>>282 いいえ、それはきっと、気のせいかと思います。
時折、夏目さんと雑談をしたらいい、と思った程度ですから。
(ふふふふ、と微笑むと、それ以上は何も語ろうとしなかった)
(とは言いつつも、本気でそう考えているわけではなく、あくまで悪戯程度ではあるのだけれど)
(ただし、あまり怒らせてしまうこともあるまいと考え、少しだけ、凜々蝶さまの表情を観察したりして)
はい、なんでしょう、凜々蝶さま。
改めて名前を呼ばれてしまうと、なんだか……こそばゆく感じられてしまいますね。
(心底嬉しそうに微笑んだ表情)
(そして柔らかな視線は、凜々蝶さまの真剣な眼差しを捉えていた)
(とはいうものの、対決する様な眼差しではなく、真面目に、真剣に自分のことを見ているように思えた)
(が、その表情はすぐに柔和なものになる)
(心の中で巣食っていた警戒心が溶けたとわかると、自分も更に柔和な表情になる)
いいえ、どういたしまして。
ふふ、やればできるんですよね、凜々蝶さま。
僕は期待しております。
(早速沈んでいる凜々蝶さまの頭に手を伸ばすと、またそっと、髪を撫でた)
あの方は覆しようがない、生粋の変態ですから。
それは常識であり、必然であり、如何ともしがたい事実なのです。
……あまり言うと、菖蒲さまに悪いかもしれませんが。
僕に関しては心配は不要です。
凜々蝶さま以外の女性を好きになることはありません。
……。
(自分の言葉の意味を咀嚼すると、改めて気づく)
(今、自分が言った言葉の意味を、そして逆の立場に立った凜々蝶さまのことを)
……僕の先ほどの言葉は、忘れてください。
あれは凜々蝶さまを信じていないという言葉そのままですね。
大変失礼なことをしてしまいました、お許しを。
(右手を胸にあて、深々と頭を下げる)
ええ……。
僕も、凜々蝶さまが居なくなってしまわれましたら、死んでしまいます。
ですから、僕を淋しくさせないでください。
(また悪戯っぽく微笑むと、また一筋だけ涙が零れた)
(それでもう、今溜めている涙は枯れてしまった、と心の中で思いつつ)
(体格差からすると親子ほどの差がある主と自分が、今は逆のような関係になっている)
(それがまた不思議な関係であると思わず微笑みが漏れてしまう)
(そして、今まで触れたことのなかった母親という存在に、耐えきれなくなって凜々蝶さまの肩に顔を埋めた)
はい……。
僕は、今まで淋しい存在でした……。
ですが、今は凜々蝶さまが一緒です、そして……二人で、一つの存在なのです。
(そして、凜々蝶さまの言葉に同意して、深く、深く頷いた)
僕はそんなに、心の狭い人間ではありません。
それは、凜々蝶さまもお分かりだと、思います。
凜々蝶さまも同じだと思いますが、僕は僕のことが嫌いです。
でも、唯一好きな点が、一つだけあります。
こんな僕でも、僕が好きな女性が、僕のことを好きだということです。
凜々蝶さまは、僕の唯一の心の支えなのです。
ですから――御自分を卑下なさるようなことは、言わないでください。
(そう言うと、再び抱きしめて唇を唇で塞ぐ)
(恋人のするディープキスを、自分から積極的に仕掛けていく)
(唾液を送り込み、啜り、咥内を蹂躙し、たっぷりと満喫したあとで唇を離す)
(艶っぽい視線を続々と送り込むと、不躾ながら凜々蝶さまの胸に触れる)
まだ、仰いますか?
僕は金輪際、凜々蝶さまのことを、例え一部分でも嫌いになることはありません。
(胸に触れていた手が、生まれたての赤ん坊を扱う様に優しく動く)