>>174 ほ、他の人も!?
…………自信…か……、僕に出来るたろうか…。
(僕は自分が嫌いだ。素直になれなくて、悪態をついてしまうこんな自分が)
(自分を守るために人を傷つけて、自己嫌悪するのに謝ることも出来ない)
(全然可愛くない女だと、我ながら思う)
(それなのに、御狐神くんはそんな僕を魅力的だと言ってくれた)
(とても有り難くて、優しい腕の温もりが嬉しくて、彼のスーツをきゅっと控えめに掴んで)
(小さく――聞き取れるかわからない声で「ありがとう」と、素直な言葉を囁いた)
全くだ、君は罪深い…。僕に、こんな想いをさせて……。
責任とってもらうからな。
…不治の病が、治るまで…ずっと一緒に………。
(不治の病は治らないからこそ不治の病なのに、これではまるでプロポーズみたいだと一人顔を赤くし)
(そんな赤く熱くなった頬を撫でる、骨ばっているのに、長くて美しい指にドキッと胸が大きく高鳴ってしまう)
(彼が感じている不整脈も、今僕が感じいている不整脈も…ずっと治らないで欲しいなんてことを思いながら)
(頬を撫でる手にそっと小さな手を重ね、頬と手で挟むように…包むかのように、彼の温もりに愛しそうに瞼を閉じた)
…わかった。許可…する…。
……君と一緒に確かめるなら、悪くない…。
ぼ、僕は、君に比べたら全然何も知らなくて……だから、迷惑をかけるかもしれないけど…。
……それでも、いいのだろうか…。
(信じたはいいが、果たして僕は彼に見合うようなことが出来るだろうかと)
(そんな不安が胸をよぎって、言葉に出してしまう)
(僕は何も知らない。きっと御狐神くんに比べたら、赤子のようなものだろう)
(新雪のようなまっさらな経験のなさは、純粋さ故のものだということに気づかず、ただ見合うのかどうか…それが心配だった)
うん………ありがとう、御狐神くん…。
僕は君に救われた……沢山のものを、幼少の頃から貰った。
(かつて、家でも外でも、僕を見てくれる人はいなかった)
(母も父も、先祖返りの僕をただ飼うかのように、生きてさえいればいいとさえ思っていたのかもしれない)
(愛なんて貰った記憶もなく、遠くから見つめる彼等の視線の先には、いつも妹しかいなかった――)
(外の人も、「白鬼院」の名しか見ない。「凛々蝶」は、彼等にとってもいないも同然)
(そんな僕に、僕だけに言葉をくれたのは、手紙でやりとりしていた御狐神くんだけ)
(日々感じ取ったものを紡ぎ、したため――拙く、持て余した感情を乗せていた手紙なのに、彼は丁寧に、僕だけに送る言葉を紡いでくれた)
(それがどれだけ救いとなったか――それは言葉にすら出来ない程)
だから、…受け入れて欲しい。僕のことを全て。
他ならない君になら、僕は全てを許せるから…。
(身体が弱いせいもあるのか、青白さすら感じる指先は折れてしまいそうな程に細く繊細で)
(そんな少し冷えてしまった指先に感じる頬の暖かさが優しくて、気持ちが良くて)
(彼の優しい笑みが、嬉しい。僕にそれを見せてくれるというのが、何よりも…代え難い宝物のように感じる)
う、うん……宜しく頼むぞ。
まあ僕にかかればどのようなことだって造作も無いことだ。
君は安心して僕を頼るように。いいな?
(長くサラサラとした髪は彼の指の間を艷やかに流れ、背を撫でる暖かさに、頬に赤みが増す)
(御狐神くんが慰めているのはわかる――だから、謝りたいと思うのに、口から出るのは別の言葉)
(ほんの少し押し黙り、慰めてくれる御狐神くんをじっと見上げる)