何ヲ、聴イテイル?
ワタシハ、何ヲ、聴イテイルノ………?
『あ、あぁ、あぁああ、出る、桂、桂ぁっ』
『ぎ、銀時っ………────────』
ばっ
桂は乱暴にイヤフォンを外し、そのまま動かなくなった。小刻みに身体が震
えている。
呼吸が速い。
高杉はゆっくりと、嫌味なぐらいゆっくりと桂の手からイヤフォンの片割れ
を受け取り、再び自分の耳にかけた。
「さすが天下のSO●Yだよな。圧縮しても、この音質。臨場感があって、いい
感じだろう?」
ただでさえ嫌らしい高杉の顔が、更に醜悪に歪んでいく。
桂は、目の前が真っ暗になっていくのを感じていた。
去り際、イヤフォンを返す時、高杉が桂に小さな紙切れを渡してきた。
桂は努めて何でもない、といった風を装い、友達と談笑しつつ、さりげなく
手のひらの中の紙切れを覗いた。
【今日 午後5時 船で待つ】
桂は、行くしかなかった。