>>747 さっきの坂とあっちのカーブで手を抜いたでしょう?
だからスタートのハンデはなーしっ
(と、振り返りたくなるように抽象的に話してにやりんっと笑う)
(急ブレーキの音が聞こえて、一瞬ぎくりとしたものの)
(すぐに叫び声が近づいて来たので、力は緩めはしない)
(むしろ、相手のスパートに加速力を強めたくらいだった)
ゴールッ
どうしよっかな、今使っちゃってもいいけれど。
やっぱりここぞという時にとっとかないと。
おつかれさま、またいつでもかかっておいで?
(看板を通過すると、スピードを緩めつつ拳を突き上げる)
(スポーツ慣れした男子に勝てたということもあるけれど)
(普段は緋鞠にやられ放しだったので、勝利に飢えていた)
(変に慰めることはせず、歯を零れさせて笑うと握手を求める)
なるほど……確かにこれならボート要らずだね。
え、え、縁結び!?
(健闘を称え合っていたものの、神社の説明に素っ頓狂な声をあげた)
(大きな瞳は白目になり、明らかに自転車を漕いでいた時より赤くなって)
そそそ、そっか。うん。よくわかったっ
約束はここで使うよ!
お互いに絵馬を覗くの禁止……これでいいよね?
(誰が見てもわかるくらいに動揺しながら、ぎゅううっと全身に力を込める)
(握手の直後、人目のない場所ということもありさほど抵抗はなかったが)
(繋いだ手にもいくらか握力が増すこととなった)
そのほうが、ありがたみも増しそうじゃない?
(橋の半分くらいまで来ると、ようやく最初の衝動は治まったものの)
(未だドキドキしているのか視線を泳がせつつ名無しを見上げる)
(境内についても、吊るすぎりぎりまで書いているところを見せはせず)
二礼二拍手、だったっけ。ちゃんとお参りもしないとね。
(自分が絵馬に書こうとしている想い人を知られたくないのか)
(それとも自分の名前を書かれやしないかという恥じらいなのか)
(硬く閉じた口が、自ら約束の理由を語ることはなさそうだった)
【ありがとう、絵馬に書いたのは優人かはたまた……?ということで】