「よぉ………」
鬼兵隊にありがちな、貧弱な船だった。
桂はその船の入り口で立ちつくし、高杉の方を険しい顔で睨んでいる。
「…………来たけど」
「ああ、来たな」
高杉は立ち上がり、ふざけた口振りで桂に歩を進めた。
「ま、来るしかなかっただろうが」
「何が目的なの?」
負けてはいけない。桂はそう自分に言い聞かせ、強い視線を高杉にぶつけた
。
「さぁ〜。何が目的なんでしょーねぇ〜………」
そらっとぼけて、高杉は夕空を見上げる。
「これ、オヤジの車なんだわ。中にジュースとかあるし、とりあえず中、入ろ
うや」
「そ、ちょっと、そんな………」
桂は身の危険を感じた。
誰にも相談せずに来たのは間違いだったかも、と後悔しだしてもいた。
しかし、相手が握っているネタは、自分と、そして他ならぬ恋人銀時の将来
をもメチャクチャにしかねないほど危険なものだ。
もとより、相談などできるわけもない。
銀時に相談したら、きっと万屋なんて辞めてやると言うだろう。
そんな事だけはさせられない。