「よ、ヅラァ。早いな、今日」
声。桂は、振り返らないように努力した。
声の主は分かっている。
──────幼馴染の嫌われ者、高杉晋助だ。
半年前、彼は執拗に桂に絡んできて、間に入った銀時と大喧嘩をやらかしている。山岡は小柄で、少し小太りの不良だ。三白眼の白目はどろんとしていて、とても気持ち悪い。ニキビだらけの団子鼻の下には、分厚い不格好な唇。二段顎。剣道をかじっているらしく、
昔からケンカの強かった銀時とも、殴ったり殴られたりと結構いい勝負をしていた。
「おーい、無視すんなよ。朝の挨拶だよ」
桂はため息をつき、仕方なく振り返った。いつも数人で群れている高杉は、珍しく1人で机の上に座っていた。
まだ朝が早いせいかも知れない。彼は桂の顔を見ると嬉しそうに「ひへっ」と笑い、ラフに着崩した着物から、小さな機械を取り出した。
手のひらにちょこんと載ったその機械からイヤフォンが伸び、高杉の耳におさまっている。
「………? それは」
反射的に、桂。