>>258 ―――――まひろ……?
なんのことですか……?真広……?
(悪戯が過ぎたようだ、と、内心思う。が、それも僅かばかりに遅すぎた後悔だったらしい)
(引き寄せた真白の瞳に一瞬で罪悪感、というものを覚えてしまう。また――心がチクリ、チクリと痛む)
(余り感情というものを宿さない私の顔に一抹の不安という翳りが生まれ)
(少し上ずった声で、彼が「何を知っているのか」と訊こうとした。が、その矢先に――)
……………………。
(この歳頃にしては珍しく、ルージュさえ引いていない唇。緩く開いていたそれが、きゅっと硬く結ばれる)
それを……、いつ知ったのですか?
と……質問に質問で応えるのはフェアじゃありませんね……
っふ、っく……っ、ま、まひろ……!?
(次いで、澄んだ大きな瞳を閉じ、そしてゆっくりと、ゆっくりと開き、怒りという荒々しさのみで)
(私の細い肢体を乱暴に押し倒し、彼自身でさえ良くわかっていないはずであろう感情に翻弄され)
(私をじっと見下ろしてくる真広と視線を絡める。力任せに拘束された腕からも、逃げ出すことはできただろうが)
(私の中に、何時頃から芽生えていた真広への想いがそれを許さず)
(―――――貴方のことが好きだから。と、囁いてしまえばどんなに楽だろう)
(これ以上の理由は他にないのだから。が、それを告げるために唇を開こうとしても、思いがけず)
(落ちてくる彼の視線に切なさと、悲痛とも言える顔つきに声を出せずにいた。すると――)
――ん、んぅ……、んっ……!?
(気まずい静寂を消すには充分だった。真広の唇は私のそれに重なり、私は一瞬大きな瞬きを)
(が、重なった唇は怖れることもなく、寧ろ緩く開いて深いキスをとねだる)
……ちゅ……っ……。
(柔らかい唇同士が水音をたてて放れる間も惜しむように、私は自由の効かない身体で)
(今度は私から、真広の唇を奪い、キスをする)
【理由を打ち明けた方が良ければ言いますが。「なんで俺に黙ってた」のところですが。とりあえず、心情として書いてはおきました】
【真広。貴方のことが好きだから、と】