>>456 ……きれいね。
(船から降りても当然ひとひら、ひとひらと辺りに降り積もる様は、まるで雪のようだった。
徳利から注がれた酒の表面にも一枚の桜の花びらが落ち、花見酒にはこれ以上ない演出になって)
…市は、幸せよ。今は…とても。
鬼さんとみんな……いるもの。
(ずっとさまよっていた闇の中から救い上げ、綺麗な桜が見れる場所まで連れてきてくれた。
そのことだけでも幸せで、感情を置き忘れたような顔に春の暖かさのような仄かな笑みを浮かべ。
酒を注ぎ終えた徳利を置くと、暫く頭上に枝と鈴鳴りの花を広げた桜とじっと見つめて)
……戦なんて、なくなればいいのに…どうしてみんな戦うの?
(女には分からぬ理があるのだと言う、しかし不満げに首を振って。
団子ならぬ魚より花か、相変わらず魅入られたように桜を眺めていたものの、男に促されて箸を取り。
刺身は刺身だがかなり豪快な切り方をされた、けれど言われたようにとても鮮度の良い魚を、
一切れ取って小さな口に運び)
…おいしい。
(すでに酒が入ってどんちゃん騒ぎを繰り広げている男衆から取り残されたように、
静かに食べてこくんと喉を鳴らして呑み込むとぽつりと感想を呟き)
【……ごめんなさい、今日は市、眠たくなってきてしまったの…】
【次は何時、会えるかしらね……?】