さらさら さらさら
背中を向ける桂の中途半端な長さの髪の毛が、風に嬲られて流れている。
なんで風で舞う髪がこんな規則的に流れるんだ。まるで風に梳られている
ように見える。
自分の好き勝手な方向に動くものとは違い、髪の毛までお行儀いいのか
こいつは。
何となくむかついて、さらさら流れる髪を引っ張ってやった。
ずっと銀時を空気みたいに放置して、何やら書き物をしていた桂が眉間に
皺を寄せて振り向く。
「なんだ貴様は。邪魔をするなら帰れ」
「いや、統率のとれたヅラだなあと思って」
「ヅラじゃない」
桂は仏頂面で銀時の手を邪険に振り払った。
「銀さんいい子で待ってるんだけど、客ほっぽりだして、いつまでたっても茶
菓子のひとつも出てきやしねーし」
「誰が待っていろといった。勝手に上がりこんだくせに」
「追い出さなかったんだから、まんざらでもないだろ」
「面倒だからだ。大体、俺は万屋に行くときはちゃんと手土産を持参している
ぞ。手ぶらで押しかけておいて図々しい」
「いやほら、それはあれだから。銀さん自体が手土産みたいなもんだから」