(フロンティアに限らず、よほどの場所でなければ誂えられていない和の庭園)
(歌舞伎の生まれた国――日本と言ったか、その国の文化による造りなのだという。華々しさには欠けるが、とても星が似合う――そう感じた)
(その庭園に向かう縁側に、浴衣姿の娘が座していた。生命力に溢れた外見にも関わらず、顔色はやわらかに差す星々の光よりも……白い)
……星が遠い。今まで、こんな風に思った事なんてなかったのに。
(一度は捨てた――捨てた気になっていた歌を、もう一度歌い始めたのは彼のためだ)
(折り合いの悪いこの家には近付きたくないのだろうに、忍び込んでまで様子を見に来てくれる彼のため)
(――だから歌うわ、燃え尽きるその時まで)
(横に投げ出した脚に気を使う事はなく、ぼんやりと空を仰ぐ)
(見上げるその瞳にだけ、悲壮とも思える決意を浮かべて。しん――と静まりかえった空気にだけ意識を奪われていて、他者の気配には聡くなく)
>>651 【ええ、それじゃこんな感じで――時間までよろしくね、アルト】