…ポケットにあります。
だけど、そんなことより、言いたい事があるんです……。
(そういえば、財布はさっきファミレスに置き忘れてしまった。
だけど、今は伝えないといけないことが、胸の奥にあった)
優希さん…貴方が俺を友と呼んでくれたお陰で、一人じゃないって分かって、
まるで俺の生きる重みが少し軽くなったようで、とても嬉しく感じています。
だけど…それ以上に俺にのしかかった重みがありました。
(自分の中に閉じ込めた気持ちを、少しずつ溶かしていく)
(何故だろう。行動を起こす前はあんなに躊躇していたのに、静かに言葉を紡いでいける)
優希さん…俺は……貴方の事が好きです。
貴方の気持ちを考えず、勝手に好きになっていました。
気持ちだけは一人歩きして、気付いたらもう押さえきれなくて………
(言葉が詰まってしまう。
元々手詰まりな告白だ。
だから、少し待った。
自分を気持ちを壊す、無慈悲な優しい一言を―――)
(瞼を閉じ黙って、遠矢の告白を聞いて)
……………。
貴方の気持ちはよく分かりました。
そう思ってくださることは凄く嬉しく思います。
でも―――……多分、貴方の「好き」と私の「好き」とは違うものだと思います。
貴方の「好き」は、恋愛感情から来る好き。
私の「好き」は、人間、そして友情としての好き。
……私はあなたの友です。
(瞳を潤ませながら、俯いて次第には嗚咽しはじめて)
だからこそ、……私は、あ、なたの…気持ちには、こたえ、られません……っ。
(自分が酷いことを言っているのは分かる。
純粋に誰かが想ってくれているということも嬉しい。
けれど、そこにあるのは感情の食い違い―――)
(彼は、口を一文字に固く閉じ、嗚咽混じりの優希の言葉を聞いた)
(分かっていた。これが真実なのだ。
ろくに会っていないのに、
そう言われればこれしか答えようがない。)
(それでも、沸き上がるのは打ちのめされた涙を流している。
そして涙も枯れたか、悲しくても涙が流れない自分がいた)
―――そうでしたね、俺達は、『友』でしたね。
俺はただ、友という気持ちを錯覚したように、恋と感じていたようです。
(瞳が、涙を流している優希に合わせた。
彼女はあんなに泣いているのに、
涙を流さない自分は、ひどい人間だと思った)
(それはきっと相手が『好き』という気持ちに
真っ直ぐ向き合っているのか、自分の『好き』は所詮その程度でしかなかった)
ありがとう…ございます……。
俺の気持ちに…答えてくれて……。
ただ俺は、貴方を泣かせてまで…気持ちを楽にしたかったの……でしょう。
本当は……貴方と恋をするより、友のままでいた方が…良いという選択でしょう……。
(言葉が詰まり詰まりだ。もう言う事が無いのか。
だけど、だから言葉にしないといけなかった)
(未練を微塵に残さぬほど、恋の思いを壊し尽すために)
【それでも、沸き上がるのは打ちのめされた涙】
↓
【それでも、沸き上がるのは打ちのめされ、涙を流している想い】
本当にっ……ゴメンなさい…。
私……。
(何かを言おうとしたが、それを口にしても
彼を傷つけるだけだろうと口を噤み、はぁぁ…と嗚咽交じりの息を吐き出す)
(泣けばいいというものじゃない。彼は泣いてはいないというのに)
(腕で涙を拭うと、ぎゅっと瞼を閉じた後、真摯に遠矢を見据えて)
でも―――。
貴方が困ったのなら手助けします。
貴方が私の友だから―――大切な存在だから。
貴方の盾と、剣と、なりましょう。それが私の誓いです。
それだけは、覚えておいてください―――。
【そろそろ締めでしょうか?】
……っ俺…………
(相手はゴメンと口にしている。
こんな俺を傷付けまいと涙を流し、嗚咽を漏らしている)
(それなのに何も言葉無く、
優希の顔を見ないように伏せている自分がいる。
目を背ける、残酷な自分がいる。)
それでも……俺と…貴方は……っ!
(もうこれ以上悲しませては駄目だ。
安い決意を固め、再び顔を上げた時、
彼女と向かい合い、視線が重なった)
―――………!!
(そして、彼を待っていたのは、
あの日の、彼女の口にした誓いの言葉だった)
(自分を立ち直らせた、身勝手な恋心を産んだ、喜びの言葉)
………はい、しっかりと覚えておきます…。
そして、俺も貴方の力になると…。
友として、弱い自分が出来る、確かな事として………。
(そうだ、元からこれで良いのだ。
友という、これ以下のものが無い、
そしてこれ以上無い絶対唯一のものが、友という誓いだけが―――)
………手間を、取らせましたね……。
ここで、別れましょうか?
(夕日が沈みかける。風が少し寒くなってきた。
まるでそれは、今度会う時は、片想いではなく、
両想いの友として変化する関係を知っているように)
【了解しました】
はい、この誓いは私の剣が折れるまで続くことでしょう。
だから、その時まであなたの友としていさせてください―――。
(すぅっと笑みを浮かべて、握手を求めて手を差し出す)
どうか、これからもよろしくお願いします。遠矢君。
はい…、それじゃあまた、どこかでお逢い致しましょう。
さようなら、遠矢君。
(笑いながら軽く手を振ると、いつものように別れを告げて走り出す)
(いつものとおりに―――。ただ違うのはその双眸から流れ落ちる涙のみ)
【それではこちらはこれで締めにさせていただきます】
【長時間お付き合いありがとうございました。それではまたノシ】
この誓い、貴方が剣なら、俺は命尽きるまで……。
その時まで、友であり続けましょう……!。
(優希が手を差し出し、それに応え、固い握手を交す)
こちらこそ…よろしくお願いします、佐々木優希さん……。
今度また会うのは、戦場になりそうですね。
さようなら、優希さん………。
(また笑ってくれた。気軽に手を振るい、
また再会を想い願う、友達の別れ方。
そんな彼女に、自然に自分も笑みが溢れる)
(そして走り去っていく彼女の軌跡を描くように、
涙の煌めきをじっと見つめ、後ろ姿が見えなくなるまで見送った)
また…会いましょうね………。
(熱い息を吐き、フッと子供の声がまだ耐えない公園に向いた)
(公園は、まだ遊び続ける子供が、声を上げながら友達と遊んでいる)
(自分も本当の意味であの一員になったと、
感慨深く感じながら、自分も帰路についた)
(また友と、会える日を信じて…)
【はい、こちらこそ長時間のお付き合い、ありがとうございました】
【レス返信が遅くて待たせてしまった事を、深くお詫び申し上げます……】
【それではまた…ノシ】
街の高台近辺に立つ高層マンションの一室。
このマンションの高層部は、大概において人がいる事がない。
何故なら、彼らの組織の存在が、占有しているからである。
「高い場所から眺めるのが好きとは、人間も妖魔も上に行く程俗物化するのかもしれませんね…」
既に闇に包まれた街には、煌々と灯が灯っている。
その灯りの中の幾つに、自分達と同じ存在がいるというのか。
「くくっ……」
薄暗い橙色の灯りの灯る、ホテルの一室のように無機質な整い方をした部屋。
窓から視線を外し、目の前に「浮かぶ」幾つもの半透明なディスプレイへと目を走らせる。
「鈍くはありますが、計画は徐々に……進行しています。
街の灯りが我々の彩りに染まるのも、遠い日ではない……」
【葉月さん待ちです。】
暗く、やや肌寒い夜を一人歩く銀髪の少女。
その足取りは、かなり早い。
それもそうだろう、今夜彼女と約束をした人物は、唯一無二の彼女の敬愛する妖魔、遠見幻也であるのだから。
「よぉ、お姉ちゃん。こんな夜道を一人歩きとは感心しないな」
人通りの少ない道を歩きながら、ぼうっと考え事に浸っていたその時、どこかからか声がかけられた。
その方を振り向けば、いかにも今風の若者と言った男三人が、こちらを舐める様な視線で見ていた。
「…悪いが今夜は外せない用があるんだ。他を当たってくれ」
抑揚の無い声であっさり切り捨てると、再び遠見幻也の待つビルへと足を向け――――それが止まった。
見れば、彼女の細い腕が図体のデカい男の内の一人に捕まれていた。
「いいじゃん、悪い思いはさせない――――」
だが、その不幸な男は台詞を言い終わる前に、骨の折れる音と共に地面を転がっていた。
「…邪魔をしないでくれ」
常人には見えない速度で放った裏拳を脇に寄せると、また歩き出す。
後の二人は異形を見る様な目でこちらを恐ろしげに眺めてくるのみだった。
ふと、考えつく。
――――あの子も、生きていたならあの年ぐらいだったろうか。
「…何を言っている、私は」
未だ過去から離れられぬ己を自嘲すると、その思いから逃げるように更に足を早めた。
「――――桐生葉月、ただいま参りました」
【遅れてしまい、申し訳ありません。よろしくお願いします】
「ああ、葉月さん、よくいらっしゃいました」
薄暗い部屋で、彼女の到着を確認し、微笑みを浮かべる。
目の前の常ならざるディスプレイを手の一振りで消し、
スツールからゆっくりと立ち上がると、彼女の方へと歩んだ。
「顔色が優れないですね。どうかしましたか?」
少女の心中に、濁りが少しだけ見えた。
だが、わざと気付かぬようなふりをし、言葉で葉月を労わる。
「魔力でも、不足していますか?」
そう言いながら、彼女の前髪を指先で梳いた。
【はい、宜しくお願いします。】
「いえ。お心遣い、痛み入ります」
すっと目を開いたまま、会釈をする。
――――この御方だけには、絶対に知られてはならない。
彼の指が額に触れる。途端に全身が心臓になったかのような鼓動に打たれた。
「は、はい少し…」
上擦った声で返答を返す。彼が言うこの言葉。それは一つの合図。
「……ふふ、まぁ、いいでしょう」
言葉が毅然としている程に、少女が何かを隠しているのが分かる。
――― 分かり易い娘だ。
だが、それに触れるのは敢えて避けた。
「そうですか。…正直ですね」
魔力は、普段から殆ど使う事がないので、分け与える分くらい充分にある。
偶の享楽にふけるのも悪くはあるまい。
ワイシャツのタイを緩めて解くと、普段は使いもしない寝台の上に座った。
「では、貴女が奮い立たせてくれますか。
先程まで、頭脳仕事をしていたので、少し感覚を整えておきたいのでね」
そう言って、少女を自分の近くへと引き寄せた。
実は、彼女の先程の言葉は嘘だった。
元より己が肉体を武器とする彼女が魔力を消費する機会など、まず無い。
傷ついた体を修復する際には使用するが、ここの所の勧誘実務では大した戦闘になる事もなかった。
――――申し訳ありません。微かな嘘をお許し下さい。
「………っ!!」
ぐっと引き寄せられる。自分の頬が赤く染まるのが実感出来た。
『貴方が奮い立たせてくれますか』
その一言が頭の中で何度も反芻する。
やかましく鳴り響く鼓動を意識から切り離し、彼のズボンのチャックにそっと手をかけた。
「失礼…します」
そっと中に手を入れて、彼の分身を引きずり出す。
未だに固さを持っていないそれを壊れ物でも扱うかのように持つと、慎重に舌を這わせた。
―― 微かな嘘をお許し下さい。
心の漣が、脳裏に響く。
気にはしなかった。
それが少女の望みならば、そうするのが良いのだろうから。
己が物に舌を這わせる狼の化身の少女の頭を優しく撫でながら、手を宙に走らせた。
先程纏めかけていた情報を、適宜七妖会の本部へと転送する手続きをとる。
半透明の光が幾つも空中を走り、情報を纏めていく。
「……どうですか、人間世界は。」
頬を染め、自分の分身を高めようとする少女に、そう訊ねる。
「んっ……」
血が通い始めて、段々とそれ本来の機能を持ちつつある彼の一物から一旦舌を離す。
自分の唾液と、それ以外の何かに汚れた口を拭い、彼の先端を口に含んだ。
やはり、慣れない。けれど、これも彼の為なら。
彼から質問をされ、また口を離す。
「はふっ…人間世界……ですか?」
しばし沈黙して考える。何も変わらない。誰も彼女と関わる事のない学校生活。
何か彼に話すべき事を探してみるが――――やはりなかった。
「…特にありません…んぐっ…」
ちろちろと舌を使い、集中に先端を攻め立てながら、根元の辺りも手で同時にこすり上げた。
「ふむ……そうですか。貴女にいい機会だと思っているので、
是非、任務以外にもその感覚を向けて欲しいのですよ」
そう言いながら、ものの数十秒もかからず、莫大な情報を一つの報告書に纏めると、
有無を言わさず、転送用のシステムに送り込む。
その間、続けられていた下腹部への刺激で自分の分身が張り詰め始める。
「……さて、葉月さんの方も高めて差し上げなければね」
葉月の制服のスカーフを緩めると、双丘の谷間へと手を差し込んだ。
白く、柔らかな女の肌を愉しむように、指先と掌でその膨らみと先端の突起を刺激する。
「こうして、葉月さんと睦むのも、随分と久しぶりですね」
そう言って、葉月の頭を己の物から優しく解放すると、
その身体を寝台の上に引き揚げた。
着衣をゆっくりと脱ぎ捨てると、細身ではあるが、脆弱ではない身体を朧な灯火の下に晒す。
「任務以外…ですか」
鸚鵡の様に言葉を返し、真意を己の内で探る。
今自分が学生として学校に通っているのも、任務故に、でしかない。
――――もしや、私が鬱陶しいのではないか――――
そう行き当たった自分の答えに嫌気がさし、この事に付いて考えるのも止めた。
――――私に取っては、今の居場所と幻也様こそが全て。
「……っ…ゃぁ…」
服の中に差し込まれた手に、身を微かに強ばらせた。
彼の手が動く度に、口から小さな喘ぎが漏れる。
なされるがままに寝台の上に寝かされると、彼が手早く服を脱いだ。
「そうですね…よ、よろしくお願いします…」
こちらもそれに応じるようにスカーフを外し、服を捨て上半身を露わにする。
「…そのような顔をされては、私まで悲しくなりますよ」
心の歪を感じ、葉月の顔に手を当て、微笑む。
「ふふ、変わらずに美しい体だ。賛辞するに相応しいですよ」
つ、と白磁の肌に指を走らせる。
首筋から胸、腹へと。
その都度の反応を愉しむように、ゆっくりと。
その背に手を回し、寝台の上に倒す。
「貴女がどう思おうと、貴女は私の大切な部下ですから。
そして、何よりも貴女自身を束縛したくはないのですよ」
そう言って、少女の震える唇に己の唇を重ねた。
いつぞやの軽い啄みではなく、深く、舌を絡めるように。
「…申し訳ありません…」
要らぬ心配が顔に出ていた様だ。慌てて表情を普段のそれに戻した。
「…幻也様…っ…」
ただ指でなぞられているだけの行為。それなのに、己の体は異様な程反応を示していた。
びくびくと体が震える。恥ずかしさのあまり、彼の顔は見れなかった。
『貴方は私の大切な部下ですから』
優しすぎる一言。
常に歩き回るだけで、周囲の動物が逃げ隠れた森の時代では受ける事のなかった物。
――――愛おしいです。私は貴方が。
「…んっ…はぁ……」
舌が交わる度、己の心は跳ね上がる。もっと彼の唾液を欲しがる様に、情熱的に求める――――
「あっ…!」
小さく呟き、慌てて両手で頭の上を押さえた。
僅かに指の隙間から覗くのは、髪と同じ銀色の毛を持った獣の耳。
「も、申し訳ありません、すぐしまいますので…」
とはいった物の、一旦緩んだ気はなかなか元に戻らない。
押し込めようとしてもなんらそれは反応を示さなかった。
「気にしなくて良いですよ、私は貴女の全てを認めているのですから」
銀色の耳を指先で、逆撫でせぬよう、優しく擦る。
暖かな獣の耳の内にまで、舌を走らせる。
そのようにして、獣の耳すら、快楽の取っ手へと変えていく。
手は、露になっている双丘の突起を掌で擦るように。
更に、少女のスカートを捲り上げ、白い脚を掌で愛撫した。
艶やかな快楽の踊りに揺らめくその根元、ショーツをずらし込むと、
秘部に到達した指先で秘唇の周囲をやわやわと刺激する。
既に、何度か睦み合った少女の身体の急所は、大概理解していた。
的確にそれらを刺激し、少女の快楽をじわじわと引き出していく。
「貴女の事を知らぬ者ならばともかく、私に対してそのような遠慮は不要です」
―― 私は、貴女の全てを知ってなお、傍に置いているのですから。
生暖かい舌が、獣耳の内に入ってくる感触に肌がぞくりと震えた。
「ひゃっ!?……げ、幻也様…そこだけは……駄目で…す……あっ…」
悲鳴にも似た声を上げながら、彼の腕をしがりつく様に握りしめる。
「んぅ……やっ…」
同時に展開される乳首への巧みな攻め。耳から直接送り込まれる脳への快感と、胸から来る全身を回る快感。
そして彼の手は、とうとう白い大腿の根元にまで及んだ。
「幻也…様ぁ………」
既に湿り気を帯びた下着の内の唇に指がふれ、思わず朱い目を瞑る。
頭の中には常につきまとう快感から、己の意識を保つだけで精一杯だった。
充分に、少女の潤いと快楽を引き出した。
いつもの毅然とした姿からは想像もつかぬようなあられもない姿を晒して息を荒げる
少女に微笑みを浮かべると、静かに言葉を紡ぐ。
「いつ危険な任務に当たるとも知れません…睦みの最中に、少し楔を施します。
束縛したくないと言いつつ、このような処置を取る事、申し訳ありませんが。」
―― 楔。
それは、精神を繋ぐ枷。
束縛したくないと言いながら、そのようなものを課す自分の矛盾。
「ですが、これも貴女を失いたくないが為。
貴女を奪われないための…儀式です。」
そう言うと、宙に影の様式の術を描く。
影文字の黒い紋様が自分と葉月の睦む寝台の上に展開した。
「私の精をもって、あなたの内に楔を結び付けます。
魔力の供給と楔、双方同時に行えますから、手間も省けるでしょう…」
そう言うと、まだ猛っている己の分身を、葉月の秘唇へと近付け、
その先端で、入り口を焦らすように擦った。
【予め言っておきますが、こちら限界二時までです。多分終わると思いますが…。
そちらは大丈夫でしょうか?】
遠くなりそうな彼の声を必死で手繰り寄せた。
「……いえ、構いません。貴方の任務を遂行する為であれば、何であろうと」
静かに自分の言葉を確かめる様に頷く。
中に浮かぶそれをじっと眺めながら、下着をずらし、足元まで下げた。
――――そして、ぎこちない、あの笑みを浮かべる。
「ですから……私を幻也様の物にして下さい」
先端がられる度、腰がそれにあわせて動いた。
淫らだとは分かっている。けれど止められなかった。
「お願いします………来て…下さい…」
【はい、恐らくは…大丈夫だと思います】
【ちなみにこの契りは、普通の妖魔にも効果を及ぼしますか?】
「…では、葉月さん、いきますよ」
少女の脚からショーツを抜き取ると、その片脚を持ち上げ、開いた秘唇へと腰を押し進めた。
張り詰めたままの分身が、葉月の狭い入り口へと少しずつ侵入していく。
入り口で擦ったために己の分身に纏わり着いた愛液と、少女自身の内部の潤いで、
程好い抵抗を感じながらも、それは飲み込まれていく。
「……少しキツい位ですね。
私が居ない間、他からの魔力供給は受けてなかったのですか?」
恐らく、殆ど使ってないだろうそこは、彼女が喘ぐ度に収縮し、自分の分身を締め付けた。
だが、痛い程のそれではなく、鍛えられた身体の躍動が生み出す収縮は、並の男ならば
それだけで快楽に落とされる代物だ。
しかし、彼は顔色を変える事なく、根元まで己の物を少女の秘唇へと突き立てた。
先端が、子宮口と接触し、先端同士で口付けを交わすように押し付ける。
【質問の意図がちょっと掴めませんが、儀式の効果は幻也の精神と
葉月さんの精神を繋ぎ、精神操作系の効果を打ち消します。
但し、全く効果がないわけではなく、ずっと虜になる事はないという感じですね。
なので、精神系で操られてエロールしてしまう、という展開は可能ですよ。
奴隷化が不可能なだけです。】
ズブズブと、彼の分身が己の内に踏み込んで行く。
彼に満たされるという安息感、がそこには有った。同時に全身を貫く様な快感が自分を襲う。
「はっ…!ああぁ……」
既に鉄の仮面は崩れ去り、淫らに喘ぐ一匹の獣と化していた。
けれど、後悔はしていない。
――――彼ならきっと私を受け入れてくれるから。
「ひっ、必要が…っ!……ありまっ、せんでしたから」
彼の物が己の膣を掻き乱す。一突き事に深く差し込まれたそれは、己の意識を狂わせるのに充分過ぎた。
「幻也様…っ!…もう…達してしまいます…あぅっ!」
【すみません。いえ、普通の妖魔とのロールの際隔たりになる可能性はあるのかと思いまして】
【有難うございました。次で〆てよろしいでしょうか】
腰を動かす。
少女の膣内を掻き回すように、丁寧にゆっくりと。
雁首を内壁に引っ掛けるようにして、抜き差しを繰り返していく。
「今だけは、私への忠節を忘れても構いません。
存分に、己が快楽に溺れて下さい。その方が私も、己を昂らせる事が出来ます。」
頬を染め、切なげな表情を浮かべる少女の身体を優しく抱き締め、
身体を密着させて、ただ腰だけで少女の内を蹂躙する。
首筋、耳を舌先で刺激し、唇を吸う。
ありとあらゆる、少女の弱い部分を刺激し、高みへと導いていく。
少女の敏感な聴覚に、交わる淫水音が聞こえるように。
少女の敏感な嗅覚に、交合部の淫臭が伝わるように。
―― 貴女の全てを、私の前に晒して下さい。
―― 痴態も、想いも、感覚も。
影紋様が蠢き、己が精に、楔の情報を記述していく。
これが彼女の中に注がれた時、少女の精神は、他の隷属を許されない、
不可侵の楔を植えつけられる事になる。
「―― 存分に達しなさい。」
言葉と共に、激しく突き上げる。
同時に、怒張が弾け、少女の中へと白濁と共に、魔力、そして楔の力を放った。
【了解です。では、私もその後にそれを受けて、〆ますね。】
「はっ…あっ、やぁっ」
力ない声を出す。彼の一物が膣の壁を掴み、引きずり出している。
それを離さんとするが如く締め付けながら、彼の体をぎゅっと抱きしめた。
「幻也様…!…大好きです…っ」
彼の体の暖かい感触を感じながら、己の感情を言葉に表す。
「大好き」などと言うありきたりな言葉では語れないこの想い。
けれど快楽に呆けたこの頭では、普段なら口に出来ないこんな文句しか紡ぎ出せなかった。
その癖、全身の感覚だけはやたらと鋭敏だ。
耳に聞こえる音は、自分と彼が交わっている事を確認させてくれた。
鼻につく匂いは、彼が自分と交わる事で感じてくれている事を確認させてくれた。
「はっ、はい……あっ、イきます、っ!……幻也様ぁ……ああっ!」
一際大きな喘ぎ、それと締め付け。彼の子種が己の膣内に繰り出されたのが分かった。
「はぁっ、はぁ……気持ち良かったです、幻也様……」
そう言って微笑み――――気付く。目の前の彼の姿がぼやける。
――――しまった、睡眠の時間か。
外見は限りなく人間に近い少女だが、肉体的には動物のそれに近い。
睡眠とてその例外ではない。
1日に十時間前後の睡眠を必要とし、それに足りなければ彼女の体は疲労した時点で強制的に睡眠に陥ってしまうのだ。
「申し訳…ありま―――」
台詞の途中で糸の切れた人形のように、少女の首が落ちた。
健やかな寝息を立てる。その口元は、僅かに微笑んでいるかのようだった。
【ではこれで〆で。お疲れ様です】
【有難うございました。ではまた会いましょうノシ】
「……ッ」
ずるり、と己が物を眠りに落ちた少女から引き抜く。
白い液体が、糸を引くように二人の接合跡を繋ぎ、シーツの上へと垂れた。
「―― これでいい」
あとは、彼女がこの街で、どれだけのものを見るか。
それが全てを左右する。
「後は、対外の魔物共と…退魔師達の動向…さて、どうなるやら」
幕はまだ開かない。
だが、舞台裏の準備は、少しずつ、着実に調えられつつあった。
この少女が、自分の計画を知ったらどうするのだろう。
絶大なる信頼が崩壊するか、それとも最後までその信頼を貫き通すか。
「……いずれでも、私には関係ない事」
『幻也様…!…大好きです…っ』
達する際に少女が叫んだ言葉が脳裏に蘇る。
「…私も、存外に人でなしなものですね。妖魔であるから当然かもしれませんが」
自嘲するような笑みを浮かべると、半裸の少女の傍に身をよこたえ、
その身体を引き寄せると、上掛けを被った。
夜半の灯りの下に、その身を置きつつ、一時の休みへと、その精神を誘いながら。
【お疲れ様でした。】
【これで一応、幻也の必須ロールは済みです。
まぁ、また何かありましたら、お願いするかもしれませんが、
他の方々とも、どんどんご自由にロールして下さいね。
言われるまでもないとは思いますが。】
【遠山さんまちで待機です。】
【舞台繁華街で】
ごみごみしてるとか、人間と一緒にいると反吐が出る
というやつもいるけど、ここら辺は町の中でも特に好きなスポットだ。
パンピーがいるせいで退魔士だって手を出してこないし、
人間と違って寝る時間というのがないから
個々みたいに刺激的なとこは暇つぶしには持ってこいだ。
そんな鼻歌交じりの散歩にも邪魔は入る。警察だ。
恥ずかしい話だけど、手を出せないのはこっちも同じ。
特に今日見つけたヤツはたちが悪い。
離れて歩こうと無駄な努力をしたが、あっという間に距離をつめられた。
観念しよう。それほど不味そうでもない。
【遅レスすみません。お願いします。】
これまで妖魔と遭遇してきたが大抵は廃墟や廃屋、公園や夜道って言うのもあったがほとんどは人気の無い場所が大半だった。
油断があったかもしれん。こんなに人気のある場所で妖魔と出会うとか。
もっともこの出会いは今後の俺にとってプラスかマイナスかまではわからないが。
「なぁ、お前さぁ、最近この辺で出回ってるドラックについて知ってるんだろ?
この界隈でドラックを扱ってもっぱらの噂じゃあないか〜」
「し、しらねえよ。俺が知りたいくらいなんだよ。け、刑事がこんなことしていいのかよ〜」
(ある繁華街の路地裏で遠山に襟を掴まれてるチンピラが一人、その回りには痛めつけられて
伸びてる雑魚チンピラが数人)
普段ならこんなに目立つことはしないんだが・・・・
実は「連盟」内であるドラックが巷に蔓延してる噂が吸血鬼の耳に入った。
所詮人間のすること・・・・
と割り切ればそれで終わったんだが「ドラックが蔓延して人間の血が汚染されれば吸血鬼にとってマイナスだ」
みたいな声が出て結局、俺や他の連盟のメンバーが出所を調査することになった。
もっとも他の「含み」が有るのか無いのか。
確かに署内でも問題になってたから俺が「調査」してても不自然ではないがな。
「いいんだよ。しても。おら、知ってる事全部話せ。もっと痛い目見るか?」
(チンピラを壁に押し付けてガンを付ける)
【来ました】
最初はいつもの胡散臭い警察さんかとおもったが、
よく考えると腑に落ちない。少々ラフな服装とはいえ、
このあたりの若者とそう大差ないし、魔術の類は一切使ってないはずだ。
なのに掃いて捨てるほどいる人間を掻き分けてまっすぐこっちに来た。
尋問か?それなら何で僕なんだ?ここにはもっとふさわしい、
もっと危ない若者連中がたくさん目に入るのに。
って、この状況で物思いに沈むほど僕は詩人じゃない。
むしろ今の頭の中は『ゲン』のつく詩人に近い。
それでも必死に作戦を組み立ててみた。
・・・時間稼ぎ作戦だけど。
「ただ教えるだけじゃおもしろくないよん。ズバッと当ててみたら?
『刑事の勘』で。例のものの販売先はどこでしょ〜♪」
360度パノラマ視点のどこから見てもふざけてるようにしか見えないが、
実際はかなり頭に来ていた。相手もこれで切れてくれると後々楽だ。
「ヒント♪1、八百屋ではありません。2、魚屋でもありません、
3、レンタルビデオ屋もちがいます。」
さあ、怪力刑事君、やってみたまえ、遠慮は要らない。
【修正すみません。 販売先→販売元】
急に悪寒が走る。
それは微妙な、だが確かな妖気だ。
反射的にチンピラを放り出し回りを見渡す。
「ひ、ひィィ・・・!」(慌てて逃げ出す)
思わず苦笑。こんな人ごみだ。目視で探すより妖気探索に集中した方がまだ話が早い。
自分でも上手く説明できないが回りの空気を探るって言えばいいのか。
しばし集中・・・・・・
居た。人ごみの中を歩いていたが確かに人間とは違う気配。
見た目はまだ10代くらい、ちょっと線が細そうと言うか、中性的って言うのか?
とりあえず少し話をしてみようと近づいた矢先。
「ただ教えるだけじゃおもしろくないよん。ズバッと当ててみたら?
『刑事の勘』で。例のものの販売先はどこでしょ〜♪」
「ヒント♪1、八百屋ではありません。2、魚屋でもありません、
3、レンタルビデオ屋もちがいます。」
「・・・・・そりゃあ何かのクイズかな? お前さん知ってるのか?例のあれを?」
さて、この手の妖魔は捻くれてるからな。いっそうのこと・・・
「クイズより何か喰わないか? その情報が正しければ経費で落としてやるぞ。何がいい?」
署では無理だろうな。連盟では・・・「情報料」の名目で落とせるかな?
正直あいつが食いたいけど、
今の怪力で人外決定注意報が出てる。
麻薬については知らないでもないけどかなりうやむやだし、
第一人間の飯は一度処理(かなりエグイヤツだ)しないと
飲み込んだとき成分が痛む。
・・・かなり不本意だが、ついていくことにした。
人外をからかうほど、こっちも馬鹿じゃない。
一応まじめな口調に戻ったほうがいいかな。
「・・・人のいないところがいい。できればの話だけど。」
おっさんはこの意味に気づくだろうか。
状況にたいしたちがいはないが、
実力のほどは測れる。
どうやら気楽な生活にも、見切りをつけたほうがいいらしい。
『・・・人のいないところがいい。できればの話だけど。』
多分、向こうから見たら目を細めたんじゃないかな?
自分ではわからん。
「・・・・・俺も子供の使いじゃあないんでね。知ってるなら普通に教えて欲しいんだが
とりあえずここじゃ目立つから行こうか。後、妖気を抑えるならもっと集中すべきだな」
とりあえず繁華街の裏と言えばいいのかわき道に入るしばし歩く。
うん、丁度いい具合に人気のない駐車場に付いた。
「タチの悪い退魔士に見つかるのもアレだ。でだ、最近出回ってるドラックに付いて知ってるのか?
訂正syるなら今のうちだぞ?」
「俺もケチじゃあない。話してくれるならそれ相応のお礼はするぞ?」
さて、妖魔を見た目で判断するのもアレだがこの手のガキは素直じゃないだろうな。
とりあえず微妙に間合いを取っておこう。
「正直しってることは殆どない。期待させて悪かったね。
ここみたいな路地裏で、人間と豚を足して2で割ったような
集団を片付けたときに注射器が転がってた。それだけ。」
>>「俺もケチじゃあない。話してくれるならそれ相応のお礼はするぞ?」
相手が俗物ならお礼なんて最初に受け取ってた。
つまりご馳走様だ。そうしないのは組織のにおいをかぎつけたから。
やつは表情に気を配ってないらしい。
「もう少し追加すると、そいつらの中には8割がた豚のヤツとか、
鼻以外は人間そのままのやつもいた。それと、あんたも
気をつけたほうがいい。歯並びが素敵過ぎるよ。」
情報は出した。こっちが楽しみにしてるのはこの後だ。
さあ、運命の回答を聞くとするか。
『正直知ってることは殆どない。期待させて悪かったね。
ここみたいな路地裏で、人間と豚を足して2で割ったような
集団を片付けたときに注射器が転がってた。それだけ。』
「失礼なことを聞くが豚って何か知ってるのか?
妖魔の中には犬を鳥っていう奴が居たからな」(苦笑)
でも幾つか判ったことがある。
1、人間と豚、つまり「普通じゃない存在」が絡んでる可能性がある。
2、それも集団、つまり組織か一族単位か群れで動いてる可能性あり。
3、こいつは単独で(仲間が居るかは不明だが)集団を相手にするほど好戦的で強い
しかし人間変化や人型に近いタイプと言うのも微妙に違うな。
俺は改めてこいつを見る。さすがに人型に近いタイプ、上級妖魔数匹を倒すだけの力があるとは思いたくないが・・・
『もう少し追加すると、そいつらの中には8割がた豚のヤツとか、
鼻以外は人間そのままのやつもいた。それと、あんたも
気をつけたほうがいい。歯並びが素敵過ぎるよ。』
・・・・・・・・
「人間相手にはどんな妖魔でも隠すのは当たり前だがさすがに俺の種別言いふらすのは困るな。
まぁ、今日のことはお互い内密に行こう・・・期待してても何もやらんぞ」
もう終わりだとばかりに後ろを向いて数歩進んだ後、ふと首だけ振り返り。
「そうそう、人間と言えば俺達は人間の血を吸うがお前さんはどうなんだ?」
俺はさりげなさを装い聞いた。
さて、こいつの人間に対する態度次第で行動を決めるか。
一応、連盟の掟では縄張り内での他の人食い妖魔は排除の方向だから
こいつがそうなら倒しても問題はないんだが。
【ごめん、盛り上がってる途中だが凍結でいいかな?】
【時間が微妙なんだ。そちらの都合にいい時間を教えてくれないかな?】
「人間?刑事の勘もおちたもんだねぇ。
旨い下級妖魔がいるのに何であんなゲテモノ食うわけ??
あいつらにこびりついた垢が口中に広がるなんて、
考えただけでもゾッとする。」
こいつの態度から察すると、話は終わりっぽい。
正体を隠す必要がないわけだし、ためしに妖気を
抑えるのをやめてみた。
コップに張った水に波紋が走るような感覚がした。
この揺れ具合だとそれほど大物でもないらしい。
正直堅い話ですっかり参ってたところだ。
軽く運動だってしたいし、小腹だってすいてる。
一っ飛びでビルの屋上にとんだ。
(幸い5階建ての小さいやつだったのでぎりぎり届いた。
もう少し高かったら非常にかっこ悪かっただろうな。)
下を見ると吸血鬼が真剣な顔というより腹を下したような顔して
見返してくれた。
「おっさん、首突っ込むのは勝手だけど、
真上のギロチンには気をつけろよ。」
【次あたりで〆ですね。】
【次の遠山さんのレスで〆られると思います。】
【遅レス重ね重ねすみません。】
【遠山さんのほうに続行の意思があるかもしれませんので】
【恐縮ですが凍結とさせていただきます。】
【明日のこの時間帯なら空いてると思います。】
『人間?刑事の勘もおちたもんだねぇ。
旨い下級妖魔がいるのに何であんなゲテモノ食うわけ??
あいつらにこびりついた垢が口中に広がるなんて、
考えただけでもゾッとする。』
ああ、そういうタイプの妖魔か。正直ほっとした。
妖魔は1部を除けばおおざっぱだから人間がまずいから喰わないは本当だろう。
「色々比べるタイプが居るから誤解しやすいんだよ!」
刑事の勘を疑われたので思わず怒鳴り返す。
!!
向こうは妖気を解放した。ヤル気か?
今まで狩った輩より遙かに高い妖気。
だがこちらの思惑とは裏腹に奴はビルにジャンプして・・・・
『おっさん、首突っ込むのは勝手だけど、
真上のギロチンには気をつけろよ。』
思わず苦笑。アイツの言い草がそこらの「子供」と対して変わらなかったから。
「ああ、気を付けるさ。少なくともそこらのアホよりは長生きする予定だよ。
お前さんが雑魚妖魔を狩ってくれるなら少なくとも敵じゃない。がんばれよ」
ああいう奴は敵対してくれないかぎり縄張り内の妖魔を狩ってくれるなら助かる。
さて、今の妖気で退魔士が来るかもしれない。
俺は妖気を抑えて速やかにこの場を離れた。
さて、この出会いが吉と出るか凶とでるか。でも微妙に奴は疫病神かもしれんがな。
【了解しました。じゃあこれで〆です。】
【わがまま言ったり手順をミスしたりすみませんでした】
【お付き合いいただきありがとうございます。では又 ノシ】
【あ、凍結ですか? ごめん。書き込み中で見てなくて〆のつもりでレスしてしまった】
【こちらもこれで〆ます。お手数おかけしました】
【凍結の前言撤回します】
【最終的に〆る事ができました。】
【こちらこそ遅文にお付き合いいただき、ありがとうございました】
【これからも文章に研鑽を重ねていくつもりですので、
またよろしくお願いします。】
(ええと、夜にまた来る予定です)
>>84 あなたを荒らし呼ばわりするつもりはありませんが
割り込みや同時進行をするような方の相手をする方が居るとお考えですか?
自分の発言を省みて、陳謝することが先決だと思うのですが。
【こんばんは、待機してみます】
【こんばんは。お相手お願いできますか?】
【こんばんは。はい、お願いします】
【…やはり、最初ですから、遭遇でよろしいでしょうか。
他になにかシチュで希望がありましたら…】
【よろしくお願いします。】
【そうですね、遭遇・・・、あとは流れで。】
【お時間の許す限り適当にと言うことで(汗】
……ふぅ。ええと、……。
(きょろきょろとあたりを見回す。
夜更けの公園―――、今日も今日とて、妖魔を狩り続けていた)
(あらかたひと段落もつき、ブランコに腰をかけて深々と溜息を漏らす)
…静かなのはいいんですけど。
(戦いで火照った身体が涼しい風によって冷やされるのを感じながら、
何とはなくに、頭上の夜空を見上げる。闇よりさらに深い黒の世界。
それに吸い込まれそうな錯覚を覚えて、ぶんぶんと軽く頭を振い)
……ダメですね。ちょっと疲れてるみたい…。
(そして、再度溜息を漏らすと、自然とブランコをこいでいた)
【それではこんなかんじでお願いします】
――深夜、人気の無い町外れに響く銃声と叫び声。
「おらおらぁ!!」
(19匹・・・、あと一匹・・・。どこだ?)
支部からの連絡により20匹の低級妖魔を討伐に出かけた唯。
指令通りに19匹仕留めるも、最後の一匹を町中に逃がしてしまう。
「あ、俺です。一匹町中に逃がしました・・・。
これより町中を索敵、殲滅にかかります、以上。」
(さーてと・・・。都合よく足跡残してくれてるかな?)
普通の人間の眼には止まらない足跡ではあるが、
斬鬼衆に支給されている試験薬を撒き痕跡を辿る。
辿り着いた先、それは静かな公園だった。
(っと・・・、いたいた。)
木陰に隠れる妖魔は、その鋭気を養うべく一人の少女を狙っていた。
(っち、邪魔くせぇ・・・、狙撃するしかねーな・・・。)
――狙いを定め、気付かぬ妖魔を射抜く。
(決まったぜ・・・、俺式Shootッ!)
斬鬼衆のあ軽い先輩のモノマネをして仕留める。
あとは、ブランコに乗る一般人への説明を軽くしなければならない。
面倒臭いと思いつつ歩みを進めた。
「はいはい、お騒がせしましたー。あー、めんどくせーから
今見たことは忘れちまったほうがいいぜー。OK?」
背中に隠しきれない銃器をチラつかせながら少女に告げる。
【レス遅いですが頑張ります!】
―――礼儀がなっていない。
彼女の第一印象はそんな感じだった。
どこの誰かさんを思い出すような、ぶっきらぼうで愛想のない物言い。
まあ、確かに私が助けてもらったのは事実ではあるし、
彼女も仕事で仕方がなくここに来たのだろう。
「ええ、忘れるものなら忘れたいところですが、こういうのは日常的ですから」
妙な機械をやけに見せ付けてくる――脅迫だろうか?――彼女に皮肉を込めて言った。
静かに自分の相棒を呼び出し、「自分も同業者だ」と視線でそれを指し示す。
別にしらを切ってもよかったのだが、もし彼女が退魔士であるのであれば、どこかで会うこともあるだろう。
ならば、面識を作っておいた方が、協力や情報交換など色々とやりやすい。
―――それに彼女が応えるかどうかは別として。
「あー、フリーの・・・か。」
自分が来なければ既に同業じゃ無かったかもと思いつつ。
「それならもっとシャキッとしないと危なかったぜ?
大したヤツじゃないけど怪我するぜ、うん。」
退魔士であろうが何だろうが市民を守るのが仕事。
そう思っているので構わないのだが一応告げておく。
「もしもし俺です。目標は完全に殲滅しました。後の処理よろしく・・・。それじゃ。」
パタンと携帯を畳むと、もう一度彼女に目を向ける。
「あんたも退魔士なら知ってんだろーけど、俺は斬鬼衆、白清支部の北条 唯。
ま、俺みたいな天才がこの町に来たからあんたらには楽させてやるよ。」
生意気な笑いを浮かべる。
「はあ…ご忠告ありがとうございます」
遺憾ではあるが、油断していたのは事実だ。
曖昧な笑みを浮かべたまま、小さく頷きを返して彼女を見る。
どこか子どもっぽさを残したまま成長した少女、という印象が見受けられる。
御影や重藤に見て取れるような覚悟の類は見受けられなく、どこか未熟さを感じ取られた。
いや―――、それは私もか。
油断していたところを助けられたのでは未熟以前の問題だ。
どうやらここのところ気が抜けていたらしい、気を引き締めなければ。
「ええ、よろしくお願いしますね。天才様?」
斬鬼衆―――。
これが御影や重藤であれば、自分の素性をバラさずにスマートに事を終わらせていただろう。
個人的にこのふたりにはいい印象を持っていないが、そこの点は認めざるを得ない。
そして、こんな天狗にはならないだろう。
ふたりとも確かに才能はある。だがそれも訓練を積み重ねてのことだ。
彼女は―――、己の研磨というものを知らないらしい。
「私は、水ヶ瀬学園の佐々木優希と申します。以後、お見知りおきを」
―――どうして、こう私は斬鬼衆とは縁があるのだろうか。
それもあまり良くない方向で。
「おう、あんたみたいな凡人と違うからね、俺は。」
偉そうに、生意気に、人の気も知らずに笑う。
「大体あんたみたいなのがなぁ・・・。あっ・・・。」
(こいつ怪我してる・・・。その辺の地面も・・・。結構やったんだ・・・。)
表情が少し変わりつつ彼女の元に近づき膝を立てて座る。
鞄から治療道具――斬鬼衆支給の特別な物を取り出し、
無言で怪我の治療を始める。
「別に礼とかいらねーよ。その何だ・・・。
一般人の保護も仕事だし、それにー、ほらっ、何だ?
天才が凡人を放っておく訳にもいかねーからな。」
(止血・・・、こっちは打撲だな。火傷はなしと・・・。)
チラチラと彼女の顔を見つつ、目が会うと逸らす。
人付き合いに慣れていない感が伺える。
―――驚いた。
先ほどまであれだけ傍若無人な振る舞いをしていたというのに、
こちらの怪我を見つけて、黙って治療をしはじめた。
―――これも御影たちにはないところだった。
彼らが鋭利な刃だとすれば、彼女は盾なのだろうか。
もちろん、彼女の一面を少しだけ覗けただけで、それが彼女の本質なのかどうかは分からないが。
「ふふっ、それでは一応、ありがとうございます…とだけ言っておきましょう。
…初めてかもしれません。妖魔と戦いはじめてから、こうして誰かに手当てをしてもらうというのは」
微笑ましげに彼女の治療を見ながら、ふっと息を漏らす。
時折、こちらに視線を向けてくるが、人とのコミュニケーションが苦手なのだろうか?
成程、確かに彼女の性格であれば、なかなか人との付き合いは上手く行っていないのかもしれない。
なかなか面白い娘だな、とも思いつつ私は声をかけた。
「唯さん・・・でしたよね。
唯さんはもしかしたら看護師に向いてるのかもしれませんね」
「んっ?だから・・・、礼なんていらねーって・・・。」
(俺も礼なんて言われた事ねーけど・・・。)
その後は一度も彼女を見る事なく黙々と治療を続ける。
鏡を見たわけではないが、おそらく自分の頬は赤くなっていると思い。
「なっ!かかかか看護師ぃー?」
目をくりっと見開いて彼女を凝視する。
「そんなの向いてねーよ。それに俺は生まれながらの退魔士だし・・・。
ほれ、終わったぜ。俺の天才的な処置だから間違いはない。」
言うだけの事はあって、丁寧な処置が施され少し彼女との間を開ける。
「あんたこそフリーで退魔士だなんて酔狂だと思うけどな。
んま、それなりに理由があるんだろーけど?」
「ええ、治療の手際もいいですし、細かい点にも気付く観察眼もある。
きっとあなたにとって天職だと思いますけど」
まあ、そのコミュニケーション能力はどうにかした方がいいけれど、と心うちで呟く。
彼女の照れる顔を見ていると、ああやっぱりこの娘も普通の女の子なんだな、と気付く。
誰かに褒められたり、お礼を言われたり、それで喜ぶのは当然の感情だ。
御影たちはそれを抑えているところが見受けられる。
―――もちろん、感情を抑えることは退魔を続ける人間にとっては必須のことだ。
憎しみも、悲しみも、恐怖も、全て押さえ込んで戦いを続けなければ、生き残ることができない。
だけれども、それでも彼女は素敵に見えた。
素直に喜ぶこと。素直に照れること。それは人間として魅力があることだと思う。
「ええ、おかげさまで。しっかりと手当てされているようですね。
……え、私…ですか? そうですね。敵討ちのようなものですか」
妖魔に犯され、そしてしまいには命を落として亡くなった友人のことを話した。
今も心に残る彼女の笑顔―――。
もう二度とその笑顔が悲しみに塗りたくられないように、私は戦い続ける。
それがたとえ相手が人間であろうと、妖魔であろうと。
「まぁ、もしそっち方面だとしたら看護師じゃなくて医師になるけどな。」
自分は天才だからと付け加える。
――自分は天才じゃないといけないから、なのだが。
彼女の口から「敵討ち」と言う言葉を聞く。
自分も似たようなものだが・・・。
「そっか、友達がね・・・。
分らないよな、もし友達がいなければ変なモノ背負わずに済んだ。
でも、いたから今の力があんたにあるんだもんな。」
穏やかで、しっかりとした口調、揺ぎ無い意思。
優しさと勇気に満ちたその雰囲気は、
今は亡き、「天才退魔士」と呼ばれた兄と重なった。
「斬鬼衆じゃ私怨の為に戦うのは良くないし、やり難いから・・・。
あんたの場合フリーが良いのかもな。」
猫の様に変わり、見つめる瞳は悲しみの色に包まれていた。
「ええ―――。ですが、私は後悔していません。
むしろ…戦うことを選ばなかったら、私はずっと後悔していたかもしれません。
ああ、どうしてあの時あの子を助けることができなかったんだろうって」
もう誰かに悲しみを負わせたくない。
それは代償行為に過ぎないのかもしれない。偽善ですらないかもしれない。
けれど、それでもそれで誰かが救われるとしたならば、きっと友も喜んでくれるだろう、と。
「まあ、確かに組織に入って戦う、というのは私の性には合いませんから。
でも重要なのは、何のために戦うってことでしょうか。妖魔にだって苦痛はある。
殺される恐怖というものはある。それに対してどう折り合いをつけていくか、とか」
上手く言葉にはできない。
けれど、彼女が持つ悲哀の瞳はどこか慰めて欲しい子猫のようにも感じられる。
「―――貴女の過去に何があったかは知りません、ですが…。
貴女が何を目的として戦うか、それは貴女自身が決めることだと思います。
組織なんて関係ない。北条唯としての戦いをどう貴女が見据えていくかが大切ではないでしょうか」
ぽん、と軽く頭を撫でて。
知ったかぶりの言葉をやすやすと彼女にかけてしまう、自分の迂闊さを呪いながらそっと髪を梳く。
きっと、この娘にも何かあったのだろう。私の言葉に怒りを感じても良い。
けれど、このまま悲しみに暮れる彼女だけはなんとかしたい。
「それってよぅ・・・、彼女に対する罪悪感ってわけでもないけど・・・。
彼女の為に戦ってるのか?もういないのに。」
ふるふると首を横に振って話しを続ける。
「いや、責めてるわけじゃないんだ。
戦わなくても道はあったんじゃないかって、そう思っただけだから。」
自分でも何をいっているのか良く分らない。
でも話しを続けたい、そう思っただけで・・・。
「俺はそんな事考えてない・・・。殺らなきゃ殺られる。
殺られない為の最短距離を探すだけだ。俺には他に何もないしな。
逆に妖魔がいなくなっちまう事の方が怖いんだ。
そうしたら俺は存在する価値がないからな・・・。」
さらに言葉を続けようと睨むと彼女の手が頭に乗る。
普段なら激怒するはずなのに・・・、温かく懐かしい気持ちになる。
『ほらほら、いつまでも泣いてると怖い妖魔が来るぞ?
兄ちゃんが一緒だから大丈夫だ、よしよし・・・。』
いつかの、何かの光景が思い出される。
強くなる事。武勲を立てる事。その為の訓練。その為の罵倒。
それだけの毎日。兄を超えなければいけない。
天才的である事。長く続く退魔士の後継者である事。
弱さを捨てた、妹であった事も捨てた筈だった。
「無理だよぅ・・・、自分のとしての戦い方を探すなんて。
みんなの期待を裏切らないように・・・してるだけだもん。」
気が付くと知り合ったばかりの彼女に抱き付いていた。
隠していただけの心の弱さを曝け出して・・・。
―――この娘は、なんて悲しいのだろう。
私やおそらく御影たちが背負う悲しみとはまた種類が違う。
けれど、彼女は周りの期待に応えようとして周りからの重圧とも戦っているのだ。
「そんなことありませんよ。
退魔だけが存在価値とするような人間なんて誰一人いません。
貴女は北条唯。その名の通り、唯一無二の存在なんです。
だから、もっと自分に自信を持って生きてください―――。
……頑張らなくてもいい、あなたの思うがままに生きてみなさい?」
抱きついてくる彼女の身体を優しく受け止めながらそっと呟き、頭をなでた。
「弱さも悩みも抱えて生きるのが人間だと思います。
大丈夫、あなたにはあなたを信じる人がきっといるはずですよ。
……私も、応援していますから。あなたがあなたらしく生きれることを」
御影…は兎も角、重藤の方を思い浮かべる。
女性に対しては薄っぺらい態度だが、根っこは真面目で優しい人間だと…思う。
彼女の周りには仲間はいる。…きっと彼らならこの娘を支えていくことができるだろう。
「思うがまま・・・?」
言われた事も、考えた事すらない言葉。
夢などは初めから無かった。あったのは任務、ノルマ、目標。
「俺の事を信じてる人間・・・。いるのかな・・・。」
自信はない。出来れば今の支部の人達がそうである事を願うのみだ。
「あんたの腕は知らねーけどさ・・・、あんたって強いと思うぜ。
俺には真似できねーな・・・。」
抱きついたままで情けないと思いながらも、心地よさに甘えてしまう。
「もう少しこのままでいてもいいか?」
胸に顔を埋めたまま問い掛ける。
もう少しこの懐かしさに甘えていたいから。
「きっといますよ―――。少なくとも、私は信じています。
…なんて、出会ったばかりの人間に言われても困るんでしょうけれど」
曖昧な苦笑を漏らして首をかしげる。
こちらを信頼しろと行っても仕方がない。
けれど、彼女が元気でいられるなら、私は薄っぺらいと思われる言葉でも吐こう。
「―――ええ、私で宜しければ」
ただ、その一言だけを彼女の耳をくすぐるように囁いた。
この時間だけでも彼女には安らいでいてもらいたい。
―――まだ、これからだ。彼女の戦いも、私の戦いも。
【そろそろ締めで宜しいでしょうか?】
彼女の言葉一つ一つに黙って頷く。
この町に来てから色々な出会いや経験が起る。
それも運命の一つなのだろうか?
「あぁ、えっと・・・、ありがと・・・。」
そのままの姿勢でお礼を言う。
まともに顔など見られるわけもない。
「もし・・・、何かあったら手伝ってやるよ。
俺、天才だからなー、本当、あんたツイてるぜ。」
そう言いながら連絡先を告げる。
自分が教えて欲しいだけだが、聞くほどの余裕はまだない。
『学校に行ったら友達たくさんできるといいな!』
―――再び兄の言葉が響く。
彼女は友達の所為で悲しみを背負い、強くなった。
そして優しさを分け与える人間になっている。
(兄ちゃん、友達って悪くないかもね?)
天国の兄に心からメールを送信した。
【未熟なロールにお付き合いありがとう御座いました。】
【こちらはこれで〆させて頂きます。】
【お疲れ様でしたノシ】
「ええ、そのときはよろしくお願いしますね?
―――私も何かありましたら手伝いますので」
そう言ってメモ張から1ページ切り、携帯の電話番号を記入して手渡す。
別れもあればこうした新しい出会いもある―――。
私はこうして一日、一日を過ごしていく。
私の戦いがいつどこがゴールなのかは、予測も付かない。
けれど、こうして誰かと共に絆を育み、生きることができるのであれば、
きっとそのゴールも見えてくるのではないだろうか?
【それではこちらもこれで締めということで】
【こちらこそどうもお付き合いいただいてありがとうございました。それではおやすみなさいっ】
参加したいのですが、どうすれば?
>>1のリンク先の避難所板のほうで聞けばよいかと。
専用板でログを読むのをお勧めする。
質問は向こうでするのが基本。
一名無しからのアドバイスでした。
【名前】瑛老師
【年齢】年齢不詳(基本的外見年齢は20代後半)
【性別】女
【サイド】中立
【組織】白鳳医院
【サイズ】身長/176p 体重/63s B/99 W/62 H/99(ただし変動する)
【容姿】頭の両サイドでシニヨンに結った髪。目元に差した紅。チャイニーズ系の顔立ち。
【得意】NG以外なら何でも。基本的に攻めキャラ。
【能力】不老不滅、気功治療(房中術)、心霊手術。
【武器】無い。
【NG】スカ グロ
【弱点】攻撃力皆無(最大でも徳利を投げつける程度)。
白鳳医院から外に出れない。
【備考】瑛老師と言う名前と、腕前以外一切正体不明の女仙。
有り余る気と仙骨により、不老不死を通り越して不老不滅の肉体と精神を持つ。
彼女の営む白鳳医院は駆け込んできた怪我人・病人の背景を一切問わず治療を施し、
完治と共に容赦なく追い出すことで有名。
気功による治療術を極め、死んで居なければどんな状態だろうと元通りにできる、と
常日頃から豪語している。
とても凄い影響力を持つ偉い人のはずだが、患者にしてみれば飲んだくれセクハラエロ
女医以外の何者でもないという困ったおねいさん。
自分自身の肉体と精神をほぼ完璧にコントロールできるため、年齢身長体重スリーサイズ
はその日の気分で変わったりもする。
【空いてるみたいなんで待機】
【落ち。また今度よろしく】
【待機】
【願相手】
【よろしく】
【希望のシチュはある?】
【うーむ、特にこれが希望、ってのは無いです】
【もう少し早い時間は無理?】
【どわ、リロミス。失礼しました】
【じゃ選択肢を二つ出そう】
【1:怪我をして運び込まれたところを回復のためエロ治療】
【2:大分回復してきて、退院直前に気の補充のためエロ治療】
【どっちがいい?】
【では、2で・・・・気の補充というか、退院が延びそうですがw】
【了解】
【あ、最後に。人間?それとも妖魔?どっちでも行けるけど】
【んー、人間でいいんじゃないんですかね】
【妖魔だとややこしくなりそうですし】
(バンッと古い木造の扉を開けて、病室に)
身体の調子はどーだ、少年?
(赤のチャイナブラウスに黒いタイトなスカート)
(その上に白衣をはおった格好でベッドまで歩み寄ってくる)
【了解。じゃ早速】
(歩み寄ってきた院長を見やると、身体をベッドから起こし)
あ、先生……おかげ様ですっかり良くなりましたよ
…って、またスゴイ格好してますね……
(ド派手な老師の衣装を見てちょっと引いたり)
今日は結構、暑いからな。
・・・なんだよ、引くなよー。
(わざとらしく悲しげな顔になって科をつくってみせる)
あたしはほら、入院生活で色エロ不足してそーな少年のためを思ってだなー。
ほれ、ちょっと裾まくって傷跡見せろ。
(ベッドの縁に座り、指でちょいちょい、とまくるように支持)
【何時くらいまでイケる?】
もうそろそろ梅雨入りですけど……
まぁ、先生にはあんまり関係無さそうですね
(慣れているのか、科を見せられてもあまり気にせず)
そーですね、こんなボロ病院じゃ確かに色事は全く無いですね
え?傷跡……確か太股の内側切って滅茶苦茶血が出たんだっけな……
……見せるんですか?
(裾を捲くろうとしてちょっと躊躇う)
【3時くらいですかね……それまでに眠気が来たら凍結で】
・・・ちぇ。
あーあー、運ばれたての、あの頃の純情な少年はどこ行ったんかなー。
(科をつくるのをやめて、髪をかき上げながらぼやく)
当たり前だろ。
つか運ばれてきた時、散々見せといて今更もねーよ。ほれほれ。
(身を乗り出すと、胸の二つの膨らみが量感たっぷりに揺れた)
【3時な。解った】
勝手に純情って過大解釈しないで下さい……
むー、見せればいいんでしょうが、見せれば……
(パジャマを脱ぐと、ストライプのボクサーパンツが露になり)
確か…ここをガラスで切ったんだったかな?
(太股の付け根の辺りまで捲くり、傷跡を指差す、ほとんど治ったとは言え
塞がったばかりで、傷跡は生々しく残っており)
こ、これでいいんですか……?
(ちらちらと、チャイナブラウスの中で揺れる乳膨を横目で見つつ)
じゃ少年はあれか・・・エロいことに興味津々なのか。
(適当に答えながら、胸ポケットの眼鏡をかけて身体を屈めて)
医者に傷口見せなくてどーすんだっての。
ふんふん・・・。
(白くて細い指が、傷跡を何度も撫でる。太腿に、微かに吐息がかかった)
おう、上出来上出来。
じゃ・・・この傷消して、気を補充して少年は退院だ。
・・・ちゅっ・・・ちろっ・・・。
(舌先を出して、傷跡を舐め始める・・・)
…男は普通エロいんですよ
(顔を赤らめながらそう答えて)
ちょ、ちょっと……あんまり顔を近づけないで下さいって……
うわっ!?な、舐めないで下さいよッ……!?
(股間に女性の顔があるという非現実的な光景に興奮し
パンツの一部が盛り上がり始めてしまう)
よく言った。
本音を素直に言う子は先生好きだぞー・・・ん、ちゅっ・・・。
(過敏になっている傷口に口付け、舌を押し付けて掃く)
(皮膚が舌に引っ張られて、微かにむず痒いような、ぞわぞわした感覚が)
馬鹿、消毒だよ消毒・・・あんま動くな。
・・・いーからあたしに任せとけって・・・ちゅっ、れるっ・・・。
(そそり立ち始めたそれを気にすることなく、舌で舐め続けて)
・・・綺麗さっぱり、治してやっから、さ。
【ぐわー、やっぱり眠気が襲来してきました……】
【またの機会にお願い致しますー……面目無い】
【じゃ、一応明日解凍にしとく。
が、他に使用希望者がいたりそっちの都合が悪かったら延期で】
【見通しがつかないなら破棄でも構わないけど】
【明日なら余裕があるので恐らく大丈夫かと】
【それでは落ちます】
【おやすみ。また明日】
【待機。待たせた・・・かな?】
【早速、そっちからのレスで頼む】
【今見ました、途中お風呂で落ちるかもです】
そ、それで本当に傷が治るんですか……?
うぅっ…くすぐったい……
(敏感な傷跡を舐められて、僅かに身体を左右に揺らし)
それに…こんな光景他の人に見られたらマズイですって……
妖魔相手につくった傷には、結構効くんだよ・・・俵藤太の百足退治の話、知らねーのか?
(顔を上げて、悪戯っぽく笑う)
・・・それに、古傷ってのはどこで障るか解んねーんだよ。
ここに来た以上、入ってきた時に出来てた傷は、全部癒して返してやるのがあたしの仕事だ。
んっ・・・ちゅ、ちゅぷっ・・・。
(一瞬だけ真面目な顔になると、舌を動かし続けた)
(やがて・・・ぞわぞわした感覚が、熱を伴って身体の中に染み込んでくる)
(丁度、寒い冬の日に、冷え切った身体を湯船に沈めるような、心地よい感覚)
扉、閉めてっから大丈夫だっての・・・もっと声、出していいぜ。
悪い気は、全部出させて・・・ちゅ、ちゅむ・・・やっからよ。
【あいよ】
知らないですねー……
大体妖魔ってのがまだ信じ難い存在なんですけど
(だんだん舐められ続けていると、荒く息をし始め、汗まで掻き始める)
何だか…頭がぼーっとしてくるような……
何なんですかね、これ………
(夢見心地のとろんとした瞳になっていき、それに反するように
パンツの中のモノはさらに硬くそそり立ち)
ふぁっ……お、お願いします…・・・全部、出してください………
・・・でも、見ただろ?
あの夜、少年が見たもんが真実さ・・・受け入れるか、夢と思うかは少年次第だがな。
(髪をかきあげて、舐めるのを止める)
気、だよ。あたしは気を操る仙人なのさ。
少年も漫画やテレビで見たことくらいあんだろ・・・手を当てただけで病気が治るとか、
そーゆーのだよ。
・・・ちゅ・・・あむ、れろ・・・。
(つい、と硬くなってきたものの先端を撫でると、布越しに口付け、唾液を乗せた舌で
舐め上げ始めた)
こいつはその余波、ってとこだ。
良い気を注がれた少年の身体が、活性化して・・・悪い気を出そうとしてんだよ。
・・・ん・・・っちゅっ・・・ちゅ・・・。
気、ですか……?
確かに見たことはありますけど…何だかウソくさいのばっかりで……
うはぅッ!?
(敏感になっている先端を撫でられると、妙な声を上げ、身体をビクンっと跳ねさせる)
な、何コレ……スゴイ気持ち……いぃぃっ……!
(唾液と先端から溢れ出る先走りで、下着にはペニスの形がはっきり浮かび上がってしまい)
じゃ、こいつが始めて感じる本物、だ。
はむ・・・じゅる・・・じゅぷ・・・。
(口を開き、少しずつ、深く飲み込んでいく)
(唾液が染み込み、それを吸われるたびに淫靡な水音がした)
・・・ん、じゅるる・・・っ。
言ったろ、身体が活性化してるって・・・ぶっちゃけ、少年は今凄く敏感に
なってんのさ・・・と、いけね。
(一旦口を話して、トランクスを降ろす)
(ヘソにつくほどそりかえったそれを露出させた)
このまま出たら、汚れちまうからな・・・じゃ、続けるぜ。
・・・ちゅ・・・ちゅぷぷっ・・・ん、ふ・・・。
(目元をほんのり染めて、布越しでなく直に咥えこんで行く)
あっ…!うぁぁっ……!
(恥ずかしさから顔を覆っているが、院長が自らの股間にしゃぶりついて
いやらしい水音を立てているという状況を想像して、情けない声を上げ)
び、敏感ですか……こ、こういうことは初めてなんでよく分から…
あ……
(童貞であるということを告白して、さらに真っ赤に顔を染め)
今度は直に……?
あはぁぁッ……きっ、気持ち良いですぅ……ッ!
ちゅ・・・そっかそっか、気持ち良いか・・・そりゃ良かった。
(頬を赤らめながら、嬉しそうに微笑む)
いつでも、出していいかんな・・・ちゅっ、ちゅぷぷっ・・・ちゅずずずっ・・・。
んちゅ・・・ちゅるる・・・んっ・・・んっんっんっ・・・。
(ゆっくり根元飲み込み、先走りと唾液を啜りながら頭を引く)
(それを何度か繰り返すと、次第に頭を前後させる速度をあげていく)
・・・のんれ、ほひーか?
ほれとも・・・かほに、だひてもいーぞ・・・?
(咥えたまま、上目遣いに問いかけてくる)
あひぃぃッ!?すッ、吸い込まれるぅぅっ!
(ただでさえ敏感なペニス全体を熱い口内で刺激され、ひたすら悶え狂う)
の、飲んで下さいぃッ…悪い気の溜まった白いの……っ
で、出ちゃうぅっ……そんなしたらっ……!
あッ、あぁッ……!?……………ッッッ!!
(一瞬身体を仰け反らせると、鈴口から熱い迸りが噴き出る)
(入院生活でオナニーできなかったせいか、固形に近い精液大量に出されて)
んふ・・・。
(悶える少年の姿に、どこか満足げに目を細めて)
んっ、んっ・・・んっ・・・!
ずっ・・・じゅるるるるっ・・・!んんんんっ・・・!
(身体が仰け反るのに合わせて、頬をすぼませて勢いよく吸う)
(鈴口に舌を当て、ねっとりと濃い、量も多いそれを口の中に溜めていく)
・・・ん・・・ふ・・・ぢゅる・・・。
はぁ・・・ん、ぐ・・・こくっ、ごくっ・・・。
(鼻で息をして、唇でしめつけながら残り汁も搾り出す)
(顎をあげて口を開き、口で受け止めた黄ばんだ精液を見せ付けてから、喉を
ならして飲み干していく)
・・・ぷは・・・すっげ、濃い・・・。
(強い酒を飲んだ後のように、どこか陶然としながら呟いた)
(大きく息をする度に胸が上下して揺れ、それを見た途端再び股間が熱くなってくる)
んぐぅ……っ!?
(尿道に残った汁まで吸い出され、再び感じ始めてしまい
口から出たモノはザーメンと唾液にまみれ、てらてらと光っている)
す、すみません……2週間ほど出してなかったんで………
飲みづらくなかったですか……?
(心配そうな声で言うが、チャイナブラウスに覆われた爆乳を見て
再びペニスがむくり、と鎌首をもたげ始める)
飲みづらいに決まってんだろ、少年。
けど・・・ま、若いうちはこうでなくっちゃ、な。
(身体を起こすと、唇についた残滓をちろり、と舐め取る)
それに・・・少年のここは、まだ出したりねーって言ってるぜ。
・・・な、どうする・・・?
(にじりより、耳元に唇を寄せて)
(まだ薄い胸板に、餅の様に柔らかい感触が触れる)
おねいさんと、最後までしてみっか・・・?
ホント言うとな・・・これくらいの傷、治すだけなら別にそこまでしなくてもいーんだよ。
(もう殆ど、傷跡の見えない腿を撫でて)
だから・・・少年、こっから先は、拒否することだってできんだぜ・・・?
(ビンビンに勃起したままのモノを指差されて顔を赤らめ
胸板に重い二つの膨らみが当たると、ますます硬くなり)
さ、最後までって……もしかしてアレですか………?
(心臓が飛び出すくらいの緊張で、身体が震え出し)
お…お願いします……老師が嫌じゃなきゃ……
童貞……奪って下さい……
アレ以外にあるかよ、少年・・・。
(こつん、と額と額がぶつかるくらいの距離まで近づいて見つめ合う)
嫌なら最初っから、こんなこと言わねーっつーの。
・・・ちゅっ・・・。
(震える身体を落ち着かせようと、額に口づける)
いーんだな、最後までして・・・?
(両肩に手を置いて、ぐっ・・・と押し倒し寝かせていく)
【携帯からです……どうやら書き込みできなくなったっぽいです】
【これ以上スレ占有するのも悪いんで破棄します】
【いいところなんですが誠に申し訳無いです……】
【残念】
【また機会があったら、よろしくな】
【名前】 グリューネ・ディアナ
【年齢】 若輩者、150歳程度
【性別】 女
【サイド】 妖魔側
【組織】 薔薇同盟 →七妖会「日妖」
【サイズ】 身長158cm B 78/W 57/H 81。
【容姿】 金髪をなびかせる10代後半の少女。
西洋の深い黒のドレス、装飾されたティアラ、首にはペンダントを下げる。
凛とした中に、あどけなさを残しながらも大鎌と戦旗を手に戦場へと躍り出る。
【得意】 吸血シチュ、和姦、陵辱(するorされる)
【能力】 多大な血の消耗を伴う強い再生力。鎌より触手(陵辱時のみ)
【武器】 大鎌:デスサイズ
【NG】 スカトロ・グロ(リセット無しなら殺害されて脱落)
【弱点】 (純血なため)日光、首の切断、心臓への一撃→即死
銀系による痛打、血の枯渇→致命。流れ水を踏破不可
【備考】 高貴な血・地位を継ぐ夜の眷属の姫君だが
他の妖魔達が狩られている現状を愁い、同盟を離脱・七妖会へ。
妖魔を救うという自らの正義を信じて人間達へ戦いを挑む。
貴族の出のため世事に疎い。
【これから、よろしくお願いします】
【早速ですが待機しますねー】
【おちますノシ】
【暫く待機いたします。】
【誰も来ませんね。とりあえず、22:30まで。】
【今日は無理そうなので、落ちますね。】
【むむ、試みてもよろしいでしょうか?】
>>157 【ギリギリで見たのですが……まだ見てらっしゃるかな?】
【10分程待ってレスがないようでしたら、本落ちします。】
【見てますよー】
【長時間待機の後のようですが、大丈夫ですか?】
>>159 【1時過ぎくらいまででしたら、大丈夫です。】
【どのような内容にしましょうか?】
>>160 【そうですかー、お時間のほど了解です】
【内容の件ですが後2時間とちょっとですから、七妖会関係にするのが無難でしょうかねぇ】
【エロまでは難しそうですし、ここは同じ妖魔によるお話くらいでどうでしょう?】
>>161 【了解です。全く見ていない方というわけではないと取って宜しいでしょうか?<七妖の話ありきよりの推測ですが】
【では、適当に舞台を設置がてらロールを始めますので、暫くお待ちください。】
>>162 【ご推察どおりで、少しは目を通してますよー】
【まとめサイトくらいですけど】
新緑の季節も既に盛りを過ぎ、やがて来る夏への移り変わりが感じられる頃。
七妖の支部……ある場所へとやってきていた。
高台の辺鄙な外れの場所、工場のように広い敷地の中、
一本の大樹が茂る、緑に満たされた区画。
普通の人間の観点からすれば、この敷地の中の憩いの区画程度にしかとられないだろう。
だが、この場所は厳重に周囲が封鎖され、一般の人間は入る事が出来ない。
それどころか、一般人が気に留める事もないよう、人間払いの結界が敷かれている。
妖魔に関しては、その限りではなく、七妖の関係者がこの場所を訪れる事は少なくない。
それは、ここが人間の目を気にする必要のない数少ない場所のひとつでもあるからだ。
だが、この大樹が何であるかを知っている妖魔は多くはないだろう。
静かに、その木陰に腰を下すと、瞼裏を貫く陽光に眉を少しだけ顰めた。
【宜しくお願いします。】
【場所としては、妖魔だけが入れる場所、七妖の憩いの場みたいな所だと思ってください。】
ふと、木陰に腰を下ろしている静の背後の茂みが
葉擦れの音を立てたかと思うと
3メートル近くある大蜘蛛が八本の脚を前に繰り出し、姿を現す。
いきなりの事に驚き、草むらから飛び出した虫らを大蜘蛛は
その丸太ほどもある足で踏まないように気をつけながら進んでいく。
場の厳かな静寂に敬意を払い、壊さぬように
また、その雰囲気を懐かしむようにゆっくりと大樹に近づいていくと…
「ここは変わらんな…」
大きな頭を擡げ、ぎょろりとした目を大樹へ向けて一言呟いた。
【うーん、すみません…遅れました】
【了解しました、こちらこそ】
さわさわと頭上の葉擦れの音が心地よい。
陽光の溢れる緑の庭で、しばしのうたたねの如き暖かさを楽しんでいた時、
ふと、妖魔の気配を感じ、振り返った。
「あなたは……」
何度か、この場所で見かけた妖気だった。
もっとも、向こうはこちらを覚えているか、分からないが…。
「こんにちは、今日は休憩ですか?」
身体を支えて、大蜘蛛の方に向き直ると、座のまま会釈をし、微笑む。
【馴れない事がありましたら、遠慮なく仰ってください。】
「………」
暫し、目前の悠然と聳えている大樹へ眼は奪われていた。
そのため横から掛けられた鈴のような声にも僅かに反応が遅れる。
第三者の存在を認めると蜘蛛の眼だけをぎゅるっと、その声の方へ向けてたが…
「む……御前も、ここへ来られていたのか」
自分へ声を掛けた主が静だと知れると、体ごと向き直り
前足を器用に曲げて、礼を交わした。
「うむ…ここは、数少ない人の気配が無い場所
それ故、鈍重なわしでも気が休まるのでな」
礼を終えると下の草木を傷めないように、ゆっくりと体を地に下ろす。
【了解です】
「お久しぶりですね。
……確かに、貴方の姿では人前に身を晒すのは危険ですしね。」
微笑むと、彼の横に並び、座る。
「姿形が異なるというだけで、人と妖魔の溝は果てしなく深く、遠い……。
人と妖魔の境界線というのは、何処にあるのでしょうか?」
姿さえ同じようであれば、私のように人の雑踏の中に紛れ込む事も容易い妖魔もいる。
だが、それでも妖魔と人だ。
妖魔の中には人間を捕食する者もおり、人間の中には妖魔を狩る事を生業とする者もいる。
だが……異能を持つ人間と妖魔は何処が違うのだろう?
妖魔を滅ぼしたとて、彼ら異能の人間が今度は人間から狩られる存在となるのではないのか?
「危険?…ふふ」
気遣い言葉に、ついといった風に笑みを零してしまう。
蜘蛛の口にある牙をぶつけ震わせ…
「あぁ、確かに危険だな。わしの姿を不幸にも眼に入れてしまった人間がな。
…御前、そうわしを年寄りのように扱うで…」
愉快そうに力を誇示するように続けていた笑いも
不意に投げかけられた問いに止められてしまう。
どう答えればよいのかと少しの間、目を細め…
「御前、余計な事を考えるは御身の為にならぬ。
我々がすべき事は我らに仇なす人の排除のみ。
…いづれ人間が、この世より駆逐され、その姿を消せば
御前のその疑問も既に意味を成さぬ…だろう」
「あら、お年は関与ないかと。
私とて、この世界に落ちて経た年月で言えば、相当なものですよ?」
大蜘蛛の言葉に合わせ、冗談を返す。
しかし、それに続けられる言葉。
それを聞くに、穏やかな心に漣が立つ。
「……確かにそうかもしれませんが……。」
人間を駆逐する。
七妖に関与する妖魔にとっては当たり前の言葉。
だが、それはまだ、私の心に矢の様に突き刺さる。
「私は、貴方と違って人間を捕食したりする事がありませんから……
このような考えを持ってしまうのかもしれません。」
――― 私は弱い。
こうして、人間を駆逐するべき立場の中にありながら、
心の奥では、その一手に心の全てを投じる事に躊躇している。
このような私の何処に、妖魔と、そして人間とも共に在る事が出来るというのか。
自分が、酷く孤独な気がして、知れず、瞑目した瞼から落涙した。
「む、むむ……いや、別に思索が悪いとはな。
御前がそのように思慮を巡らしになられるは、深い知と豊かな心持ちが
あって事であってだな…むむぅ、いかんな。
わしのような死体の年寄りには、こういう時弱ってしまうわ…。」
頬を伝う涙を蜘蛛の眼に入れると、巨躯に似つかわしくない慌てようを見せた。
脚は落ち着きなく動き、どうすれば良いのかと視線も頼りなく泳がせてしまう。
――あぁ、全く如何してこういう時に若い者がおらんのだ。
小癪な退魔師如きなら何十人と来ようと、問題ないのが…。
と、一頻り視線を泳がせていると眼が半回転して
後ろの脚に掛けられた竹筒を捕らえる。
「おお!そうであった。御前、暫しお待ちを…
確か、ここへ土産が…」
「いえ……その、すみません。
私が一人で醜態を晒しているだけですから…」
そ、と蜘蛛の脚に触れ、首を振る。
どのような形であれ、目の前の老蜘蛛の気遣いは有難いものだった。
それだけに、根源での自分と、老の人間に対する差異と、
自分の心の曖昧さに、余計に情けなくなる。
「…はい? 土産…で御座いますか?」
「うむ…御前は白湯を好まれる、と小耳に挟んだのでな。
まぁ、土産といっても年寄りの冷や水で
道中に道草をして山に分け入り、岩清水を一つ竹筒へ汲んだだけのことだが…」
器用に脚に掛けた竹筒を足の先へ下ろしていき
前の脚へと渡らせ掛けて、静の目前へとそれを二つ提げてみせた。
「もう一つあるのは…
これは後に、ここの大樹にでも捧げてく貰えると助かる、」
ぎょろりと、また眼を大樹へと向け言う。
「それは……有難うございます」
瞑目したまま、目端を拭い、情けなき顔を直しながら答えた。
…老は知らないのだろう。
この大樹が、私の本当の姿であるという事を。
私という移せ身ではなく、この大樹が滅ぶ時、私はその存在を失う。
それが故に、私は七妖という場所に身を置いている。
あの時、幻也様に、人間によって切り倒されかけたこの大樹である身を救われた時から。
「きっと、大樹も喜びますわ」
微笑んで、二つの竹筒を受け取った。
筒からは山の清水の生きた、生命に溢れる匂いがした。
【次1レスくらいで〆させてください。】
「うん、うん…御前は、やはり笑っておられるのが似合う。
わしのような無骨者には特に良い目の保養になるわ。
ほれ、あの大樹も御前につられたのか、まるで笑っておられるじゃ。」
微笑に、ようやく安堵出来る。
生まれた余裕に前の足で、静の黒髪を梳くように撫でてやる事も出来た。
「しかし…御前よ。
今日はほんに穏やかな陽がのぼっておる事だな。
…いつか、人と妖魔もこのように木陰で寄り添う事が――っと、と…」
思わず気が緩んで、口が滑りそうになったのを慌てて止める。
それを言われぬうちに脚を曲げ、再び巨躯を下ろすと瞼を下ろした。
「…さて、年寄りが少し喋りすぎたわ。
わしは少し眠るとする。大樹に水をよろしく頼むな…。」
【わかりましたー】
「ふふ、お上手でいらっしゃいますね……老」
髪を梳かれ、くすぐったいと共に、安堵の感覚を覚える。
妖魔である自分には分からないが、もしも人間で言うお爺様という存在があれば、
このような感じなのだろうか。
「……あ……」
老蜘蛛の口から滑りかけた言葉。
押し止めはしたが、それはしっかりと耳に捕えていた。
その言葉が、自分が悩んでいる事を共に持つ妖魔もいるのかもしれない、と思えて、
胸の内が少しだけ晴れ渡った気がした。
「はい、必ずや。
ゆっくりとお休みになって下さいませ。
……私も、暫しご一緒致します。」
そう言うと、静かに蜘蛛の脚に頭を寄せ、身体の力を緩める。
―― やがて、日差しに心が落ち着き、己の精神が大樹のそれへと同一化していった。
穏やかな日差しと共に、安寧の彼方へと。
【こちらはこれで〆です。お付き合い有難うございました。】
【何か色々詰め込んでしまってすみません…エロールも出来ずに。】
【エロールでも雑談ロールでも、また機会があればお付き合い下さいm(_ _)m。】
【それでは、おやすみなさいませノシ】
【いやいや、相変わらずのお手並みのようで】
【お付き合いして頂き、感謝するばかりですー。うん】
【というか…こちらこそ貴女へのフォローが足りなくて、すみませんorz】
【はい。ぜひまたの機会をお願いしますー】
【こちらも、お休みなさいノシ】
【こんばんは、一時間ほど待機してみますね。】
【時間そんなにないのですが、雑談してみたいと思うのですが】
【見てましたw 普通の雑談が宜しければ雑談スレに移りますし、
雑談ロールであれば、どういうシチュにしましょうか?】
【お手数ですが戻りましょう】
【普通に雑談したいので】
【はい、分かりました〜】
古来より、この世界には様々な怪異が語り継がれている。
その殆どが科学の名によって解き明かされ、或いは否定されてきた。
が、
私は、この、どうやら人と違うらしい自分自身の目で見てしまった。
世界の、もう一つの姿を。
【テンプレお忘れですよ〜?】
(あ、既にあっちに張ってます)
【そうなのですか?】
【う〜ん、でもまぁ両方張っておいても良いのでは?念のために】
【まだ居るかな?個人的にも>187と同意見。あちらを知っている人ばかりとは
限らないし。】
【あ、急用なのでしょうか?】
【では余計な事かもしませんが、一応テンプレを貼っておきますね】
【もし変更点がある等で問題があったら、またその都度に改変すればいいと思いますしー】
名前】緑原遊美[ミドリハラ ユミ]
【年齢】18歳
【性別】女
【サイド】中立
【組織】無所属(大学の理工学部)
【サイズ】身長:157cm、体重:52kg、81/66/79
【容姿】革ジャンにGパン、スニーカー、茶髪をポニテに、時々グラサン
【得意】バイセクシャル(男でも女でも可)
【能力】不可視及びオーラ看破、暗視
【武器】特殊警棒、護身術、ハッキング
【NG】グロ、スカ
【弱点】現時点では僅かな能力しか目覚めておらず、殆ど常人と変わらない。
【備考】妖魔の血を引く(らしい)女子大生。ネット上では『seeker』と名乗るハッカーである。
夜毎遊び歩いてはいるが、最近妙なものが『視える』ようになって来た。
【名前】遠山喜一
【年齢】30歳(外見年齢は20代後半)
【性別】男
【サイド】中立(彼、彼の「親」ともに)
【組織】薔薇連盟(吸血鬼の組織)
【サイズ】身長188cm 体重78kg
【容姿】あまり目立たない色の背広だが小まめに綺麗にしてる。首には肌色のテープ(下は咬み傷)
【得意】特に無し
【能力】射撃、格闘、ナイフ術、蝙蝠操作、人間離れした怪力と身体能力、魔術の知識(知識だけ)、
麻痺の視線(魅力の視線はまだ無理)、逃走術
拳銃とナイフを組み合わせた格闘、最初は射撃戦闘だが
超スピードで間合いを詰めて打撃と組み合いに持ち込む。
【武器】高硬度セラミックナイフ 手錠
(仕事時)警察支給の銃
(勤務外)デザートイーグルの2丁拳銃(対妖魔弾、通常弾、ゴム弾、非常時は銀弾)
(アジト防衛時)ライフルや重火器
吸血鬼秘伝の魔除けを数個(妖気隠蔽や霊力防御など)
【NG】グロ。スカトロ。
【弱点】昼間でも行動可能だが昼間は身体能力が人間レベルに
銀系の物に触れられない(火傷する)
【備考】几帳面である程度のんき。
小さい頃に両親と死に別れて祖父と2人切りで暮らすがやがて死別。定時制卒業後警察官の道へ。
その後刑事となるが25歳の頃、強盗との銃撃戦で瀕死の重傷に。
その時偶々通りかかった現在の「親」であり恋人の有亜・フォルケンバーグに咬まれて吸血鬼になる。
最初は混乱したが「親」である彼女と組織のおかげで吸血鬼であることを受け入れる。
現在は彼女と自分の周りの環境を自分の出来る範囲で良くしようと尽力してる。
又、刑事の仕事を利用して妖魔関係の情報を
組織に流し暴れすぎて目立つ妖魔の対応や掟破りの吸血鬼の探索、戦闘などをこなす。
(刑事の仕事も真面目で回りからある程度信頼されてる)
吸血鬼になって5年の間にある程度の退魔士の知識があり独特の考え方で接する。
食事である吸血は組織の方針である為、緊急時以外の「狩り」は禁止。
組織経由の輸血パックですます。
この時、血の料金を取られる為金に五月蝿いが退魔士が金で妖魔を狩るのが気に入らない。
(善悪無視で知り合いが「売られた」事があった為)
最近、ある上位吸血鬼の血を吸い体が微妙に変化中。
【好きな食べ物】ラーメンだったが吸血鬼化のおかげで味覚消失
【嫌いな食べ物】特に無し
【好きなこと】同僚や彼女とのおしゃべり、彼女と一諸に居ること、残業(残業代がつけばだが)
【嫌いなこと】犯罪(でもうちの組織は・・・・)、麻薬、いじめ 、馬鹿の後始末
【趣味】月光浴・アニメ鑑賞(彼女の趣味)
【好きな異性のタイプ】優しい人、明るい人
【嫌いな異性のタイプ】サド、高慢、いじめをする人、金使いのあらい人
【特性傾向】 遠距離から高速接近系、技術系
【血液型】B型
【誕生日】11月11日
【seekerさんまだ居る?俺とやりませんか?】
【どうやらもう居ないみたいだ】
【野郎の待機はアレですがしばらく待機してから消えます】
>190
【新しいキャラクターを模索中なんですが】
【もし、よろしければ、お相手して欲しいです】
【お願い出来ますか?】
【あ、来てくれた】
【いいですよ。まずはおおざっぱですが退魔士ですか?妖魔ですか?】
【ありがとうございます】
【退魔師側です】
【ここまでは考えました】
【まだ設定が甘いですが、お願いします】
【名前】姫之木 優香(ロゼッタ)
【年齢】18歳(の時に死亡)
【性別】女性
【サイド】退魔師側
【組織】カトリック系の協会
【身長】156cm
【体重】48kg
【スリーサイズ】85/56/83
【容姿】シスター服(ベール有)、金髪
【得意】料理に洗濯に子ども達の世話、とか
【能力】神聖魔法 剣技 暴走
【武器】拳銃、刀、投げナイフ
【NG】スカトロ
【弱点】一般的な吸血鬼の弱点
【備考】携帯からの参加です。
名無しさんも気軽に声を掛けて下さいね!
【設定】
日光が大嫌いで、流れる水の上を渡れず、
銀で傷つけられれば容易には治らず、木の杭で心臓を打ちぬかれれば滅ぶ。
……と、一般的な吸血鬼の弱点を持ちますが、
十字架等、キリスト教的な物は効きません。
【設定】
教会の裏組織の一員。
各地に散らばった妖魔――特に吸血鬼を狩る者。
普段は大人しいが、魔に対しては容赦をしない。
……が、実は自分もヴァンパイア。
過去に血を吸われ、身体が魔に蝕まれている。
【なるほど。退魔士にして吸血鬼ですか】
【何故退魔士をしてるのか? 両親はどうしたのか?どうして咬まれてのか?とかあったらキャラが深まりそう】
【でもそれは後日考えるとして今回は遭遇して小競り合いですかね?】
>195
【ご、ごめんなさい…】
【素で間違ってました】
【訂正しておきます…orz】
>196
【ふむふむ、参考になります〜】
【はい、今日はそんな感じの流れでお願いします〜】
>>195 【あ、良く見たら確かに(汗 】
【武器は資料とか参考にしてある程度イメージ出来てると戦闘の時にイメージが広がるよ】
【じゃあ先行はこちらで】
【文を考えますので出来たら乗せます。しばしお待ちを】
>199
【わかりました〜】
【資料用意してみます】
【それでは、宜しくお願いします〜】
【そちらからお願い出来ますか?】
【はい、こちらから行きます】
(それはそれとして、急用で離席してしまいすいませんでした。今回は引き下がります)
今夜も下級妖魔の群れを纏めて相手にし逃げた奴を1匹1匹虱潰しに潰し終わる。
最近はそんなことが連続で続く毎日。
幸い荒事が続いた為、連盟から戦闘用にショットガンの携帯が許されたのが救いだが。
「ああ、裏の仕事も休みがあればな・・・・(嘆息)」
例の麻薬の調査に加え1定間隔での突発的な妖魔の出現。
ああ、毎晩毎晩こう忙しくちゃ体が持たないよ。
昼は昼で署の人間に怪しまれないようにズル休みは厳禁だし。
いかんいかん。思考がただの愚痴になってきた。
意識を締め直す。妖魔の生き残りが居ないかどうか再度妖気を探す。
「む…、一体誰が……?」
下級妖魔の反応が、一つずつ、無くなっているのに気づき、
街の中を徘徊した。
そして、「何か」を察知し、そちらへ向かう。
「何か強い気を感じたと思ったら…」
ビルの上からすっと降りる人影が一つ。
スッと地面に着地し、男を見つめた。
「奇遇ですね、こんな場所でお会い出来るだなんて」
シスター服に身を包んだその女性は、ベールを投げ捨て、
あたかも、知り合いのように、親しげに笑みを向けた。
―――そして、ゆっくりと投げナイフを両手に構える。
「吸血鬼サマ、ですよね……?」
「誰だ!!」
ビルから誰か来た。俺は銃口を相手に向ける。
シスター服・・・・20代くらいの金髪少女か・・・
「こんな場所だから出会った・・・んだろうな」
実は過去に退魔士には会ったがキリスト系に会ったのはこれが初めてだったり。
噂とかでは聞いたが・・・ふうん・・・・親しげな笑みだがナイフがなきゃあなあ・・・
「違うと言いたいところだが・・・・否定したくても否定しょうもない」
投げやりに返す。退魔士特有の霊気を感じさせずにここまで近づくとは・・・
「ここらの妖魔は俺が狩った。吸血鬼が退魔行するのって変か?」
銃を向けられ、若干顔色を変えた。
「あはは、正直なヒトは好きよ?」
ナイフを十字に構え、銃撃に備える。
(まぁ…、私も吸血鬼だからね…)
(同族だから、探し易いったりゃありゃしないわ)
ブツブツと独り言を溢す。
「ん…?」
「そうですね…、あなたが変なのならば、私も同じく変、に、なっちゃうわ」
穏やかに微笑んだ。
が、すぐに真面目な顔に戻り
「あなたとて、私を逃がしたりはしますか?」
「最も、私は逃がすつもりはごさいませんが…」
「最近、妙に俺の回りの状況がおかしい。
この上変に嘘吐いて状況を複雑にしたくない」
何かぶつぶつ言ってるが吸血鬼とキリスト系の退魔士。
このままでは終わらな・・・ん?体が熱い・・・・アイツから変な気が・・・
「吸血鬼と退魔士は表と裏・・・・俺自身はこんな考えは嫌いなんだがな」
思わず自嘲。幾ら妖魔を狩っても回りがそれを評価してくれるかは別。
「いや、俺なら逃がすし同僚に秘密に出来るなら共闘もかまわないが?
あんたところの組織が許してくれるならだが?」
「一応確認するが・・・・・輸血パックで命をつなぐ吸血鬼も見逃さないのか?」
俺以外にも人間を襲うのをよしとしない奴は居る。
もしこいつが吸血鬼そのものの存在を許さないのなら・・・・
・・・・・放置できん。
「悪いけど却下よ」
満面の笑みで拒否をしてみる。
「あなた、輸血パックだけで我慢出来ます?」
「無理でしょう?……そんなものよ、きっと」
くすくすと笑みを溢す。
瞳には若干危険な色が宿った。
「私の体は日々魔に染まっているの」
「ウフフ、私は全ての吸血鬼を滅ぼし、そして最後に自らを滅ぼすんだわ」
「―――さぁ、行くわよッッ!」
地を蹴り、宙に浮きながらナイフを5本投げた。
「ち、決裂か、やっぱ。」
投擲してきたナイフをかわし狙いは二の次で連射。
彼女の台詞を吟味する間も無く・・・・この状況でしてるほど間抜けでもないが。
俺は牽制で撃つのを止めずに横走りで真横へ走る。
「あんたの同僚、いやあんたを利用してる奴らは誰もお前を気遣ってくれないのか!」
戦闘で意識が高揚して彼女の気、いや妖気が大きくなった。今ならわかる。
彼女は・・・・糞、俺とは別の意味で組織に飼われてるのかよ。
「キリスト関係に会うのはあんたが始めてだが・・・いびられてるのか?」
付近の瓦礫の間を飛び回りながら彼女を振り切ろうと・・・糞、喰らいついて来る!
迫りくる銃弾を交わす…が、一発程足に当たってしまった。
「……!」
そのまま、地面に倒れた。
「私は利用なんかされてません……」
足の傷を再生させ、立ち上がった。
「私、狂信者だから」
「私は私の意思で妖魔を狩る…、あなたとて、例からは逃れられないわ!」
逃げる相手を、銃を構えて追い掛けた。
「逃げる? 俺も昔は逃げようとした…、俺は自分の運命と向き合ってるつもりだがな!」
必死に逃走しつつも心が冷めていくのが自覚できた。
似たもの同士。そんな言葉が頭に浮かんだ。
アイツも生前は敬虔な信者だったんだろう。だが吸血鬼になってそれが狂った。
吸血鬼になること。
人間を止める事。
それは人生を大きく狂わせる・・・・だが!
「お前と俺は似てるな。でも似てない所があるな」
チ、同じ吸血鬼の身体能力なら完全に逃げ切るのは・・・・・なら・・・
俺は斜辺物に身を隠し連射。向こうが斜辺物に隠れるのを目視しショットガンに弾を装填する。
「来いよ!俺とお前、どちらが正しいか証明してやるよ!」
俺は懐のデザートイーグルのマガジンを銀弾のに変えた。
訂正:「今は自分の運命に向き合ってるつもりだがな!」
「私とて、逃げてはいません…」
同じ吸血鬼故、膠着状態が続く。
「どちらが正しいかなんて、決まっているじゃありませんか…?」
ゆっくりと、刀を持ち、近づく。
「消えなさい…吸血鬼!」
ショットガンに気づく事なく踏み込み、接近した。
「はぁぁぁぁッ!」
刀を抜き、一閃を放つ。
向こうも銃を持ち銀弾の可能性があった為お互い迂闊に動けないと思った。
斜辺物に隠れながらの撃ち合いそのまま膠着状態に。
俺は妖気を隠しながら・・・つもりだった。
背後から背中が逆立つような殺気。
『消えなさい…吸血鬼!』
何時の間に近づいて!
彼女の必殺の斬撃が俺を襲う!
「ザン!」
刀を受けようとしたショットガン諸共俺の体を切り裂いた。倒れる俺。
痛みで薄れる意識の中、彼女の二撃目の前に懐のデザートイーグルを・・・・
「……………!」
ショットガンを巻き込みながら、相手の体を斬りつけた。
斬撃の勢いの大部分をショットガンで殺されたため、
恐らく相手へのダメージは皆無だろう。
倒れる相手を見て、余裕着々といった様子で、向かう。
無論、懐にあるソレに気づく事なく……。
「さぁ…、懺悔は済みましたか?」
刀を上段に構え、
「終わりですっ!」
斬撃を再び加えようとする頃、
デザートイーグルが見えた!!
「!!」
一瞬、攻撃をためらってしまう。
「PAN!PAN!」
俺は冷静に・・・なんて出来ればカッコよかったんだろうがこの時必死の形相だったろうな。
彼女に銃口を向け腹に2発。体をくの字にしながら倒れ伏す彼女。
俺はすぐさま起きあがり
「PAN!PAN!PAN!PAN!」
両手両足にそれぞれ1発づつ撃ち込む。銀弾での攻撃。これでしばらくは動けんだろう。
「ふぅ・・・・・どうする?頭か心臓に撃ち込んだらお前さんの第二の人生に幕が下りるが?」
淡々と事実あ告げる。吸血鬼でも銀弾を急所を連射すれば上級以外ならそれで終わるだろう。
「どうする?このまま死ぬかまだ生きたいか?このまま誰にも理解されずに死にたいか?」
「あっ、……!!」
撃たれた。
そして激痛を感じる。
「くっ……、……」
何故か力が入らない。
傷が再生しない。
「これは…、銀弾…、あぁっ、きゃぁ……!」
なす術なく、手足を撃ち抜かれ、地に倒れた。
「ぁ…、ぁ……」
自然と涙が溢れ落ちた。
「止め…て、うぁ……」
かすれるような小さな声で、そう告げた。
『止め…て、うぁ……』
・・・・・・正直もっと威厳と言うか気位と言うか何というか・・・
そんな台詞を期待してた・・・いや、自分でも気づいてなかったと言うか・・・なんて言えばいいんだ?
「・・・・ふざけるな!(蹴り)」
「悪党も居る(げし)外道も居る(げし)でも俺や(げし)お前みたいに(げし)自分の(げし)
生き方に(げし)苦しんで(げし)居る奴も居ると(げし)知ってるくせに(げし)
それなのに(げし)神様面して(げし)救済の(げし)変わりに(げし)殺して(げし)
きたお前が(げし)自分の番に(げし)なって(げし)それかよ(げし)ふざけるな!(げし!)」
ああ、冷めたもう一人の俺が冷静に言う。「最低だな」と
漫画の主人公ならここで優しく許すんだろうが・・・
蹴りをやめて改めて彼女を見る。
まだ若い。本来なら日の光の中で花と戯れてた方が似合う年齢なんだろう・・・
俺の蹴りで傷だらけで醜く・・・・うう・・・ああ、俺は何てこと・・・
「ご、ごめん」
思わずそうつぶやく。冷静になれ俺。もういい。とっととこの場を去れ俺。
【そろそろ次か次の次で〆ましょう】
【ごめん。他の人みたいに上手くいかなかった】
訂正【そろそろ次か次の次で〆ます】
【しめましょうって・・・俺は何様だ?(激鬱】
「んぐ…、あぁっ!」
手足が満足に動かない中、足蹴にされてしまう。
「んん…、くぅ…、あぁっ、ごめん、なさいっ!」
吸血鬼の繰り出す蹴り。
全力かは定かではないが、痛い、とにかく痛い。
顔を涙でくしゃくしゃにしながら、惨めにものたうち回った。
「はぁ……、はぁ……」
蹴りが止み、そして相手を見た。
聞こえてくる、謝罪の言葉。
「私こそ、ごめんなさい…」
ふらふらと立ち上がりながら言う。
「……許されるのなら、今度は、戦わずに、普通に会いたいものですね」
服はボロボロで、顔は砂で汚れているが、
それでも、満面の笑みを向けた。
「じゃあ、私はこれで。」
「また、何処かで会いましょう…」
そういって、消えて行くのであった。
【お付き合いいただき、ありがとうございました〜】
【こちらこそ不慣れですいませんでした…】
【これで〆にしますね、本当にありがとうございました】
『私こそ、ごめんなさい…』
・・・・・・死人なのに胃が重い。
この状況で謝罪されるくらいならまだ罵倒された方がマシだ。
正確に言えばまだ戦闘中なのに、相手は敵なのに罪悪感が・・・
『……許されるのなら、今度は、戦わずに、普通に会いたいものですね』
「ああ、俺も普通に会って色々語り合いたい」
偽らざる本音。でも最初からそれが出来たらこんなことにはならない。
彼女が笑う。ボロボロで砂で汚れてるのに満面の笑顔で・・・
・・・・・ごめん・・・
『じゃあ、私はこれで。』
『また、何処かで会いましょう…』
「・・・・ああ、又な・・・・」
そう自分に言い聞かすように言うと俺もその場を去った。割り切れない何かを胸に残しながら。
【こちらこそお付き合いいただきありがとうございました】
【いえいえ、不慣れにしては上手かったですよ。俺の方が・・・】
【こちらもこれで〆。ありがとうございました】
幸原尚は夢を見ていた。
彼女のトラウマ。男性嫌いになった時のこと。
自殺すら考えたあの頃の記憶。
全ては遠く、彼女に今転機が訪れていた。
金髪の青年。冷たい青年。
彼女が唯一触れても平気な青年。
幸原・・・
彼が優しく呼びかける。
【雑談スレから。幸原さん待ちです】
【遅れてすいません、迷いました・・・orz】
あの時の記憶が蘇る。
『化け物。』
『妖怪。』
アイツらがあたしを囲んでいる。
腹を蹴られ、拳大の石を投げられる。
あの時、何回自殺しようと思ったか。
何回カッターで手首を切ったか。
覚えていない。
過去のことだ、すべて。
「ぅん・・・・御影?」
いつの間にか、御影が目の前にいた。
「あれ、なんでだ?」
彼――御影義虎が彼女を抱きしめる。
唐突に、前触れもなく。
彼が言う。
おまえが好きだ、と。
抱きしめて、耳元で囁く。
まるで彼らしくない態度。
彼らしくない言葉。
何の脈絡も無く抱きしめられる。
「ぅあっ、ど、どしたの?」
頬が熱くなる。
「・・・・・・・はい?」
意味が理解できなかった。
「え、な、お、すす・・・・・・好き?
や、ってか・・・え?好き?エルオーブイイーの、好き?」
頭が混乱してきましたですはい。
オイオイ、らしくねぇぜニイチャン。
あれですか?ラブゲッチューもといLOVE GET YOU!のラブですか?
あーたそんなむすーっとしててそんなこと考えてたんですかオイ。
むっつりスケベですかコノヤロー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「あ、あのさ、耳に・・・息が当たっててすっごくくすぐったいのですが。
といいますか、御影らしくないですよ、ちょっと。」
・・・嫌か?
彼が彼女の顔を見つめて言う。
何処か悲しげに。
指が彼女の頬を撫でて、唇に触れる。
お前が好きだ。
もう一度彼は言った。
悲しげな顔をされて、思わず
「ちがっごめん全然嫌じゃない!」
と、言い切ってしまった。
御影の指が肌を滑りながら移動する。
唇に触られ、何故か小さく声が漏れた。
「あ、あたしも好き・・・だよ。
でも、こっちの方の好きかどうかは・・・・。」
後半の声はとても小さく、独り言の様になってしまった。
まだ御影はあたしを真っ直ぐ見つめている。
思わず目を逸らした。
目を逸らす彼女を、もう一度抱きしめる。
構わない、と彼は言った。
首筋に唇を押し付ける。
背中に回した腕が動く。
指が背中を撫でる。
指が臀部を撫でる。
優しくも官能的に指が彼女を撫で回す。
御影が首筋に顔をうずめた。
何かと思っていたら
「ひゃあっ!?く、くすぐったいってばみか・・きゃぅ!」
お尻や背中を撫でられ驚いて声をあげる。
身をよじってくすぐったさを紛らわそうとするが、余計に増していく。
その内、くすぐったさじゃないものを感じるようになってきた。
「やんっ、くすぐった・・・ぁあっ!ちょ・・なんか変・・あんっ、きゃあ!」
身体が必要以上に熱い。
しかも、下の方が濡れてきてる気がする。
我慢しようと御影に強く抱きつく。
跳ね回る身体を抱きしめて、押さえ込む。
首を舐めて、強く吸う。
尻を優しく撫でまわす。
くすぐったさが官能に変わるまで、愛撫を続ける。
抱きついてくる彼女の顎に指をかけて、こちらを向かせる。
幸原・・・・彼の眼が何かを訴えていた。
クイっと引き寄せ、唇を重ねた。
「んやぁっ!な、めないでよ・・・イッ!」
強く吸われ、痛みを感じる。
でも、その痛みは次の瞬間気持ち良いものに変わっていた。
「お、尻・・・気持ちい・・・じゃなくてっ!ぅあっ・・ひ!」
御影の触る所すべてが気持ち良い。
が、この自分の感じている声が聞きたくなくて声を抑える。
「恥ずかし・・・んぅっ、すぎるっ!・・・はぁっ!」
と、御影に顎を持ち上げられる。
これってもしかして・・・と頭の隅で思うが息が上がるだけで拒否できない。
まるで少女漫画だな、とぼやける頭で御影を見つめる。
顔が近づいて、唇に柔らかいものを押し付けられた。
反射的に口をぎゅっと閉じてしまう。
――彼女の声に、艶が混じる。
閉じられた唇を抉じ開けるように、舌先で唇を舐める。
白い歯と歯茎を、濃厚に舐め回す。
唇を離して、ゆっくりと彼女を押し倒す。
いつも彼女が使用しているベッドの上だ。
彼が、彼女の服を剥いで行く。
丁寧に脱がしてゆく。
やがて彼女は下着だけの姿になった。
「んぅ・・ぁ・・・くちゅ・・・んっ」
口の中を隅々まで犯される。
いつの間にか、自分も舌を出して求めていた。
唇が離れ、荒く息をしながら少し惜しむような表情になる。
押し倒され、ほぼ力が抜けた身体を横たわらせた。
体中が火照っている。
衣服を脱がされるのが分かり、すごく恥ずかしい。
下着だけになると、身体を隠そうと身体を抱きしめる。
「見ない・・・で、よぉっ・・・。」
舌が差し出される。
舌を絡める。
ざらざらと絡める。
唾液を啜る。
味わう。
彼は優しく笑った。
綺麗だ、と彼は言う。
下着も優しく脱がせてゆく。
乳房に触れ、身体中に触れて撫でまわす。
唇で身体中にキスの雨を降らせる。
「・・・・・スケベ。」
否定するのが面倒になってきた。
下着もあっさりと脱がされてしまう。
胸の膨らみに触られビクッと震える。
体中を撫で回され、キスをされ、その度に声が漏れ、身体が反応する。
「ひゃん・・やっ、ぅあっ・・あっ・・・はああっ!」
彼女の罵倒に彼は笑った。
こんな風に笑う青年ではないのに。
愛撫に反応する。
彼女の嬌声が響く。
割れ目を指で撫でる。
いいか?
彼が問う。
あれ?
何か違和感。
こんな風に笑ったっけ?
しかし、次々と快感が襲ってきて疑問が頭から吹っ飛ぶ。
「やんっ、ひぃ・・・ぁあっ!」
「きゃあっ!?そ、ソコ触っちゃ・・っあ!」
思わぬ所を触られ一気に快感が押し寄せる。
「あっ・・だ・・・ダメじゃ、ない・・・よ。」
恥ずかしさのあまりに顔を手で覆う。
同意を得た彼は、彼女の脚を押し開いて――
――目覚ましが鳴った。
そして彼女は覚醒する。
夢の残滓を引き摺って。
【やはり最後までするのはなんというか】
【これで終了します、お相手感謝ノシ】
【まぁ、夢落ちですけどねw】
【ありがとうございました、おやすみなさいノシ】
いやいや身体を起こし、ベッドの上に座り込む。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
唇に手を当てる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
自分の胸に触る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
そのままの状態で数秒経過。
「・・・・・・なんかめちゃくちゃエロい夢を見たような。」
独り言である。
「欲求不満か?」
独り言である。つまり自問自答。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
10秒ほど静止。
「・・・・・早く恐怖症治さないとなぁ・・・・こういう時困る。」
動機が不純である。
母親「尚ー!いいかげん起きなさい!!」
「・・・ふぁ〜い、起きまふよ〜。」
学校に行かないと。
佐々木優希は夢を見ていた。
全てが上手くいった、そんな有り得ない夢。
彼女の周りの全てが幸せになり、誰もが笑っているそんな夢。
彼女は全裸で暖かい海の中を泳いでいた。
何も装備しなくとも、息は続いた。
極彩色の魚の群れが乱舞して、彼女の眼を愉しませる。
後顧の憂いは微塵もなく、思う存分この楽園を満喫していた。
蕩けるような夢。
優しい悪夢にも、そんな似た夢。
【雑談スレからです
(……気持ち良い)
なぜ裸なのか、なぜ息が続くのか、小さな疑問は感じた。
けれど、目の前にある楽園にその疑問は自然と消滅していく。
(ああ―――、こんな綺麗な世界は見たことがない)
いつも自分が身を置くは血と殺意に塗れた世界。
ここにいるだけで、心は安らぎ、自然とその世界に溶けてしまいそうだった。
楽園の全てが彼女を優しく包む。
やがて海からあがる。
木陰の下、デッキチェアに座る。
優しい木漏れ日を浴びて、暖かい風を浴びる。
何も纏わず自然な姿で、今までの戦いで浴びた返り血を、
ゆっくりと禊ぐかのように。
優希さん・・・
誰かが呼ぶ。
彼女の知っている誰かに似た声で。
(ここはなんて優しい世界なんだろう―――)
木漏れ日が眩しく、手でそれを遮りながら目を細める。
何かを殺すこともなく、何かに傷つけられることもない、穏やかな世界。
ずっとここにいたいとは思わない。自分には誓いがあるのだから。
けれど、今だけは―――
(今だけは、このまま世界に身を委ねてもいいですよね…)
普段なら曝け出すことすらない乳房や淡い茂みも何の抵抗もなくその木漏れ日に照らしていた。
まるで、この世界に祝福されているかのように。
「……だれ……?」
聞き覚えのある言葉に私は振り向いた―――。
振り返った先に居たのは――
「優希さん、ありがとう。貴女に会えてよかった・・・・」
――哀しき宿命を背負った半妖の少年。
けれど、その顔は今、ひどく穏やかだった。
彼、だけではない。
どこからか現れる、見知った人たち。
全員が優しい顔をしていて、彼女を祝福している。
誰かが言う。貴女を愛していると。
いつの間にか全員が全裸の優希を囲み、手を伸ばして触れる。
みんな貴女を愛している。それを証明すると言った。
乳房に触れる。優しく揉んで、痛みを感じる寸前ギリギリまで揉みしだく。
誰かが優しく乳首を舐める。舐めて吸う。軽く噛む。
「 」
友だと誓った少年の名を呼ぶ。―――けれど、その名を発音することができない。
どうしてだろう。でも、そんなことはどうでもいいのかもしれない。
彼はこんなにも穏やかに微笑んでいるのだから。
「はぁ…んっ……! そんなに…むねっ、揉まないでくださいっ…!!」
誰もを知っているはずなのに、誰の名も呼ぶことが出来ない。
それでも嬉しかった。ひとりではないのだと、優しく激しい愛撫がそれを物語っていた。
「んっ…! ひゃっん!? はぁ―――、ひぐっ!
だ、だめぇ…そんなに乳首を弄られたらっ…!! 感じちゃいますっ!」
乳房は柔らかくその形を変え、自由奔放に弾む。
そして、乳首はいやらしくぴんっと硬く尖り、もっと触れられることを望む。
もっと揉んで、もっと愛して、と言わんばかりに。
ぐにぐにと乳房が揉まれ、形を変えてゆく。
一人によってではなく、大勢の手によってだ。
ピンと尖った乳首に何枚も舌が這って、ペロペロと味わうように舐める。
左右の乳首が交互に吸われる。強く弱く緩急をつけて。
脇腹を撫でる無数の指。
少年のものもあれば少女のものもある。
全員が優しく愛撫している。
誰かが柔肌を舐める。
彼女の傷を癒そうとするかのように。
唇が寄せられて、沢山の舌が乱舞する。
やがて優しく脚が開かれる。
太股にも舌が這う。
優しく丁寧に、そして愛するように。
「はっ…やぁぁ…! むねっ、…おっぱいがっ…いいっ…!
ひゃぁぁんっ!! 気持ち良い、ですっ…ふぁ…! ちくびもぉっ…」
絶え間なく乳首や乳房に襲い掛かる甘い刺激に、ただ身を任せていた。
淫らに喘いでいることも自覚することができず、指や舌の感触に蕩ける声を奏でる。
肌は愛撫され敏感になっているのか、少し触れられるだけでも心地よさを感じる。
「はぅ…んぁ! は…。 もっと……もっと、舐めて…愛して、下さい…っ」
脚を閉じることもなく、むしろ来る刺激を求めるように自ら脚を広げる。
抵抗もせずに現れたそこは喜びによって潤いを帯びていた。
開かれた脚の中央に位置する花弁。
みんなで優希を担ぎ上げて、蕩けた秘裂を誰かが指で開いて、
みんなに見せる。みんなが綺麗だと賞賛する。
誰かが舌を伸ばして舐める。次々とみんなが蜂か蝶のように群がる。
舌で舐めて、溢れる蜜を啜る。
尻の窄まりに誰かが触れる。
花弁を舐められなかったものたちが、そこへ群がる。
舌で舐めて解してゆく。
「あ…は、はずかしい…。恥ずかしいのに…」
みんなに見られているこの状況で、羞恥心に身体は震える。
秘裂からはさらに愛液が溢れ、舐められれば舐められるほど
お漏らしのように、滾々と湧き上がってくる。
「ひぅ…!お、お尻も…? ひぁぁぁっ!! そ、そこっ…
あっ、あぁっ…あそこも、お尻もっ…ふぁぅぅっ…!」
丁寧に舐め解された窄まりは、ひくひくと戦慄き、歓喜する。
指が、舌が、蠢くたびに触れられる部分が溶けていってしまうようなそんな錯覚に陥る。
秘裂の頂点にある、快楽の芽を誰かが探り出して、丁寧に皮を剥く。
誰かが舌先でつついて、ちゅっと口に含んで吸う。
みんなが優希を愛していた。
優希も快楽に撃ち震えていた。
そろそろほしいか?
誰かが問う。
入れて欲しいか?
みんなが問う。
何処に入れてほしい?
みんなが愛するように問いかける。
「…………」
余りの恥ずかしさに言葉にすることは出来なかった。
ただ、仰向けに横になって、小さく腰を浮かし頷きを返す。
「ど、どっちにも………入れて、ください…」
かろうじて言えたのはそれだけだった。
白いシーツの上に、勃起した男根を滾らせた青年が横たわる。
優希をみんなで担ぎ上げて、ゆっくりと下ろしてゆく。
花弁を開いて、逸物を固定し、すぶずぶとおろしてゆく。
そして、支えた手を離して、最後には彼女自身の重みで男根が突き刺さった。
「あぐぅっ…はっ…、入ってきてる…!」
中の肉を無理やり広げられる痛み―――。
けれども、まるで自分のものとは違う意思が働いているかのように、
そこはきつく肉棒を飲み込んで、ぎちぎちと締め付けていく。
「ひぅぁ…! はっ、ふぅぅん…はぐぅううっ!!
ひっ、は……ふぁ、は……ごりごりって、なか、擦れてまひゅ…!」
肉棒が中で擦れる度に、無理矢理引き起こされる快感が強烈に襲ってくる。
もちろん、痛みはある…が―――、それ以上に快感が思考を停止させ
ただ快感を貪れと、命令を下す。
「はぐっ…んぁぁっ…! は、はふぅ、お、奥まで来て…っ!
ひゃくぅ…! ひっ、抉れてる―――…くぁあああぁぁっ!!」
誰かが彼女の尻肉を押し広げる。
そして、解れた窄まりに、男根を突き刺す。
メリメリ・・・・という擬音が聴こえて来そうな光景。
やがて菊座が押し広げられ、全て飲み込んでゆく。
両脇に二人の男が立つ。優希の手をとって、自分たちの
勃起した男根を握らせる。そして扱かせる。
正面に、よく知っているはずの誰かが立って、唇を重ねる。
舌を差し込んで、たっぷりと舐め回す。
恋人にするように頭を抱いて、唾液を流し込む。
「ひゃっ…! お尻っ……穴ぁっ! …ひ、広がって…ひぅううっ!!
ぁ、ふうぅぅっ…はふっ…! は、ひぅ…はぁ、おちんちん、入ってきてますぅっ!!」
夢か現か分からない―――。
痛みよりも淫らな雰囲気と快楽が私を飲み込み、理性を蝕む。
喜悦の涙を流しながら、握らされた肉棒を愛しく扱きはじめる。
「熱い…、おちんちんがどくどく・・・って…はぅぅっ!!
はぁっ、はぁっ…気持ちよく…、なってぇ…っ―――」
二人の男にふたつの穴を犯されながら、さらにふたつの肉棒を扱いていく。
興奮と快楽からか、その速度は速くなっていき、それに連動するかのように私も腰を揺らせる。
ふと視線をあげると、唇を寄せてくる誰かの顔があった。
自然にこちらからも、唇をよせ、淫靡に舌を絡ませ唾液を交換し合う。
【すみません…先ほどから遅筆でorz】
淫らに優希が、腰を振っている。
男の上で、男のモノを咥えこんで踊っている。
みんなが彼女の痴態を見詰めていた。
自分で慰めているものたちもいた。
男たちも懸命に動いて、彼女の中をかき回す。
扱かれ男根が、先走り汁を垂らしてびくびくと脈動する。
愛し合うように舌と舌が絡んで戯れる。
いくよ。
誰かが言った。
彼女の中で動いていたモノが、大量に精を吐き出す。
膣と子宮と直腸を、熱く白い液体が満たしてゆく。
扱かれていた男根が震え、射精する。
精液が顔と乳房に吹きかかる。
そして、自分で慰めていたものたちも射精する。
顔に、髪に、胸に、身体に。
次々と白い液体を吹きかけて彼女の身体を白く染めてゆく。
――やがて全てが空白になり
彼女は目覚める。
【お気になさらず】
【こっちはこれで〆ますノシ】
―――夢は覚めた。
「……はれ?」
髪はあちこち跳ねており、寝惚け眼のままぼーっとしていた。
良い夢だったのか、悪夢だったのか、淫夢だったのか、それは覚えていない。
ただ、とんでもなく恥ずかしい夢だったのはなんとなく覚えている。
それが何かまでは思い出せないが。
「………最近、夢見がいいんだか、悪いんだか」
なんだか、すっきりしたようなすっきりしないような気持ちを抱えたまま、私は登校の準備をする。
カーテンと窓を開けると、朝の涼しい風が入ってくる。
窓の外に見える朝の光景は、とても輝いており、なぜだかそれが自分の生きている世界だと意識させられる。
そして、この世界は生きるもの全てに祝福を与える―――そんな風に思える日の輝きが眩く見えた。
「さあ、今日も一日頑張りましょうっ!」
【お疲れ様でした】
【遅筆に付き合ってくださり、どうもありがとうございましたっ】
【また機会があれば、お付き合いくださいませ。それではノシ】
【こんばんは〜】
【待機してみます】
【タイミング悪かったでしょうか…】
【落ちます】
【こんばんわ〜】
【キャラで新規参入者でもよろしいですか?】
>261
【あ、すいません、私待機しすぎで邪魔でしたね…】
【どうぞ、お使い下さいませ、すいませんでした】
264 :
263:2006/05/19(金) 21:58:13 ID:FRXXMnM2
激しく勘違いだったっぽいのでスマソ・・・orz
>>262 【そうですか〜】
【お疲れ様でした、次からはもう少し早く来ますねorz】
>>263-264 【は、はぁ…そうですか】
【では投下で】
>265
【あれ、その様子だと…、お相手して下さるつもりだったのでしょうか?】
【それなら、こちらこそお願いしたいです】
【名前】 烏夜ノ 冥(メイ)
【年齢】 知れず 「外見年齢20代」
【性別】 ♀
【サイド】 妖魔側
【サイズ】 B84/W58/H84 164cm
【容姿】
少々色褪せた白髪、鋭い双眸
千早、血化粧が施された白衣、黒塗りの行灯袴に身を包む
漂わせる妖気に釣られてか周りにはカラスが自然と集まってくる。
【得意】 女性優位(同等)
【能力】 「宵闇」
誰しもが心に抱える「悩み・苦い過去・憎しみ・悲しみ」
それらの咎を見抜き、闇の囁きを持って相手の精神を揺さぶる妖術。
(自身の影を広げて作る極々簡易な閉鎖空間内に相手がいる事が条件)
【武器】 鉄をも裂く長い白反(千早が変化)
【NG】 陵辱、過度の肉体損傷、汚物行為
【弱点】 夕暮れのみ活動、再生途上のため肉体が少々脆い
【備考】
古来より続く人と妖魔の抗争に加担する大烏。
過去、退魔士の巫女によって滅ぼされた記録が残っているが
死の宿命を陰惨な転生の法をもって克服。
先の大戦での傷が少なからず尾を引かせつつも
主導権奪取を主眼に自己の欲求のままに魔道を逝く。
戦以外の時は、朽ちた寺で古傷を癒すことに専念している。
【すいません、やはり今日は退きます】
【今度、是非ともお相手お願いしたいです】
【ありがとうございました】
>>266 【つもりでしたよ】
【長時間待機の後・キャラ的相性、は大丈夫そうですか?】
>269
【明日、朝早かったりして、12時頃には寝ないと不味いんです…】
【またよろしくお願いしますね?】
>>268 >>270 【あらら、私はタイミングが悪すぎ】
【はい、また次に。今夜はお休みなさいませノシ】
【うーん、23時まで待機します】
【好きな食べ物】 汁物
【嫌いな食べ物】 辛いもの全般
【好きなこと】 夕焼けを眺める事
【嫌いなこと】 竜に関する事全般
【趣味】 秘湯巡り、囲碁、将棋
【好きな異性のタイプ】 外道、猛者、童
【嫌いな異性のタイプ】 弱い男
【特性傾向】 妖術重視型
【と、一応おいてみる…】
【どうもー。まだいらっしゃいますか?私でよければお相手しますが】
【こんばんわ。お願いしますー】
【どちらから(又は、どういう場面から)始めましょうか?】
>>275 【そうですね……今キャラが宿無しなんで、夕暮れ時に裏路地で遭遇、
後は流れ次第でどうでしょう?】
【何かロールするに当たって希望等あれば遠慮なくおっしゃってくださいな】
【わかりましたー】
【こちらも流れのままでいきましょう】
【では、どちらからにしましょうか?】
【こちらとしては出来れば先輩の胸を借りたいのですが、どうでしょうw】
>>277 【自分は胸を借せる程の腕ではないですから、
あんまり買い被らないでください、本当にw】
【それでは此方から。遅筆で拙い文ですが、見逃してくださいorz】
【では暫しお待ちを】
夕暮れ時、人気のない裏路地。
ゴミゴミとした場所を一人歩いていた人影が、壁に背を預ける。
ボロボロのコートを羽織り、傍目にはただの浮浪者といった風体。
「………やはり、なかなか良い場所は見つからんな…」
極最近、宿を失ってこういった路地を転々としながら、
次の宿を探している。
ここ二、三日程はそういった生活だった。
自らの巣を失ったため、贅沢は言っていられないのだが…
住むのなら、やはり気に入った場所が良い。
ふと、路地の奥に目を遣る。
近くに何かがいるような……漠然とした気配を、感じた。
【お待たせいたしました、入りにくい書き方でしたら申し訳ないですorz】
コンクリートで建造された建物に両脇を挟まれた路地に
立つ白髪の巫女と、それに群がる無数のカラスが覗く。
そのうち巫女が実に億劫そうに、目の前に聳え立つものに口を開く。
「これが近世の建造物とは味気ものだな。
妾の知っておる京の都と比べものにもならんわ…っと。」
不意にくくっと甘えるように鳴く声が耳に入ると
先程から左の肩に止まっているカラスの方へ顔を向けなおし
黒い毛並みに覆われた喉をなでてやった。
と、同時に近づいてくる気配へ視線を戻し、鋭い眼光を更に絞る。
「そこのもの…誰じゃ。退魔士の類のものか?」
【いえ、さすが先輩ですよw】
目を遣った方角には、不自然なまでに鴉が集っている。
そして、その中心に立つ者のやや色褪せた白髪は、
それでも、濡れ羽色の鴉の羽に良く栄えていえた。
背を建物から離し、歩を進める。忽ち投げかけられる問い。
「……いや。私の推測が正しければ、同類だろうな」
短く答え、尚も進む。
鋭い視線に微かに眼を細めるが、歩みを止める程の影響はなかった。
ある程度の距離を詰めると、足を止めた。
間は七、八メートル…といったところだろうか。
体裁も何もない実に無骨な返答。
だが、それも興がある。
不自然に取り成しをする男というのは好きではないしな。
「ほぉ…これは失礼した。
近頃、妖の者もっとも――ぬしとは似ても似つかぬ最低級な者らばかりだが…」
秀人が口を開くと同時に、首をもたげ地を嘴で
突き遊んでいたカラスらの視線が一斉に彼へと向けられた。
その中に警戒心の一層強い一羽のカラスが黒翼を大きく広げ、声を鳴らして威嚇する。
一羽がそうすると他のカラスも釣られ、煩く鳴き始め会話が暫し中断する。
「…で、カラスらも気がたっておってな。
誰かが来るたび、こうして煩く鳴きおるのだ。
ところで、ぬしはここらに住処を構えておるのか?」
ようやく大合唱が終わると、会話が再開される。
一斉に向けられる、鴉の視線を涼しげな表情でいなす。
向けられているのは…敵意、だろうか。
威嚇されたところから鑑みるに、少なくとも鴉に
友好的な印象は持たれなかったようだ。―――別に構わんが。
耳障りな合唱が漸く止んだ。
「……人の姿を取れるからといって、高等とは限らんがな。
私も低級妖魔とさして変わらんさ。つい先日、不覚にも巣を
追い出されてな。今現在は宿無しの身だ」
フ、と微かに自嘲の笑みを漏らしながらの答えだ。
本当に情けない。あれは自分らしからぬ失敗だった。
「そういうそちらはどうなのだ、この近辺に居を構えているのか?」
どうでも良いことのように、自分に投げかけられた問いと
同じ事を問いかける。
フッと笑みを零した秀人の仕草に、ほぉっと目を細める。
この男、中々変わった風体をしておるが…中々如何して仕草に色気がある。
「それは至極残念。
主には一つ、妾が知らぬ間にすっかりと様変わりしおった
この素晴らしい街を案内して貰いたかったのだがな…」
「素晴らしい」という言葉を口の端を持ち上げ、わざわざ強調した。
近世の建造物には趣が感じられない。
これだから最近の者は――と、言いたげな年寄りの愚痴が響いた。
「いや…妾は、この辺に住んでおらんよ。
もっと人里離れた所に捨てられた古寺に住んでおる。
何せ、ここはカラスらの鳴き声以上に煩いからな。ぬしも静かな所への転居を考えてはどうだ?
どうしてもというのなら妾の寝所へ来ても良いがな。」
肩に乗っていたカラスを払うと、歩を進めていき
音色も幾分か上げてみる。
目を細める様子に訝しげに眉をしかめる。
今、自分は何か特別なことでもしただろうか。
……今のちょっとした会話で相手が何に感心したかなど、
心が読めぬ限りは理解できん。
直ぐにそう思い直し、気に止めるほどのことでもなかったか、
としかめられた眉を戻した。
「残念ながら、私も最近この場所に流れ着いたばかりでな……
住処からは殆ど出なかったこともあり、その願いは叶えられそうにない」
面倒だからな、と続く筈だった言葉は、そんなことを微かにも
匂わせずに切れた。
「素晴らしい、という割には何かしら気に入らない事がある様子だが?
大体、見るべき場所などこの街には存在しないだろうよ。
多くの妖魔や退魔が集う他、面白味など欠片もない場所だ」
正直な感想ではある。
面白味どころか、命の危険がそこら中に転がっている街なのだ。
だが不思議と落ち着くのは、魔を集わせる魅力でもあるのだろうか。
それとも、自分が異常なだけか。
近付いてくる女には全く動じず、ただ、立ち続ける。
「……それもいいかも知れんが、初対面の名も知らぬ方に
其処までしてもらうのも悪い。何より、私には
この面白味のない街が合っているようだからな、丁重にお断りさせていただこう」
人里離れた山に陣取ったとしても、餌がやってくる保証はない。
揺れる黒塗りの袴の裾に触れると地に止まるカラス達が横に飛び
次々と道を開けていく。人気のない路地には草履の裏が砂利を踏み鳴らす音と
二人の交わす声のみが耳に入ってきた。
「まぁ、それもそうだな…」
付け入る隙も見せずに切り捨てる言葉にも
そこそこといった風に曖昧な返事を返す。
そう気の無い素振りを見せられると余計に火がついてくる。
二、三歩のところまで進んで歩みを止めると
夕日の逆光で望む事の叶わなかった秀人の顔がようやく
視界に入れる事が出来た。
「釣れぬ返事よな。
女人の誘いを断るとは、それが男子のする事かえ…ふむ…。
では、とり合えずはお互い名を知り合うところから始めようかの」
――顔は普通か…と、心のうちで呟く。
まぁ、人の体を取るは雑踏に紛れるためにとるもの。
はっと目を引くような美形にも見るもおぞましい醜悪なものに
わざわざ労力を割いて仕立てるまでも無いと言えば無い。
今は、それよりも――小憎らしいほどに落ち着いている様が心を引く。
「わしは烏夜ノ 冥じゃ。さ、ぬしの名は何と言うかえ?
それぐらいは教えても罰は当たらぬだろう、ん?」
飛び去る、鴉。それはまるで漆黒の海が割れるようで。
その割れた海をこちらに向かい、歩み寄ってくる白髪の巫女。
目を奪われるような光景ではあった。
「自らの住居はどうせなら気に入った場所に構えたいのでな。
誰の誘いであろうと、何者の頼みであろうと、私が居る場所は
私自身が決めたいと、そう思うので断らせていただいたのだが…」
それは許されなかったのか?
と、続く言葉は出さないが、それを匂わせる。
「ふむ……確かに。何なら住居の世話をするとまで
言ってもらった相手だ、名は名乗るべきだろうな」
もう、距離は殆どない。多少、自分より背は低いだろうか。
鋭利な刃のような鋭さを秘めた目が、印象的な女だった。
「……南雲秀人、だ」
素っ気ない一言で済ませる。
自らの正体を教える程の関係では、まだない。
距離を詰められたことなどまるで感じさせない、
何ら変わりのない声音での名乗りだった。
注意が散漫になり、つい「わし」と口にしてしまった事に少々後悔する。
何のために「妾」とお上品な言葉を意識し、せめてもの体裁を繕っているのか。
心の動揺というのは常に目に出るという――しかも、この近距離では…。
「そうか?主…少々、固いな」
一度、視線を離す為、頑なな態度に対し呆れ
目を瞑って大仰に目頭を押さえた様を見せる。
匂わせる微妙な言葉遣いにも体裁を取り繕うのに忙しく
気づく、がほんの僅かに遅かったようだ。
惜しい事をしたな、と思いつつ相槌を打つ。
「……ん。なるほど、南雲秀人か。良い名だな。」
真近で見ると改めて背が高い印象を受ける。。
何となくに今見ている以上のものの高さを感じた。
「まぁ、良いわ。これからゆっくりと茶でも飲みながら親睦を……ッ!」
じっと顔を見つめながら更に言葉を紡ごうとしたが
目の直ぐ上を、いつの間にか肩に乗ったカラスに突かれる。
それでようやく秀人の後ろの夕日の挙動に気づくと、顔をしかめた。
「その固さだけが私の取り柄だからな……仕方あるまい」
とはいえ、その固さもちょっとした油断から
剥ぎ取られる程度のものなのだが。
「だが、私からすれば、これからの生活を一変させる重大な選択だ。
住居を構える場所を変えるというのはな。特に、街から山奥では…」
とてもではないが、生活がどう変わるか予測が付かない。
大仰に言えば賭。そして賭は、元々好かない質なのだ。
微妙な一人称の変化には気付かなかったのだが、
そのせいで何を取り繕おうとしているのかが分からない。
……まあ、大したことではないだろうが。
「良い名……か。そう言われるとなかなかどうして、嬉しいものだな」
ふむ、と微かな仕草で頷く。
何故だろうか。ただの記号の羅列でしかないと思っていたのだが。
いつの間にか、自らの名に愛着が湧いていた……ということか。
明らかに変化した表情を見て取り、片眉を上げた。
何か、あるのだろうか。自分の背後に遣られた視線。
少し振り向き、後ろを見る。目に入ったのは、夕日。
色鮮やかではあるが、それだけだ。
顔を戻すと無言で問う。どうかしたのか、と。
「……まぁ、もう少し待て…」
なおも力を込め、肩へ足の爪を食い込ませてくるカラス。
その所為で白地の千早に皺を走らせるのを見て取ると
何故にそれほどまでに不機嫌か知れずに嘆息する。
最後には仕方が無く目を狙う嘴を指で摘んで黙らせた。
「ふふ…名を褒められれば、誰でもそれは嬉しいものであろう?
多くの者を見てきた妾が言うのだから間違いない。」
無表情が僅かに綻びを見せると
自然と口端に笑みが零れた。
なるほど…こやつは、こういうの顔も出来るのか。
「いや、なに…妾にも色々あるのだ。
主と同じように…な。」
問いかける視線を押し返すように目を向け薄く笑う。
鮮やかな夕日に色男…惜しいと思いつつも
どうやら時間は止まってくれそうにも無い。
後ろ髪を惹かれながらも踵を返し
そのまま闇に溶け込むために一歩二歩と下がった。
先程から一羽の鴉が肩に止まり、必死に主人の気を
引こうとしていたようだが…あえなく嘴を封じられている。
それが少々、微笑ましい光景に思えるのが自分でも意外だ。
「そういうものか?名を褒められることなど無かったからな、
今一つわからんが……。まあ、経験者の言は信用できるか」
微笑みを浮かべるその顔は、眼光からは想像できない
穏やかな表情に思える。これまた、意外。
表情というものは実際に見てみないと分からないものなのだな、
と愚にも付かないことを思い、馬鹿馬鹿しいと打ち消した。
「ならば詮索しては悪いな……ああ、少し待て」
数歩の距離が、また開く。去るのだな、と当然のように理解した。
そして、今にも黄昏の中に消え去っていきそうな背に、声をかける。
「好意は、少々嬉しかったかもしれん。
自分でもらしくないかもしれんが、ありがとうと言わせてもらう」
結局、「住居を世話する」というその好意には乗らなかったが。
今、微かな微笑みが自分の顔に浮かんでいるのは意識してだろうか。
それとも、自然に浮かんだものか。
「ではな……また会った際には、お前の言った通りに茶でも飲もう」
そして背を向ける。
また、自らの住居を探すのだ。
住居を見つけてしまえば出歩くことも殆どない。
出会える確率はかなり低いと言える。だが、自然にその言葉が出た。
【このレスで私は〆です。長時間お付き合い頂き、ありがとうございました】
【遅筆のためにご迷惑をおかけしたと思います、申し訳ありません】
【それでは、また機会があればお付き合いくださいませ。では失礼します】
随分と滑らかな口調に少々面を食らい
振り向いた顔には怪訝な表情が浮かぶ。
しかも、こちらが口を開こうとすると
もう背を向け、粗末なコート姿のみしか望むことが叶わない。
「………」
ふと遠ざかっていく後ろ姿へ一声掛け呼び止めようかとも思ったが
らしくないと、思い直し止めた。
今、言わずともいずれまた会う…かどうかは知れない。
ただ只管に変わった男だという事だけは良く分かった。
「…さてと一つ、良い茶でも探しておくか…。」
くしゃくしゃと白髪を掻きながら夕日を眺めると
最近多くなった独り事を、また意味なく呟いた。
【こちらこそ、ありがとうございましたー】
【私の方も色々振り回してすいませんorz】
【お休みなさいませー】
【週末なので……待機してみます。】
【こんばんはーっ、私で宜しければお相手していただいてよろしいでしょうか?】
>>294 【こんばんわ。ええと…キャラハン同士は駄目…でもないのですかね。昨日のを見ていると。】
【正直、既に30分誰も来ていないので助かると言えば助かるのですが(笑)】
>>295 【……どうなんでしょう? うーん……】
【それではあと10分ほど待って誰も来られないようでしたら、やってみましょうか?
……あ、もちろん、そちらがよろしければ、ですけど…】
【誰もいらっしゃらないようなので、始めましょうか。】
【では…優希さんとの邂逅で少し腹案として温めていたものがありますので、
舞台を調えます。少しお待ちください。】
【はい、分かりました。それに合わして行きますのでー】
樹々茂る山中。
眼下に見える遠景には、霞む市街地が見える。
この街のもっとも高い高台ですら下に見下ろす、山。
この山の中には、人間が作った小規模な貯水ダムがあった。
街の人間の多くの咽喉を潤す水源となっている、重要な場所だ。
そこに、私が今日この場所に赴いた理由である存在がいる。
草履では馴れぬ山道を登りながら、深く息をつく。
疲れの出るような事はないのだけれど…。
「……!?」
目的地まではまだ少しある。
…が、だしぬけに、肌に強い妖力を感じた。
これは……もう、あの方が覚醒しているのだろうか?
【優希さんが、山の中で妖魔を見たという噂で同じ山の中に入っていてください。】
【邂逅は、靜より先に、山の中の妖魔…ダムで遭う事になります。】
【それでは、宜しくお願いします。】
山を歩み進めるたびに、その妖気を強く感じていた。
普段この山はハイキングコースなど、週末には家族連れも多く人が賑わう場所だった。
私が向かうのはそこから外れた貯水ダム。
道ならぬ道を歩みながら、少しずつ強くなる妖気を探索しながら自己の歩む方向を決める。
そしてようやく山の上部に近い、貯水ダムにたどり着く。
自然の中に作られたコンクリートの堰が、この広大な自然には不釣合いで思わず苦笑を漏らしてしまう。
「さて―――」
ここから最も強く妖気が感じられる。
警戒しなくては。相手がこちらと争うつもりがあるのかどうなのかは、まだ分からないが…。
【了解しました。こちらこそお付き合いよろしくお願いします】
妖魔の時間帯…逢魔ヶ刻が近付く。
山に分け入る前には澄み切った蒼色を映していた空は今や茜色の輝きを放ち、
ダムの湖面にも、その美しい煌きを余す事なく照らし出している。
そんなダムの湖面が、揺らめいた。
散る水音を響かせ、一段と周囲の妖気が強くなる。
それと共に、透明な姿の、人の大きさ程もあろう蛇の頭が鎌首をもたげ、
堰の近く、白い鉄柵に囲われたコンクリートの通路の上に立つ優希の前に姿を現した。
水で出来た蛇面の中に輝く紅の双眸が、脆弱な人間の姿を見下ろす。
最近の噂によって、人気の全くないこのダムでなければ、その姿を見た誰もが、
悲鳴をあげて逃げ出すであろう。
その額には、壮年の人間の男を模した、これまた透明な姿が上半身だけ、飛び出している。
『何用だ……人の娘。斯様な場所に……』
しわがれた、男とも女ともつかない声音が、静かな湖面に響く。
その言葉が少し濁り、暫くの間、夕刻の近い茜の水面の中、沈黙をもたらした。
『……貴様、只の人間ではないな』
言葉に宿る、剣呑な響き。
それと共に、蛇頭のもたげる水面が、俄かに水泡で粟立った。
成程―――、確かに噂は真だったらしい―――。
水蛇、とでも表現すればいいのだろうか。
その本質は水…だと思うのだが、その双眸は実際の大蛇すら逃げ出すほど威厳を持ち
下手な行動を起こせば、その時点でその視線だけで殺されてしまうかのように鋭い。
もし、私を襲うのであればわざわざ姿を現すことはないだろう。
少なくとも無闇に人を喰らう類の闇の者ではないか。
それでも、怯むことなく水が形作る男の眼球なき瞳を見つめ返しながら、口を開いた。
「少しばかり調べ物を―――。無料奉仕ですが」
双方退かない。
相手が何を考えているかは分からないが、私にも退けない理由がある。
目の前には、人に牙を向くかもしれない可能性が存在しているのだ。
彼ほどの妖力があれば、容易く人を襲うことぐらいはできるだろう。
だが―――、それをしないというのには、何か理由があるのかもしれない。
「ええ、少しばかり社会貢献をしていますから。 ―――妖魔退治という名のね」
今さら取り繕うとは思わなかった。
取り繕ったところで、彼にはそれを見抜かれるだろう。
ならば、最初に名乗っておいた方がいい。
「私の名は佐々木優希。 …訊ねます。 あなたは人に害する存在ですか?」
『調べ物だと…ククッ…戯言を』
優希の言葉に、紅の蛇の瞳の瞳孔が細くなった。
『貴様達はいつもそうだ…そうやって、甘言を弄し、咽喉元を掻き切る…』
透明な人間の男の顔が、夕陽の下、苦々しげに歪んだ。
己よりも弱い存在に対して、苛立ち程度を示していた最初の言葉とは違う。
次に放たれた言葉には、凄まじいまでの怒りと憎悪が込められていた。
『――― 退魔士ッ!』
吼えるような怒号と共に、蛇頭の周囲から水柱が立ち上った。
それは、うねる水の鞭となり、優希の立つコンクリートの堰の前へと立ち上る。
それはさながら、複数の蛇が追従したかのような錯覚すら覚えた。
『人間がッ…自然を汚すだけでなく、退魔士までも雇うて、この我を討ちに来るか!』
凄まじいまでの怒り。
水飛沫を跳ね上げ、目前の、彼にとっては小さき存在である筈の少女に、その力を振るう。
『我が名は蛟(ミズチ)!小癪な退魔士が…小娘だとて、容赦はせぬぞ!』
水の鞭が一斉に、優希の立つ堰の道へと振り下ろされた。
「なっ―――…!」
放たれる怒気だけで、私の身体は吹き飛ばされそうになる。
それにしても、ついていない。別に私は彼を討ち取るとかは考えていない。
もちろん、彼が人間に害なすものであれば、そうするが―――。
「少しは落ち着きなさいッ…! それは誤解です!」
言っても聞こえはしないだろう。
今まで彼がどのように暮らしていたかは知らないが、完全にこちらに敵意を抱いている。
少しは話し合いを持ちたいのだが―――、無理のようだ。
相手がこちらを排除するとするならば、私も剣を向けなければならない。
その力が強大なために、手加減とかは考えることはできなかった。
「―――チッ!」
襲い掛かる巨大な水の鞭から逃れるために通路を疾走する。
一瞬後れて、数秒前まで私のいた場所は粉々になり、柵とコンクリートは粉砕されていた。
あんなもの喰らってしまえばひとたまりもない。
「―――凍れ!!」
背後から襲い掛かる水を凍結させながら、少しでも襲い掛かってくる速度を落とす。
もちろん、水の鞭はあまりに疾く捉えることはないが、それでも騙し騙し繕うことは出来る。
しかし、これも何処まで持つか…。ここの通路は四角状の回廊となっているようで、
このまま逃げ続けていればまたもとの場所に戻ってきてしまう。
そうなれば―――、足場も不安定な場所で戦わなければならない。
いや、そもそもどのようにして戦えばいいのか。
相手は水。つまり、どこを討てばいいのか分からない。
そこまでの場は水面を凍て付かせるとしても、足場も不安定には違いない。
『氷を使うか…だが、所詮は小さき者の身よ…!』
蛇の、今まで見えていなかった尾が湖面を叩く。
水の飛沫が散り、凍結させた氷の低温化によって、
それらも小さな氷の粒と化す。
『かぁあっ!!』
蛟の蛇頭が咆哮した。
その咆哮が、宙に舞う氷の飛礫を弾き飛ばし、優希へと襲い掛かる。
『戦い馴れておらぬな…己が力すら相手の牙になる事を識れ!』
大粒の雹程もあろう飛礫が無数に飛んだ。
『逃さぬぞ…!』
更に、水の鞭が触手の如く、優希が疾る通路の先で待ち構える。
正に、この様は巨大な化物に追われる人間の如く。
場所も。
力も。
体躯も。
全てが優希にとって不利な条件だった。
「………!! 弾くッ!」
自分の放つ魔力がそのまま帰って来る。
今のこの状況では少しでも煩わしさを除去していかなくてはならない。
面倒ではあるが、咄嗟に右手を薙ぎ払い同じく氷の波を放って、相殺させる。
あまり魔力を無駄遣いするな、ということか。
下手な攻撃を仕掛ければこちらが疲弊し、ダメージを受けるだけ。
ならば、やはり好機が見て取れるまで逃げ続けるしかないか…だがしかし。
時間が経てば経つほど、焦燥してしまう。
勝ち目はないのではないか―――、そんな昏い絶望が重く圧し掛かってくる。
だが、それでも―――…!
「死ぬわけにはッ! ―――来なさい! 闇烏ッ!!」
我が剣は我が信念の元に。
我が脚は我が生のために。
我が腕は道を切り開かんがために!
「せぇぇぇぇいいいっ!」
怒号と共に呼び出した私の相棒を振い、前方から襲い掛かる水の触手を切り落とす。
が、すぐさま触手は再生し、再び襲い掛かってくる。
前後左右にステップを踏みながら、水の弾丸から難を逃れる―――と
「しまった…!!」
足を滑らせて、躓いてしまう―――
『諦めぬか…流石は魔を打ち据えし力を持つ者よ。小娘とて侮れぬ。』
圧倒的な力差にも関わらず、まるで諦める事をしない優希に、
蛟は己の内の怒りが戦の奮えへと変わり行く事を感じた。
『なんとは…闇の刃までも振るうか』
易々と水の鞭を切り裂き、血路を拓いた娘。
だが、そこまでだった。
躓き、動きの止まった娘を水の鞭で弾き飛ばす。
己が領内……水の中へと。
一際高い水音が上がり、優希の身体がまだ冷たい水中へと投げ込まれる。
『掴まえたぞ…退魔士』
最早、逃げ場はない。
溺れるか、そうでなくとも、水の中で水の化身たる己に勝てるものなどいない。
同じ水の化身以外には。
『くっ……! スカートは脱いでおかないと…』
服は水を吸い、かなりの重さになる。
海でないのが不幸中の幸いだったか。
急流や荒波でなければ、冷静に対応すれば溺れることはない。
このとき、慌てて水を飲んでしまえば、それこそ溺死する可能性がある。
私は、スカートのホックを外し、ブレザーもさっさと脱ぎ捨てる。
そして息を止めたまま、水面を見上げた。
既に日は落ち闇で暗く分からないが、月の光を頼りに、それほど深いところまでは落ちていないことが分かる。
『このまま、あがってもやられるだけ…でも』
一応、私だって水泳部だ。ある程度息を止めることには自信があるが、それを中心に鍛錬したわけではない。
むしろ、このままではあと一、二分とも持たないだろう。時間は限られてくる。
そして、水中は相手のフィールドだ。先ほどより不利な状況に陥っているのは明確だ。
しかし彼が容易く地上に返してくれるとは思えない。
兎も角、あたりを見渡してどこから襲ってくるか警戒した。
がくん、と優希の身体が動かなくなる。
攻撃の手は見えなかった。
当然だった。
蛟の身体は水であり、水全てが彼だったのだ。
『残念ながら終わりだ、退魔士の娘。』
水の鞭が優希の足首に絡みつき、宙へと吊り上げる。
既に夕陽が落ち、闇の中へと落ち始めたダムの堰で、
蛟の異様な巨躯が逆さ釣りにされた優希の眼前に迫る。
『斯様な堤で我の棲家を穢したばかりか、退魔士までも
送り込んでくるとは…やはり、遠見の言葉に乗るべきであったか…』
呟きながら、水音を立て、蛇の頭の上に付いた人型の腕が優希の頬を
大柄な手でわし掴みにした。
『罪過は購ってもらうぞ、小娘。その魔力、我が体内で絞りつくしてくれる。
彼の娘が来る前に、この怒りを鎮めておきたいのでな…』
優希の身体を飲み込むべく、蛇の頭が顎を大きく開いた、その時。
「――― おやめ下さい、蛟様!」
凛とした声音が、その場に響いた。
堰の通路の上、優希が先程まで走っていた場所。
そこに、鶯色の和服を着た一人の女性が、息を切らせ、立っていた。
「かはっ、かはっ……!」
無理矢理吊り上げられ、器官に水が入り込んでしまい咳き込む。
それでも、逆さに映る巨躯を睨みつけながら、この際でもどのように
好機を見出すか考えていた。
「ぐぅ……! なにを―――…!」
乱暴に頬を掴まれ、怒りが沸き起こるものの、抵抗することができなかった。
そして顎が大きく開かれ私を飲み込もうとしたその瞬間、鈴のような可憐な声が凛、と闇に響いた。
「―――っ!? 」
ふと視線をそちらへと向けてみると、この山の精霊かと思わせるような
神秘的な衣服を身に纏った女性がこの大蛇を見上げていた。
一瞬、一般人かと思ったがそうでもないようだ。
どうやら彼と彼女は見知りあいらしく、私を飲み込もうとしていた顎は止められていた。
『漸く来たか…いや、早かったというべきか』
優希を宙吊りにしたまま、蛟が呻く。
「その方をお放し下さい。…さもなくば、魔力の供給は致しかねます」
呼吸を整え、眼前の水蛇の妖魔に、しっかりとした声音で呼びかける。
その眼前につるされているであろう気配は、まだ生命を保っていた。
尤も…既に相当の体力を浪費し、立ち上がる事すら厳しい有様だろう。
『…それは困る。仕方ない。では、この娘の身柄はそなたに預けよう』
蛟が動き、優希の身体がコンクリートの通路の上へと下される。
その身体を引き寄せ、息がしっかりしている事を確認し、ほぅと息をついた。
衣服が濡れるのも構わず、その人間の頭を膝の上に載せ、気道を確保すると、
貼り付いた髪を払い、優しくその額を撫でる。
瞑目しているため、顔は見えないが、随分と若い…少女のようだった。
『では、早速だが魔力を戴こうか…今の争いで少々使い込んだのでな』
蛟の言葉と共に、その巨躯が水の中へと沈んでいく。
やがて、水の揺れが収まった頃、コンクリートの上に、
人の腕程の長さの一匹の白い蛇が姿を現した。
身体の周囲を水のような膜で覆っている。
これが、蛟の本体…真の姿だった。
「はぁ…はぁ……っ」
助かった……んだろうか?
女性の願いもあってか、私は結局何をされることもなく、通路の上に寝かされた。
そして、その女性が近くに来て、ようやく顔が確認できた。
瞼は閉じられているが、評価するのであれば美人、というのが妥当であろう。
昨今の捻られた美的感覚からしても、はっとするほど綺麗だと言わざるを得ないと思う。
「ありが…とうございます…」
体力を消費したためか、上手く言葉にすることはできなかった。
発音も弱々しく、聞こえたかどうかは分からない。
それにしても…どうしてこの女性は私を助けたのだろうか。
もし彼女が彼と同じ種族―――つまり、妖魔であれば、私を助けるつもりなんてないと思うのだが。
「礼には及びません…生きていて、良かったです」
少女の言葉に、微笑み、静かにそう言う。
その間にもするすると近付いてきた蛟に気がついた。
魔力の供給を…今すぐに、しろと?
「…え、でも、その…まだこの方が」
当惑を余所に、白い蛇が服の裾から覗く私の足へと絡みつく。
『言ったであろう。使い込んで疲れておるのだ。』
その言葉と共に、蛟の水の膜に覆われた身体が、まるで愛撫のように
ねっとりと太股を這い上がり、有無を言わさず、秘部へと到達した。
「…ぁ…ぁあぅっ……」
少女の頭を膝に載せたまま、思わずその感覚に身体を震わす。
「だ……だめです……いけません、そんな……」
蛟の執拗な責めが始まった。
秘部の割れ目にその鎌首を擦りつけ、粘性を持つ体表面の水膜で
最も敏感な包皮に包まれた部分を刺激する。
和服の上からでは何が起きているのか、はっきりとはこの少女には分からないだろう。
だが、それでも漏れ出る喘ぎで、少なからず状況は理解出来る筈だ。
見知らぬ少女に、そのような己の痴態を見られている事を思い、更に恥辱に頬が火照った。
顔が真っ赤になる―――。
状況が掴めない。
ええと、たしか、私はここに妖魔が出るって言う噂を聞いて、ここに来て…
で、なんだか知らないけれど、相手を怒らせちゃったから、死にそうになって……えと?
「あ、あの……そういうことは、人の目の前でするものじゃないんですけど…」
ふたりの雰囲気を壊さないように、おそるおそる呟いた。
いくらなんでも、目の前でこんな美人の痴態を見せられては、こちらまでどぎまぎしてしまう。
これはある意味拷問かもしれない……。
もじもじと恥ずかしく身を捩ってみせる。
ああそんなに、艶かしい声を聞かせないで―――、私まで変な気分になってしまう。
「や……ぁあっ…っく……み、見ないで下さい…ませっ」
指を噛み、快楽から漏れる喘ぎを堪える。
明らかに少女は成されている事を理解していた。
『その娘に見られている事で、感じておるようだな…随分と淫水が激しいぞ?』
言葉でも蛟に翻弄される。
事実、恐ろしい程に感度が研ぎ澄まされていた。
無論、蛟がこうした手管に馴れている事もあったが、
それでも、今のこの異常な状態に、己の昂りが後押しされている事は間違いなかった。
和服の布地越しに、秘部を弄られる淫音が響く。
当然、膝の上に頭を載せている少女には丸聞こえ…というか、伝音によって
余計にはっきりと聴こえているかもしれない。
瞑目している事が余計に恥辱を増長させる。
このような私を見て、この少女は、どのような顔で私を見ているのだろうか?
恥ずかしさと、恐ろしさがないまぜになったような頭が快楽で掻き乱され、思考を奪われていく。
『…娘、私に喰われる代わりに、私の快楽の購いの手伝いをする事で赦してやっても良いが?』
快楽に混濁しかける意識の中、蛟が少女に呼びかける声が聞こえた。
…何を?
……なんというか、その。
その嬌声は、こちらまで響いてどうにかなってしまいそうなんですけども。
こんな綺麗な人が、こんな淫らな声をあげるなんて、男ならいや女でも欲情してしまうだろう。
だが、私は見ているしか出来ない。
徐々に力は取り戻してはいるが、ここで逃げれば彼がなぜ怒りを感じているのか分からないままであるし、
そもそも、この山を下りられるほど体力は戻っていない。
と、そこで彼が声をかけてきた。
……つまり、私も彼女の手伝いをしろ、ということなのだろうか。
しばし、悩む。
たしかに隙を見て逃げれば、逃げ切ることは可能なのかもしれない。
だが、その可能性は限りになくゼロに近いと思う。
なぜなら、彼の魔力は急速に回復していっているのを感じていたからだ。
ならば、それよりかは取引をした方がいいのかもしれない。
下手に動いて殺されるよりは、いいと考えた。
だが、それより何よりも。
女性の奏でる音が美しく、淫らに耳に入ってくる時点で私はもう魅了されていたのかもしれない。
『そろそろ、内に入るぞ。』
ぬろり、と鎌首が既に解れ切った秘口から内へと入り込んだ。
「……っぁあああっ!!」
その感覚に、思わず、指を離し、声を放って反応してしまう。
膣壁を分け入って異物が入り込む感覚。
既に、何度も経験している筈のそれが、異常なまでの快楽を伴っているのは、
やはりこの異常な状況のせいなのか…。
「やっ…はっ…ぁあっ…んんぅっ!?」
『お前もこの娘…靜を存分に高めるがいい。
そうすれば、お前にも快楽を裾分けしてやろう。』
腹部から、蛟の声が響く。
その声の響きだけで、気が触れそうな程に快楽が弾ける。
既に、肌はしっとりと汗ばみ、きっちりと着こなしていた筈の和服も、
裾から何から、乱れてしまっていた。
「……分かりました」
別に快楽がどうとか、そんなことは考えてなかった。
けれども、彼女が淫らな声を挙げるたびに、私はこの人をもっと気持ちよくさせたい―――
そう思ってしまったのだ。
彼女の対面に座ると、彼女の肩に手を置き軽く唇を重ねた。
風に当たり寒くなっていたのか、彼女の唇は程よく冷たく、ぷるっと震えて唇を押し返した。
「んっ……ふぅ…、んっ、ちゅっ…」
子どもが新しい遊びを発見したかのように、私は何度も彼女の唇に吸い付いた。
そしてそのまま、手を滑らせると彼女の乳房へと手を押し当ててくにくにと揉み始める。
「すごく、柔らかいです……」
そのときの私の声は興奮で上ずっていたように思える。
それが恥ずかしく思いながら、指を滑らせてその乳房を外気へと晒した。
「んんっ!?…んっ…んんむ…はっ…んちゅ…」
突然の唇への刺激。
瞑目している私にとっては、不意討ちも良いところだった。
少女が私の身体に手を走らせ、弄り始める。
「ぁぅ…ひゃっ…んぁあ…そ、そんな…駄目…です…んんんぅっ!?」
女性に性的な導きを受けた事などなかった。
それ故に、その困惑もが快楽を作る更なる起爆剤となる。
更に、蛟が存分に膣内を巡った後、内部でぐるりと方向を変え、
入り口へと戻り始めたのが分かった。
鎌首が入り口を掻き出す感覚と共に、白い蛇が乱れた和服の裾から顔を出す。
その身は、私自身の淫水と蛟自身の粘液に覆われ、ダムを照らし出す、僅かな
光源でぬらぬらと輝いていた。
『娘よ…お前は、生娘だったな。ならば、それを奪う事はせずにしておいてやろう。』
水を通して少女の身体に触れた時にそれを知ったのか、そう言うと、
さぁ、こちらへ来いとでも言うように、優希の方に白い蛇の頭が向く。
まるで、私の秘部から男根が生えているかのように、錯覚する。
「み、蛟様……?」
「そんな声で、喘がれたら、私……」
興奮せざるをえない。
その言葉は飲み込んで、おそるおそる彼女の乳房を揉んだ。
しっとりとした肌が指に吸い付いてくるような錯覚を覚えながら、
ほどよく指を押し返す弾力にうっとりと目を細めた。
乳房はぷるぷると柔らかく踊り、視界から興奮をさらに煽らせる。
それに影響されてしまったのか、私は黙って唇をその頂きへと寄せると、舌でなめまわししゃぶった。
「んっ…ちゅ、れろっ…んちゅうっ…。ちゅぅぅぅっ…!」
空いている指でくりくりともうひとつの頂きを捏ね回しながら、赤子のように貪欲に乳首を吸った。
「はぁ……、はぁ…。 え……」
声に視線を向けていると裾の間がからひょっこりと首をもたげていた。
それはまるで―――その、あれ、のようにも見える。
普段はお淑やかそうな彼女が、こんなはしたない姿を取ることに興奮を覚えた。
「あ、あの……よろしく、お願いします……」
「あぁ…はっ…はぁっ…ぁあっ……」
少女に乳房を蹂躙され、その刺激に悶える。
何故だろう。この異常な状況に、これまでにない程に身体が興奮を覚えていた。
蛟の鎌首が私の秘部から出たまま、少女の秘部に近付き、
その身に纏っている布地をゆっくりと割く音がした。
『…既に濡れておるな。靜の痴態を見て興奮したか』
蛟の言葉に、またも頬が熱くなる。
蛟が、鎌首を揺り動かし、少女の秘部を嬲り始めたのだろう、
私の内部に埋め込まれたままの彼の身体が小刻みに振動し、
それがまた、私に快楽を植え付けていく。
期せず、腰が動き、少女の腰と自分のそれが触れ合った。
ぐぬり、と鎌首だけが少女の内へと飲み込まれていく。
慎重に、その初めての部分だけを傷つけないようにしているのか、
蛟が何度も私の内で身体を捩った。
『気持ち好いか、二人共?』
「き…気持ち、好い、ですっ…」
既に、私は強がりを吐く気力すらない程になっていた。
ただ、快楽と、そして、少女の心の内の不思議な感情にほだされていた。
『あ、あの……よろしく、お願いします……』
少女の言葉が耳に届く。
「…はい…ですが…ぁ…ん…私を…気持ちよくさせたい…何故、ですか…?」
当惑と共に、少女に問いかけをする。
「だ、だって……こんなの見せられたら…」
しぶしぶ、火照る顔で小さく頷いて見せた。
水に濡れたスパッツは簡単に引きちぎられ、秘裂が露わとなる。
…なんというか、普通に下半身を曝け出すより、恥ずかしいのは気のせいだろうか?
「はぅっ…んっ…! はっ…んくぅうっ…!! は、っ、ぁっっ…」
蛟が頭を秘裂へと潜り込ませた瞬間、ぞくっとした感覚が流れる。
これが快楽なのだろうか? そんな考える暇も与えてはくれず、彼は小刻みに刺激を与えてきた。
まるで彼が動くたびに、あそこが蕩けさせて行ってしまっているかのように、じんじんとした良い刺激がはしる。
『気持ち好いか、二人共?』
「…ぅ、ふっ……は、はい…ぁっ! き、気持ち…良い、で…すっ!?」
彼の問いかけに素直に頷いてしまうほど、私の理性は溶けていた。
彼を秘所に埋もれさせている背徳感と羞恥、そして与えられる快感。
それらが、入り混じって、私の身体は熱く熱く火照っていく。
「くぅ…ぅん……。だ、だって……貴女は、私を助けて、くれましたし…っ…!
ひぃぅっ! な、なら、私は貴女のことを、たくさん…喜ばせたい…んです…っ
その綺麗な声で―――…もっと…!」
助けてくれたから。
綺麗な声。
少女の言葉に仄かに、心の奥に暖かな火が灯ったような気がした。
それが、行為を助長する。
「はっ、んぁっ…こんな…凄い…ですっ…はぁぁ…」
首を仰け反らせ、顔を左右に打ち振り、激しく反応してしまう。
月光に照らされ、静かな水面の傍で享楽に耽っている有様を思うだけで、
内部が打ち震える思いがした。
『ぐっ…こ、こら、少し手加減せぬか!あ、危うく貫いてしまう所で…うぬ!』
蛟が何事か叫んでいるが、少女の秘部との擦り合せと、互いの体温。
それらが全て、更なる高みへと導き、既に何も考えられなくなりつつあった。
「わ、私っ…もう、堪えられそうにっ、ありません…ぁっ、あぁっ!」
少女の上半身を抱き締めるようにして首に手を回し、激しくなる行為に身を委ねる。
少女の行為は、まるで殿方のように貪欲であり、それでいて女性の繊細さも兼ね備えていた。
そのような性愛の行為に身を委ねたのは、初めての事だった。
「わ、私、イキます…もう、もうっ、ぁ、あ、ぁ、んんぅぅっぅ〜!!」
脳裏に散る白い感覚と共に、私は虚脱するように蛟の身へと魔力を注ぎ込んでいった。
【そろそろ、〆に入りましょうか。】
「んっ…くぅっ、はっ…あつ、い…!」
女性のそこと擦れあい、ただでさえ蛟に秘所を弄られて気が遠くなりそうだというのに
彼女と身体が密着し、体温を共有することで猶更身体は厚さを増していった。
まるで、ふたりの身体が蕩けあって一つになってしまいそうな感覚を覚えながら、
私も彼女の背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめた。
「はっ、ぅぁっ…んっ、くぅぅ! ひっ、ぁ…も、私も…おかしく、なりそ、ぅ!」
呂律の回らない舌で、そう告げながら必死で彼女の身体を掻き抱いた。
お互いの乳房がつぶれ合い、醜くも美しく淫らに変形しあう様はさらに欲情を高ぶらせ快感を鋭く感知する。
「ひっ、ふぅぅん…、私もイく…いっちゃうぅぅ…んっ…ぁ、あああっ!!」
スッ―――と頭の中が薄れていくのを感じながら、月明かりのもと悲鳴にも似た嬌声を挙げ
するすると彼女を抱く腕は力が抜けてそのまま彼女の身体にしだれかかった。
【了解しました】
――― 事後、半刻程の後。
『…お前達、淫らも過ぎるぞ…私は疲れた。事情はそなたが話せ。』
事の本人は、魔力を充分に漲らせたにも関わらず、そう言うと、
よろよろとダムの湖面へと消えていった。
「…すみません、あまりにも恥ずかしい姿を…」
蛟を見送った後、消え入りそうな声でそれだけ呟くと、少女に頭を下げる。
「私は、児玉 靜と申します。
各地に点在する主要な妖魔に魔力を分け与える役目を持っていて…
その、今回の事も、その一環だったのですが…」
先程の饗宴を思い出し、再び顔に熱が篭る。
「…長い話になりそうですので、河岸を変えましょう。
それに、その姿では帰れませんでしょう。
近くに、私の召し物を置いてある場所があります。
そこで、話せる範囲のお話は致します。」
七妖の秘密に関する部分は伏せねばならないだろうが…
私は、この少女を好きになりかけていた。
それは性愛の意味ではなく、その心の内にある信念に絆されたからだ。
――― この少女とならば、変える事が出来るかもしれない。
凄惨と暗黒に彩られた、不毛なる妖魔と人の争いの世界を。
思わぬ所で見つけた邂逅の芽を、私は大切にしなければと思いながら、空を見上げる。
その時、月光の白い輝きが、初めて陽光と同じ位に晴れ晴れとしたもののように思えた。
【では、こちらはこれにて〆です。】
【長い事お付き合い有難う御座いました。おやすみなさいませノシ】
「……ぁう…、それを言われたら私も…」
改めてそういわれると、またあの痴態がリフレインしてしまう。
出来るだけ考えないようにしながらも、湖面へと潜り込む彼を見送った。
「はい…私は、佐々木優希…と言います。
魔力を分け与える……? ああ―――」
―――先ほどの睦みあいのことか。
それを言おうとして、彼女の顔が赤くなっていることに気付き、
こちらも顔を真っ赤になりながら、彼女の説明に頷きを返す。
「……はい、このままだと、寒いままですし。
ええ……すみません。ご迷惑をお掛けします―――」
改めて自分の姿を見てみる。
シャツはずぶぬれ、ブレザーとスカートは水の中、スパッツは…食いちぎられ…。
これではただの露出狂だ。正直に言って、彼女の申し出は嬉しかった。
そして、真剣な眼差し―――と言っても彼女は瞑目しているので、雰囲気だけだが―――
それを受け取って、私も表情を切り替える。
―――彼女が話す真実。それが生み出すのは希望か、絶望か。
だが、希望であればその希望を掴み取る可能性を高め、
絶望であればその闇を明るく光照らす炎を燈せばいい。
「はい、よろしくお願いします。靜さん」
ふと、靜につられて夜空を見上げる。
星と月はその闇を明るく照らし、世界を祝福するかのように光は降り注いでいた。
【それでは、こちらもこれで締めということで】
【こちらこそ、有難うございました。お疲れ様でした。
また機会がございましたら―――それではおやすみなさいノシ】
【無謀を通す真昼からの待機です】
【14時まで、です】
【こんにちわ】
【名無しですがお相手おkですか?】
【おkですよw よろしくお願いします】
【どういう風にしましょうかね?】
【提案としては一般人or退魔士の遭遇・妖魔同士等、ですが】
【では私がどこの組織にも属さない逸れ一匹退魔士で貴女と遭遇ってシチュでよろしいですか?】
>>331 【わかりましたー】
【では、こちらから始めましょう。暫しお待ちを…】
夕刻。陽が傾き、人通りの多い商店街が紅く染め上げられていく。
その往路を夕飯の買い物に足を運んでくる主婦達や
学校からの帰り道に少し道草を楽しもうとしている学生の姿
更に、駅が近いこともあってか仕事帰りのスーツ姿のビジネスマン等が埋めつくす。
何の変哲も無い、いつも通りの穏やかな時間が過ぎようとしていたが…
「―――っ!」
突然、人だかりの中で誰かが声にならない悲鳴を上げる。
だが無常にも雑踏の音に飲み込まれ掻き消された。
「―――あぁっ!!」
また、誰かの悲鳴が上がる。
今度は、よく通る甲高い女の声だ。
だが誰も何も気づかない。
そうしているうちに、また一人、また一人と悲鳴が上がって人が雑踏に飲み込まれた。
いつしか商店街の人だかりは消え、夕刻の紅ばかりを残る。
「こんな時間から妖魔が事件を起こすとは…」
路地裏からコートを羽織った初老の男が姿を表す
「時代も変わったものだ…」
回りの異様さを伺いながらタバコに火をつけるとおそらく被害者の物である子供用の靴を手にする
336 :
335です:2006/05/21(日) 14:34:33 ID:JVHeSVG0
【やりにくいんでPCに変えますね】
「時代が変わったとな? 全く同感だ…。」
無人の商店街の中にあって初老の男の呟きに応える声があった。
少々しわがれた感もあるその声が響くと、不意に血の様に濃かった紅が引いていく。
「もうすぐ陽も暮れるというに
こないに人が外をうろつく時が来ようとはな…。
昔は、日が暮れてきおると人は妖魔を恐れ、急ぎ家路を急いだというに…。」
まるで、そこに見えない川の流れがあるように
歩道に広がっていた紅が、商店の壁を隙間を伝っていた紅が
男の前に立つ白髪の巫女の足元へ流れていくと
「最近の者は、こういう言の葉を知らんのかえ?
カラスが鳴くから帰ろう…とな。」
完全にどす黒い血の紅が姿を消し、元の夕日の紅に戻ると
にやりと口端を持ち上げて言い放つ。
「俺が言いたいのはそうゆう事じゃない…」
拾い上げた靴を投げ捨てると顔を巫女に向ける
その表情には怒りも悲しみも無くただ客観的に今の現状を見つめる冷たい表情がそこにあるだけ
「昔は妖魔も加減を知ってたって事だ…
お前のように餌を投げられたらすぐ口にする池の鯉みたいじゃなくな…」
男にはこの惨劇を起こした巫女に対する恐怖は無い
被害者に対する哀れみも無くただ巫女を無表情で見つめるだけ
「ほほ…これは、これは妾が池の鯉とな?
結構、至極光栄なことよ。」
男の言葉に口に手を当てて、せせら笑う。
もっとも、その間も絞った眼光は相対する者の技量を推し量るべく
鋭さを一層増していたが。
「――なら、主等人間は節度を持って他へ接しておるのか…などと。
ふふ…妾は詰まらぬ事は言わぬよ。
一期一会は大事にせぬとなぁ…さて、客人よ。
お互い、それなりの礼を持って接し合わんといかんぞえ。」
薄い笑みを貼り付けたまま千早の胸元で結ばれた赤紐を解きいて脱ぐ。
片方の振袖を持ち、地面に少し生地を垂らしすと
またたくまに千早は妖気を纏った白布へと変化していった。
「まぁ、今の人も加減を忘れているがな…」
巫女が千早を白布に変化させた瞬間に
巫女のリーチ外へと素早く体を移動させる
「あんたの事は情報屋から聞いている。
その白布がどれだけ威力を秘めているかもな…」
男がコートの中から古びた縄を取り出す。
その縄には大量の札がついており先端は輪になっている。
「俺は他の退魔士と違って特殊な能力も持っていなければ仲間がいる訳でもない…
使うのはこの縄とコート内にある退魔用の投げナイフと経験だけだ…」
巫女に対し自分の戦い方をすべて話す。
敵に対して自分の事を包み隠さず話すことは普通絶対にしない行動
「これでお互い状況は同じ…
フェアにいこうじゃないか、そのほうが緊張感が有る…」
>>341 「かっはははは…フェア?フェアといったか?」
淡々と喋る男に、思わずぷっと吹き出す。
堪えきれない可笑しさに大きく身を反り嘲笑の笑いを晒す。
と、夕日がほどよく傾いてきたのを見ると冷淡な表情へ戻し。
「戦にフェアも何もあるものか。
腹の探りあいも興のうち、それを自ずから手の内を明かすとは愚かな者のすることよ。
老成しておると思うたが歳だけ食ったようじゃな…逝ねっ!」
一頻り罵ると地を蹴った。
射程外に身を置いた男目掛け、白布を振るいつつ一挙に間合いを詰めようと迫る。
二人の頭の上の電柱には何時しかカラスが一羽二羽と続々と集まり始めていた。
「っ…!!!」
間合いを詰めてくる巫女に即座に反応し足のバネを使い距離をとるが
白布の攻撃で軽く頬が斬れ血が流れ出す
「これは戦ではない…俺とあんたの一対一の命を賭けた『決闘』だ…!
死と向き合うことで俺みたいな奴は成長して新たな段階に進むことができる…」
縄を電柱に投げつけ電柱の頭に飛び乗り体制を整え
コートからナイフを取り出し
「あんたにしてみればくだらない生き方だろうが、これが俺の生き方だ…!!」
巫女に向かいナイフを放つ!
>>343 「決闘なぁ…残念ながら、あまりその成果は無かったようじゃな。」
少し前で言えば侍の――美学という奴か。
多少は共感を持つが…生憎とこちらは死肉を食らう烏なのでな、と心中で呟く。
切先が頬を掠めるのを見て、禍々しく口端を持ち上げた。
「……っ!」
縄を用いての立ち振る舞いを、一瞬目で追ったのが不味かったようだ。
取り出されたナイフよりも夕日がちらつき視界が遮られる。
反射的に白布で頭部と左の胸を庇ったが当てが外れた。
右肩への鈍い当たりに、一歩二歩とよろめき壁に背をつく。
電柱にくる男を止まったカラスが頻りに首をかしげて見る。
つぶらな黒の瞳が気味悪く光った。
「成果は十分にある…
あんたの放つどす黒い殺気とこの気を抜くと振るえがとまらなくなりそうな緊張感…
これは素晴らしい『経験』だ…!!」
烏をまったく気にせず電柱から電柱へと飛び移り巫女に対して再びナイフを放ち
自分は地面に降り立ちさらに縄を投げつけ二段攻撃を賭ける
「この決闘に情けも哀れみも感傷も必要ない…!!
さぁ!あんたも全力で俺を殺しに来い!!」
>>345 悪態をつきながらナイフを抜いて乱暴に打ち捨てた。
裂けた白衣の右肩からは鮮やかな血が溢れ出し
衣の裏地へ染みながら脇を伝って落ちていく。
「ちぃ、勝手にぬかしておれ……っ!」
迫ってくる男に不味いな、と頭の片隅で思う。
肩傷の所為もあり、どうにも体の反応が鈍ってしまう。
続けざまに放たれたナイフの刃を辛うじて白布で払ったところまでは良かった。
しかし、縄の輪の部分に白布を持つ手首を絡められたのは頂けない。
ふと電線に集まったカラスらを視界に入れたが…
「……まぁ、無理か…。」
相手は退魔士…単なるカラスに淡く期待しても仕方が無いと言うものだ。
ここは己が力を持って脱しかないかと、苦笑を浮かべる。
適当に男の動きを白布でけん制してから、切先を己が手首に当てた。
「あぁ、勝手にさせてもらう…」
巫女の手首にまきついた縄を引っ張りながら次に巫女が起こすであろう行動を予想する
しかしあくまでも予想、いくら経験をつもうとも絶対は存在しない
「ちっ…!!」
巫女のけん制と白布で縄を切られたせいでお互いの武器のリーチ外に
そして男の右腕は巫女のけん制で負ってしまった切り傷
状況は決して有利とはいえない
>>347 「ほっ? 切れよったか、これは好都合…。」
軽い手ごたえと共に自由になった左手。
最悪手首ごと叩き切ろうかと覚悟していたが、そうならず幸いだ。
まだ繋がっている感触を確かめるため、左の手を宙でひらひらとさせた。
しかも相手の縄まで潰してくれるとは……相変わらず、この白布には何度も世話になる。
「さて…と、肩の礼をせねばなるまい…な?」
相手の武器のうちの一つは既に用を成さぬだろう。
恐らくだが残るはナイフのみといったとこか。
自身の優位が思わぬ形で転がり込んできた事に、ほくそ笑みながらにじり寄っていく。
【リードする筈が迷走して、すみませんorz】
【ようやく少しエロか〆にこれた気が、どうぞご自由にー】
「そりゃぁ札が張ってあってもただの縄だからな…
だがこうすればまた使える…」
切れた縄の先端を再び輪にする
どうやら戦闘で縄が切れるにはしばしば有ることのようだ
「あいにく他人からの施しは受けない主義なんでな…
遠慮させていただく…」
にじり寄ってくる巫女に対し距離をとるため後ろに下がる。
もはやナイフも残り少なく一発一発慎重に投げるしかない…
この『死ぬかも知れない』とゆう状況を男は楽しんでいた。
【展開とキャラ的にエロールは無理なんでこのままバトロール続けませんか?】
>>349 「ほぉ…便利なものよ。
まるでトカゲの尻尾のようじゃな…。」
縄の先が再生するのを見て、感心したように頷いてみせる。
が、お互いのリーチによる間合いの取り方を考えると…このままでは霧がない。
刀や拳の超接近戦なら、そうでもないが長い獲物を持つ同士だと
慎重に事を運ぼうとすれば、そのまま千日手になりかねん。
「誰が施しをするなどと言うたか?
今から主が受けるのは……そう、咎よ。」
にぃっと口元に笑みを零すと不意に目を細める。
隠し玉という奴か、妖気で足元の影から急激に広がった。
……覗く景色が一面血のような紅に染まり、二人を包んでいく……。
「さ、見せてもらうぞ。フフ…主の咎を…」
辺りに紅が広がり切ったかと思うと
ぐっと眼光を絞り、男の闇の琴線へ触れ始める。
>>349 「ほぉ…便利なものよ。
まるでトカゲの尻尾のようじゃな…。」
縄の先が再生するのを見て、感心したように頷いてみせる。
が、お互いのリーチによる間合いの取り方を考えると…このままでは霧がない。
刀や拳の超接近戦なら、そうでもないが長い獲物を持つ同士だと
慎重に事を運ぼうとすれば、そのまま千日手になりかねん。
「誰が施しをするなどと言うたか?
今から主が受けるのは……そう、咎よ。」
にぃっと口元に笑みを零すと不意に目を細める。
隠し玉という奴か、妖気で足元の影から急激に広がった。
……覗く景色が一面血のような紅に染まり、二人を包んでいく……。
「さ、見せてもらうぞ。フフ…主の咎を…」
辺りに紅が広がり切ったかと思うと
ぐっと眼光を絞り、男の闇の琴線へ触れ始める。
【それは、いやよ、いやよな男性萌えな私に対する挑戦なのかとw】
【そう言われると俄然したくなるのが私クォリティ】
【無論どちらでも良いですが、「宵闇」を使ってでもの無謀は通らないかなー?】
【それは、いやよ、いやよな男性萌えな私に対する挑戦なのかとw】
【そう言われると俄然したくなるのが私クォリティ】
【無論どちらでも良いですが、「宵闇」を使ってでもの無謀は通らないかなー?】
【二重…orz、すみません】
【上の二十一行は無視でorz】
「妙な例えをするな。
これはただの縄、それ以下でもそれ以上でもない…」
さすがに互いの出方を伺い続ける持久戦では人間である自分が不利だと感じ
仕掛けようとした矢先、足元が巫女の影に覆われる
「…!!!」
声を上げる暇も無く影に包まれる男
この能力の話も聴いていたがこれほど早業だとは思いもしていなかった
「…ぅ……ぁぁ…!!!!」
巫女の技によりよみがえる修羅の記憶
金、権力、地位、それらすべてを求めずただただ力のみを欲し
情けを捨て、哀れみを捨て、容赦を捨て
敵を殺し、邪魔者を消し、妖魔を狩ってきた半生の記憶
その全ての記憶が脳裏をよぎり男を苦しめる
【でも俺は最低30〜40のおっちゃんですよw】
>>352 「フフ…かかりよったわ…。」
闇の言霊に苦しみ、頭を抑えて膝をつく様に
満足げに乱れた白髪を掻き揚げた。
…が、「宵闇」を継続するには、それ相応に体力を消耗させられる。
只でさえ戦闘・右の肩傷で消耗しているのだ。
急速に額には汗が滲み息遣いも荒くなっていく中
あまり長くはもたぬな、と小さく呟いた。
「中々に苦しそうだな…ん?」
黒袴の裾を揺らしながら男の肩に手を掛ける。
無論、行為にも音色にも気遣いの意味など微塵も含んでいない。
「お前が修羅の道を選んだことで一体どれ程の者が苦しんだろうかなぁ。
仲間も、妖魔も…フフ、其の者達の痛み・無念・恨み…主に償いきれるか?」
やんわりとした口調で、追い立てていく。
【初老の方々を馬鹿にするなとw】
【でも時間が無いかなー、やっぱりここまででしょうかね?】
「ぁ…ぁぁぁ……!!!!」
巫女の一言一言が心に突き刺り痛みとなる
痛みは心を追い詰め男を完膚無きまで追い詰める…
「ぁ……っっっ!!!!」
不意に男の表情が変わる
そしてよみがえる修羅に落ちたあの日の記憶
己の信念、欲望、強さへの執着心!!
「忘れる…ところだった……
俺は、後悔もしてなければ懺悔したいとゆう気持ちも無い!!
有るのは強さへの憧れと欲望だけだぁっ!!!」
どうやら巫女の技によりさらに深い修羅道に落ちた男
そして生き残れば勝ちとゆう信念
「お互い…限界のようだな……
ここは不本意だが引かせてもらう…」
素早くその場を離れる男
しかし巫女と戦っていたその場には
次は確実に殺すといわんばかりの『漆黒の殺気』が残っていた…
【そうですねw】
【こちらもあまり時間がありませんので次〆お願いします】
>>354 いくら術中に嵌めていようが、そこから追い詰めていくのは
偏に術者の繊細な技量に掛かっている。
術を逃れ、素早く裏路地へと消えていく男に小さく舌打ちした。
追撃しようにも過度の消耗に膝を地に突いて、喘ぐのが精一杯というところだ。
妾としたことが「囁き方」を誤ったな…。
「やれやれ……退くか。」
演じた無様な失態に一つ嘆息を残し立ち上げる。
白衣の袖についた砂利を軽く手で叩いて落とすと、振り返りもせず何処へと消えていく。
事が終わり、無人の商店街にぽつりと残されたカラス達が煩く鳴き始めた。
【了解】
【乙でした。、「宵闇」のあれは】
【背景が分からない名無しさんだったので、威力がとんでも,という事でorz】
【普段はもっとこう…ジワジワといけたらなとw】
【では、ありがとうございましたノシ】
【こちらこそお相手いただきありがとうございました ノシ】
【待機します】
【どなたでもどうぞ〜】
【連日になりますが、失礼しますね?】
【ということですから、適当に書き出しますね】
―――深夜。
いつも通り、退魔を終えて帰宅する途中だった。
あたりはすっかり闇に包まれており、
その暗闇を照らすのは道に沿って並ぶ電灯だけであった。
今夜は月も星も出ておらず、いつもより薄暗く感じられる。
「……もう何も起こらなければいいんですが」
ふぅ、と軽く溜息をついて辺りを見渡す。
確かに気配は感じられない。それでも漠然とした不安が心の奥底にこびりつく―――。
暗闇の中、家々の上を、一つの人影が疾走する。
金色の瞳が、一人の人を捉えた。
「うふふ、見つけたわ。……あの子ね」
すうっと、魔力の類を操り、一旦、相手に見えない場所に着地し、
そして、曲がり角を曲がり、その少女に会う。
「はぁい、こんばんわぁ」
あくまでも、人当たりの良さそうな笑みを浮かべ、話しかけた。
「―――貴女は」
家と向いていた足をピタリと止める。
目の前には妖艶な美女、と表現できるような女性がモデルのように立っていた。
だが、それが私を警戒させる。
先ほどまで気配を感じなかった―――なのに目の前に彼女が現れていた。
ということは、彼女は常人ではない…つまり何かしら力を持つ者だということになる。
「用件は何ですか? わざわざ話しかけてくるということはそういうことでしょう?」
靜かに告げながら、意識を右手に集中させる。
想像する―――。
自分の相棒の姿を。その闇は深く、暖かく、温和。
全てのいけとしいけるものを受け入れる平等な風。
「来なさい―――、闇烏ッ!!」
「私はヴィオレッタよ。
ヴィヴィって呼んでね☆」
ふざけているのか、それともこれが素なのか、
警戒されても、気にすることなく、
人差し指を立て、ウィンクをして応えた。
「あぁら、物分かりの良いお嬢さんねぇ、優希ちゃん?」
むふぅ、と笑い、相手の名を紡ぐ。
そういっている間に、相手の右手に何かが現れ
「そう、それよ。…私はあなたのその力を求めてはるばるやってきたんだわ」
―――殺気を感じる。
此方も戦闘体勢に入り、銃を構えた。
「人違いだったり、ガセネタだったらどうしようかと思ってたのですけど、
どうやら、本物みたいね…、うふふ」
いつでも動けるように、足を開いた。
「戯言を―――」
ふざけているのか。しかし、油断することは出来ない。
先ほどまで微塵もこちらに気配を悟らせなかった相手だ。
あるいは、それは余裕から生まれるものかもしれない。
「……私を知っているんですね?」
どのように私の情報を手に入れたのかは知らない。
だが、こちらの情報を知っているのであれば、猶更油断することが出来ない。
相手がどのような目的で話しかけてきたのかは知らないが、相手もやるつもりだ。
ならば、もうあとは言葉は―――ないっ!
「行きますッ…!」
アスファルトの地面を蹴り飛ばすと、同時に前方へと飛び出し彼女へと向けて剣を放つ。
「ふふっ」
相手の問いには微笑を返した。
「ええ、おいで。……うふふ、私にはあなたが必要なのよ」
にやりと笑い、相手を見据えた。
そして、地を蹴り一直線に向かってくる彼女。
此方には殴れる武器は無い、故に接近されれば、被弾は免れない。
「―――ッ!」
拳銃を向け、3発程連射した。
「―――!」
銃弾!
前方を見据えたまま、横に跳んで射撃を回避する。
だが、彼女はそれで許してくれることなく、射撃で牽制し
此方を近づけさせることは許してくれない。
「ちっ……!」
こうなってしまえば厄介だ。私が使える魔術は数少なく、有効範囲も短い。
放出系の魔術もあまり得意ではないし―――どうしたものか。
捨て身で突っ込み、一撃必殺を試みるのも手ではあるが、それが最善の手だとは到底思えなかった。
それにしても分が悪すぎる。
それにこちらの得物は大剣だ。
大振りなため、どうしても隙が出来てしまう。もし懐に飛び込んでもそれを回避される可能性は高い。
次々と、襲い掛かる銃撃を回避しながら突破口を開こうとするが、やはり彼女には隙がない。
「仕方がない―――!」
集中力を高める―――。
拳銃でも予備動作と反動というものはある。
彼女の手の動きに集中を向けながら私は疾走する。
一撃目。大きく横に跳んで彼女の視界から消えまた疾駆。
二撃目。照準を此方に向け、発砲する瞬間また、横っ飛びに回避する。
三撃目―――を、撃たせる前に、私は再度彼女へと剣を振り払った!
「これで、どうだッ…!!」
一撃、二撃と避けられた。
「ちぃ…、……この!」
三発目を放とうと、引金を握ろうとした所、
「…………ッ!」
胴を袈裟がけに斬られた。
血しぶきを上げながら、遥か後方に吹き飛ぶ。
「……、いたたた」
ややあって、立ち上がった。
気を込め、傷を癒し、ダメージを最小限に抑えた。
「流石ですね…、ならば、私も……」
銃をしまい、なにやらぶつぶつと魔法を唱える。
わざとなのか、相手の攻撃など気にする事なく、ただ、集中した。
「やった!?」
…いや、一見命中させたようにも見えたが、大打撃とまでは行かなかった様だ。
このとき、追撃を止めなければ勝負は付いていたのだろうが、油断していたのだろうか。
彼女が呪文を詠唱しはじめているのに気付いたときには既に遅く、
本能が危機感を訴えていた。
ここで破れかぶれに彼女へと仕掛ければ、此方がやられてしまう。
来る魔法に備えて、私は構え防御体勢を取る。
此方へ向かってくる彼女、それを見てほくそ笑み、
「あら、来ないのね…臆病なんだからぁ」
右の手の平を向け、魔法陣を作る。
炎の玉を作り出し、直線状に放った。
「さぁて…、避けきれるかしら…?」
続け様に左手を向けた。
空気を練るように回し、真空状態を作り出し、
そこに冷気の魔法を放った。
更に駄目押しッ!
両手を前に出し、魔法陣を作り始めた。
「なっ―――!」
避けるタイミングを逃した…!
火の弾丸を避けるのが一瞬遅く、私の肩部を直撃し吹き飛ばされる。
そしてそのまま追撃を加えるかのように刃のごとく冷気の渦が襲い掛かり、
私の身体は切り刻まれる―――!
衣服は千々に千切れ、衣服は衣服としての機能を果たしていなかった。
露出する肌を庇い隠しながら、よろめきながら立ち上がる。
まだ―――、まだだ。
ここで終わるわけには、いかない……!
「………っ!これっ…くらいでぇぇぇえっ!」
無茶を承知で、私は女性に向かって飛び出し、闇雲に剣を振った―――が、これが拙かった。
【すみません、少し落ちてきますので、次のレスは遅くなるかもしれません】
炎が相手を吹き飛ばし無防備にさせ、
風と吹雪が衣服をずたずたにした。
ダメージを受けながらも此方に健気に立ち向かってくる相手。
此方に向かう頃には唱え終わり、
「そんなことはさせないんだから!」
地に手を付き、優希の足元に黒い闇を呼ぶ。
そこから、腕がたくさん伸びてきて、優希の腕を、足を、身体を掴もうとした。
>369
【了解しました〜】
【気長に待ってます〜】
「なっ―――!」
前面だけに注意していたためか、足元は意識をしていなかった。
たやすく私の足は絡めとられ、闇に引きずり込まれるように身体は押さえつけられる。
「ぐっ…くぅ……!」
もがこうとしても、闇はしっかりと私の四肢を押さえつけており、
まるで枷の様に重く、身体を動かすことはできなかった。
「はっ…くぅううっ!!」
どれだけ力を入れても、闇の力のせいか手に込める力が脱力してしまう。
なんとか束縛を解こうとはするが、何度やっても無駄で気付けば傍らには女性が立っていた。
見上げながら、私は尋ねる。
「私を……どうするつもりですか…!」
【ただ今もどりましたー】
伸びた腕が優希の肢体を掴んだ。
手足に絡み付き、身動きを取れなくさせる。
「うふふ、随分と良い声を上げて苦しみますのね?…あなた」
ゆっくりと、最初に会った時のような笑みを湛えながら近付く。
「ん…?どうするか、ねぇ……」
少し考え込み、そして口を開き、
「私はまぁ、魔術師なわけだけど……」
相手が身動き取れない事を良いことに、顔を撫でながら、
「君は剣を扱うのが上手なのよね?…少し、私の研究に付き合って欲しいのよ」
そんなことを言いながら、髪を撫でる。
「うふふ、それにしても君、可愛いわよね」
突如、にこりと妖しい笑みを浮かべ、顔を近付けた。
「キス…、しても良いかしらぁ?」
小声で言葉を紡ぐ。
「何をばかなことを―――!」
歯を噛み締めながら、相手を睨みつける。
こいつはサディストか。
くだらない―――そう言いたいところだが、現状が許してくれはしなかった。
身動きが取れず抵抗しているうちに、彼女の手は私の顔をなでてきた。
「研究? ―――頼むにしては、これはどうかとは思いますが」
内容がどうなのかは兎も角、少なくともこの構図は友好的ではないと思うのだが。
そもそも、研究とは言うが一体私の何を調べようというのか。
剣を扱う能力…についてなのだろうか?
私には剣の本質やクセと言ったものを見抜き、それを自由自在に操る能力を持っている。
自分でも不思議な能力だとは思うが、ソレを研究したからといって、何か新しいものに繋がるとは思えない。
研究するなら、もっと他に研究のし甲斐のあるものがあるだろうに―――。
そう口答えをしようとしたその瞬間、彼女はとんでもないことを言ってきた。
「き……キスッ!?」
なぜ。どうして。
可愛いとは言うが、ストレートな要求にも程がある。
だがどちらにしろ、私はまな板の上の鯉だ。
もし、拒否をしたとしても身体を束縛されているこの状況だ、逃れるはずもない。
「好みは人それぞれよ?…うふふ、悔しそうね?」
愉しそうに優希さんを見つめた。
「私は武器を呼ぶ者――古今東西、様々な武器を具現化させることが出来るんだわ」
にんまりと笑う。
「しかし、私は剣術とかは持ち合わせていないから、代わりに使って下さるような方を探してたのよ。
まぁまぁ落ち着いて?だって、あなたがいきなり襲ってくるんですもの!
…まぁ、私も、良い機会ですし、どの程度のモノなのか確かめたかったわけですが……」
「まぁ、いいんだわ。それより…ね?」
クスクスと笑い、頬を赤くしつつ、
優希さんの顔を両手でそっと掴み、
ゆっくりと唇を重ねた。
「ちゅ……」
柔らかい感覚が伝わる。
「話はよく見えませんが…つまり、私を試すために戦ったと、そういうわけですか?」
……はぁ。
私の浅慮さに溜息が出てしまう。
これでは先日の大蛇のことも言えたものではないな、と。
だが、それならばこの戒めを解いてくれても良いのではないだろうか?
「んっ……ううぅっ!?」
そうこう考えているうちに、唇を落とされ頬が熱くなる。
しっとりと彼女の唇は濡れており、その感触が心地よく感じられた。
それから何度か唇を吸われて、私はただなされるがままに彼女のキスを受け入れる。
唇を重ねるたびに、私の頭の中はぼーっとしてきて、何も考えられなくなってきた。
「まぁ、そんなところなのよ…
いざ実験してみて、期待外れだったら困りますし」
優希の身体を拘束したまま、キスを交わす。
「ちゅ…、ちゅぷ…、ちゅ……」
何度も、何度も角度を変えて、雪崩のようにキスを交した。
「はぁ…、はぁ…、私ね、身体の構造上、魔力を消費すると、
欲しくなって仕方がなくなるの…」
胸が高まり、熱を逃がそうと、息を吐く。
「さぁ…、やってしまいなさい…」
呼び寄せた闇の中から現れた腕、それがうごめき、
優希のボロボロになった衣服をはぎとった。
「なにを……言ってるんですか…」
私の身体に跨り、キスを降らせてくる女性をぼんやり眺めながら呟く。
まともな思考が出来ないほど、私の頭は重なる唇の感触に蕩けていった。
妖艶な彼女の吐息が耳に吹きかけられ、ぞくっと背筋に「何か」が走る。
闇から延びた腕は次々と私の衣服を剥ぎ取り、あっというまに裸に剥かれてしまった。
乳房もその頂きも彼女の目の前に曝け出されて、恥ずかしさがこみ上げてくる。
だが、乳房は「どうぞ見てください」と言わんばかりにいやらしく揺れて、
その頂きも羞恥による興奮からか、徐々に硬く尖っていった。
「やだ…っ、はずかしい…ッ! むねぇ…み、見ないで下さい…っ」
「あらぁ…、強がっている割には、あなたの体は正直に反応しているみたいでしてよ?」
快楽に染まりゆく彼女を見て、更に感情を高ぶらせた。
そして露出した素肌。
黒いまがまがしい腕が白い肌に絡み、
淫靡さを醸しだしていて。
「胸を見ないでっていわれても…、見えちゃう物は仕方ないんだわ」
耳元で優しく囁き、そして胸に顔を寄せ、乳房に触れた。
「うふふ、柔らかいわぁ…」
顔を埋め、くにくにと優しく胸を揉んだ。
同時に、召喚した腕を優希の秘所と口に這わせ、
手首を縛った。
「そ、そんなことは……ひゃううっ!」
強く言い返すことができなかった。
黒きかいなが私の肌を愛撫し、まるでその漆黒に縁取られていくような感覚を覚える。
まるで、徐々に心がこの快楽に沈んでいってしまうかのように。
「あふぁぁあっ! おっぱい…揉まないでぇ…っ。
息がかかって…ひゃぅうっ…! んっ、はぁ…っ」
顔を埋められた乳房はそれすらも受け入れるかのように柔らかく弾んで、彼女の顔を包み込む。
乳房に触れられれば触れられるほど、敏感に反応し乳首はぷっくりと勃起して、
自分のものとは思えないほど、いやらしく硬く尖っていた。
「え……ぁっ…、そ、そんなところ…んぐぅ…! あぅっ…」
手首が縛られ、ますます、私は抵抗することができなくなっていた。
そして、秘所と口周りを触れられて私はますますその快感を感知してしまう。
【ところでお時間の方は大丈夫でしょうか?】
「存分に愉しんで良いのよ?…何かを取ろうってわけじゃあないんだから」
黒き腕が手を縛り、胸を前に出させた。
胸に溺れるようにのしかかり、そして胸の先を舐める。
硬くなった先をあま噛みしつつ、円を描くように手で揉んだ。
黒き腕が相手の秘部に触れ、べたりと張り付いた。
張り付いた腕は振動し、秘部を刺激した。
更に他の腕が、足を掴み、足をM字に開かせようと動く。
【私はまだ大丈夫です】
【3時くらいまでは出来ます】
【そちらは大丈夫でしょうか?】
腕を後ろに回され、まるで自分から胸を突き出しているような格好となる。
ただでさえ、恥ずかしいというのにこういう格好までさせられ、恥ずかしさが募る
「やっ、ふぁぁぁんっ…! 乳首っ、舐めないでぇ…っ
乳首…ぞくぞくしちゃいます…っ、はっ…んふぁぁっ!」
彼女の顔は私の乳房で埋もれており、ふにゅっとその形を変える。
そして、さらに乳首を舐められてさらにつんっと弄って欲しいかのように自己主張をしていた。
「ふぁ、んんぁっ!! そ、そこ、気持ち、―――良いっ…! あっ…
こ、こんな格好で…恥ずかしいのに…っ! 見えちゃうのに…っ!」
大きくM字に脚を開かれるものの、私はたいした抵抗をすることができなかった。
むしろ、心のどこかでもっと見て欲しいという被虐的な思いもあったのか、
恥ずかしくも、自分から進んで脚を広げそこを曝け出した。
既にそこは愛液で濡れそぼっており、ひくひくといやらしく蠢いていた。
【すみません…実は先ほどから眠気が酷くて…】
【申し訳ありませんが凍結してもらえないでしょうか?】
【こちらは明日でも大丈夫ですが…】
【わかりましたです〜】
【無理をさせてしまい、申し訳こざいません…】
【明日は一応大丈夫です】
【ただ、明後日が若干朝早いので、21時頃から再開したいのですが、大丈夫でしょうか?】
【あー…21時からだとちょっと無理かも…帰宅するのがそれくらいだと思うので】
【できれば22時前からいいのですが…それでダメであれば、また打ち合わせスレに書き込んで置いてください】
【私の勝手で申し訳ございません。それではお先に失礼しますノシ】
【了解しました〜】
【明日伝言スレな書き込んでおきますね】
【お疲れさまでした〜】
【名前】蘭京子(あららぎ・きょうこ)
【年齢】26歳
【性別】女
【サイド】退魔側
【組織】内閣特殊情報調査室
【サイズ】身長:174p 体重:60s B:91 W:61 H:90
【容姿】ウルフカットの、凛々しい顔つき。切れ長の目。
【得意】NG、及びラブラブ以外全般。
【能力】マーシャルアーツ。試作型対妖魔用戦闘服「マンティス」の召喚。
「マンティス」は西洋の錬金術、エンチャント・マジック、コンピュータープログラムを利用した
召喚術、中国の気功、及び最先端の科学技術などを組み合わせて製作されており、特殊な
デバイスにパスワードを打ち込むことで召喚、魔術的技術の無い人間でも扱うことができ、
単体で妖魔殲滅も可能な戦闘服として考案された。
装着中、被験者の身体能力は爆発的に増強され、装甲は物理的かつ魔術的にも耐久力を持つ。
時間制限は、召喚をある程度被験者の自己判断に委ねる代わりに、悪用や技術流出を防ぐ
ためのリミッターであり、また本来の戦闘力を100%出すことの出来るアクティブモードは発動の
際に特殊デバイスを通じて政府の承認をうける必要がある。
【武器】「マンティス」の手足に装備された合計4本の多目的魔鎌「アズラエル」。
高速振動モードや、聖別された水銀で刃を覆う退魔モード、赤熱化モードなど、敵の特徴に応じ
柔軟な対応が取れるようになっている。
取り外しもでき、ブーメランのように投擲、或いは無線及び有線によるコントロールも可能。
ただしこの「アズラエル」はセーフティモード中は封印されており、使用不可能。
【NG】ハードなスカ系。
【弱点】セーフティモードでは最大5分。アクティブモードでは最大3分しか活動できない。
それを過ぎると「マンティス」は自動的に送還されてしまう。
また特殊デバイスは強力な電磁波に弱く、不調をきたし召喚不可能になることもありうる。
【備考】元自衛官。富士の樹海で演習中に妖魔の襲撃を受け壊滅したレンジャー部隊の生き残り。
日本政府と取引し、直属の組織である特殊情報調査室に所属、試作型の対妖魔用戦闘服の
被験者になり、現在に至る。
女性である京子が被験者として選ばれた理由は、パワーやスピードは「マンティス」で補えること、
そして妖魔に敗北しても、女は「生かされる」可能性が高いため。
京子自身も、組織にとって自分の重要性は「マンティス」以下であることは承知の上で所属している。
【2時くらいまで待機している】
【お相手お願いできますか?】
【ええ、是非お願いするわ】
【シチュエーション的にはどうなるのかしらね…こちらは、妖魔でない限り
戦闘行為には及べないのだけれど……】
【魔王の契約者ですから、妖魔とそう変わらないと判断していいと思いますよ】
【顔も知れているでしょうしね】
【実戦テストのターゲットとしてもいいですし】
【言われてみれば確かに…「悪行」は知れ渡ってるでしょうしね】
【なら、こちらからで。
付近に水源が無いと判断した地形、かつ快晴の続いた日を狙い
済ましての攻撃になると思うけど……いいかしら?】
【あくまで判断しただけだから、いくらでも言いぬけは出来る感じで】
【了解、それで結構】
【言い抜けは十八番なのでね】
【では、そちらからお願いできるかな?】
「………………」
シャープなボディの、カスタムバイクが猛々しいエンジン音を上げる。
熱気と、乾いた空気が頬をなでた。
(水上竜斗……21歳、身長約190センチ。
白髪のざんぎり頭に、サングラス……魔王との契約により、水を操作
する能力を持つ……か)
片手で開いたデバイスに流れる情報に、再度目を走らせる。
ターゲット
別のウインドウが開き、マップを提示……青い光点が、目標地点に
移動していることを報告した。
(………ランクはA+、と言ったところね。だが………!!)
水源を絶ち、天候も味方しないなら……勝機は、ある。
デバイスを納めると、私は二輪を走らせた……ここ数日の晴天で枯れ
果てた川岸まで。
『……主』
「皆まで言わずともわかっていますヨ」
追われている。
昨日から、いや、その前から、ずっと。
そして、それはどんどん近付いてくる。
目の前に、バイクが止まった。
「……やあ、お嬢さン。デートのお誘いですか?」
>>392 人の一生は短い。
だが……人は、伝え残すことができる。
蓄積されたノウハウ、集積された情報……それらを継いで行くことで、
人はここまでやって来た。
(勝機は、ある……相手が魔人だとしても。
魔術的素養の無い自分が、強大な妖魔やその協力者を倒す。
その先にあるものこそが、人類の未来を作る……!!)
胸の奥に滾る、ほの暗い思いを押し殺し、私はヘルメットを脱いだ。
デバイスを開き、コードを打ち込みながら問いかける。
「蘭京子……元自衛隊、最終階級は三等陸佐。
現在は内閣特殊情報調査室にて特殊任務に従事している。
………水上、竜斗だな?」
>>393 「違います、と答えたらどうするつもりですカ?」
くだらなさそうに女を見やる。
悪くはない、いや、むしろ好みと言ってもいい。
……このような女が、阿呆のように堕ちるのを見るのは。
「その三等陸佐殿が、ボクに何のご用ですかね?」
>>394 ふ、と微かに口元を綻ばせる。
「返し方としては月並だな。
何………そろそろ、重ねた悪事を償う時が来た、と言うことだ」
コール・マンティス
『─召喚・蟷螂─』
コードを打ち込み終わったデバイスの画面から、電子的な音声と共に
光が溢れた。
「召喚!!」
音声入力で最終ロックを解除。サモン・サイン
光の軌跡で、宙に五芒星を……召喚陣を描く。
「…………………」
それが消えた時、私の身体を”切り札”が包み込んでいた。
……昆虫の複眼を模した、広域視界統合カメラが水上を捉える。
>>395 「独創的である必要はないでショウ?」
そう言いながら、距離を測る。
この場所には武器となりうる「水」がない。
それを承知で来たのだろうが……
そして、京子の姿が変わる。
昆虫を模した複眼、輝く鎧。
「なるほど、それが内調の秘密兵器というわけですか……
カマキリは、雌が怖いと言うことですネ」
地面を蹴り、距離を取る。
あれは何らかの強化外骨格。
如何に魔王の力で常人以上の膂力があるとは言え、正面からは危険すぎる。
ならば、距離を取り、出方を見るべきだろう。
……水上にしては、消極的な判断であった。
>>396 デバイスを、露出した口元に嵌め込む。
セットアップ セーフティモードアクション スタート
『─召喚完了・残り機動時間299秒・カウントダウン開始─』
エネルギーが流れ込み、白い装甲が薄茶色に変わる。
後退する水上の反射速度、移動速度が記録されていく。
「「直に、秘密兵器でも何でもなくなる……その時が、貴様らの最期だ。
はッ………!!」
それを追い跳躍、距離を詰めると足元の砂利を散弾銃の弾のように
蹴飛ばした。
【落ちるわ】
【再開の打ち合わせは、向うの伝言スレで】
【少しばかり待機致します。ロール限度時刻は1:00まで】
【こんばんはー】
【お相手よろしいでしょうか?】
>>400 【はい、お願いします。】
【シチュエーション等、何かありますか?】
【シチュは…どうしましょう】
【恥ずかしながら七妖会関係ぐらいしか思いつかないです】
【一応、プロフに目を通したのですが七妖会での静さんの立ち場は】
【どの程度のものなのですか?】
>>402 【では、そちらの希望キャラクター(退魔/妖魔)をまずは決めていただけますか?】
【それと、雑談orエロールかを決めて頂ければ。】
【立場というと、階位の事でしょうか?】
【各部隊の部隊長が日妖で、その補佐をしていますので、分かり易く言えば課長補佐とかあたりでしょうか…。
やっている事は秘書みたいなものですが。】
>>403 【ありがとうございます】
【では妖魔側。エロールも頑張ってみますが流れ次第で】
【シチュは人間に対して若干消極的な姿勢が見られるとして】
他の日妖の者に召喚される、とかどうでしょう?】
>>404 【では、私の方が階位は下側ですね。了解しました。】
【えーと、それでは書き込みますので、少しお待ちください。】
――― 七妖会本部。
滅多に訪れる事のない場所へと今日は来ていた。
それというのも、どうも私の行動に対して誰かが目を付けたらしい。
遠見 幻也の所属というだけで余所の部隊からそのような状況に晒される事はあまりなかったのだが、
どうも今度の呼び出し先は日妖の方であるらしい。
少しばかり、不安が胸中を過る。
だが、この場は不安を晒してはならない。
萎縮が、更なる疑念を生み出す事を、自分でもよく理解してはいた。
「…失礼致します」
普通の人間が使うようなオフィスと変わらぬ、簡素だが汚れのない木製のドアをノックした。
この向こうに、私を呼び出した存在が居る…。
【では、宜しくお願いします。】
「…来たか。」
部屋までの通路は何ら人の物と変わりは無いが
木製のドアを開けると、そこは既に人外の場。
中で待ち受けていたのは4、5mはあろうかという青白い巨体に
人の目を生やしている『百目』であった。
「此処は何者も虚言を吐く事が叶わぬ……「心眼の間」
さて…貴女が何故、ここに召喚されたのか…分かっておるか?」
その巨体を揺らして、肘掛を軋ませると
部屋に入ってくる静を多くの眼が一斉に注視する。
【よろしくお願いします】
【ちなみに遠見 幻也さんって日妖という認識で正しいですか?】
「……!」
部屋に入った途端、瞑目の身にも、身を刺すような視線を感じた。
まさか、『心眼の間』とは。
噂には聞いていたが、足を踏み入れるのは初めての事だった。
眼前で眼力を放つのは、人の世界にも名の知れる妖魔の一人である百目であろう。
だが…逆に、ここまで周到な状況を作られると、こちらとしても踏ん切りがつく。
怖じる事なく、真っ直ぐに顔を向け、その存在に向き合った。
「…ご用件は知らされておりません。」
きっぱりと、それだけ言葉にして告げた。
【正しいです。<遠見=日妖】
「そうか…知れぬか。」
真っ直ぐに向けられる言葉と態度。
それで億劫そうに大きな胴には不自然に小さな手で
髪などない頭を掻く。
同時に、自分の横で机に座っている妖魔へ目を一つ向け
筆を取らせ書記を始めさせた。
「実はな。外部のもの、詳細は知れぬが――カラスという者から垂れ込みがあってな…。
今、貴女には…対人間への消極的態度の疑惑
及び……我らに対し謀反の嫌疑が掛かっておる。」
…一呼吸おいて…
「この容疑について、何か申し開きはあるか?」
淡々と内容を告げ終えると
一挙手一同を見逃しまいと全身の眼が細まった。
「カラス…?」
覚えの無い名だった。
「私が対人間について、積極的になれていない事については申し開きはありません。
目立つ動きをしないように、というのが私の所属する幻也様の部隊の基本理念であります故。
…ですが、私は会に対して謀反を企てるつもり等、ありません。」
百眼相手に、虚偽は通用しない。
それは、彼が既に言葉にした通り。
故に、言葉を選択し、並べていく。
消極的というか、幻也様の部隊はそもそも、
人間に対する制裁という形式ではあまり動いていない。
それは、ともすれば、他の火妖を主力とした
殲滅系の部隊からすればあざとく見えるのかもしれない。
人間世界の裾の綻びから、それを侵食していく毒を少しずつ流し込んでいく。
それが、今の幻也様のやり方だった。
『Blood』 『封印妖魔の顕現』 『人間世界での末端からの情報操作』
そう言った、極めて回りくどい方法を、あの方は好むのだ。
そして、私も直接ではないがそれらの行動には加担していた。
地蟲の設置や回収、妖魔や退魔情報の纏めなど…。
それは地味ではあるが、謀反を仄めかすものではない。
心を冷静に保った。
余計な考えをすると、それが百の眼に気取られる。
――― 今考えるのは、己の七妖会の内での役割のみ。
当たり障りの無い模範的な回答だった。
百ある眼に映されるのは、何一つ動揺を見せない
平時どおりに振舞う和装の令嬢…。
確かにと、頷きつつも審議の為に言葉を並べていく。
「それは真実か?
――貴女と同じように我らに疑念を持たせる
日妖の吸血姫「グリューネ・ディオナ」…
水妖の邪視もつ鳥「羽深 慧」……九尾の「紺…
そして貴女と同じ「遠見幻也」所属の「桐生 葉月」……。
これらの者達への質疑は既に終了し、その嫌疑も晴れておる、が…」
巨体を震わせ、読めぬ心のうちを読み取ろうと
全身の眼の赤く光らせた。
「貴女と面識のあった老という年老いた土蜘蛛が、これに引っかかりったのでな。
一応、質疑をしておかねばならなかったのだ…。」
「我が樹身に誓いましょう。そも、私の本体は七妖の場に置かれる身。
企てをした所で、あの大樹を焼かれれば、私に先の道などありません。」
そう、企てなど考える事は出来ないのだ。
あの場所に、私が「置かれている」限り。
だが、真実だ、とは答えなかった。
そう答えると、言葉は絡み合う虚偽となり、百眼に読み取られる。
だから『それは真実か?』との問いに、『誓いましょう』という言葉だけを返した。
何を?とは言わない。
全て、百眼から与えられた言葉に繋げる事で、言葉の真偽を乱す。
「葉月様まで…?」
葉月ほど、造反という言葉の合わぬ妖魔も居ないであろうに。
彼女は、実直過ぎる程に、幻也様に啓蒙しているのだ。
…尤も、それ故に幻也様の動きに左右されるのではあろうが。
しかし、百眼に続けられた言葉に、束の間、息が詰まった。
「…老が…?」
近日の大樹の下での、あの一時を思い出す。
己が髪を梳き、他愛なく言葉を交わしてくれた老蜘蛛。
それが、諮問にかかったという事は。
「そんな…老は、老はどうなるのですか!?」
己への質疑よりも、心が乱された。
「あの者は幻也への啓蒙が過ぎておる。
あれは個への忠誠であり…組織の忠誠ではないのでな。
我は何千何万という嘘を見抜いてきた。
真偽を確かめたいが…幻也を呼ぶ訳にもいかぬだろう?…そういう事だ。」
かの者は頭が切れすぎるのだ、と心中で呟く。
それに――私的にも気に食わぬ。
畑は違うが同じ情報を扱うものとして、少なからず抱く対抗心がある。
「謀反の芽ありということが知れたところで拘束。
その場で貴女の事も尋問したのだが……。」
ようやく見せた動揺に眼を愉快げに細める。
もっとも尋問には関係はないことなのだが――
それでも心が躍るのは、やはり相手が忌み嫌う幻也の手のものだから。
「拘束が甘かったのであろう。喉を斬り…自害しおったわ。
ほれ…これをくれてやる。」
冷然と言い放つと、無造作に竹筒を投げ捨る。
乾いた音を立てて、床の上を竹筒が転がる。
その音を聞く私は、呆然自失の体だったに違いない。
一歩。
二歩。
竹筒の落ちたと思しき場所へと、肩の力の抜けた脚を進めた。
からり、と音がして、爪先に何かが当たる。
それを、のろのろと拾い上げ、手の上で指先で確かめる。
―― 間違いなく、あの時、老蜘蛛が渡してくれたものと同じものだった。
「……諮問は……私への諮問は、これで、終わりですか」
言葉を搾り出す。
…この妖魔の前で、弱さは見せるまい。
涙も、脆さも、何もかも。
そう思いながら、竹筒を、僅かに握り締めた。
「ふふふ…盛期は大層な戦者だと聞いておったが
何という事は無い。それはそれは、あっけない最後であったぞ…。
あぁ、貴女にも見せてやりたかったわ。
あの年老い弛んだ眼に殺気を浮かべ、我を見あげる様をな…!」
頼りない足取りで向かう様に躍る心が止まらない。
幻也への歪んだ対抗心を隠す事無く表へ曝け出し
青白い巨体を震わせて、笑う。喉の奥から声を絞って笑った。
「こほんっ…そうだな。
どうやら…くく…貴女の中に謀反の芽を見つけられんわ。
いやいや…失礼した。帰りはあちらぞ?」
大きな扇子を手に取り、笑い声を噛み締めながら
何とかと、いった風に大仰に頷く。
「あぁ、そうであった。くれぐれも幻也よろしく頼むぞ?
我は随分と奴とは顔を合わせておらぬのでな。
今度、久しぶりに月見酒でも興じようではないか…と、我が言っておったと伝えておくれよ?」
「そうですか。では、失礼致します。」
愉悦を込めて一言一言を放つ百眼に、言葉を返す。
ここはまだ、心眼の領域。
それだけを心に留めて。
「伝えおきましょう。幻也様にも」
湧き出でる言葉の泉とは逆に、頭は完璧なまでに澄み渡っていた。
だが、扉へと手をかけ、静かにその手を止める。
僅かに、顔の半分を百眼と、その書記官の方へと向けると、
最後に一言、言葉を突き刺した。
「百眼様…妖魔とは言え、逝去された方を冒涜するのはいかがなものかと思います。
私を辱めたいのならば、向き合ってなさりませ。…幻也様に対してならば、尚の事です。」
目は開かない。
百の眼があろうとも、目を瞑ったままの私一人に、
斯様な真似でしか意趣返しの出来ない妖魔を一顧だにするつもりはなかった。
そのまま、扉を開け、外へと出る。
竹筒を、一方の手に握り締めたまま。
【私は、次のレスで〆ますので、宜しくお願いします。】
「……ふふ、心に留めておこう。」
嫌味にも扇子を開き、涼しげに応対してみせる。
眼を山形に歪め、いかにも自分は職務に忠実な…
下の者の皮肉にも寛大な大物の妖魔であるかのように振舞った。
のっそりと巨体を立たせると、最後に分厚い唇を小さく動かす。
「あぁ、弱者を弄る事の気分がいい事よ…胸の内がすっとするわ。
くく…それにしても愚かな事よ。土蜘蛛は我が殺したのにな…誰も知れぬとわ。
事の真偽など、どうでも良い事よ。我の手柄になればなぁ。
…さ、良い気分のうちに月見酒でも楽しもうかのぉ…ほっほっほ…。」
――それも書記官は、只静かに書き記していく。
そして書く者は心中呟いた。
「…謀反の芽を見つけたり…その者、日妖「百目」…か。」
「心眼の間」のドアが閉められる。
もうこの場が使われる事は…無い。
本部を出、回廊を通って私は、己が本体の前へとやってきていた。
澄み切った空は、今もあの時と同じ日差しをこの場所に与えている。
さわさわという葉擦れの音が、広い草地に響く。
「老……」
竹筒を握り締め、ゆっくりと跪くと、それを大樹の根元へと置いた。
『うん、うん…御前は、やはり笑っておられるのが似合う。
わしのような無骨者には特に良い目の保養になるわ。
ほれ、あの大樹も御前につられたのか、まるで笑っておられるじゃ。』
あの時の老蜘蛛の言葉が、脳裏を過った。
「―― あっ」
頬を伝うものがあった。
止める事なく、流れる雫。
心眼の間では、心の奥に仕舞いこんでいた哀しみが、瞑目した双眸から溢れる。
「老…どうして、先に逝ってしまわれたのですか…」
膝を草地の上についたまま、零れ落ちる雫を押さえるように両手で瞼を覆い、嗚咽をあげる。
―― もう、あの温かな一時は、戻って来ない。
青空の下、私はただ老蜘蛛の遺した竹筒の上に己が哀しみを落とし続けた。
いつまでも、いつまでも。
【お付き合い有難う御座いました。】
【老蜘蛛の方と同じ方でしょうか?いずれにしてもお疲れ様でした。】
【また、折りがありましたら宜しくお願い致しますノシ】
【ありがとうございました、お疲れ様です。】
【えーっと、蜘蛛の方とは違いますね。それしても色んな方のキャラ借りてスイマセン】
【はい。お願いしますーノシ】
【寝落ち誠にすみませんでした】
【解凍します】
>>397 (予想していたよりも速いか……)
後退する水上を追う京子、いや、マンティス。
その足下から噴き上がる砂利。
いつもの水上ならば何ということもない「状況」
だが、水が周囲に存在しないと言うことが、水上からいつもの冷静さを奪っていた。
契約者の身体能力であれば回避も容易くはないものの、可能だっただろう。
だが。
「くっ!」
思わず両腕で砂利を防ぐ。
結果として一瞬ではあるが水上はマンティスの姿を見失う。
その一瞬が、致命的な一瞬。
>>420 『─残り機動時間272秒─』
飛ばした礫は、ガードを上げさせるための初撃。
地面を勢いよく蹴って踏み込み……腹部に拳を打ち込む。
「ボディが……ガラ空きだ!!」
この追撃で体勢を崩し、さらに祈るように組み合わせた両手を、
ハンマーのように打ち下ろす。
……私自身は魔法も魔術も使えない。 マーシャルアーツ
使えるのは身体を痛めつけ、刻み込んだ格闘のスキルのみ。
「はッ……!!」
ただそれだけだ……だがその重みは、魔法や魔術に引けを取る
ものではないと信じている。
【御気になさらず】
>>421 「しまっ……!」
腹にめり込んだ拳に言葉が、息が詰まる。
身体がぐらりと傾ぐ。
そして追い打ちのように背中にもう一撃。
避けられるはずもなく、不様に地面に叩きつけられる。
「……がっ、かはっ!」
それでも素早く反応し、転がってそれ以上の追撃を避け、起きあがる。
「馬鹿な、この俺が……」
水がない、と言うだけで……と続けようとして、はっ、と思い至る。
(俺は、何を焦っていた。
水がないから、何だ。
俺は、俺のままでいる。ならば、何も「不利な状況」ではない)
「くくくっ、ははははっ、はーっはっはっはっはっは!」
笑う。
笑う、笑う。
力に「溺れていた」己の愚かさに。
そして……
目の前の不格好な鎧の女に。
「それだけか、蟷螂女。まだ、俺は生きているぞ?」
>>422 『─残り機動時間249秒─』
頭部への強烈な打撃……常人なら、頭蓋骨が陥没している。
それを免れたのは、水上が常人では無かったという事と。
(直前で、セーブが掛かった……。
…データを取るために、戦闘を長引かせる気ね…)
内心舌打ちをする。
内特での自分の存在意義は、あくまでこのスーツの、代わりの利く
被験者に過ぎないことは嫌と言うほど解っていたが……それでも。
「……らしい……なッ!」
再度間合いを詰める。
右のジャブをフェイントに、水上の足を踏んで固定し、至近距離からの
肘打ちを放つ。
(蓄積されたデータから導き出される予測は……。
……82%の確率で、自分の血液を利用した攻撃か)
ならば、このまま打撃で揺さぶるだけだ……何も、問題はない。
無い、筈だ。
>>423 ……なるほど、認めよう。
「今の」水上竜斗は弱い。
操作すべき水を奪われ、多少向上している身体能力も所詮は蟷螂の斧。
蟷螂を相手にするには不足だ。
だが。
何故、魔王は彼を選んだのか。
その魂が穢れているから?
――――YES
その能力が魅力的だから?
――――YES
そして、彼が人間だから。
――――YES
(こうなった状況で、俺が水を得るには、自らの血を流すしかない)
(だからこそ、こいつは刃物を使わない。一定以上の出血を避けるためだろう)
(八方塞がりだ、その筈だ)
(だが――――)
どくん、と心臓が跳ねる。
比喩ではない、実際に、跳ねたのだ。
鼓動が早まり、心臓が跳ねた。
生物には、固有の「生物的時間」が存在する。
心臓の鼓動、その総鼓動数は生物によって定められている。
ゾウも、ネズミも、人間も、その鼓動数は同じなのだ。
では、何が寿命の長さを決定するのか。
鼓動速度である。
小さな生物ほど鼓動速度が速く、時間を短く生きる。
鼓動が早いと言うことは、それだけ早い時間に存在すると言うことなのだ。
そして、今。
血流の操作を行うことで、水上は、その時間的速度を一瞬にして高めた。
人を遙かに超えた超高速の世界へと、踏み込んだのだ。
超高速の世界から、超高速の拳が、蟷螂を模した鎧の背中に炸裂した。
そう、何故魔王が彼を選んだのか。
――――彼が誰よりも、進化する存在だからだ。
>>424 『─残り機動時間242秒─』
異変は、フェイントのジャブを放ち、足を踏もうとさらに踏み込んだ時に
起こった。
足裏が、水上の 足 の 感 触 を 捕 ら え た 、 と 。
そ う 感 じ た の と 同 時 に 。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ‥ ……!!」
………私は、背後からの打撃を受けて吹き飛んでいた。
装甲内の人工筋肉が、背面と、土の上に叩きつけられた衝撃を緩和する。
アブソーバーも兼ねているこのシステムが無ければ、今頃私は地を這って
いただろう。
クロックアップ
「『超加速運動』………か!」
装甲で守られているとは言え、この衝撃……受け続けていては、中身である
私が持たない。
コール・トランスミューテーション
『─要請・限定解除─』
即座にガードを固めて、アクティブモードの使用を申請する。
……私がどれだけ、衝撃に耐えれるかのテストに以降するのでなければいいが。
ちらりと、そんなことを考えた。
>>425 超加速。
人の知覚し得ない域での行動。
ただ速いだけに過ぎない。
だが、その桁が違いすぎる。
虚実の混じらぬ、全て重みの乗った実の拳。
一つ一つが必殺の拳。
それが、雨のように降り注ぐ。
「どこまで耐えられる……!」
>>42 『─残り機動時間219秒─』
びしり。びしりびしりびしりびしり。
装甲に亀裂が入り、その度に衝撃がより深く、身体に染み込んでいく。
ほんの十数秒だが……その間に受けた拳の数は、今までの人生の中で
受けた拳の数にも等しいほどに上っていた。
「く………ぐッ…………ぐッ……!!」
片手片膝をつき、うめき声を漏らす。
その身が、地面にみしみしと沈み込んで───。
テイクオーダー アクティブモードアクション リスタート
『─要請承認・残り機動時間179秒・カウントダウン再開─』
───弾けた。
視界が、一気に高くなる。
跳躍が頂点を迎えるその前に、薄茶色の装甲が剥がれ落ち、新しい装甲に
生まれ変わる。
その色は────翡翠と同じ、鮮やかに輝く緑。
>>427 「なるほど、それが切り札か」
翡翠に輝く、その姿は確実に美しく、確実に「死」に満ちている。
ゾクゾクと奔る感覚。
だが、だからこそ。
「どこまでやれる、蟷螂風情が!」
地面を蹴る。
同じ高さで、再び拳の弾幕を炸裂させた。
>>428 どこまでやれるか。
そんなことはあの日からもう決まっていた。
「決まっている……!
全ての妖魔を、私が倒すまでだ……!」
胸の奥が、黒い炎で滾る。
失ったもの、守れなかったもの。
例え全ての妖魔を倒したとしても、それは決して帰ってこない。
解っていたが、認めることなどできなかった。
闘い続けていなければ、その事実に心が穴だらけになりそうだった。
(それでもいい………!
私は闘って闘って闘って闘って、燃え尽きるまで闘うだけよ……!!)
両腕両足に装着された四つの魔鎌、アズラエルが紫電を放ち宙を舞う。
四つの方向から、スタンモードに設定された鎌が水上を襲った。
そして五つ目の方向……上から、落下の運動エネルギーを込めた一撃を放つ。
>>429 「ならば……!」
四つの刃が、四つの方向から襲い来る。
既に超加速も限界に近い、これ以上続けていては、身体が保たないかも知れない。
だが、超加速のアドバンテージを失うわけにはいかない。
もし、超加速が切れれば、最早水上に抗う術はない。
だから、最短を目指す。
気と血流を操作し、左腕に全てを集中し……右の手の指を食いちぎる。
細く伸びた血の筋が、地に落ちた指と水上を繋ぐ。
そして。一つめの刃を、受け止める。
腕に突き刺さり、走る激痛と電流。だが、電流は水上の身体を通り抜けた。
食いちぎり、落とした指と繋がった血の筋がアースとなったのだ。
続けて腕に突き刺さったままの刃を振るい、二つめ三つめ四つめ、刃を全てたたき落とす。
そして頭上から迫るマンティスの拳。
それに腕に突き刺さったままの刃を叩きつける。
粉々に砕ける刃。そして。
「……俺の元に来い、俺の狩人として、全てを狩らせてやる」
水上の右掌が、無防備なマンティスの腹に気を「徹し」た。
>>430 「な………!」
回避不可能の攻撃……それの初撃をあえて受けることで、
残りの攻撃を叩き落す光景が、全ての複眼に映される。
そして既に、こちらは攻撃に入ってしまっていたが故に……水上の
拳を避ける術を失っていた。
「……かはッ…………!!」
カウンター気味の掌打が腹部に吸い付き……そこから波打つような
衝撃が全身に広がっていく。
パイロットステータスレッド マンティス・アンサモン
『─被験者戦闘不能…………蟷螂・送還─』
……最後に聞こえたのは、『切り札』の送還を伝える電子音声だった。
意識が混濁し……暗闇に落ちていく。
「…………う………」
>>431 「これで、お前の牙は全てへし折った」
(だが、俺の牙も限界か)
マンティスからまろび出た女を抱きかかえるようにして地面に降り立つ。
そっと唇に触れ……京子の肉体の全てを、掌握した。
そして、京子を起こす。
「起きろ、京子」
【そろそろ凍結or終了したい】
【凍結として続きをするのならば、ここからはエロール】
【終了であれば、身体に「種」を植えて解放となる】
【どちらがいい?】
>>432 口の端から滲んだ血が、ルージュのように唇に塗られる。
その血から、肉体の情報が、記憶が、全て伝わってきた。
「………………………」
うっすらと、目を開く……視界が、意識が定まらない。
【あまりスレを占領するのもよくないので、ここで一度終了で】
【と思ったけど、落ちてしまったみたいね】
【どの道続くなら、終了じゃなく凍結にさせてもらっていいかしら】
【落ちるわ】
【再開の打ち合わせは、向うの伝言スレで】
仮面ライダーのパクリに興ざめ。
色々言うわりにはオリジナリティ無い奴だな。
>>435 最近の仮面ライダーはあんなことするのか?
仮面ライダー自体見てないんで分からん。
、ヾ:;:::::::::::::::::::::':::::::-、
、ミ::::::';:::::::::::::::::;';:::::::::::::::::ヾ、
i':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
ミ:::::::::::::::::;:;;::::::r -‐'''"'ヽ::::::::::!;!
ミ::;r--‐' `ヾ ミ::::::::::i
.l::! ;.:ミ、:::;::::l,r‐、
ヾ _,......::::/'ヾ:::: ;.!
! .::'r t.j;、:::/:::: ::' ' !
i.llir_,=:ll!,.- :l:. ::::'::',!:::::::; ...!-'!:ヽ
_! ``´' l! ' ,`−´ .::::: ::::::::l:::::::`:::
ヾ ‐ '´; ,ィ:., .::::::::::::l:::::::::::::
ヽ ,r';';":;:::";';;! ..:::::::::::/:::::::::::::
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クワシク [S. Kwhask]
(1940〜 ロシア)
>>436 するぞ。
仮面ライダーカブトでぐぐってくれ。
>>蘭さん
おいおい…、自分が現存の仮面ライダーの内容をパクり、
それを指摘されたから水上さん庇護の第二スレでとはどういう了見か?
第二スレの利用定義が
>>1にあるので良く読んでくれ。
取り合えず私が言いたいのは、あなたたちの指摘は正しい。
けれど指摘するための意見を書き込んだスレが間違っている、ということだけよ。
こういう書き込みは、避難所の雑談か、ヲチスレでやって欲しい。
そこで非難する分には、全くあなたたちの指摘は正当になる。
ここはあくまでロールする場所、ということをあなたたちが再認識してくれることを
お願いするわ。
パクリ、というか主に平成ライダーシリーズをネタにしてるのは事実だけれど、ね。
>>439 一度指摘された程度で破棄だの削除だの喚くならやめた方が良いかもな。
ここで意見するのは避難所の管理人が水上氏だからだ。
キャラである以上公平なジャッジは難しいと思われる。
しかも本件は水上氏も絡んでいるので尚更だ。
貴女の言う事も良く分かるが、このような背景である事を理解してもらえると有り難い。
指摘や叩きやヲチで少々言われても
軽く受け流す事が出来なくては嵐や厨が調子に乗るだけだぞ。
朝早く目が覚めればこれですか。
やれやれ。
一度しか言いませんから、ご傾聴いただきたい。
>>440 私は基本的には議論に参加しないスタンスを取るよう心掛けています。
もちろん、そうはなっていないところも見受けられるでしょう。
ですが、それであれば避難所で言っていただければいいだけのこと。
それとも、あなたは私が自分への意見は削除封殺するとお思いなのでしょうか。
それであれば、大変失礼極まりないと言わせていただきます。
私は基本的に名無しもキャラハンも同格と考えています。
故に、避難所では基本的に削除を行わないと公言させていただいています。
どのような意見であれ、意見は意見と捉えているからです。
これは公正さを示すものにはならないでしょうか。
また本スレッドはロールの場、それ以外の案件は避難所で行うのが大前提です。
本スレッドでの議論や意見は荒れを呼ぶだけで百害あって一利なし。
重ねて言いますが、意見があるならば避難所にて願います。
以上です。
ご静聴感謝します。
【空いているようですので、待機しますね。】
【こんばんはーノシ 私でよろしければお相手していただけるでしょうか?】
>>443 【こんばんわ。構いませんよ。】
【どのようなシチュにしましょうか?また、靜でよいでしょうか?】
【他の七妖をお望みなら、変えますが…?】
>>444 【はい、静さんで―――。
そちらがやりやすいのであれば、他の七妖でもいいですが】
【こちらとしては、前回の続きで、妖魔のことで何か知るきっかけとなるような
シチュをしてみたいなぁと思うのですが…】
>>445 【分かりました。】
【では私から…と思ったのですが、お願いしてよろしいでしょうか。】
>>446 【はい、それでは適当に書き出しますので、ソレにあわせて頂けたら】
―――街の郊外。
あたりは田畑が広がっており、古びた小屋がぽつんぽつんと点在するだけだ。
別に妖魔を発見したという噂を聞きつけたわけではない。
この間の妖魔―――、靜という女性から話を聞いて私は気になっていたことがある。
妖魔にも妖魔の暮らしがあるのだということ。
先日、私を襲った蛟という妖魔は人間に住処をダムにされて人間に憤慨していた。
結局のところ、退魔士も妖魔と同じようなことをしているのではないかと思い始めていた。
どちらも、お互いを拒み攻撃しあう。
それを止めさせるにはどうしたらいいのか。これ以上悲しみを広げずにすむにはどうすればいいのか。
考えた結果、もう一度彼女に話を聞くこととなった。
待ち合わせはここ。
ここであれば、人目につくこともないだろう。
天上に輝く星星を見上げながら、私は彼女が訪れるのを待った―――。
「……」
すり足を進めるようにして、田園の広がる道を歩む。
この辺りには、都市部のような空気の汚れもなく、澄み切った風を感じる事が出来た。
既に、夜間でも肌寒さを感じるような時期ではなく、夜気は穏やかに肌を冷やすのみ。
向かう先に、この前に出会った少女の気配を認め、静かに歩みの向きを修正する。
以前に庵で話を聞いた際には、色々と考え込んでいたようだが、
それでも、彼女の心の底にある決意らしき輝きは、鈍る色を見せなかった。
少しでも、彼女の力になれれば良いのだが…。
「お待たせ致しました、佐々木様。」
誰も居ない道の中、ぽつりと置かれた木製のベンチを近くに認め、そこに向かう。
立ち話をするには、長い夜になりそうだった。
【では、宜しくお願いします。】
鈴の鳴るような声に、ん、と視線をその声の主に向ける。
こんばんは、と小さく挨拶を交わすとベンチに腰を下ろして背もたれにかかった。
「今夜はわざわざお呼びして、申し訳ありません。
実は―――、あれから色々と考えて聞きたいことがありまして」
妖魔と人間の対立の要因。
それはお互いがお互いを拒み、干渉しているからのではないか。
お互いがお互いを拒み続ける限り、争いはずっとこれから先も続くのではないか。
その疑問をそのまま口にした。
私が生まれてくる頃よりずっとずっと果てしなく昔から続いてきた因縁。
私一人が何をして、何かを変えられるかは分からない。
それでも―――、あのような悲しみを知る人が、妖魔が減るというのであれば
私は無謀でも可能性の低いことでもやってみせる。
「教えてください。 ―――貴女の知っている妖魔のこと、もっと教えてください。
何でもいいです。どうして妖魔が人間を憎むのか、殺すのか、中立の妖魔はいるのか。
―――、少しでも前に進めるのであれば」
真摯に彼女の瞑目されている瞳に視線を向けながら、はっきりと言葉にした。
ベンチに腰を下ろし、静かにその風雨に汚れた表面を撫でる。
人間によって不本意に削られ、己の命を潰えねばならなかったばかりか、
新たに与えられた役割すら長い事果たせなかった木に、労わりの言葉を心内で呟いた。
「…確かに、それはその通りです。
ですが…それは既に、摂理と言ってもいいような事柄。
私も、ずっと長い間、何か手立てはあるのかと考えてきた事でもあるのです」
佐々木様の言葉に、静かにそう告げる。
二千年の間、私が模索し、足掻いたその先。
それを、彼女が見つける事が出来るのだろうか。
「妖魔が人間を憎む…というのは適切ではないかもしれません。
貴女は……妖魔という存在の殆どが、どのような生まれをもってきたものだと思いますか?」
真摯な視線を感じながら、穏やかに問う。
答えは、私の口から直接紡ぐべきものではない。
彼女自身が、その答えに到達できなければならない。
「摂理……ですか」
摂理。言葉としては分からないでもないが、実際考えてみると難しい。
まるで決して破ることができないルールかのような意味にも聞き取れる。
だからこそ、今までその摂理が変化を遂げることができずにいるのだろう。
「妖魔の…出自、ですか?」
それは考えたことがなかった。
私は妖魔はそこにあるのが当然だと、この力を身につけてから考えていた。
だが、妖魔も存在する限り、人間と同様何か起因があるはずだ。
―――改めて考え直す。
「………この間の蛟という方のことを考えてみましたが、
もしかして、人間が作り出している、なんて話じゃないですよね?」
可能性としてはありえないことだと思う。
自然を破壊している人間が獣たちに恨みを持たれて何らかの力をもって
妖魔として変化した―――と考えても可笑しくはないわけだ。
しかし、妖魔が人間を憎む、というのは適切ではないという。
…ならば、どういうことだろうか?
「半分当たりであり、半分が外れですね。」
佐々木様の言葉に、首を傾げる。
自然破壊への警鐘という意味を持つ妖魔も居ないわけではない。
だが、それは一部でしかなく、またそういった妖魔はえてして力が弱い。
佐々木様が言っているような、人を殺す、そう言った妖魔の殆どは…
ある一定の律の元に存在している。
「…古来より、妖魔…特に妖(あやかし)と呼ばれる存在は、人間と合い争う存在でした。
それも、大抵の場合は人間よりも力が強く、人間を容易に打ち負かす程に。
夜という、日中とは異なる世界において、人間が恐れたそれらの存在は、次第に数を増していきました。
…人間の数の増大と共に。」
言葉を区切り、息をつく。
「この世界に現存する妖魔の…殆どは、人間の感情が作り出した存在です。
未知の世界への畏怖、恐怖、そういった負の感情が生み出した。」
勿論、例外はある。
だが、殆どがそうなのだ。
「そして、それ故に、妖魔は己の出自に則った生存本能を持ちます。
人間に恐怖を抱かせ、人間の恐れをその身に受ける。」
何故か。
それは、それこそが妖魔の存在意義だからだ。
>452
静かに黙って靜の言葉を聞く。
つまり、昔は妖魔も人間と同じぐらいの勢力を持っていたということ。
そして―――、私たちに悲しみを齎す妖魔は人間の影だと。
「……本当の人間の敵は、結局のところ、人間だ…ということですか」
それが本当ならば、怖ろしいことだ。
争いが絶えることがないのは必至。これから先も未来が明けることもない。
人間というのは複雑な精神と心、そして理性を持つが故に、その本質は脆い。
私だって、今まで味わった悲しみや挫折でそれを実感している。それに耐えることは、きっと難しい。
そうなるともう一つ怖ろしいのは―――
「つまり、退魔士の中には、それとは関係ない妖魔の生活も乱しているということですか?」
「…私のように、出自が違う妖魔も居ないわけではありません。
私は、人間の言葉を聞き、人間と共に歳を経る事で、力を得た存在です。
ですが、いずれにしろ、人間が居たからこそ、私達は存在しているのです。」
私は、一般の妖魔と異なり、人間の陽の心に触れる事で意識を手に入れた存在だった。
だから、他の妖魔とは思考が全く違うと言われる。
だが、そんな私ですら、内にある妖魔の衝動には逆らう事が出来ない。
「富士の樹海、という場所を知っていますか。
私の妖力は、そういった深い森に対する人間の恐怖が与えたものです。」
だから、私は音によって人を惑わす力を持つ。
樹海に迷い込んだ人間は、その膝元で次第に活力を奪われ、誘い込まれるように死んでいく。
そう言った事に対する人間の恐れが生み出した、私の忌むべき力。
「貴女が今まで戦ってきた妖魔の殆どは、殺戮の意思をもった存在だったかもしれません。
ですが、えてしてそれらは利口な存在だったとは言えないと思います。」
獣妖や、有象無象の下級妖魔。
これらは、最も低い根幹である『人間に恐怖を抱かせる』という心理に基づいて行動している。
だから、あてもなく人間を喰い殺したり、人間の女を襲ったりする。
「ですが、そうではない妖魔も勿論存在します。
ただ、どれだけの退魔士が妖魔の一部がそういうものではない、と理解出来ているでしょうか?」
人間の中ですら、誤解や勘違いによって殺人や殺戮が横行する、この世の中で。
「つまり……妖魔のなかにも様々なカタチのものがいる、と……」
そして、それは人間のほとんどが感知しない事実。
誰も知ることのない事実は存在しないのと同じ。
だから、何も知らない退魔士はその例外を知らず殺戮を繰り返す。
本来戦うべきものが何なのか知ることなく―――ただ、それが正義だと信じて。
人間が何かに恐怖を覚えないなんてことはない。
そして、その産物が自分が生み出したものだと知ることのないままそれと対立することになる。
なんという悪循環。
もちろん、その産物は妖魔のなかの一部に過ぎないのかもしれない。
けれど、存在しているのは事実。
もし私が望んでいる未来を現実のものとするならば、
―――もっと根本的なことを考えなければならないのかもしれない。
私は今までただひたすらに、刃を振ってきた。
だが、それだけではダメなのだと―――今更ながら痛感した。
「…分かりました。ありがとうございます―――。
でも、それでも私は諦めません。どれだけその先が絶望的なものだったとしても」
すっと立ち上がり、夜空を見上げる。
夜が訪れれば、朝明が訪れるように。
闇があれば、光があるように。
―――ならば、私はその恒常性の一片を担おう。
この世界が平らで安らかなものであるように―――妖魔も、人間も。
それは、果てしなく無謀なことかもしれないが。無駄に終わるかもしれないが。
少しずつ歩き出せば、その後に続く人間が何かに変えてくれるかもしれない―――。
「今の話を聞いても…佐々木様は三つ目の選択肢をなさるのですね。」
穏やかにそう言うと、立ち上がった佐々木様の手を握る。
夜気に少し冷えた手には、だが確かに温かな血の流れがあった。
「妖魔を滅ぼす側となるか、手の上で見つけられるだけの人間を護るだけに留まるか、
それとも、無駄と思いながらも解決の糸口を探すか。」
三つの選択肢。
限りなく残酷な選択肢でもある。
妖魔を殺す事は人間を殺す事と、ある種同義であるという事を
明らかにしながら、それを殲滅する選択肢。
結果的に何も変わらない事を知りつつ、
それでも目に入る部分だけを護り、自己満足するに過ぎない選択肢。
――― そして、全くの無駄の可能性を秘めている上、
人間にも妖魔にも振り向かれない結果となる可能性のある選択肢。
その三つ目を、彼女は探そうというのか。
「…失礼ながら、貴女一人だけの力では限りなく弱い。
先日の蛟様との戦いでもそれを痛感した筈です。」
「ええ―――それが、私の誓いでもありますから」
友への誓い。
それは折り曲げられない私の果たすべき約束。
その先が闇だったとしても、私はきっと走ることを止めないだろう。
誰かが傷つくこの現状に怒りを抑えきれないから。
理想論だと、自己満足だと、言われてきた。
甘い思想だと、そう言われた。
―――下手をすれば妖魔と人間、どちらをも敵に回すことになるかもしれない。
だが、それでも……。
「……分かっています。
だから、私はそこを含めて試行錯誤していこうかと思います。
どこまで出来るかはわかりませんが―――それが私の決めた道ですから」
笑う。
絶望が何だ。無謀が何だ。
笑えば、世界は明るくなる。それがたとえ虚勢であろうと、それを貫き通せば本物になる。
闇なんて笑って吹き飛ばしてやればいいのだ。
お前は何に絶望している。
お前には守るべきものがあるだろう。
そして、その闇の先を越えたときのことを思い浮かべろ。
それはきっと楽しいものだろう? ―――と。
「……それに、不本意ですが、少しばかり話の通じそうな退魔士を一人知っています」
初対面から私の頬にキスをくれやがった男。
本当に不本意だが、普通の退魔士と比べて頭は柔らかい。
話の通じない相手ではないと思う―――。やってみなければ分からないが。
「退魔士…そうですか。」
少し、彼女の手をとったまま、考え込む。
だが、それは最早、彼女の手をとった時に決めていた事だった。
「…私も貴女の力になりましょう。
私一人でも、貴女一人よりは、可能性が0.1%でも増える筈です。」
手をとったまま、立ち上がり、彼女の身体を優しく抱き締める。
温かな体温が、私の内を巡る流れと交差する。
「私は妖魔ですが、想いは貴女と同じ方向にあります。
ですから…共に歩ませて下さい。」
彼女の耳元でそう呟きながら、周囲に意識を凝らした。
一つ…このような場所にまで、目が訪れていようとは、迂闊だった。
「右斜め後ろ……来ます。受身をとって下さい」
言うが早いか、彼女の身体を突き放す。
瞬時にして、私達が居た空間を、一陣の風が走り抜けた。
土煙を散らし、何とか身体に制動をかける。
『百目の目録に目を通して、戯れに監視してみたが…斯様な光景を見ようとはな』
逆巻く風が本体を現す。
両腕が鋭く鈍色の輝きを放つ、白い狐面を被った男。
その服装は、山伏のような古めかしい出立ちをしている。
「――― 鎌風!」
金妖部隊、無所属の妖魔。
やはり、心眼の間での内容に不審をもった輩が居たのか…。
【ちょっとバトル入れさせて下さい。初共同戦線のような感じで。】
【因みに、鎌風の腕はC階位。ですが、そこらの妖魔よりは強いです。】
「…………!」
彼女の言葉に驚きを隠せなかった。
フリーの退魔士である私なら兎も角、彼女は妖魔だ。
私と一緒に居るようなところを見られたら、彼女は仲間たちと敵対する可能性がある。
だが、驚き以上に彼女の言葉が頼もしく、嬉しく感じられた。
「ありがとうございます―――…靜さん」
自然と、私は微笑んでいたように思える。
今までひとりで戦ってきたからだろうか。その言葉が鋭利な武器よりも心強く思えた。
「―――え」
何がと尋ねる前に私の身体は彼女に突き放される。
訳が分からないまま、大地に右手を叩きつけて受身を取り、すぐさま立ち上がる。
視線をあげてみると、そこには街中を歩いていたら確実に職務質問をされそうな妖しげな男が立っていた。
敵。
言葉にして思ったわけではないが、はっきりと彼が私とは「違う」ということを
直感で感じ取った。彼からは無機質な殺意がはっきりと放たれていた。
「―――力を、貸しなさい。 闇烏」
自分の相棒を召喚して、しっかりと大剣を握り締めて構え、怪しげな風貌の男をにらみつけた。
【はい、了解しましたー】
「鎌風…誰の命令で、私を?」
慎重に、問い質す。
横で、佐々木様が何かの妖刀らしきものを呼び出すのを感じる。
だが…彼女でも、一人で鎌風を相手にするのは厳しい。
『フン……これは私の一存だ。百目の失墜後、何かと慌しかったついでに目録を拝見させて貰った。
だが、確信したとも。貴様の首を持っていけば、私は更なる高みへ上がれよう。』
その言葉を聞いて、少し安心した。
少なくとも、彼以外には現状を知る妖魔はいないという事になる。
ならば、彼さえ何とかすれば良い…のだが…。
『そこな娘の力は知れぬが、所詮は人間。まずは児玉、貴様から片付けてくれよう!』
鈍色の輝きを放つ腕を構え、鎌風が駆ける。拙い。
接近に持ち込まれては、私では分が悪過ぎる相手だった。
恐らく、鎌風もそれを知っていて私を監視対象に選択したのだろう。
『得意の木笛を奏でる隙は与えんぞ!』
鋭い音を響かせ迫る一陣の風と化した鎌風を、何とか土中から木根を呼び寄せ、逸らす。
だが、彼の鋭くリーチの長い刃は、その根を回るようにして、背後から旋回し、襲い掛かる。
「あっ……!!」
眼前に、鈍色の刃が迫る。
「――――――私は誓いました」
一陣の風が吹くと同時に、私は身体を彼と靜の間に滑り込ませて刃を防ぐ。
鋼鉄同士が甲高い音を闇夜に鳴り響かせると、勢いに任せて薙ぎ払う。
「もう、私の目の前で悲しみを起こせさせないと」
さすが、というべきか。先ほどの一撃も重く、剣を持つ手にじんじんと揺れが伝わる。
だが、そんなことは構ってはいられない。
私が―――、いや、私たちが信念を貫くためには、こんなところでは立ち止まってはいられない。
「そのためには、貴方が邪魔をするというのなら、薙ぎ倒していくまで!
靜さん、離れて! 彼の動きを止めてくださいッ!」
あの木の根の鞭で牽制することが出来るかもしれない。
私の剣ではどうしても大振りになってしまうので、距離をつめたところで反撃を食らう可能性もある。
だから、彼女の協力で何とか動きを押し止めることができれば―――…いけるかもしれない!
『邪魔立てするか、人間の小娘。妖魔を庇うとは正気か?』
刃音を散らし、一旦距離を取る鎌風。
忌々しそうに、その腕を振る。刃と化したその腕には僅かではあるが刃零れがあった。
闇烏の持つ妖刀としての格の方が、鎌風の妖力の纏いを上回っているのだろう。
そして、私は間一髪の状況の間に割って入った佐々木様を、呆然と見上げていた。
「佐々木様……何故。」
この姿になってから、退魔士に護られた事などなかった。
だから、目の前に立つ少女の姿が、信じられなかった。
だが、それも刹那。
即座に彼女の言葉を理解し、たっと地を蹴る。
『ふん、私を薙ぎ倒すだと?小娘風情が笑わせてくれる!』
だんっ、と地を踏み締め、再び鎌風が飛んだ。
空中から優希目掛けて連段の拳と蹴りを放つ。
それはただの蹴打ではなく、全てが、両腕、両脚が刃と化した、恐るべき殺刃の一撃だ。
「護って!」
四連段の刃の内の二つを、木根によって防ぐ。
だが、残りの二刃が、彼女の元へと迫る。
動きを止めるには、木根では速度が足りない。
私は気付かれぬように、そっと懐から木笛を取り出した。
奏でるのでは間に合わない。「アレ」しかない。
だが、それには、二人の戦いの一瞬の隙を突く必要があった。
「ハッ―――。正気も正気ですよ。
妖魔だろうが、人間だろうが、目の前にある命は価値あるものです。
それに彼女は私の―――仲間です。それを傷つけるのであれば、誰であろうと許さない」
仲間。
彼女はそう言われて迷惑ではないだろうか。
だが、志を同じくするのであれば、やはり私はその言葉を口にしていただろう。
私の心強い仲間。今は彼女のためにこの剣を振ろう―――!
「今時の小娘は、絶望がごときに負けることがないんですよ。知らなかったんですか?」
彼の動作に集中する。
直感で避けるほど、私は経験をつんでいない。
ならば、その一挙一動を集中してみることによって、行動を読み取るしかない。
私で何処までできるか、分からないが…!
「ぐぅうっ!!」
木根で二撃は防がれるが、残りが重さを持って襲い掛かる。
少しでも気を抜けば、身を裂かれそうなその鋭く速い一撃一撃を剣で受け止めていく。
強烈な衝撃が剣を伝わって身に襲い掛かった。
踏ん張ることが出来なければ身体を吹き飛ばされ、手の力が抜ければ剣は弾き飛ばされ、
身体の反応が遅くなれば、その身は凶刃に切り裂かれてしまう。
だが、背後には私の仲間がいる。
ならばここを譲ることは出来ない。ここは私が通さない―――!!
《それに彼女は私の―――仲間です。それを傷つけるのであれば、誰であろうと許さない》
まだ、言葉だけでの結びつきだと言うのに、何故彼女はそこまで信じられるのか。
だが…それならば、私は余計にその言葉を裏切ってはいけない。
鎌風の攻撃を、渾身をもって受け止める彼女の背を見ながら、
私は既視感に捉われていた。
ああ、あの時の人間も、このようにして私の前に立ちはだかってくれたのだ…。
もう、あの時の繰り返しはしたくない。
この少女と、私は何処か似ているのかもしれなかった。
『チィィッ……邪魔だッ!どけっ!どかぬか!』
木笛を取り出す靜を見た鎌風が焦りに両腕を振るう力をあげた。
遠距離の攻撃を持たない事が、二人を相手取る事を困難にさせているのだ。
『かアッ!!』
遂に、両腕を同時に叩き付けるようにして闇烏へとぶつけ、
その大剣ごと、少女の身体を弾き飛ばす。
だが、既にその時、私の準備は完了していた。
『―― 音響技・震(フルエ)』
木笛の孔に口付けた瞬間、彼女を弾き飛ばして露になった鎌風に向けて、
一直線に衝撃波の塊が貫いた。
致命打にはなりえないが、身体全体を麻痺させる程の衝撃が貫いた筈だ。
『……!!』
空を見上げるようにして、狐面の姿が一瞬、身体を震わし、その動きを止める。
「どけと言われて、素直に退けるほど私も素直じゃありませんので、悪しからず」
とはいえ、苛烈な攻撃に、私が何処まで耐え切れるかはわからない。
防ぐことに精一杯で、このまま防戦一方になると此方が危機に陥ってしまう。
だが―――、これで終わるほど靜さん(かのじょ)も素直なヒトではないだろう。
「ぐぅううっ―――!」
弾き飛ばされ、土煙と共に起き上がり素早く現状を確認する。
―――やはり。
笛を手にしている彼女と苦しんでいるあの男を見比べて、私は確信した。
私が彼女を信じているように、彼女もまた私のことを信じてくれていたのだ。
心地良い。
不謹慎かもしれないが、誰かとこうして戦うことがこれほどに心強いものなのかと。
折角、彼女が作ってくれた好機だ。ここを逃すほど、私も間抜けな人間ではない。
「―――私の意志が、正しいのであれば」
急速に剣へと己が魔力を収束させていく。
私の周りは気温が低下し、足元からは波紋状に地面が凍て付く。
「力を貸しなさいッ……!」
思い描くは絶対氷結の剣。
悲しみを凍て付かし砕く私の信念―――!
「闇がらぁぁぁあすっ!! 討て! 停止を命じる精霊王の剣(アブソリュート・ゼロ)!!」
長大な氷の剣を瞬く間に創造していくと、それを思いっきり振りかぶりその男へと打ち落とす!
これから先の絶望と闇を打ち砕くように! 暖かい光を齎すようにッ…!
大地に叩き付けると同時に、氷柱が地面から生え、それが弾け飛び散る。
『き、貴様…このような…小娘に』
彼女が放った氷塊の刃が散った後、
ところどころが凍結によって砕けた妖魔の姿がそこにあった。
流石というべきか、ほぼ半身を失ってさえ、その命の灯火は消えていない。
だが片脚を失い、崩れ落ちる鎌風は既に戦える状態ではなかった。
ぱきり、と低温によって仮面が割れ、
その下から現れた壮年の男の顔が白目を剥いたまま、地に倒れた。
「佐々木様、止めは刺さないで下さい。」
更に剣を振り上げようとした彼女の手を、やんわりと押し留める。
「ここで彼が消えれば、疑惑の目が再び向けられるだけです。
…私に任せて下さい。」
そう言って微笑む。
彼の記憶さえ封印してしまえば、事は済むはずだった。
だが、一応は会に戻った後、彼が見たという目録を処分する必要がありそうだ。
「…私を信じて下さいました事、そして私を護って下さった事…感謝いたします。」
佐々木様の背から静かに手を回し、その身体を押さえた。
戦いの後で上気した肌の温度が心地よかった。
「私は、その想いに応えましょう。
貴女と共に。」
【そろそろ〆にしましょうか。】
「ここで―――!」
ここで最後の一撃を振り下ろさなければ、反撃が飛び込んでくるかもしれない。
今の一撃で、私の力は殆ど使い果たした。
これ以上戦いが引き延ばされると、今度こそどちらが大地に伏せてしまうか分からない。
だが、そんな私に靜の声が届いた。
『止めは刺さないで下さい。』
彼女の言葉にきょとんと視線で疑問を投げかける。
そして次の言葉で納得する。…が、同時に心配もしてくる。
彼を助けるということだろうが、傷が治るなり静を襲う可能性だってある。
だが、彼女はそんな私の心を見透かしたように控えめに微笑んだ。
「……静さんがそう仰るのであれば…。ですが気をつけてくださいね?」
何か策でもあるのだろうか?
だが、彼女が大丈夫だというのならば私はそれを信じようと思う。
彼女は安易に気休めを言うようなヒトではないだろう―――。
「……そんな、私の方こそ。 静さんがいなければ、私はどうなっていたことか、分かりません…。
本当に有難うございました、静さん…」
気が抜けてしまったのか、緊張が解け魔力を使い果たしたこともあってか眩暈を起こし倒れそうになる。
だが、それを靜が支えてくれて、もう一度ありがとうと口にした。
「―――きっと、いつか。 私たちの想いが遂げられるときがくると良いですね、靜さん…」
【はい、それでは私も次で締めにしますね】
「…ええ。私達の…」
静かに彼女の背に頭を当て、そう答えた。
誰かと想いを共有するというのはこんなにも清清しいものなのか。
「さぁ、今宵はここまでにしておきましょう。
いつまた、私の…知っている者達が来るとも限りません。」
そう言って、名残惜しく彼女の身体を離す。
倒れ伏した鎌風の身体は半身を失い、私でも持ち上げられる程軽かった。
…これからは彼女を捲き込まないように気をつけて動かなければならない。
今まで以上に。
「…また、お会いしましょう。」
仄かに微笑みを浮かべ、一礼すると、私はその場を後にする。
歩くその先にある道は、瞑目した身にも、今までより長く続いているような気がした。
【それでは、こちらはこれにて〆です。】
背中に彼女の額の感触を感じて、私も瞼を閉じて靜かに吐息を吐き出す。
こうして誰かに支えてもらえることが、安らぎを覚えるとは思わなかった。
今までひとりで戦ってきた。
己の信じるもののために…時には挫けそうなときもあった。
だが、こうして、道を共にしてくれる仲間ができたということで、私に更なる勇気を与えてくれた。
「……はい、すみません。迷惑をおかけします」
たしかに争いに感づいて近寄ってくる妖魔も来るかもしれない。
小さく首肯し、彼女の微笑を見てこちらも微笑みを返した。
彼女も私も笑えて暮らせるような世界―――、そんな世界がいつか訪れるのだろうか?
いや―――、私たちの一歩でその世界へと繋ぐ。
どれだけはるか遠い道だとしても、少しでもそこへ近づけるように。
「はい、またいつか逢いましょう…靜さん」
私は踵を返し、彼女とは違う方向に歩き出し家路へとついた。
【ではこちらもコレで締め、ということで。
どうもお付き合いいただいて有難うございました! ではまた〜】
【長い事お疲れ様でした。】
【茨の道の方向性ですが、頑張りましょう。】
【それでは、おやすみなさいノシ】
夕刻、街を往く多くの人々。
それ自体は何の変哲もなく、面白みもない風景だ。
毎日、毎日、欠片も変わることのないただの日常。
道を行く会社帰りの人間、ショッピングを楽しんだ若者たち……本当に、平和な風景。
だが、その中に異物が紛れ込んでいることを、彼らは知らないのだ。
そう、今この瞬間にも。
『それ』は薄汚れたコートを羽織って、人混みの中を歩いていた。
顔立ちには特徴がない。体系も同様。
コートを着ている、という点では少々目立つかもしれない。
彼が道行く人々の記憶に留まることは殆どないであろう。
極々一部の人間を除いては。
【書き出しはこの様な感じで良いだろうか?拙い文だが宜しく頼む】
私は幼い頃より、人とは違うモノを視る事があった。
人の姿をした人で無いモノ。
器物や獣に宿るナニカ。
先日、そういった人に在らざるモノに対面し、言葉を交わした事により、その方面の知的欲求が増し、また、以前よりはっきりと視えるようになってきた。
>471
(この人も、ヒトではない)
その日すれ違った男も、そういった存在。
なぜか私は、後をつける気になっていた。
[大丈夫です。むしろこっちが心配で]
―――こちらに向けられる、視線を感じた。
それには気付かない……それが最も賢明で、面倒事にならない。
気付かずに路地裏を巡り、新たな我が家を探せばいい。
そこらの浮浪者と大して代わり映えしない生活だ、
こちらの正体を突き止める前に飽きて何処ぞへと消えるだろう。
だが気付いてしまったのだ……こういう時、自らの能力が少々疎ましくなる。
何故、私に興味を持ったかは知らないが。
―――まあ、いい。私は変わらぬ生活をすればいいのだから。
道から逸れてゴミゴミとした路地裏へと入り込む。
とりあえずは今日の宿を探し……あわよくば、我が家を見つけるために。
その男は、気付いているのかいないのか、路地裏へと歩みを進める。
視えざるモノを視分けるこの目は、僅かな熱の痕跡を視る事も出来る。その力を活かし、見えるか見えないかの距離で付かず離れずに尾行する。
(とはいえ、視てるだけというのは)
どうも、私の力は怪異なモノとの接触で成長するらしい。
尾行をしながら、感覚が鋭くなってきた気がしてきた。
―――付いてきているようだな。
気配でそれと分かる。
訓練された人間ではないだろう……距離の取り方以外はなっていない。
少なくとも、訓練されていればもう少しマシだ。
面倒な……最も簡単なのは口を封じることなのだが。
幾つかの路地裏を回り、不必要ではあるがゴミ箱を漁り……浮浪者を装う。
しかし分からないのは『何を』見て私を追おうと思ったのか。
何故、こうまで私を追ってくるのかだ。
普段、妖魔としての力は極限まで抑えている。
それでも相手に違和感を与えていた、とは考えたくないのだが。
曲がり角を右に曲がる。
さて、どうしたものか。
待ち伏せが通用するかは怪しいと考えた方が良いだろう。
こちらから追う、というのも選択肢の一つか。
既に随分と奥まった路地にいる、街に出る前には追いつける筈だ。
だが、確証がない。
後少し、様子を見るとしようか。それ如何では……
そしてまた少し、歩を進める。
男の挙動を見る限り、極普通(?)の浮浪者にしか見えない。
だが、その気配はヒトのモノではない。
(あれ?何か変だ)
何かがおかしい。尾行をうちきった方がいいのかも。
―――まだ、追ってくるか。仕方ない。
足を止め、立ち止まり、ゆっくりと、振り向いた。
視線が、先程から感じていた気配の方向を抉る。
―――これから貴様を追う、逃げるならば逃げればいい。
立ち込める霧のように身体から湧き出た気配は、雄弁にそう語っていた。
一拍置き、駆け出す。同時に翻ったコートが音を立てた。
多少の障害物はあるが、この程度なら物の数ではない。
一分もせずに追いつける筈だ。ただの人間ならば、だが。
(しまった!)
深入りしすぎた。
ポケットから威嚇用のかんしゃく玉の袋を取り出し、ばら蒔きながら逃げ出す。
幸い、自分の熱痕跡を辿る事で迷子にならずに済んでいるが、相手が同じ事をしている可能性もある。
どこかで逆転のきっかけを見つけねば。
相手が何かをばらまくのがチラリと見えた。
大した物ではないだろうが、用心に越したことはない。
しかし、真正直に突っ込んでもらえるとでも思ったのだろうか。
微かな笑みが浮かんだ。
直ぐ隣にある建物の、垂直に立った壁。
人間であればただ自らを阻む物としか見えないだろうが、
私からすればこれは地面と同じ物でしかない。
身体を擦り付けてしまうのではないかという程に壁へと近付いた身体が、傾く。
そのまま転倒してしまうのではないかと見えた身体は―――
当然の様に壁を踏みしめて、地面から数メートルの距離へと駆け上がっていた。
視線は逃げる相手を見据えたままだ。
下で弾ける音は……爆竹か、それともかんしゃく玉か。
何にせよ、無駄なことを。
追う者と追われる者、彼我の距離は確実に詰まりつつあった。
まさか、あんなやり方を出来ようとは。
逃れる術は無い。ただひたすら走るだけ。
(何か手は無いか!?)
走る、走る、走る。
当然だが、相手も必死なのだろう。
捕まったらどうなるかわかったものではない。
だがしかし、なら逃がしてやろうという訳には行かないのだ。
自分の正体を知ったのだから。
それを所構わずに言い触らされては我が身の危機。
この街には妖魔もひしめいているが、それに見合う数の退魔士も存在するのだ。
少なくとも、二度と自分に手を出すことがないよう言い含める程度はしなければなるまい。
場合によっては、あまりにも聞き分けがなければ……
最悪、口封じも視野に入れねばなるまいな。
壁を、否、『地』を蹴って身体を宙に舞わせる。
妖魔と人間の肉体の違いもあり、既に距離は無いに等しい。
相手の頭上を越し、目の前に降り立つのは容易だ。
空中で体を入れ替え、向かい合うような形で着地する。
「二、三、聞きたいことがある」
自分でも驚く程に静かな声音が出た。
「何故、私を追った?」
「な、しまった!?」
まわりこまれた。
もう駄目だと諦めかけた時、私の体内の血がざわめいた。
全身をかけ巡る激痛に悶え、うずくまる。
[すいません、時間が時間なので、ここで一時中断にしてもかまいませんか?]
【了解です、気が利かずに申し訳ありません】
【再開日時は専用版の伝言スレの方で打ち合わせしましょう】
【それでは長時間、お疲れ様でした。これで失礼致します】
[お疲れさまです]
【こんばんは、1時間ほど待機します。どなたでも声をおかけ下さい】
すいません、プロフに誘導してください^^;
すいません、1見直して行ってましたorz
考えてたシチュだと合いそうにないんで、失礼しますm(_ _"m)ペコリ
【はい、また機会がありましたら】
【引き続き待機します】
【では、俺が首を献上しに】
【宜しいでしょうか?】
【しまった・・前スレにしか設定を書いていないので、せっかく人が居るのに】
【出来ない・・・。と言っても中立同士では雑談になってしまう・・・。】
>>491 【それでは雑談程度で、0時前ぐらいまでよろしいでしょうか?】
>>492 【ええと……? また機会があればお誘いくださいね?】
>>493 【新参者の前田利益です。今回は設定を決めてプロフスレに書きますので、また機会が】
【あればよろしくお願い致します】
>>494 【では、妖魔退治の後の真夜中の街ということでー】
【どちらから書き出しましょうか?】
>>496 【ではこちらから】
【少々お待ち下さい】
夜。文字通り街は眠りに就き、家々は明かりを消し寝静まる頃合い。
だが、退魔の行に眠りは訪れない。人間と妖魔と云う存在がいる限り。
斬鬼衆が一人、重藤柚紀。暗闇の中でも目立つ、赤茶色の髪を振りながら
周りに散在する妖魔の死体を眺め、ため息をついた。
――――救える妖魔は救うなんてあの子に言っておきながら、結局はこれか。
腕の中の返り血にまみれたナイフを見て、再度息を吐く。
「…そういや、あの時もこんな夜だったか」
血を拭うと、その己が矢を袖の中にしまい、意味も無く空を見上げた。
「これで、ラストッ―――!」
斬―――、と薙ぎ払い背後から襲い掛かってきた妖魔を斬り棄てる。
辺りは、妖魔の死体から発せられる異臭と血生臭さが支配している。
これで何度目だろうか。こうして、妖魔≠ニ呼ばれる類の闇を切り払ってきたのは。
私は、ズンッと剣をアスファルトに突き立てると深く溜息をついた。
あの女性から聞かせてもらった妖魔の一片。その正体は人間自身の心から出ずる闇だと彼女は言った。
あれから、私は自分がどうすれば前に進むことが出来るのか考えていた。
妖魔と人間―――。
互いに偏見を持ち、拒みあう存在。
本当に私が望む理想を成し遂げようとするならば、こうして妖魔を切り捨てるだけではいけないとは考えていた。
そして、私一人では成し遂げることは難しいということも。
私の思考は迷走しながら、ぼんやりと頭上の星々を眺めた。
―――と、そこでふと気がつく。夜闇が邪魔している上に遠目だから分かりにくいが、
それは、人影だった。
妖魔ではない…とは思うが用心して、その人影に近づいた。
「そのまま、動かないで下さい。 ―――あなたは?」
そこでようやく気がついた。
私の頬にキスをくれやがったナンパ男、もとい重藤 柚紀だった。
暗闇の中から自分目掛け、警戒の視線を送る人物。
柚紀が構える必要は無かった。彼は夜目は効くからだ。
近づいてくる姿を、先ほど思い描いていた少女
――――佐々木優希だと判断してからは。
「また随分なご挨拶だねぇ。根に持ってんのかしら?」
おどけた口調で返しながら、軽く肩をすくめて見せる。
女の子に刀を向けられるなど、常に前向きな彼の思考と言えど、
流石に楽観的には捉えられないらしい。
「そっちもかい。お疲れ様〜」
同じく血にまみれた彼女の太刀を眺め、労いの言葉をかける。
この年で、自分の手を朱に染めなければならない苦しみ。
――――やっぱ、彼女にもそれはあんのかね。
「………まあ、それを今更とやかく言うつもりはありませんが」
溜息混じりに首を振る。
もちろん内心では、「その唇ちぎりとってやろうか」とも思っていたが、
これではまるで自分が子どものようだとも思い、首を横を振った。
「お疲れ様、ですか……そうですね、そちらも」
妖魔の討伐。
おそらくは、彼はそれについて言っているのだろう。
内心としては、やはり複雑だ。ねぎらいの言葉をかけられるのは純粋に嬉しい。
―――この戦いは評価されない戦いだ。
誰かに評価されることなどあるはずもない。だから、こうして励ましの言葉を貰えるのは喜びに感じる。
ただ―――、心の中にシコリが残る。
ふと、私は唇を動かして言葉を紡いだ。
「……ところで柚紀さん。 妖魔という存在についてどう考えますか?」
表面上は心穏やかだが、心の内はどうだろうか。
心理や思考を読み当てるのは得意分野とは言え、女性の心は楽には知れないと、柚紀は言う。
そんな彼女から予想外の質問を訊かれた。
『妖魔という存在についてどう考えますか?』
―――義虎や皆なら、どう答えるだろうか。
人を喰らう、斬るべき鬼。罪も無い人間を殺し、己が欲のままに振る舞うケダモノ。
確かにそれは、そうだろう。けれど、それだけならば、人間とて同じだ。
――――思ったまんまで、良いよな。
「人間と同じ、かな。単純な感想は、とても素直な人間」
彼は素っ気無く、いつものように軽くそう応えた。
成程、やはり彼は他の斬鬼衆のほど固まった見識ではないようだ。
「人間と同じ……ですか」
確かに、その通りだと思う。
人間とて、住処を奪われると憤り憎しみを感じるだろう。
さて、問題は私たちが戦うべき妖魔≠ノついてどう話を切り出すか、だが…
「……確かに。噂では人間と和平を結ぼうとしている妖魔もいるらしいですしね。
一方で人間を殺す妖魔もいる。千差万別、人間と同じですね」
頷きを返し、軽く息を吐くともう一度訊ねてみた。
「ならば、そんな妖魔たちと上手く付き合っていくことは可能だと思いますか?
…あ、いえ、あくまでも可能性の話ですが」
「…マジで?」
一度は我が耳を疑った。
『人間と、和平を結ぼうとしている妖魔もいるらしい――――』
確かに今まで滅却してきた妖魔の中には、己から進んで来たのでなく
復讐や、致し方ない理由で刃を交えざるを得ない奴も居た。
彼らの命を奪う度、考えたものだ。場所や立場さえ違ったのなら――――。
初めて聞いたその言葉に、満面の笑みを浮かべる柚紀。
「そりゃ良い事だ♪是非ともお会いしたいもんだぜ〜」
続けて重ねられる問い。妖魔との共存は可能だろうか。
――――暫し先程より間を置いて考える。
そして、真面目な表情で呟いた。
「酷く難しいだろうな。人間を憎む妖魔が居る様に、
人間にも妖魔を殺したがっている奴もいる。そいつらの間を埋めるのは、とても楽じゃない。
同じ人間ですら、分かり合えず殺しあってるしな」
――――けれど。
にかっと笑みを浮かべ、夜空を見上げ譫言を紡ぐかのように柚紀は呟いた。
「それは不可能じゃないと思ってる。可能性は限りなく低くても。
俺が戦ってるのもその為だ。大切な人を護る為なら、争いなんて捨てられると俺は感じたよ」
「ええ。現に、妖魔も一枚岩ではないこともご存知でしょう?
半妖もいることは貴方も知るところです。半妖の子の殆どが母親を妖魔に犯され生まれた―――
……というのもいれば、逆に愛し合ってその子を育てた者もいるはずです」
半妖というのは殆ど稀である。
だが、確かに人間の娘と、または逆に妖魔の娘と愛し合って、生まれてきた子どもだっているはずだ。
以前、この退魔の仕事をし続けて、そういう娘とも知り合いになった。
だから、妖魔のなかには人間と和平を結ぼうとする者もいるはずだ。
靜がそうであるように―――他にもいるのではないのだろうか。
「………なるほど、貴方の考えは分かりました。
貴方のことは一応信頼しているつもりでいます。だから、少し話を聞いてくださいますか?」
私は靜という妖魔のことを話した。
彼女もまた妖魔と人間の共存を望んでいるということを。
「連絡先はお教えいたします。ですが、決して他の方には漏らさないようにしてください。
たとえそれが御影さんや天音さんだったとしても。一度、貴方もあのヒトと話してみてください。
もし―――彼女の話を聞いた上で納得してくださるなら、私たちに力を貸してほしいんです」
静かに頷き、彼女の話に耳を傾ける。
その唇から紡がれる内容は、正に未知の内容だった。
児玉 靜と言う名の妖魔。彼女は人間との共存を望んでいる、穏健派だと。
ふっと瞼を閉じ、頭の中を整理する。
すっと瞼を開け、一言――――。
「分かった、誰にも言わねーよ。信じられねーかもしれないけど」
迂闊に彼らに話した所で、事態が好転するとは思えなかった。
が、自ら話さなければ無駄に詮索される事も無いだろう。
彼らはそんな関係なのだから。
彼女に訊きたい事は山ほどある。どうしてそんな考えに至ったのか。
仲間は居るのか、など――――。
「もうあんたに力は貸すっつったけどな。彼女を仲間と認めるかどうかは話してからだ」
まぁ彼女が優希から聞いた通りの妖魔ならば、特に問題は無いだろう。
少なくとも彼はその時は、こう思っていた。
【すみません、時間を過ぎてしまいましたが大丈夫でしょうか?】
【凍結致しますか?】
「まあ、貴方がバラしたり、彼女を騙そうとするのであれば、
私が貴方の敵になりますけど―――」
仲間だと彼女に誓ったのだ。
彼を信頼しているが、だからと言って万が一のことを考えれば釘を刺しておいたほうが良いだろう。
もちろんそんなことは起きないだろうし、起きたとしても靜も遅れを取りはしないだろうけれど。
「ええ、それは承知しています。
もし破談して、敵とならないことを祈りますが―――それも話してみてからでしょうね」
【あと1時間ほどであれば大丈夫ですー】
「さて、な。これでも一応、女の子は裏切らないってのが自慢なんだけど」
けらけらと呑気に笑いながら、軽口など叩いて見せる。
この宵闇の中で有りながら、希望の灯火は光輝いているようだった。
「ま、大丈夫だろ。彼女と俺が戦わなきゃならねー関係でもねー限り、な」
少なくとも、多くとも、彼が弓を引かねばならない対象はただ一人。
そうだ、と思い付いたように柚紀は正面の彼女を見つめ、柔らかく言葉を紡いだ。
以前は訊くまでもないと思っていたのだが、案外彼女は妖魔にも顔が広いようだ。
訊いておいて損はないだろう。
「――――銀髪の人狼の妖魔、会った事ねーか?」
【了解しました。】
「銀髪の人狼……?」
訊ねられて首をかしげる。
今まで様々な妖魔と出会いはしたが、そんな特徴的な妖魔であれば覚えているはずだ。
しかし、そういう妖魔とは出会っていないような気がする。
「残念ながら存じ上げませんが―――、それこそ靜さんに訊ねられたらどうです?
蛇の道は蛇とも言いますしね」
彼が妖魔のことで誰かに聞くとは珍しい。
斬鬼衆のようなグループであれば、あらかたの妖魔の情報は入っているはずだ。
よほど珍しい妖魔なのか、彼自身に事情がある妖魔かは分からないが…。
首を傾げる彼女を見て、内心残念な気持ちと安堵のそれが現れた。
誰一人として巻き込むつもりも、心配をかけさせるつもりもないからだ。
――――しかし、余程偏屈な妖魔なのだろうか。
小さいながらも、集団を形成していた妖魔には片っ端から問い尋ねたが、
やはり全て返事は『知らない』だった。
嘘は無い事は確信している。
「あぁ、一応訊いてみるつもりだ」
彼女の言葉に頷き、顎に手を当てて思いに耽る。
――――もし彼女が自分の今考えている事を知れば、なんと思うだろうか。
妖魔との共存を願うと言いながら、一人の命を追い求め続けている自分を。
「まあ、何はともあれ、彼女と会ってください。
―――すべての話はそれからになるでしょう」
彼が何を考えてその質問をしてきたかは分からない。
ただ、彼もまた何らかの事情を抱えて斬鬼衆というものに所属しているということだ。
だが、私はそれを聞くほど図々しくなければ、それを邪魔するほど野暮でもない。
「……でも、くれぐれも無理はなさらないように。
その命を落とせば果たすべきものも果たせなくなりますからね」
曖昧にそう口にしながら、私は踵を返して背を向けた。
【それでは、次で〆ましょうか?】
「分かってる。命の重要さってのは特にな」
じっと、去り行く彼女を眺めながら考える。
――――彼女は、俺の行く先の、答えを見つけ出してくれるだろうか。
足早に歩き、彼女の後を追い掛けた。その手を掴み、振り返った彼女に呟く。
「的に突き刺さった矢。外れた矢。
また途中にして落ちた矢。折れた矢。
――――その矢は、どんな道を辿ると思う?」
縋る様な目で彼女の黒瞳を見つめる。
そんな事は今までに一度も無かったと、自分に言いながら。
【そうですね。こちらは後1レスで〆ます】
「さあ、私には分かりません―――。
ですが…私ならば使えるのであれば拾ってでもまた使うでしょうね。
一度や二度、外れたり折れたりしても、修復すれば使えるのですから。
―――それが粉々になるまで、使うと思いますよ?」
彼が何に対して尋ねているのかは分からない。
ただ、目的のためなら私は挫けないし、諦めない。
一度や二度、それが果たせることができなかったとしても、まだまだ先がある。
「だから、その矢の運命は、その使い主によって変わるんじゃないんですか?
……貴方が何を思っているかは分かりませんが、頑張って下さいね」
私は微笑を浮かべて、それだけ言うと、今度こそ夜闇のなかへと歩を進めた。
【それではこちらはこれで〆にしますね。お疲れ様でしたー。
お付き合いありがとうございました、おやすみなさーいノシ】
「…粉々になるまで、か」
本来、矢とは使い捨ての存在だ。重要なのは、相手を射抜けるかどうか。
ましてや、射った矢の状態を確かめる射手などいないだろう。
けれども、彼女はその矢すら拾い上げると言った。
何故だか彼には分からない。彼ならば、ただ次の矢をつがえるのみだろうから。
微笑み、闇の中に姿を消す彼女の背後に小さく別れの言葉を告げる。
「お休み。…使い主次第、か。けれど、矢が外れようが。
力尽きようが、折れようが、そして的を射抜こうが。
俺の使い主は死ぬんだよ」
誰も聞いていないからこそ吐ける己の心情。自分らしくない。そう思いながらも言葉は止まらなかった。
「射手も死に、ただ獣を射抜いただけの矢を…
本当に、あんたは拾い上げてくれんだろうか」
その言葉を最後に、柚紀も踵を返し場を後にした。
こんな下らない事は、既に幼い時から吹っ切れていた筈だった。
それが、何故今更――――?
考えても、答えは出ない。なら。突き進めばいいだけだ。
【こちらもお付き合い有難うございまさた。
お疲れ様です。お休みなさいノシ】
【お嬢様待ち、につき少し待機しまする】
「はっ……はっ……」
息を切らせて、放課後の廊下を駆ける。
手には、ターコイズブルーの携帯電話。
今朝届いたメールを見てからと言うもの、心は既に教室の中には無く。
「……はっ……はっ……」
玄関を抜け、校庭を突っ切り、校門を出て。
せわしなく周囲を見回し、人影を探す。
「…………あ…あなた……?」
奥さまの名前はアンジェリカ。
旦那さまの名前はラーグダール。
ごく普通の2人は、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。
………ただひとつ違っていたのは、旦那さまは竜だったのです
校門の前でせわしなく人影を求める少女の後ろから
地をつくステッキの乾いた音が響いた。
少女が振り向くと、そこには――少々お国違いな
コートに英国式のスーツに身を包んた40台半ば…
やや渋めといったところの男性が、悪戯っぽく微笑む
………今は人の形を取っている旦那さまの竜。
「うむ……ハニー、わしを呼んだかな?」
少々低い声でご機嫌を伺いつつ
おもむろに少女の流れるような金髪を指で梳く。
>>517 「♪」
その声に、ぱっと顔を綻ばせた。
どこか余人には近寄りがたい瀟洒な雰囲気が、
春季を迎えた名残雪のように溶けて消え去る。
「………………」
うるうると目を潤ませながら、白い頬を桜色に染めて。
髪を撫で梳く、連れ合いを見上げる。
「……………ん……」
背伸びをして、目を閉じて。
軽く頤をあげて、少し震えながら、キスをねだった。
……下校時間を迎えた校門である。
通り過ぎる生徒等幾らも居たが……最早頭どころか
目にも入っては居ない。
>>518 ステッキを持った腕は校服の少女の背中へ廻して、
華奢な肢体を抱き寄せ
細い顎に手を添えて更に上を向かせ。
「………」
再開のキスの求めにゆっくりと唇を重ねて応じた。
昼中堂々と行われる、その行為に行きかう生徒らの足がひたりと止まった。
無理も無い。
傍から見れば親と子ほどに年齢差がある。
しかも男の方のフォーマルな装いは明らかに場に不釣合いだった…。
唇を離しながら、自分達を眺める聴衆らをチラリと横目で見て。
「ふむ……ハニー。流石にこの場では、な…。
時間が惜しく面倒であるが…さ、場を変えよう。」
すっと踵を返すと足取り軽くに、見知らぬ街の中へ歩を進めようと。
>>519 見た目以上に、実際の年の差は4000歳以上。
その手練手管は、キス一つでも蕩かせるには充分で。
「……ん…ふ………」
スーツの襟元を掴んで、息が続かなくなるまで
口付け合う……間近に感じる体温と体臭に、頭が
くらくらするほどの昂ぶりを覚えた。
「…ちゅ……はぁ……」
広い額にうっすら汗すら浮かべて、胸に手をあて大きく
ため息をつく。
鼓動の高まりも収まらぬ間に歩き始めた夫の後ろを
追いかけて、その腕に腕を絡めてじゃれついた。
「はい、あなた……♪
ご飯にします?お風呂にします?それとも………」
【喋り方が何時もと違うのは、慣れた母国語で喋って
いるから、と思って頂ければ幸いで御座いますですわ】
>>520 腕を絡ませる少女――妻の甘えた声を聞く。
ふと、その声その行為に違和感を思うところあったのか
顎に手を当てて僅かに眉を潜めた。
「……うぅむ……」
しかし、然程問題では無いな考え直すと
やや視線を下げ、愛妻の潤んだ瞳を見つめ返す。
「うーむ、久しくぶりであるかなぁ…。
では、わしと恐らく同じ考えだろうハニーの三つ目の、それに
させてもらおうか?」
意地悪そうな微笑を浮かべつつ告げ終えると
コツリ、とステッキを鳴らしながら妻の仮の住まいを目指していく。
【ふむ…承知ですな】
>>521 「?」
夫の表情に、思わず首を傾げる。
その仕草、その顔は、知り尽くした妻のそれだ。
「………………」
三つ目。
その言葉の意味する所に、夕日のように顔が赤くなる。
こくん、と唾を飲み込んだ喉が上下した。
……都立白清高校から徒歩20分の距離にある、ホテル
のスィートが今の仮の住い。
勿論費用も相応だが……元々名家の出である上に、
持参金として夫が与えた溜め込んだ宝物の一部もあって
維持する費用には困っては居ない。
「……………♪」
事前に連絡しておいたフロントを顔パスで通ると、ボタンを
押してエレベーターを呼んだ。
後ろ姿からでも、うきうきしているのがよく解る。
【普段のが宜しければお戻し致しまして御座いますわよ?】
>>522 「…いや、別に何でも……。
久しぶりのハニーの可愛さに少々、惚けていたのだよ…」
首を傾げたのに、目を瞑って咳払いをし
折角の再開に水が差さないようにした。
「……ふふ…」
玄関でさえ、豪華な装飾の施された様子も
気にせずといった風で横に並んで待つ妻を眺めた。
何か面白い事を思いついてしまったと言いた気に口元に笑みを綻ばせ。
エレベータが到着し、二人して中へと入る。
ドアが閉まると同時に妻の肩を抱いて、少し強引に引き寄せ
「いや、しかし先程は気づかなかったが…。
制服姿? を、着たハニーも中々素敵なものだな」
>>522 【いやいや、そのままで結構】
【それはそうと少々のんびりとし過ぎているな…うむむ】
【今宵は何時ほどまで、かな?】
>>523 「あ………」
肩を抱き寄せられ、身体が密着する。
収まりかけていた鼓動が、再び早鐘のように
打ち始めて。
「そ……そう、で御座いますの?」
目を瞬かせ、夫を上目遣いに見上げる……。
学生らしい清楚さと、短めのスカートとオーバー
ニーソックスの間から覗き見える白い足が
匂い立つような色気を放っていた。
「………はっ。
あの、その……あなた…少し……離れて…」
……突然泡を食うと、鞄の中を探り始める。
掴みだしたのは、汗の匂いを消すコロンだった。
>>524 【私は余程と途中で眠くならない限り、朝の5時6時くらい
までは行けましてよ】
>>525-526 「うむ、そうだとも……」
密着すると服の生地越しであっても
急に早くなる心音は手に取るように分かる。
それに、いきなりの悪戯に慌てだす様子を以前と変わりない。
そんな妻を愛おしげに目を細めて。
「そう言われても、この部屋は少々狭いのでな
…離れようにも…困ったものだ」
抱き寄せている形を崩さずに
鞄を探り当てる手へ自分の手を添える。
そうしたまま上へ上へと手を導き
やがて二人の手は短めのスカートから覗く
柔らかそうな足へと擦り合わせるように。
【む…では退屈で眠らせないように】
【早め早めを心がけよう】
>>527 「だ…駄目、で御座いますわ。
汗の、匂いが………」
恥じらいに身体が火照り、ますます汗をかく。
甘酸っぱい、少女だけが持つ特有の匂いがボックスの中に満ちた。
丸い、球状のコロンの瓶を掴んだ手に手を添えられ、導かれる。
「………んッ……」
ひんやりと冷たい、ガラス容器の曲面と、夫の指に肌を擦られて。
思わず、はしたない声を上げてしまう。
「あ……あ………ッ」
>>528 「愛しい者ならば…隅々まで知りたいと思うものだろう?
例え、それが汗の匂いであろうとも…」
すぅっと大きく胸に空気を求める動作をしてみせると
羞恥に震える妻を宥めるべく耳元で囁く。
「ところで…このエレベーターが着くまでに
どれほど時間がかかるものなのだ?
まだ暫くかかるのならば、これからの予定を繰り上げても…問題ないだろうが」
唇から漏れる淡い声聞きたさに手を位置を上げていくと
やがてそれはスカートの裾を持ち上げるほどになっていく。
>>529 「………ぐすっ……」
夫の言葉に、切なげに鼻を鳴らす。
耳に当たる吐息と言葉に、背筋が震えた。
「時間はその、1分程かと……でも…」
目で指したその先。
外に面したエレベーターのボックスは、
丁度半分ほどがガラス張りになっていて。
「外から……見えて……ん…あっ…」
スカートを捲くる手を、ぎゅっと握り締めた。
>>530 「そうか、一分程度か。
瞬きする間もないが…まぁ、それもよいかもな」
そう言って足に触れる手とは別に背中へ
添えていた手を離す。
肩を軽く押して一歩、二歩と妻を押し進め
ガラス張りから見えるか見えないかの際どい場。
反対側へと背を当てさせた。
「…こうすれば心配はいりまい。
なに、誰もわしとハニーの興じている事に気づきはしない
…と思うぞ?」
楽しそうに妻の手を解放し
今度は、自らの手でもってスカートの中へ手を忍ばせ
中の様子を暴かんと。
>>531 「……あ…あ………」
肩を抱かれて、ダンスを踊るような足取りで壁に押し付けられて。
……もう、このまま自分は恥ずかしいことをされてしまうのだ、と
考えた瞬間。
「あ……あなたぁ……」
堪えていたものが溢れ、スイッチが入る。
期待と興奮で、膝が震えて仕方ない……夫の胸にすがり付き、
額を押し付けて甘い鳴き声をさえずった。
「はぁ……はぁぁ………ッ」
スカートに下に潜り込んだ指が、布越しに湿った泉を探り当てる。
反射的にその手を腿で挟み込み、もじもじと擦り合わせた。
>>532 スカートの生地越しで直接は望む事は叶わないが
湿り気を帯びていく事が指の先から容易に分かってしまう。
「ふふ…いつ聞いてもハニーの声は
まるでピアノが奏でられて――」
と、エレベーターの到着音が中に響いた。
それで不意にこうして乱れる妻の姿を
つい最近に眺めた事が頭をよぎる。
これでは自分も彼の事を言えたものでは無い、と一つ嘆息。
「ふむ…流石にここではの。
焦らしてすまぬな、ハニー…こういう事は降りて、ゆるりとしなければな」
一旦、手を離し震える肩に羽織っていたコートを掛けると
ネクタイは緩めつつ、エスカレーターを降りた。
廊下からは幾つにもある部屋数にまた嘆息し。
「が、これ以上待つつもりも無いゆえ…。
ここで良いか…」
誰とも知れない一番手前の部屋…その扉のノブに手を掛けると
その任を解き、妻を押して二人その中へ。
>>533 「…はぁーっ……はぁーっ…」
全身を朱に染めて、荒い吐息をつき打ち震える。
途中でお預けされた快感が、ちりちりと身体の奥で
疼きを訴えて。
「………………」
ぼんやりと霞がかった思考のまま、大人しく適当な
部屋に連れ込まれる。
人の気配は、幸いにして無い……が、逆に言えば
何時、誰が来るとも解らなかった。
……けれども今は、そんな事は微熱を煽るスパイス
でしか無い。
>>534 「うむ…ハニー、慌しくてすまんな。
わしとした事が久しくぶりの事に急いてしまったわ」
荒く息を繰り返す妻の顎に手を添えると
過熱気味のそれを慰めるように一つ口付けをした。
「…ん………ちゅ……」
唇が重なったのを、離さずに押し当て
舌を妻の鮮やかな色の上下の唇の間に割り込ませる。
長い口付けを続けながら、肩を押して歩を進めていくと
いつしかオーバーニーソックスに通した太ももが
ベットの縁へと当たった。
>>535 「ちゅ……む……んん…」
唇を舌が割り開き、吐息が飲み込まれる。
唾液と唾液の絡む水音が、やけに大きく聞こえて。
呼吸は落ち着いてきたものの、興奮は益々高まるばかり。
「…………あ……」
膝がかくんと落ち、ベッドの縁に座り込む。
スカートの裾が捲れ、青いレースのショーツが覗いた。
>>536 「わしの悪戯で遠回りしたが、ようやくに二人きりになれたな。
今更聞くのもどうかと思う事だが…」
一頻り唾液の入り混じるのを楽しむと
座り込んだ妻の肩を再び抱いて
やんわりと華奢な肢体をベットへと押し倒した。
長いブロンドの髪が、さっと白いシーツの上を覆い終えると。
「時に、こちらでの暮らしはもう慣れたのかな?
この国では竜が翼を広げるほどの領土も無いが…?」
汗ばみ額にくっついていた髪を指で梳きながら
もう一方の手はスカートの中のショーツを指で円を描いて撫で回す。
>>537 「…………………」
細い、華奢な肢体を寝具の上に投げ出す。
薄暗い室内、閉じたカーテンの隙間から僅かに
入る光をブロンドが弾き、淡い輝きを灯した。
「多少は……。
…けれども空気が不味いのは、当分慣れそうにも
ありませんわね……」
ほつれ毛を直され、頬が綻ぶ。
指でじっくり撫で回すと、湿ったショーツが貼りつき、
花弁と雌蕊を布越しに浮かび上がらせていった。
やや強めに指を押し込むと、じゅわりと指に蜜が絡む。
身体中に、心地よい熱が篭っていく……。
「ん……あッ……ぁ……♪」
>>538 【うーむ…設定を借りて手探りとはいえ】
【進行遅れてすまぬ】
【このまま続ける事も可能だが】
【長時間で双方とも疲労しておるはずだから】
【一旦、凍結もしくは何とか〆を考えているが】
【どうだろう?】
【というか、こんな感じの性格で良かったのかなと?】
>>539 【私は凍結でも〆でも、構いませんで御座いますですわ】
【それに進行が遅いのは、むしろ私の方】
【性格面等はブリリアントで御座いますですわ。
外見は渋く、言動はどこか飄々と、けれど胸の内には真の
愛……須らく、満たして居りましてよ?】
>>540 【まぁ、そう言われるな】
【進める役目は男性の占める部分が大きい、と今感じた】
【ん、そういう風に感じてくれると誉れではある】
【それでは申し訳ないが一度凍結をお願いしたい】
【再開の件は、また避難所で…で良いだろうか?】
>>541 【畏まりましたで御座いますですわ】
【今週は金曜であれば、早い時間からでも再開できましてよ】
【それ以外の日も、11時頃くらいであれば概ね…】
【避難所の伝言スレは、毎日チェック致しますですわ】
>>542 【ふむ、承知した】
【恐らくこちらも同じで予定は金曜ぐらいだと思われる】
【しかし女性にチェックさせるというのは、些か気が引けるが…】
【それでは名残惜しいが今夜は先に失礼する、再開の時はまたよろしく頼む】
(先日の、>484からの続き)
「あ、あぅ、あうう!」
全身を衝撃が走る。
薄れかけた意識の片隅で、何かが目覚めようとしている。
でも、それが何だか分からなくて。
[お待たせしました、ではどうぞ]
「な………」
何事かもわからない。未だ直接的危害は加えていない筈。
だが、この苦しみようは尋常ではない。
異常な状況で溜まりに溜まったストレスが、何かの持病でも呼び覚ましたか?
いずれにせよ、放置はできないだろう。
この女の裏がいるのかいないのか、可能性は低いがいるとすれば何が目的か。色々と気になる。
死なれてはそれを知ることもできない。
―――やれやれだ、最近は面倒事にばかり巻き込まれる。
手を伸ばし、うずくまって痙攣する女の肩に手を置こうとして―――
酷く嫌な予感が、した。
一瞬の躊躇。杞憂に過ぎない、と直ぐに思い直したが。
「どうした、どこか具合でも……」
数多くの人間を食らってきた自分が吐くには、酷く不似合いな言葉。
そんな言葉を言っている今の自分に内心で嘆息しながら、肩に手を置き、女の身体を少し揺らす。
【お待たせいたしました】
「触るな、下郎」
自分の意志と無関係に、言葉が紡がれる。
「この脆弱な肉体に余計な刺激を与えれば、制御しきれぬエネルギーが貴様を引き裂くぞ!?」
表層意識では何だか自分でも分からないが、深いところでは本能がある程度把握できた。
魔族との接触がトリガーとなり、私の中の未知なる力が暴走したのだ。
「だ、駄目、離れて、くだ、さい」
薄れゆく意識で、それだけ絞り出した。
紡がれた言葉と同時、反射的に退いた。
言葉遣いが違う……そんな事柄は些細なことだ。
最も違うのは、この、身体を刺し貫く鬼気。
直ぐにこの場から離れろ、ろくな事にならんぞ、そう理性は全力で叫んでいる。
だが。
「これは……」
何故か見ていたいのだ。
それは、卵の殻が割れ雛鳥が這い出てくる瞬間を見ているような。
背が割れた蛹から蝶が抜け出る、その瞬間を見ているような。
そんな、不可思議な感情。
「それが正解なのだろうが……留まって見ていたい気持ちがある」
十分であろうと思われる距離を稼ぎ、女に目を向ける。
奇妙に心が騒いだのは確かだ。一つ、見届けてみるとしよう。
鬼が出るか蛇が出るか、はたまた引っ込んでしまうのかは未だ判らないが。
とくん
私の中で何かが脈打つ。内なる炎が熾き出す。
<Salamander Awaken>
<speedup><speedup>
身体が軽くなる。私は足元の砂利を掴み、一気に男との間合いを詰めて投げつけた。
近くから物を投げつけられるのは、遠くからより避けにくいものだ。
そして、女は突然の凶行に走る。
「……っ!?」
早い。とっさのことに反応が遅れる。
先に何かを掴んでいたのは辛うじて見えたが……考えられるのは。
砂利……?そこまで考えたところで、女の手から何かが放たれた。
この距離では避けるのは流石に難しい。だが、払い落とすのは別だ。
とりあえずは顔。目を潰される訳には行かない。
顔の辺りで手を振り、砂利を振り払う。
―――見ろ、だから言ったではないか。
先程騒いでいた理性がそう言うのが聞こえた気がした。
無論、幻聴だろうが。
「何のつもりかは知らないが……」
そして、退く。近い間合いは好かない。
目に見えない程に細い糸を成し、手から放った。そこらに転がるゴミ箱へと。
「突然、というのは感心せんな…」
手首を返す。糸に縛られたゴミ箱は浮き上がり、
次の一挙動、手を前に振ることで女に向けて放たれた。
<option>
とっさに赤い光球を呼び出し、撃ち落とさせるのに成功する。
「ふぅ、
いきなりここまでやると、後から筋肉痛とか激しそうですし、これで手打ちにしません?」
営業用スマイルを顔に張り付け、申し出てみる。
正直なところ、既に下半身に違和感が。
ゴミ箱を落とされるのは予想内。ただし、その方法は予想外だったが。
続けてもう一つ放とうとしたところで、女が動きを止めているのに気付く。
そして、その唇が言葉を紡ぎ出した。
正気を失っていた…という訳ではなかったようだ。
だが、その内容。ピクリと眉が動く。
「手打ち?……どの口がそんな言葉を吐くか」
少々不快だった。
「一方的に付け回し、捕まえて何のつもりか問い質そうとした所で
いきなり倒れ、こちらにも思惑があったとは言え、介抱しようかと
思えば下郎呼ばわり……そのあげくに突然襲いかかって手打ちにしろ、とは恐れ入る」
少しキツい口調になってしまっているが……仕方あるまい。ここ最近は面倒事ばかりだった。
気付かない内に少々ストレスも溜まっていたのだろう。
「先ずは申し訳なかった、くらいの言葉があって然るべきだと思うがな」
そこまで言い捨て、息を付いた。
「……それで、だ。先程も言ったが聞きたいことがある」
やっと本題だ。
これを聞くためだけに、どれだけ苦労をさせられたか。
溜め息を吐く。
「……どういうつもりで尾行した」
このあたりでようやく、知性と理性が感性に追いついてきた。
「申し訳ありません、つい、誘われるようにふらふらと」
我が事ながらひどい言い訳だ。花と蝶でもあるまいに。
言い訳を三通りほどでっち上げて破棄する。
「実は私、視える体質でして」嘘はついていない、うん。
「……つい、誘われるように?ほう、それはそれは」
無表情で感心したように漏らす。少なくとも表面上は。
が、その実は違う。あからさまな侮蔑を込めた視線と言葉だ。
「……自分の闘争本能の制御くらいできなくてどうする?いやしくも人間という
種族は最も賢く思慮深い動物を名乗っていたはずだが……思い違いだったか」
何をふざけたことを、と今にも言わんばかりの態度。
先程の出来事で自分らしくない選択をして苛立っているというのに、
更に上乗せされる苛立ちはどこに置けばいいのか。
そして、次に紡がれた言葉に絶句する。
「…………」
何がだ。目の前にお花畑か妖精でも見えるのか?
それは大変だ、早く医者の世話になるといい。
口を飛び出しそうになるそんな罵倒をかみ殺す。
苛立ちはつのるばかりだった。
言いたいことはわかったが……言葉が足りなすぎる。
「そうか、大体わかった……わかったから、もう行け。
わかっているだろうが、私のことを言い触らさぬように…」
そしてどうしようもない苛立ちの次に襲いかかってきたのは、
激しい脱力感だった。投げやりに言い放つと背を向ける。
【途中からギャグみたいになってしまい申し訳ないorz】
【連続凍結もどうかと思いますし、次あたりで〆ようかと思うのですが…】
「ええまあ、あれが自分のものだという実感もまだ湧かなくて」
相手は明らかに不機嫌だ。不機嫌すぎて動く気にならないらしい。
「確かに、お互い鉄格子の中や解剖台の上には行きたくないですよね」
その背中に軽く頭を下げ、見送る。
そう言えば名前も聞いていなかった。
[では、これで閉めますか。
お疲れさまです]
背を向けたまま歩を進め、しばらくして呟いた。
「全く……一体なんだったと言うのだ……」
去り際に何か言われた気もするが……良く聞こえなかった。
全く、今日は色々ありすぎた。
尾行され、相手は突然倒れ、自分は自分でなくなったかのように
理性に従わず、その場に残ろうとし、そのおかげで突然襲われ……
やはり、早く新しい住処を手に入れたい。
こうしてさまよっているから厄介事に巻き込まれるのだ。
……しかし。
「何故……」
そう、何故私は逃げなかったのだろうか。
何かが目覚めるかもしれなかった、あの場所から。
普段の私なら一目散に逃げ出していただろうに。
「……魅了されていた、からか?」
あの何者かの目覚めに。
―――馬鹿な。
その考えを一笑に付す。
兎に角、今は新しい宿を見つけることだ。それでいいのだから。
今日のことは忘れてしまえばいいのだから。
【お付き合いいただき有難うございました、また機会がありましたら…ノシ】
【こんばんは、待機させていただきます。どなたでも声をおかけください】
【時間が合わないようで…落ちます】
>>538 「ふむ、そうか。
それは少々難儀な……んっ…」
妻の言葉に、相槌を打ってみせるがショーツを撫でる指は止めない。
指に絡んでくる蜜に口元を緩めながら
額に滲んだ汗と髪を指で梳き続け、それが終わると
少し身を乗り出して口付けした。
「――しかし水は余りに澄んでいると、人どころか魚すら寄せ付けないものだ。
多少は…やむおえないだろう?
もっとも、ハニーのここのような濁りなら嬉しい限りだがな…。
もうそろそろに…よろしいかな? ハニー…」
そう言うと花弁を指で摘んでみせ、一頻り弄って
更にショーツの生地越しにぎゅっと蜜溢れる箇所に指を差し込んだ。
>>559 「はぁ………♪んむ……っ」
普段のアンジェリカしか知らない学友達には想像すら
できない、全てを委ねきり、安心しきった笑顔。
花弁を弄られながら口付けられると、胸の奥が甘く疼く。
「それにしても、限度が御座いますですわ……んんんッ…!」
深く食い込む指に、切なげに柳眉をひそめる。
ブレザーの裾を噛みながら、こくんと頷いた。
「はい……あ・な・た…♪
私に、妻の務め……果たさせて下さいませ…♪」
>>560 こくんと頷く頭を優しく撫でる。
ブレーザーの上から腹部を、そっと撫でながら下へと身体を動かし
ズボンから怒張を取り出し。
「ふふ…すまぬ、すまぬ。
余りにハニーが可愛くて、ついついとな。
覗く内ももは、滲む汗と伝い細い筋をなしている蜜で
その奥と同様にすっかりと熱気で満たされている。
そろそろと濡れて用を成していないショーツを脱がせ。
「…では、わしも期待に答え、夫としての務めを果たそうか」
両手を太ももに掛けて、足を大きく左右に開かせ
濡れそぼった箇所に怒張を宛がい、ゆっくりと埋めていった。
>>561 大きな手に頭を撫でられ、蒼い瞳が限りない
思慕の念を湛えて輝く。
ショーツを脱がせると、粘度の高い濁った愛液が
つっ…と糸を引いて切れた。
「…………♪」
大きく足を開かされ、薄っすらと、黄金色に翳る
茂みと初々しい色合いの花弁が晒される。
その中心に、硬く反り返った肉槍があてがわれ…
目の前で、それが己を貫いていく光景に心が奪われる。
「あ、あ、あ…………あぁぁぁッ♪」
小さく狭い肉穴はたっぷりと濡れ、柔軟に広がって。
逞しい雄の象徴を味わおうと、襞が擦り寄っていく。
腰を勧めていくたびに、ぷちゅぷちゅと愛液が弾ける
微かな音が耳を打った。
>>562 「んっ……! ハニーのここは…いつしても良いものだな…。
媚肉が絡み付き、きつく締め付けてきて…
まるで初夜の時、そのまま…――純粋に雌と雄との悦に浸る事ができる」
膣内を怒張の先が抉るたびに襞から与えられる痺れにも似た
快感で、仮の身体とはいえ竜の額にも汗が滲む。
なにより愛おしい妻が寝具の上で細い肢体をくねらせ喘ぐ姿が
心を満たし、なお一層に雄の欲求を掻き立たせた。
「ふふ、ハニー…久しぶりの、わしとの交わり…心地よいか?
ここは心地よいとしきりに言っておるが…」
そう言って腰を打ち付ける速度を徐々に上げていくと
繋がった部分から漏れる卑猥な肉の打つ音が大きくなっていく。
>>563 「あ、あなた……のもっ……!
硬いのが、こりこり……お腹の奥、弄って……♪」
身体の一番奥の行き止まり、そこを穿られると甲高い声が漏れ、
肉穴全体をひくつかせる。
ショーツを脱がされただけの、制服姿のままで抱かれている新妻が
身悶える度に、シーツがよじれ、寝具がきしきしと軋みをあげた。
「私が何度……あなたの事を思って己を慰めたか……!
いッ……イイっ……!ああ………あなた、あなたぁ…………♪」
繊手を伸ばし、腕を首に絡めて強くすがりつく。
感極まって溢れた涙が、夫の首筋を伝っていった。
水音はますます大きくなり、半濁音から濁音へと変わっていく。
「……口付け……欲しいで御座いますの……♪
上と下、全部あなたで埋められたい……っ♪」
耳元に唇を寄せると、語尾を震わせ、涙声で口付けをねだった。
>>564 「ふぅ…荒々しくいくのも良いが…わしとしては――
もっと、近くで愛おしいハニーの顔を望みたいも……」
本能のままに揺り動かしていた腰を一旦落ち着けると
昂ぶりからくる息苦しさにスーツの襟を広げて大きく息を吐く。
揺れる柔らかな唇に誘われ、寝具に横たわっている妻に
覆いかぶさろうとしたが――。
「っと、…ふふ、不思議なものだな。
わしも下だけでは寂しいと…そう思っていたところだ…。
ハニー……んっ…ちゅ…。」
それより先に抱き起き縋り付かれる。
その事に深い絆を感じながら、妻の涙を溜める目尻を指で拭った。
ゆっくりと頬を撫でて背中に手を回して強く抱き締める。
蒼い瞳を見つめ、啄む様な口付けを繰り返した。
>>565 「あなた……ぁ♪
ぐすっ……ちゅッ……んっ…ちゅぅ……♪」
鼻をぐすぐすと鳴らすと、強く優しい抱擁と共に
口付けを受ける……それは、少し涙の味がした。
回数が増すごとに、唇と唇の触れ合う時間は長くなっていく。
「ぷは………ぁ…。
あなた……私も、脱がして……」
ブレザーの下、パットでサイズを水増しした胸が少し息苦しくて。
スーツの襟元をくつろげた夫に、せがむような視線を送った。
>>566 「そう泣くでない、ハニー…。
今はこうして近くにいるだろう? そう心配せずとも
ハニーが寂しくなったら、わしはいつでも駆けつけてくる… 」
親を求める赤子を、あやす様に背中を撫でて落ち着かせる。
抱き合ったままに自分もベットへと座し。
「うむ……そうであったな。
わしとした事がうっかりとしておった。
ハニーの奇麗な身体を見ずにおるなどと…ふふ…」
苦笑を浮かべながら、皺の出来たブレザーにブラウスを脱がし。
>>567 「違いますですわ…私、嬉しいんで御座いますの…。
会いたくて、会いたくて……やっと会えて……!」
ぎゅっと襟元を掴み、胸板に額を押し付けて。
背中をなでる手に、呼吸を落ち着かせていく。
「………………」
目を潤ませて、ボタンが外されていくのを見つめる。
コンプレックスである薄い胸も、夫になら曝け出せれる。
興奮と羞恥に微かに震えながら、フロントホックのブラが露になった。
>>568 「そうであったか、ハニー……」
寄り添う妻を優しく抱き締めたが
その心情を思えば、表情が僅かに曇った。
悠久の時を経た竜と僅かの生しかない人とでは
時の使い方・水の如く流れていくそれへの感じ方が微妙に違うのだなと。
「……ほぉ…」
ボタンを外し終えると、肩からブラウスを下ろしていく。
そうなるとブラに包まれたバストが覗き
控えめなそれを装飾しているものに片眉を上げた。
ゆっくりと微笑むながら、手探りにパットを外すふりをして
胸を揉み下し始める。
>>569 「見栄坊と、お笑いになられますで御座いますの…?」
拗ねたような目で、口元を軽く引き結んで微笑む夫を
見上げて尋ねる。
「ん………ッ………あ…はぁッ………!」
膨らみというのもはばかられるささやかな隆起と、
その頂上につんと立つ、薄桃色の先端が手のひらに
すっぽり納められ、こねる様に揉みしだかれた。
乳首が押しつぶされると、そこから痺れるような快感が
身体を走り抜けていく。
「………あのッ……あなた…………その……っ」
未だ夫の分身で埋め尽くされたままの肉穴が、お預けを
食わされて切なげにひくつく。
『動いて』の一言が、羞恥に邪魔されてどうしても言えないでいた。
>>570 「そう拗ねるでない。
もっとも、そういう顔も好きだが…」
にんまりとしたままで視線を下ろし答える。
反応の良い胸の頂を何度も指で愛撫しては
嬌声を我慢して唇を噛む妻の様子を楽しんだ。
「ん…分かっておる。
ハニーはもう我慢できぬようだし…わしも、もっとハニーの全部を楽しみたい。
…では少し早く動くぞ?」
胸を弄る手とは別に髪をなでながら
対面座位から、妻を抱いて肉穴への怒張の責めを再開し。
「ほれ…ハニーからも少し動いてみるか?」
怒張の先で膣壁を抉り、そっと囁いた。
>>571 「は……はいっ……♪」
片手で胸を、もう片手で髪を。
同時に撫で擦られながら、互いに向き合って突き上げられて。
「はぁ……あ…あぁッ……!?」
自分の体重に後押しされ、一番奥を強く突かれて、頭の中が
白く蕩けていく。
お預けを食わされていた分、与えられた快感は先ほどの比では無く。
「あ……♪あっあっあっあっあ……ッ♪」
普段なら恥らうような夫の囁きに、何のためらいも無く頷いて、語尾を
高く跳ね上げながらタイミングを合わせて身体を上下させた。
「あ……あな……たぁ………っ♪」
>>572 「ふふ、随分と激しくして……わしも流石に辛いな…!」
ブロンドの髪を揺らして、阿吽の呼吸で昂らせてくる妻に
膣内の怒張は一層引くついて息遣いを荒くしていく。
恥じらいを捨てて尽くす妻を
両手で抱きかかえて、交わりを深めていき。
「……愛しておるよ、我が契約者にして最愛の妻…アンジェ―― 」
ほんの僅かに竜と人との差異による哀愁を感じながらも
それは濃厚な男女の交わりの最中には、すぐに頭の片隅に仕舞われる。
また元の微笑を湛えて、妻を見て。
「んっ…もう、出てしまう…ようだ…。
――リカ……わしの精を中に注ぐ……ぞっ!」
やがて限界を迎え、強く抱き締めたまま
膣内の奥に怒張から濃い精液を放った。
>>573 両手で抱えられ、より動きを激しくしていく。
どれだけ激しくても、この大きくて暖かな手が支えて
くれるから。
「………ラーグ………ダール……っ!
私の、愛しい人……んッ………んむ……ちゅッ……♪」
夫の目に宿る哀しみ。
それに気づくにはまだ、幼すぎて。
今は唯、貪るように唇を重ねあった。
「…んッ……!んふ……ッ!んんんん……ッ!!」
艶やかな喘ぎ声の全てを、夫の口の中に解き放ち。
焼け付くような竜の精を深奥に注がれて、その花嫁は
意識を天に昇らせた。
>>574 「ふ、ぅ………」
達して首を仰け反らせた後、
脱力して胸板に身体を重ねてくる若い人の妻。
それを、やんわりと抱き締めると体勢を入れ替えてベットに転がった。
久しくぶりの外国への遠出・交わりでの疲労――先程の悩みなどは
今こうして二人、静に横になっていると
渓流に流れる一つの葉のように酷く小さなものに感じられる。
「いやはや…ハニーの激しい責めに、わしもすっかりと参ってしまったわ。
いやぁ、ほんとに参った、参った――ハハハハ……」
愛しい妻の額と髪を撫でながら
いつものように飄々と冗談交じりに言った。
>>575 「はーっ……はーっ………」
虚脱した身体を優しく寝かされ、寄り添われて。
快感の余韻に浸りながら、荒い呼吸を整える。
「…はーっ……はぁぁ………。
私も……その、随分はしたないところを……はっ!」
恥じらい、胸板に顔を埋めて甘えかけて……ふと、思い出す。
広い額に、じわっと汗の玉が浮かんだ。
「あ、あの……あなた、この部屋はその、私の部屋…では…」
>>576 一瞬、うーんっと片眉を潜めたが
すぐにいつもの調子に戻った。
横になったまま、汗ばんだシャツをささっと脱いでいく。
「まぁ、良いではないか…。
久しぶりに、わしは暫し…ハニーとはこうしていたいのだ」
そう気楽気に口を動かし
スーツとシャツをベットの端の方に腕を振って投げてしまう。
額に浮かんだ汗に軽く口付けしては、また抱き寄せ。
「だから…もう暫く、こうしていようではないか、ん?」
竜らしからぬ人間っぽい仕草。
片目を軽く閉じて首をかしげた。
【うむ…そろそろだろうか?】
>>577 「あ……あなた?
つ、続きをなさるので御座いましたら私の部屋で……んむ…っ」
慌てる口を塞がれて。
逞しい裸体を晒した夫の姿に、再び下腹の辺りが熱くなってくる。
「し……仕方、ありませんわね…。
少しだけ…もう暫くだけ、で御座いますですわよ?」
頬を赤らめ、人界の決まりなどどこ吹く風と流す夫をたしなめる。
けれどもそんなものは……口だけだ。
感じるスリルと、そして何より最愛の夫の誘いを断れるわけなど
ないのだから。
【ええ、楽しかったで御座いますですわ】
【次あたりで〆てよろしくて?】
>>578 頬を朱に染めて自分を見つめ返す妻。
そのいじらしい様子を眺めていると…つい、また考えてしまう。
後どのくらい、この最愛の者の姿を眼に映すことができるのだろうか?
後どのくらい、他愛も無い冗談を交わし、触れて、愛し合っていられるのだろう…
――やはり、渓流に流れを任せる葉は我々なのでは無いだろうか―
――すぐに水の勢いに巻き込まれ消えていって、水のあぶくとなるのでは――
「うむ…もう暫く…もう暫くな。
よろしく頼むぞ? ハニー……」
そんな胸のうちの葛藤を隠すように笑うと
妻を押し倒して、もう一度の深い交わりを求め始めた。
竜にとっては瞬き程度に過ぎない時間を、しっかりと瞼の裏へ刻むように。。。
【うむ、わしも大いに楽しませてもらった】
【これからのハニーに幸あらん事を願いつつ】
【では、これで〆を】
【もっとも…ちと、キャラが変えてしまったかもしれぬが】
穏やかな日曜日の午後。
陽光が差し恵む墓地に、彼は訪れた。
金色の髪。鋭く射抜くような双眸。漆黒のライダースーツ。
斬鬼衆の御影義虎。
彼がこの墓地に訪れるのは、今は亡き『先輩』に会うためだ。
墓の前に立ち尽くす。
その墓は綺麗に掃き清められていた。まだ新鮮な花と供えられている。
身寄りのない『先輩』のためにこんなことをするのは、きっと斬鬼衆の
縁あるものたちだろう。確かめたことはないが。
彼は、手を合わせない。線香を添えない。花も添えない。
ただ、見つめている。見つめている彼からは、いつもの冷たさは感じられなかった。
友人の墓に花を捧げて、その帰り―――。
丘の上にある墓地を下ろうと通路を歩いていたところ、よく見知った男の姿を見かける。
あれほどの派手、というか自己主張の強い格好は見違えるはずもない。
だが、彼の後姿からいつものような刺々しい雰囲気は漂っておらず、
むしろこの陽光と溶け合っているようなそんな自然体であることに気づいた。
そうか。彼もまた大切な人に逢いに来たのか―――。
「……こんにちは」
このまま通り過ぎてもよかったが、やはり挨拶だけはしておこうと私は彼に声をかけた。
見知った誰かの声がした。
――腐れ縁というやつか。もしかしたら、知り合う前にも何度か此処で
擦れ違っていたのかも知れないな。
そんな、どうでもいいことを考える。
「佐々木か・・・・・・」
彼は振り向かない。
ただ、冷たい墓石を見つめているだけだ。
――在りし日の残影。『先輩』。折原卓美。
日ノ本薫、大音慈零と共に、彼女に斬鬼のあり方を教えられた。
「友人の、墓参りか?」
当たり前のことを訊く。他のよ用事で、墓地へくる方がおかしい。
つまり、自分はおかしいのだろう。そんなことを考える。
「斬鬼の、先輩の墓だ」
訊かれてもいないのに、口に出す。
いつになく感傷的になっているのが、自分でもわかる。
「ええ。週末には来てるんです」
短く、それだけ。
ある程度の事情もあちらは察しがついているだろうし、話すこともない。
そして、彼の独り言のような呟きを聞いてやはりと納得する。
いつもは刺々しい彼の雰囲気がこれだけ和らいでいるのは
彼の言う『先輩』を目の前にしているからであろう。
「………成程、あなたにも大切な人はいたんですね」
考えてみれば意外な気もする。
いつも彼は独りでいるようなイメージがあり、誰とでもある程度の距離は置く―――
…と思っていたのだが、彼にも心を預けるような人間がいたのか。
―――これ以上、あれこれ邪推するのも悪いか。
そう思い、軽く頭を横に振った。
墓参りという行為の意味が、彼にはわからなかった。
花を供えたところで、死者が何かを感じるはずがない。
魂というものがあると仮定して――先輩は彼岸の彼方にいるはずだ。
夜闇の世界に生きる斬鬼衆であれ、決して超えることのできない完全なる断絶。
だとしたら、墓参りという行為は、生きる者のための行為だ。
だから彼は、花も線香も供えない。
祈りの言葉など、知らない。
彼女は――佐々木優希という少女は、果たして何のために墓参りしているのだろう。
週末には必ず此処へ来るというほど親しい友達が、死んだのだ。
その悲しみを思い出すのが、果たして辛くないのだろうか?
「大切なのかどうかは、わからない――ただ、拓海先輩は優しかった。
俺と似たような境遇なのに、誰も憎まないで・・・・
ただ理不尽なことで、誰かが泣くのが嫌で、だから戦ってたんだ・・・・」
他人と世界を憎むことで、ようやく手に入れた精神の均衡。
彼女は、そんな心を必死に解きほぐそうとしてくれた。
「俺にはわからない。なんで――なんでこの人が死ななければならなかったのか・・・・」
驚いた。
彼がこんな弱音を吐くとは思っていなかった。
その『先輩』とやらは、よほど彼に近しい人物だったのだろう。
けれど、今の彼は弱々しく見える―――。
「……貴方の言う『先輩』という人がどういう人間だったのかは知りません。
でも、その人だけじゃない。理不尽な力に振り回されて命を落としたのは」
ぎゅっと胸の前で手を握り締めて俯く。
妖魔に襲われて命を落とした人間は私の友や彼のいう『先輩』だけではない。
力を持たなければ持たない人間ほど、その今の世界の闇の犠牲者となっている。
私だって彼女が亡くなったことを悲しく思っていないわけではない。
けれど、彼女を想って泣き続けることが彼女の望むことではない、と見切りをつけることができた。
しかし、彼の場合は果たしてどうなんだろうか。
「先輩は戦って死んだわけじゃない。ただ・・・・」
記憶の欠片が浮かび上がる。
暗い空と雨音。鮮血。倒れ伏した先輩。
何もできなかったあの日の自分。
すべては昔日のこと。
だからこれ以上は言わない。
「忘れろ」
短く吐き捨てる。
「―――…はぁ」
腕組みをして、近くの大木へと背中を預け溜息をつく。
こういっては彼に悪いが、私と『先輩』は知りもしない赤の他人だ。
だから、別にそれについて深く聞こうとは思わない。
誰だって踏み込んで欲しくない領域というものはある。
だが―――。
「忘れろ、ですか。随分な言葉ですね。まあ、私は別にその人に興味はありませんから
言われたとおりに忘れましょう。ですが……貴方は何をそんなに拗ねているんです?」
今の彼の心は不安定に見える。
ひとり、言葉を漏らしたかと思えば、こうして忘れろと言ってくる。
別にそれはどうでもいいことだが、どうにも彼は心が定まらない様子。
「人の死はどういう形であろうと、辛いものです。
ですが―――、その辛さが貴方だけのものとは思わないで下さい」
――何を拗ねてるのかな、君は?
あの日、彼女は確かにそう問いかけた。
確か自分は、こう答えたはずだ。
「くだらないこの世界に、だ。不条理と理不尽に踏みにじられる者がいて、
その一方で、何も知らずささやかな幸せを甘受する者がいる。
それが当たり前のように動いている世界が・・・・・俺は・・・・・」
本当にくだらないと、彼は思った。
あの日、先輩は少し悲しげな顔をした。
いつも笑っている人なのに。
あの日の自分と、今の自分の違いを考えた。
「まあ、そんな世界でも、愛すると決めた相手がいれば、少しはマシか」
先ほどまでの深刻な雰囲気は、どこへ消えたのか。
彼から穏やかな気配が流れ出す。
「――――――」
なんだ、心配することはなかった。彼は自分のするべきことを見据えている。
そして、それに向けて脚を確実に進めているのだろう。
彼が愛する人物が誰かは知らないが、きっとそれは幸せなことだろう。
誰かと命を共にして、日々を生きる―――。
少しだけ彼が羨ましいとも思いながらも、私にも支えてくれている人たちがいることを思い出す。
―――結局のところ、私も彼も自分の不幸な部分しか見つめていなかったわけだ。
周りにある幸せに気づかずただ絶望に身を任せていただけ。
「ええ。誰かのために戦えるというのはきっと幸せなことなんでしょうね」
彼は彼女の言葉に――少しだけ微笑んだ。
きっと、彼女の言うとおりだろう。
「まあな――愛は世界を救わないが、それでも誰かと何かを救える
って、ようやく悟った。先輩も、きっとそうしろって言うと思う」
口元の笑みを苦労して消す。
「お前も、さっさと男の一人でも作れ」
言葉に出すのは、皮肉交じりの軽口。
「我らは、天洸院・斬鬼衆。
我らは鬼切りの刃。我らは万民の盾」
斬鬼衆の誓いを、静かに力強く宣言する。
幾度となく口にした誓い。
最近になって、この誓いを口に出すのが誇らしくなって来た。
彼は、ようやく振り返る。
「佐々木優希よ、お前はいつまで戦うつもりだ?たった一人で、何処まで
戦えるつもりだ?お前の理想は、一人で叶えられるものではないと思うがな」
真っ直ぐな、真摯なる問い。
「まあ、そっちの方は気長にやりますよ」
苦笑を浮かべて肩を竦ませる。
そういう人間がいればまた別だが、あいにくそういう相手もいない。
それに―――、今は、自分がどこまで理想を追っていくことができるかで精一杯だ。
「…たしかに、今の貴方にはその言葉、その誓いが相応しいと思いますよ」
ふっと口元を綻ばせて、笑う。
その誓いは闇を切り裂くための剣、自己が闇に飲み込まれないための衣。
きっと、彼ならばその誓いは不朽のものへと完成させてしまうだろう。
「……私も大丈夫ですよ。
私にも、私を支えてくれる友人が―――、仲間が出来ましたから」
瞼を閉じてそっと胸に拳を当てる。
ふとしたきっかけで知り合った靜という妖魔。
彼女はその身が妖魔であろうと、人間との和平を望んでいた。
その理想は私が目指すものと一緒―――、まさか私のようなバカがもう一人いるとは思いもしなかったが。
たったひとり。
たったひとりの味方だけれど、それだけで私は戦える。
それだけで、どこまでも駆けて行くことができる。
たとえ、その先が闇に包まれているとしても―――。
「最初は役割に過ぎなかったそれが、守るべき者を
見つけた時、それがソイツの運命になった・・・・俺の親友の話だがな」
斬鬼衆の日ノ本薫。彼の親友だ。
親友だと、本人の前で言ったことはないが。
きっと彼は、自分より先を歩いていた。
そんな相手と肩を並べて戦えるのはも誇らしい。
「まだ知らぬ何かのため、まだ見ぬ何かの為に、徒労と分かりつつも
戦い続けている半妖がいる」
墓無の走狗・朝山遠矢。
先日会ったばかりだが、とても腹が立った。
彼自身にもそうだが、墓無という組織にも腹が立った。
何もできないが。
「誰もが、何かの為に戦っている・・・・・お前も俺も・・・・
分かり合うことも、分かち合うできないがな」
そして彼は言う。
「佐々木優希。ここでいつぞやのケリを着けよう。
お前の力、その信念、見せてもらおうか?」
不敵に笑う。
「そうですか…。でも逆に言えば、誰かのために戦うことを知らず
その運命に縛られているというのなら―――それは安い運命ですね」
おどけ交じりに笑う。
運命なんて誰にも分かるはずがない。
だというのに、それに雁字搦めにされて自分の未来を思い描けないようでは
きっと、存在しない運命という自分の弱さに押しつぶされるだけだ。
だからこそ、私も彼も戦うことが出来るのだろう。
何が大切で、何を目指すべきかを見出しているのだから。
「―――それはすぐ傍にあるというのに。なかなか気づきにくいものなんですよね」
彼が誰のことを指しているのかは分からない。
だが、朝山はどうなのだろうか?彼もまた自分のために戦うことができていないような気がする。
「いいんじゃないんですか?
それぞれの戦い方でそれぞれのハッピーエンドに向かって戦っている…それで充分ですよ。
―――もちろん、その道に立ちふさがれるようであれば、遠慮なく退いていただきますけどね」
そう、もう引き返すことは出来ないのだから―――。
「……いいでしょう。私も、信じるもの、欲するもの、そして仲間のために。
その信念、我が刃を以って証明させて頂きましょう」
墓場の通路を抜けて隣接する広場へと抜け出る。
ここならば、墓石を傷つけることもなく、思う存分彼と戦うことができる。
「―――私たちの信念、見せましょう。闇烏ッ!」
彼女と対峙する。以前と同じ状況だが、以前とは違った心境。
今まで出会ってきた縁ある者たちが、脳裏を過ぎる。
みんな笑っていた。きっとつまらない感傷だ。
でも、悪くないと思う。
彼女が大剣を召喚する。
「それがお前の武器か。上等だ」
ベルトから、斬妖の刃を二本引き抜く。
刃渡り25cmの刃は、相手と比べれば貧弱だが、
「俺の――俺たちの力を知るがいい!」
愛する少女を思い浮かべる。
彼女の使う舞を脳裏に浮かべる
二本の刃で、狗倒流剣術の舞。
「来いよ、理想主義者」
挑発して相手の出方を伺う。
「斬鬼衆の力…、そして貴方の覚悟…、どれくらいのものか、はてさて?」
イメージするは、混濁を一掃する温かい闇。
漆黒。それは新たな光を育む母体―――。
深くて深い闇だからこそ、生半可な闇のなかでもはっきりと理解できる優しい暗闇。
黒紫色の風と共に現れた我が半身を掴み取り、ぐっと上段に構える。
「ええ―――、参りましょう。愛するもののためにその姿を血に塗れさせる守護者」
もう、言葉は要らない。
飛び跳ねるように地面を蹴り飛ばすと、一直線、前方に向けて跳躍する。
ぐっ―――、と一瞬柄を掴む手に力を入れるとその力をそのまま解き放つように袈裟斬りを放つ。
その斬撃は、一滴の迷いもなく、振り下ろされた。
相手の動きを見る。風の動きを感じる。
そして、それより先に迸る相手の『気』を感じる。
戦うべき相手は誰だろう?抗うべきはなんだろう?
誰の為でもなく、自分の為に戦ってきた。
それがどんな未来にも繋がっていないと自覚しながら。
それでも祈るように戦ってきた。
彼女が疾駆する。以前より格段に速い。
だが遅い。もっと速く迅く鋭い動きを、身を持って知っている。
迷いのない漆黒の太刀が描く、覚悟と信念。
「足りないな」
踏み込んで――大剣の根元の部分に、二振りの刃を交差させる感じで受け止める。
『気』と筋力で均衡状態を作り出す。
「足りないぞ、力が、早さが、技が!」
彼女の未熟さを叱責するように、
「その程度の力も、見たくもない!」
地力の差で、無造作に彼女を身体ごと押し返す。
「その程度では、何も成し遂げられない!」
「なら―――!」
カン、と甲高い鋼鉄音を鳴り響かせ、撃ち弾かれ身を捻りもう一撃振り下ろす。
「道を切り開くまで―――ッ!!」
負けない。
「たとえ、それが甘い無謀な考えだとしても―――」
負けてたまるもんか。
「私が選んだ道だ! 貴方に邪魔をされるつもりは、―――ないっ!」
力を振り絞り、迸る雷のように鋭く――攻撃を防御されるのも前提で――強烈な一撃を叩き込んでいく。
全て防がれてしまう。その二刀がまるでその思いを拒絶するかのように。
けれども、何度でも何度でも叩き込んでいく。
―――その刃は信念の剣。ならば、私が挫けない限り、折れる理由もないッ!
「―――ぉ、ぉおおおおおおっ!!」
前へ前へ前へ。
彼女の太刀筋は悪くない。及第点をつけられる。
だが、筋力と速度が最高点に達する寸前に刃を閃かせ、受け弾き捌く。
彼が、怯まず恐れず前へ突き進むからだ。
「足りないんだよ、それじゃ!」
何度目かの太刀を捌いて、体勢を崩させて反撃に出る。
刃ではなくローキックだ。
それを始点とし、切り刻むような蹴りが彼女を蹂躙する。
「ぐっ―――……!」
不意の反撃に、バランスは崩れる。
そのまま、崩れるわけにはいかない―――、足を叩きつけるように大地を踏みつけた。
なんとか踏み止まることに成功し、彼の眼を見据える。
なおも鋭利な刃のごとく襲い掛かる彼の蹴技に耐えながら、機会を見計らう。
「足りない?」
笑う。
ならば、分からせてやろうじゃないか。
技術が足りないのであれば、一瞬一瞬の判断を全て前に進むための糧として。
想いが足りないのであれば、一瞬一瞬に込める力を障害を打ち破る糧として。
理想を現実のものとするために、私は刃を振う。
どのような武士でも、攻撃の終えた瞬間はいくら小さいものであろうと、隙は生まれる。
攻撃の終える瞬間―――、つまり強烈な一撃が襲ってきた場合だ。
まだそのときではない。剣に魔力を込めはじめながら、私は彼の攻撃に耐え続ける。
分かり合えない。分かち合えない。
それでも二人はぶつかり合う。
それしか分かり合う術がないかのように。
決して交差することのない信念と理想。
彼はきっと、これからも刃を振るい続けるだろう。
自分の為に。そして自分の愛する者の為に。
彼女もきっと、自分から刃を手放すことはないだろう。
気高く、穢れなき、信念の刃を。
彼の蹴りが10を越えた。
その彼がぐらりと体勢を崩す――否、捻りを加えて両足を揃え、
そのまま後方へ跳躍し着地する。
相手の意図は理解できる。
魔力の流れを感知できたから。
面白い、と彼は思う。乗ってやろうと彼は思う。
つまらない攻撃なら、倍返しにしてやるまでだ。
「気高き信念――その輝きを刃に宿し示すがいい!」
彼の『気』が膨張し、大気を震撼させる。
【あと2、3レスくらいで〆ようと思うのですが】
「ならば―――、この刃、我が魂を込めて」
ふーっ、と深い呼吸をして、静かに彼を見据えた。気休めだが、少しは痛みが和らぐ。
彼に敵うかどうかなんて、どうでもいい。
今はただ、自分の持つ全てを叩きつけるだけだ。
ゆらり、と自然にその空気に溶け込むかのように剣は持ち上がり、その切っ先を天上へと捧げる。
「闇烏―――、私の意志が、願いが、正しいと想うのなら、力を貸しなさい」
パキパキと音を立てて、鋼鉄の刃は氷結の剣へと変化していく。
私の立つ地点を中心としてアスファルトは湖面に生じる波紋のように、氷の海へと変化していく。
一時的な魔力の増強―――、できるところまでやってみせればいい。
「私が決めた道、最後まで走り続けて見せます―――。
闇烏、命じます。否定せよ、全ての不幸を。拒絶せよ、全ての悲しみを」
それは、わたし自身が誓った、我が友への誓い。
「繋げよ、我が未来を―――!!
闇がらぁぁぁぁすっ!! 討て! 停止を命じる精霊王の剣ッッ!」
その剣は全ての闇を凍て付かせる更に深く温かい闇。
それは絶対不滅の我が信念の剣―――…っ、打ち砕けッ!
「うぁあああああぁぁぁっっ!! いっけぇぇぇぇええええっ!」
それを真正面からバカ正直に彼へと向けて振り下ろす。
叩きつけると同時に、濃霧を伴いながら爆散し刃よりも鋭く冷たい氷片が辺り一体に嵐のように飛散する。
【了解しましたーっ】
彼女の魔力が最高潮まで高まる。
天に掲げられた刃を中心に、世界が凍る。
そこは彼女の世界だ。
『私が決めた道、最後まで走り続けて見せます―――。
闇烏、命じます。否定せよ、全ての不幸を。拒絶せよ、全ての悲しみを』
「ふん――」
彼は怯まない、恐れない。不敵に笑う。
『繋げよ、我が未来を―――!!
闇がらぁぁぁぁすっ!! 討て! 停止を命じる精霊王の剣ッッ!』
「その一撃を待っていた」
彼は笑う。ただ不敵に傲岸不遜に。
最高の一撃には、最高の一撃で報いるまで。
丹田から生み出される『気』が螺旋となり身体を駆け巡る。
光り輝く蛇が蛟となり、そして龍と成る。
拳に力を集約する。掌に荒れ狂う『気』の暴風が出現する。
全てを破砕し貫く螺旋の龍だ。
両腕を、弓の弦の様に引き絞る。
打ち出される矢は、己の乾坤一擲だ。
『うぁあああああぁぁぁっっ!! いっけぇぇぇぇええええっ!』
振り下ろされる巨大な氷の刃。
それが纏うはブリザード。
「心、涼しきは、無敵なり」
双掌を突き出し、彼は輝ける龍の螺旋を、その一撃に叩きつける。
彼女の世界を打ち砕く弾丸のように、一直線に突き進む。
氷龍と黄龍の衝突―――。
お互いが食い破らんとした結果、世界は『気』と魔力の爆発によって包み込まれる。
霧と土煙が辺り一帯を包み込むなか、お互いの姿がそれに紛れ込んでしまった。
必殺の一撃。彼には届いたのか否か。
既に体力ををすり減らしていた上でのあの一撃だ。
一挙に魔力を大量に消費してしまったためか、私は既に大地に斃れ伏せていた。
襲い掛かるはずの衝撃がこの身に走っていないということは、相殺は出来たはず。
起き上がろうとするものの、体中から力が抜けてしまったかのように身体は言うことを聞かない。
せいぜい首を動かすのが精一杯で、肺は疲労のためかより多くの酸素を吸おうと過呼吸気味になる。
ばくばくと動悸は激しく、全体が締め付けられるような苦しみが支配されている。
「が…ふっ…、ぁ……」
まともに言葉を紡ぐことすらできない。
ひゅーひゅーと、口から息を漏らしながら、体力が回復をするのを待つ。
彼も私も先ほどの一撃が最大限のはずだ。どちらに転んでもケリはついている。
二つの力が両極で衝突し、お互いを喰らい合う。
氷の龍と金色の龍。喰らい合い拒絶し合いそして消滅する。
その反動が現実世界を蹂躙した。
「――いい攻撃だった」
彼は、傲然と立ち尽くしていた。
目立った負傷は特にない。相殺しあったからだ。
ただ、ライダースーツの表面が僅かに濡れていた。
ゆっくりと歩く。倒れ伏した彼女に向かって。
おそらく、魔力の大量消費が原因だ。攻撃自体は相殺したのだから。
大量の『気』を消費したのはこちらも同じだが、殆ど意地で動く。
「お前の信念、見せてもらった――立てるか?」
手を差し伸べる。
果たして彼女が、この手を取るかどうか。
「ええ―――、すみませんが力を貸して頂きましょうか」
苦悶に耐えながらも、笑みを浮かべて彼の手を取る。
遠慮なく彼の手をひっぱりながら身体を起こし、荒く吐息をつく。
彼の手を借りたからと言って、身体が楽になったわけではないが、少しはふらつくも立てるようにはなった。
「はぁ…、はぁ……、もう、大丈夫です。
すみません。…そして、ありがとうございます」
よろめきながらも、手を放し、はぁと大きく溜息をつく。
中に蓄積した疲労を吐き出すように。
「……私は、戦い続けます。
この理不尽な世界を叩きなおして、そして、また、誰かが悲しまないように」
それだけ告げると私は踵を返して、丘の麓へと続く坂を下り始める。
言葉はいらないだろう。これから先、もしかしたら彼と対峙することがあるかもしれない。
けれど今は、お互い胸に抱えたものを信じて歩き出す。
対峙したときは全力で迎い撃つまで。それが彼と私の暗黙の約定。
「だから、あなたも、あなたが信じるもののために戦ってください」
一度振り返って、それだけ告げると、私は今度こそその場をあとにした。
【それではこちらはこれで落ちさせていただきます】
【どうもお付き合いいただいてありがとうございました。それではおやすみなさいノシ】
素直に彼女は手を取った。
何かを言うべきか。
何も言うべきではないのか。
彼女の手が離れる。
やがて彼女は踵を返し、歩き出す。
「やってみな、その命尽き果てるまで。
佐々木優希、気高き信念の刃よ」
彼女の背中に、静かに力強く語りかける。
「我が名は御影義虎。鬼切りの刃にして、八雲天音を守る者なり」
振り返った彼女に、そっと笑いかける。
これでいいと彼は思った。
だから彼も歩き出した。
【お疲れですノシ】
既に、日が西に沈んで暫く経った。
巣に自ら迷い込んだ獲物を食らい続けて、どのくらいだったか。
何時以来かは覚えていないが、自分から獲物を捕獲するなど久方ぶりだ、というのはわかっている。
落ちるビルの影によって漆黒に染め上げられた、対面のビル。
その壁面に身を預け、影に溶け込み、気配を殺しながら獲物を待つ、妖魔が居る。
下を通る者に目を光らせ、自らの糧とするために。
【お待たせいたしました】
【場所としては少し奥まった路地裏、ということで……相変わらずの遅筆ですがご容赦くださいorz】
【それでは宜しくお願い致します】
―― 夜。
七妖会の任務と、佐々木様、重藤様のための様々な布石の情報集めで、
今日も遅くなってしまった。
昼間と違い、夜のこの街はどうにも雰囲気が違う。
妖が多い事にも起因しているのかと思ったが、どうやらそれだけではないような…。
何というのか、街全体を覆う気配が、昼と夜とで異なる気がするのだ。
「…急いだ方がいいのでしょうか…」
無意識に呟いた言葉。
郊外に近いためか、このビルの周辺は既に廃ビルに近いものがあり、人通りもない。
ただ、虫の声だけが響いて…
「……?」
いつもなら、響いている筈。
なのに、今、周囲からそれらの音が聞こえない。
無音の夜闇が、周囲を浸し尽す。
音に敏感な私は、その状況に激しい違和感を覚えた。
足を止め、ゆっくりと周囲に感覚を向ける。
【了解しました。こちらこそ、宜しくお願い致します。】
【無理せず、南雲さんのペースで回して下さいませ。】
―――来た、か。
眼下に見えるのは髪の長い女、と思しき姿だった。
しかし、まさか1日で……それもこれほどまでに早く。
普段ならば数日、それどころか週単位で獲物を待つこともあったのだが。
何という僥幸か。
視線だけで、辺りを確認する。人影は、ない。
―――好機。
預けていた身体を壁から離し……落下する。
コートを着ていれば風をはらんで音を立てていただろう。
だがそれは相手を襲う行為の妨げとなる。故にコートは既に脱いであった。
その身が微かな風切り音を奏でる。これを消すことまでは叶わない。
眼下の女に向け、落下していく。
間合いは、刻々と詰まっていく―――
何だろう、この違和感は。
静かな夜の世界なのに、何かが刻々と変わっているような感覚を受ける。
だが、周囲にそれらしき気配はない。
その刹那、耳に僅かな音が入り込んだ。
風を切る音。
それが聴こえていなければ、動く事すら出来なかっただろう。
足許に力を込め、後ろへとバックステップする。
ほんの僅か、数十cmの、上下への移動を伴わない跳躍。
だが、それでも、気配のない「何か」の襲撃を回避するには、充分だった…筈だ。
少なくとも、その時の私はそう思った。
体勢を変えず、己が居た場所に襲撃をかけた相手を見据えようとする。
―――気付かれた、だと?
有り得ない。少なくとも、ただの人間では有り得ない。
それも気付いただけではなく、着地点を見越して後ろへ退くとは。
拳法の心得でもあったか。だが、しかし。
気付かれたのであれば、妖魔としての気配と力を隠す必要もない。
地に着いた脚を曲げ、衝撃を吸収する。
この程度の高度は物の数ではないとは言え、この動作をしなければ脚がどうにかなってしまう。
そのまま曲げた脚で大地を蹴って前へと身体を打ち出した。
鷲の爪の様に指を曲げた右手を、相手の喉に向けて伸ばしながら。
間合いを詰め、その細首を掴もうと。
むやみやたらと苦痛を与えることは好まない。
喉を潰すとまでは行かないが、声を出せない程度には締め付けさせてもらおう。
「!」
拙い。
予測していたよりも、相手が速過ぎた。
紅い気配の塊が、己が方へと突進するように動く。
咄嗟に手を懐に入れ、木笛を取り出そうとしたが、
それすら許されない程に、相手の動きが狡猾にして俊敏だったのだ。
私の手は木笛を手にしたまま、それを唇にあてる事叶わず。
軽い衝撃と共に、何かが咽喉元を掴むのが分かった。
「ぁっ……!」
声が…出せない。
相手の首を取った。
その瞬間、僅かな違和感を感じるがそれが何かは分からない。
人間では……いや、これは人間だ。少なくとも、今は違和感を感じない。
掴んでいるこの感触も、間違いなく人間……その筈だ。
―――さて、何かを取り出そうとしていたようだが……
相手の手に目をやる。そこに握られていたのは、笛。
ちょっとした棍棒程度にはなるだろうが、細すぎる。
溺れる物は藁をも掴むと言う奴か。
とはいえ、何がこちらにとって厄介になるかはわからない。
空いた手で手首を打ち据え、木笛を叩き落としておく。
しかし……此処までの行動を許してしまうとは、私も甘い。
「……私が空腹である時に、この場所を通ったのが運の尽きだ。
お前には私が生きるための糧となってもらう」
憐れみはない。逃そうという気もない。
ただ、何故自身が襲われ、死ぬかくらいは今までも教えている。
理由が分からないまま死ぬのは、自分も忌避するところだからだ。
相手がそれを理解し、納得するかは別にして。
「これ以上の苦痛は与えない。それでは、眠れ」
片手が刃を形作り、振り上げられていく。
「……くっ」
木笛を落とされた。
だが、空気を求められない圧迫された耳に聴こえた言葉は、覚えのある声だった。
(南雲……様…?)
音に敏感な私は、声である程度相手を判別出来る。
声紋というものが人間の世界の認識方法にあるが、それと似たようなものだ。
私の事が分からないまでに、空腹なのか、それとも…。
いずれにしても、このままではいけない。
理由はともかく、殺されるわけにはいかなかった。
使いたくはなかったが、最後の手段を出すしかない。
笛なしで、何処まで制御出来るか分からないけれど…。
きり、と唇を結ぶと、口内に残された空気を一気に吹き出す。
それは、甲高い口笛となり、音を紡いだ。
笛という制御機構を通さないそれは、拡散する衝撃波となり、その場の全てを震わせる。
即興の音によるスタナーが、波紋状となって場を駆け巡った。
振り上げた手刀を、振り下ろそうとして一瞬躊躇した。
これは本当に人間か。本当は人間ではないのではないか。
もし妖魔だとすれば、厄介なことになる可能性もある。
一度、確認をしておいた方が良いか―――
振り上げた手を下ろしかけた、その瞬間だった。
全身を打ち据える衝撃。路地裏に響く甲高い音。
至近距離で放たれたそれは、人間の姿を取っていた私の三半規管をかき乱す。
「ぐ……」
肺の空気が押し出され、呻きが漏れ出した。ガクリと膝を付いた。
首を掴んでいた手からも力が抜け、相手を解放した。
「……やれやれ、よもや妖魔だったとは…」
身体は痛むが、痛みの表情を封じ込めて苦笑が表に出る。
あの違和感を感じた時、最初に確認しておくべきだったのだ。
しかし、身体が満足に動かない。
追撃が来ないとは限らないが、これでは逃げられない。
自業自得ではあるのだが。
もしかしたら、ここでこの生を終えることになるかも知れない。
「失礼した……」
だが、謝罪だけは済ませておくべきだろうと、そう思った。
こちらの不手際だったのだから。
後は煮るなり焼くなり好きにすればいい。自分は、逃げられない。
「……けほっ」
咽喉から新たな空気が入り込み、朦朧としかけた頭がはっきりとする。
流石に、木笛なしでの「震」は自分自身の耳にも少なからぬ被害を与えていた。
額とこめかみの部分に、鈍い痛みが走る。
微妙に、南雲様の喋る言葉が歪みを伴って耳に入ってきた。
「失礼した、ではありませんよ…南雲様。」
ぺたり、と路地の上に腰を落とすと、嘆息した。
まだ痛む頭を押さえながらも、先程落とした木笛を手にして懐へと仕舞う。
「…私の事を、覚えていらっしゃらないのですか?」
「その声……まさか…」
聞き覚えがある。
先日、追い出された巣で言葉を交わした。
「児玉……靜……」
そして情報を提供してもらった。
確か、次は貸し借り抜きで話してみたいということを最後に離した筈だ。
だが今、借りは更に増えた。返しきる自身が無いほどに。
「……やれやれ、顔を改めていなかったのは失敗だったか…」
見ていたとしても、元々人間の顔など覚えてはいないので、
妖魔の気配を抑えつつ人間の姿を正確に模した、その顔が記憶に残ったかは怪しいが。
あの時、癖で力を抑え続け、顔を改めなかったのが先ず失敗。
そして、声だけでもどうとでもなると楽観視していたのもまた失敗。
そして、あの巣を追い出されなければこうはならなかった。また一つ、失敗。
思わず嘆息したくなるが、それは流石に失礼に過ぎる。被害を受けたのは向こうだ。
「……済まんな、声だけでもどうとでもなるかと思ったのだが…」
今回、その声を出させなかったのだから笑い話にもならない。
「…名前は覚えていて下さったのですね」
ふぅ、と息をついて、手を額にあてる。
耳の中に響く音を木霊の力で相殺し、耳鳴りを消していく。
「…一体、何があったのですか?
貴方の家を訪れても、もぬけの殻、今日は今日で、襲われる始末。
…そんなに、私の事がお嫌いですか?」
眉を顰め、南雲様の方に向き直る。
家の事はともかく、先程の襲撃の件は理解したのだが、
どうにも一言、言わなければ気の済まない有様だった。
普段の私からは、考えられない事だけれども。
「動かないで下さいね。衝撃波の音を『抜きます』から。」
そ、と南雲様の傍に寄ると、その身体を侵食している音を相殺すべく、その頬に手を当てる。
身体を巡る不協和音を探り当てると、それに対して呟きを音に変え、相殺していく。
「つい先程のことは言い訳しようもない……申し訳なかった。
家に関しては不可抗力でな……遺憾ながら、退魔士に叩き出された」
直前で一度確認しようとは思ったのだが……その瞬間に、だ。
それでは単なる苦しい言い訳にしか聞こえないだろう。
それに口で言ったとおり、言い訳したくとも出来る筈がない。
間違いなく殺す気だったのだから。
「……いや、嫌いではないのだが」
そう言った直後、頬に触れる手の感触。ゆっくりと不快感が消えて行く。
頭の中で銅鑼を鳴らされているような感覚と指すような痛みはしぶとく残っていたが、やがて消えた。
ただし、衝撃波によって打たれた身体はまだところどころ痛んだが……それは仕方がない。
「返すどころか、また借りが増えてしまったか。……もう大丈夫だ」
足下が覚束ないということもない。地を踏みしめ、立ち上がった。
「棲家をたたき出された…ですか。
…それでも、南雲様は庇護を受ける為に私達の所へ来るつもりはないのでしょう?」
応急手当を終え、頬から手を離すと、私も立ち上がる。
この方は、何というか己の捕食者(プレデター)としての本能に従って生きている。
故に、私が棲家を提供したり、組織への勧誘を行うのはナンセンスな事だと理解していた。
だが、それでも気にかけてしまうのは、老蜘蛛の事を思い出すからだろうか。
…情けない。
私は、一人の妖魔に他の失くした面影を重ねようとしているというのか。
首を振り、その考えを振り払う。
そのような失礼な事を考える等、してはならない事だった。
「…南雲様、幾つか耳に入れておきたい事があります。
今でなくても構いませんが、時間を割く事は可能でしょうか?」
佐々木様と重藤様の事を伝えておかなければならない。
七妖の事とは別に。
それに対して、南雲様がどう思うかは予測できなかったが、
何故かそれが発端で亀裂が生じる事はないような気がしたからだ。
「残念ながら、無いな。住処は新しい場所を探せばいい。
組織の庇護を受けることは、この身を縛られることにも繋がる可能性もある。
例え、頼まれても断る」
以前にも言ったことがあるはずの言葉だった。
それをもう一度聞くのは、何を思ってか。
それを知ることは叶わないが、口振りや首を振る仕草からして、何かあったのではないだろうか。
向こうが話さないのであれば、聞くことでもないが。
「幸い、今は宿無し故に暇が有り余っていてな。
それ以前にあれだけのことをして、断れる訳が無かろう。
例え無理でも都合を付けさせてもらう」
何を話したいのかは分からないが、無駄な時間にはなるまい。
「さて……何の話か聞かせてもらおうか」
「分かっております…忘れてくださいませ」
少し寂しげな笑みを浮かべ、答える。
そう、それがこの方なのだ。
私は、そのような自由を尊ぶ生き方に、知れず憧れを抱いているのかもしれない。
「暇と言いますが…食事は、大丈夫なのですか?
私を襲う程に、空腹のご様子でしたけれど」
そう言って、値踏むように南雲様の顔を覗きこむ。
「それと…此処では、少し危険な話です。
こういう場所では、話せませんので。
郊外に私の棲家があります。まずはそこまでいらして戴けますか。」
街中の雑多な場所では、何処に七妖の耳目があるとも限らない。
これから話す内容は…彼らには知られてはならない事だった。
笑みの中に垣間見えた真逆の感情、それの存在自体には気付いた。
が、それが何だったのかまでは分からない。
其処まで突っ込んでみようとも思わない。
「空腹を覚えても、一月くらいならば問題はない。気は滅入るがな。
今日のように、空腹を覚えてから1日で獲物が来る方が珍しいのだ。……結局、間違いだったが」
覗き込んでくる顔を真っ直ぐ見据えながら、言った。
これでまた何かを言われても、それは自業自得。甘受するしかない。
「……わかった。それでは邪魔させていただこうか」
恐らく、組織……七妖の者には知られたくないことなのだろう。
内容はそこから推して知るべしということだろうが、しかし。
―――皆目見当が付かないが。
しかし他に手はない。自分は、密談に向く場所に心当たりがなかった。
【そろそろ遅くなって来てしまいましたが、お時間は大丈夫ですか?】
「…便利なのか、そうでないのかよく分からないですね…。
南雲様にとっての捕食は、魔力の充填では補えないものなのでしょうか…」
何か違うような気もする。
大体、それで補完出来るとして…どうするというのか。
その先にあるものを考えて、少し思考がうろたえた。
「…こほん。では、着いて来て下さいませ。」
【一旦凍結して、後日再開の方が良いかもしれませんが…時間はいつ頃とれそうでしょうか?】
【個人的には、魔力供与で捕食の代替効果(不完全)とかも考えていたのですが(笑)。】
【そういうものも含めて、どうするか…にも拠ります。私は今日は1時くらいが限界ですので。】
「やってみないと何とも言えんがな。魔力の補給など、
一度たりともしたことがない。やり方も知らん」
恐らくは無駄だと思うが。
食欲は食欲、他の行為で代替することは難しいだろう。
とはいえ、口に出した通りにやってみないと何とも言えないのだ。
何故途中で口を濁し、咳払いをしたのかは理解出来ない。
兎に角、付いていく他はない。家が何処にあるかなど、知らないのだ。
【最近は週末の夜ならば大抵は。平日も空いている事の方が多いですね】
【こちらはそれでも構いませんけど(笑】
【自分が一時までに〆られるかが少々怪しいですので、凍結にして頂けますか?】
【一時までだと、後1レスずつくらいが限界ですし……遅くて申し訳ないorz】
「…そ、そうですね。」
組織の妖魔であれば当たり前に知っている事でも、
そうでない南雲様ならば知らずに当然の事。
…というか、はしたない想像の方へと行きかけた思考に思わず自己嫌悪する。
交わりによって魔力を満たす等、想像がつくはずもなかろうというのに。
それ以上に、普段ならば気にならない、そうした行為の事を変に意識してしまった事に、
気恥ずかしさを覚えた。今が夜で良かったと心底思う。
そして、南雲様が、精神を覗く事の出来る妖魔ではなかった事に。
何となく、気まずい感じになって、押し黙ったまま彼に先立ち、家路へと向かう事となった。
【それでは、凍結という事でお願い致します。】
【平日で空きそうな時があれば、待ち合わせスレで書いておいて下さい。】
【私は、平日は可能な時と不可能な時がかなり曖昧ですが、不可能な場合はその旨、レスしますので。】
【では…次回を楽しみにしております(笑)。】
【了解しました。長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。お疲れ様です】
【それでは、また伝言スレッドで。こちらも楽しみにしておりますので(笑】
【では、失礼いたします】
ここも寂れたなぁ。本スレより避難所の方が盛り上がってこっちには誰も来ないんだから
これは終わりかもわからんね
そういうことは思っていても言わないようにってお母さんから習わなかった?
>>630-631 君たちも空気読めないレスにつられないように。
以下、何事もなかったように、再開、と。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
【少しだけ待機します】
【こんばんは、はじめまして】
【お相手希望します】
【はじめまして、こんばんは】
【1時位までですがよろしいですか?】
【シチュ等はお任せしますので】
【一時までですね、分かりました】
【では、ベタながら、
共闘→雑談
の流れでいいですか?】
【それと、どちらから始めましょうか?】
【流れはそれで大丈夫です】
【それでは朝山さんからお願いします!】
【はい、ではこちらから始めますね】
何だろう…最近、何か変なんだよな。
(人気の無い夜の街をトボトボと歩きながら、彼は呟いていた)
(彼は腕を血に染めていたが、
既に人の腕に戻っていたいるのは、
先程死地をくぐり抜けてきたばかりだった)
(いつもは、戦いを終えた安心感と倦怠感に包まれているはずの彼であったが、
今日はそこしれぬ不安と、心にしこりが有るようで、府に落ちないものを持っていた)
ま、今日は早く帰って、体洗って寝るか……。
(そんな事を振り払うように頭を振るい、足を帰路へと向けた)
(その隅で、妖魔が舌舐めずりをしているのに気付かずに…)
(妖魔は身体中の鱗を刃に変え、
風の如く彼に迫り、切り裂こうと凶刃を向く…!)
【よろしくです!】
寿司店のハッピを着た中学生位の少年?少女?が
自転車の荷台に空桶を乗せて夜の街をひたすら走る。
(え〜と、あと山田さんちと、神田さんちか・・・)
実家の手伝いの空桶の回収は店が忙しいと良く頼まれる。
手伝いをすれば小遣いもそれなりに貰える。
アルバイトの出来ない中学生にとっては美味しい仕事である。
今日も帰ってお小遣いを貰ってほくそ笑みながら寝るだけだったのだが・・・。
(よし、山田さんち終わり・・・)
残る神田さんの家は少し遠回りした場所にある。
人気のない道を急ぎ自転車をこいで行くと、妙な感覚を覚える。
たまに感じる―――物の怪の感覚。
自転車を止め少しだけ辺りを見回すと汚れた服を着た青年がポツリポツリと歩いていた。
そして、それに襲いかかろうとする物の怪!
とっさに声を掛けてしまう。助ける義理などないが放って置く事は出来ない!
「お兄さん!あぶなーい!」
気付いてくれるだろうか?
気付いてくれたとしても避ける事が出来るだろうか?
それほどに物の怪は素早く夜の闇を切り裂き宙に舞っていた。
え…あぶな………!
(夜闇に通る声が聞こえ、振り向こうとした時には刃の風は彼を捉えていた)
(身をよじらせ、何とか避けようとした…
が、間に合わない。彼の腕に刃が斬りかかる)
うっ、ぐあぁぁっ!
斬られた…!?
(避けた動きが勢い余り、斬られた腕をかばいながら地に倒れこむ)
(顔をあげ、妖魔の姿を確かめた。
そこにいたのは、人間ぐらいの大きさのトカゲが二足直立し、
大きな鱗を鋭い刃に変えていた。前足と後ろ足で素早い動きをしていたのだろう)
それとさっきの声は…男の子…。
(すぐさま声の聞こえた方を向き、
ハッピを着た年端もいかぬ少年の姿を捉える)
君、すぐに逃げるんだ!
普通の人間が、居ちゃいけない!
(思わず叫ぶ。人外の世界に普通がいてはいけない)
(それと同時に、彼は内心焦っていた。
一日に一回しか体を妖魔化することが出来ない彼の体は、
既に戻っている血塗られた腕を妖魔にかざすしかなかった)
(その時、妖魔の双眸が歪み、青年を捉え、鱗の刃を立てた)
・・・・・・間に合わなかった!
そう思った瞬間に青年の腕から鮮血が迸る。
改めて見ると相手は大蜥蜴?
ファンタジー映画に出てくるリザードマンの様に見える。
「逃げてー!」
己が叫ぶと同時に彼も逃げろを叫ぶ。
それなら簡単、一緒に逃げましょう!
自転車をフルスピードでこぎ、大蜥蜴と負傷した彼の間に割って入る。
―――そして大蜥蜴に向かって手を翳す。
「ちょいとゴメンね!」
大蜥蜴と少女の間にオーロラのカーテンが降りる。
そして自分も自転車から降りる。
「早くこれに乗って!逃げますよー!」
まずは青年を起き上がらせる為に手を差し出す。
な…!
に、逃げるのはそっちだろう!?
(お互いの声が重なり、少年の乗った自転車が彼の前に行く)
馬鹿か、早く逃げ……っ!?
(妖魔の前に手をかざした少年に物言いをしようとした時、それは起こった)
(極光が少年と妖魔の間に形を造り、その直後
妖魔が鱗の刃を飛ばすも、検討違いの場所に空を斬った)
…分かった、ありがとう。
(少年の差し出された手を取り、少女が起こした
先程の不可思議な出来事に礼を言う)
でも、君は一体…?
あのオーロラは何なんだい?
(一応立ち上がり、少年に疑問をぶつける。
少年もまた、普通ではない者と考えられるが、
青年が今まで見たことのない性質の物だった)
(その間にも、検討違いの方向に飛んでいった鱗の刃は、
まるで意思を持っているかのように弧を描き、
そのまま少年に向かい、風切り音と共に、刃を煌めかせる!)
―――結構怪我してるみたいだな・・・。
とりあえず青年を近くで見た第一印象。
さっきの事といい、普通の人生歩んでいない人だとは思うケド。
「あ、お礼とか挨拶は後で・・・、早く行きましょう!」
そう言っても話しかけてくるし。
この人天然系の人かも知れないなぁ。
「あのー、説明も後!後っ!早く行かないと・・・、うわぁっ!」
お兄さん早くしてくれないから・・・、とっさに攻撃されたら正体晒すしかないじゃない。
白いハッピと下に着ている白いシャツを破り、背中から白い翼が生えてくる。
翼出すと服が破れるから嫌だけど、体切り刻まれるよりは全然マシだよね?
「あっぶな・・・。」
大蜥蜴とお兄さんを空から見下ろす。
悠長な事している場合でもない。
どーも視野を遮られても攻撃してくるみたいだし。
「お兄さんいいから自転車に乗って!」
とりあえず蜥蜴どうにかしなきゃ・・・。
あたしは意識を集中させると光り輝く兜と鎧と盾と槍のセットを身に着けた。
どーゆー訳か知らないけど、こーゆー事が出来る。
光の槍を投げながら自転車の側まで降りる。
すこし疲れるけど槍は何本でも出せるから、暫くこれで時間稼ぐしかないみたい!
あ…ああ、分かった。
悠長にしているんじゃなかった…て、来た!
(少年の言うことに頷き、自転車を跨ろうとした。
が、彼が悠長にしていたか刃が少年へ迫っていた)
(とっさに少年を押し倒し、かばおうとした
―――その時だった)
えっ……君……天使…?
(少年の背中から翼が生え、翔んで刃を避わした。
羽が宙を舞い、夜の世界に白が映えていた)
…分かった、それじゃ…!
(盾、鎧と兜を身に付け、光の槍を作り出した少年に頷き、自転車に跨る)
(少年は槍を投げ、再び迫り来る刃に向かっていく。
ぶつかったと思った時、光の槍が爆ぜ、刃を四散させていた)
(そうしている間にも、妖魔は極光を突破し、
まるで破れかぶれのように少年へ向かい、鱗の刃を立て、突進する)
「とりあえず先に行ってて下さいッ!」
普段はこーゆーの相手にしてるのかも知れないけど、怪我してちゃ・・・ね?
そんなこんなで大蜥蜴は突進して来る。
嗅覚か何かで居場所分るみたいだけど、始めは目で見てるみたい。
それなら・・・、大丈夫かな?
今までより少し力を込めて槍を投げる。
大蜥蜴との距離が詰まったその時―――あたしはオーロラを目の前に立てた。
一瞬あたしを見失う大蜥蜴くん。その隙に大きめの槍を出して一気に貫く!
確かな手ごたえを感じる。やったかな??
踵を返して先程のお兄さんの所へ向かう。
そのまま逃げていれば児童公園の辺りに居るはずなんだけど。
怪我も心配だったから、人気が無いのを良い事に夜の空中散歩を楽しみながら向かった。
ああ……無事で!
(立ち向かうますらおの言葉を受け、こいで去る前に鼓舞をした)
(痛む腕を無視し、サドルを掴んで走り出した―――)
(そして妖魔は嗅覚や感覚的に少女を捉え、刃の体当たりをしようと迫っていた。
繰り出された光の槍が直撃し、片腕が吹き飛んでも無視し、駆けるのを止めない)
(遂に確実に少女との間合いを詰め、刃で切り裂こうとした―――
その時、極光を受け、怯んでしまう。
直後に妖魔は、体を槍で貫かれ、うめき声を上げながら四散していった……)
いつも来る公園に来たけど……
あ…おーい少年、ここだぁ――!
(そして彼は空を羽ばたく少年の姿を見付け、大きく手を振った)
(血が滴り落ちているはずの腕の傷は、自己再生で塞がっている)
(えっと・・・、あ、いたいた・・・。)
天然系のお兄さんは無事の様子。
(あれ?手を振ってる・・・?)
先程までかなり怪我をしていたはずなのに・・・、それがあの人の『力』なのかな??
翼や鎧を消して公園に降り立つ。
背中がスースーするのがかなり気になる・・・。
しかも下着も破れちゃったみたい・・・。
片手で胸を押さえながら、もう一方の手を振りながら近づく。
「あー、無事で何よりですけど・・・、あたし・・・、女なんですけど・・・。」
良く間違えられるとはいえ、結構腹が立つ。
髪の毛を伸ばせば良いのだろうが、店を手伝う時や部活の時邪魔なので短いまま。
そして夜の公園の外灯の光の下、あたしは不服そうな目でお兄さんを睨んだ。
え…女…の子…?
(少年、否、少女の瞳がこちらを睨んでいる。
性別を間違えられたら誰しもそうだろうが、少女にはそれが一層強く感じていた)
ええと…まぁ、改めてありがとう。
君のお陰で助かったよ。
でも、君のあの力は…?
(少女が破れた自分の服を片手で押さえるのを見ながら、軽く頭を下げる)
(それと先程の、戦乙女というべき姿を思い出しながら聞いてみた)
『服…破れている…』
(翼を出した時、少女の後ろ布は破けていた。
責任感を感じながら、自分の血まみれのシャツを見た)
やっぱり男子だと思ってたみたい。
少々ムカッと来るけど仕方ないか。
お礼を言うや否や質問来たって感じ?
まー、これもまた仕方ないか。
「そう、女です・・・。あの力・・・、んー・・・、生まれつき?みたいな。」
他に説明の仕様が無い。だって、そーだし。
「ところでお兄さんは何者ですか?妖怪退治屋さんとか?刑事さんとか?」
適当に思い付く事を聞いてみる。
【あと1,2レスづつで〆でよろしいですか?】
その…ごめん。
(性別を間違えた事に、改めて頭を下げた)
生まれつき、か。
凄い力を得たものだね。
(自分と同じ者か、そう一瞬思ったが直ぐ様否定する)
(天使の存在は何より、少女からは自分みたいな物を背負っているようには見えなかった)
(ただそれだけで、何故か目の前の少女に対して、安堵の笑みを向けていた)
うーん…妖魔の退治屋、退魔士って所かな?
(少し言葉を選び、適当に答えてしまった)
(自分を助けてくれた相手に非礼に値すると思う。
だが、彼は教えるには、少々早すぎると思い答えた)
あ、あのさ…服、破けちゃったね。
(少女が腕で服を押さえているのを見ながら、すごすごと聞いてきた)
…よし
(責任を感じているかバツの悪そうな顔をし、その後何かを決心した表情に変わる)
(と、表情が変わった直後、彼はおもむろに上着を脱いだ。
上着を脱いだ彼が来ているのは、薄い下着だった)
これ、着なよ。
夜に帰るには、そのままの姿じゃ…な?
(血まみれのシャツを差し出し、フッと微笑みかけた)
【分かりました】
「あー、もういいですよ。結構間違えられるんで・・・。」
嘆息して首を振る。
「凄い力っちゃ、そーなんでしょうけど・・・。正直、あまり役に立たないですよ?」
彼の予想通り、背負う物も使命も何も無い。
ただ、『偶然』に、その力を有しているだけなのだから。
「やっぱり退治屋さんなんですね?あたしも高校行けなかったらなろうかな?なんてね。」
ペロッと舌を出して応える。
あたしの疑問に対する答えは、ほぼ思っていた通り。
そんな職業もあるんだねぇ?
「あー、服なら気にしないで下さい。たまーにある事ですから・・・。」
ん?どうやら『あの』シャツを貸してくれる気らしい。
色々な意味で遠慮すべき物だよね・・・。
「せ、折角ですけど・・・、遠慮します。背中の破れはなんとか説明するけど・・・。
血まみれの男物のシャツ着て帰ったら何言われるか分らないし。」
苦笑いで返答する。いやー、流石にあれはねぇ?やっぱりこの人天然??
「それじゃ、あたし帰りますね?」
自転車を確認、空桶も大丈夫みたい。結構高いから壊れたらやばい。
「そうだ、お兄さん名前は?」
自転車に跨ったまま聞いてみる。
【私は次で〆させていただきますね】
役に立たない、って言ってもさ、
俺を助けたように人の為の力となるさ。
(彼女には使命はなくとも、その力は人を助ける力だ。
自分がとても言える事ではない言葉は、きっと彼女に合っている筈だ)
いやぁ、退治屋って言っても、命賭ける割には採算が取れないぞ。
家業をついだ方がよっぽど儲け者だよ。
(自転車に備え付けてあった空桶を見て、判断した。
実際採算が取れないどころか、破壊された部位でマイナスになっていたりする)
あ…そ、そうですよね。
男物なのに血まみれなんて、理由の付けようがないし…
(少女と同じく苦笑する。
自分の浅ましさに軽く軽蔑した)
そうか、それじゃ、気を付けて。
(自転車に跨る少女に片手を上げ、別れを答える。
出前の途中か、厄介な事に巻き込ませたな、と思った)
え、俺の名前…?
(そして、少女は聞いてきた。
―――以前なら、こういう機会はなかった。
だけど、今はこうして、初対面の人と交す当然のものと知っている)
朝山、遠矢。
よろしくな、えーと…
(内心自分に苦笑する。
相手の名前も知らなかった)
【分かりました〜】
「んー・・・、まぁ、たまには役に立つけど・・・。
何かの才能あるなら表に出せるモンの方が良かったなぁ・・・。」
ホント、そう思う。だってこれじゃぁ・・・、ねぇ?
「へぇ、あんまり儲からないんですか?結構、儲かるのかと思いましたよ。」
危険手当とか、夜勤の手当てとか無いのかな?
「うん、悪いけど気持ちだけで・・・。んまぁ、お礼ならあれです。
お給料出たらウチの店に食べにくれればそれでいいですよー。
あ、もちろんサービスするんで彼女さんとでも来て下さいね?」
あたしは彼、朝山さんの近況も知らずに胸にグサリと刃を立ててしまった訳で・・・。
「あ、あたしは春木梨絵です。店は駅前商店街の『寿司春』です。
それじゃね、朝山さん。バイバーイ、おやすぅ〜♪」
自己紹介と営業を終えて自転車をこぎ始める。
さーて、帰り道すがら破けた服の理由考えないと・・・。あれ?何か忘れてる気が・・・。
「あー!神田さんち行ってないや〜〜!」
あたしは慌てて神田さんちに向かった・・・。
【深夜までお疲れ様でした〜】
【またよろしくお願いします!おやすみなさい。】
…そう、だよな。
(この力が悪い訳ではない。
だが、同時に思うのは“どうせなら”の一言だった)
まぁ、儲かるとかそれ以前にカタギがやる仕事じゃないな、多分。
それでも…しなくちゃいけないけどな。
(自分は、カタギ以前に人間ではなく、
付け加えた言葉はされている、と言うのが正しい)
(嘘ばかりで塗り固めた事を、
自分は何も知らない少女へ教えていた)
(…今はまだ、知らない方がいい。
俺が力を顕す前に、現実をつきつける前に)
か、彼女…ね。
うん……必ず食べにいくからな…必ず……。
(おあいこ、だな。
そう分かっていても、傷付くもんは傷付いた)
春木、絵梨さんですね。
じゃあいつか、寿司春に来ますからね。
(少女の名と店の名を反芻しながら、記憶を引っ張り出し、
そういえば、駅に行ったことのない店があったな、と思い出す)
それじゃ、春木さんも気を付けて〜。
(自転車に乗り、背の素肌を晒している少女に手を振った)
………ふぅ………
(一息をついた。
今日も色々と有りすぎた。
軽く目を瞑り、心を落ち着かせた。
―――穏やかに、疲労が一気に迫り、)
(その場に、倒れこんだ)
【こちらも締めますね】
【時間を延長させてしまい、申し訳ないですorz】
【それでは、また機会があったらよろしくです。ノシ】
【十時まで待機をする】
【知らない人が圧倒的に多いと思うけど、まとめサイトに載っているわ】
【まとめに見当たらないけど…】
>>657 【ああ、見るにはコツがいるんだった】
【『組織』の欄を選んで、『墓無』の紹介の一番下にあるから】
【それはそうと、貴方はお相手希望者?】
【うーん、見れた事は見れたけど】
【ちょっと情報量が少ないかも……】
【ところで、こちらは墓無に参加予定ですが無問題ですかー?】
【→南雲さんに質問した名無し】
【うむ、そう…もう少し情報公開をする必要があるわね…】
【特に構わないな、女郎クモだったっけ?】
【流石に名前だけじゃ難なので】
【あるかもしれませんね】
【>女郎クモ。そうです】
【えっと…このまま流れるのも勿体無いので】
【まだ設定が固まりきってないけどしてみますかー?】
【いやその…普通に名前欄をクリックすれば、私に関する情報を得られるわよ】
【良いわ、シチュは考えているか?。
特に無かったから、こちらに案があるけど】
【あっ…ほ、ほんとorz 】
【シチュは施設から出てきて、高校へ入学するところってのはどうでしょ?】
【こちらの簡単な設定は】
【紫ロングストレートの女子高生姿をとるクモ】
【性格は人間っぽさが無く妖魔としての血が濃くて、冷酷な感じで】
【分かった。しかし、高校が舞台なんて初めてね…】
【そちらの容姿、性格は把握した、どちらから始めようか?】
【入学→転校でした…】
【よろしくお願いします】
【では校門の前で待ち合わせということでどうでしょ?】
【ちなみに名前はまだ決まっていないということで番号名で】
【勝間さんクラスの方が名前で呼ぶなんて有り得なさそうですし】
【こちらこそ】
【校門前ね、学校名も教えてくれたら助かる】
【番号ね、一応聞くけど希望の番号は18番以外、何番がいいかしら】
【それもそうね。人前だったら名前で呼ばせて貰うけど、構わないな?】
【んー、では適当に高校は水ヶ瀬高校(仮)】
【番号は21…とかでお願いします】
【>人前なら。 構いませんよ】
【水ヶ瀬高校…あの高校ね】
【では、こちらから適当に始めよう。
よろしくな、捕獲体21番】
さて、あいつの転校…というわけだが、
まさか私が天日の元を歩く事になるとはな……
(男物のスーツを着こなす、ブロンドの髪を掻き上げた女は
顔を空へ見上げ、どこか億劫そうに溜め息をついた)
(本来、彼女は捕獲体18番の“監視者”であるが、
18番は昨夜から倒れ、墓無本部に運びこまれている)
(精神的な過労か、二三日中には目覚めるらしいが、
そんな中彼女は墓無の総務部から依頼を受けた)
しかし、本当にこういうのが必要か…?
半妖を日常生活の中に組み込むなどと。
(半妖を学校へ送り込む。
正しくは半妖を一般の日常生活に組み込み、
都市伝説などの情報収集の拡大を得ようという)
(だが、彼女は疑問に思っていた。
都市伝説などの妖しい噂は、こちらに住まう者達にはある種信憑性がある。
だが、戦う存在の半妖を、“普通”の中に入り込ませることが出来るのかと彼女は思っていた)
>>668 施設から外に出て最初に思ったことは
日中の太陽というものが思った以上に眩しいということ。
”普通”の人間なら毎日見るであろうが
生まれてから分厚い鉄の格子の施設暮らしの私には、初めて目に入ってくるもの。
目が慣れていない手前、手を翳しながら歩くのも仕方も無い。
施設から出るにあたって組織から支給されたのは
可愛げも何もない白のスニーカー、下着に学生服だけ。
歩くたび、履き慣れていないスカートの裾が一々揺れるのが気持ち悪い。
不快感に元々、怖い顔に眉間が寄って更に怖くなる。
「あら、こんばんわ……貴方が私の新しい監視員さん?」
そうこうしているうちに派遣先へと着く。
レンガ造りの校門に寄りかかっている勝美へと
早速、声を掛けた。ご機嫌如何だろう。
来たようね、21番。
(彼女の声が聞こえ、振り向いたら少女がいた。
思わず番号で呼んでしまったが、周りには人はいない。大丈夫だろう)
(確か、少女はクモの妖魔の血を分けた半妖だった。
この学校の制服姿が中々似合っていると感じたが、
日に晒され眩しいか顔に眉間が寄り、見る者に圧力を与えられるようだった)
とりあえず昼にこんばんは、なんて言わない。
昼はこんにちは、と言うの。
そんなのだったら変な目で見られるぞ。
(ふぅ、と鼻で息を吐き、男言葉と女言葉混じりの独特の話し方で21番に注意をする)
…それに、そんな顔じゃ周りに人間は取り付かないぞ。
お前の任務は情報収集だろう、眩しくても顔を繕わないでどうする。
(21番の顔は凛々しく、確実に美人の部類に入るが、元々にこやかとは言えない顔だった)
(眩しいのはこちらも同じだと思いながら、頭を抱える)
>>670 ようやく眩しさに目が慣れてくると翳していた手を下げ腰の辺りにつける。
視界を曇らせていた霧が晴れ、相手の容姿も鮮明に眼に映ってくると
――思わず「へぇ」と声を自然に漏れた。
漂わせる雰囲気は少々きついが
長い切れ目に、すらっとした鼻梁、くすんだ色の金髪
出ているところは出ている背の高い熟れた女の体。
つまるところ、かなりの美人であり
むさ苦しい男よりずっと目の保養になり助かる。
「フフ、そうね……。
また退屈な施設送りになるのは面白くないから、気をつけてみる」
作ったような笑顔を張り付かせて微笑んでみせる。
舐めるような視線で勝美を上から下まで送り堪能できたため
多少は自然な笑顔が出来たつもりだが。
「それで、どういう手筈になっているの?」
頭を抱えた勝美を見ながら問うた。
>>671 …何か?
(少女から嘆息が漏れたが、よく分からぬまま)
そうだ、気を付けた方がいい。
それと人前で妖魔の力を使ってはいけない。
面倒な後処理と、発端者には本部更迭でなにされるか分かったものではないからな。
(視線を感じた。コチラを値踏みするような目で見られたか、
少女に笑顔で変えさず、表情と声色を強めて釘を刺すように注意をした)
手筈は、お前は何も変哲のない只の転校生というものだ。
両親は仕事で海外にいっており、一人暮らしをしている事になっている。
学校側には私は両親の代理人、と言っている。
(ただ用件だけを述べる、簡潔で味気無い言葉で説明し続ける)
(他にも、転校生は大体の生徒が言い寄って来るから、
その時になるべく親睦して、情報ルートを確保しろとか、そんなのだった)
それと、一般の日常生活に入り込むわけだ。
名前が必要である。
今からお前の名前を教える、ちゃんと覚えるように。
捕獲体21番、お前の名前は―――
(名前の宣告。
自分の固有名詞は、墓無にとって適当に決められる、只の記号であった)
【名前、お願いします】
>>672 手際よく要点だけを伝えている勝美をじっと見つめていると
その濡れた唇を少し味わってもみたい衝動に駆られた。
が、ルールでは基本的に人間への危害が禁止事項。
「なるほど……それはそれは楽しそうね。
本部に感謝しなくはいけないわ」
無意識の内に伸ばしていた手を下げる。
再び、説明にそっと耳を澄ましすと強まった語気が鼓膜を震わせた。
しかし名前など必要なだろうか? と首をひねる。
これまで通り番号で済ませれば良いものを思いつつ。
「名前? 面倒ねぇ……。
そういえば貴方が私の親だとすると苗字は同じほうが
好都合になってくるのかしら?」
そうなると相手の名前も聞いておかないと話が合わなくなる。
自分達の脇を通り越して校門を潜っていく生徒達の姿を
ちらっと目で追って一応聞いてみた。
【苗字は合わせるんですかー?】
>>673 ええ、起こしたら絶対楽しいことね。
ただ、後でどうなるか私の知る所ではないけど。
(手を伸ばした少女に、冷ややかな笑顔を送る。
自分にどうするつもりだろうが、その時相手には覚悟してもらう。
底知れぬ不気味な、氷の笑みは余りに冷たすぎた)
そうだったら、それでも構わない。
けど私個人としては名字を使われたら、後で色々面倒な事になりそうね。
一応私は貴方の親の代理人、って事になっているから。
(最初に言った部分は、本音を混じり合わせた。
名字が同じだと、後から何かと足を引っ張りそうだと考えた)
(通りすぎる生徒を横目で見ながら、
周りに聞こえないよう耳元で囁く)
貴方が決めて。
自分の名前ぐらい。
(変な事を言うと、自分で思った。
自分の名前は親から貰ったもので、
親のない相手でもおかしいと思った)
(だが、今の自分にはそんな事に意を介せず、
まさに作業のように、率直に彼女へ聞いていた)
【そちらにお任せします。
そこまで強制は出来ませんよ】
>>674 冷ややかな笑みから随分と煙たがられているような気がする。
気のせいだと良いのだが。
流石にここで「はい、お別れ」と告げられたら悲しい。
「じゃあ、施設にいた子の名前……。
一色 小夜というのにする」
さっきの「楽しいこと」を起こしてしまったあの子は
もう出て来れないだろうし、私が使っても問題ないだろう。
擦れ違い様に肩を寄せて囁く勝間に返答した。
「ところで私には鞄が無いの?」
増えてきた生徒達の持っているものに気づいて、顔を上げる。
別に無くても困りはしないが……無いと寂しい。
一色…子夜……?
ああ、あの子ね。
聞いた話、相当のお気に入りだったらしいわね。
(その名前を聞き、21番が彼女に対して、
色んな意味で親しかったと思い出す)
(まるでからかうような、悪戯っぽい視線を彼女へ向ける)
鞄…?
そう言えばそうだったわね。
確かに無いと敬遠されそうだし。
(見上げた子夜の表情が、ひどく寂しそうだった。
何だかんだで女の子らしい顔に成れるんだなと思いつつ、持ってきた荷物をあさり、)
はい、鞄。
こんな事もあろうかと買っておいた。
中に教科書もある。
(あくまで、作業の様に子夜へ渡した。)
(どちらかと言うと、彼女みたいな女の子は割りと気に入っているかもしれない。
純粋にしても不純にしても、どちらに転ぼうが、それには変わらなかった)
(外に出るという子夜に初めての事は、彼女を可愛くさせていた)
(只、今は仕事という状況。
そっけないようにしている。)
>>676 「……?」
腕を組んで向けられる意味ありげな視線の
意図がとれずに首を傾げた。
何か可笑しいのだろうか? と感じたが
とりあえず手渡された鞄を見る。
革でいくつか仕切られた中に入っていたのは
分厚い本、細長い本、薄っぺらい本……
本ばかりでげんなりする。
が、まぁ多少の新鮮な気分にはしてくれるものだ。
大事にはしよう。
「――すぅ……」
鞄の口を閉めて肩に掛けると
遅ればせながら、外の空気を鼻から胸一杯に吸い込んだ。
施設で習ったが今は「初夏」という季節らしい。
鼻腔を擽る若葉の匂いが荒んだ私の心をも和ませる。
一頻り、それを楽しんでから勝美へと視線を戻し。
「それじゃあ、いきましょうか」
靴の踵で地面を軽く蹴って他の生徒と同じように校門へと向かう。
不思議と胸が高鳴ってきて足取りが軽く感じた。
あら、必要な物じゃなくて?。
(首を傾げた少女に、可愛げを感じて再び笑みを漏らした。
それは先程の冷たい笑みではなく、何も準備もなく出たもので)
ええ、行かないと間に合わないわよ。
それと貴方も情報収集の任務、忘れないように。
(夏の足音が梅雨の雨であるように、
水溜まりの轍を越えながら子夜と歩む)
(彼女みたいな半妖でも、日常に接することが出来るなら、
新たな可能性を見付けることになるから)
【締め、でしょうか?】
>>678 どうやらご機嫌麗しいようだ。
にこやかな笑みが覗けば、幾ら私が察しが悪くてもこれくらいは分かる。
目で軽く同意を見せてみる。
また愛想が悪いと怒られても敵わないから。
「分かってる。
狩りにばかり感けない様、善処してみるわ」
念押しに口を開いて応えると
ちょうど学校の予鈴……らしいものが耳に入ってきた。
いつのまにか歩みが小走りへと変わっていき
それで揺れるスカートが太腿に当たって死ぬほどに気持ち悪いが
……仕方が無い。
他の慌てる生徒に紛れて校舎の入り口に流れ込んでいった。
【締めですね】
【ありがとうございましたー】
【こちらはこれ以上蛇足っぽくなるので締めますね】
【こちらこそ、久々登場のキャラとのお付き合い、ありがとうございました】
【18番でも、勝間としたかったら言って下さいね。では…ノシ】
【こんばんは、1時間ほど待機してみます。どなたでもお声かけください】
【どうも、こんばんわ】
【お相手願えますか?】
【はい、今回はどんなロールにしましょう?】
【取り敢えずこちらの案と致しましては】
【1、互いの力を確認し合う為共闘orタイマン
2、登校途中の優希さんを発見、学校のサボりに付き合わせる、とかを考えてますが】
【それでは1で行きましょうか、共闘かタイマンかはお任せしますけど】
沈みかけの太陽が、校舎を赤く照らす。
紅に染まるそれに背を向けながら、愛用の自転車にまたがる。
携帯を取り出し、任務の内容を再度確認すると、目的地へ向けて自転車をこぎだした。
――――白清高校から西方約3km程に位置する森に、一匹の妖魔の反応を確認。
向こうはこちらの存在に気づいているようだが、逃げる気はないようだ。
余程己の腕に自信があるのか。それともこちらを誘っているのか。
斬鬼の誰かを連れだって行くべきだろうか?
そこで、ある少女の事を思い出した。
自らが手を組むと約束したあの子の事を。
自分は彼女が戦っている所を直接見た事はない。
腕を疑う訳でもないが、能力は死っておくに越した事はないだろう。
閉じた携帯を再び開き、彼女に向けて電話をかけた。
「――――優希ちゃん?時間ありゃ、少し頼みてー事があんだけど。
ちっと手伝って欲しいんだ」
【よろしくお願いします】
お気に入りの着メロが流れて、私はチャッと音を立てて携帯の画面を開く。
ディスプレイには「ナンパ男」の表示が。 ―――ああ、彼か。
重藤柚紀。そういえば以前、番号を交換したっけ。
デートのお誘いなら、このまま切ってもよかったのだが、
もし用事ならこのまま知らん振りすることもできない。
仕方がない、とひとつ溜息をつくとボタンを押し耳元に当てた。
「……貴方が頼みたいこと?
珍しいですね。まあ、私で手伝えることがありましたら」
彼には靜と引き合わせた借りがある。
その借りを返すには十分な頼みごとであればいいのだが。
――――相変わらず冷たいお言葉だこと。
普段ならここで下らない台詞の一つでも言う所だが、場合が場合だ。
些事に時を費やすのは愚の骨頂だろう。
「斬鬼の任務で、少し手のかかりそうな奴が居る。
話せそうな奴なら心配いらねーけど、もし戦になったら、少しキツそうだ。
んで、手伝って」
服の上からでも分かる投げナイフの感触を確かめながら、さらに歩む。
「俺はまだあんたの実力を知らねーから。
互いの力を知り合う意味でも、そう悪い話じゃねーだろ?
良ければ、今から三十分後、街外れの森で」
単純に述べる。もし断られたら、その時はその時だが。
「…貴方がそこまでいう相手なら仕方がありませんね。
微力ではありますが、助勢させていただきましょう」
街外れの森、か―――。
急げば余裕で三十分には間に合う。
しかし、それにしても最近力を試されることが多いような気がする。
御影、闇烏、そして、重藤。
もしかして、私の人生は試練だらけなのだろうか。
一瞬そんな考えも浮かんだが、馬鹿馬鹿しいと一笑にふして考えをかき消した。
「…まあ、いいでしょう。取り敢えずはその妖魔をどうにかするのが先決ですね。
ではまた三十分後に」
そう告げると私は一方的に電話を切り、すっと双眸を細め意識を集中させる。
そして、おいで、と我が半身を呼びだす―――。
「……また、面倒ごとにならなければいいんですけど」
軽く溜息をつくと私は目的地へと向かって駆け出した。
現れた彼女を横目に、サドルに腰掛けたままの状態で、軽く手を上げる。
徒歩だったとは。彼女と合流して、後ろに乗せた方が早かったか?
何にせよ、彼女が嫌がるだろうし関係ないか。
「――――よっす。」
無駄な言葉を省いた挨拶。既に己の精神は、張りつめた弦の様に鋭敏になっている。
今なら、正面の相手が銃を抜く前にその額を射抜けるだろう。
今回の妖魔、そんな武器を使ってくるとは思えないが。
「準備、出来てるみてーだな。んじゃ、行くか」
森の入り口から少し離れた場所に自転車を止めると、二対のナイフを取り出し先に向かう。
今正に夜になろうとしている木々の群れは、どこか暗く、不気味な顔を見せていた。
「それにしても珍しいですね。貴方が私の力を借りるなんて。
―――御影さんや他の斬鬼衆の力は借りないんですか?」
茂る草を踏み分け、奥に進みながらなんとはなくに訊ねてみた。
電話のとき、彼は私の力を知りたいと言った。
だが、相手の力量を計って「てこずる」と評価していたというのに、
力量も知らない私よりは勝手を知る同僚の方が確実に退けることができるのではないだろうか?
「………」
歩を進めるにつれ妖気の濃度がキツくなってくる。
確かにこれはなかなかにてこずりそうではある。
さて、相手はどう出てくるのか―――。
一歩足を踏み入れた瞬間に、無数の動物が動く気配がした。
けれど、『奴』だけは逃げる気配も見せず、こちらを待ち構えている。
――――むしろ、近づいて来ている?
「確かに義虎や、唯ちゃん含めた他の面子の方がやり易いかもな」
敵を探る思考と、彼女の質問に答える思考を同時に進行させながら、辺りを見回す。
他の生物は自分たちに恐れをなして逃げ出したのか、呼吸一つすら聞こえては来なかった。
いや、『奴』を恐れているのだろうか?
「けど、今あんたや靜さんと共に進んでる道が、一番俺には合ってる。
例え斬鬼と袂を分かつ事になっても、あんたらの考えが変わんねー限り、俺は此処にいるだろーな。
長い付き合いになるんだったら、この方が都合が良い。」
まぁ不本意だろうが、堪え忍んでくれ。と付け加える。
同時に、弾かれた様に右の方向に顔を向けた。
そして、轟音。根元を破壊された大木が、メキメキと音を立てながら、こちらに倒れ込む。
瞬時にバックステップ、それをかわした。
折れた大木の近くに佇んでいたのは、浅黒い肌を持つ黒髪の男。
やけに長い前髪が目元を隠し、表情までは分からなかった。
彼の返答に私は素直に頷いた。
「――――成程。
しかし、貴方の場合、私や静さんの考えのほかに目的があるみたいですが?」
……恐らくは彼も私たちを利用しているのだろう。彼のいう『狼』を探し出すために。
もちろん、それは彼の思惑の一部分であり、私たちの理想に同意してくれているのも確かである。
だから、そちらの方は彼の思うとおりにしてくれたらいいと思う。
どちらにしろ、彼がその『狼』を探し出すのは止めそうにもないだろうから。
「―――…っと!」
倒れこんでくる大木を最小限度の動きで避けようとするが―――失敗。
いや、避けるには避けたが、どうしても私の動きは雑になってしまう。
無駄が多い、と闇烏や御影は言ったがこの動きとて一朝一夕で身に付いたわけではない。
クセというものは本当に厄介でそれを修正しようと思っても、今のように失敗してしまう。
「さて、柚紀さん。 相手は説得に応じそうな雰囲気はしてませんけど?」
軽口を叩きながら身構える。
目の前に立つ男は確かに厄介だ。彼から放たれる殺気は刃のように鋭く肌身に突き立てられるようだった。
少しでも気を抜けば押しつぶされそうなそんな重圧。
それに耐えるためにも、男を見据えた。
けだるげにウェーブした髪が、なんとなく昔のグランジスタイルを連想させる。
それにしても、図体がデカい。2m半はあるのではないか。
「――――さーな。暫くは、そちらはお休みだ。
狼を狩ろうとして、獅子を引きずり起こす真似になりそうだ」
――――暫く、か。もしかしたら、永遠?
射手が死んでしまったなら、矢が獲物を貫く意味も無い。
それだけは避けたいが、彼女らを獅子の牙に喰らわせる訳にもいかない。
今は、鏃を磨いていよう。狼も獅子も纏めて貫けるような鏃を。
「――――どうしても!闘わなきゃ駄目なのかあんた!」
叫ぶ。が、相手は動きを止めない。黙って己が倒した大木を両手で抱え上げる。
――――嘘だろ?
電柱を二、三倍にも増したかのような太さを持つそれを、奴は難なく振り回した。
しゃがみ、ギリギリ紙一重でよける。
唯一の救いは、動作が緩慢な事か。
「――――やろう。躊躇は無しだ」
ギリッ、と歯を噛み締めながら、前方を睨みつける。
「こういうときに靜さんがいれば、仲裁してくださったんでしょうけれど…」
いや、そうとは限らないか。
もし、純粋な種族の妖魔ではなく、人間が生み出す妖魔≠フ方だとしたら。
説得も聞くはずがない。あれは人間の心の闇そのもの。
その闇が願う、殺戮という名の使命を果たすことが存在意義―――なのかもしれない。
彼が何者で、何が目的なのかは結局のところわからない。
ただ、どちらにしろ、手加減などしていたら殺されるのはこちらの方だ。
「ええ。私が引き付けておきます。貴方は援護しつつ、大きいのを一つかましてやってください」
これが妥当な役割分担と言ったところだろう。
それだけ言うと、地面を蹴り上げて男へと向けて飛翔する。
だが、―――ゴウ、という風が巻き起こりそうな音を鳴らしながら男は大木を棍棒のように振り回す。
しゃがみ、跳び、防ぎ―――と、なんとか攻撃を凌いでいるものの、なかなか懐に飛び込むことはできない。
一撃、一撃。
その巨躯から生み出される衝撃は鈍くも重く、まともに喰らえば吹き飛んでしまいそうだったが―――
「いまだッ!」
それでもなんとか、最小限の動きで避けながらも一瞬の隙を捉えて低めの体勢で懐へと疾走する。
―――走る。
次の攻撃が繰り出される前に剣を振りかぶりながら、一直線に突き進み刃を振い薙ぐ。
「せぇぇええいっ!」
「分かった。怪我しねーようにな」
そう言った彼女は、駆け出し大男の攻撃をかわしながら、懐に近づいていく。
――――我流か。にしては、軽く、速い。
多少動きが大ざっぱな物の、それを補う程の判断速度と身のこなしだ。
実戦は、何よりの訓練になると言う証拠だろうか。
「0゚-30゚『会』。Multi-Curve-Shot」
計四本のナイフを構え、精神を研ぎ澄ます。
「『離れ』」
腕の筋肉がしなり、ナイフに独特の軌道を与え、撃ちだした。
男の腕を射抜き、その棍棒を動かす手が僅かに鈍る。
その間にも彼女は寸前まで間合いを詰め、一刃の風が男の胸板を切り裂いた。
――――けれど、男は倒れない。
よろけかかった体を立て直した際に、前髪に隠れた目が露わになった。
奇妙だった。その目は布で覆い隠されていて、目としての機能を果たしていない。
ただ、そこに『emeth』とアルファベットで書かれていただけだった。
――――彼女はどうする?一旦距離を置くか?
届かない、か―――。
一度、大きく後方へ飛び退き、ざっと土埃を舞わせながら彼の近くへと戻る。
それにしても、あの布に書かれているアルファベット…一体何なのだろうか。
魔術の施しでもしているのだろうか。妙な胸騒ぎがして警戒を取らせたのだが―――。
「柚紀さん。どう思われます? アレ―――」
男はのっそりと大木を再び掴み取り、ゆっくりと此方に近づいてくる。
その動きに切れはないとはいえ、あんな暴風雨みたく強烈な打撃の雨を相手にしたくはない。
一気に詰め込んで、叩き潰す―――、というのも手なのかもしれないが、
あの布の意味が分かるまでは迂闊に手を出すことができない。
「…待ってくれ」
じっとあの文字を見つめながら、記憶を辿っていく
emeth。イメス。いや、エメト?
――――エメト。古代ヘブライ語で、真理を表すその言葉。
と、なればあの男は、無から作られた土人形なのか。
「神話だかなんだかで聞いたが、ゴーレムっつー土人形は、最後にあの文字を書き込むと動くらしい。
逆に、あの文字のeと、mの間を切り離せば、meth。即ち、死の意味になって崩れさるって話は聞いた事がある。」
この記憶が間違ってない事を祈りながら、懐から新たなナイフを取り出す。
最も、この場合は恐らく、あの紙さえ破ってしまえばどうにかなる筈だ。
「あの眼を吹き飛ばす。ただ、あの大木が邪魔だ。
…引き付けてくれるか?」
あまり強い口調ではない。
あの暴風雨のような攻撃の中に、再度飛び込めという事なのだから。
「ああ…、その話なら私も昔聞いたことがあります。
そのときは単なるおはなし、としてしか聞いていませんでしたが」
成程、弱点が分かれば突破口は開ける。
ただ、それをどうやって衝くかが問題だ。
あの男はそれを簡単にさせてはくれないだろうし、狙いをつけてあれを切り離す…というのも難しい。
いや、いるじゃないか…彼が。
必殺必中の狙撃手が―――。
「分かりました。その代わり、必ず射止めてくださいよっ!」
短く言葉を返し、再び男へと向かって走り出す。
思ったとおり男は無闇に大木を振り回すだけで連続的な攻撃は繰り出してこない。
それは速度が追いつかないのか、そこまでの知恵はないのか。
どちらにしろ、それが壁の脆いところでもあるのだろう。
私はその男の動きに集中して、大木を回避しつづけながら、魔力を剣へと注ぎこんでいく。
「いぃぃぃああっ!!」
ジャンプして大木を避けたと同時にキィンと剣は氷結し、薄い氷の刃と化した剣を大木に突き立てる。
大木はあっというまに氷付けとなり、更に深く剣を突き立てるとパァンと風船が割れるように、大木は粉々に砕け散ってしまう。
そして男から飛び退くと同時に、彼へと合図を送った。
「―――今ですっ!!」
「――――。」
思わず、声が出なくなった。疑念が渦巻く。
――――どうしてあんたは、二、三度会ったばかりの俺を信じられるんだ?
外せば、彼女の命が助かる可能性は果てしなく少ない。
あの鉄槌の様な一撃の前には、少女の軽い体など、紗と大差ないだろう。
けれど、同じく理解した。それがこの少女、佐々木優希なんだろうと。
あの靜と言う名の妖魔も、彼女のこんな所に惹かれたのだろうか。
「ああ、任せときな」
――――絶対、外さねぇ。
彼女が剣を突き立てる。大木が音を立て、弾け散った。
銃弾の様に降り注ぐ白刃の矢。男の脚を縫い止め、動きを止めた。
そして自分は左手を突き出し、『重籐弓』を作り出す。
「中・貫・久。射抜く」
生成した甲矢の筈を弦に当て、矢羽を歯でかじり取る。
ヒュンと言う風切りの音と共に飛来する矢――――が、瞬間男が首をひねった。
外れる矢。
「――――矢はまだ死なない。死んでたまるかよ」
己が言葉に応える様に、矢は宙で綺麗な弧を描き、木々の枝の隙間を抜け再度、土人形に向かう。
――――貫いた。男の頭蓋が爆ぜ、その体が急速に色を失った。
ぼろぼろと崩れさる男。森は静かに日常を取り戻しつつあった。
その後、自分達は別れを告げ、その森に背を向けた。
家まで送ろうか、とも言ったが彼女はいつも通りのあの笑顔でやんわりと拒否をした。
ならば自分も、彼女がしてくれたように、彼女を信頼しようと思った。
翌日の昼休み、ベランダから上半身を乗り出しあの森の方角に首を傾ける。
「いや、やっぱ信頼されてないのかしら?」
断り際の彼女の台詞を思い出しながら、一人悩む。
――――男としては信頼されずとも、仲間として信頼されてんなら、それでいーか。
ごろりと上半身を翻し、空に目を向けた。
靜を穏やかに見守る森に例えるなら、優希は雄大な空とでもしようか。
そんな考えに至った所で、くっくと笑いがこぼれてくる。
「…俺ってばポエマー?」
『妖精さんとお話中か?』
「あでっ」
突如現れたクラスメートが、丸めた教科書で後頭部をぶっ叩いた。
「なんでもないぜ〜?ただ、ちっと地球の事についてだな、俺なりの考えを…」
『おっ、明日は雨か。体育潰れてラッキー』
「うえーん」
こんな下らないやりとりが、後どの位続けられるだろうか。
いや、続けるのだ。護ろう、皆を。争いなど、撃ち貫け。
辛く、険しい茨の道。それでも、彼女達となら進める気がしていた。
【眠ってしまわれたのでしょうか?一応これで〆て置きますね】
【…と、言いますか眠らせてしまう程お付き合い頂いて申し訳ありませんorz】
【お疲れ様でした、ゆっくりとお休みなさいませノシ】
【ああ、もう、申し訳ありません…orz】
【さすがにもういませんよね……。】
【御二人ともお疲れさま】
【そんな日もあるにゃ。みゃんな、ファイト】
>>702 【居ますが、お気になさらず】
【なんとか纏まりましたし】
>>703 【そちらもお疲れ様です】
【それでは、失礼しますねノシ】
>>703-704 【うう、申し訳ございません……レスを待っていたらいつの間にか気が遠く…orz】
【これからは気をつけますです…、お疲れ様でしたノシ】
【名前】 一色 小夜
【正式名称】捕獲体21番
【年齢】 17歳
【性別】 女性
【サイド】退魔側
【組織】墓無 (水ヶ瀬高校)
【サイズ】 51kg B 82/W 57/H 83 164cm
【容姿】
青色のロングストレートにヘアバンド。赤眼。
平時は校服、よく学生鞄を提げている。
【得意】 供物。陵辱。狩り。
【能力】 毒。女郎蜘蛛化。
【武器】 蜘蛛糸(粘性のトラップ、鋭利な刃として機能)
【NG】 スカ。グロ。
【弱点】 炎・冷気。
【備考】女郎蜘蛛の半妖。
普段は学生として情報収集等にあたるが一皮剥けば
他の退魔士同様、妖魔狩りに従事し獲物を喰らう悪食な狩人。
狩りが不調な時は業と自分を襲わせ
強姦させた後に蜘蛛の本性を現し、喰らう。
色濃い妖魔の血のせいか人間的なモラルが多少欠如しており
基本的に冷酷且つクールな性格。
反面、言動が半妖独特にハイセンスで意外と感性は豊か。
僅かに引く人の優しい血が苦しむ他者へと足を向かわせる。
【こんばんにゃ】
【よろしくお願いしつつ、待機します】
【よろしければお相手願いますか?】
【シチュエーション等はお任せ致します。】
【かしこまりましにゃ】
【それはそうとテンプレが見つからにゃいのですが…】
【プロフスレの58ですにゃ】
【確認したにゃ(苦笑)】
【う〜ん、シチュは多分戦闘かにゃ?】
【エロが混じれると嬉しいのにゃが、何かそちらに妙案ありかにゃ?】
【まずは遭遇→戦闘ですにゃぁ。】
【その後流れでエチィ事しますにゃ?】
【時間が1時位までなので、エチィ前に凍結の可能性もありますけどにゃ。】
【そんな感じでどうですにゃ?】
【ん〜、そうにゃると時間かかるから遭遇省いて戦闘中から始めにゃい?】
【リョウカイ。どちらから始めにゃ?】
【分ったにゃ。】
【それならテキトーに暴れているので、テキトーに絡んで欲しいのにゃ!】
【それでは書きますので少々まってにゃん。】
【追伸:どうして俺達猫なのにゃ?w】
【ん、待つにゃん】
【追伸:気のせいにゃw】
―――深夜、誰もが眠りに付く頃、待ち外れでは凄惨な光景が広がっていた。
血に塗れ蠢く人間、半妖。いずれも『退魔士』と呼ばれる者達だ。
「・・・・・・。もう、終わりか。」
屈強な体型、そして頭部から伸びる2本の角、血に汚れた体、拳。
月夜に映し出されるその姿は、まさに『鬼』であった。
「わざわざ俺を呼び寄せたと言うのに、この町にも大した奴はいないな・・・。」
苦しみもがく退魔士を踏みつけて止めを刺すと、気だるい表情で月を眺めた。
【お待たせしました。よろしくお願いしますにゃ。】
>>716 木々の間から様子を伺うと一つ息を吐いて、そっと鞄を横に置く。
次に赤い瞳を絞り目標との距離を正確に把握。
……まだスカートが気になるが、今は四の五のと言っていられない。
最後に屈めていた身体のばねを存分に使い、潜めていた草むらから跳躍。
血のように赤い月を背に飛び出した。
「――それはどうかしらね、妖魔さん」
右手に蜘蛛糸を絡ませながら軽口を叩くと
月を眺めているその異形の顔へと振り下ろす。
予告してからの攻撃・・・、明るく映し出される角度からの攻撃・・・。
―――俺も舐められたモノだな。
月夜に舞う彼女の攻撃を首を少しずらして額で受ける。
下手に腕でよけるよりもそこが固いからだ。
勿論、それだけの理由ではないが。
額が割れ、血が滴り落ちるが気にする必要も無い。
「舐めるな・・・。」
刹那、神速の豪腕が唸る。
彼女の腹部にそれが達する瞬間に鋭い爪が伸びる。
横たわる大勢の退魔士の血を啜った鉤爪が。
>>718 ――外したか。
寸前で回避する相手に小さく舌打ちした。
幾ら何でも迂闊だったかという思いが一瞬よぎるが
後悔をしている暇は無い。
更に赤い瞳を細めて、即座に繰り出された腹部への一撃を
空中で強引に身を捩せて凌ぐと肩から地面へ身体を転がせた。
「……っぅ!」
何とか致命傷は避けたが腹部を皮一枚斬られた。
当然、着ている白のブラウスのその部分がはらりと横に切れる。
「随分と…大きなものね」
腹部に手を当て、ゆっくりと立ち上がると思わず呟く。
こちらとの体格差は2倍以上といったところか。
まともに闘うと潰されかねない…大振りの後にできる隙を狙うしかない。
腰を落として集中し直し次の一撃を警戒する。
並の退魔士であれば充分に引き裂いた一撃を寸前で回避する。
身のこなし、度胸、なかなかの物だ。
――楽しめそうだ。
純粋に思う、戦士としての心が歓喜に震える。
「フンッ、俺の名はクリオ、七妖会の火妖だ。」
七妖会、悪名高い妖魔集団。
その中でも火妖と言えば戦闘能力に長けたエリート中のエリート。
並の退魔士であれば束になっても敵う相手ではない。
いや、並でなくとも運命はそう変わらない場合が多いが――。
「お前の人生最後のダンスパートナーだ。良く覚えておくんだな・・・。」
言うと軽快なステップで間合いを詰める。
その体格からは想像出来ないスピードで攻撃を繰り出す。
「容赦はしない、それが俺のお前に対する礼儀だ。」
顔面を狙う左ジャブ、防御、回避しても右ストレートが追撃をかける様に顔面を襲う。
避ければ右のローキックが左の脇腹を狙い、ガードすれば左フックが右の脇腹を狙う。
どちらにしても鍛える事の出来ない一点を狙い定めた攻撃。
>>720 「墓無……一色 小夜…」
名乗る言葉に釣られて、自然と唇が動いた。
未だ名前というものには愛着が湧かないが
――これから命を賭けるもの同士、最低限の礼儀というものだ。
集中力を更に高めていき
一気に間合いを詰めてくる相手を向かい入れる。
「ちぃ……」
既に見切れる範囲では無かった。
顔を狙ってくる打撃は避けざるを得ない。
直撃などすれば、それこそ終わりだ。
首を捻って鉤爪をやり過ごす…が、しかしそうなると今度は腹部が危うい。
咄嗟に両手で庇うと、木の葉のように肢体を大きく吹き飛ばされる。
「今度は…此方の番よ!!」
爪を地面に立て踏ん張ると、逆にその反動を利用して跳ぶ。
この体格差では狙うは目しかない。
頭部に狙いを絞って拳を振りかぶる。
今まで数多くの退魔士を屠ってきた攻撃を防がれる。
この攻撃を防ぐとなると斬鬼衆の支部長や墓無でもトップクラスの猛者である。
「ほぅ、少しは出来るようだな・・・。そして俺の番か、面白い。」
不適に微笑むと頭部への攻撃を避けようともせずに受ける。
彼女の拳が顔面を捕らえ、刃の様な糸が目に刺さる。
噴出す血が彼女の美しい顔を汚す。
通常であれば彼女の勝利であろう。
―――だが。
「甘い。」
囁くと大きな掌が彼女の首を締め付けていた。
目に刺さった糸を引き抜くと、血は止まり少しづつ眼球等が再生されて行く。
「他の退魔士なら早く楽にしてやったのだがな・・・、墓無と聞けばそうも行かないぞ・・・。」
再生途中の瞳で彼女を睨むと口元が釣りあがる。
「少し、先輩への礼儀がなっていない様だな。色々教えてやる・・・。」
首を締め付ける手に力が篭った。
【このまま妖魔側に誘いつつエチーの展開にしようかと思いますにゃ】
【問題あればどちらかが負ける形にするにゃ?】
>>722 まさか避けずに直撃を受けるのに驚愕する。
適当にあしらわれた所を粘着性の糸で腕を絡めとり
勝敗を決しようと算段を練っていたため、一瞬の躊躇が生まれた。
噴出す血が顔のかかり、止む終えず瞼を閉じると視界が奪われて――。
「ぐっ、ぅ……!」
次の瞬間には首に猛烈な圧迫感が走る。
急速に意識が遠のいくのに抗う様に
ばたばたと手足を空中で暴れさせるが無駄でしかなかった。
青い髪だけが夜の闇に虚しく揺れる。
「礼儀が悪いのは…生まれつき。…お断……りよ」
首への圧迫が強まり、徐々に顔が熟れたトマトのように
赤くなっていくが子供っぽく舌を突き出して申し出を断る。
【ではエチーにゃー、お願いします】
「行儀の悪い子だ。しかし・・・。」
顔を近づけると口元が緩む。
「墓無の犬にしては飼い慣らされていないな。将来有望だ。」
己の血で汚れた彼女の顔を空いた手で拭い、改めて顔を見る。
自分にも似た様な頃があったと思い出す。
そして彼女の中に見えた戦士、いや、戦いを糧とし、快楽をする者の素質。
「このまま首をへし折るには惜しい娘だ・・・。俺をその体に刻み、再び探しに来い。」
一気にブラウスを引き裂き、下着を露わにすると窒息寸前の彼女を地面に叩きつける。
間をあけずに上に圧し掛かると片手で両の手首を掴み吊るし挙げる様に押さえつけた。
「どうだ?これから妖魔に犯される心境は?だがお前も・・・。」
クスリと笑うと酸素をようやく取る事が出来、息の荒い彼女を見据えた。
>>724 「――っ!」
晒された半裸に夜風が当たり、肌寒さに肩が震えた。
嘲笑する妖魔に奥歯をきつく噛み締め
憎まれ口の一つでも叩こうかと唇を動かしたが
刹那、地面へと叩き落され声にならない悲鳴が喉を通っていった。
「ぐぅ……はっ、どういう気分って聞かれたって…。
墓無の私がこの歳まで……清楚なお嬢様なわけないでしょうが」
両の手を頭の上で拘束されると、背が反って波打ち
下着越しの乳房が前へ前へと強調されるような形になる。
「お前も……何よ?」
こうなるともう手の打ち様が無い。
まさに、まな板の鯛だがなおも赤い瞳をぎらつかせて相手を睨む。
こんなことで一々、諦めてはいられない。
「成る程な、確かに放っておく訳が無い・・・、良い体だ、そしてその瞳。
その相手を突き刺すような瞳が・・・、魅力的だ。」
言うと彼女の視線を無視して唇を重ねる。
無理やり口をこじ開けると舌を進入させ、
噛み締める歯をなぞるように舌を滑らせた。
「そしてお前も・・・、己の自我が強すぎる。いずれ墓無と言う鎖を引きちぎる程にな。」
彼女の質問に答えながら下着を剥ぎ取り、未だ未熟な膨らみを露出させる。
拘束から開放された膨らみは、仰け反らされている事も手伝って
その尖端が淫靡に自己主張していた。
「自分の全てを開放して曝け出してしまえば良いのさ。
お前に命令出来るのは監視者か?違う・・・、お前だけだ。」
尖端に口付けし、しばらく舌で乳輪をなぞり固くする。
舌先でチロチロと卑猥に舐めながら彼女の瞳――その魅力的な瞳を覗いた。
>>726 「んっ…んんっ……!」
無遠慮に分け入ってきた舌を押し戻すように
歯を噛むが、すぐに解かれて口内へと侵入してくる。
せめてもの抵抗で舌の腹を押し当て返そうとするが
かえって舌同士が絡み合い、性的な興奮を呼び覚まさせられる。
「煩いわ…よ……。
確かに私は私の意志で動くけど……はぁ…ぅ…」
荒々しいキスが終わると離れていく妖魔の唇から
唾液が薄く伸びるのが見えた。
それが切れたかと思うと胸の頂への愛撫が
また舌で行われ、そのざらついた感触と冷たい夜の空気で
すぐに痛いくらいに尖りを見せてしまう。
「今の今まで、只で餌をもらってて…はい、裏切りますって…。
あぁ…っ……フフ…そういう訳にもいかないでしょうよ」
尖りになぞる舌先にびくっと背筋が仰け反りそうになる。
必死に堪えて虚勢を張り、苦笑する。
「ほう、思ったより義理固いんだな・・・。」
言いつつも硬くなる尖端への愛撫を続ける。
時には甘噛みし、時には吸い上げ、時には包むように舐める。
「だが、あいつらはお前を利用しているだけだ。お前もそうなのだろうが・・・。」
握っていた手を離すと、そのまま腕を滑り頭を撫でる。
その指は首筋を通り、脇腹をくすぐり、下腹部へと伸びて行った。
「そんな関係いつまでも続くわけが無い。もっと己の欲望のままに生きれば良い。
好きな時に好きなだけ、好きな事を・・・な。」
口付けを交わす。吐息の漏れる彼女の口は先程の様に閉ざされず、
舌を進入させ、唾液を吸い上げる。そして己の唾液を送り込む。
いやらしい音を立てて唾液の交換が行われる。
「そういう訳で俺も好きな事をしている。目障りな退魔士を殺し、極上の女を抱く・・・。」
大きな手が胸を持ち上げ、捏ねるように胸を愛撫する。
ギュッと掴むを尖端を吸い上げ、舌先で転がす。
もう一方の手は既に秘所に伸び、下着の上から敏感な部分を探し当てる為に人差し指が
割れ目をなぞる様に上下に動いていた。
>>728 「んぅ……っ……」
二度目の口付けは、先程よりもずっと情熱的で
唾液が音を立てるたびに耳には蠢惑な調べが囁くように入ってくる。
何度も性的な経験を重ねた私にとっては普通の愛撫よりも
こうした音を聞かされるほうが、ずっと気が昂ってくる。
それで腰が思わず動いてスカート地が地面と擦りあった。
「はぁ!…あ、あぁ……ん…煩い…」
胸を執拗に弄る舌にも辛いのに
既に濡れきっている割れ目を上下に指がなぞっていき
赤い瞳の力が無くなっていくのが分かる。
強姦される事よりも、こうしてゆっくりと焦らされていくのは……精神的に耐え難い。
「私に一々…構わない…で…っ…黙ってしたら?」
いつもは怖いとよく言われる表情の一因である
釣り上がった目尻がだらりと下がってしまう。
男根が欲しさに…女の熱いところを貫いて欲しさに…太腿が擦りあって仕方ない。
上気した顔を俯かせて小さく呟いた。「…欲しい」と。
「そうだ、監視者も秩序も関係無い。お前の欲望だけが世界を満たす・・・。」
こう言う気の強い女が欲情する姿は興奮する。
雄と言う生き物は人間、妖魔問わず制服欲があるものだ。
両の尖端をグリグリと潰すように弄り、
軽い口付けをすると、それが開始の合図の如く下着に手を掛ける。
スルスルと脱がせると下着は既に湿り気を帯びており、秘所と下着を細い糸が繋いだ。
「戦うお前も、妖艶なお前も魅力的だ。」
頬を撫でながら呟くとスッと顔を秘所に潜りこませ、
硬く、大きくなったクリトリスを舐め上げる。
自身の服も取り去ると、体の大きさに比例した大きくそそり立つ分身が彼女の視線に入る。
「墓無ではお前の食欲位しか満たす事は出来ない・・・、俺は全てを満たしてやる・・・。」
膝裏を掴みグッと持ち上げると、秘所に巨大な分身を宛がう。
引き裂いてしまうかと思われるソレは、充分に湿り気を帯びた彼女の秘所に少しずつ飲み込まれて行った。
「フフッ、素晴らしいぞ・・・。このまま最奥まで突き上げてやる・・・。」
彼女の肉壁を押しのけながら、分身は子宮の入り口まで到達した。
激しい出し入れをする事なく、その奥にグリグリと押し当ててその感触と彼女の表情を楽しむ。
「さぁ?どうする?気が狂うまで突き上げてやろうか?」
体を密着させ、自身の体で彼女の尖端を楽しみつつ、耳元や耳たぶに卑猥な音を立てながらキスを浴びせる。
【すみません、そろそろ時間がorz】
【お疲れです。凍結しますか?】
【もしご負担なら私の方で強引に〆ておきましょうか?】
【折角ですから凍結でよろしいですか?】
【時間は伝言スレの方に書いておいてくださればお返事しますにゃ】
【申し訳ありませんが、本日は落ちさせていただきます】
【どうもありがとうございました〜。おやすみにゃさいノシ】
【>凍結、>伝言】
【わかりましたよ】
【こちらこそ、ありがとうごいます。それではお休みにゃノシ】
【
>>626の続きより。】
人、妖魔問わず、自分から自分以外の存在を招く、という事をしたのは初めてだった。
誰か昔、人間の使っていた、廃屋と化していた平屋だが、
植物の力を補強し、内部を清めて、今は使っている。
そのお陰でか、人が住むには充分過ぎる程の佇まいなのだが、
私自身が持つ人払いの力もあって、退魔士のような能力者でもない限り
ここを興味本位で訪れる事もない。
人の真似をし、人のように過ごす時、新たなそういう事をする時、何かと私の胸は高鳴る。
自分は偽りの真似事であっても、こうして人間と同じような事が出来るのだと。
その感覚が嬉しいのだ。
ただの、樹木だった頃の私と比べれば。
夜月の見える和室に南雲様を通すと、竹筒を持って戻ってくる。
夜風が涼しく、気持ちがよい。
「…水しか出せなくて申し訳ないのですが。」
湯呑みに清水を注いで、彼の手前に差し出す。
自らも、注いだ水で唇を濡らすと、小さく息をついて口火を切る。
「…話しておきたい事というのは、退魔士の事です。
私は七妖に属する身ではありますが、先日、二人の退魔士と
ある契約を交わしました。」
ゆっくりと、言葉を選びながら、話を切り出していく。
【南雲さん待ちです。】
簡素な平屋ではあったが、その内部は手入れが行き届いていた。
―――まあ、当然だろうな。
何の違和感も抱かない。あの児玉 靜という女ならば当然、とそう思える。
何事もそつなくこなすという印象があるからだろうか。
和室に通され、夜空を見上げつつ、そのようなことを思う。
微かな足音がこちらに向かって来るのに合わせ、そちらへ目を遣る。
「いや、何かしら出してもらえるだけでありがたい」
戻ってくると、水を注いだ湯呑みをこちらへ差し出してきたのでありがたく受け取った。
拒否する理由もなく、のどを潤せるのは自分としても望むことだ。
一口。冷たい水が喉を滑り落ちていく感覚が心地良い。
視線で続きを促した。
口を挟んで、万が一にも話の腰を折ってしまってはどうにもなるまい。
【それでは、宜しくお願いします】
電気の通っていない部屋のため、室内は星の明りと、遠くの街の灯が照らすのみ。
だが、私にしろ南雲様にしろ、それだけの灯りで問題ない。
私は視力に頼らないし、妖魔である南雲様にも不便な程ではないはずだ。
「佐々木優希様、それと重藤柚紀様。
いずれも、まだ高校生くらいの少女と少年です。」
言いながら、彼らの特徴を南雲様に話す。
今日の様な事があっては、また色々と面倒だから、
真実念入りに、彼らの特徴を南雲様の頭に叩き込ませる。
「彼ら二人共、退魔士ではありますが、
目指している先が、普通の退魔士とは異なっていたのです。」
少し、言葉を区切り、南雲様の反応を見る。
何と取っているか分からないような細めた目の向こうには感情の揺れは見えない。
少し考え、要点を切り出した。
「…彼らとの契約の内容は、人と妖魔の共存を目指すこと、です。」
自分だろうか、それとも南雲様のだろうか。
静かな灯火の照らすほの明るい室内で、小さく、唾を嚥下する音が聞こえた。
【こちらこそ、宜しくお願いします。】
先程の事を根に持っているのか、否、根に持たぬ方がおかしいが…
しつこい位に、その特徴を重ねて言ってくる。
短い髪の、大剣を擁する少女。
そして、女性の様な顔立ちの、少年。
簡単に言うとこの程度だろうか。
しかし、普通の退魔士と異なるものを目指していると聞いた時点で、
そうではないかと思っていた。
だがしかし、実際に耳に入るとまた違う。
「……それはまた、途方もない理想を抱いたな」
嘲るでもなく、肯定するでもなく、少しの沈黙の後に淡々と言葉を紡ぐ。
つまり、人間と手を結んだと言うことを言いたかった訳か。
目を閉じる。
成る程、確かに組織に聞かせられる話ではない。
それも、妖魔の理想郷を作ろうという七妖には。
「…かもしれません。
南雲様に覚えておいて戴きたいのは、彼らと相対した時、
彼らとは戦わないで欲しいのです。」
無理を承知でそう頼んだ。
彼らもそうだが、南雲様にも間違って討たれて欲しくはなかったから。
実力的には、二人のそれぞれと南雲様ならば、伯仲するかもしれない。
けれども、そういう事になる前に、それを抑えたかった。
必要であれば、自分の名前を出しても構わないと付け加える。
いずれにしても、二人にも、南雲様の事を伝えておくつもりだったから。
「…それと、今の話は普段は心の中に留め置いて下さい。
七妖に知られると、私も色々と不都合がありますから…」
それ以上は言葉を続けない。
必要以上には、自由を満喫するこの蜘蛛の妖魔を、
自分のエゴの中に縛りこみたくはなかった。
―― 少しだけ、間の悪い沈黙が、場を包んだ。
「元よりそのつもりだが……追い詰められれば、どうなることかはわからんな」
元より、退魔士と出会った際には逃げることを優先とする。
命のやり取りになることはまずないだろう。あるとしても万に一つ程度のものだ。
しかし万に一つとはいえ、可能性は否定できない。
その一が、最初に出るかもしれないのだから。
「言われずとも。七妖は妖魔の理想郷を作り出す事が目的。それを私に教えたのはお前だ。
知られればただでは済まない事は、容易に想像できる」
沈黙を破り、そこまで言って目を開けた。
そして、突き刺すような視線を瞑目したその顔に向ける。
下手な事を考えぬように、だ。
「……一つ言っておく。私の事をその二人に話すな」
場合によっては、面倒な事に成り得る。
私にとってではなく、児玉にとって。
「知っての通り、私は人を食らう。それをお前と契約した者に目撃され、
その時に私がお前の名を出せばどうなると思う?」
裏切りと見なされるのが当然の流れだろう。
刃を向けられるのは自分だけではない。目の前の女もだ。
「……当然、お前の名は出さん」
これ以上、借りを増やすのは面白くない、と付け加える。
世話になった者の道を、完全に打ち砕くのは本意ではない。
「良いな?」
確認の形を取ってはいるが、その声音は有無を言わせぬ命令に近い。
「…わ、分かりました…」
強い口調でそう言われ、悄然としてしまう。
だけれども、南雲様の指摘は尤もな事だと言えた。
南雲様なりに、状況を鑑みて言っている事なのだろう。
それは、無碍にすべきではない。
…さし当たって、彼らについて話す必要のあった事は話し終える。
他にないか、と思う内、一つ、思いついた事があった。
「あの、お帰りになる前に一つ、失礼を承知で頼んでも良いでしょうか」
それは、確かに必要な検証ではあるのだが……
どうにも、少し言葉に躊躇する。
どう言えばいいのだろう?
下手な言い方をすれば、欲望過多なおかしな女と思われるような…
先程の貸しを返してもらう形として?
それも、何だかおかしな気がする…
とりあえず。
「あの、南雲様、現状空腹状態でいらっしゃるので御座いますよね?」
焦りと混乱のためか、口調がおかしなものになった。
色々な意味で、頬がかっと熱くなる。
「ああ。まだ耐えられる程度だが、空腹には違いないな。それがどうかしたか?」
しどろもどろになっている様子を訝しげに見つめる。
この様にうろたえさせるような事を、何か言っただろうかと思い返しながら。
空腹、という所から思い付くのは……
手料理?
―――有り得ん。
浮かんだ単語を一刀の元に切り捨てる。
大体、自分は人間とは根本的に味覚が違う。
調理されてしまった物など食えたものではない。
もしそうだとしても、遠慮するだろう。
「言いたいことがあればハッキリ言ったらどうだ。
先の事もある、滅多なことで無ければ断らんぞ」
そこで自分のしでかした事を思い返し、一度溜め息をついた。
「あ、ええとですね。
その、先程道中でも言った事なのですが…魔力補充で、
ある程度、その空腹を還元出来ないか試せないか、と。」
分かっている。
南雲様は、魔力補充の方法を知らないから、こうして平然としているのだと。
だが、それでも自分の今の有様と南雲様の平然とした様子のギャップに、
今しも縮こまりたい想いだった。
「そ、その…七妖における魔力充填というのは…」
まともに顔を向けられず、下に俯く。
「男女の、営みで成されるものなのです…けれども…」
最後の方は、はっきりと言えず、呟くような声になってしまった。
―― ああ、恥ずかしい。
先程とは違った、気まずい沈黙が、部屋を満たした。
ああ、成る程。
先程から挙動不審だったのは、その魔力補充についてか。
先程の家路を往く前の事も、納得がいった。
その方法を聞けば、恥じらうのも無理はないと頷ける。
―――しかし、それでいいのか。
「つまりは……自分を抱く事でそれをためせ、と?」
沈黙を割って、言葉が吐き出される。
意識して淡々とした調子で返したが、少し揺らいでしまっていないだろうか。
いや、自分の気のせいだろう。自分の声なのだ。
「私は構わないが……お前はそれでいいのか?」
少し表情も強張っているかもしれない。
寝耳に水だったのだから、仕方がないだろうが。
だが、願わくば変わらぬ表情であって欲しい。
「他に方法は―――」
無いのだろう、恐らくは。
そうでなければ、こんな事を言い出す女ではないだろう。
「そ、その……お嫌でしたら、無理にとは言いません。
ただ、その、それで人を捕食する妖魔をある程度抑止出来ればなぁ…
…とかそのように思ってみたりするわけであったり等するわけでして…」
沈黙を紛らすように、言葉を無理矢理に紡ぐ。
お前は、それでいいのか、と南雲様は問う。
その言葉が、急速に頭を冷やしていった。
「…。…私は、南雲様ならば構いません。」
そう言って、まだ少し上気した顔を、南雲様の方へ向けた。
好きだとか、そういう感情では、まだない。
だが、この方ならば、そういう己を見せても問題ない。
「…私は、七妖でそのようにして数多の妖魔に抱かれてきた身です。
私の事は気になさらないで下さいませ。」
そう。
愛情など、そういったものはなく、ただ魔力の充填のためだけに、
貪欲に肢体を求められてきた我が身。
今更、何を恥じる事があるというのか。
むしろ、そのような穢れた身を、彼がどう思うのか。
それが僅かな恐れを伴った。
思わず、微かな苦笑が口の端に浮かんだ。
無理に言葉を紡いでいるのが手に取るように分かる。
普段の様子、といってもこれで二度だが、兎に角、普段からは想像も付かない台詞。
文法が支離滅裂だ。一度、微かに嘆息する。
「……嫌、という訳ではない。私も魔力を補充した際にどうなるかという興味はあるからな」
それで食欲が収まるとは考え難いが、この身体に魔力が注がれた時、
どの様な感覚を覚えるのか。充足感を覚えるのだろうか。
恐らくは務めとして、何度となく繰り返してきたのだろう。
魔力補充と言う目的での交わりを。数え切れない程に。
少し哀れに思った……のだろうか。自分でも良くは分からない。
「分かった、抱かせてもらおう。だが、これは七妖の務めの枠外だ」
立ち上がり、歩を進め、児玉の目の前で膝を付く。
ゆっくりと、長く艶やかな髪に触れた。
「……実験や務めとしてではなく、楽しめ。それを条件としたい」
とりあえずはただの気紛れ、ということにしておけばいい。
「あ……」
髪に触れられ、少しだけ身を竦める。
嫌ではなかった。触れた手に己の手を重ねる。
「楽しむ……ですか?
…分かりませんが、努力してみます。」
畳の上では、何かと身体に負担がかかる気がしたので、
部屋の端に置いていた、布団を広げる。
少し、気恥ずかしい感覚を覚えながら、着衣の帯に手をかけ、解く。
鶯色の和服を、肌の上を流すように落すと、夜気が肌を撫でた。
「…宜しくお願い致します。」
布団の端に膝を突くと、南雲様に向かって、そう言った。
「やれやれ……努力して出来ることではないだろうに」
重ねられた手は暖かく、柔らかだった。
それも直ぐに離れ、触れていた髪も掌をすり抜けていく。
―――後悔させねばいいが。
最後に女を抱いたのは何時以来だっただろう。
まあ、いい。身体の方は抱き方を覚えているだろうから。
月に目を遣りながらそんなことを思った。
衣擦れの音が、耳に入り込んできた。
何時しかそれも止み、声が聞こえると振り返る。
忽ち一糸纏わぬ姿の女が目に入った。
部屋に入り込む月光が、その白い肌を尚白く染めている。
素直に、美しいと思った。
「そう畏まらずとも良いだろう」
微かな、目で見ても分かるか分からないか程度の笑みを浮かべて、そっと頬に触れた。
幾度か頬を撫でると、指先だけで触れ、肌をなぞりながら首筋に下ろしていく。
「ん……は、はい……。」
頬に触れた手の温もりに、ほぅ、と溜息をつく。
営みを楽しむ。
それはどういう事だろうか。
私とて、営みを快楽と感じる身体は持っている。
それを感じる事に集中しろ、という事なのだろうか。
考えると余計に駄目な気がして、意識を肌に触れる全てに集中してみる事にした。
目で見る事を己で禁じているため、彼の動きは捉えられない。
それが、予測を越え、身体を跳ねさせる。
「ん…」
細い筋を辿るような指先の動き。
それを感じながら、私も腕を伸ばす。
彼の引き締まった胸板に掌を当て、擦るように動かした。
つつ、と線を作り出すように指を這わせる。
それだけのことで身体を跳ねさせる様子が―――
「いや、存外に可愛らしいな、お前は」
ポツリと、それでも聞こえるように言葉を紡いだ。
そう言っている間も指の動きは止まらない。
頬から、顎の裏へ。そこを何度か往復し、鎖骨へと。
浮き上がっている箇所を一度。その後に胸元へと線を描く。
柔らかなふくらみの麓で、線でなぞる動きを面―――即ち、掌で覆い、撫でる動きに。
そのまま、乳房の周囲に円を描いていく。
自分の胸に当てられた手が、何度か上下に動いているのを感じる。
それが、不思議に心地良い。
その感触を堪能しながら、もう一方の手を細い腰へと伸ばし、脇を何度か撫で上げていく。
「可愛らしい…?お、上手ですね…んっ」
そう答えながらも、頬が染まるのを抑える事は出来ない。
胸への愛撫に、微かな喘ぎすら漏らしてしまう。
「ぁ…う…ん、ふぅ……」
胸板を擦っていた手を止め、きゅ、とその片手を噛んで、喘ぎを堪える。
腰へ。脇へ。
段々と、下に下りていく手の動きに翻弄されるように、身体が熱を帯びていく。
何故だろう。
常々、妖魔に抱かれる時と違う、熱をもった感覚が内から響くような気がした。
「な、ぐも…さまっ……」
喘ぎと共に、胸板に当てていた手を頬へと上げ、その顔に顔を寄せる。
何の考えもなく、その頬に唇をあて、キスを繰り返した。
「本音だ、世辞は好きではない」
短く、そう返す。頬を染める様子もまた、可愛らしい。
恐らく、普段では見ることの出来ない姿だからだろう。
胸で円を描かせていた手の回転半径を狭め、先端へとじりじりと寄せていく。
並行して、腰を刷り上げていた手の触れ始める点を下へ、腿の方へとずらしていく。
愛撫を繰り返す度に、僅かにそれを受ける箇所が変わっていく。
そうしている内に、常は静かな森の様に清楚な雰囲気を持っている目の前の女を、
自身が昴らせていっていることに楽しみを感じているのに気付き、
苦笑した。意外に自分も好き者だったということか。
「……口付けるなら、他に場所があるのではないか?」
頬に何度となく当たる唇の感触を堪能しながら、そう言うと同時。
女の胸の先端、色づいた突起に、ついに指先が触れた。
「んっ、そ、んな…」
世辞ではない。可愛い。
その言葉が、思考を蕩けさせる。
「は…は、ぁ…ん、くぅ……ん…」
じわりじわりと身体に浸透していく、彼の愛撫。
自分でも驚く程に、それは素直に身体への変化として現れ、僅かな震え、
息の乱れ、うっすらとした汗へと変わっていく。
「…意地悪、です。」
他に、と言われ、躊躇いを僅かに覚えていた事に気付く。
それでも躊躇いがちにその唇を彼の唇へと近づけていった刹那。
「んんっ…!」
最も敏感な胸の先端に触れられ、一際身体が跳ねた。
そのまま、力失うように彼の方へと身体が傾ぎ、その唇に自分の唇が触れる。
最早、何の躊躇もなく、彼のその息継ぐ口腔へと口付けた。
濡れた口腔の感覚に、頬が染まる。息が更に激しくなる。
空気を求めるより、何より、彼の唇を求めた。
貪るように、といっては荒々し過ぎるだろうか。
適切な言葉は見つからないが、敢えて言うならひたむきに、なら良いかもしれない。
自身の唇に合わせられる、唇。
その感触を喩える言葉は数あれど、全てが陳腐に思える。
唇を重ね合わせたまま、舌を伸ばして内部へと分け入らせ、歯列を幾度も、幾度もなぞる。
しかし、決してそれ以上はせず。
まるで、欲しければ自分で取りに来いとでも言うように、幾度も。
胸に与える愛撫は、周囲はもう十分だろうとばかりに先端ばかりを執拗に、
転がし、引き、あるいは押して。
腰に触れていた手は抱きかかえるように回され、滑らかな臀部をやわやわと揉んでいく。
「ん、ふ、んんぅ、んむぅ……っ」
唇を塞ぎながら快楽を与えられる事で、充分な酸素を得られず、
次第に思考が奪われていく。
口内の粘液の感覚、舌の動き。
全てが、快楽で、暖かくて。
「ぷぁ…ん、んむぅ…ちゅ、ん…ふぅ…」
舌先で、彼の舌を追う。
その柔らかな舌先を求めて。
絡めるように動かすが、はぐらかされるように逃げられ。
もどかしさに、息が上がる。
夢中になりすぎて、彼の方へと寄りかかりすぎ、二人の身体毎、布団の上に倒れこむ。
だが、それでもその唇を離さず。
手は、彼の服を肌蹴させ、逞しい腹筋を撫で擦る。
(ああ…今日の私は…何か、おかしいのでしょうか…?)
昂りが、いつも以上に強く、激しく。
切なく身体を震わせる。
互いの舌を吸い合い、束の間絡ませ、時には逃げ、焦らすような動きを繰り返し、
水音を立てる。
縺れ込む様に倒れても、背中に布の当たる感触は殆どなく。
何故なら、抱き合ったままの女の肉体に集中しているから。
細い腕に身体を撫でさすられる感触は、微かな擽ったさと、確かな悦楽を呼び覚まして。
―――そろそろ、良いか。
あまり焦らしても仕方あるまい、と自分に言い訳をしても、その実はこちらが堪えられないという自分本位なもの。
頭に手を回し、更に、更に深く唇を重ねる。
舌を伸ばし、先とは逆に、こちらが女の唇を貪る様に絡ませ、至る所に触れ、
暖かな口内を蹂躙していく。
気が済むまで口付けを交わすと、ゆっくりと離した。
自らが生み出す銀糸より、尚美しいと見える糸が唇を繋いでいるのが見え、
その繋がりも直ぐに切れる。
「悪いが、意地悪と言われてもこの性格は簡単には変えられん」
唇を塞がれていては返答できなかったので遅れたが、と耳元で囁く。
囁いている最中、臀部から太股へと手を滑らせ、その先へと進めて行き。
心の準備を促すように、数回太股を往復させると、その先に指を進める。
花弁にゆっくりと、ゆっくり過ぎる程にゆっくりと―――触れた。
「う、んむっ、ううんっ、ん――っ」
急激に積極性を増した彼の舌の動き、唇の触れ合いに、咽喉をのけ逸らし、激しく反応してしまった。
合わせ唇の隙間から漏れる水音に、頭も心も霞がかかっていく。
「…それ、でもっ、意地悪は、意地悪…ですっ」
唇を離され、唾液が糸引くのを感じた。
空気を求めながらの荒げた息継ぎの中、ぼうっとしかけた意識で、彼の言葉に答える。
「あ……」
ゆるりと動く手が、数度、確認するような動きの後、私の最も秘めるべき部分へと触れる。
その瞬間、電流が走ったように快楽がそこから小さく爆ぜた。
「ぅ…ん、くぅぅぅうん……」
自分でも驚く程、鼻にかかった甘い声が口から漏れる。
意地悪だ、と言い募る様子が不思議に微笑ましく感じる。
「それが私だ……納得してもらう他はないな」
髪を手で梳く。何度も、何度も。荒げた吐息もどこか甘く感じられる。
情欲に濡れた表情に魅了され、否が応にも昴っていく。
抵抗することなど、とても出来ない。出来るものか。
耳元へと唇を寄せて耳を一度だけ食み、直ぐに離した。
指を花弁の中へとゆっくり沈ませ、それが十二分に潤っているかを
確かめるように動かして。
中を掻き回し、肉壁を擦り上げ、抜き出し、自らが望むように情欲に染めていく。
暫くそれを続けると、やがて囁いた。
「……欲しいか?」
「…うぅ……。」
さらりと言い流す彼が、何だか恨めしい。
「あ、あぁ…あ!あ!はぁ!んふぅ…!」
内側を掻き回され、擦り上げられる度に、腰が浮き、沈み、
あられもない嬌声をあげてしまう。
己の内から湧き出す情欲の泉は、尽きる事なく、彼の手指を濡らした。
感じる。彼の手を。指の動きを。
気持ち、いい…。
…欲しいか?
居丈高とも取れる言葉だが、それは優しく私の心へ浸透する。
答える言葉はなく、ただ、躊躇いがちに、頷いた。
「…高める必要は、ありませんか?」
そう言いながら、彼の下腹部に手を伸ばし、
男性の証を見つけて、指先で撫で擦った。
それは、熱く、既に滾っており、私が高めなくとも問題はなさそうだが。
【時間迫っていますね。どうしましょうか?2:00前くらいまでは平気ですが…】
頷いたのを確認して、一度、口付ける。
その僅かな仕草でさえ、今の自分には情欲を煽る仕草に見えてしまう。
―――どうやら、私も出来上がってしまっているようだな…
心中で呟いた。
「お前の艶姿だけで十分に昴っているが…」
言葉を紡いでいる最中、伸ばされた手が自身に触れ、指が絡まると、
それは凄まじい快楽を沸き上がらせた。微かに呻く。
「……っ、せっかくの申し出だ、頼もうか」
無碍にすることもない、というのは建て前に過ぎず。
奉仕をする姿を見てみたい、ということもあり、
奉仕させてみたいという欲望も間違いなく、ある。
【オーバーさせてしまって、本当にすいません】
【相も変わらずの遅筆にお付き合いさせてしまい、申し訳ないorz】
【再凍結というのもどうかと思いますし、終わらせてしまいたいのは山々なのですが、
終わる前に二時に入ってしまいそうな気がしてしまい……本当に申し訳ないです】
「あ……はい…。」
自分の姿で感じてくれている。それが、気恥ずかしく、同時に何か嬉しくもあった。
身を起こし、彼の下腹部の方へと顔を寄せる。
少し冷たい夜気の中、その部分から、熱く熱が上るのが分かる。
「失礼…します。」
邪魔になる髪を掻き上げ、既に熱く硬くなっている彼の男根の鈴口に軽く口付けた。
舌先を雁首、幹へと這わせ、丁寧に唾液をまぶしていく。
男根から感じられる雄の香りに、私自身の心音も昂っていく。
「ん…ぴちゃ…ちゅ…ちゅ…はぁ…ちゅ…んっ…」
やがて、指先で触れるどの部分も濡れそぼるまで舐め渡すと、
一度顔を上げ、今度は口内へとそれを埋めていく。
歯を立てぬよう、内頬で亀頭を擦り、舌先で鈴口を転がす。
「ん…ふむ…んちゅ…ちゅる…ふゅ…んぐっ…」
夢中になっていた。
今までに有り得なく、ただ男が己の中に突き入れるための手助けとしてだけ行っていた行為に、
何故か、執拗なまでに夢中になっていた。
ゆっくりと、それを味わいながら、丁寧にしゃぶっていく。
既に、羞恥はなかった。
【いえ、内容は凄く楽しませて貰っているので、謝る事などありません。】
【とりあえず、二時手前までは行いますが、その後は再凍結という事でお願いします。】
【折角ですから、最後までお願いしたいので…。】
「これは、また……」
舌が、満遍なく幹を、雁首を、亀頭を、鈴口を、這い回る。
その感覚に酔いしれ、目を閉じる。
感じられるのは、舌の暖かく、滑った感触と水音のみ。
それが全てだ、とまで思う自分が、やはり普段とはかけ離れていることに
気付き、密かに笑う。
一々面倒だろうと、髪に手をやり、代わりに掻き上げてやった。
咥内に先端を含まれ、吸われ、擦られ、転がされ、それに大きく息をつく。
まるで、二度と抜け出せない沼にはまり込んだかのような気分。
―――だが、それも構わないのではないか。
例え、この快楽という沼から二度と抜け出せずとも構わないのではないか。
そうとまで、思う。
「…少し、ゆっくりとしてもらえないか。このままでは遠からず…」
達してしまう、とまでは言葉に出さない。
奉仕する女の頭を、ゆっくりと撫でながら、もう暫く、
この暖かな感触を味わっていたかった。
【そう言って頂けると救われます…】
【了解致しました、再凍結後は、また伝言板の方で】
「あ、はい……」
雄の香りに夢中になりかけていた耳に、彼の声が響く。
先端から、まぶした唾液に混じる粘液を丁寧に舐め取ると、
先程よりゆっくりと、しかし丁寧に、幹と亀頭をじわじわと舌先で刺激する。
「んちゅ…ちゅう……ひもひ、いいれふは……?」
気持ちいいですか?と訊いたつもりだったが、男根を咥えたままのため、
言葉がうまく紡げなかった。
諦めて、首を左右に振り、左右の内頬に鈴口を擦りつけながら、柔々と刺激する。
少しずつ先端から溢れる粘液を舌先で掬いながら。
「ちゅ、ふゆ、ふぅ……ん、はぁ……」
名残惜しく、彼の男根を唇から解放する。
熱さと硬さを増したそれに指先を絡めながら、彼の顔を見上げた。
「あの…南雲様…、そろそろ…」
内股を少し摺り合わせながら、呟くようにそれだけを言葉にする。
【では、私はこれで一旦切ります。この続きは、また伝言スレにて。】
【今日はありがとうございました。楽しかったです。】
【それでは、おやすみなさいませノシ】
【長時間のお付き合い、ありがとうございました】
【こちらも、とても楽しかったです】
【こちらの遅筆でご迷惑をおかけしました、お疲れ様でしたノシ】
>>730 「――あぁぁっ!!」
妖魔のグロデスクなそれが膣へと捩じ込まれていき
その裂かんばかりの激痛に、目を見開き背を仰け反らす。
愛撫に昂り踊らされ、一瞬でも男の物を求めたのを激しく後悔した。
相手は巨躯を誇る妖魔なのだから合う事がそもそも有り得ない。
感覚を狂わせる媚薬等があれば、また話は別だが。
「奥までとは…っ……随分ね。
このまま殺す気は十分って事…んっ…!?」
向けられた目に顰めた顔で毒づいたが、不意に熱い吐息が漏れた。
持ち上げられ突き上げられるたび、身体に走るのは痛みだけだったはず。
そう思ったが耳を弄る舌の音に徐々に身体がまた快楽に痺れ始める。
>>764 「んっ・・・、きつくて・・・たまらないぞッ!」
ニヤリと笑い彼女を見つめる。
痛みと快感の狭間に堕ちている彼女こそ魅力的な物は無い。
あれほどまで自分に抵抗した「あの女」かと思うと尚更だ。
「フッ、始めは殺そうとも思ったが・・・、んっ・・・、今はそうでは無いなッ!」
動揺を隠せない彼女の体を更に弄ぶ。
敏感過ぎる胸の先端を優しく解しながら執拗に舐めあげる。
脇腹をくすぐる様に撫でる。
少し緊張が緩んだかと思えば、最奥へと自身の分身を進める。
「初めてでは無いようだが・・・キツイな。このまま俺の形に膣内が変形するまで犯してやる。」
彼女と自分を興奮へと導く卑猥な言葉を綴ると、腰を軽く持ち上げ小刻みに出し入れを始める。
無理矢理挿入された彼女の秘所は充血しつつも、ヌメリと光りその大きくなったモノを飲み込んでいた。
>>765 強引に膣を抉る動きがあったかと思えば
慰めるような胸の先端へと舌の愛撫。
その巨躯からは考えもつかない繊細な手つきに
翻弄され夜の闇に身体が跳ねて踊る。
「んっ…あっ……あ、あはっ…い、イイ……?」
先程までの責めに悲鳴を上げていた秘所が浅い突きに歓喜する。
それで愛液を一層溢れさせながら思惑通りに慣らされていく。
「くぅ…図体の割りに器用な奴ね……最悪だ…わ」
犯されているにも関わらず、苦痛から開放された事で
自然と吐息に安心感と切なさを綯い交ぜにして漏らした。
>>766 亀頭部分のみを素早く出し入れして、彼女の入り口を愉しむ。
同時に彼女にはもどかしさを味わって貰おうか。
「嫌がっていたわりには感じている様子じゃないか?
墓無など下らない場所にいる事はない。
――全てを曝け出し、――自由を手に入れろ、――堕ちる所まで落ちれば良い。」
浅い出し入れと太腿へ指先で愛撫を続けながら闇の誘惑を続ける。
「このまま開放してやっても構わないぞ?それでも良いのか?
また、暗い檻と監視の生活に戻るか?」
出し入れする速度を緩めながら問いただす。
「それとも俺と共に堕ちるか?金も、自由も・・・、これも思いのままだ。」
ヌッ、ヌッと、湿り気を帯びた音と共に少しづつ深く腰を埋めて行く。
しかし、途中で挿入を止め。
「―――さぁ?どうする?」
>>767 ――焦らされている。
久しぶりに人外の身を呪い、顔を背けた。
最初は苦痛を伴うばかりの男根の責めも
この人並みはずれた耐久力を持つ身は耐え、すっかりと慣らさた。
今ではもどかしい出し入れに秘裂がその先を切なく求め
はしたなく引くつかせてしまっている。
「………あ、はぁ……」
太腿を撫でる指が余計に思考を鈍らせた。
女の部分がぐらつく意志を押し進め、頭を縦に振らせようとする。
一瞬ためらってから紅潮した顔を上げ。
「はっ…しつこい男ね。 最初からお断りって……言ってるでしょ?
私はね…自分の巣ぐらい……自分で探せるわよ」
息も絶え絶えにしながらも不敵に笑ってみせる。
蜘蛛にとって住処を与えてやろうなど、侮辱以外の何者でもない。
「それに貴方には、ここよりもっと相応しい場所があるわよ…!」
笑みを浮かべたまま首を起こし
覆いかぶさる妖魔には知れない闇に紛れていた糸をそっと唾液で溶かす。
張っていた蜘蛛の巣を――罠を解放すべく。
切なく喘ぎ声をあげる彼女――もう少しで堕ちる。
そう感じ、さらに焦らし、雌を駆り立てようとする。
「しつこい?そうだな。あっさりしているとは到底思わないな。
そうか、自分の巣は自分で探す・・・か。」
彼女は決して「墓無」とは言わなかった。
あくまでも「自分の巣」であると。
充分だ――充分過ぎる応えだ。
「ほう?俺に相応しい場所か。教えて貰おうか?」
何やら策があるらしいが・・・。
出来る事ならこのまま終わらせたいものだ。
『あの』力を開放するハメになっては、真の火妖としての力を開放しては
この娘に生きる道は残されてはいない。
この娘には価値がある。
退魔の者、いや、墓無を狩るだけの力と意思を持っているからだ。
>>769 「フ、フフ……聞きたい?
月並みのセリフだけれど――」
また薄く笑うと数瞬の後、不意に風を切る音が両者の耳に入ってくる。
今まで夜の静寂を紡いでいた蜘蛛糸が待ち侘びたかのよう。
複雑に織り込まれたそれが、しなる音を立てては振動し
宙から、あるいは地面の砂を弾きながら、組み伏せる妖魔へと迫っていく。
――糸が絶命した退魔士らが残した武器を絡ませ拾う。
「地獄…よ。
あの世で殺した者達へ詫びなさいな」
下腹部の疼きに呻きつつも冷たく言い放つと
瞬く間に妖魔の首の周りには退魔士の獲物が殺到した。。
糸は引かれるのは刀の、槍の、斧の、あるいは器用に引き金部分に掛かった銃すらある。
まるでそれらは亡き主が構えるように突き立られる。
「フッ・・・、フハハハ!アーッハッハッハ!素晴らしい女だ!」
素直な感想だ。
俺は「アレ」との契約により嘘を付けない。
「あれだけの事をしながら・・・、これだけの罠を張るとはな。」
動揺は無い。仮にあの全てが突き刺さり、撃ち抜こうとも死には至らない。
この程度では「アレ」も出ては来ないだろう。
「地獄に落とすか・・・。生憎、一度堕ちているのでな、恐怖など無い。」
嘘では無い、その証拠に――内に眠る闇の権化の一人。
「―――殺れよ。」
そう呟くと、何事も無かったかの様に最奥まで貫いた。
先程までの優しい愛撫は無く、荒々しい獣の――交尾と呼ぶに相応しい行為だった。
涎を垂らし、爪が食い込み彼女の美しい白い肌に赤い筋が流れる。
両手を押さえつけ、唯ひたすらに突いた。
「さぁ、早く殺れよ。」
冷たい表情のまま言う。
そしてグチュリと言う卑猥な音と腰を打ち付ける音だけが響いた。
>>771 「………なっ!」
正気を疑った。
目の前の妖魔は――笑っている。この状況で。
もしや狂っているかと呆けたような顔で笑みを見た。
「くっ…正気なの、こいつ…っ……ひぃ…!?」
躊躇いも遠慮もなく男根が膣へと埋められていく。
一瞬、膣壁が収縮してそれを止めようと動いたが
屈強なそれの前では無力に等しい。
「――んあぁぁっ!!…い、いやぁぁっ……!
ん、んんっ…こ、こいつ……!」
僅かな間もなく、最奥を亀頭が荒々しく突き刺し
鮮烈な痛みと快感に生娘の如くに声を絞り上げられた。
滴る唾、肌を彩っていく目と同じ赤に目尻に涙が滲む。
「そうまで言うなら…っ!…やってやるわ…よ!」
見せ付ける冷酷な顔に寒いものを感じながらも
頭の上で拘束されている指を動かす。
それを合図に妖魔の首に触れている刃が、一斉に首を払おうと動いたが――。
怒り、恐怖、絶望、希望、恍惚、恥じらい。
彼にはない表情を彼女は持っていた。
彼にも感情や苦痛が無い訳では無い。
しかし、戦闘に不要なそれらは殆ど表に出さない様に訓練されていた。
――そう、墓無によって。
「嗚呼、正気だ・・・。殺れと言っている。それがお前の望む事なのだろう?
自分の欲は全て晒し出すべきだ、隠さずにな・・・。」
変わらず奥に打ち突ける。その感触を、形を彼女の精神と肉体に覚えさせる為に。
「だから俺も好きな事をする・・・、お前が欲しい。肉体も、精神もな。」
彼女の反応や意思に関わらず、一層大きさと速度を増し。
交わりの終焉が近い事を予感させる。
「さぁ!今だぜ!」
―――ザクリ。
確かに刃が彼の首に掛かった。
人であれば例え鍛えられた退魔士であろうと確実に屠れる筈だが。
「無駄だ・・・、無駄だ・・・!今度は俺の番でいいよなぁ?」
首から噴出す血がシャワーの様に彼女に浴びせられる。
他の武器も刺さり、撃ち抜き、血が溢れる。
「さて、おれの精液でその腹を満たすんだな・・・。」
力を込めると刺さっていた武器が抜け落ち、徐々に傷口が塞がって行く。
そして―――。
「くっ!出そうだぜ・・・、一滴残さずお前の膣内に出してやる!行くぜ!」
血が塞がるのに反比例して、彼女の胎内に大量の精液が注がれる。
ドクン、ドクン・・・。それは持ち手の無いホースの様に彼女の中で暴れ、
いつ止まるとも分らない程の大量の精液が注がれ続ける。
>>772 「あぁっ…ひぃぃ…いっ…ふ、深い……!!」
淡々と男根が膣への蹂躙を進める。
身体が痛みと快感の熱に蕩けさせられていく。
焦って、早く、早くと糸に操られた刃と銃の行方を目で追ったが――。
目の前の光景に声を失った。
責めに浅い息を繰り返し半開きになっていた口からは、悲鳴すら上げることがない。
咄嗟に白くなった頭には「人の体を捨てて女郎蜘蛛へ化身し更に抗え」と
警告が鳴り響いたが、、ただ奥歯が震えて音を響かせるだけで何も出来なかった。
――怖い。
こんな言葉ばかりが浮かんできて頭と身体とが…糸のように繋がらない。
私は……生まれて初めて恐れを抱いた。
「はひっ…! あっ、あぁ!?…いや、いやぁぁっ!!
お願い、動かないでぇ!…深いの…それぇぇ、痛いのぉっ!」
一度、折れた心を陵辱されながら立て直すことなど不可能に近い。
もう後は、いやいやと青い髪と首を振り乱して抗したが
全く意に返すことなく膣の中には、熱いものがぶちまけられる。
「いや、中で一杯……出てる…」
一方的な弄りに視線が宙をさ迷う。
いつまでも中で続く射精に、力なく呟いた。
―――美しいモノが壊れて行く。
生憎、桜の花の散る美しさは分らないが彼女のそれは理解できる。
己の行動に彼女の精神が、体が・・・、そして満たされて行く心。
「当然だ、俺の番だと言っただろう?」
絶対に逃がしはしない。
がっちりと押さえつけたまま射精を続ける。
「凄い・・・、締め付けだ。暫く・・・止まらないぞ!」
ドクン、ドクンと、彼女を胎内から陵辱する。
心も、体も。
美しい青い髪の毛も彼の血の所為で、彼女の瞳の様に赤く染まる。
様々な恐怖に取り乱す彼女への射精は格別の快感があった。
「はぁ・・・、とても良かったぞ。」
ニヤリと笑うと彼女の唇を奪う。
舌を捻じ込み、深い口付けを交わす。
「俺はお前を殺さない。決して殺しはしない。」
言うと分身を引き抜く。
ドロリと収まりきらない精液が彼女から流れ落ちる。
「だが・・・、俺に抗うのであれば、何度でも犯す。そしてお前の心を壊す。」
彼女の上半身を抱き起こすと、自身の血で汚れた彼女の頬をペロリと舐め上げた。
>>775 「う…う、ぅぅ…いや、まだ出てる…。
中で……熱いもの…出て……」
嫌悪感から反射的に引こうとした腰が押さえつけられ
そのまま精液が子宮へと注ぎ込まれる。
妖魔に何度かこうして「させた」事はあったが…「された」事はなかった。
掛かる血が痙攣を起こしている上半身へと降り注いでは
心も身体も恐怖、恥辱に染め上げていく。
「んぅ……!!」
強引な口付けにも最初のようには抗しない。
口内を舌がなぞる度に、びくっと身体が雨に濡れた小鳥のように震える。
その行為は溶けた心の上から、また恐怖と恥辱が塗りたくられていくように思えた。
「…………離し…て…」
ようやく引き抜かれた男根を感じると
頬を舐める妖魔の目を見つめ、ただ懇願する。
クイッと顎を上げさせると、軽い口付けをして言われた通りに開放する。
「フンッ、それでもお前は墓無の一員として生きるのか?」
そっとコートを彼女の肩にかけて呟く。
立ち上がると目線を彼女から外し背を向ける。
彼女にはもう攻撃するだけの気力は残されて居ないだろう。
「お前が何処で何をするか決めるのは自由だが・・・、墓無にいれば何れ俺の様になるぞ。」
墓無の半妖やMIBのクリーチャーを見ると思う事が幾つかある。
一つは「無に帰す事で開放してやる」、もう一つは「自由による開放」。
彼女には後者の道を歩んで貰いたい。
「俺は逃げも隠れもしない・・・。いつでも相手になろう・・・。色々な意味でな。」
そう言い残すと、ゆっくりと歩み始めた。
彼女は彼を恐れた。しかし――。
その体には確かに他の人間や妖魔では与えることの出来ない性を植えつけた。
次に彼女が彼を求めるは、その心が疼き命を狙う時か、その体が疼き性を求める時か・・・。
その答えは未来の彼女しか知る事はないだろう。
【こちらはこれで〆させていただきます。】
【長時間、二回に渡るロール有難う御座いました!】
【また機会がありましたら蜘蛛の巣張って、とっ捕まえてくださいw】
【お疲れ様でした、おやすみなさいノシ】
>>777 肩に掛けられたコートをぐっと手で引き寄せて
陵辱を受けた痕が生々しく残る身体を庇う。
何もする気になれない中、身体を起こすと
膝を抱えて背を丸めると合わせた両脚の隙間からは
粘つく精液が地面へと滴るのが、目に入った。
酷く、酷く惨めな気分だ。
そうして顔を伏せたまま、手を動かし糸を引く。
ふと茂みに置いあった鞄が気になったからだ。
ずるずると地面を擦りながら鞄を引きずってくると、それを一晩中抱き締めていた。
「……明日の時間割…何だっけ……」
ぎゅっと革に皺をつくるほどに抱き締める。
何故だかこうしていると、少し――気分が楽になった気がした。
【こちらこそ、ありがとうございました】
【はい、また是非お願いしますー】
【お休みなさいノシ】】
【名前】式部奈津希(しきぶ・なつき)
【年齢】17
【性別】女
【サイド】中立
【組織】無所属
【サイズ】身長159cm 体重46kg B/W/H 85/59/84
【容姿】黒いロングヘア。
口元にはどこか狂気を感じさせる虚ろな薄笑い。
赤いスカーフのセーラー服を着、手には学生鞄。
常に裸足だが、何故か足が傷ついたり汚れたりはしていない。
小瓶のついたネックレスを手首に巻きつけている。
【得意】陵辱(受け攻めどちらも可能)。
【能力】下級の奉仕種族や独立種族の召喚と使役。
【武器】特に無し。
ただし既に狂気に陥っているため、精神攻撃系はほぼ無効。
また黄金の蜂蜜酒を摂取し続けた結果、媚薬系にも強い耐性を持つ。
【NG】グロ(流血程度はOK)、スカ。
【弱点】本体自体は脆弱な少女に過ぎない。
【備考】ある教団の手によって召喚された旧支配者と接触し、狂気に陥った少女。
教団は滅んだものの、彼女は残り、無自覚のまま世界を彷徨う巫女となった。
手首の小瓶は奉仕種族であるビヤーキーを従え、感覚を鋭敏にする黄金の蜂蜜酒を
無尽蔵に生み出すことが可能。
【23:00ごろまで待機します】
【申し訳ありません、一旦席を外します】
【22:30前には戻ってきますので】
(こんばんわ、どんな話にしますか?)
(わかりました。ではその時に)
【お待たせしました。思ったより遥かに早く戻れました】
【シチュ指定、時間指定などはありますでしょうか?】
[おかえりなさい。特に指定もこうしたいというのもありませんが、適当なところで下級妖魔に襲われるとかそのあたりで?]