「・・・・・は?」
やっと去っていった凶器に安堵していた桂が、ぽかんと見あげる。
それに笑ってみせ、銀時は濡れそぼる桂の秘所に、再度自身を押し込んだ。
「ふうぅッ!・・・・な、なにをっ」
「いやー、久しぶりだし、しかも生だし、お前エロいし、ついつい盛り上がっちゃってなあ。
とても一回じゃおさまんないみたいでさー」
「貴様の下半身事情など知らん!いい加減抜いて・・・はうっ」
口封じとばかりに、銀時が激しく突き上げてくる。
呼吸さえままならず、口を閉じられない桂は銀時の思うまま声を上げさせられた。
過ぎた行為に、桂の意識は途中から途切れ途切れになり、白く霞んできた。
飛びかけた意識の中、ぼんやりと、前に去っていった男の面影を思い出す。
あの時の高杉は、自分で壊したのに、まるで置いていかれた子供のような目をしていた。
(違う・・・ひとり取り残されていたのは、俺か)
桂はゆっくりと目を閉じ、そのまま失神するように眠りについた。
寝息を立てだした桂の顔は、ぐったりと疲弊していた。
押しとめられない欲望を好き勝手にぶつけた自覚はある。
銀時は、中途半端な長さの桂の髪を掬い、砂を手から零すように流す。
さらさら さらさら
やわらかく艶やかな手触りは気持ちよく、しなやかに指に沿うが、絡みつきもせずねじっても癖もつかない。
手を離したとたんさらりと、何事もなかったように元に戻る。
持ち主に似て薄情な髪だ。
桂が銀時に対して示す全幅の信頼。それが殆ど恋に近いものであることを銀時は知っている。
本人にはその自覚がないことも。知っていて、最後まで拒絶できないのを見越してそれに付け込んだのだから。
しかし、おそらく高杉に対しても最後は受け入れたのではないか、と銀時は思っている。
桂は恋愛の概念を理解できていないところがある。
「ひでえ男だな」
お前も俺も。
美しく流れる髪の毛を、飽きずに梳きながら銀時は一人呟いた。
外はすっかり日が落ち、春はまだ遠い。しかし、日は次第に長くなっているのだ、そうと気が付かなくても。
時を止めることはできない。そうして日々は変わっていくのだろう。